特許第5767197号(P5767197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5767197-黒色石英ガラスの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767197
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】黒色石英ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20150730BHJP
   C03C 3/06 20060101ALN20150730BHJP
   C03C 4/02 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   C03B20/00 A
   C03B20/00 E
   !C03C3/06
   !C03C4/02
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-247904(P2012-247904)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-94864(P2014-94864A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005072
【氏名又は名称】東ソー・クォーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】阿部 恵美子
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−262535(JP,A)
【文献】 特開2000−247660(JP,A)
【文献】 特開2000−256037(JP,A)
【文献】 特開平11−278857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03C 3/06
C03C 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
五塩化ニオブのアルコール溶液を石英ガラス粉末に混合して五塩化ニオブを石英ガラス粉末中に均一に分散させた混合粉末原料を得、この混合粉末原料を室温でアルコールを蒸発させて乾燥させ、更に加熱乾燥して五塩化ニオブを五酸化ニオブに変換し、この乾燥した混合粉末原料を、内部がカーボン製フェルトで内張りされたカーボン製容器に充填し、このカーボン製容器を炉内に設置して真空状態において1800℃以上に加熱溶融することによって混合粉末原料中の五酸化ニオブを熱分解させて酸素を放出させ、この酸素とカーボン製容器の炭素を反応させて一酸化炭素を放出させ、この一酸化炭素によって五酸化ニオブを二酸化ニオブに還元することを特徴とする黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、加熱乾燥を120〜200℃の範囲と300〜500℃の範囲の二段階としたことを特徴とする黒色石英ガラスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、混合粉末原料を充填したカーボン製容器をカーボン製円筒で包囲して加熱溶融することを特徴とする黒色石英ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分析用の石英ガラスセルや半導体製造用石英ガラス治具等に使用する黒色石英ガラスの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、塩化ニオブをアルコールに溶解して石英ガラス粉に混合し、塩化ニオブを酸化物に変換し、加熱溶融する黒色石英ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石英ガラスの黒色化は、石英ガラス中に五酸化バナジウム(V25)や三二酸化鉄(Fe23)、若しくは二酸化ニオブのような金属酸化物を呈色材として加えることによっておこなわれている。
特許文献1(特許第3156733号公報)には、図1(2)に示すように、五塩化ニオブをエタノールに溶解させ、この溶液を石英ガラス粉に添加混合し、加熱乾燥して塩素分を除去することによってニオブ酸化物に化学変化させ、この石英ガラス粉とニオブ酸化物の乾燥混合粉末原料を水素などの還元雰囲気の電気炉中で1100℃以上の熱処理をおこなって還元し、乾燥混合粉末原料を石英ガラス製の成型容器に充填し、真空炉中で溶融して黒色石英ガラスを得る方法が開示されている。
石英ガラス粉にニオブ酸化物の粉末を直接混合したものでは均一な混合物が得られず、黒色度が十分とはいえない。五塩化ニオブは、エタノール、メタノール等のアルコールに容易に溶解し、石英ガラス粉と均一に混合することができ、常温及び加熱して乾燥すると五酸化ニオブに変化するので石英ガラス粉に均一に分散させることができるので黒色ガラスの製造には五塩化ニオブのアルコール溶液が使用されている。
【0003】
五酸化ニオブを還元して二酸化ニオブ(青黒色)や一酸化ニオブ(黒色)として石英ガラスが黒色を呈するようにするものであり、従来、加熱溶融工程において混合粉末原料を石英ガラス製容器に入れて加熱溶融していた。この方法では、容器の石英ガラスが不活性であるため、水素を使用して還元雰囲気として混合粉末原料を加熱して還元しなければならないが、水素を使用するためコストがかかると共に、この還元工程に30分〜1時間を要したので製造コストの増大につながっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3156733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水素によって還元雰囲気としてニオブ酸化物を還元して黒色とする還元工程を省略し、還元工程と溶融工程を融合することによって製造工程の短縮を図ってコストを低減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
五塩化ニオブのアルコール溶液を石英ガラス粉末に混合して混合粉末原料とし、この混合粉末原料を室温で乾燥して五塩化ニオブを五酸化ニオブに変換してカーボン製フェルトで内張りされたカーボン製容器に充填し、真空炉において加熱溶融することによって黒色石英ガラスを得るものであり、カーボン製容器内において混合粉末原料を加熱溶融することによって五酸化ニオブの還元をおこない、水素等によって還元雰囲気とする還元工程を省略できるようにしたものである。
【0007】
石英ガラス粉の平均粒径は、溶融温度及び溶融時間を考慮して定めるが、10μm以上200μm以下とするのが好ましい。この範囲外の場合、溶融して得た黒色石英ガラスに気泡が入り易くなるので好ましくない。
【0008】
混合粉末原料の溶融温度は、真空雰囲気で1800℃以上とするのが好ましい。加熱溶融時の真空度は、0.1torr以下の真空雰囲気とするのが好ましい。
加熱溶融する際に混合粉末原料をカーボン製容器に充填してあるので、1800℃以上の高温に加熱すると、混合粉末中の五酸化ニオブが熱分解されて酸素が放出されてカーボン製容器の炭素と反応して一酸化炭素となり、更に酸化されて二酸化炭素となって系外に排出されることから、原料の五酸化ニオブは二酸化ニオブや一酸化ニオブとなり、溶融された石英ガラス粉は黒色を呈することになる。
【発明の効果】
【0009】
加熱による熱分解によって五酸化ニオブから酸素が放出され、カーボン製容器の炭素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素が生成されることによって混合粉末原料中の五酸化ニオブを還元して二酸化ニオブに変換するので石英ガラスが黒色を呈し、従来製法において必要であった水素等によって還元雰囲気として五酸化ニオブを還元する還元工程を省略でき、製造時間の短縮及び還元雰囲気を準備する必要がないことから製造コストの低減が図れる。
【0010】
五塩化ニオブ(固体)は、アルコール、例えばエタノールに溶解し易く、この塩化ニオブのアルコール溶液を石英ガラス粉に混合して均一に分散させる。この湿潤状態の混合粉末原料を室温で乾燥し、更に加熱乾燥することによって空気中の酸素及び水分によって五塩化ニオブは酸化され五酸化ニオブとなる。
五塩化ニオブの添加量は、製造する黒色石英ガラス中に含有させる二酸化ニオブ重量換算値の3.0〜3.5倍が好ましく、1.5kgの石英ガラス粉に対し、15〜50gの五塩化ニオブを添加する。これを二酸化ニオブに換算すると、0.46〜1.5wt%の含有量である。
五酸化ニオブへの酸化工程における乾燥処理工程中に塩素酸ニオブ(NbOCl3)等の形態で一部気化するので、加熱溶融してガラス化した時点では、二酸化ニオブ換算で、約0.4〜1wt%の含有量となる。
【0011】
石英ガラス中に含有させる二酸化ニオブ量は、500〜40000ppmが好ましい。500ppm未満では、黒色化が不完全となり、また40000ppmを超えると未反応物の存在によって色ムラや熱処理時に表面が結晶化したり発泡する可能性が高くなり好ましくない。二酸化ニオブ量は実用上から二酸化ニオブ量換算で0.25〜1.5wt%とするのが好ましい。
【0012】
得られた石英ガラスは黒色を呈し、200〜2000nmの波長域において厚さ1mmで光透過率は1%以下となり、これを分光光度計用セルに使用した場合、セル内における迷光をほぼゼロに抑えることができ、遮光性の高いものが得られる。
【0013】
また、高温においても結晶化せず、耐熱性、熱遮断性に優れているため、例えば、高温となる半導体用炉心管のパイプ端間に用いると、中心部分が加熱されて高温となっても、炉芯管端は高温となることがなく、断熱性、均熱性に優れた高温材用石英ガラス製治具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の黒色石英ガラスの製法の工程図と従来製法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例
図1(1)に示すように600mlのエタノールに50gの五塩化ニオブを溶解してエタノール溶液とし、この溶液を石英ガラス製容器内の200メッシュ以下に調整した4000gの石英ガラス粉に混合して五塩化ニオブを石英ガラス粉中に均等分散させた。五塩化ニオブのエタノール溶液で湿潤状態にある石英ガラス粉末をドラフター内で24時間、室温で放置して乾燥させる。
五塩化ニオブは空気中の酸素及び水分と反応して五酸化ニオブ、塩素酸ニオブ、及び五酸化ニオブの水和物に変化し、塩素が離脱する。
【0016】
次に、自然乾燥させた混合粉末原料をマントルヒーターで150℃に加熱して8時間加熱乾燥することによって塩素酸ニオブを五酸化ニオブに変化させて塩素を離脱させ、更に400℃に温度を上げて8時間加熱乾燥することによって五酸化ニオブの水和物の水分を脱水させて五酸化ニオブを得る。
最初の乾燥加熱は120〜200℃の範囲でおこない、2回目の乾燥加熱は300〜500℃の範囲でおこなう。
なお、この際、前述のように塩素酸ニオブとしてニオブの一部が気化して消失するので、この消失量を見込んで添加する塩化ニオブの量を定める。
【0017】
得られた五酸化ニオブと石英ガラス粉の混合物原料をボールミルに約1時間かけて凝集した部分を解砕(ダマ粉砕)し、150mmメッシュの篩にかけて粒径を調整した。この調整した混合粉末原料をカーボン製の220×220(mm)、高さ25mmの四角形の容器で底面と側面に厚さ10mmのカーボン製フェルトが内張りしてある容器に充填し、この容器を複数積み重ね、更にカーボン製容器の外側にカーボン製円筒を設置した。カーボン製円筒でカーボン製容器を包囲することによって加熱炉内における混合粉末原料の溶融する際の温度分布が均一化されるので好ましい。また、混合粉末原料がカーボン製フェルト、カーボン製容器、更にカーボン製円筒によって三重に包囲されるため、還元性の向上にも寄与する。
カーボン製フェルトの内張りは、混合粉末原料がカーボン製容器から漏出するのを防止すると共に、溶融ガラスがカーボン製容器に融着するのを防止し、溶融ガラスをカーボン製容器から剥離しやすくする効果をもたらすものである。
【0018】
更に、得られた黒色石英ガラスから特性を確認するために試料を作成し、透過率、耐熱性、加工性について試験を行った。本発明によって製造された黒色石英ガラスの透過率は、200〜2000nmの波長域においてサンプルの厚さ1mmで、ほぼ零であり、耐熱性、加工性についても従来の製法による黒色石英ガラスと変わりがなかった。
本発明による黒色石英ガラスを用いた光学分析用セルは、迷光をほぼゼロに抑えられ、紫外から赤外までの広範囲の波長域において遮光性に優れたものであり、光学分析用セルに使用できるものである。
図1