特許第5767241号(P5767241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767241水晶体超音波乳化吸引術用システムのための温度管理アルゴリズム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767241
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】水晶体超音波乳化吸引術用システムのための温度管理アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   A61F9/007 130B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-543161(P2012-543161)
(86)(22)【出願日】2010年12月2日
(65)【公表番号】特表2013-513427(P2013-513427A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】US2010058692
(87)【国際公開番号】WO2011071744
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年11月8日
(31)【優先権主張番号】12/634,283
(32)【優先日】2009年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ディー.バッシンガー
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル ボウクニー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディー.モーガン
(72)【発明者】
【氏名】アフマド サレヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダン テオドレスク
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530145(JP,A)
【文献】 特表2004−507321(JP,A)
【文献】 特表2007−507312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースに供給される電力を管理するための制御システムであって、
灌流圧力を測定するための灌流圧力センサーと、
前記ハンドピースに超音波電力を提供するための電源と、
該電源を制御するためのコントローラーと
を具備し、
該コントローラーは、前記灌流圧力電力レベル、及び灌流スリーブと水晶体超音波乳化吸引術用ニードルとの間の摩擦を表す値に基づいて温度値を計算し、該温度の計算値が温度の閾値を超えると、該温度の計算値に比例して前記電力レベルを減少させる、制御システム。
【請求項2】
前記温度の計算値が前記コントローラーへの入力データである、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラーが前記電力レベルを滑らかに減少させる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラーが更に前記温度の計算値を前記温度の閾値と比較する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラーが、前記温度の計算値に比例して前記電力レベルを減少させるとき、前記電源の外科医による制御を無効にする、請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラーが、前記温度の計算値に比例して前記電力レベルを減少させるとき、該電力レベルを設定された最小の電力レベルよりも減少させない、請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記温度の計算値が前記温度の閾値よりも小さいと、前記電源の外科医による制御が再開される、請求項1に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月9日に出願された米国特許出願シリアル番号12/634283の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、水晶体超音波乳化吸引術に関し、特に、水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースに適用されるパワーの大きさが温度に比例して変化せしめられる温度管理アルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0003】
人間の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を透過させて水晶体によって網膜上に像の焦点を合わせることによって視力を提供するように機能する。焦点が合わされる像の質は、眼の大きさ及び形状、並びに角膜及び水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。加齢又は病気によって水晶体の透明度が低下すると、網膜に透過されうる光が減少するので、視力が悪化する。眼の水晶体におけるこの欠陥は医学的には白内障として知られている。この疾患について認容された治療法は、外科的に水晶体を取り除いて水晶体の機能を人工的な眼内レンズ(IOL)に置き換えることである。
【0004】
米国では、白内障水晶体の大部分は、水晶体超音波乳化吸引術と呼ばれる外科技術によって取り除かれる。水晶体超音波乳化吸引術の手術に適切な典型的な外科用ハンドピースが、超音波駆動される水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースと、灌流スリーブによって囲まれた付属の中空の切断用ニードルと、電気制御コンソールとから成る。ハンドピース組立体は電気ケーブル及び可撓チューブによって制御コンソールに取り付けられる。コンソールは、電気ケーブルを通して、ハンドピースによって付属の切断用ニードルに伝えられる出力レベルを変化させる。可撓チューブは手術部位に灌流流体を供給し且つハンドピース組立体を通して眼から吸引流体を引き出す。
【0005】
典型的なハンドピースにおける作動部分には、一組の圧電結晶体に直接取り付けられた中空の共振バー(resonating bar)又は中空のホーン(horn)が中央に配設される。結晶体は、水晶体超音波乳化吸引術の間、ホーン及び付属の切断用ニードルの両方を駆動するのに必要とされる所要の超音波振動を供給し、且つコンソールによって制御される。結晶体/ホーン組立体は、柔軟な設置(flexible mounting)によって、ハンドピースの中空の本体またはハンドピースの外郭(shell)において遊動状態で支持される。ハンドピースの本体は、本体の末端部の小径部分または円錐状頭部(nosecone)で終端する。典型的には、円錐状頭部には、切断用ニードルの長さのほとんどを囲む中空の灌流スリーブを受け入れるために雄ネジが切られる。同様に、ホーンのボアには切断用先端部の雄ネジを受容すべくホーンの末端部において雌ネジが切られる。灌流スリーブは、円錐状頭部の雄ネジに螺合される雌ネジが切られたボアも有する。切断用ニードルは、その先端部が、灌流スリーブの開いた端部を越えて、予め定められた量だけ突出するように調整される。
【0006】
水晶体超音波乳化吸引術の手術の間、切断用ニードルの先端部及び灌流スリーブの端部は、眼の外側の組織における小さな切開創を通して眼の前嚢内に挿入される。外科医は、振動する先端部が水晶体を砕くように、切断用ニードルの先端部を眼の水晶体に接触させる。結果として生じる破片は、手術中に眼に提供された灌流溶液と共に切断用ニードルの内部ボアを通して眼の外側に吸引されて廃棄容器内に吸引される。
【0007】
手術を通して、灌流流体は、灌流スリーブと切断用ニードルとの間を通過して眼内に送り込まれ、灌流スリーブの先端部において、且つ/又は、灌流スリーブの端部の近くの灌流スリーブ内において切断された一つ以上のポート又は開口から眼内に抜け出す。灌流流体は、超音波切断用ニードルの振動によって発せられた熱から眼の組織を保護する。さらに、灌流流体は、眼からの吸引のために、乳化された水晶体の破片を遊動状態で支持する。
【0008】
切断用ニードルを振動させるべく、電力がハンドピースに適用される。概して、ニードル動作(又は振動)の大きさは、適用された電力に比例する。従来の水晶体超音波乳化吸引術用システムでは、ニードルは、前後に振動して長手方向のニードルストロークを生成する。改良されたシステムでは、ニードルは、ひねり動作又はねじれ動作において振動させられうる。振動の種類に拘わらず、振動の大きさ(又はニードルストロークの大きさ)は、適用される電力で変化する。
【0009】
手術中に起こりうる一つの合併症が切開部位における角膜の焼損である。これら角膜の焼損は角膜の切開創においてニードル(及び周囲のスリーブ)の熱によって引き起こされる。発明者は、この熱が、三つの基礎的要因、すなわち(ニードル振動の大きさ又はニードルストロークの大きさを順に決定する)ハンドピースに適用される電力の量、(流体が熱を運び去るので)目を通した流体の流量、及び切開創におけるニードルと周囲のスリーブとの間の摩擦の量(理解されうるように、スリーブとニードルとの間の嵌合がきつければきついほど、ニードルが振動するときにより多くの摩擦及び熱が生成される)に依存することを発見してきた。
【0010】
言い換えれば、熱は、切断用ニードルが周囲の灌流スリーブと擦れるので、角膜の切開創において生成される。この熱は、通常、灌流スリーブを通して眼の前房内に流れ且つ吸引ルーメンを通して眼の外側に流れる流体によって消散される。角膜の切開部位における切断用ニードルとスリーブとの間の摩擦は切開創の特徴に応じて変化しうる。一般的には、(手術の観点から望ましい)小さな切開創は、切開創の壁がニードルに対してスリーブを押圧するので、ニードルとスリーブとの間に大きな摩擦力をもたらしうる。斯かる場合、ニードルが振動されると、熱が生成される。眼を通して流れる流体が不十分である場合(又は過剰な熱が生成される場合)、角膜の焼損が生じうる。角膜の焼損は、角膜を歪めて乱視を引き起こすので問題である。白内障手術がより小さな切開創に向かって引き付けられてきたので、角膜の焼損のリスクは増加しているように思われる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の原理に一致した一つの実施形態では、本発明は水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースに供給される電力を管理するための制御システムである。制御システムは、灌流圧力センサーと、ハンドピースに電力を供給する電力を提供する電源と、電源を制御するコントローラーとを含む。コントローラーは、灌流圧力及び電力レベルに基づいて温度値を計算し、且つ、温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度の計算値に比例して電力レベルを減少させる。
【0012】
本発明の原理に一致した別の実施形態では、本発明は、水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースに供給される電力を管理するための制御システムである。制御システムは、ハンドピースに電力を供給する電源と、電源を制御するコントローラーとを含む。コントローラーは、灌流流体の流れ及び電力レベルに基づいて温度値を計算し、温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度の計算値に比例して電力レベルを減少させる。灌流圧力から灌流流体の流れを計算することができる。
【0013】
上記の一般的な記述及び以下の詳細な記述が、説明のための単なる例であって、特許請求の範囲に記載の発明の更なる説明を提供することが意図されていることが理解されるべきである。以下の記述及び本発明の実施例は本発明の追加の利点及び目的を説明し且つ提案する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、水晶体超音波乳化吸引術用システムの流路における構成部品の略図である。
図2図2は、水晶体超音波乳化吸引術用ニードル及び灌流スリーブの遠位端部の斜視図である。
図3図3は、本発明の原理に係る部分的なシステムの略図である。
図4図4は、本発明の原理に係る制御システムの一つの実施形態のブロック図である。
図5図5は、本発明の原理に係る制御システムの別の実施形態のブロック図である。
図6図6は、本発明の原理に係る連続モードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。
図7図7は、本発明の原理に係るパルスモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。
図8図8は、本発明の原理に係るパルスモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。
図9図9は、本発明の原理に係るバーストモード(burst mode)における温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。
図10図10は、本発明の原理に係るバーストモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面が、本明細書に包含されて本明細書の一部を構成し、本発明のいくつかの実施形態を示し、記述と併せて本発明の原理を説明するのに役立つ。
以下、本発明の模範的な実施形態が詳細に参照され、これら実施形態の例が添付の図面において示される。同一の又は同様の部品を参照するのに図面を通してできるだけ同一の参照番号が使用される。
【0016】
本発明の一つの実施形態では、図1は水晶体超音波乳化吸引術システムの流路における構成部品の略図である。図1は、白内障手術中の眼1145を通した流路を描写する。構成部品は、灌流流体源1105、灌流圧力センサー1130、灌流バルブ1135、灌流ライン11140、ハンドピース1150、吸引ライン1155、吸引圧力センサー1160、通気弁1165、ポンプ1170、容器1175及び排液バッグ1180を含む。灌流ライン1140は、白内障手術の間、眼1145に灌流流体を提供する。吸引ライン1155は、白内障手術の間、流体及び乳化された水晶体粒子を眼から取り除く。
【0017】
灌流流体は、灌流流体源1105から出ると、灌流ライン1140を通って眼1145内に進む。灌流圧力センサー1130は灌流ライン1140内の灌流流体の圧力を測定する。また、採用随意の灌流バルブ1135は灌流のオン/オフ制御のために提供される。灌流圧力センサー1130は任意の数の市販の流体圧力センサーによって実現され且つ灌流流路における任意の場所(灌流源1105と眼1145との間の任意の場所)に配設されうる。
【0018】
ハンドピース1150は、水晶体超音波乳化吸引術の間、眼1145内に設置される。ハンドピース1150は(図2において見られるような)中空のニードルを有し、中空のニードルは、病気に冒された水晶体を粉砕すべく眼内で超音波振動される。ニードルの周りに配設されたスリーブが灌流ライン1140からの灌流流体を提供する。(図12及び13においてより明確に示されるように)灌流流体はニードルの外側とスリーブの内側との間の空間を通過する。流体及び水晶体粒子は中空のニードルを通して吸引される。この態様では、中空のニードルの内部通路は吸引ライン1155に流体的に結合される。ポンプ1170は眼1145から吸引流体を引き出す。吸引圧力センサー1160は吸引ライン内の圧力を測定する。採用随意の通気弁はポンプ1170によって作り出された真空を通気するのに使用されうる。吸引流体は容器1175を通って排液バッグ1180内に入る。
【0019】
図2は従来技術の水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースの遠位端部の斜視図である。図2では、水晶体超音波乳化吸引術用ニードル1210が灌流スリーブ1230によって囲まれる。水晶体超音波乳化吸引術用ニードル1210は開放端部1220を有し、水晶体粒子は白内障手術中に眼から開放端部1220を通して吸引される。灌流スリーブ1230は採用随意の開口1240を有し、灌流流体は開口1240を通して眼内に流れる。ニードル1210及びスリーブ1230は両方とも白内障手術中に眼の前房内に挿入される。電力がハンドピースに適用されると、ニードル1210は超音波振動する。ニードル1210とスリーブ1230との間の摩擦は、特に切開部位において、熱を生じさせうる。きつい切開創はスリーブ1230をニードル1210に対して押圧し、このことは熱をもたらして角膜の焼損をもたらすことがある。
【0020】
図3は、本発明の原理に係る部分的なシステムの略図である。図3では、灌流流体源がハンドピース1150に灌流流体を提供する。灌流圧力センサーが灌流流体の圧力を測定する。電源120がハンドピース1150に電力を提供する。前述されたように、電源120はハンドピース1150に超音波電力(ultrasonic power)を提供し、超音波電力は水晶体超音波乳化吸引術用ニードルを振動させる。
【0021】
図4は、本発明の原理に係る制御システムの一つの実施形態のブロック図である。図4では、CPU116が電源120及び灌流圧力センサー1130に結合される。この態様では、CPU116は灌流圧力センサー1130から圧力情報を受信する。また、CPU116は電源120とインターフェースで接続して電源120の作動を制御し、このことによってハンドピースに送られる電力が制御される。前述されたように、CPU116は任意の適切なコントローラーでありうる。
【0022】
前述されたように、過剰な電力がハンドピースに適用されるとき、及び過小な灌流流体が眼を通して流れるとき、望ましくない熱が切開部位において生じることがある。灌流流体が熱を運び去るので、灌流流体の流れが減少すると(例えば閉塞が生じると)、熱が生じうる。一般的には、発生せしめられた熱の量は、ハンドピースに適用される電力の量と、眼を通した灌流流体の流れの量との関数である。灌流スリーブと水晶体超音波乳化吸引術用ニードルとの間の摩擦が熱の主な源である。ニードルがスリーブに対して擦れると、熱が生成される。ハンドピースに適用される電力の量はニードルのストローク又はニードルの行程距離に線形的に関連付けられる。適用される電力が多ければ多いほど、ニードルの行程は大きくなる(ニードルはスリーブに対して多く擦れる)。
【0023】
数学的には、ΔTを温度値の上昇とすると、ΔT=T−T0である(ここで、T0は眼の温度値であり、Tは時間の関数としてのニードルの周りの実際の温度値である)。全エネルギーAの時間t=0において発生する超音波パルスに対する温度応答が
【数1】
によって与えられると仮定する。ここで、G(t)はシステムの応答関数である。このとき、時間Q(t)における熱の発生によるΔTすなわち温度値の上昇は
【数2】
によって与えられる。上の方程式における熱Qは、超音波電力によって発生せしめられた熱と、流体流れによって取り除かれた熱とから成る。したがって、Qは超音波電力及び流体流れに比例する。
【0024】
経験的な研究によって、下に示されるように応答関数G(t)が指数関数的であることが分かってきた。
【数3】
(スリーブとニードルとの間の)摩擦係数と、様々な流れ及び電力状態の時のΔTについての実験データとに最もよく適合するように、係数「G0」及び「α」を決定することができる。
【0025】
この態様では、温度の計算値(T)は、ハンドピースに適用される電力(P)と、眼を通した流体流れ(F)と、ニードルとスリーブとの間の摩擦(Fr)との関数である。眼を通した流体流れは灌流圧力から計算される(灌流通路の断面積が知られているので、灌流ラインを通した流れは、灌流圧力センサーからの読取値のような灌流流体圧力に基づいて計算される)。このため、T=F(P,F,Fr)である。この温度の計算値は、(焼損が最も生じやすい)切開部位において経験される実際の温度の良好な概算を提供する。
【0026】
この温度の計算値は温度観察アルゴリズム(thermal watch algorithm)を実施するのに使用される。温度の計算値が実際の温度の良好な概算を提供するので、温度の閾値がアルゴリズムを作動させるべく設定されることができる。言い換えれば、温度の計算値が温度の閾値を超えると、アルゴリズムは(電力を減少させることによって)見込みの熱を減少させるように作用することができる。
【0027】
図4において見られるように、CPU116は灌流圧力センサー1130から灌流圧力を読み取る。CPU116は、電源120を制御するので、ハンドピースに適用される電力レベルについての値も有する。CPU116は、切開部位における実際の温度を概算する温度を計算すべくこれら二つの値を(摩擦係数と併せて)使用する。この態様では、CPU116は連続的に又は周期的にT=F(P,F,Fr)を計算する。温度の計算値は連続的に又は周期的に温度の閾値と比較される。温度の計算値が温度の閾値を超えると、ハンドピースへの電力は減少せしめられる。
【0028】
本発明の一つの実施形態では、温度の計算値は、ハンドピースに提供された電力の量を制御するための入力データとして使用される。この態様では、ハンドピースに適用される実際の電力は、温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度の計算値の逆(inverse)をたどる(track)。このことは下記の図6〜10を参照してより明確に見られる。
【0029】
記述されるように、温度の閾値(又はアルゴリズムが実行される下限値)は、システムの使用者によって設定され、又は予め設定されることができる。様々な範囲の温度の閾値が選択されることができ、各閾値は、望ましくない角膜の焼損に対する一定水準の保護を提供する。例えば、範囲内において最も高い温度の閾値は、角膜が焼損する温度と閾値との間に小さな差(例えば華氏1°)を提供する値に設定されることができる。低い温度の閾値は、角膜が焼損する温度と閾値との間の差がかなり大きくなるよう(華氏10°くらい)に設定されることができる。
【0030】
選択された閾値に拘わらず、アルゴリズムは、温度の計算値が温度の閾値よりも高いときに実行される。温度の計算値が閾値よりも下がると、アルゴリズムは実行を止める。この態様では、アルゴリズムは、温度の計算値が温度の閾値を超えるとオンされ、温度の計算値が温度の閾値よりも下がるとオフされる。
【0031】
図5は、本発明の原理に係る制御システムの別の実施形態のブロック図である。図5は、作動時のアルゴリズムをより明確に示す。CPU116は、灌流圧力センサー1130からの読取値、電源120からの電力、及び概算された摩擦に基づいて温度の計算値を計算する。図5では、CPU116はPIDコントローラーのように作用する(CPU116の代わりにPIDコントローラー又は他の同様のタイプのコントローラーが使用されてもよい)。ハンドピースに適用される電力を減少させるべく、概算された温度の計算値の逆を電力から引く。この態様では、CPU116は、電源120によって電力出力の量を、xTによって示される温度の計算値に反比例する量(又は閾値を超過した温度値に反比例する量)だけ減少させることによって電源120の出力を制御する。ここで、xはスカラー又は関数でありうる。
【0032】
この態様では、温度の計算値が温度の閾値を超えると、ハンドピースに供給される電力は、温度の閾値を超過した量に比例して減少せしめられる。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、通常の作動が再開される。
【0033】
温度観察アルゴリズムのこの実行は、白内障手術中に自動的に動くように設定されうる。手術の間、医者は(一般的にはフットペダルを介して)ハンドピースへの電力の適用を制御する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムは電力の医者による制御を無効にする。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、電力の医者による制御が再開される。
【0034】
図6は、本発明の原理に係る連続モードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。図6では、上のグラフが温度の計算値を示し、下のグラフが、ハンドピースに適用された電力を示す。温度の計算値が温度の閾値よりも下にあると、外科医はハンドピースに連続的な電力を適用することができる。この場合、外科医はハンドピースに100%の電力を適用する。しかしながら、外科医は、フットスイッチを踏むことによって任意の電力レベルを適用することができる。連続モードでは、電力は、フットペダルが踏まれている間、ハンドピースに連続的に適用される。フットペダルが踏まれる量(又はフットペダルの位置)が、適用される電力の量又は電力レベルを決定する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムが電力の外科医による制御を無効にする。この態様では、温度観察アルゴリズムは、温度の閾値を超えた温度上昇に比例して電力を減少させるように作用する。言い換えれば、温度の閾値を超えた漸進的な温度増加によって、ハンドピースに適用される電力の量は比例して減少せしめられる。電力の減少は、図6において描写されるように滑らかである。この態様では、電力の滑らかな減少は、それでもなおハンドピースの切断チップに電力が滑らかに適用されることをもたらす。電力が減少せしめられると、温度の計算値も減少する傾向にあるだろう。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、外科医は電力の制御を再開し、この場合、適用される電力は100%に戻る。
【0035】
図7は、本発明の原理に係るパルスモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。図7では、上のグラフが温度の計算値を示し、下のグラフが、ハンドピースに適用された電力を示す。パルスモードでは、固定された幅の一連のパルスがハンドピースに適用される。外科医はフットスイッチでパルスの振幅(又は電力レベル)を制御する。この態様では、フットスイッチの位置がパルスの電力レベルを決定する。温度の計算値が温度の閾値よりも下にあるとき、外科医はハンドピースに任意の所望の電力を適用することができる。この場合、外科医はハンドピースに100%の電力を適用する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムが電力の外科医による制御を無効にする。この態様では、温度観察アルゴリズムは、温度の閾値を超えた温度上昇に比例して電力を減少させるように作用する。言い換えれば、温度の閾値を超えた漸進的な温度増加によって、ハンドピースに適用される電力の量は比例して減少せしめられる。電力の減少は、図7において描写されるように滑らかである。この態様では、電力の滑らかな減少は、それでもなおハンドピースの切断チップに電力が滑らかに適用されることをもたらす。電力が減少せしめられると、温度の計算値も減少する傾向にあるだろう。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、外科医は電力の制御を再開し、この場合、適用される電力は100%に戻る。図7において示されるように、温度観察アルゴリズムは、与えられた任意のパルスの電力を非線形的に減少させるように作動する。この態様では、温度観察アルゴリズムは個々のパルス(又は場合によっては一連のパルス)に対して作用する。
【0036】
図8は、本発明の原理に係るパルスモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。図8では、上のグラフが温度の計算値を示し、下のグラフが、ハンドピースに適用された電力を示す。パルスモードでは、固定された幅の一連のパルスがハンドピースに適用される。外科医はフットスイッチでパルスの振幅(又は電力レベル)を制御する。この態様では、フットスイッチの位置がパルスの電力レベルを決定する。温度の計算値が温度の閾値よりも下にあるとき、外科医はハンドピースに任意の所望の電力を適用することができる。この場合、外科医はハンドピースに100%の電力を適用する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムが電力の外科医による制御を無効にする。この態様では、温度観察アルゴリズムは、温度の閾値を超えた温度上昇に比例して電力を減少させるように作用する。言い換えれば、温度の閾値を超えた漸進的な温度増加によって、ハンドピースに適用される電力の量は比例して減少せしめられる。電力の減少は、図8において描写されるように漸進的である。この態様では、電力の漸進的な減少は、それでもなおハンドピースの切断チップに電力が適用されることをもたらす。電力が減少せしめられると、温度の計算値も減少する傾向にあるだろう。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、外科医は電力の制御を再開し、この場合、適用される電力は100%に戻る。図8において示されるように、温度観察アルゴリズムは、一定のパルスレベルを維持しつつ次のパルスの電力を減少させるように作動する。この態様では、温度観察アルゴリズムは、次のパルスに対して作用して、次のパルスの電力レベルを一定の電力レベルに制限するように働く。
【0037】
図9は、本発明の原理に係るバーストモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。図9では、上のグラフが温度の計算値を示し、下のグラフが、ハンドピースに適用された電力を示す。バーストモードでは、一連のパルスがハンドピースに適用される。外科医はフットスイッチでパルス間のオフタイムを制御する。この態様では、フットスイッチの位置がパルス間のオフタイムを決定する。温度の計算値が温度の閾値よりも下にあるとき、外科医はハンドピースに任意の所望の電力を適用することができる。この場合、外科医はハンドピースに100%の電力を適用する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムが電力の外科医による制御を無効にする。この態様では、温度観察アルゴリズムは、温度の閾値を超えた温度上昇に比例して電力を減少させるように作用する。言い換えれば、温度の閾値を超えた漸進的な温度増加によって、ハンドピースに適用される電力の量は比例して減少せしめられる。電力の減少は、図9において描写されるように滑らかである。この態様では、電力の滑らかな減少は、それでもなおハンドピースの切断チップに電力が滑らかに適用されることをもたらす。電力が減少せしめられると、温度の計算値も減少する傾向にあるだろう。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、外科医は電力の制御を再開し、この場合、適用される電力は100%に戻る。図9において示されるように、温度観察アルゴリズムは、与えられた任意のパルスの電力を非線形的に減少させるように作動する。この態様では、温度観察アルゴリズムは個々のパルス(又は場合によっては一連のパルス)に対して作用する。
【0038】
図10は、本発明の原理に係るバーストモードにおける温度管理アルゴリズムの模範的な作動を描写するグラフである。図10では、上のグラフが温度の計算値を示し、下のグラフが、ハンドピースに適用された電力を示す。バーストモードでは、一連のパルスがハンドピースに適用される。外科医はフットスイッチでパルス間のオフタイムを制御する。この態様では、フットスイッチの位置がパルス間のオフタイムを決定する。温度の計算値が温度の閾値よりも下にあるとき、外科医はハンドピースに任意の所望の電力を適用することができる。この場合、外科医はハンドピースに100%の電力を適用する。温度の計算値が温度の閾値を超えると、温度観察アルゴリズムが電力の外科医による制御を無効にする。この態様では、温度観察アルゴリズムは、温度の閾値を超えた温度上昇に比例して電力を減少させるように作用する。言い換えれば、温度の閾値を超えた漸進的な温度増加によって、ハンドピースに適用される電力の量は比例して減少せしめられる。電力の減少は、図10において描写されるように滑らかである。この態様では、電力の漸進的な減少は、それでもなおハンドピースの切断チップに電力が適用されることをもたらす。電力が減少せしめられると、温度の計算値も減少する傾向にあるだろう。温度の計算値が温度の閾値よりも下がると、外科医は電力の制御を再開し、この場合、適用される電力は100%に戻る。図10において示されるように、温度観察アルゴリズムは、一定のパルスレベルを維持しつつ次のパルスの電力を減少させるように作動する。この態様では、温度観察アルゴリズムは、次のパルスに対して作用して、次のパルスの電力レベルを一定の電力レベルに制限するように働く。
【0039】
アルゴリズムのいくつかの変更が実施されてもよい。一つの変更では、電力は温度増加のスカラー因子(scalar factor)に比例して減少せしめられる。別の変更では、電力は温度増加の関数に比例して減少せしめられる。別の変更では、最小の電力レベルを設定することができる。この場合、電力は決して最小の電力レベルよりも下がることはなく、このためハンドピースへの(例え低くとも)連続的な電力の適用がもたらされる。更に別の変更では、電力を減少させる割合を変化させることができる。この場合、電力の減少は所望の滑らかさにされうる。電力の滑らかな減少によって、(電力が連続的に適用されてオフにされないので)より効果的な切断及びより良好な外科医の感触(feel)がもたらされる。
【0040】
上記から、本発明が水晶体超音波乳化吸引術のための温度管理アルゴリズムを提供することが理解されうる。本発明は制御システムを提供し、制御システムは、温度値を計算し、温度値を温度の閾値と比較し、温度の計算値が温度の閾値を超えると、ハンドピースに供給される電力を減少させる。本発明は本明細書において例によって示され、様々な修正が当業者によってなされうる。
【0041】
本明細書と、本明細書に開示された本発明の実施例とを考慮すると、本発明の他の実施形態が当業者に明らかとなるであろう。本明細書及び例は単なる例としてみなされることが意図されており、本発明の真の範囲及び思想は以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
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図6
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図10