【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、
「処理対象ガスFに含まれるアンモニアの全部あるいは一部を酸素雰囲気下で
触媒を用いずに熱分解して窒素酸化物を生成する分解炉12と、
一端が前記分解炉12に接続され、前記分解炉12に処理対象ガスFを導入する処理対象ガス導入路16と、
一端が前記処理対象ガス導入路16に接続されているとともに、他端が前記分解炉12の下流側に接続され、前記処理対象ガス導入路16を通流する処理対象ガスFの一部を分岐して前記分解炉12をバイパスさせ、前記分解炉12から排出された処理対象ガスFに混合させるバイパス路20と、
前記バイパス路20の他端が接続された位置よりもさらに下流側に接続され、前記バイパス路20でバイパスされた処理対象ガスF中のアンモニアを還元剤として窒素酸化物を分解する脱硝触媒38が収容された脱硝器14とを備えており、
処理対象ガスFに水素が含まれている場
合に前記バイパス路20の開度を開き、逆に、処理対象ガスFに水素が含まれない場
合に前記バイパス路20の開度を絞るバイパス路開度調整バルブ100が前記バイパス路20に設けられていることを特徴とするアンモニアの除害処理装置10」である。
【0011】
本発明の除害処理装置10によれば、発生源(例えば、GaN(窒化ガリウム)系のLED製造装置)から排出された、アンモニアを含む処理対象ガスFは、処理対象ガス導入路16を通って分解炉12に導入される前に、その一部がバイパス路20に分岐される。
【0012】
分解炉12に導入された処理対象ガスFに含まれるアンモニアは、分解炉12において酸素雰囲気下で熱分解されることによって全部あるいはその一部が窒素酸化物となり、当該分解炉12から排出される。このとき、一部のアンモニアが熱分解された場合には、分解炉12から排出された処理対象ガスF中に窒素酸化物と未分解のアンモニアとが混在することになり、全てのアンモニアが熱分解された場合には、アンモニアは残存しないことになる。
【0013】
一方、バイパス路20に分岐された処理対象ガスFは、分解炉12を経由した処理対象ガスFに混合され、バイパス路20を経由した処理対象ガスF中のアンモニアと、分解炉12を経由した処理対象ガスF中の窒素酸化物およびアンモニア(熱分解されずに残存した一部)とが混合された状態で脱硝器14に導入される。
【0014】
脱硝器14に導入された窒素酸化物およびアンモニアは、脱硝器14内に収容された脱硝触媒38によって、例えば下記反応式のように無害な窒素と水とに分解される。
NO+NO
2+2NH
3 → 2N
2+3H
2O
【0015】
このように、本発明のアンモニアの除害処理装置10によれば、発生源から排出されたアンモニアの一部を窒素酸化物に変換し、然る後、当該窒素酸化物と残部のアンモニアとを互いに反応させて双方を無害化するので、固形吸着剤や触媒等で直接的に除害しなければならないアンモニアの量を、発生源から排出されるアンモニアの量に比べて大幅に少なくすることができ、アンモニアの除害処理装置10全体のイニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。
【0016】
加えて、処理対象ガスFの発生源の稼働条件によっては、アンモニアを含む処理対象ガスFに、さらに水素が含まれている場合と含まれていない場合とがあるが(例えば、GaN系のLED製造装置であれば、水素ガスが半導体の結晶成長場を還元雰囲気にするために使用されているが、結晶成長場の状態によっては水素ガスがほぼゼロに絞られることもあり得る。)、水素含有の有無に拘わらず連続的に処理対象ガスFを処理したいという要望が存在する。
【0017】
処理対象ガスF中の水素は、分解炉12の内部で燃焼し、当該内部の温度を高める役割を有していることから、処理対象ガスFに水素が含まれている場合、分解炉12の内部温度は基準温度(アンモニアの熱分解温度(約950℃)よりもやや高めに設定された温度)以上となって当該処理対象ガスFに含まれているアンモニアが完全に熱分解され、窒素酸化物が発生する(熱分解されたアンモニアに対して約1%[モル比]の窒素酸化物が発生する。)。したがって、処理対象ガスFに水素が含まれている場合(=分解炉12の内部温度が基準温度以上になった場合)、バイパス路開度調整バルブ100を開け、上述のように、処理対象ガス導入路16から分岐された処理対象ガスFを、分解炉12から排出された(窒素酸化物を含む)処理対象ガスFに混合させる必要がある。
【0018】
一方、処理対象ガスFに水素が含まれない場合、水素の燃焼熱が発生しないので分解炉12の内部温度は基準温度よりも低くなり、処理対象ガスF中のアンモニアの熱分解はやや不完全な状態となって窒素酸化物の発生量が基準温度よりも高い場合に比べて減少する。
【0019】
このような場合に処理対象ガスFのバイパスを継続すると、分解炉12で発生した窒素酸化物の量に比べて、バイパスされた処理対象ガスF中のアンモニアの量の方が多くなってしまい、分解しきれなかったアンモニアが排出されてしまうおそれがある。
【0020】
そこで、本発明では、バイパス路20にバイパス路開度調整バルブ100を設け、処理対象ガスFに水素が含まれない場合(水素の有無については、処理対象ガスFの発生源から受け入れる水素有無信号HSや、処理対象ガスF中の水素流量によって判断することが一例として考えられる)、あるいは分解炉12の内部温度が基準温度よりも低くなった場合に、バイパス路開度調整バルブ100の開度を絞ってバイパス路20を通流する処理対象ガスFの量を減少させることにより、分解しきれなかったアンモニアが排出されるおそれを低減し、水素含有の有無に拘わらず処理対象ガスFを連続的に処理することを可能にした。
【0021】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したアンモニアの除害処理装置10に関し、
「前記バイパス路20の他端が接続された中央部、および、両端部において前記中央部に比べて小径に形成された縮径部44a、44bを有しており、一方の前記縮径部44bが前記分解炉12の下流側に接続されているとともに、他方の前記縮径部44aが前記脱硝器14に接続されたバイパスガス混合器44と、
前記分解炉12と前記バイパスガス混合器44との間に冷却空気CAを送給して、前記分解炉12から排出された処理対象ガスFを前記脱硝触媒38による窒素酸化物の分解に適した温度に低下させる冷却空気送給装置80とをさらに備えている」ことを特徴とする。
【0022】
分解炉12から排出された直後の処理対象ガスFは高温になっており、高温の処理対象ガスFに対して、バイパスさせた処理対象ガスFを混合させると、バイパスさせた処理対象ガスF中のアンモニアが高温分解して脱硝器14で窒素酸化物を分解できなくなってしまい、制御が不安定になるおそれがある。
【0023】
しかしながら、本発明では、分解炉12から排出された処理対象ガスFを前記脱硝触媒38による窒素酸化物の分解に適した温度に低下させるための冷却空気CAを送給する冷却空気送給装置80が設けられており、当該冷却空気CAによって冷却された分解炉12からの処理対象ガスFに対して、バイパスガス混合器44においてバイパスさせた処理対象ガスFが混合されるようになっているので、アンモニアが高温分解してしまうのを回避し、制御が不安定になるおそれをなくすことができる。
【0024】
加えて、本発明のバイパスガス混合器44には、その両端部に縮径部44a、44bが形成されていることから、冷却空気CAが混合された分解炉12からの処理対象ガスFがバイパスガス混合器44内に導入される際、および、バイパスされた処理対象ガスFがさらに混合された上でバイパスガス混合器44から排出される際の両方において、流路が拡大・収縮することによって発生する乱流により、混同の度合いをより高めることができる。
【0025】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載したアンモニアの除害処理装置10に関し、
「前記処理対象ガス導入路16から分岐して前記バイパス路20に処理対象ガスFを流す場合において、その処理対象ガスFの割合は、前記脱硝触媒38に導入される処理対象ガスFにおいて窒素酸化物に対するアンモニアのモル比が1.2以上となるように設定されており、
前記脱硝触媒38の後流側には、処理対象ガスF中のアンモニアを分解するアンモニア触媒40が設けられている」ことを特徴とする。
【0026】
バイパス路20に処理対象ガスFを流す場合、理論上(=反応効率100%)、脱硝器14に導入されるアンモニアの量を窒素酸化物の量と同じ(すなわちモル比=1.0)にすれば、脱硝触媒38から排出される処理対象ガスF中のアンモニアおよび窒素酸化物はゼロになる。
【0027】
しかしながら、実際の装置で反応効率が100%ということはありえないことから、上記モル比を1.0に設定すると、反応しなかったアンモニアおよび窒素酸化物の両方が脱硝触媒38から排出されてしまい、脱硝触媒38の後流側に「アンモニアを除去する装置」および「窒素酸化物を除去する装置」の両方を設けなければならなくなって不合理である。
【0028】
そこで、本発明の除害処理装置10では、窒素酸化物に対するアンモニアのモル比を「1.2以上」に設定することにより、脱硝触媒38において窒素酸化物を確実に分解するとともに、窒素酸化物と未反応のままで脱硝触媒38から排出されたアンモニアを当該脱硝触媒38の後流側に設けられたアンモニア触媒40で分解して、アンモニアの除害処理装置10から排出される処理対象ガス中の窒素酸化物やアンモニアの量を極小化するようにしている。
【0029】
これにより、脱硝触媒38の後流側に窒素酸化物を除去する装置を設ける必要がなくなり、アンモニアの除害処理装置10のイニシャルコストおよびランニングコストを確実に低減することができる。
【0030】
なお、窒素酸化物に対するアンモニアのモル比は、1.2に近い方が、脱硝触媒38から排出されるアンモニアの量が少なくなってアンモニア触媒40の装置容量を小さくすることができる点で好適である。
【0031】
また、アンモニア触媒40は、脱硝器14の内部における脱硝触媒38の後流側に配置してもよいし、脱硝器14の後流側において、脱硝器14とは別体のアンモニア分解器を設け、その内にアンモニア触媒40を配置してもよい。
【0032】
請求項4に記載した発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載したアンモニアの除害処理装置10に関し、
「ケーシング60と、前記ケーシング60の内部を2つの空間58a、58bに区分けするとともに、両空間58a、58bを互いに連通させる複数の貫通孔70が形成されたセパレータ62とを有する分配器22をさらに備えており、
前記両空間58a、58b、および前記貫通孔70が前記処理対象ガス導入路16の一部となっており、
前記バイパス路20の一端が前記貫通孔70のいずれか1つに接続されている」ことを特徴とする。
【0033】
この分配器22によれば、セパレータ62によって区分けされた、ケーシング60内の両空間58a、58bおよびこれらを互いに連通させる複数の貫通孔70が処理対象ガス導入路16の一部になっていることから、上流から流れてきた処理対象ガスFは、一方の空間58aに入った後で各貫通孔70にほぼ均等に分配され、それぞれ均等な流速で通過する(貫通孔70の数が多ければ多いほど、各貫通孔70を通流する処理対象ガスFの流量はより均一になる。)。
【0034】
このとき、バイパス路20の一端が貫通孔70のいずれか1つに接続されていることから、当該バイパス路20には、上流から流れてきた処理対象ガスFの全流量を貫通孔70の数で除した分の処理対象ガスFが分岐されることになり(例えば、貫通孔70の数が20であれば、バイパス路20に分岐される処理対象ガスFの割合は、1/20=0.05=5%となる。)、この割合は、処理対象ガスFの流量が極端に少なくならない限り、流量の変動に拘わらずほぼ一定になる。
【0035】
したがって、本発明によれば、処理対象ガスFの流量変動に拘わらず、予め設定した割合(=貫通孔70の数)の処理対象ガスFをバイパス路20に分岐することによって、除害処理を安定して継続できるアンモニアの除害処理装置10を提供することができる。
【0036】
請求項5に記載した発明は、請求項1におけるアンモニアの除害処理装置10を用いて行うアンモニアの除害処理方法に関し、
「処理対象ガス導入路16に導入された、アンモニアを含む処理対象ガスFの内、所定の割合の処理対象ガスFをバイパス路20に分岐させるとともに、残部の処理対象ガスFを、当該処理対象ガスFに含まれるアンモニアの全部あるいは一部を酸素雰囲気下で
触媒を用いずに熱分解して窒素酸化物を生成する分解炉12に導入し、
前記分解炉12から排出された処理対象ガスFと、前記バイパス路20を通って前記分解炉12をバイパスした処理対象ガスFとを混合した後、バイパスされた処理対象ガスF中のアンモニア、および前記分解炉12から排出された処理対象ガスF中にアンモニアが残留する場合における当該アンモニアを還元剤として窒素酸化物を分解する脱硝触媒38に供給するアンモニアの除害処理方法であって、
処理対象ガスFに水素が含まれている場
合には、前記バイパス路20へ分岐する処理対象ガスFの量を
増加させ、
逆に、処理対象ガスFに水素が含まれない場
合には、前記バイパス路20へ分岐する処理対象ガスFの量を
減少させる」ことを特徴とする。
【0037】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載したアンモニアの除害処理方法に関し、
「前記分解炉12から排出された処理対象ガスFに対し、バイパスした処理対象ガスFを混合させる前に、前記分解炉12から排出された処理対象ガスFを前記脱硝触媒38による窒素酸化物の分解に適した温度に低下させる冷却空気CAを送給し、
中央部に比べて小径に形成された縮径部44a、44bを有するバイパスガス混合器44においてバイパスした処理対象ガスFを混合させる」ことを特徴とする。
【0038】
また、請求項7に記載した発明は、請求項5または6に記載したアンモニアの除害処理方法に関し、
「前記処理対象ガス導入路16から分岐して前記バイパス路20に流す処理対象ガスFの割合は、前記脱硝触媒38に導入される処理対象ガスFにおいて窒素酸化物に対するアンモニアのモル比が1.2以上となるように設定されており、
前記脱硝触媒38に処理対象ガスFを供給した後、前記脱硝触媒38から排出された処理対象ガスFを、当該処理対象ガスF中のアンモニアを分解するアンモニア触媒40に供給する」ことを特徴とする。