(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、定常領域を含むモノクローナル抗体または該抗体フラグメントであって、該定常領域内の1以上のアミノ酸残基がCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント(以下、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントともいう)に関する。
【0027】
抗体は、約150kDaからなるヘテロダイマーであり、重鎖(以下、H鎖とも称す)および軽鎖(以下、L鎖とも称す)と呼ばれるポリペプチドより構成される。また、H鎖はN末端側より可変領域(以下、VH)、定常領域(CH)、L鎖はN末端側より可変領域(以下、VLとも称す)、定常領域(CL)により、それぞれ構成される。CHはさらに、N末端側よりCH1、ヒンジ、CH2、CH3の各ドメインより構成される。また、CH2とCH3を併せてFc領域という。
【0028】
抗体のクラスとしては、例えば、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンA(以下、IgAとも称す)、イムノグロブリンE(以下、IgEとも称す)、およびイムノグロブリンM(以下、IgMとも称す)が挙げられる。本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントとしては、IgGであることが好ましい。更にIgGのサブクラスとしては、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が挙げられる。
【0029】
本発明のモノクローナル抗体の定常領域の由来は、特に限定されるものではないが、哺乳動物由来であることが好ましい。哺乳動物としては、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、またはラビット由来の抗体などが挙げられる。本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの定常領域の由来としては、ヒトであることが好ましい。
【0030】
抗体の定常領域は、Kabatらによる番号付け(Kabat numbering)[Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242 (1991)]により、N末端からのアミノ酸残基の番号で特定することが出来る。
【0031】
例えば、ヒトIgG1のCLはKabat numberingにおいて108〜211番のアミノ酸配列、CH1はEU numberingにおいて118〜215番のアミノ酸配列、ヒンジドメインはEU numbering[Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242 (1991)]において216〜230番のアミノ酸配列、CH2はEU numberingにおいて231〜340番のアミノ酸配列、CH3はEU numberingにおいて341〜447番のアミノ酸配列とそれぞれ特定される。
【0032】
〔Cys残基への置換〕
本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、天然に存在する抗体(以下、WTと記載する)の定常領域における1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換したものである。
【0033】
定常領域における1以上のアミノ酸残基のCys残基への置換は、公知の部位特異的変異導入法[例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)]を用いることによって出来る。
【0034】
例えば、QuikChange II Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)等を用い、プラスミドの形状にて、WTの定常領域における1以上のアミノ酸を直接Cys残基へ置換して本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを作製することが可能である。
【0035】
別の作製方法として、WTの定常領域における1以上のアミノ酸を予めCys残基へ置換した合成DNA配列を設計し、これを適当な制限酵素で切断して、抗体または抗体フラグメントの発現プラスミドに挿入することでも定常領域における1以上のアミノ酸残基がCys残基に置換された本発明のモノクローナル抗体または抗体フラグメントを作製することが可能である。
【0036】
本発明におけるCys残基に置換されるアミノ酸残基は、抗体の定常領域に位置するアミノ酸残基であり、CLおよびCHの少なくとも一方に位置するアミノ酸残基であることが好ましく、CH1に位置するアミノ酸残基であることがより好ましい。
【0037】
本発明におけるCys残基に置換されるアミノ酸残基の数は特に限定されないが、1個〜数十個であることが好ましく、例えば、1〜20個であることがより好ましい。また、1個〜数個であることがより好ましく、例えば、1〜6個のアミノ酸であることが更に好ましい。
【0038】
別の観点では、Cys残基に置換されるWTの定常領域におけるアミノ酸残基は、溶媒露出面積の割合が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。溶媒露出面積の割合が30%以下のアミノ酸残基をCys残基で置換することにより、該Cys残基の構造的露出が低度であるため、導入Cys残基間でのジスルフィド結合形成、およびその他の酸化反応が生じにくいことが期待される。
【0039】
溶媒露出面積は、Protein data bank(PDB)に登録されている抗体または抗体フラグメントの結晶構造解析データファイル(以下PDBファイルと記載する)を利用して、DSSPプログラム[Biopolymers 22, 2577-2637 (1983)]により容易に計算することが出来る。
【0040】
目的のアミノ酸残基の溶媒露出面積の割合とは、上記で算出した抗体構造上での溶媒露出面積を、アラニン-X-アラニン(Xは目的のアミノ酸残基を表す)の溶媒露出面積で除することで算出することが出来る。なお、1種類の蛋白質に関して複数のPDBファイルが存在することがあるが、本発明においてはそのいずれかを用いることが出来る。
【0041】
本発明において、モノクローナル抗体のクラスがヒトIgGであるとき、本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントとしては、具体的には、WTの定常領域内の下記の(1)〜(6)から選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸をシステイン残基に置換した定常領域を含むモノクローナル抗体または該抗体フラグメントが好ましい。
(1)Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの軽鎖領域の124番目のアミノ酸
(2)Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの軽鎖領域の198番目のアミノ酸
(3)Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの軽鎖領域の201番目のアミノ酸
(4)EU numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の140番目のアミノ酸(Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の138番目のアミノ酸)
(5)EU numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の147番目のアミノ酸(Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の145番目のアミノ酸)
(6)EU numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の183番目のアミノ酸(Kabat numberingにおいて、ヒトIgGの重鎖領域の188番目のアミノ酸)
【0042】
ヒトIgGにおいて、WTの定常領域内の前記の(1)〜(6)から選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸をシステイン残基に置換した定常領域を含むことにより、可変領域のアミノ酸配列に依存することなく、高効率で化学修飾反応により修飾することができるとともに、WTと同等以上の抗原活性を保持することができる。
【0043】
すなわち、WTの定常領域内の前記の(1)〜(6)から選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸をシステイン残基に置換した定常領域を含むことにより、いかなるアミノ酸配列の可変領域を組み合わせて抗体または抗体フラグメントを得たとしても、得られる抗体または抗体フラグメントは、高効率で化学修飾反応により修飾することができる。
【0044】
また、置換されたCys残基は遊離した状態で安定であり、PEG等の修飾における前処理が不要であり、非常に有用である。さらに、該Cys残基は遊離した状態で安定であるため、分子間でのジスルフィド結合の形成およびS-グルタチオン化等の影響を受けにくい、という利点を有する。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、Cys残基へ置換する前のWTと同等以上の抗原結合活性を保持していることが好ましい。抗原結合活性は、例えばバインディングアッセイ、蛍光抗体法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]またはBiacoreシステム等を用いた表面プラズモン共鳴法等の方法で測定することが出来る。
【0046】
本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントとしては、例えば、腫瘍関連抗原を認識するモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識するモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、循環器疾患に関連する抗原を認識するモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、自己免疫疾患に関連する抗原を認識するモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、およびウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識するモノクローナル抗体または該抗体フラグメント等が挙げられる。
【0047】
腫瘍関連抗原としては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD9、CD10、CD13、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD30、CD32、CD33、CD38、CD40、CD40 ligand (CD40L)、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD56、CD59、CD63、CD64、CD66b、CD69、CD70、CD74、CD80、CD89、CD95、CD98、CD105、CD134、CD137、CD138、CD147、CD158、CD160、CD162、CD164、CD200、CD227、adrenomedullin、angiopoietin related protein 4(ARP4)、aurora、B7-H1、B7-DC、integlin、bone marrow stromal antigen 2(BST2)、CA125、CA19.9、carbonic anhydrase 9 (CA9)、cadherin、cc-chemokine receptor(CCR)4、CCR7、carcinoembryonic antigen (CEA)、cysteine-rich fibroblast growth factor receptor-1(CFR-1)、c-Met、c-Myc、collagen、CTA、connective tissue growth factor(CTGF)、CTLA-4、cytokeratin-18、DF3、E-catherin、epidermal growth facter receptor(EGFR)、EGFRvIII、EGFR2(HER2)、EGFR3(HER3)、EGFR4(HER4)、endoglin、epithelial cell adhesion molecule(EpCAM)、endothelial protein C receptor(EPCR)、ephrin、ephrin receptor(Eph)、EphA2、endotheliase-2(ET2)、FAM3D、fibroblast activating protein(FAP)、Fc receptor homolog 1(FcRH1)、ferritin、fibroblast growth factor-8(FGF-8)、FGF8 receptor、basic FGF (bFGF)、bFGF receptor、FGF receptor(FGFR)3、FGFR4、FLT1、FLT3、folate receptor、Frizzled homologue 10(FZD10)、frizzled receptor 4(FZD-4)、G250、G-CSF receptor、ganglioside (例えば、GD2、GD3、GM2およびGM3等)、globo H、gp75、gp88、GPR-9-6、heparanase I、hepatocyte growth factor(HGF)、HGF receptor、HLA antigen(例えば、HLA-DR等)、HM1.24、human milk fat globule(HMFG)、hRS7、heat shock protein 90(hsp90)、idiotype epitope、insulin-like growth factor(IGF)、IGF receptor(IGFR)、interleukin(IL-6、IL-15等)、interleukin receptor(例えば、IL-6RおよびIL-15R等)、integrin、immune receptor translocation associated-4(IRTA-4)、kallikrein 1、KDR、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KS1/4、lamp-1、lamp-2、laminin-5、Lewis y、sialyl Lewis x、lymphotoxin-beta receptor(LTBR)、LUNX、melanoma-associated chondroitin sulfate proteoglycan(MCSP)、mesothelin、MICA、Mullerian inhibiting substance type II receptor(MISIIR)、mucin、neural cell adhesion molecule(NCAM)、Necl-5、Notch1、osteopontin、platelet-derived growth factor(PDGF)、PDGF receptor、platelet factor-4(PF-4)、phosphatidylserine、Prostate Specific Antigen(PSA)、prostate stem cell antigen(PSCA)、prostate specific membrane antigen(PSMA)、Parathyroid hormone related protein/peptide(PTHrP)、receptor activator of NF-kappaB ligand(RANKL)、receptor for hyaluronic acid mediated motility(RHAMM)、ROBO1、SART3、semaphorin 4B(SEMA4B)、secretory leukocyte protease inhibitor(SLPI)、SM5-1、sphingosine-1-phosphate、tumor-associated glycoprotein-72(TAG-72)、transferrin receptor(TfR)、TGF-beta、Thy-1、Tie-1、Tie2 receptor、T cell immunoglobulin domain and mucin domain 1(TIM-1)、human tissue factor(hTF)、Tn antigen、tumor necrosis factor(TNF)、Thomsen-Friedenreich antigen(TF antigen)、TNF receptor、tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)、TRAIL receptor(例えば、DR4およびDR5等)、system ASC amino acid transporter 2(ASCT2)、trkC、TROP-2、TWEAK receptor Fn14、type IV collagenase、urokinase receptor、vascular endothelial growth factor (VEGF)、VEGF receptor(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3等)、vimentinおよびVLA-4等が挙げられる。
【0048】
腫瘍関連抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GD2抗体[Anticancer Res., 13, 331 (1993)]、抗GD3抗体[Cancer Immunol. Immunother., 36, 260 (1993)]、抗GM2抗体[Cancer Res., 54, 1511 (1994)]、抗HER2抗体[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 4285 (1992)、US5725856]、抗CD52抗体[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 4285 (1992)]、抗MAGE抗体[British J. Cancer, 83, 493 (2000)]、抗HM1.24抗体[Molecular Immunol., 36, 387 (1999)]、抗副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)抗体[Cancer, 88, 2909 (2000)]、抗bFGF抗体、抗FGF-8抗体[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 9911 (1989)]、抗bFGFR抗体、抗FGF-8R抗体[J. Biol. Chem., 265, 16455 (1990)]、抗IGF抗体[J. Neurosci. Res., 40, 647 (1995)]、抗IGF-IR抗体[J. Neurosci. Res., 40, 647 (1995)]、抗PSMA抗体[J. Urology, 160, 2396 (1998)]、抗VEGF抗体[Cancer Res., 57, 4593 (1997)]、抗VEGFR抗体[Oncogene, 19, 2138 (2000)、国際公開第96/30046号]、抗CD20抗体[Curr. Opin. Oncol., 10, 548 (1998)、米国特許第5736137号明細書]、抗CD10抗体、抗EGFR抗体(国際公開第96/402010号)、抗Apo-2R抗体(国際公開第98/51793号)、抗ASCT2抗体(国際公開第2010/008075号)、抗CEA抗体[Cancer Res., 55(23 suppl): 5935s-5945s, (1995)]、抗CD38抗体、抗CD33抗体、抗CD22抗体、抗EpCAM抗体および抗A33抗体等が挙げられる。
【0049】
アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗インターロイキン6抗体[Immunol. Rev., 127, 5 (1992)]、抗インターロイキン6受容体抗体[Molecular Immunol., 31, 371 (1994)]、抗インターロイキン5抗体[Immunol. Rev., 127, 5(1992)]、抗インターロイキン5受容体抗体、抗インターロイキン4抗体[Cytokine, 3, 562 (1991)]、抗インターロイキン4受容体抗体[J. Immunol. Methods, 217, 41 (1998)]、抗腫瘍壊死因子抗体[Hybridoma, 13, 183 (1994)]、抗腫瘍壊死因子受容体抗体[Molecular Pharmacol., 58, 237 (2000)]、抗CCR4抗体[Nature, 400, 776, (1999)]、抗ケモカイン抗体(Peri et al., J. Immunol.Meth., 174, 249, 1994)および抗ケモカイン受容体抗体[J. Exp. Med., 186, 1373 (1997)]等が挙げられる。
【0050】
循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GPIIb/IIIa抗体[J. Immunol., 152, 2968 (1994)]、抗血小板由来増殖因子抗体[Science, 253, 1129 (1991)]、抗血小板由来増殖因子受容体抗体[J. Biol. Chem., 272, 17400 (1997)]、抗血液凝固因子抗体[Circulation, 101, 1158 (2000)] 、抗IgE抗体、抗α
Vβ
3抗体およびα
4β
7抗体等が挙げられる。
【0051】
ウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗gp120抗体[Structure, 8, 385 (2000)]、抗CD4抗体[J. Rheumatology, 25, 2065 (1998)]、抗CCR5抗体および抗ベロ毒素抗体[J. Clin. Microbiol., 37, 396 (1999)]等が挙げられる。
【0052】
本発明におけるモノクローナル抗体としては、例えば、抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により生産される、WTの定常領域において1以上のアミノ酸残基残基をCys残基に置換した遺伝子組換え抗体等が挙げられる。該遺伝子組換え抗体としては、遺伝子組換え技術により製造される抗体が挙げられる。具体的には、例えば、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体等が挙げられる。
【0053】
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHとヒト抗体のCLおよびCHから構成される抗体をいう。ヒト以外の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびラビット等のいかなる種も用いることが出来る。
【0054】
ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VLおよびVHをコードするcDNAを取得し、適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換させたヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することが出来る。
【0055】
また、ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VLおよびVHをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、さらに適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することも出来る。
【0056】
ヒト型キメラ抗体に用いるWTのCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3およびhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることが出来る。
【0057】
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVLおよびVHの適切な位置に移植した抗体をいい、ヒト型CDR移植抗体、再構成抗体(reshaped-anyibody)等ともいう。
【0058】
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVLおよびVHのフレームワーク(FR)に移植した可変領域(V領域)をコードするcDNAを構築し、適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換させたヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することが出来る。
【0059】
また、ヒト化抗体は、ヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVLおよびVHのFRに移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、さらに適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することも出来る。
【0060】
ヒト化抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列は、ヒト抗体由来のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることが出来る。例えば、PDB等のデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはSequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)などに記載の、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列等が用いられる。
【0061】
ヒト化抗体に用いるWTのCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。
【0062】
また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることが出来る。
【0063】
本発明におけるヒト抗体は、ヒト体内に天然に存在する抗体、または遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等のWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換した抗体をいう。
【0064】
ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルス等を感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物より該抗体を精製することが出来る。
【0065】
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv等の抗体フラグメントをファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、固相化した抗原に対する結合活性を指標にして、抗原結合活性を有する抗体フラグメントを発現しているファージを回収することが出来る。該抗体フラグメントより、2本の完全なH鎖および二本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へ変換することが出来る。
【0066】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することが出来る[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 722 (2000)]。
【0067】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させることにより作製出来る。
【0068】
また、ヒト抗体産生ハイブリドーマより、VLおよびVHをコードするcDNAを取得し、適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換させたヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することも出来る。
【0069】
あるいは、ヒト抗体産生ハイブリドーマより、VLおよびVHをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCLおよびCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、さらに適宜上述の方法等によりWTの定常領域において1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換してヒト抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することも出来る。
【0070】
ヒト抗体に用いるWTのCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。
【0071】
また、ヒト抗体に用いるWTのCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることが出来る。
【0072】
抗体フラグメントは抗体の一部分より形成される。本発明の抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)
2等の定常領域を有する抗体フラグメントが挙げられる。
【0073】
更にラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコ等のラクダ科種の動物等に由来する軽鎖を欠く抗体、複数のエピトープを認識する抗体フラグメントを結合させた多重特異的抗体フラグメント、または抗原結合部位および定常領域を含む単鎖ペプチド、ヘテロダイマーまたはホモダイマー等の定常領域を含む抗体フラグメント[Trends Biotechnol., 21, 484 (2003)、国際公開第2004/058820号]等の定常領域を有する抗体フラグメントも本発明の抗体フラグメントに含まれる。
【0074】
Fabは、抗体のパパイン消化により取得される断片のうち、H鎖のN末端側のCH1までとL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。本発明のFabは、モノクローナル抗体をパパインで処理して得ることが出来る。
【0075】
また別の態様として、本発明におけるFabは、抗体分子由来の全軽鎖領域とVHとCH1からなる領域をコードするcDNAを構築して、原核細胞用発現ベクターまたは真核細胞発現ベクターにそれぞれ導入することで、Fab発現ベクターを構築し、原核細胞または真核細胞に導入することにより発現させ、製造することが出来る。
【0076】
F(ab’)
2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を蛋白質分解酵素であるペプシンで処理して得られる断片のうち、2つのFabがヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。
【0077】
本発明のF(ab’)
2は、モノクローナル抗体をペプシンで処理して得ることが出来る。また、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、製造することも出来る。さらに、本発明のFab’を適当な条件で酸化することで、F(ab’)
2を製造することが出来る。
【0078】
Fab’は、上記F(ab’)
2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。本発明のFab’は、本発明のF(ab’)
2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることが出来る。
【0079】
また別の態様として、本発明におけるFab’は、抗体分子由来の全軽鎖領域とVH、CH1、ヒンジの一部からなる領域をコードするcDNAを構築して、原核細胞発現ベクターまたは真核細胞発現ベクターにそれぞれ導入することで、Fab’発現ベクターを構築し、原核細胞または真核細胞に導入することにより発現させ、製造することが出来る。
【0080】
〔化学修飾〕
本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、定常領域内の1以上のアミノ酸がCys残基に置換され、少なくとも1つの当該置換されたCys残基が化学修飾された誘導体(以下、モノクローナル抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体ともいう)であることが好ましい。
【0081】
前記化学修飾は、非還元条件下の化学修飾反応による化学修飾であることが好ましい。また、前記置換されたCys残基の40%以上が化学修飾されていることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上が化学修飾されていることが好ましい。
【0082】
前記非還元条件下の化学修飾反応における化学修飾は、本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基のチオール基と反応性を有する分子との結合であれば、いかなる化学修飾でもよい。
【0083】
前記Cys残基のチオール基と反応性を有する分子は、モノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基のチオール基と反応性を有するものであれば、いかなる分子でもよい。前記Cys残基のチオール基と反応性を有する分子は、本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基のチオール基と反応性を有するチオール反応性官能基を有することが好ましい。
【0084】
前記チオール反応性官能基としては、抗体分子のCys残基のチオール基と反応性を有するものであれば、いかなる分子でもよい。チオール反応性官能基としては、例えば、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、塩化スルホニルおよび2,6-ジクロロトリアジニル等が挙げられる。
【0085】
(親水性高分子または両親媒性高分子)
モノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基のチオール基と反応性を有する分子としては、親水性高分子または両親媒性高分子を含む分子が好ましい。親水性高分子または両親媒性高分子としては、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリオールまたは多糖を含む分子等が挙げられる。
【0086】
ポリオキシアルキレンとしては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるPEG、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンエチレングリコール等が挙げられる。
【0087】
ポリオールとしては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるポリグリセロール等が挙げられる。多糖を含む分子としては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるアミロース、デキストラン、プルランまたはグリコーゲン等のホモまたはヘテロ多糖類等が挙げられる。
【0088】
更に、親水性高分子または両親媒性高分子としては、例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボシキメチルスターチ、アルカリ金属カルボキシメチルセルロース、アルカリ金属セルロース硫酸塩、セルロースラフト重合体、架橋ゼラチン、セルロースアセテートフタレート、デンプン-アクリル酸グラフト重合体、無水フタル酸変性ゼラチン、コハク酸変性ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸塩[例えばポリ(メタ)アクリル酸ソーダ]、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ビニルピロリドン-スチレン共重合体、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセテート-(メタ)アクリル酸(塩)共重合体、ポリビニルアセテート-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、(メタ)アクリルアミド-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸カリウムおよびポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸(塩)重合体、ポリ(メタ)アクリロニトリルのケン化物、(メタ)アクリル酸(塩)/ビニルアルコール共重合体、デンプン/(メタ)アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン/(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、セルロ-ス/(メタ)アクリル酸(塩)グラフト共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドおよびその部分加水分解物、ポリビニルアルコール、デンプン-(メタ)アクリル酸(塩)グラフト共重合体中和物、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸メチル共重合体ケン化物のナトリウム塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール-マレイン酸エステル系共重合体、(メタ)アクリルアミド-(メタ)アクリル酸(塩)共重合体、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体、ポリアルキレンオキシド、ビニルエステル-エチレン系不飽和カルボン酸共重合体、並びにポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルアルコール/無水マレイン酸ナトリウム共重合体等の高分子が挙げられる。
【0089】
親水性高分子または両親媒性高分子を含む分子の分子量は特に限定されないが、500Da以上であることが好ましく、例えば500Da〜100kDaであることがより好ましい。
【0090】
本発明において、化学修飾反応における反応性は、例えば、J. Biochem., 115, 814 (1994)に記載の算出方法に準じて得ることが出来る。反応性の算出方法としては、例えば、親水性高分子または両親媒性高分子との反応前後のサンプルを非還元SDS-PAGEにて展開し、GS-800 Calibrated Densitometer(Bio-Rad社製)にて算出する方法、反応後のサンプルをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、置換されたCys残基が化学修飾されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントと、未反応のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントのピーク面積から算出する方法等が挙げられる。
【0091】
前記親水性高分子または両親媒性高分子を含む分子は、前記親水性高分子または両親媒性高分子を含む修飾基であることが好ましい。該修飾基は、親水性高分子若しくは両親媒性高分子または機能性分子を含む修飾基であることがより好ましい。さらに、該修飾基は、親水性高分子または両親媒性高分子、および後述する機能性分子の両方を含む修飾基であってもよい。
【0092】
(機能性分子)
モノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基のチオール基と反応性を有する分子としては、機能性分子を含む修飾基が好ましい。機能性分子としては、例えば、薬物、生理活性ペプチド、生理活性タンパク質、核酸、放射性標識化合物、糖鎖、脂質または蛍光化合物等が挙げられる。
【0093】
薬物としては、例えば、抗腫瘍剤、抗生物質および抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0094】
抗腫瘍剤としては、例えば、キナーゼ阻害、細胞周期阻害、DNA結合、DNA切断、DNAのアルキル化、チューブリン結合阻害、または有糸分裂阻害等を含む機構により、細胞傷害活性や細胞増殖抑制作用を有するもの等が挙げられる。
【0095】
抗腫瘍剤としては、例えば、ADCに使用されている抗腫瘍剤カリケアマイシン、ドラスタチン、マイタンシノイドおよびデュオカルマイシン並びにそれらの誘導体[Bioconjugte Chem., 21, 5(2010)];アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(ドキシル)、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(ダウノゾーム)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-11、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、プレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、アムサクリン、オール-トランスレチノイン酸、サリドマイド、ベキサロテン(ターグレチン)、デキサメタゾン、アナストロゾール(アリミデックス)およびロイプリン並びにそれらの誘導体等が挙げられる。
【0096】
抗生物質としては、例えば、ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系およびテトラサイクリン系等の化合物並びにそれらの誘導体等が挙げられる。例えば、アンピシリン、セファレキシン、セファクロル、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、アンホテリシン、ペニシリンおよびセファゾリン並びにそれらの誘導体等が挙げられる。
【0097】
抗ウイルス剤としては、例えば、ガンシクロビルおよびアシクロビル等並びにそれらの誘導体等が挙げられる。
【0098】
前記誘導体としては、例えば、任意の官能基が欠失、置換、挿入、または付加した修飾体、放射性同位元素、薬剤および糖等による修飾体等が挙げられ、未修飾の低分子化合物が有する活性を同様に有していることが好ましい。
【0099】
生理活性ペプチドまたは生理活性タンパク質としては、例えば、タンパク質分解酵素;アミノ酸分解酵素;例えばヒドラーゼ、リア―ゼおよびイソメラーゼ等の酵素;細菌毒素および植物毒素等の毒素;細胞膜傷害活性を有する抗菌ペプチド;細胞膜結合性または細胞膜透過性を有するペプチド;それらの誘導体等が挙げられる。
【0100】
例えば、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、スーパーオキサイドディスムターゼ、ラクトフェリン、ストレプトキナーゼ、プラスミン、アデノシンデアミナーゼ、インターロイキン-1〜24、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-ω、インターフェロン-τ、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子、血小板増加因子、クローソ蛋白質、レプチン、繊維芽細胞増殖因子1〜19、ミッドカイン、カルシトニン、表皮成長因子、グルカゴン、インスリン、インスリン様成長因子1、オステオジェニックプロテイン1、幹細胞増殖因子、アミリン、パラサイロイドホルモン、プラスミノーゲン活性化因子類、血管内皮細胞成長因子、形質転換成長因子類、グルカゴン様ペプチド類、成長ホルモン、ナトリウム利尿ペプチド類、プラスミノーゲン、アンジオポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、ネオカルチノスタチン、肝細胞成長因子、リシン、アフラトキシン、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素およびコレラ毒素並びにそれらの溶解性レセプター等が挙げられる。
【0101】
細胞膜透過性を有するペプチドとしては、例えば、塩基性ペプチド、両親媒性ペプチドおよび疎水性ペプチドが挙げられる。また別の態様として、疎水性の細胞膜貫通配列を有するペプチドも含まれる。細胞膜透過性ペプチドの例を表1に示す。
【0103】
ペプチドの別の態様としては、例えば、エンドソームエスケープ能を有するペプチドが挙げられる。エンドソームエスケープに関与するペプチドは、ウイルスやバクテリアから数多く見出されており、膜融合、膜構造の崩壊、会合による膜状でのポアの形成等のメカニズムにより、エンドソーム膜からのエスケープを可能とする[Trens Biotech., 26, 267 (2008)]。エンドソームエスケープペプチドの例を表2に示す。
【0105】
核酸としては、ヌクレオチド又は該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなる分子であってもよい。
【0106】
ヌクレオチドとしては、例えば、天然由来のDNAおよびRNAが挙げられる。また、該ヌクレオチドと同様の機能を有する分子が重合した分子としては、例えば、天然由来又は人工的に合成された各種ヌクレオチド誘導体が挙げられる。該ヌクレオチド誘導体としては、例えば、RNAi分子(例えば、siRNA、microRNAおよびshRNA)、アプタマー、ペプチド核酸および核酸の少なくとも一つのヌクレオチドが該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子で置換されたヌクレオチド重合体等が挙げられる。
【0107】
ヌクレオチドと同等の機能を有する分子としては、例えば、ヌクレオチド誘導体等が挙げられる。ヌクレオチド誘導体としては、ヌクレオチドに修飾を施した分子であればいかなる分子であってもよい。例えば、RNAまたはDNAと比較して、ヌクレアーゼ耐性の向上もしくは安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるため、細胞透過性を上げるため、または可視化させるために、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドに修飾を施した分子等が好ましい。
【0108】
ヌクレオチド誘導体としては、例えば、糖部修飾ヌクレオチド、リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド、塩基修飾ヌクレオチド、並びに糖部、リン酸ジエステル結合および塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド等が挙げられる。
【0109】
糖部修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部または全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよいが、2’-修飾ヌクレオチドが好ましい。
【0110】
2’-修飾ヌクレオチドとしては、例えば、リボースの2’-OH基がH、OR
3、R
3、R
3’OR
3、SH、SR
3、NH
2、NHR
3、NR
32、N
3、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群(R
3はアルキルまたはアリールを表し、好ましくは炭素数1〜6のアルキルであり、R
3’はアルキレンを表し、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンである)から選択される置換基で置換された2’-修飾ヌクレオチドが挙げられ、中でも2’-OH基がF又はメトキシ基が好ましい。
【0111】
また、2’-修飾ヌクレオチドとしては、例えば、2-(methoxy)ethoxy基、3-aminopropoxy基、2-[(N,N-dimethylamino)oxy]ethoxy基、3-(N,N-dimethylamino)propoxy基、2-[2-(N,N-Dimethylamino)ethoxy]ethoxy基、2-(methylamino)-2-oxoethoxy基、2-(N-methylcarbamoyl)etoxy 基および2-cyanoetoxy 基からなる群から選択される置換基で置換された2’−修飾ヌクレオチド等も挙げられる。
【0112】
また、糖部修飾ヌクレオチドとしては、例えば、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)が挙げられる。
【0113】
前記糖部修飾ヌクレオチドとしては、具体的には、例えば、2'位の酸素原子と4'位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、エチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]等が挙げられる。さらに、ペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624 (1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am. Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、ペプチドリボ核酸(PRNA)[J. Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等も挙げられる。
【0114】
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部または全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよい。
【0115】
例えば、リン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がホスホロジチオエート結合に置換されたヌクレオチド、リン酸ジエステル結合がアルキルホスホネート結合に置換されたヌクレオチドおよびリン酸ジエステル結合がホスホロアミデート結合に置換されたヌクレオチド等が挙げられる。
【0116】
塩基修飾ヌクレオチドとしては、ヌクレオチドの塩基の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の置換基で修飾もしくは置換したもの、または任意の原子で置換したものであればいかなるものでもよい。
【0117】
前記塩基修飾ヌクレオチドとしては、例えば、塩基内の酸素原子が硫黄原子で置換されたもの、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたもの、メチル基が水素もしくは炭素数2〜6のアルキル基で置換されたもの、アミノ基が炭素数1〜6のアルキル基および炭素数1〜6のアルカノイル基等の保護基で保護されたものが挙げられる。
【0118】
さらに、ヌクレオチド誘導体として、ヌクレオチドまたは糖部、リン酸ジエステル結合もしくは塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド誘導体に脂質、リン脂質、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、色素など、別の化学物質を付加したものも挙げられる。
【0119】
前記ヌクレオチド誘導体としては、具体的には、5’-ポリアミン付加ヌクレオチド誘導体、コレステロール付加ヌクレオチド誘導体、ステロイド付加ヌクレオチド誘導体、胆汁酸付加ヌクレオチド誘導体、ビタミン付加ヌクレオチド誘導体、Cy5付加ヌクレオチド誘導体、Cy3付加ヌクレオチド誘導体、6−FAM付加ヌクレオチド誘導体、アレクサフルオロ、およびビオチン付加ヌクレオチド誘導体等が挙げられる。
【0120】
また、ヌクレオチド誘導体は、核酸内の他のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体とアルキレン構造、ペプチド構造、ヌクレオチド構造、エーテル構造またはエステル構造、およびこれらの少なくとも一つを組み合わせた構造等の架橋構造を形成してもよい。
【0121】
本発明で用いられる核酸は、標的遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸と該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とが二重鎖を形成することができればいずれの長さでもよいが、二重鎖を形成できる配列の長さは、通常15〜27塩基が好ましく、15〜25塩基がより好ましく、15〜23塩基がさらに好ましく、15〜21塩基が特に好ましく、15〜19塩基が最も好ましい。
【0122】
本発明で用いられる核酸としては、標的遺伝子の一部の塩基配列からなる核酸が用いられるが、該核酸のうち好ましくは1〜3塩基、より好ましくは1〜2塩基、さらに好ましくは1塩基が欠失、置換または付加したものを用いてもよい。
【0123】
標的蛋白質の発現を抑制する核酸としては、標的遺伝子の一部の塩基配列と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とを含み、かつ標的蛋白質の発現を抑制する核酸であれば、一本鎖核酸および二本鎖核酸等のいずれの核酸も用いられるが、二本鎖核酸が好ましい。
【0124】
本発明において二本鎖核酸とは、二本の鎖が対合し二重鎖形成部を有する核酸をいう。二重鎖形成部とは、二本鎖核酸を構成するヌクレオチドまたはその誘導体が塩基対を構成して二重鎖を形成している部分をいう。二重鎖形成部は、通常15〜27塩基対であることが好ましく、15〜25塩基対であることがより好ましく、15〜23塩基対であることがさらに好ましく、15〜21塩基対であることが特に好ましく、15〜19塩基対であることが最も好ましい。
【0125】
二本鎖核酸を構成する一本鎖の核酸は、通常15〜30塩基からなることが好ましく、15〜29塩基からなることがより好ましく、15〜27塩基からなることがさらに好ましく、15〜25塩基からなることがよりさらに好ましく、17〜23塩基からなることが特に好ましく、19〜21塩基からなることが最も好ましい。
【0126】
本発明における二本鎖核酸において、二重鎖形成部に続く3’側または5’側に二重鎖を形成しない追加のヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を有する場合には、これを突出部(オーバーハング)と呼ぶ。二本鎖核酸が突出部を有する場合には、突出部を構成するヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの誘導体であってもよい。
【0127】
突出部を有する二本鎖核酸としては、少なくとも一方の鎖の3’末端または5’末端に好ましくは1〜4塩基、より好ましくは1〜3塩基、さらに好ましくは2塩基からなる突出部を有するものが好ましく用いられる。2塩基からなる突出部としては、dTdTまたはUUからなる突出部が好ましい。
【0128】
二本鎖核酸において、突出部は、アンチセンス鎖のみ、センス鎖のみ、およびアンチセンス鎖とセンス鎖の両方に有することができるが、アンチセンス鎖とセンス鎖の両方に突出部を有することが好ましい。
【0129】
また、二重鎖形成部に続いて、標的配列と一部または全てが一致する配列、または、二重鎖形成部に続いて標的配列の相補鎖の塩基配列と一致する配列を用いることもできる。
【0130】
さらに、本発明の二本鎖核酸としては、例えば、Dicer等のリボヌクレアーゼの作用により上記の二本鎖核酸を生成する核酸分子(国際公開第2005/089287号)、および3’末端または5’末端の突出部を有していない二本鎖核酸などを用いることもできる。
【0131】
本発明における二本鎖核酸としては、標的遺伝子の塩基配列またはその相補鎖の塩基配列と同一の配列からなる核酸を用いてもよいが、該核酸の少なくとも一方の鎖の5’末端または3’末端が1〜4塩基削除された核酸と、該核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸とからなる二本鎖核酸を用いてもよい。該二本鎖核酸としては、二重鎖形成部が例えば15〜19塩基対からなる二本鎖核酸があげられる。
【0132】
また、本発明における核酸としては、一本鎖の核酸を用いることもできる。
【0133】
本発明の核酸としては、上記した二本鎖核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖を、スペーサー配列を介して連結して一本鎖核酸としたものであってもよい。該一本鎖核酸としては、ステムループ構造によって二重鎖形成部を有するshRNA等の一本鎖核酸であることが好ましい。ステムループ構造を有する一本鎖核酸は、通常50〜70塩基長であることが好ましい。
【0134】
本発明における核酸としては、リボヌクレアーゼ等の作用により上記の一本鎖核酸または二本鎖核酸を生成するように設計した、好ましくは70塩基長以下、より好ましくは50塩基長以下、さらに好ましくは30塩基長以下の核酸であってもよい。
【0135】
本発明における核酸を製造する方法としては、特に限定されず、公知の化学合成を用いる方法、あるいは、酵素的転写法等があげられる。公知の化学合成を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスホロチオエート法、ホスホトリエステル法、CEM法[Nucleic Acid Research, 35, 3287 (2007)]等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)により合成することができる。合成が終了した後は、固相からの脱離、保護基の脱保護および目的物の精製等を行う。
【0136】
精製により、純度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の核酸を得るのが好ましい。二本鎖核酸の場合には、合成・精製したセンス鎖、アンチセンス鎖を適当な比率、例えば、アンチセンス鎖1当量に対して、センス鎖を好ましくは0.1〜10当量、より好ましくは0.5〜2当量、さらに好ましくは0.9〜1.1当量、特に好ましくは等モル量で混合した後、アニーリングを行って用いてもよいし、または、混合したものをアニーリングする工程を省いて直接用いてもよい。
【0137】
アニーリングは、二本鎖核酸を形成できる条件であればいかなる条件で行ってもよいが、通常、センス鎖、アンチセンス鎖をほぼ等モル量で混合した後、94℃程度で5分程度加熱したのち、室温まで徐冷することにより行われる。
【0138】
本発明の核酸を製造する酵素的転写法としては、例えば、目的の塩基配列を有したプラスミドまたはDNAを鋳型としてファージRNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3またはSP6RNAポリメラーゼ)を用いた転写による方法が挙げられる。
【0139】
RNAi分子は、標的とする蛋白質をコードするmRNAに相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖を含む、一本鎖または二本鎖核酸分子である。RNAi分子は、当該アンチセンス鎖が標的蛋白質をコードするmRNAと特異的に結合してその標的蛋白質の発現(蛋白質合成)を阻害する。本発明におけるRNAi分子としては、例えば、siRNA、microRNAおよびshRNAが挙げられる。
【0140】
siRNAとは、標的蛋白質をコードするmRNAに相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖と当該アンチセンス鎖に相補的なセンス鎖とがハイブリダイズしてなる低分子二本鎖RNAである。
【0141】
microRNAとは、マイクロRNA(miRNA)は、相同性のmRNAとの相互作用による遺伝子発現の転写後制御に関する小分子ノンコーディングRNAであり、蛋白質コーディング遺伝子由来の標的mRNAの相補部位に結合することで遺伝子の発現を調節する。
【0142】
shRNAとは、上記アンチセンス鎖とセンス鎖とがリンカー部分を介して連結された一本鎖RNAであり、当該リンカー部分がループを形成することにより折りたたまれ、当該アンチセンス鎖と当該センス鎖がハイブリダイズして、二本鎖部分を形成する。
【0143】
特定の態様において、siRNAおよびmicroRNAは、より長い二本鎖RNAのプロセッシング、例えば酵素DicerまたはDroshaの存在下でプロセッシングされて生成され得る。DicerおよびDroshaは、dsRNAを特異的に切断するRNAseIII様ヌクレアーゼである。Dicerおよびその他のRNAi酵素を使用する方法および組成物は、米国特許出願公開公報第2004/0086884号明細書に記載される。
【0144】
本発明におけるRNAi分子は、標的蛋白質の遺伝子配列を基に公知の手法、例えば、siRNA Design Support System(タカラバイオ株式会社)を用いて設計することができる。
【0145】
アプタマーとは、蛋白質の特定の分子に結合するRNA又はDNAの核酸リガンドである。
【0146】
アプタマーは、多種の核酸鎖からなるライブラリーを製造し、その中から標的蛋白質に結合しうる核酸鎖を選択することによって取得することができる。アプタマーを同定するための好適な方法としては、例えば、Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment(SELEXTM)法(米国特許第5270163号明細書)が挙げられる。
【0147】
核酸の別の態様としては、コンジュゲート調製に利用するために、オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を修飾することができる。このような修飾は、分子の3’末端、5’末端またはこの両方であってよい。修飾は、末端リン酸全体またはリン酸基の原子の1つまたは複数を修飾または置換することを含むことができる。
【0148】
例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を、標識部分、例えばフルオロフォア(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、アレクサフルオロ、Cy3またはCy5染料)または保護基(例えば、硫黄基、シリコン基、ホウ素基またはエステル基に基づく)などの他の機能分子実体に複合することができる。該機能分子実体をリン酸基および/またはスペーサを介して糖に結合することができる。
【0149】
該スペーサの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC-3’またはC-5’O、N、SまたはC基に連結するか、またはこれらを置換することができる。あるいは、該スペーサは、代替ヌクレオチド(例えば、PNA)の末端原子に連結するか、またはこれを置換することができる。
【0150】
前記スペーサまたはリンカーとしては、例えば-(CH
2)
n-、-(CH
2)
nN-、-(CH
2)
nO-、-(CH
2)
nS-、0(CH
2CH
2O)nCH
2CH
2OH(例えば、n=3または6)、非塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミドまたはモルホリノ、またはビオチン試薬およびフルオレセイン試薬が挙げられる。
【0151】
また核酸の別の態様として、Cys残基に置換された抗体修飾体またはその抗体フラグメント該抗体断片抗体フラグメント修飾体に対して、非共有結合を介して複合体化することも可能である。
【0152】
放射性標識化合物としては、診断用または治療用用途に使用される核種であればよく例えば、
3H、
14C、
32P、
33P、
35S、
51Cr、
57CO、
18F、
153Gd、
159Gd、
68Ge、
166Ho、
115In、
113In、
112In、
111In、
131I、
125I、
123I、
121I、
140La、
177Lu、
54Mn、
99Mo、
103Pd、
142Pr、
149Pm、
186Re、
188Re、
105Rh、
97Ru、
153Sm、
47Sc、
75Se、
85Sr、
99Tc、
201Ti、
113Sn、
117Sn、
133Xe、
169Yb、
175Yb、
90Yおよび
65Zn等、または上述の核種を含む化合物が挙げられる。また、上記核種とキレートした分子、例えば、DOTA、PA-DOTA、TRITAおよびDTPA等も本発明の放射性標識化合物に含まれる。
【0153】
糖鎖としては、例えば、フコース、マンノース、グルコース、アロース、アルトース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、リポアラビノマンナン、ルイスX型三糖およびシアリルルイスX型四糖等を含む、単糖、二糖類またはオリゴ糖等が挙げられる。
【0154】
脂質としては、例えば、脂肪酸と各種アルコールとのエステルおよびその類似体である単純脂質(中性脂質)が挙げられる。例えば、油脂(例えば、トリアシルグリセロール)、ろう(高級アルコールの脂肪酸エステル)、ステロールエステル、コレステロールエステル、ビタミンの脂肪酸エステル等、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ複合脂質、例えば、リン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質等)および糖脂質(グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等)、単純脂質および複合脂質の加水分解によって生成する化合物のうち脂溶性のものをさす誘導脂質、例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂溶性ビタミン、ステロイド、炭化水素等が挙げられる。
【0155】
蛍光化合物としては、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、アレクサフルオロ系列およびNBD系列等の蛍光色素、並びに緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性タンパク質等が挙げられる。
【0156】
親水性高分子または両親媒性高分子、および機能性分子は直接または適当なリンカーを介して結合してよく、リンカーとしては、例えばエステル、ジスルフィド、ヒドラゾンおよびジペプチド等が挙げられる。ジペプチドを含む修飾基としては、例えば国際公開第96/35451号に記載の修飾基が挙げられる。
【0157】
修飾基が機能分子である場合の修飾体としては、例えば、式1:X-L-Y(1)[式中、Xは本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを表し、Yは機能分子を表し、LはXの置換されたCys残基のチオール基および機能分子Yと共有結合を形成するリンカーを表す]で示され、式2:-L-Y(2)[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す]が修飾基として、本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントに結合したものが挙げられる。
【0158】
親水性高分子または両親媒性高分子は、式1中のリンカーLとして、機能性分子と連結されていてもよい。
【0159】
リンカーLは、2官能性分子として、式3:R'-L'-R''[式中、R'およびR''は同一であるか、または異なっており、-NH
2、-CO
2H、-OH、OR
1(基中、R
1はヒドロキシ保護基である)、-CO
2R
2(基中、R
2は2-ヒドロキシピリジン、N−ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニル(Pfp)、Meを表す)または他の活性エステル、アシルイミダゾール、マレイミド、トリフルオロアセテート、ジケトン、イミドエステル、スルホネートエステル、イミン、-CHO、1,2-シクロヘキサンジオン、グリオキサール、スルホニルハライド、α-ハロゲン化ケトン、アジドなどの官能基を表し、そしてL’はアルキルまたは置換アルキル基を表す]から導かれる部分を意味する。
【0160】
アルキル鎖L’は、ハロゲン(例えば、I、Br、Cl、F)、ヒドロキシ、シアノ、フェニル、アミノ、カルボキシ、アルキル、アルコキシなどの通常の置換基で置換することができる。さらに、リンカーL’のアルキレン鎖は、1またはそれ以上の2価の基、例えば-O-、-S-、-NH-、-CH=CH-、-C=C-、フェニル、-SO
2-などで遮断することができる。
【0161】
さらにリンカーL’は、分岐型構造を有することができ、複数個の機能分子と並列に結合することが可能である。しかし、官能基R'は適当な条件のもとで、本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの置換されたCys残基のチオール基と共有結合を形成しうるものでなければならず、また、官能基R''は適当な条件のもとで機能分子と共有結合を形成しうるものでなければならない。
【0162】
またリンカーL’の別の態様として、細胞内にて切断される結合様式を有するものが挙げられる。好ましい態様としては、血中内と比較して10倍以上、好ましくは100倍以上の速さで分解される。切断されやすいリンカーの構造様式は、pH、酸化還元ポテンシャル、またはフォスファターゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼまたはプロテアーゼに代表される分解酵素に感受性が高いことを特徴とする。
【0163】
pH感受性の切断リンカーは、酸性条件下、好ましくはpH6.5以下、より好ましくはpH6.0以下、さらに好ましくはpH5.5以下で切断される結合様式を有していることが好ましい。血中内のpHが7.4に対して、細胞内では若干低く7.1〜7.3の範囲であることが好ましい。さらにエンドソーム内ではpHが5.5〜6.0であることが好ましく、リソソーム内ではより酸性側にシフトして、約5.0になることが好ましい。pH感受性の結合様式としては、ヒドラゾン結合が知られている。
【0164】
酸化還元ポテンシャル感受性の切断リンカーは、細胞内還元環境下にて切断される結合様式を有している。細胞内では、還元型のトリペプチド(グルタチオン)が、1 mmol/L-10 mmol/Lという高濃度で存在しており、還元環境下となっている。該還元環境下にて感受性を有する結合様式としては、ジスルフィド結合が知られている。
【0165】
フォスファターゼに感受性を有する結合様式としてはリン酸エステル結合が知られている。エステラーゼに感受性を有する結合様式としてはエステル結合が知られている。
【0166】
ペプチダーゼまたはプロテアーゼ、例えば、細胞内ペプチダーゼ、または例えば、リソソームプロテアーゼ若しくはエンドソームプロテアーゼに感受性を有する結合様式としては、特定の酵素が認識するアミノ酸配列から構成されるオリゴペプチドまたはポリペプチドが知られている。該酵素としてカテプシンB、C、およびDが知られており、複数種のジペプチド切断配列が存在するが、これに限定されない。
【0167】
例示的な実施形態では、リンカーはジペプチドリンカー、例えばバリン−シトルリン(val-cit)またはフェニルアラニン−リジン(phe-lys)リンカーであり得る。
【0168】
また別の態様として、機能分子Yは、リンカーLを介して、直列または並列に複数個が連結することが可能であり、異なる機能分子の組み合わせであってもよく、さらにはその順番も任意に変更することが可能である。さらに別の態様として、リンカーを介さずに機能分子と直接連結することも可能である。
【0169】
さらに、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの置換されたCys残基のチオール基を、前記機能分子の適当な官能基に連結することにより、該Cys残基を化学修飾することができる。
【0170】
即ち、前記方法によれば、予め調製しておいたCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントおよび予め調製しておいた機能分子のどちらか一方に連結基を結合させ、次いで残りの一方を連結基に結合させることによって、該Cys残基を化学修飾することができる。
【0171】
別の方法によれば、適当な連結基前駆体を、予め調製しておいたCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントおよび予め調製しておいた機能分子に結合させてもよい。次いで、2つの前駆体を反応させることによって、該Cys残基を化学修飾することができる。
【0172】
本発明のCys残基に置換された抗体修飾体および該抗体フラグメント修飾体の1つの修飾基当りの分子量は特に限定されないが、好ましくは500Da以上であり、例えば500Da〜100kDaである。
【0173】
上述の修飾基としては、例えば、マレイミド-ポリエチレングリコール-バリン-シトルリン-アドリアマイシン(Maleimide-PEG-Val-Cit-ADM)等が挙げられる。
【0174】
〈細胞傷害活性〉
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体および該抗体フラグメントは、細胞傷害活性を有するモノクローナル抗体および該抗体フラグメントであることが好ましい。ここで、細胞傷害活性としては、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、活性補体結合細胞傷害(CDC)活性等が挙げられる。
【0175】
前記ADCC活性を有するモノクローナル抗体または該抗体フラグメントとしては、例えば、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に含み、該Fc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上であるモノクローナル抗体または該抗体フラグメントであり(国際公開第00/61739号、国際公開第02/31140号)、かつ、WTの定常領域内の1以上のアミノ酸をシステイン残基に置換した定常領域を含む、モノクローナル抗体および該抗体フラグメントが挙げられる。
【0176】
また、前記CDC活性を有するモノクローナル抗体および該抗体フラグメントとしては、例えば、ヒトIgG1抗体において、定常領域中のCH1ドメインおよびCH2ドメインを含むポリペプチドを、KabatらのEU numberingにおいてそれぞれヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント(国際公開第2008/090958号)であって、かつ、WTの定常領域内の1以上のアミノ酸をシステイン残基に置換した定常領域を含む、モノクローナル抗体および該抗体フラグメントが挙げられる。
【0177】
また、前記CDC活性を有するモノクローナル抗体および該抗体フラグメントとしては、例えば、ヒトIgG1抗体において、KabatらのEU numberingで示される276番目および339番目のアミノ酸が、他のアミノ酸に置換されたCH2ドメインを含み、高いCDC効果を有するモノクローナル抗体および該抗体フラグメント(国際公開第2008/090959号)であって、かつ、WTの定常領域内の1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換した定常領域を含む、モノクローナル抗体および該抗体フラグメントが挙げられる。
【0178】
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの抗原陽性培養細胞株に対するCDC活性、またはADCC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]により評価することができる。
【0179】
〔製造方法〕
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、Monoclonal Antibodies:principles and practice, Third Edition, Acad. Press (1993)、Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1996)等に記載された方法を用い、例えば、以下のように宿主細胞中で発現させて取得することが出来る。
【0180】
また、例えば、以下のように本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを調製し、さらに該モノクローナル抗体または該抗体フラグメントのCys残基を化学修飾することにより、抗体修飾体または抗体フラグメント修飾体を得ることができる。
【0181】
1. Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターの構築
(1)Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターの構築
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生産する宿主細胞としては、組換え蛋白質生産に一般に用いられる宿主細胞であればいかなるものも包含する。
【0182】
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現に使用する発現ベクターは、その目的に応じて、または該発現ベクターを導入すべき宿主細胞に適したものを適宜選択し、使用することが出来る。
【0183】
前記発現ベクターが組換えベクターである場合、該組換えベクターは、適切なプロモーターに連結されたCLおよびCHをコードするDNAをそれぞれ含み、好ましくは本発明のポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含む。
【0184】
さらに、前記組換えベクターは形質転換体を選択するための選択マーカー遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含むことも出来る。また、発現したタンパク質の分離・精製に有用なタグ配列をコードする配列等を含んでもよい。
【0185】
抗体遺伝子の軽鎖および重鎖を含む発現カセットの両端に、適切な制限酵素認識配列を挿入しておくことで、原核細胞用抗体発現ベクターと真核細胞用抗体発現ベクターのいずれの発現ベクターにも、組み込むことが出来る。
【0186】
他の態様においては、多様な抗体可変領域に対応出来る発現ベクターを構築するために、可変領域のみを適当な制限酵素によって、後から導入出来るように設計した発現ベクターでもよい。
【0187】
大腸菌等の原核細胞を宿主細胞として用いる場合、発現ベクターとしては上述の抗体をコードする遺伝子を組込み発現出来るものであればいかなるものも用いることが出来る。例えば、pFLAG-CTS[SIGMA社、Journal of Molecular Recognition, 5, 15(2002)]、pET26b[Novagen社、Molecular Immunology, 8, 44(2007)]、pFab1、pFab2、pFab3 [Protein Expression and Purification, 2, 34(2004)]等が挙げられる。
【0188】
原核細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとしては、例えば、Tacプロモーター[Journal of Molecular Recognition, 5, 15(2002)]およびラムノースプロモーター[Journal of Molecular Biology, 234, (1993)]等が挙げられる。
【0189】
さらに、前記ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列をも含んでもよい。大腸菌の周辺質(periplasm)へのポリペプチド分泌を指令するシグナル配列の一例は、PelBシグナル配列[J. Bacteriol. 169, 4379 (1987)]である。
【0190】
例えば、大腸菌が宿主細胞であって、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、またはXL1Blue)の内部で大量に増幅および産生させる場合には、ベクターは、大腸菌内で増幅させるための「ori」、および、形質転換された大腸菌を選択するためのマーカー遺伝子(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンおよびクロラムフェニコール等の薬剤によって選択される薬剤抵抗性遺伝子)を有する必要がある。該マーカー遺伝子としては、例えば、M13シリーズのベクター、pUCシリーズのベクター、pBR322およびpBluescript等が挙げられる。
【0191】
真核細胞のうち、動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとして、上述のCys残基に置換されたモノクローナル抗体および該抗体フラグメントをコードする遺伝子を組込み発現出来るものであればいかなるものでも用いることが出来る。
【0192】
前記発現ベクターとしては、例えば、pKANTEX93[Mol. Immunol., 37, 1035 (2000)]、pAGE107[日本国特開平3-22979号公報、Cytotechnology, 3, 133-140 (1990)]、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 78, 1527 (1981)]、N5KG1-Val Larkベクター[IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(米国特許第6001358号明細書)の改変ベクター]およびpSG1βd2-4[Cytotechnology, 4, 173 (1990)]等が挙げられる。
【0193】
動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、例えば、、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTR[Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 960 (1987)]並びに免疫グロブリン重鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]とエンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]等が挙げられる。
【0194】
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)およびYCp50(ATCC37419)等が挙げられる。
【0195】
酵母用発現ベクターに用いるプロモーターとしては、酵母菌株中で発現出来るものであればいずれのものを用いてもよい。例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1 プロモーターおよびCUP 1プロモーター等が挙げられる。
【0196】
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pVL1392、pVL1393およびpBlueBacIII(ともにInvitorogen社)等が挙げられる。
【0197】
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミドおよびタバコモザイクウイルスベクター等が挙げられる。
【0198】
植物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとしては、植物細胞中で発現出来るものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターおよびイネアクチン1プロモーター等が挙げられる。
【0199】
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント発現用ベクターは、抗体軽鎖および重鎖が別々のベクター上に存在するタイプまたは同一のベクター上に存在するタンデム型のどちらでも用いることが出来る[J. Immunol. Methods, 167, 271 (1994)]。
【0200】
タンデム型の発現ベクターの構築方法としては、プロモーター配列に結合した軽鎖および重鎖をコードしたDNAを適当な制限酵素サイトを用いて、連結する方法が挙げられる。例えば、タンデム型の発現ベクターに関しては、pKANTEX(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma, 559 (1998)] 、N5KG1-Val Larkベクター[IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(米国特許第6001358号明細書)の改変ベクター]等が挙げられる。
【0201】
宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、トランスフォーメーション法、エレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)] 、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 7413 (1987)]等が挙げられる。
【0202】
本発明におけるCys残基への置換は、上記で作製したベクターに対して、部位特異的変異誘発法により行うことが出来る。例えば、QuikChange II Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を使用して、説明書に準じて、目的のCys残基への置換部位に相当するコドンをTGCに置き換えたプライマーを設計し、部位特異的変異誘発を行うことが出来る。
【0203】
TGCコドンへの変異導入の有無は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 74, 5463 (1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、ABI PRISM377 DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより決定することが出来る。
【0204】
構築した本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現用ベクターは、例えば、以下の原核細胞または真核細胞におけるヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントの発現に使用することが出来る。
【0205】
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVLおよびVHをコードするcDNAは以下のようにして取得することが出来る。
【0206】
任意の抗体を産生するハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として用い、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージまたはプラスミド等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製する。
【0207】
前記ライブラリーより、既存のマウス抗体のC領域またはV領域をコードするDNAをプローブとして用い、重鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミドおよび軽鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。
【0208】
組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的のマウス抗体のVLおよびVHの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVLおよびVHの全アミノ酸配列を推定する。
【0209】
任意のヒト以外の動物の抗体を生産するハイブリドーマ細胞は、抗体が結合する抗原をヒト以外の動物に免疫し、周知の方法[モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、アンチボディズ、モノクローナルアンチボディズ、アンチボディエンジニアリング]に従って、免疫された動物の抗体産生細胞とミエローマ細胞とでハイブリドーマを作製する。次いで単一細胞化したハイブリドーマを選択し、これを培養し、培養上清から精製し、取得することが出来る。
【0210】
ヒト以外の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびウサギ等、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることが出来る。
【0211】
ハイブリドーマ細胞から全RNAを調製する方法としては、例えば、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol., 154, 3 (1987)]等が挙げられる。
【0212】
また全RNAからmRNAを調製する方法としては、例えば、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[MolecularCloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York, 1989]等が挙げられる。
【0213】
また、ハイブリドーマ細胞からmRNAを調製するキットとしては、例えば、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)およびQuick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)等が挙げられる。
【0214】
cDNAの合成およびcDNAライブラリー作製法としては、常法[Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York, 1989;Current Protocols in MolecularBiology, Supplement 1-34]、および市販のキットを用いる方法等が挙げられる。市販のキットとしては、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)およびZAP-cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)等が挙げられる。
【0215】
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることが出来る。
【0216】
前記ベクターとしては、例えば、ZAP Express[Strategies, 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)]、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning: A Practical Approach, I, 49 (1985)]、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2[Cell. Biol., 3, 280 (1983)]およびpUC18[Gene, 33, 103 (1985)]等が挙げられる。
【0217】
ファージまたはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現および維持出来るものであればいかなるものでも用いることが出来る。
【0218】
前記大腸菌としては、例えば、XL1-Blue MRF'[Strategies, 5, 81 (1992)]、C600[Genetics, 39, 440 (1954)]、Y1088、Y1090[Science, 222, 778 (1983)]、NM522[J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)]、K802[J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)]およびJM105[Gene,38, 275 (1985)]等が用いられる。
【0219】
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHをコードするcDNAクローンを選択する方法としては、アイソトープ或いは蛍光等で標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法或いはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning: A LaboratoryManual, Cold Spring Harbor Lab. Press NewYork (1989)]により選択することが出来る。
【0220】
また、プライマーを調製し、cDNAまたはcDNAライブラリーを鋳型として、PCR[Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York, (1989)、 Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-34]によりVLおよびVHをコードするcDNAを調製することも出来る。
【0221】
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素等で切断後、pBluescript SK(-)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、1-(1)に記載の塩基配列解析方法により、該cDNAの塩基配列を決定することが出来る。
【0222】
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVLおよびVHの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of ImmunologicalInterest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVLおよびVHを完全に含んでいるアミノ酸配列をコードしているかを確認することが出来る。
【0223】
さらに、抗体可変領域のアミノ酸配列または該可変領域をコードするDNAの塩基配列が既に公知である場合には、以下の方法を用いて製造することが出来る。
【0224】
アミノ酸配列が公知である場合には、コドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]を考慮して該可変領域をコードするDNA配列を設計し、設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることが出来る。塩基配列が公知である場合には、その情報を基に100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることが出来る。
【0225】
(3)ヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列の解析
分泌シグナル配列を含む抗体のVLおよびVHの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列[Sequences of Proteins ofImmunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、更には抗体が属するサブグループを知ることが出来る。また、VLおよびVHの各CDRのアミノ酸配列についても、同様の方法で見出すことが出来る。
【0226】
(4)Cys残基に置換されたヒト型キメラ抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターの構築
1-(1)に記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現用ベクターのCLおよびCHをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHをコードするcDNAを挿入し、Cys残基に置換されたヒト型キメラ抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターを構築することが出来る。
【0227】
例えば、ヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体VLおよびVHの3'末端側の塩基配列とヒト抗体のCLおよびCHの5'末端側の塩基配列とからなり、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結する。さらに、それぞれを1-(1)記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現用ベクターのヒト抗体のCLおよびCHをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、Cys残基に置換されたヒト型キメラ抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターを構築することが出来る。
【0228】
(5)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVLおよびVHをコードするcDNAは、以下のようにして構築することが出来る。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRを移植するヒト抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列を選択する。
【0229】
ヒト抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体のものであれば、いかなるものでも用いることが出来る。例えば、PDB等のデータベースに登録されているヒト抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVLおよびVHのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteinsof Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]等が挙げられる。その中でも、十分な活性を有するヒト化抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列と出来るだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが好ましい。
【0230】
次に、選択したヒト抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]を考慮したDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列をコードするDNA配列を設計する。
【0231】
前記設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率および合成可能なDNAの長さから、重鎖、軽鎖とも4〜6本の合成DNAを設計することが好ましい。
【0232】
また、両端に位置する合成DNAの5'末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、1-(1)で構築した本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント発現用ベクターに容易にクローニングすることが出来る。
【0233】
PCR後、増幅産物をpBluescript SK(-)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、1-(1)に記載の塩基配列解析方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVLおよびVHのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
【0234】
(6)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHのCDRのみをヒト抗体のVLおよびVHのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991)]。
【0235】
この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVLおよびVHでは、CDRのみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的或いは間接的に抗原結合活性に関与しており、それらアミノ酸残基がCDRの移植に伴い、ヒト抗体のVLおよびVHのFRの異なるアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。
【0236】
この問題を解決するため、ヒト化抗体では、ヒト抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、抗体の立体構造を維持し間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基等を同定し、それらを元のヒト以外の動物の抗体に由来するアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991)]。
【0237】
ヒト化抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析[J. Mol. Biol., 112, 535 (1977)]またはコンピューターモデリング[Protein Engineering, 7, 1501 (1994)]等による抗体の立体構造の構築および解析が行われている。
【0238】
これら抗体の立体構造の情報は、ヒト化抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来た。しかしながら、あらゆる抗体に適応可能なヒト化抗体の作製法は未だ確立されていない。現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討する等の種々の試行錯誤が必要である。
【0239】
ヒト化抗体のVLおよびVHのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて本項1の(5)に記載のPCR法を行うことにより、達成出来る。PCR後の増幅産物について本項1の(1)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0240】
(7)Cys残基に置換されたヒト化抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターの構築
1-(1)に記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現用ベクターのヒト抗体のCLおよびCHをコードする遺伝子の上流に、1-(5)および1-(6)で構築したヒト化抗体のVLおよびVHをコードするcDNAを挿入し、Cys残基に置換されたヒト化抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターを構築することが出来る。
【0241】
例えば、1-(5)および1-(6)でヒト化抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5'末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、本項1-(1)に記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、Cys残基に置換されたヒト化抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターを構築することが出来る。
【0242】
2. 原核細胞を用いたCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの作製
原核細胞において、本項記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または抗体フラグメントの定常発現を行う方法としては、例えば、1-(4)または1-(7)に記載のCys残基に置換されたヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントの発現ベクターを適当な原核細胞に導入することによりCys残基に置換されたヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントを安定に生産する形質転換株を得ることが出来る。
【0243】
Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの発現ベクターを導入する原核細胞としては、遺伝子組換え抗体を生産させることが出来る原核細胞であれば、いかなる細胞でも用いることが出来る。該原核細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌、サルモネラ菌、セレチア属およびシュードモナス属等が挙げられ、中でも、大腸菌が好ましい。
【0244】
発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることが出来る。例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)、Molecular&General Genetics, 168, 111 (1979)]に記載の方法およびエレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)]等が挙げられる。
【0245】
発現ベクターの導入後、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを安定に生産する形質転換株はアンピシリン等の薬剤を含む原核細胞培養用培地により選択することが出来る。
【0246】
原核細胞培養用培地としては、例えば、LB培地(Becton, Dickinson and Company社製)、NZYM GIT培地(日本製薬社製)、Terrific Broth培地(Applichem社製)、SOB培地(Applichem社製)、SOC培地(Ampliqon社製)、またはこれら培地にアンピシリン等の各種抗生物質を添加した培地等が挙げられる。
【0247】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生産蓄積させることが出来る。また、形質転換株は、プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。
【0248】
前記インデューサーとしては、例えば、tacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等が挙げられる。
【0249】
原核細胞の形質転換体の菌体、または培養上清中のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの生産量および抗原結合活性は酵素免疫抗体法[以下、ELISA法と表記する、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 14 (1998)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited (1996)]等により測定することが出来る。
【0250】
原核細胞の形質転換体の菌体、または培養上清中のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、大腸菌抽出液またはペリプラズム抽出画分から、プロテインGによるアフィニティー精製、または定常領域のC末端に結合したタグ、例えばヒスチジンタグ配列(6個の連続したHisからなるタグ配列であり、以下、ヒスタグと記載する)を用いたアフィニティ精製により、精製することが出来る。
【0251】
また、その他に通常、タンパク質の精製で用いられる精製方法を使用することが出来る。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することが出来る。
【0252】
精製したCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの軽鎖、重鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、SDS-PAGEと表記する)[Nature, 227, 680 (1970)]およびウエスタンブロッティング法[Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 12 (1988)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited (1996)]等で測定することが出来る。
【0253】
3. 真核細胞を用いたCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの作製
真核細胞において、本項記載のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを定常発現させる方法としては、例えば、1-(4)または1-(7)に記載のCys残基に置換されたヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントの発現ベクターを適当な真核細胞に導入することによりヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントを安定に生産する形質転換株を得ることが出来る。
【0254】
真核細胞のうち、動物細胞を宿主として用いる場合の宿主細胞としては、遺伝子組換え抗体を生産させることが出来る動物細胞であれば、いかなる細胞でも用いることが出来る。例えば、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO/dhfr(-)細胞、CHO/DG44細胞、CHO-K1細胞、ラットミエローマ細胞YB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来であるBHK細胞、ヒト腎臓由来であるHEK293細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞等が挙げられる。
【0255】
これらの中でも、チャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHO/DG44細胞、CHO-K1細胞、ヒト腎臓由来であるHEK293細胞、ラットミエローマYB2/0細胞等の動物細胞が好ましい。また、例えば、国際公開第00/61739号、国際公開第02/31140号に記載される、ADCC活性の高い遺伝子組換え抗体を発現させる細胞も宿主細胞として用いることが出来る。
【0256】
発現ベクターの導入法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることが出来る。例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)]、Gene, 17, 107 (1982)、Molecular&General Genetics, 168, 111 (1979)]に記載の方法、エレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)]およびリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 7413 (1987)]等が挙げられる。
【0257】
発現ベクターの導入後、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを安定に生産する形質転換株は、日本国特開平2-257891号広報に開示されている方法に従い、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)(SIGMA社製)等の薬剤を含む動物細胞培養用培地により選択することが出来る。
【0258】
動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX-CELL302培地(JRH社製)、IMDM培地(GIBCO BRL社製)、Hybridoma-SFM培地(GIBCO BRL社製)、FreeStyle
TM 293 Expression Medium(invitrogen社製)、FreeStyle
TM CHO Expression Medium(invitrogen社製)またはこれら培地に牛胎児血清(以下、FCSと表記する)等の各種添加物を添加した培地等を用いることが出来る。
【0259】
また、形質転換株は、日本国特開平2-257891号公報に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用してCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの生産量を上昇させることが出来る。
【0260】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生産蓄積させることが出来る。
【0261】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396 (1959)]、199培地[Proceeding of the Society for the Biological Medicine, 73, 1 (1950)]、Whitten培地[発生工学実験マニュアル-トランスジェニック・マウスの作り方(講談社)勝木元也編(1987)]、FreeStyle
TM 293 Expression Medium(invitrogen社製)、FreeStyle
TM CHO Expression Medium(invitrogen社製)またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が挙げられる。
【0262】
培養は、通常pH6.0〜8.0、30〜40℃、5%CO
2存在下等の条件下で1〜7日間行うことが好ましい。
【0263】
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0264】
培養上清中のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの生産量および抗原結合活性はELASA法[Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 14 (1998)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited (1996)]等により測定出来る。
【0265】
培養上清中のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントは、形質転換株の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することが出来る[Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 8 (1988)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited (1996)]。
【0266】
また、その他に通常、タンパク質の精製で用いられる精製方法を使用することが出来る。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することが出来る。
【0267】
精製したCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの軽鎖、重鎖または抗体分子全体の分子量は、SDS-PAGE[Nature, 227, 680 (1970)]およびウエスタンブロッティング法[Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 12 (1988)、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited (1996)]等で測定することが出来る。
【0268】
また、酵母、昆虫細胞または植物細胞等のその他の真核細胞においても、上述の動物細胞と同様の方法によりCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを製造することが出来る。
【0269】
酵母を用いる場合の宿主細胞としては、例えば、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属およびシュワニオミセス属等に属する微生物が挙げられる。該微生物としては、例えば、Saccharomycescerevisiae、Schizosaccharomycespombe、KluyveromyceslactisおよびTrichosporonpullulansおよびSchwanniomycesalluvius等が挙げられる。
【0270】
発現ベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、エレクトロポレーション法[Methods. Enzymol., 194, 182 (1990)]、スフェロプラスト法[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 84, 1929 (1978)]および酢酸リチウム法[J. Bacteriology, 153, 163 (1983)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 75, 1929 (1978)]等が挙げられる。
【0271】
得られた酵母を宿主細胞とする形質転換体を培地に培養し、培養物中にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを製造することが出来る。形質転換体を培養する方法は、酵母の培養に用いられる通常の方法に従って行うことが出来る。
【0272】
酵母を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0273】
炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンおよびデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸およびプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノールおよびプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0274】
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム等の無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、並びに各種発酵菌体およびその消化物等が挙げられる。
【0275】
無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マン癌、硫酸銅および炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0276】
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃が好ましく、培養時間は、通常16時間〜7日間であることが好ましい。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHは、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニア等を用いて調整することが好ましい。
【0277】
また、培養中必要に応じて、アンピシリンおよびテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0278】
この場合、培養上清にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを回収することが出来る。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの精製標品を得ることが出来る。
【0279】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-34、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H.Freeman and Company, New York (1992)、Bio/Technology, 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを発現することが出来る。
【0280】
即ち、発現ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを発現させることが出来る。
【0281】
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等が挙げられる。
【0282】
昆虫細胞を用いる場合の宿主細胞としては、例えば、Spodopterafrugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21[Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-34、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York (1992)]、およびTrichoplusianiの卵巣細胞であるHigh 5(Invitrogen社)等が挙げられる。
【0283】
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への発現導入ベクターとバキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(日本国特開平2-227075号公報)およびリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 7413 (1987)]等が挙げられる。
【0284】
得られた昆虫細胞を宿主細胞とする形質転換体を培地に培養し、培養物中にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを製造することが出来る。形質転換体を培養する方法は、昆虫細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことが出来る。
【0285】
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているTNM-FH培地(Pharmingen社)、Sf-900 II SFM培地(Life Technologies社)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社)およびGrace's Insect Medium[Nature, 195, 788 (1962)]等が挙げられる。
【0286】
培養は、通常pH6.0〜7.0、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行うことが好ましい。
【0287】
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0288】
この場合、培養上清にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを回収することが出来る。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの精製標品を得ることが出来る。
【0289】
植物細胞を用いる場合の宿主細胞としては、例えば、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギおよびオオムギ等の由来の細胞等が挙げられる。
【0290】
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることが出来る。例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(日本国特開昭59-140885号公報、日本国特開昭60-70080号公報、国際公開第94/00977号)、エレクトロポレーション法(日本国特開昭60-251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(日本特許第2606856号、日本特許第2517813号)等が挙げられる。
【0291】
発現ベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2-227075号公報)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 7413 (1987)]、インジェクション法[Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994)]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[日本特許第2606856号、日本特許第2517813号]、DEAE-デキストラン法[バイオマニュアルシリーズ4―遺伝子導入と発現・解析法(羊土社)横田崇・新井賢一編 (1994)]およびウイルスベクター法[Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994)]等が挙げられる。
【0292】
得られた植物細胞を宿主細胞とする形質転換体を培地に培養し、培養物中にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを製造することが出来る。形質転換体を培養する方法は、植物細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことが出来る。
【0293】
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することが出来る。該形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地およびホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシンおよびサイトカイニン等の植物ホルモンを添加した培地等が挙げられる。
【0294】
培養は、通常pH5.0〜9.0、20〜40℃の条件下で3〜60日間行うことが好ましい。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0295】
この場合、培養上清にCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを回収することが出来る。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの精製標品を得ることが出来る。
【0296】
4. Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の作製
本発明のCys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体は、上述の2若しくは3で得られたCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを、化学修飾反応により、該Cys残基のチオール基と反応性を有する修飾基で修飾することにより得ることが出来る。
【0297】
前記Cys残基のチオール基と反応性を有する修飾基(以下、修飾基ともいう)は、公知の方法(国際公開第96/35451号、国際公開第01/48052号)により調製することが出来る。
【0298】
Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントを前記修飾基で化学修飾することにより、少なくとも1つの置換されたCys残基が化合物により修飾された誘導体である、モノクローナル抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体等が得られる。
【0299】
Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメントの化学修飾は、前記修飾基を該抗体または該抗体フラグメント1molあたり好ましくは1〜1000mol、より好ましくは1〜50mol用いて反応させることによって行うことが好ましい。
【0300】
前記修飾基のモノクローナル抗体または該抗体フラグメントへの修飾の度合いは該抗体または該抗体フラグメントに対する該修飾基のモル比、反応温度、pHおよび反応時間等を調節することによって、任意に選択することができる。
【0301】
また、反応に使用する溶媒は反応を妨害しないものであればいずれでもよい。例えば、りん酸緩衝液、ほう酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液、水、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等並びにこれらの混合溶媒から選択される[稲田祐二・前田浩編、続蛋白質ハイブリッド、共立出版(1988)参照]。
【0302】
反応の温度、pHおよび時間は、化学修飾に用いるCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、並びに化学修飾に用いる分子の活性が損なわれない条件であればいずれでもよい。例えば、0〜50℃の間の温度、10分間〜100時間、pH4〜10が好ましい。
【0303】
上述の化学修飾反応で得られた本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体は、常法に従って、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーおよび限外濾過等を単独または組み合せることにより精製することが出来る。また、任意の化学修飾率のCys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体等を、これらの精製法で分画して精製することもできる。
【0304】
精製されたCys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の構造は、例えば、質量分析、核磁気共鳴(NMR)およびアミノ酸分析計によるアミノ酸組成分析により確認することができる。また、例えば、気相プロテインシーケンサーによりエドマン分解して得られたフェニルチオヒダントイン(PTH)アミノ酸を逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析することによるアミノ酸配列分析等により確認することができる。
【0305】
5. 精製したCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の活性評価
精製した本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の活性評価は、以下のように行うことができる。
【0306】
抗原に対する結合活性は、例えば、バインディングアッセイ、蛍光抗体法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]およびBiacoreシステム等を用いた表面プラズモン共鳴法等を用いて測定できる。
【0307】
抗原としては、抗原をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞および動物細胞などに導入して得られた遺伝子導入細胞、リコンビナント蛋白質、またはヒト組織から得た精製ポリペプチドまたは部分ペプチド等を用いる。
【0308】
抗原が部分ペプチドである場合には、BSAまたはKLHなどのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
【0309】
抗原を96ウェルプレートなどのプレートに分注し、固相化した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製モノクローナル抗体などの被験物質を分注し、反応させる。PBSまたはPBS-Tweenなどで、よく洗浄した後、第2抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質または放射線化合物などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。PBS-Tweenでよく洗浄した後、第2抗体の標識物質に応じた反応を行ない、免疫原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を選択する。
【0310】
また、抗原陽性培養細胞株に対するADCC活性またはCDC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]により測定する。
【0311】
6. Cys残基に置換された本発明のモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の医薬への使用
本発明のCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体は、例えば診断薬、治療剤等の医薬等への使用が可能である。
【0312】
Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体を含有する医薬は、治療薬として単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが好ましい。
【0313】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与が挙げられる。抗体製剤の場合、静脈内投与が好ましい。
【0314】
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏およびテープ剤等が挙げられる。
【0315】
経口投与に適当な製剤としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤および顆粒剤等が挙げられる。
【0316】
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、例えば、水、ショ糖、ソルビトールおよび果糖等の糖類、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油および大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、並びにストロベリーフレーバーおよびペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造することが出来る。
【0317】
カプセル剤、錠剤、散剤および顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖およびマンニトール等の賦形剤、デンプンおよびアルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムおよびタルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、並びにグリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造出来る。
【0318】
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、座剤および噴霧剤等が挙げられる。
【0319】
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、または両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。または、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体を常法に従って凍結乾燥し、これに塩化ナトリウムを加えることによって粉末注射剤を調製することも出来る。
【0320】
座剤は、カカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製する。
【0321】
また、噴霧剤は、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつCys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製する。
【0322】
担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体および用いる担体の性質により、エアロゾルおよびドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することも出来る。
【0323】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢および体重等により異なるが、有効成分の量として、通常成人1日当たり10μg/kg〜20mg/kgである。
【0324】
例えば、抗腫瘍剤として使用する場合、Cys残基に置換されたモノクローナル抗体または該抗体フラグメント、Cys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体の各種腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果を検討する方法としては、インビトロ実験またはインビボ実験による方法が挙げられる。
【0325】
インビトロ実験としては、例えば、細胞傷害活性測定法、CDC活性測定法およびADCC活性測定法等が挙げられる。また、インビボ実験としては、マウス等の実験動物での腫瘍系を用いた抗腫瘍実験等が挙げられる。
[実施例]
【0326】
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0327】
〔実施例1〕
大腸菌用抗Her2ヒト化Fab発現ベクターの構築
1. Cys残基置換用クローニングベクターの構築
大腸菌用抗Her2ヒト化Fab発現ベクターは、以下の手順で構築した。大腸菌用発現ベクターの基本骨格としては、市販ベクターpFLG-CTS(SIGMA社製)を利用した。抗Her2ヒト化抗体の遺伝子配列設計においては、Trastuzumab(Herceptin)のFab軽鎖領域のアミノ酸配列(配列番号1)とFab重鎖領域のアミノ酸配列(配列番号2) [Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 4285 (1992)]をもとに設計した。
【0328】
Tacプロモーターとシャイン・ダルガノ配列からなる塩基配列(配列番号3)の支配下に、PelB分泌シグナル(配列番号4)と連結されたFabの軽鎖と重鎖をそれぞれコードした遺伝子配列を組込み、これをタンデムに連結するように設計した。
【0329】
軽鎖に関しては、5’末端にNdeI制限酵素認識配列、3’末端にHindIII制限酵素認識配列を付加した遺伝子配列(配列番号5)とした。重鎖に関しては、5’末端にEcoRI制限酵素認識配列に加えて、Tacプロモーターとシャイン・ダルガノ配列からなる塩基配列を付加し、3’末端にはヒスタグとSalI認識配列を含む遺伝子配列(配列番号6)とした。
【0330】
軽鎖、重鎖の配列は、20 bpから30 bpの塩基配列が重なり合うように、合成DNA配列を設計し、PCR反応にて連結することで調製した。軽鎖に関しては、NdeIとHindIIIサイトを利用して、pFLAG-CTSに導入を行い、pFLAG-HerFabLとした。重鎖に関しては、EcoRIとSalIサイトを利用して、pFLAG-CTSに導入を行い、pFLAG-HerFabHとした。両ベクターを軽鎖と重鎖へのCys残基導入用クローニングベクターとして、Cys点変異の導入を実施した。
【0331】
2. Cys点変異導入
QuikChange II XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)の説明書に基づいて、プライマーを設計した。軽鎖Q124Cの導入に関してはQ124C01(配列番号7)とQ124C02(配列番号8)を、軽鎖H198Cの導入に関してはH198C01(配列番号9)とH198C02(配列番号10)を、軽鎖L201Cの導入に関してはL201C01(配列番号11)とL201C02(配列番号12)を、重鎖A140Cの導入に関してはA140C01(配列番号13)とA140C02(配列番号14)を、重鎖K147Cの導入に関してはK147C01(配列番号15)とK147C02(配列番号16)を、重鎖S183Cの導入に関してはS183C01(配列番号17)とS183C02(配列番号18)をそれぞれ設計、利用した。
【0332】
点変異導入反応液は、上記で作製したクローニングベクター10ng、各プライマー125ngに、添付のdNTPmix1μL、QuikSolution reagent3μL、10 x reaction buffer5μL、PfuUltra HF DNA polymerase1μLを加えて、滅菌水にて50 μLに調整したものを用いた。
【0333】
増幅反応は、95℃で1分間の加熱の後、95℃で50秒間、60℃で50秒間、68℃で7分間からなる反応を1サイクルとした18サイクルの条件で行い、68℃で7分間の伸長反応を最後に行った。得られた反応液に対して、Dpn I1μLを添加して、37℃で1時間切断反応を行なった。
【0334】
得られた反応液を、アガロースゲル電気泳動に供し、約7kbpの目的断片の増幅を確認した後、そのうち2μLを用いて、添付のXL10-Goldを形質転換した。
【0335】
得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、Cys点変異導入を確認した。得られた各Cys点変異を導入したベクターは、それぞれpFLAG-HerFabL-Q124C、pFLAG-HerFabL-H198C、pFLAG-HerFabL-L201C、pFLAG-HerFabH-A140C、pFLAG-HerFabH-K147C、pFLAG-HerFabH-S183Cと命名した。
【0336】
3. 抗Her2ヒト化Fabの発現ベクターの構築
各Cys点変異を導入したそれぞれの抗Her2ヒト化Fabの発現ベクターは、目的の点変異を導入した軽鎖と重鎖を用いて、軽鎖をコードするベクターをNdeIとHindIIIにて処理することで、軽鎖フラグメント断片を取得し、重鎖をコードするベクターをEcoRIとSalIにて処理することで、重鎖フラグメントを取得した。軽鎖フラグメントと重鎖フラグメントを、順次、pFLAG-CTSベクターに、Ligation High溶液(東洋紡績社製)にて連結した。
【0337】
該反応液を用いて大腸菌DH5a株を形質転換し、得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、軽鎖フラグメントと重鎖フラグメントの挿入を確認した。
【0338】
得られた野生型(以下、「WT」と略記する)、軽鎖Q124C、軽鎖H198C、軽鎖L201C、重鎖A140C、重鎖K147C、重鎖S183Cの抗Her2ヒト化Fabの発現するベクターは、それぞれ、pFLAG-HerFab、pFLAG-HerFab-Q124C、pFLAG-HerFab-H198C、pFLAG-HerFab-L201C、pFLAG-HerFab-A140C、pFLAG-HerFab-K147C、pFLAG-HerFab-S183Cと命名した。
【0339】
〔実施例2〕
抗Her2ヒト化FabのWTおよびCys残基置換体の調製
実施例1にて構築した大腸菌Fab発現ベクターの遺伝子導入は、大腸菌株W3110(ATCC:39936)を宿主細胞として行なった。
【0340】
各種Fab発現ベクターを10ng/μLになるように滅菌蒸留水に懸濁し、3μLを50μLのコンピテントセルに加えて穏やかに混和し、エッペンドルフチューブに分注し氷上に30分間保持した。続いて、42℃のウオーターバスに30秒間保持し再度氷中で2分間静置した。
【0341】
500μLの滅菌LB培地(DIFCO社製)を加えた後、37℃に設定したインキュベーターにて60分間振とう培養を行った。培養後、100μg/mLアンピシリン(和光純薬社製)を添加したLBプレート[1.5%(W/V)アガロース]に全量プレーティングした。37℃に設定したインキュベーターにて1晩培養を行った後、プレート上に生育してくる大腸菌株を遺伝子導入株として選抜した。
【0342】
得られた形質転換株を、37℃でLB培地を用いて振とう培養を行った。10mLのスケールで1晩培養し、得られた菌体溶液を終濃度100μg/mLのアンピシリン(和光純薬社製)を添加した200mLのSuper-Broth培地[MOPS(ナカライテスク社製)2g、Tryptone(Difco社製)6g、Yeast Extract(Difco社製)4g]に播種した。
【0343】
37℃で振とう培養し、600nmの吸光度(以下、OD
600と記載する)の値が2.0になった段階で一旦培養を終了し室温で15分程度静置した。終濃度1.0mmol/Lのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)(ナカライテスク社製)を添加し、22℃に設定したバイオシェイカーで、50rpmの速度で一晩タンパク質発現誘導を行った。
【0344】
一晩培養した大腸菌培養液を遠心分離し[CR21E(日立製作所社製)、5000rpm、4℃、15分間]、得られた沈殿の重量を量り、10mL B-PER/g大腸菌重量を目安にして、B-PER Bacterial Protein Extraction Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を加えてよく懸濁し、室温で10分間回転しながら混和した。その後、遠心分離し[CR21E(日立製作所社製)、7000rpm、4℃、25分間]、得られた上清をSartolab P plus(sartorius stedium biotech社製)に通して、精製に使用した。
【0345】
Poly-Prepカラム(BIO-RAD社製)にTALONレジン(Clontech社製)を0.5mL充填し、50mmol/Lのリン酸バッファー(pH6.7)と0.3mol/LのNaClとの混合液10mLにて洗浄した。該混合液は以下の手順で調製した。リン酸二水素ナトリウム・二水和物(ナカライテスク社製)31.21gを超純水1Lに溶解させ、0.2mol/Lのリン酸二水素ナトリウム溶液を調製した。
【0346】
リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(純正化学社製)71.64gを超純水1Lに溶解させ、0.2mol/Lのリン酸水素二ナトリウム溶液を調製した。NaCl(和光純薬社製)292.2gを超純水800mLに溶解させ、5.0mol/LのNaCl溶液を調製した。50mmol/Lのリン酸二水素ナトリウム溶液と0.3mol/LのNaClの混合液と50mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム溶液と0.3mol/LのNaClの混合液をそれぞれ作製し、リン酸水素二ナトリウム溶液にpHを測定しながら、リン酸二水素ナトリウム溶液を添加して調製した。
【0347】
上記で調製したFab発現上清をカラムにアプライし、50mmol/Lのリン酸バッファー(pH6.7)と0.3mol/LのNaClとの混合液10mL、続いて50mmol/Lのリン酸バッファー(pH6.7)と0.3mol/LのNaClと5mmol/Lのimidazol(ナカライテスク社製)との混合液10mLにて洗浄を行った。50mmol/Lのリン酸バッファー(pH6.7)と0.3mol/LのNaClと150mmol/Lのimidazolとの混合液0.5mLにて3回溶出を行い、全画分の280nmの吸収値を測定後、2回目の回収画分を使用した。
【0348】
Amicon Ultra-4 30K(Millipore社製)を用いて、20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液へのバッファー交換を行った。適量のバッファーを充填しながら、遠心濃縮[CR21E(日立製作所社製)、7000g、4℃、4分間]を3回行い、バッファー交換を行った。最終サンプルは、遠心分離[CF15R(日立製作所社製)、15000rpm、4℃、5分間]を行い、上清を回収して、以降の実験に使用した。
【0349】
取得したCys残基置換抗Her2ヒト化Fabについては、非還元SDS-PAGE(10%PAGEL、アトー社製)にて展開することで、単量体含量を解析した。
【0350】
上述の発現、精製の結果、非還元SDS-PAGEにて単量体含量が90%以上であるものを選抜した。その結果、軽鎖Q124C、軽鎖H198C、軽鎖L201C、重鎖A140C、重鎖K147C、重鎖S183Cを含め、Cys残基への置換部位を複数個見出すことができた。見出したCys残基への置換部位は、Ser残基、Ala残基、Val残基といったCys残基との構造類似残基に限定されることは無く、多様であった。
【0351】
〔実施例3〕
PEG化抗Her2ヒト化Fabの調製とPEG化効率の検討
実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabを0.5〜1mg/Lの濃度に調整した。Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabに対して20当量に相当するマレイミド型のPEG試薬(平均分子量20kDa、SUNBRIGHT ME-200MAOB、日本油脂社製)を加えて、室温で2時間反応させた。反応前後のサンプルを非還元SDS-PAGE(10%PAGEL、アトー社製)にて展開し、PEG化物の生成率をGS-800 Calibrated Densitometer(BIO-RAD社製)にて解析した。
【0352】
約50%以上の生成率が確認されたものについては、反応液をゲルろ過クロマトグラフィーにて分析、精製を行った。ゲルろ過クロマトグラフィーはAKTApurifier(GEヘルスケア社製)を用いて、カラム:Superose(登録商標) 12 10/300GL(GEヘルスケア社製)、通塔液:20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClの混合液、流速:0.5mL/min、温度:4℃という条件下にて、280nmの吸収値をモニタリングしながらサンプル溶出を行った。
【0353】
該通塔液については、以下の手順で調製した。クエン酸三ナトリウム二水和物(和光純薬社製)147gを500mLの超純水に溶解して、1.0mol/Lのクエン酸三ナトリウム溶液を調製した。クエン酸(和光純薬社製)19.2gを100mLの超純水に溶解して、1.0mol/Lのクエン酸溶液を調製した。
【0354】
クエン酸ナトリウム溶液に、pHを測定しながら、クエン酸溶液を添加して、1.0mol/Lのクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)を調製した。1.0mol/Lのクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)20mLと5.0mol/LのNaCl溶液30mLを混合して、超純水にて1Lにメスアップして、該通塔液を得た。PEG化体のピークをPEG化体と未反応単量体のピークのエリア面積で割った値を、PEG化効率として算出した。
【0355】
各Cys残基置換抗Her2ヒト化FabのPEG化効率を表3に示す。
【0357】
表3に示すように、Cys残基の還元工程を伴わない条件下においても、軽鎖Q124C(85%)、軽鎖L201C(80%)、重鎖A140C(81%)は80%以上のPEG化効率であり、高効率でPEG化体を形成出来ることを見出した。中でも、軽鎖Q124Cは、85%以上の高効率でPEG化体を形成した。また軽鎖H198C、重鎖K147C、重鎖S183Cにおいても、先述した3ヶ所のCys残基置換部位よりも劣るものの、50%前後の効率でPEG化体を形成出来ることを見出した。
【0358】
〔実施例4〕
Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab中のCys残基の反応性の検討
Arch. Biochem. Biophys., 119, 41(1967)の記載に準じて、実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab中のCys残基の反応性を、弱酸性条件下、4, 4’-ジチオピリジン(4-PDS)を用いて評価した。
【0359】
各試薬の希釈には、20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と2mmol/Lのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と150mmol/LのNaClの混合液を用いた。該混合液は、実施例3にて作成した通塔液100mLに、0.5mol/LのEDTA(ナカライテスク社製)400μLを添加して調製した。
【0360】
検量線作成には、N-アセチル-L-システイン(純正化学社製)の希釈溶液を用い、それぞれの試験区毎に検量線を作成した。4-PDS(ナカライテスク社製)は、適量をメタノールに溶解させ100mmol/Lの濃度に調整後、上記クエン酸バッファー希釈用混合液にて1mmol/Lに希釈して使用した。
【0361】
N-アセチル-L-システインの希釈溶液50μL、または10μmol/Lに調整した実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab溶液50μLを4-PDS希釈溶液50μLと混合し、室温で30分間反応後、UV-VISIBLE SPECTROPHOTOMETER UV-1700(島津製作所社製)にて、反応により生成した4-thiopyridoneが吸収極大(ε=1.98x10
4)を示す324nmの吸収値を測定した。
【0362】
N-アセチル-L-システインの吸収値にて作成した検量線から1mol/LのCys残基の理論値を算出後、各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabの吸収値からCys残基置換抗Her2ヒト化Fab1分子に含まれる反応性を有するCys残基の数を算出した。
【0363】
各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab1分子に含まれる反応性を有するCys残基の数を表4に示す。
【0365】
表4に示すように、4-PDSに代表される低分子に対するCys残基の反応性において、上述の実施例3にて高いPEG化効率を示した軽鎖Q124C、軽鎖L201C、重鎖A140Cにおいても1以上の高い反応性を示した。一方で、重鎖A141Cは、PEG化物をほとんど形成しないが、4-PDSでの反応性検証では、1以上の高い反応性が認められた。
【0366】
従って、4-PDSに代表される低分子化合物の反応性のみでは、特に高分子修飾基に対する、化学修飾の能力を正確に予測出来ない。しかしながら、上述の実施例3に示す高分子リンカーとの化学修飾による直接検討が、置換により新たに導入されたCys残基部位の化学修飾サイトとしての可能性を予測する上で、有効な方法であると考えられた。
【0367】
〔実施例5〕
Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabの抗原結合活性の検討
Protein Eng. Des. Sel., 17, 455 (2004)の記載に準じて調製したHer2細胞外ドメインを、Phosphate Bufferd Saline(PBS)(ナカライテスク社製)で希釈して10μg/mLとし、96ウェルのELISA用プレート(グライナー社製)に50μL/ウェルで添加し、4℃で一晩固定化した。PBSにて洗浄後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(SIGMA社製)を含むPBSを100μL/ウェルで添加し、室温で1時間静置して吸着させた。
【0368】
PBSで洗浄後、実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabの希釈溶液を50μL/ウェルで添加し、室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20(ナカライテスク社製)を含むPBS(PBST)で洗浄し、PBSTにて1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(Fab’)
2抗体溶液(MP Biomedical社製)を二次抗体溶液として50μL/ウェルで添加し、室温で1時間反応させた。
【0369】
反応後、PBSTにて洗浄し、ELISA POD Substrate TMB Kit(ナカライテスク社製)の反応基質溶液を50μL/ウェルで添加し、室温で15分間反応後、反応停止液を50μL/ウェルで添加した。EnVision 2102 Multilabel Reader(Perkin Elmer社)にて測定を行い、各ウェルの450nmの吸光度から600nmの吸光度を差し引いた数値を測定値として利用し、Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabの抗原結合活性を算出した。
【0370】
各Cys残基置換Fabの抗原結合活性を
図1、
図2に示す。
【0371】
図1および2に示すように、上述の実施例3にて、高いPEG化効率を示した軽鎖Q124C、軽鎖H198C、軽鎖L201C、重鎖A140C、重鎖K147C、重鎖S183Cは、WTと同等の抗原結合活性を保持していることがわかった。
【0372】
〔実施例6〕
Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Fab-ADM)の調製
1. Maleimide-PEG-Val-Cit-ADMの調製
ペプチド合成の手順書、例えば、ペプチド合成の基礎と実験, 丸善 (1985)、実験化学講座, 第4版, 第22巻, 有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド, 丸善(1999)等に準じて、担体樹脂(ジクロロトリチル樹脂、AnaSpec社製)上で、N
α-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-L-シトルリン(Fmoc-Cit-OH、渡辺化学社製)、N
α-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-L-バリン(Fmoc-Val-OH、渡辺化学社製)を順次縮合して、H-Val-Cit-OHを取得した。
【0373】
得られたH-Val-Cit-OHとNHS-PEG
12-Maleimide(Thermo Fisher Scientific社製)をジメチルホルムアミド、トリエチルアミン中で混合した後、J. Control. Release 69, 27 (2000)に記載の方法に準じて、精製し、Maleimide-PEG-Val-Cit-OHを取得した。
【0374】
得られたMaleimide-PEG-Val-Cit-OHとアドリアマイシン(ADM)(和光純薬製)を、J. Control. Release 79, 229 (2002)に記載の方法に準じて縮合し、Maleimide-PEG-Val-Cit-ADMを取得した。
【0375】
2. Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Fab-ADM)の調製
20mmol/Lの クエン酸バッファー(pH7.0)に置換した、実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabに、得られたMaleimide-PEG-Val-Cit-ADMをDMSO(和光純薬社製)にて溶解後、各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabに対して20当量を混合して、室温で2時間反応させた。
【0376】
反応終了後、カラムとしてSuperose(登録商標)12 10/300GL(GEヘルスケア社製)、通塔液として20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClの混合液を用いて、ゲルろ過クロマトグラフィーを行い、未反応試薬を除去した。該通塔液は、実施例3と同様の方法で調製した。Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Fab-ADM)を含有した分画を回収後、Amicon Ultra-4 30K(Millipore社製)を用いて濃縮し、精製Fab-ADMをそれぞれ得た。
【0377】
〔実施例7〕
Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Fab-ADM)の細胞傷害活性評価
標的細胞株としては、Her2抗原を高発現している乳癌細胞株SK-BR-3(ATCC:HTB-30)およびHer2抗原を低発現している乳癌細胞株MCF-7(ATCC: HTB-22)を用いた。
【0378】
96ウェルの白色平底プレート(グライナー社製)に標的細胞株100μL(5x10
3個/ウェル)をそれぞれ分注し、37℃で一晩、CO
2インキュベーター内で培養した。培養後、実施例2で得られたFab-ADMあるいはWTを予め種々の濃度に希釈し、それぞれ50μL/ウェルで添加し、さらに37℃で5日間培養した。各ウェルに50μLのCellTiter-Glo試薬(プロメガ社製)を添加し、室温で10分間インキュベートした後、EnVision 2102 Multilabel Reader(Perkin Elmer社製)にて、発光を検出し、Fab-ADMおよびWTの細胞傷害活性を算出した。
【0379】
各Fab-ADMの細胞傷害活性を
図3、
図4に示す。
【0380】
図3および4に示すように、重鎖A140Cが導入された抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(ADM-A140C)は、SK-BR-3、MCF-7において細胞傷害活性を示すことを確認できた。さらに、軽鎖L201Cが導入された抗Her2ヒト化Fab-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(ADM-L201C)も同様に、SK-BR-3において細胞傷害活性を示した。従って、本発明のCys残基に置換された抗体修飾体または該抗体フラグメント修飾体が抗体薬物融合体として医薬への使用が可能であることが示された。
【0381】
〔実施例8〕
抗CD20キメラFabのWTおよびCys残基置換体の調製
実施例1と同様の方法で、Rituximab(Rituxisan)のFab軽鎖領域のアミノ酸配列(配列番号19)とFab重鎖領域のアミノ酸配列(配列番号20)[Cancer Res., 68, 3863 (2008)]をもとに、抗CD20キメラ抗体の遺伝子設計を行ない、WT、Cys残基置換体(軽鎖Q124C、軽鎖L201C、重鎖A140C)の発現ベクターをそれぞれ作製した。
【0382】
実施例2と同様の方法で、得られたWT、Cys残基置換体(軽鎖Q124C、軽鎖L201C、重鎖A140C)の発現ベクターを用いて、抗CD20キメラFabのWTおよびCys残基置換体のタンパク質をそれぞれ発現し、精製した。
【0383】
〔実施例9〕
Cys残基置換抗CD20キメラFabのPEG化効率の検討
実施例8で得られた各Cys残基置換抗CD20キメラFabを0.5〜1mg/Lの濃度に調整した。Cys残基置換抗CD20キメラFabに対して20当量に相当するマレイミド型のPEG試薬(平均分子量20kDa、SUNBRIGHT ME-200MAOB、日本油脂社製)を加えて、室温で2時間反応させた。
【0384】
得られた反応液をゲルろ過クロマトグラフィーにて分析を行った。ゲルろ過クロマトグラフィーはProminence(島津製作所社製)を用いて、カラム:G3000SWXL(東ソー社製)、通塔液:20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClの混合液、流速:0.5mL/min、温度:25℃という条件下にて、280nmの吸収値をモニタリングした。PEG化体のピークをPEG化体と未反応単量体のピークのエリア面積で割った値を、PEG化効率として算出した。
【0385】
各Cys残基置換抗CD20キメラFabのPEG化効率を表5に示す。
【0387】
表5に示すように、実施例3の抗Her2ヒト化Fabと同様、抗CD20キメラFabにおいても、軽鎖Q124C(94%)、軽鎖L201C(84%)、重鎖A140C(93%)は80%以上のPEG化効率であり、高効率でPEG化体を形成出来ることを見出した。中でも、軽鎖Q124C、重鎖A140Cは90%を超える高効率でPEG化体を形成した。
【0388】
本結果から、見出したCys導入部位が、抗体の可変領域のアミノ酸配列に依存することなく、高い反応性を有することが示された。
【0389】
〔実施例10〕
5’末端にそれぞれSH修飾(S化)、FITC修飾を行なった二本鎖DNA(S化-FITC-dsDNA)の調製
5’末端をS化した32merからなるDNA配列(配列番号23)と5’末端をFITC修飾した配列番号23の相補配列(配列番号24)を設計し、購入した(シグマ アルドリッチ社製)。両一本鎖DNA(ssDNA)を10mmol/LのTrisバッファー(pH8.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液(STE溶液)にて、240μmol/Lに調整した。90℃にて10分間の加熱変性を加えた後、自然冷却を行い、アニーリング反応を行なった。
【0390】
二本鎖DNA(dsDNA)の形成は、TAE-PAGEにての展開と、陰イオン交換クロマトグラフィーにて、各ssDNAをコントロールにおいて確認した。TAEについては、UltraPure DNA Typing Grade 50 x TAE buffer(ギブコ社製)を超純水にて50倍希釈して使用した。
【0391】
陰イオン交換クロマトグラフィーについては、システムコントローラー: SCL-10A、ポンプ: LC-10Ai(島津製作所社製)を用いて、カラム:TSKgel DEAE-5PW(東ソー社製)、通塔液:A; 10mmol/LのTrisバッファー(pH8.0)と150mmol/LのNaClの混合液、B; 10mmol/LのTrisバッファー(pH8.0)と1mol/LのNaClの混合液、流速:1mL/min、温度:25℃という条件下にて、260nm、495nmの吸収値をモニタリングした。検出器は、SPD-M10A(島津製作所社製)を利用した。
【0392】
該dsDNA溶液をSTE溶液にて、500μLに調整した後、0.04mol/Lのジチオスレイトール(DTT、ナカライ社製)にて、室温で24時間反応を行い、S化部分の保護基を還元した。該DNA溶液に対して、3mol/Lの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を50μL加えて混合した後、エタノール(和光純薬社製)を1mL混合して、-80℃にて20分間静置した。
【0393】
遠心分離[CF15R(日立製作所社製)、15000rpm、4℃、10分間]を行い、上清を除去した。沈殿物に対して、予め-20℃に冷却していた70%のエタノール溶液を1mL加えて、遠心分離[CF15R(日立製作所社製)、15000rpm、4℃、5分間]を行い、上清を除去した。
【0394】
得られた沈殿物は、真空乾燥を行なった後、20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液にて溶解して、S化-FITC-dsDNAとして次項の実施例に供した。
【0395】
〔実施例11〕
抗Her2ヒト化Fab-DNAコンジュゲートの調製
実施例2で得られたCys残基置換抗Her2ヒト化Fab(A140C)を0.5〜1mg/Lの濃度に調整した。A140Cに対して、20当量に相当するジマレイミド試薬(BM(PEG)3、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を添加して、4℃にて一晩反応を行なった。
【0396】
該反応液は、NAP5(GEヘルスケア社製)を利用して、通塔液:20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液にて、未反応のBM(PEG)3を除去した。精製したマレイミド化A140C(Mal-A140C)は、Ultrafree-0.5 Centrifugal Filter Device(30K NMWL、ミリポア社製)を利用して、遠心濃縮[CF15R(日立製作所社製)、7000rpm、4℃]を行い、 5mg/mLまで濃縮した。非還元SDS-PAGE(5-20%PAGEL、アトー社製)にて展開することで、BM(PEG)3試薬を介した二量体が形成されていないことを確認した。
【0397】
Mal-A140Cに対して、実施例10で得られたS化-FITC-dsDNAを1/10当量になるように添加して、4℃で一晩反応させた。反応前のS化-FITC-dsDNAとMal-A140Cと混合したS化-FITC-dsDNAをそれぞれ、TAE-PAGE(15-20%PAGEL、アトー社製)にて展開して、LAS4000にてFITCの蛍光を検出した。取得された画像を
図5に示す。
【0398】
S化FITC-dsDNAが消失して、高分子量部分にFITCを含有する新たなバンドの形成を確認でき、本発明のCys残基置換Fabが、核酸とのコンジュゲート体にも応用可能であることが示された。
【0399】
〔実施例12〕
抗Her2ヒト化Fab-Alexa Fluor 488コンジュゲートの調製
実施例2で得られたCys残基置換抗Her2ヒト化Fab(A140C)を0.5〜1mg/Lの濃度に調整した。A140Cに対して20当量に相当するAlexa Fluor 488 C5-maleimide(インビトロジェン社製)を加えて、4℃で一晩反応させた。該反応液は、NAP5(GEヘルスケア社製)を利用して、通塔液:20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液にて、未反応のAlexa Fluor 488 C5-maleimideを除去した。
【0400】
UV-VISIBLE SPECTROPHOTOMETER UV-1700(島津製作所社製)を利用して、精製したA140C-Alexa Fuor 488の280nmと495nmの吸光度を測定し、インビトロジェン社から提供されている手順書に準じて、修飾効率を算出した。その結果、96%の高い修飾効率が算出され、本発明のCys残基置換抗Her2ヒト化Fabが、蛍光試薬とのコンジュゲート体へと展開可能であることが示された。
【0401】
〔実施例13〕
抗Her2ヒト化Fab-Biotinコンジュゲートの調製とストレプトアビジン(SA)結合活性評価
実施例2で得られた各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabに、Maleimide-PEG2-Biotin(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)をDMSO(和光純薬社製)にて溶解後、各Cys残基置換抗Her2ヒト化Fabに対して20当量を混合して、4℃で一晩反応させた。
【0402】
反応終了後、カラムとしてSuperose(登録商標)12 10/300GL(GEヘルスケア社製)、通塔液として20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClの混合液を用いて、ゲルろ過クロマトグラフィーを行い、未反応試薬を除去した。該通塔液は、実施例3と同様の方法で調製した。Cys残基置換抗Her2ヒト化Fab-Biotin修飾体(Fab-Biotin)を含有した分画を回収後、Amicon Ultra-4 30K(Millipore社製)を用いて濃縮し、精製Fab-Biotinをそれぞれ得た。
【0403】
ストレプトアビジン(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)をPBSで希釈して5μg/mLとし、96ウェルのELISA用プレートに50μL/ウェルで添加し、4℃で一晩固定化した。PBSにて洗浄後、1%BSAを含むPBSを100μL/ウェルで添加し、室温で1時間静置して吸着させた。PBSで洗浄後、本実施例で得られた各Fab-Biotin の希釈溶液(0.2μg/mL)を50μL/ウェルで添加し、室温で1時間反応させた。反応後、PBSTで洗浄し、PBSTにて1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(Fab’)2抗体溶液(MP Biomedical社製)を二次抗体溶液として50μL/ウェルで添加し、室温で1時間反応させた。
【0404】
反応後、PBSTにて洗浄し、ELISA POD Substrate TMB Kitの反応基質溶液を50μL/ウェルで添加し、室温で15分間反応後、反応停止液を50μL/ウェルで添加した。EnVision 2102 Multilabel Readerにて測定を行い、各ウェルの450nmの吸光度から600nmの吸光度を差し引いた数値を測定値として利用し、各Fab-BiotinのSA結合活性を算出した。各Cys残基置換Fabの抗原結合活性を
図6に示す。
【0405】
図6に示すように、実施例3にて、高いPEG化効率を示した軽鎖Q124C、軽鎖L201C、重鎖A140Cは、野生型と比較して、強いSA結合活性を有することが確認できた。
【0406】
〔実施例14〕
動物細胞用抗Her2ヒト化抗体及び抗EGFRキメラ抗体発現ベクターの構築
1. 野生型発現ベクターの構築
動物細胞用抗Her2ヒト化抗体発現ベクターは、以下の手順で構築した。動物細胞用発現ベクターの基本骨格としては、N5KG1-Val Larkベクター[IDEC Pharmaceuticals, N5KG1(米国特許第 6001358号明細書)の改変ベクター)を利用した。
【0407】
抗Her2ヒト化抗体の遺伝子配列設計においては、Trastuzumab(Herceptin)のFab軽鎖領域のアミノ酸配列(配列番号1)とFab重鎖領域のアミノ酸配列(配列番号2) [Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 4285 (1992)]をもとに設計を行った。
【0408】
抗EGFRキメラ抗体の遺伝子配列設計においては、Cetuximab(Erbitux)のFab軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号25)とFab重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号26) [米国特許第7060808号明細書]をもとに設計を行った。
【0409】
軽鎖に関しては、5’末端にSalI制限酵素認識配列とBglII制限酵素認識配列とシグナル配列、3’末端にEcoRI制限酵素認識配列とBsiWI制限酵素認識配列を付加した遺伝子配列を、抗Her2ヒト化抗体(配列番号27)並びに抗EGFRキメラ抗体(配列番号28)について設計した。
【0410】
重鎖に関しては、5’末端にSalI制限酵素認識配列とシグナル配列を加えて、3’末端にはEcoRI制限酵素認識配列とNheI制限酵素認識配列を含む遺伝子配列を、抗Her2ヒト化抗体(配列番号29)並びに抗EGFRキメラ抗体(配列番号30)について設計した。
【0411】
軽鎖、重鎖の配列は、20 bpから30 bpの塩基配列が重なり合うように、合成DNA配列を設計し、PCR反応にて連結することで調製した。軽鎖に関しては、SalIとEcoRサイトを利用して、pFLAG-CTSに導入を行い、それぞれpFLAG-TraLV、pFLAG-CetLVとした。
【0412】
重鎖に関しては、EcoRIとSalIサイトを利用して、pFLAG-CTSに導入を行い、それぞれpFLAG-TraHV、pFLAG-CetHVとした。pFLAG-TraLV、pFLAG-CetLVをBglIIとBsiWIにて処理することで、軽鎖可変フラグメントをそれぞれ取得し、pFLAG-TraHV、pFLAG-CetHVをSalIとNheIにて処理することで、重鎖可変フラグメントをそれぞれ取得した。
【0413】
軽鎖可変フラグメントと重鎖可変フラグメントを、順次、N5KG1-Val Larkに、Ligation High溶液(東洋紡績社製)にて連結した。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製した。
【0414】
各プラスミドDNAをBig Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、軽鎖フラグメントと重鎖フラグメントの挿入を確認した。得られた野生型Trastuzumab、Cetuximabを発現するベクターは、それぞれ、N5KG1-Tra、N5KG1-Cetと命名した。
【0415】
2. Cys点変異導入
QuikChange II XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)の説明書に基づいて、プライマーを設計した。軽鎖Q124Cの導入に関してはQ124C01(配列番号7)とQ124C02(配列番号8)を、軽鎖L201Cの導入に関してはL201C01(配列番号11)とL201C02(配列番号12)を、重鎖A140Cの導入に関してはA140C01(配列番号13)とA140C02(配列番号14)をそれぞれ使用した。
【0416】
点変異導入反応液は、N5KG1-Val Lark10ng、各プライマー125ngに、添付のdNTPmix1μL、Quik Solution reagent3μL、10 x reaction buffer5μL、PfuUltra HF DNA polymerase1μLを加えて、滅菌水にて50 μLに調整したものを用いた。
【0417】
増幅反応は、95℃で1分間の加熱の後、95℃で50秒間、60℃で50秒間、68℃で9分間からなる反応を1サイクルとした18サイクルの条件で行い、68℃で7分間の伸長反応を最後に行った。
【0418】
得られた反応液に対して、Dpn I1μLを添加して、37℃で1時間切断反応を行った。得られた反応液を、アガロースゲル電気泳動に供し、約9kbpの目的断片の増幅を確認した後、そのうち2μLを用いて、添付のXL10-Goldを形質転換した。
【0419】
得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、Cys点変異導入を確認した。得られた各Cys点変異を導入したベクターは、それぞれN5KG1-Q124C、N5KG1-L201C、N5KG1-A140Cと命名した。
【0420】
3. Cys残基置換抗Her2ヒト化抗体及びCys残基置換抗EGFRキメラ抗体の発現ベクターの構築
A140Cについては、N5KG1-A140CとN5KG1-Tra及びN5KG1-Cetを利用して作製した。N5KG1-A140CをNfeIとBamHIにて処理することで、A140Cの変異を有する重鎖定常領域フラグメントを取得し、N5KG1-Tra及びN5KG1-Cetを NfeIとBamHIにて処理することで、重鎖定常領域が除去されたフラグメントをそれぞれ取得した。
【0421】
取得したフラグメントを、Ligation High溶液(東洋紡績社製)にて連結した。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製した。
【0422】
各プラスミドDNAをBig Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、A140Cを有する全長Trastuzumabの塩基配列並びに全長Cetuximabの塩基配列の挿入を確認した。得られた各Cys残基置換抗体の発現ベクターは、それぞれN5KG1-Tra-A140C、N5KG1-Cet-A140Cと命名した。
【0423】
Q124Cについては、N5KG1-Q124CとN5KG1-Tra及びN5KG1-Cetを利用して作製した。N5KG1-Q124CをBsiWIとEcoRIにて処理することで、Q124Cの変異を有する軽鎖定常領域フラグメントを取得し、N5KG1-Tra及びN5KG1-Cet を、BsiWIとEcoRIにて処理することで、軽鎖定常領域が除去されたフラグメントをそれぞれ取得した。
【0424】
取得したフラグメントを、Ligation High溶液(東洋紡績社製)にて連結した。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応させた。
【0425】
その後、DNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)により、Q124Cの変異を有する全長Trastuzumabの塩基配列並びに全長Cetuximabの塩基配列の挿入を確認した。得られた各Cys残基置換抗体の発現ベクターは、それぞれN5KG1-Tra-Q124C、N5KG1-Cet-Q124Cと命名した。
【0426】
L201Cについては、N5KG1-Q124Cの代わりにN5KG1-L201Cを用いること以外は、Q124Cと同様の手法にて調製した。得られた各Cys残基置換抗体の発現ベクターは、それぞれN5KG1-Tra-L201C、N5KG1-Cet-L201Cと命名した。
【0427】
〔実施例15〕
抗Her2ヒト化抗体及び抗EGFRキメラ抗体のWT及びCys残基置換抗体の調製
実施例14にて構築した動物細胞用の抗体発現ベクターの遺伝子導入は、CHO-K1、またはFreeStyle
TM 293-F Cells(invitrogen社製)を宿主細胞として行った。
【0428】
CHO-K1を宿主細胞に用いた場合は、FreeStyle
TM MAX CHO Expression System(invitrogen社製)の説明書に基づいて、遺伝子導入から抗体の発現を行った。312.5μgの発現ベクタープラスミドを、OptiPro
TM SFM(invitrogen社製)と混合して計5mLとした。
【0429】
312.5μLのFreeStyle
TM MAX Transfection Reagent(invitrogen社製)を、OptiPro
TM SFMと混合して計5mLとした。発現ベクタープラスミド溶液とFreeStyle
TM MAX Transfection Reagent 溶液を混合し、室温で10分間静置した。FreeStyle
TM CHO Expression Medium(invitrogen社製)にて、1.0 x 10
6 cells/mLの密度で培養したCHO-K1250mLに対して、全量を加えた後、37℃、8%CO
2、135rpmの設定条件下で、1日〜5日間培養した。
【0430】
FreeStyle
TM 293-F Cells を宿主細胞に用いた場合は、FreeStyle
TM MAX 293 Expression System(invitrogen社製)の説明書に基づいて、遺伝子導入から抗体の発現を行った。250μgの発現ベクタープラスミドを、Opti-MEM(商標登録表示)(invitrogen社製)と混合して計8.3mLとした。500μLの293fectin
TM(invitrogen社製)をOpti-MEM(商標登録表示)と混合して計8.3mLとして、5分間静置した。
【0431】
発現ベクタープラスミド溶液と293fectin
TM溶液を混合し、20分間静置した。FreeStyle
TM 293 Expression Medium(invitrogen社製)にて、1.0 x 10
6 cells/mLの密度で培養したFreeStyle
TM 293-F Cells250mLに対して、全量を加えた後、37℃、8%CO
2、125rpmの設定条件下で、1日〜5日間培養した。
【0432】
細胞培養液を遠心分離し[CR21E(日立製作所社製)、2600rpm、室温、30分間]、上清を回収し0.22μmメンブレンフィルター(IWAKI社製)を通して、精製に使用した。Poly-Prepカラム(BIO-RAD社製)にMabSelectレジン(GE Healthcare社製)を1mL充填し、DPBS(invitrogen社製)20mLにて洗浄した。
【0433】
上記で調製したCys残基置換抗体発現上清をカラムにアプライし、DPBS(invitrogen社製)20mLにて洗浄を行った。20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH3.0)と50mmol/LのNaClとの混合液3mLにて溶出を行い、全画分を回収した。
【0434】
Vivaspin 20 30K(GE Healthcare社製)を用いて、20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液へのバッファー交換を行った。適量のバッファーを充填しながら、遠心濃縮[Centrifuge 5810R(Eppendorf社製)、3600rpm、4℃、20分間]を2回行い、バッファー交換を行った。最終サンプルは、遠心分離[CF15R(日立製作所社製)、15000rpm、4℃、5分間]を行い、上清を回収して、以降の実験に使用した。
【0435】
〔実施例16〕
Cys残基置換抗Her2ヒト化抗体及び抗EGFRキメラ抗体中のCys残基の反応性の検討
方法に関しては、実施例4に準じて実施した。各Cys残基置換抗体1分子に含まれる反応性を有するCys残基の数を表6に示す。
【0437】
表6に示すように、各Cys残基置換抗体中のCys残基の反応性は、1.6〜1.9を示した。また、表6において、Cys残基置換Fabは、80%以上のPEG化効率を示したデータと相関する結果を確認することができた。
【0438】
〔実施例17〕
Cys残基置換抗EGFRキメラ抗体のPEG化効率の検討
実施例15で得られた各Cys残基置換抗EGFRキメラ抗体を0.5〜1mg/Lの濃度に調整した。Cys残基置換抗EGFRキメラ抗体に対して20当量に相当するマレイミド型のPEG試薬(平均分子量20kDa、SUNBRIGHT ME-200MAOB、日本油脂社製)を加えて、室温で2時間反応させた。
【0439】
得られた反応液を、100μmol/LDTT条件下にて還元後、10%PAGEL(アトー社製)にて展開し、目的バンドのシフトを確認することで、PEG化の進行を確認した。本発明のCys残基置換抗体が、PEG分子とのコンジュゲート体へと展開可能であることが示された。
【0440】
〔実施例18〕
抗EGFRキメラ抗体-Alexa Fluor 488コンジュゲートの調製
実施例15で得られたCys残基置換抗EGFRキメラ抗体(Q124C)を3mg/mLの濃度に調整した。Q124Cに対して20当量に相当するAlexa Fluor 488 C5-maleimide(インビトロジェン社製)を加えて、4℃で一晩反応させた。該反応液は、NAP5(GEヘルスケア社製)を利用して、通塔液:20mmol/Lのクエン酸バッファー(pH6.0)と150mmol/LのNaClと2mmol/LのEDTAの混合液にて、未反応のAlexa Fluor 488 C5-maleimideを除去した。
【0441】
UV-VISIBLE SPECTROPHOTOMETER UV-1700(島津製作所社製)を利用して、精製したL201C-Alexa Fuor 488の280nmと494nmの吸光度を測定し、インビトロジェン社から提供されている手順書に準じて、修飾効率を算出した。
【0442】
その結果、Q124C1分子に対して、2.2分子のAlexa Fluor 488の結合が確認され、理論値(2.0)と同等の修飾効率であることを確認できた。本発明のCys残基置換抗体が、蛍光試薬とのコンジュゲート体へと展開可能であることが示された。
【0443】
〔実施例19〕
Cys残基置換抗EGFRキメラ抗体-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Ab-ADM)の調製
Maleimide-PEG-Val-Cit-ADMの調製に関しては、実施例6に準じて実施した。実施例15で得られたCys残基置換抗EGFRキメラ抗体(Q124C)に、得られたMaleimide-PEG-Val-Cit-ADMをDMSO(和光純薬社製)にて溶解後、Q124Cに対して20当量を混合して、室温で2時間反応させた。
【0444】
反応終了後、カラムとしてMono S(登録商標)5/50GL(GEヘルスケア社製)、通塔液として、Aバッファー; 20mmol/Lの酢酸バッファー(pH5.0)、Bバッファー; 20mmol/Lの酢酸バッファー(pH5.0)と1.0mol/LのNaClの混合液を利用して、0-1.0mol/LのNaClのグラジエントにて、陽イオン交換精製を行ない、未反応試薬を除去した。
【0445】
前記通塔液については、以下の手順で調製した。酢酸(和光純薬社製)22.9mLを1Lの超純水にて希釈して、0.4mol/Lの酢酸溶液を調製した。酢酸ナトリウム(和光純薬社製)32.8gを1Lの超純水に溶解して、0.4mol/Lの酢酸ナトリウム溶液を調製した。
【0446】
NaCl(和光純薬社製)233.8gを超純水1Lに溶解させ、4.0mol/LのNaCl溶液を調製した。該酢酸溶液296mLと該酢酸ナトリウム溶液704mLを混合することで、0.4mol/Lの酢酸バッファー(pH5.0)を調製した。該酢酸バッファー50mLを超純水にて1Lにメスアップして、Aバッファーを得た。
【0447】
前記酢酸バッファー50mLと該NaCl溶液250mLを混合し、超純水にて1Lにメスアップして、Bバッファーを得た。ADM由来の特性吸収(495nm)を有するCys残基置換抗EGFRキメラ抗体(Q124C)-PEG-Val-Cit-ADM修飾体(Q124C-ADM)を含有した分画を回収後、Amicon Ultra-4 30K(Millipore社製)を用いて濃縮し、精製Q124C-ADMを得た。
【0448】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、 2010年3月26日付けで出願された米国仮出願(61/317935号)および2010年10月5日付けで出願された米国仮出願(61/389887号)に基づいており、その全体が引用により援用される。