(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液化した材料を案内するための前記手段は、前記締結具の近位面にて開いている締結具の内部キャビティ(4)を前記周面の少なくとも1つの第1の区域に接続する少なくとも1つの通路(5)を含むか、締結具軸に対してある角度で前記締結具の近位面から前記周面の前記少なくとも1つの第1の区域に延在する少なくとも1つのチャネル(4/5)を含むか、または前記締結具の近位面から前記締結具の前記遠位端に向かって延在する少なくとも1つの溝(30)を含む、請求項2に記載のシステム。
前記固定要素(6)は前記内部キャビティ(4)内、前記少なくとも1つのチャネル(4/5)内に位置決めされるか、または中央領域において前記締結具(3)に統合される、請求項3または4のいずれか1項に記載のシステム。
前記少なくとも1つの固定要素(6)は、前記締結具(3)の周面における軸方向に延在する溝(30)か、締結具軸に対してある角度で前記締結具の近位面から前記締結具の周面に延在するチャネル(4/5)か、もしくは前記締結具(3)の内部キャビティ(4)に適合されるか、または中央もしくは周辺の締結具領域に統合される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ほとんどの内部移植片固定の品質は特に、一方では移植片と締結具との間の界面に依存し、他方では移植片と開口部の壁との間の界面に依存している。しかしながら、ほとんどの場合、締結具と開口部の壁との間の界面にも依存している。良好な一次安定性が上記のすべての界面において望まれるとともに、良好な長期間安定性が特に移植片と骨組織との間の界面において特に望まれる(固定手術の後の自然の組織の成長による自然の組織における移植片の良好な統合)。固定品質は、開口部における固定位置にさらに依存していることが分かっている。関節面に近くなるよう固定することが有利であるように思われる。回復期を短くするために、開口部における良好な長期間安定性の骨成長のために良好な一次安定性が望まれる。開口部における骨成長を最大化するために、生体吸収性の干渉ねじおよび圧着要素が提案されている。さらに、埋め込まれるときまたはその後でも移植片に対して締結具が可能な限り損傷を与えないことが重要であるとともに、開口部の口部に対して、特にこの口部が関節面に位置している場合に移植片が可能な限り拡幅または他の損傷を引き起こさないことが重要である。
【0012】
公知の軟組織固定方法のほとんどに共通の破損は干渉ねじのねじ山による移植片または組織損傷によって引き起こされる。当該損傷により、移植片もしくは組織の断裂や、対応する圧着の緩和による移植片もしくは組織の滑りや、またはたとえばかかりのような固定要素に応答して骨組織が圧縮することにより最初の負荷適用の際の締結具の移動につながり得る。これにより移植片もしくは軟組織における張力の損失につながり得る。
【0013】
締結具を用いる前十字靱帯(移植片、人工器官の要素、または自然の靭帯の再付着)以外の靱帯の公知の固定、腱(移植片、人工器官の要素、または自然の腱の再付着)の公知の固定、または固定のために設けられる骨の開口部における他の主に軟組織(移植片、人工器官の要素、または修復)の公知の固定は、脛骨および大腿骨に設けられる開口部にACL−移植片を固定するために用いられる上記において手短に説明した公知の固定と同じ原理に基づく。このような固定はたとえば、人間の足または足首に関する外科的処置において用いられる。外科的処置としては、たとえば外側足首関節再建、FDL腱移行術(長指屈筋)、FHL腱移行術(長母趾屈筋)、または屈筋腱移行術(第2趾)がある。また上記の固定は、人間の手に関する外科的処置において用いられる。この外科的処置としては、たとえば靱帯再建腱挿入、舟状月状靱帯再建、側副靱帯再建、または(「ゲームキーパー母指」としても公知の)親指のUCL(内側側副靭帯)の修復がある。また上記の固定は、人間の肘に関する外科的処置において用いられる。この外科的処置としては、たとえばUCL(内側側副靭帯)の修復、または遠位の2頭筋腱の修復がある。また上記の固定は、たとえば近位の2頭筋腱修復といった人間の肩に関する外科的処置において用いられる。さらなる例としては、特に犬であるがたとえばさらに猫の後膝関節における断裂または損傷した頭蓋十字靭帯(CCL)の修復がある。CCLは、犬のもっともよく損傷される後膝関節の靱帯であり、その修復はたとえば、大腿骨の後ろにおいて腓腸筋頭種子骨の周りを通過するとともに脛骨の前側部分に設けられる穴に固定されるナイロンバンドを用いて行われる。公知の固定方法と同様に、本発明に従った固定は上述したすべての用途に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の目的は、人間または動物の骨に設けられる開口部内部に組織または対応する人工要素を固定する(貫通孔または止まり開口部内での「内部固定」)ためのさらなる方法および締結具を作り出すことである(自家移植片、同種移植片、異種移植片、もしくは対応する自然の組織を代用する人工器官の要素の固定、または自然の組織固定の修復として理解されるべきである)。本発明に従った方法および締結具は簡易であるとともに、実質的な適合の必要なく、多くの異なるタイプの組織および人工器官の要素ならびに多くの異なるタイプの用途および手術手法(特に関節鏡タイプの手術)に好適である。特に、本発明に従った方法および締結具は、実質的な適合なく、任意のタイプの移植片を用いる前十字靭帯置換手術において用いられるのに好適である(末端骨ブロックもしくは対応する人工移植片部分および縫付端部分があるまたはない1ストランド、2ストランド、またはマルチストランドの自家移植片、同種移植片、異種移植片、または人工移植片)。
【0015】
この目的は、添付の特許請求の範囲に規定されるような方法および締結具により達成される。
【0016】
本発明に従った方法および締結具を用いて作り出される固定は、「内部」固定である(締結具が貫通孔または止まり開口部内に位置決めされ、組織を開口部の内壁に固定する)。この固定は基本的に、開口部の壁の第1の部分に対して移植片をクランプする締結具を用いて開口部内に移植片を圧着することと、その後、開口部の壁の第2の部分に、固定部とこの第2の壁部分との間に確実な嵌合接続を確立することにより締結具を固定することとの組合せである。これは、圧着および確実な嵌合が、互いの後に実行され、局所的に互いに分離され、かつ互いから完全に独立していることを意味する。
【0017】
圧着接続は、開口部に押し込まれるために寸法決めされる締結具(締結具および開口部の対応する寸法決め)を用いて、または開口部内に位置決めされて次いで拡張される締結具を用いて、本質的に公知の態様で達成される。締結具を開口部内に押し込むまたは位置決めすることは、固定されるべき組織または人工要素が開口部内にすでに位置決めされているか、またはそれとともにあるかのいずれかの場合に行われる。締結具の回転のない押し込みまたは位置決めが好ましいが必須ではない。固定されるべき組織または人工要素は、開口部の全体の壁を覆わないように開口部内に配される。締結具は、確実な嵌合接続を達成するために具備された締結具部分が、組織に覆われていない壁部分に面するように方位付けされる。
【0018】
確実な嵌合接続は、エネルギーの適用により液化可能な材料(好ましくは熱可塑性を有する材料)を含む固定要素を用いて、液化した材料が好ましくは開口部の壁の骨組織の柱構造に浸透することができるようにその場で当該材料を液化することにより達成される。当該柱構造では、再凝固の際、当該固定要素は、確実な嵌合接続の形態で固定部を構成する。固定要素は、締結具を開口部内に圧着する前または後で締結具に対して位置決めされ、次いで固定ツールを用いて締結具に対して進展される。固定ツールは同時に固定要素または締結具に、液化に必要なエネルギーを伝達する。固定処理の前に確立された圧着が脆弱化する可能性を防止するために、固定要素を進展させるために用いられる力は、圧着を確立するために用いられる力と比較して小さくする必要があるか、および/または開口部内に押し込まれた方向に締結具を促さないように打ち消される必要がある。
【0019】
まず、この壁の柱構造に液化可能材料が浸透して補強するよう液化可能材料の第1の部分を用いて開口部の骨壁を処理し、その後で、開口部内に締結具および移植片を圧着し、上記の固定ステップを行うことも可能である。液化可能材料の第2の部分は、開口部の前処理された壁に接合される。この2ステップの固定処置により、液化可能材料の第1および第2の部分が同じ液化可能材料を含む場合、上記の単一ステップの処置と同じ確実な嵌合接続が得られる。しかしながら、第1および第2の部分は、2つの材料が固定ステップの条件下で互いに接合可能であるという条件で異なる液化可能材料を含んでもよい。良好な固定を達成するために、骨組織の小柱網の穴またはキャビティを、液化した材料で充填されるべき開口部の骨壁内のさらなるキャビティ(たとえばアンダーカットの形態にある骨組織内の開口部)に加えてまたはその代わりに設けることが有利または必要である場合がある。
【0020】
押圧(固定されるべき組織との圧着接続)および固定(開口部の壁の骨組織との確実な嵌合接続)の別個の締結具機能のために、本発明に従った締結具は、押圧機能または固定機能のいずれかのために具備された別個の面部分を含む。押圧機能のために具備される表面部分は、本質的に公知の態様で、平坦または凹型の形状(浅い溝)を有してもよく、固定されるべき組織の保持のために粗いかまたは他の態様で構造化されてもよいが、任意の特定の形状または構造を欠いていてもよい。固定機能のために具備される表面部分は、固定要素によって構成される液化可能材料を締結具内または締結具近位面からこれらの表面部分に案内するための手段を含み、開口部の骨壁における締結具の付加的な支持のためのリーミングまたは切断縁部、ねじ山、かかり、または他の本質的に既知の構造をさらに含んでもよい。
【0021】
好ましい締結具の実施例では、押圧または固定のいずれかのために具備される表面部分は、周面の区域を構成する。移植片外固定に好適な締結具は、1つの押圧区域および1つの固定区域を含み、移植片内固定に好適な締結具は複数のこのような区域対を含む。代替的には、押圧または固定のいずれかのために具備された締結具の表面部分は、締結具軸に沿って互いの近隣に配置されてもよく、または、上述した表面区域に加えて交互に配されたこのような表面部分が締結具上に設けられてもよい。
【0022】
本発明に従った締結具は、たとえば円筒、錐台、または円錐(連続的に先細りになるかまたは段差が設けられる)の一般的な形状を好ましくは有するが、必ずしも実質的に円形断面を有する必要はない。すなわち、締結具は、実質的に円形断面(円筒形または連続的もしくは段階的に先細りになる)の開口部内に嵌合されるために好適であるが、たとえば平行六面体またはくさび形といった他の形を有してもよい。実質的に円筒、錐台、または円錐の形を有する本発明に従った締結具は、液化可能材料を案内するための上記手段と、場合によっては移植片を収容するための手段とに加えて、全体の締結具の外周またはその一部のみの周りに延在するねじ山を含んでもよい。
【0023】
本発明に従った方法は基本的に以下の4つのステップを含む。すなわちこの方法は、
(a)締結具と、液化可能材料を含む少なくとも1つの固定要素とを設け、(たとえば順行性または逆行性のドリリングまたはパンチングにより)骨に開口部を設けるステップを含み、締結具および開口部は互いに対して、かつ固定されるべき移植片(自然の組織および対応する人工要素を含むよう理解される)に対して適合され、上記方法はさらに、
(b)移植片を開口部に圧着するステップを含み、移植片は、開口部の内壁のすべては覆わず、この圧着は移植片を位置決めした後または移植片と一緒に締結具を開口部内に押し込む(または位置決めおよび拡張する)ことによって行われ、上記方法はさらに、
(c)締結具に対して少なくとも1つの固定要素を位置決めし、かつ固定要素によって構成される液化可能材料にエネルギーを伝達すると同時に固定要素を締結具に対して進展させて固定要素の少なくとも一部を液化して開口部の壁内へ浸透させる(開口部の前処理された壁に接合される)ことによって締結具を開口部の壁の骨組織に固定するステップを含み、この壁は移植片によって覆われておらず、上記方法はさらに、
(d)開口部の壁において液化した材料を再凝固させるステップを含む。
【0024】
本発明に従った固定の主な利点は、公知の圧着締結具と比較して、固定の一次安定性の改善である。公知の圧着締結具としては、たとえばH.O. Mayr ら 「Axial load in case of press-fit fixation of ACL graft - a fundamental study」 (Z Orthop Ihre Grenzgeb, 143(5): 556-60 (2005)) および 「Beta-tricalcium plugs for press-fit fixation in ACL reconstruction - a mechanical analysis in bovine bone」 (Knee 14(3): 239-44 (2007))に記載される。干渉ねじを用いる公知の固定と比較して、本発明に従った固定は、固定されるべき移植片を機械的に破損する危険性を実質的に低減することが可能であり、開口部が設けられた骨組織の機械的特性に実質的にあまり依存しない(たとえば骨粗鬆症によって脆弱化された骨組織における固定を可能にする)。これは、液化可能材料が、この骨組織を付加的に強化することができるからである。さらに干渉ねじ固定と比較して、本発明に従った固定は好ましくはねじ山のない、したがって小さい直径の締結具を用いる。これにより、複数の締結具がともにより近くに埋め込まれることが可能になる。これは、たとえばACL移植片が1つより多い開口部に固定され得、これによりより幅が広いフットプリントの固定がなされ、したがって自然のACL固定により近く類似させるということを意味する。
【0025】
さらに、本発明に従った固定は、固定されるべき移植片に決定的な熱負荷を加えることなしに行われ得るので、機械的だけでなく熱的にも損傷を受けやすいこのような移植片に好適である。
【0026】
すでに上述したように、本発明に従った方法において適用される固定技術は液化可能材料、特に熱可塑性を有する材料のその場での液化に基づく。このような固定技術およびこのような固定技術に好適な締結装置はたとえば、US−7335205公報、US−7008226公報、US−2006/0105295公報、US−2009/131947公報、WO−2009/132472公報、WO−2008/034276公報、WO−2010/127462公報、およびWO−2010/045751、ならびにまだ公開されていない米国仮特許出願US−61/259383に開示される。上記のすべての公報および出願のすべての開示は、本願明細書において参照により援用される。
【0027】
上記の移植技術の主な特徴は、液化可能材料のその場での液化、液化した材料の硬組織表面(柱構造および/または硬組織表面に設けられる好適な構造もしくはキャビティ)への浸透、および硬組織表面における液化可能材料の再凝固である。液化可能材料は好ましくは熱可塑性を有する材料であり、その固体状態ではエネルギーを伝達することができ、その液化状態では、柱または類似した多孔質構造に浸透することができる。組織の許容可能な熱負荷に関連する好適な液化は、熱可塑性を有する材料、好ましくは弾性係数が少なくとも0.5GPaであり融解温度が約350℃までである材料を用い、かつ必要最少量の材料のみを液化することによって達成され得る。このような液化に適用されるエネルギーは好ましくは、好ましくは2kHzと200kHzとの間の範囲の周波数の機械振動エネルギー(好ましくは15kHzと30kHzとの間の周波数、さらに好ましくは20kHzと25kHzとの間の周波数での超音波振動)である。液化可能材料と、場合によっては締結具または固定要素の他の部分とは、好ましくは非常に小さい減衰で、たとえば液化可能材料がカウンタ要素に対して振動する位置に振動を伝達する。これにより、摩擦を引き起こし、液化を引き起こす。
【0028】
熱可塑性を有する材料の液化に必要な局所的な熱エネルギーを作り出すために振動エネルギーを用いる代わりに、他のエネルギータイプを活用することも可能である。特定的には、振動エネルギーと実質的に同じ態様で摩擦熱に変換される回転エネルギー、または電磁放射(特に、可視または赤外線周波数範囲のレーザー光)を活用することが可能である。この電磁放射は、好ましくは熱可塑性を有する材料を通って案内され、熱可塑性を有する材料内に含まれるかまたはこの材料に隣接して配される吸収材に局所的に吸収される。電気エネルギーも用いることができる。
【0029】
本発明に従った固定方法において用いられる固定要素に好適な液化可能材料は熱可塑性ポリマーである。熱可塑性ポリマーの例としては、再吸収性のポリマーと、非再吸収性のポリマーとがある。再吸収性のポリマーとしては、乳酸および/もしくはグリコール酸(PLA、PLLA、PGA、PLGAなど)もしくはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖、ポリジオキサノン(PD)ポリ酸無水物、ポリペプチドもしくは対応するコポリマーに基づくポリマー、または上記のポリマーを成分として含む複合材料がある。非再吸収性のポリマーとしては、ボリオレフィン(たとえばポリエチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニルスルフィドまたは液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特に、ハロゲン化ボリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテル、もしくは等価なコポリマー、または上記のポリマーを成分として含む複合材料がある。
【0030】
分解性材料の特定の実施例は、すべてBohringer社によるLR706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA 100% Lのようなポリラクチドである。好適な分解性ポリマー材料のリストが、Erich Wintermantel und Suk-Woo Haa, 「Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren」, 3. Auflage, Springer, Berlin 2002(以下、「Wintermantel」と称する),200頁においても見つけられ得る。PGAおよびPLAに関する情報については202頁ff.を参照のこと。PCLに関しては、207頁を参照のこと。PHB/PHVコポリマーに関しては、206頁を参照のこと。ポリジオキサノンPDSに関しては、209頁を参照のこと。さらなる生体再吸収性の材料の議論がたとえば、CA Baileyら、 J Hand Surg [Br] 2006 Apr;31(2):208-12.に見つけられ得る。
【0031】
非分解性の材料の具体的な実施例は、ポリエーテルケトン(Invibio社のPEEK Optima、グレード450および150)、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネートウレタン(特に、DSM社によるBionate、特定的にはタイプ65Dおよび75D)である。Wintermantelの150頁に、ポリマーと用途の概要表がリスト化されている。Wintermantelでは具体例が、161頁ff.(PE、Hostalen Gur 812、 Hochst AG)、164頁ff.(PET)、169頁ff(PA、すなわちPA6およびPA66)、171頁ff.(PTFE)、173頁ff.(PMMA)、180頁(PUR、表参照)、186頁ff.(PEEK)、189頁ff.(PSU)、191頁ff.(POM−ポリアセタール、商品名Delrin、TenacはProtecによって体内プロテーゼにおいて用いられている)において見つけられ得る。
【0032】
熱可塑性を有する液化可能材料は、さらなる機能を与える異質相または化合物を含んでもよい。特に、熱可塑性物質は、(たとえばリン酸カルシウムセラミックスまたはガラスの)混合されたファイバーまたはウィスカで強化され得、このようなものが複合材料である。熱可塑性物質は、その場で拡張または溶解する(穴を作り出す)成分(たとえばポリエステル、多糖、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)、融合装置を不透明にし、これによりX線に対して可視とする化合物、またはその場で解放されるとともに、たとえば治癒および再生の促進といった治療効果を有する化合物(たとえば、成長因子、抗生物質、炎症抑制剤、またはリン酸ナトリウムもしくは炭酸カルシウムといった、酸性分解の悪影響に対する緩衝剤)をさらに含んでもよい。熱可塑性物質が再吸収性を有する場合、このような化合物の解放は遅延される。振動エネルギーではなく電磁放射を用いて装置が固定される場合、熱可塑性を有する液化可能材料は、特定の周波数範囲(特に可視または赤外線周波数範囲)のこのような放射を吸収することができる化合物(微粒子または分子)を局所的に含んでもよい。この化合物としてはたとえば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、マイカ、飽和脂肪酸、多糖、グルコース、またはそれらの混合物がある。
【0033】
用いられる充填剤は、分解性ポリマーに用いられる分解性の骨刺激性充填剤を含んでもよい。充填剤には、β−リン酸三カルシウム(TCP)、ハイドロキシアパタイト(HA、<90%の結晶性;またはTCP、HA、DHCP、バイオガラスの混合物(Wintermantel参照)が含まれる。非分解性ポリマーのための、部分的にのみ分解可能かまたはほとんど分解され得ない骨統合刺激性充填剤は、バイオガラス、ハイドロキシアパタイト(>90%の結晶性)、HAPEX(登録商標)を含む。SM Reaら、J Mater Sci Mater Med.2004 Sept;15(9):997-1005を参照のこと。ハイドロキシアパタイトについては、L. Fangら、Biomaterials 2006 Jul; 27(20):3701-7、 M. Huang ら、J Mater Sci Mater Med 2003 Jul;14(7):655-60、ならびにW. Bonfield and E. Tanner, Materials World 1997 Jan; 5 no. 1:18-20.も参照のこと。生物活性充填材の実施例およびそれらの議論はたとえば、X. Huang and X. Miao, J Biomater App. 2007 Apr; 21(4):351-74), JA Juhaszら、Biomaterials, 2004 Mar; 25(6):949-55において見つけられ得る。微粒子充填材タイプは、粗大タイプ:5〜20μm(含有量は、好ましくは10〜25容量%)、サブミクロン(析出からのナノ充填剤、好ましくは板状の縦横比>10、10〜50nm、含有量は0.5〜5容量%)を含む。超音波振動エネルギーを用いる液化は、たとえば成長可能な海綿骨の柱構造のような構造に浸透する液化した材料の能力を損なうことなく、相対的に高い程度まで熱可塑性ポリマーを充填することを可能にするということが実験において示される。
【0034】
本発明に従った方法および締結具の例示的な実施例を添付の図面に関連して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に従った方法の例示的な実施例を用いて骨貫通孔における例示的な移植片外固定の6つの連続的な段階を示すことにより本発明を示す図である。
【
図2】
図1に示されるような方法を用いた例示的なACL置換手術の4つの連続的な段階を示す図である。
【
図3】直径が低減された部分を含む骨貫通孔における本発明に従った移植片固定のさらなる例示的な用途を示す図である。
【
図4】止まり穴における本発明に従った移植片固定のさらなる例示的な用途を示す図である。
【
図5】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図6】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図7】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図8】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図9A】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図9B】締結具と固定要素と固定ツールとを含むさらなる例示的な、本発明に従った固定方法に好適である集合を示す図である。
【
図10】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図11】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図12】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図13】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図14】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の軸方向断面図である。
【
図15】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の軸方向断面図である。
【
図16】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図17】
図1および
図5に示される方法と同様の方法に好適なさらなる例示的な締結具実施例の3次元図である。
【
図18】
図1、
図5、
図6、または
図7に従った方法で、例示的な締結具のさらなる実施例を用いて骨貫通孔または止まり穴に固定される移植片を通る断面図である。
【
図19】
図1、
図5、
図6、または
図7に従った方法で、例示的な締結具のさらなる実施例を用いて骨貫通孔または止まり穴に固定される移植片を通る断面図である。
【
図20】
図1、
図5、
図6、または
図7に従った方法で、例示的な締結具のさらなる実施例を用いて骨貫通孔または止まり穴に固定される移植片を通る断面図である。
【
図21】
図1、
図5、
図6、または
図7に従った方法で、例示的な締結具のさらなる実施例を用いて骨貫通孔または止まり穴に固定される移植片を通る断面図である。
【
図22】
図1、
図5、
図6、または
図7に従った方法で、例示的な締結具のさらなる実施例を用いて骨貫通孔または止まり穴に固定される移植片を通る断面図である。
【
図23】開口部の壁が締結具の導入前に液化可能材料の第1の部分で処理される前処理ステップを含む本発明に従った方法の実施例を示す図である。
【
図24】拡張可能な締結具が用いられる、本発明に従った方法の実施例を示す図である。
【
図25】骨貫通孔または止まり開口部における移植片外固定に好適である、本発明に従った方法のさらなる例示的な実施例を示す図である。
【
図26】止まり開口部における移植片外固定に好適である、本発明に従った方法のさらなる例示的な実施例を示す図である。
【
図27】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の断面図である。
【
図28】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の断面図である。
【
図29】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の断面図である。
【
図30】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の3次元図である。
【
図31】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の3次元図である。
【
図32】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の3次元図である。
【
図33】
図1または
図5に示されるような方法と同様の方法を用いて、移植片内固定に好適な例示的な締結具の実施例の3次元図である。
【
図34A】締結具と、固定要素と、固定ツールとを含み、
図6または
図7に示されるような方法と同様の方法を用いる移植片内固定に好適である、本発明に従った集合の例示的な実施例を示す図である。
【
図34B】締結具と、固定要素と、固定ツールとを含み、
図6または
図7に示されるような方法と同様の方法を用いる移植片内固定に好適である、本発明に従った集合の例示的な実施例を示す図である。
【
図35A】締結具と、固定要素と、固定ツールとを含み、
図25に示されるような方法と同様の方法を用いる移植片内固定に好適である、本発明に従った集合の例示的な実施例を示す図である。
【
図35B】締結具と、固定要素と、固定ツールとを含み、
図25に示されるような方法と同様の方法を用いる移植片内固定に好適である、本発明に従った集合の例示的な実施例を示す図である。
【
図36】本発明に従った2つのストランド移植片の固定の例示的な、脛骨のACL固定に特に好適なフットプリントを示す図である。
【
図37】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【
図38A】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【
図38B】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【
図39A】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【
図39B】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【
図39C】締結具と、固定要素と、固定ツールと、案内ツールとの集合を示す図であって、案内ツールは、固定処理の間に固定ツールを案内するだけでなく、固定処理が開始される前に、圧着を確立するために案内ワイヤに沿って開口部内に締結具を押し込むのにも好適である図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
同じ機能を有する項目および類似の項目は、すべての図において同じ参照番号を付される。
【0037】
好ましい実施例の説明
図1は、本発明に従った方法および締結具の例示的な実施例を用いて骨の貫通孔に軟組織を固定(移植片外固定)する6つの連続する段階(a)〜(f)を示す。軟組織はたとえば移植片1である。段階(a)から分かるように、移植片1は、貫通孔2を通って延びるよう位置決めされ、適用可能な場合、固定処理の間に本質的に公知の処置により所望の張力に保たれる。しかしながら、方法または締結具のいずれも、人工器官の要素または自然の軟組織を貫通孔に固定するために異なる必要はない。移植片または軟組織は貫通孔を通り抜けるよう延びなくてもよいが、貫通孔内部に端部を有し、この端部にて末端骨ブロックを含んでもよい。後者の場合、開口部はさらにたとえば止まり穴のような止まり開口部であってもよいことは明らかである。さらに、移植片または軟組織は、そこから延在する縫合端部を有する縫付端部分を含んでもよい。この端部分は貫通孔内に位置決めされ、縫合端部は第2の貫通孔口部を通って出て、たとえば移植片または軟組織を引っ張るために用いられる(
図3も参照)。
【0038】
締結具3は、移植片1を貫通孔2に圧着することが可能なように断面が適合されている。締結具3は、内部キャビティ4を含む。内部キャビティ4はたとえば実質的に円筒形であり、締結具近位面から締結具遠位端に向かって延び、1つまたは複数の通路5によって締結具の周面の固定区域、すなわち締結具3の一方の側にのみ接続される。通路5は、たとえば1つまたは複数のスロット形状、円形状、もしくは多角形状の開窓または他の態様の穿孔領域(たとえば開放孔を有する材料、たとえば柱または焼成された金属もしくはセラミック)の形状を有してもよい。固定要素6はたとえば、熱可塑性を有する材料のピン形の要素である。この材料は、上記の態様で液化されるのに好適である。固定要素は内部キャビティ4内に嵌められて、少なくとも通路5の領域内に到達する。
【0039】
固定処理は好ましくは以下のように行われる。すなわち、段階(a)に示されるように貫通孔2を通って位置決めされる移植片1が、移植片1と貫通孔壁の対向する側との間に拡張器10を段階(b)に示すように導入することによって貫通孔壁の一方の側に対して詰め込まれる。拡張器10は、示されるように一方の側が先細りになっており、当該先細りになっている側が移植片1に面する状態で用いられる。この拡張器10はもっとも有効であると証明されている。この詰め込みにより、移植片1または適用可能な場合はその末端骨ブロックが圧縮される。段階(c)では、拡張器10が取り除かれ、詰め込みステップにおいて用意された、移植片1と貫通孔壁との間の空間内に締結具3が(力F.1で)押し込まれる。締結具3の通路5は移植片1と対向する貫通孔壁に向かうよう面し、当該位置決めされた締結具3は移植片を貫通孔壁に対して圧着することになる。締結具5を貫通孔内に押し込むために、たとえば締結具の内部キャビティ4内に到達する押し棒11が用いられる。締結具を貫通孔に押し込むための示される押し棒11を用いる代わりに、締結具近位面に作用するラムツールも用いてもよい。段階(d)では、押し棒11が取り除かれ、リーマ12が、その角度付けされた遠位の先端が通路5を通るよう方向付けされた状態で締結具の内部キャビティ4内に導入される。リーマ12は、通路5の外側の貫通孔壁を広くするために往復運動される。段階(e)では、リーマ12は取り除かれ、固定要素6が内部キャビティ4内に導入され、固定ツール13が固定要素6の近位面の上に配置または固定される。当該近位面に案内ツール14を位置決めすることも有利である。この案内ツールは、固定ツール13と場合によっては固定要素6とを、内部キャビティ4内において正確に同軸で進展することができるよう案内するために具備される。固定ツール13は、貫通孔壁において固定要素を通じて締結具の固定部を作り出すために機能する。すなわち、固定要素6にエネルギー、たとえば液化可能材料の液化に必要とされる超音波振動と、固定要素6を締結具の遠位端に向かって進展させるための力F.2とを伝達するよう機能する。この伝達は、固定要素6の材料が液化するとともに、貫通孔壁の骨組織内へと液体状態で通路5を通って流れるように行われる。骨組織では、再凝固の際、段階(f)に示されるように、固定要素6は締結具3の固定部15を構成する。
【0040】
図1に示されるような方法では、圧着の確立(段階(c))および固定の確立(段階(e))は互いの後に、かつ互いに独立して行われることは明らかである。固定ステップ(段階(e))における進展のために固定要素に適用される力F.2は、締結具3によって反対に作用され、圧着を確立する(段階(c))ために必要とされる力F.1と同じ方向を有する。すなわち、力F.1と反対の方向の成分は有さないので、締結具による移植片または軟組織の圧着は決して弱められ得ない。
【0041】
詰め込まれていない状態の移植片1の断面により、詰め込みステップ(段階(b))は省略され得る。この詰め込みステップは、先細りになる締結具または先細りになる締結具遠位端の使用により必要なくなり得る。貫通孔壁の骨組織の密度と固定の所望の強さとにより、拡張するステップ(段階(d))は省略されてもよい。拡張は、非常に密な骨組織の場合に望ましい。この拡張ステップが行われる場合、ステップ(e)において達成される固定はより深くなり、圧着によって圧縮されていなかった骨組織に到達することになる。しかしながら、締結具遠位端から通路5の外側口部に延びる軸方向溝を締結具に具備させることにより、同様の効果が達成され得る。案内ツール14は、拡張ステップの前または圧着を確立する前であっても締結具3の近位端上に位置決めされてもよい。後者の場合、押し棒11の代わりに、案内ツールが締結具3を開口部内に押し込むために用いられる。所望の固定(段階(e))を達成するために必要な固定要素の進展の移動量と固定ツール13の案内性とにより、案内ツール14の使用は省略されてもよい。
【0042】
拡張器10および/または締結具3を骨開口部に導入するために案内ワイヤを用いることは有用であり得る。これには、拡張器10および/または締結具3において本質的に公知の態様で軸チャネルまたは穴(中心または偏心)が必要となる。開口部の壁に向かうよう対向する側の周面に可能な限り近く、拡張器10および/または締結具3に軸方向穴を設けることが有利であることを実験が示している。穴の代わりに、これらを案内ワイヤに沿って案内するために拡張器および/または締結具の周面に沿って溝(好ましくはアンダーカット)を設けることも可能である。
【0043】
図1は、骨開口部2に導入された締結具の近位面が骨表面と面一であることを示す。もちろんこれは、本発明に従った方法の条件ではない。締結具および方法を変更することなく、締結具近位端が骨に埋められるように締結具をさらに骨の中へと導入することも可能であり、または締結具近位端が骨から突出するように、あまり遠くに導入しないことも可能である。
【0044】
既に述べたように、固定ツール13はたとえば振動ツール(たとえば超音波ハンドピースのような超音波装置の部分である超音波トランスデューサに接続されるソノトロード)である。この振動ツールは、超音波振動を固定要素6に伝達するとともに、同時にその近位面に対して押圧されるか、またはそこに堅く固定されて、固定要素とともに締結具3の閉鎖遠位端に対して押圧される。このような場合、エネルギー方向付け部(突出点または縁部)を、液化が望ましい固定要素6上または内部キャビティ4内のいずれかに設けることが有利である。示される場合における締結具3および固定要素6のためのこのようなエネルギー方向付け部は、固定要素6の先細りになる遠位端によって構成される。このようなエネルギー方向付け部の代替的な実施例はたとえば、通路5の内側口部のリムから内部キャビティ内へ突出する縁部または点である。このようなエネルギー方向付け部のさらなる実施例は、米国仮特許出願番号第61/259383号(未公表)に開示されており、その開示の全体は本願明細書において参照により援用される。
【0045】
固定ツール13はさらに、そこに固く固定される固定要素に回転エネルギーを伝達するために設けられてもよい。このような場合、固定要素材料の液化に必要な熱が、回転する固定要素の遠位面と非回転の締結具内面との間の摩擦により作り出される。代替的には、固定ツール13は、(好ましくは可視または赤外線周波数範囲の)電磁エネルギーもしくは電気エネルギーを固定要素6または締結具3に伝達するために具備されてもよい。固定要素6または当該固定要素の近傍の締結具領域のいずれかが、たとえば光吸収手段または電気抵抗手段を含むことにより、伝達されたエネルギーを熱エネルギーに変換するために具備される必要がある。
【0046】
図1に係る締結具3が、止まり開口部において移植片外固定のために用いられる場合、開口部の周壁での固定に加えて、開口部の底面壁に固定するか、または開口部の底面壁にのみ固定することが望ましい場合がある(
図26も参照)。このような場合、締結具は、開口部の底面壁に実質的に接触するか、または少なくとも近傍に来るように止まり穴内に導入される必要があり、かつ締結具の内部キャビティ4を締結具遠位面に接続する少なくとも1つの通路5を含む必要がある。この通路は、
図1に示される横方向の通路5に加えてまたは代わりに設けられる。締結具固定のために具備されるこのような締結具遠位面は、さらに上で述べたように、(横方向通路5を含む表面について上述した)周区域としてではなく軸部分として押圧のために具備される締結具表面部分から分離された締結具表面部分を構成する。
【0047】
締結具3は、同じ目的のための現状技術に従った締結具について公知であるように、生物学的に再吸収可能であってもよく、生物学的に再吸収可能でなくてもよい材料から形成される。締結具は、再吸収可能である必要がない場合は、たとえば金属(たとえばチタン、チタン合金、ステンレス鋼)、セラミック材料(たとえば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム)、リン酸カルシウム、またはポリマー(たとえばチタンの内部コーティングとハイドロキシアパタイトの外部コーティングによってコーティングされる場合がある、たとえばPEEKのような熱可塑性物質)から形成される。固定処理の条件において、液化可能でない材料から締結具を作ることが有利であるように思われるが、締結具は、固定要素の液化可能な材料と同じ材料といった液化可能な材料からでも形成され得るということが実験により示されている。Bohringer社からLR706として入手可能なPLDLLA70%/30%(70%Lおよび30%D/L)の固定要素と組み合されると、たとえばチタン、またはハイドロキシアパタイトもしくはリン酸カルシウムで充填されたポリ乳酸(PLA)からなる締結具、特に60%リン酸三カルシウムで充填されたPLLA、または30%二相性リン酸カルシウムが充填されたPDLLA70%/30%(70%Lおよび30%D/L)からなる締結具を用いることで良好な結果が達成される。
【0048】
特に、固定されることになる移植片(または自然の軟組織または対応する人工の要素)の感熱性が非常に高い場合、少なくとも移植片の近傍に位置することになる締結具領域について、何らかの断熱性を有する材料を用いることが好ましい。固定されることになる移植片の感熱性があまり高くない場合(たとえば人工組織置換材料)、このような予防措置は必要ではない。さらに十分に変形可能であるこのような感熱性ではない組織の場合、移植片の側にも方向付けされた通路5を設けることさえも可能である。固定処理のために、これらの通路は、圧縮された移植片によって閉じられることになり、液化された材料を通過させないかほとんどさせないことになる(利点:開口部において特定の回転締結具の方位付けが必要なくなる)。
【0049】
図1に示されるような移植片外固定はたとえば、直径が8mmの貫通孔または止まり穴と、直径が7mmの実質的に円筒形の締結具と、直径が7mmの穴を容易に通過する縫付端部を有する移植片とを設けることにより達成され得る。先細りになる遠位端、特に
図1に示されるように半球状の端部を有し、かつ10μm以下の深さの周面の粗さを有する実質的に円筒形の締結具は、良好な圧着を与えるとともに、妥当な力で導入され得、その一方、平坦な遠位端および/またはより大きい表面粗さを有する締結具には高い導入力が必要であるようであるが、より良好な圧着へとはつながらないということが実験において示されている。長い締結具を用いることにより強い圧着が達成される。
【0050】
図2は、人間の膝における前十字靭帯(ACL)を置き換えるための例示的な外科的処置の4つの連続した段階(a)〜(d)を概略的な態様で示す。この置換のために用いられる移植片1は、たとえば2つの末端骨ブロックを含む。これらの末端骨ブロックのうちの1つは大腿骨21内の止まり穴20に固定され、他方の末端骨ブロックは脛骨23を貫通する貫通孔22に固定される。本質的に公知の処置は、たとえば
図1に示されるような本発明に従った方法を用いて実行され得る大腿骨および脛骨の固定処理を含む。
【0051】
段階(a)では、脛骨の貫通孔22および大腿骨の止まり穴20が設けられ、移植片1が固定処理のために位置決めされる。段階(b)では、大腿骨の締結具3.1が大腿骨の止まり穴20に圧着される。段階(c)では、大腿骨の締結具3.1が大腿骨の止まり穴20の壁に固定される(固定部15.1)。段階(d)では、脛骨の締結具3.2が圧着され、脛骨の貫通孔22に固定される(固定部15.2)。
【0052】
図3は、上述したように、
図1に示される方法と同様の固定方法を用いて骨開口部2に縫付移植片端部16を固定することを示す。骨開口部2は、貫通孔であり、より大きな断面の部分2.1とより小さな断面の部分2.2とを含む。縫付移植片端部16および締結具3は貫通孔部分2.1内に配され、縫付移植片端部16から延びる縫合端部17は、貫通孔部2.2を通じて貫通孔から出て、たとえば拡張器を用いて圧縮するかまたは締結具3を導入する前に移植片を引っ張るために用いられる。縫付移植片端部16を含む移植片1はたとえば、2ストランドの移植片である。2つのストランドは横方向側同士の周りのクロスステッチの連なりによって互いに固定され、1つの縫合部で形成され、2つの縫合端部17が縫付移植片端部から突出する。移植片1はさらに、指定の態様で2つの端部が縫い付けられた状態で2ストランドの移植片を2つに折ることによって作成される4ストランドの移植片であってもよい。4ストランドの移植片は、縫合端部を有さない折込端部と、4つの突出する縫合端部を有する縫付端部とを含む。貫通孔部分2.1の壁に締結具を固定するステップはたとえば、
図1に関連して上で記載したように行われる。
【0053】
図4は、止まり穴である骨開口部2に縫付移植片端部16を固定することを示す。縫付移植片端部16は好ましくは、縫付移植片端部16から突出する縫合端部17を用いて締結具3に固定される。移植片端部16および締結具3を開口部内に導入する前にこの固定が確立され、圧着を確立するために移植片端部16および締結具3がともに開口部2に導入される。
図3は、骨開口部2に位置決めされる移植片端部16および締結具3を示す。締結具3を開口部の壁に固定するステップはたとえば、
図1に示されるような態様で確立される。
【0054】
縫付移植片端部を締結具3に固定することはたとえば、
図4に示されるように、縫合端部17の第1の部分を締結具3の、この目的のために開口遠位端を含む内部キャビティ4に通させ、縫合端部17の第2の部分を締結具3の周面に沿って通させ、かつ縫合端部17の2つの部分を接続するために結び目または他の好適な縫合止めを締結具近位面に設けることにより達成され得る。締結具の周面および/または締結具の内部キャビティは、軸方向に延びる溝を縫合端部の収容のために含んでもよい。縫合部が感熱性であり、縫合部が液化した材料によって締結具の内部キャビティ内で損傷を受ける危険性がある場合、締結具を通る少なくとも1つの別個の貫通孔を縫合部に対して設けることが有利となるであろう(
図19も参照)。締結具3の遠位端にアイレットまたは同様の止め手段を具備させることも可能である。アイレットまたは同様の止め手段には、移植片端部16および締結具3がともに骨開口部2に導入される前に、縫付移植片端部16から突出する縫合端部17が好適な態様で固定され得る。もちろん、好適な態様で非縫付移植片端部を締結具に固定することも可能である。
【0055】
図5〜
図9A/Bは、適合された固定要素6および固定ツール13とともに締結具3のさらなる例示的な実施例を示す。締結具3と、固定要素6と、固定ツール13との示されるすべての集合は、
図1に示される固定ステップとは若干異なるが
図1〜
図4に示されるような固定用途すべてに好適である固定ステップに好適である。
図5〜
図9は、移植片外固定についての固定するステップを示すが、以下でさらに論じるように、それらの原理は移植片内固定にも適用可能である。
【0056】
図5は、移植片1を骨貫通孔に固定するために骨貫通孔2に圧着される締結具3の軸方向断面を示す。締結具3は主に、
図1に示される締結具と同じであるが、内部キャビティ4から締結具の外面に到達する通路5として、
図1に従ったスロット状の開窓の代わりに、複数の開口部が設けられる。固定要素6は筒形であり、ここでも好ましくは振動ツールである固定ツール13の延在部26のフットピース25上に緩く載置されている。固定処理のために、固定要素6とともに延在部26が、締結具3の内部キャビティ4に導入される。次いで、固定ツール13が活性化され、固定要素6は保持され、対応する力F.2を、固定要素6の近位面に作用するカウンタ要素27に適用することによりフットピース25に対して進展される。固定要素6により構成される熱可塑性物質は、固定要素6の遠位面にて液化される。この遠位面にて、固定要素6は、振動するフットピース25と接触する。フットピース25と固定要素6との間の界面の対応する位置決めにより、液化した材料は、通路5を通って貫通孔壁の中に流れるようにされる。この界面は、異なる通路5によってその後の固定処理のために変位される。
図5は、固定処理の間のセットアップを示す。固定材料は遠位部および中間通路5を通ってすでに押し込まれている。この界面は、いまだ中間通路に位置決めされている。近位通路には固定材料はまだ入っていない。
【0057】
図5に示されるように、固定要素6、固定ツール13、およびカウンタ要素27の組合せにより、固定要素6の進展は、カウンタ要素27を実施的に静的に保ちつつ、たとえば骨表面に対して押圧しつつ、締結具3の近位面に向かってフットピース25を引っ張ることによっても行われ得る。固定ツールおよびカウンタツールの機能を逆にすることも可能である。すなわち、カウンタ要素27を振動させるとともにフットピース25をカウンタ要素として用いることも可能である。さらに、
図5に示されるような締結具固定の場合、
図1に係る締結具固定について上述したように、振動エネルギー以外のエネルギータイプを用いることもできる。
図5に示されるような固定処理の原理のさらなる実施例および詳細がWO−2009/132472公報に記載され、その開示は全文本願明細書において参照により援用される。
図5に示されるような固定要素6および固定ツール13の組合せの代替的な実施例では、管形の固定要素6がディスペンサのような装置において消費可能な要素を構成し、
図5に示されるのと同様の態様で装置の遠位端にて液化される。このようなディスペンサ装置は、WO−2010/127462公報に記載され、その開示は全文本願明細書において参照により援用される。
【0058】
図5に示されるような固定方法では、固定要素6を進展させるために必要な力F.2は、締結具3によって反対に作用されていないことは明らかである。したがって、この力は、その方向がどのようであっても締結具の圧着を弱めることはできず、閉鎖遠位端を有さないとともに締結具の近位端または遠位端のいずれかから固定要素を導入する締結具の使用を可能にする。
【0059】
図6は、締結具3、固定要素6、および固定ツール13のさらなる集合の軸方向断面図である。締結具3は、固定ステップの前に骨開口部2に存在しているのが示される。すなわち、移植片1と骨開口部2の対向する壁との間に圧着されるのが示される。上記とは他の態様で、締結具3は、内部キャビティと、内部キャビティを締結具外面に接続する(
図1〜
図5に示されるような)通路とを含まないが、その代わりに、固定要素6によって構成される液化可能材料を締結具近位面から締結具周面の固定部分まで案内するために、締結具3は、締結具近位面から締結具遠位端に向かって延びる少なくとも1つの溝30を含み、わずかに切下げられた断面を有してもよい。固定要素6は、実質的にこの断面を充填するとともにそこから若干突出するように適合され、固定ツール13を用いて締結具近位面から、圧着された締結具3の溝30に押し込まれる。溝30において、固定要素6は有利なことに、固定ツール13の遠位端に堅く取り付けられる。そのため、振動エネルギー(または他のタイプのエネルギー)が実質的に損失なく固定要素内に伝達され、固定要素が骨開口部の壁の骨組織と接触し、かつさらに場合によっては溝30の内面と接触した場合に液化が発生する。溝30は、固定材料の液化および再凝固が骨壁の骨組織だけでなく、溝30内の締結具表面とも同時に確実な嵌合接続をもたらし得るように、粗い内面または他の態様で好適に構造化された内面を含んでもよい。
【0060】
図6に従った締結具3が1つより多い溝を含む場合、締結具の固定には、1つより多い固定ステップが必要になる。これらの固定するステップは1つの同じ固定ツールをすべてのステップについて用いて連続で実行されてもよく、またはこれらの固定するステップは、フォーク形の固定ツールを用いて同時に行われてもよい。
【0061】
図7は、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13との集合のさらなる実施例を通る軸方向断面図である。この集合はさらに、案内ツール14を含み、
図6に関連して記載される固定処理と同様の固定処理に好適である。集合は、締結具3が移植片1とともに骨開口部2に圧着される状態で示される。集合は、固定ステップの準備が整っている。案内ツール14は、固定要素6の断面と固定ツール13の遠位端とに適合された断面を有する軸方向の貫通穴を含む。この貫通穴は、2°から10°、好ましくは3°の鋭角だけツール軸に対して角度付けされている。
図6にすでに示されるように、固定ステップの場合、固定要素6は、移植片1と反対の締結具側上に設けられる溝30に沿って締結具近位面から進展することになる。
図6に示されるのとは他の態様で、
図7に従った溝30は、より広い入口部分30.1と、より狭い遠位部分30.2とを含む。この遠位部分は好ましくは閉鎖端を有する。固定ステップの準備では、締結具を骨開口部2内に押し込むためにも機能し得る案内ツール31が、その貫通穴の遠位口部が溝30の入口部分と整列した状態で、締結具近位面上に位置決めされる。固定要素6と固定ツール13の遠位端とは、案内ツール31の貫通穴に位置決めされる。固定要素の遠位端は溝30の入口部分30.1内に支持される。固定処理の間、固定要素6が溝30内に進展される。
図7に示されるような固定要素6の角度付けされた位置によって、
図6に示されるような軸方向位置と比較して、固定要素の材料が骨開口部の壁に対してより押し込まれ、これにより液化と骨組織内への浸透とを強化する。この効果は閉鎖端を有する溝30によって増幅される。
【0062】
3.5mmの直径のピン形の固定要素を用いて、直径が8mmである締結具と、半径が1.5〜2mmの半円断面の遠位溝部分30.2とを固定することで良好な結果が与えられるということを実験が示している。
【0063】
図8は、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13との集合のさらなる実施例を通る軸方向断面図である。締結具3および移植片1は、固定ステップの前に骨貫通孔に圧着されるように示されている。固定要素6は、たとえば完全に液化可能材料から形成される締結具3の統合された中央部によって構成される。この材料は、締結具周面から、固定要素6を構成する中央の締結具領域に向かう方向において濃度が減少し得る充填化合物(ウイスカ、繊維、粒子)を含んでもよい。締結具は、軸方向チャネルの形態にある内部キャビティ4と、当該チャネルを締結具周面の固定区域に接続する少なくとも1つの通路5とを含む。チャネルは好ましくは、より広い近位部分32と、より狭い遠位の部分33とを有する。締結具3に適合される固定ツール13は少なくとも、ガイドされるためにより広いチャネル部分32に適合される遠位部分を有する。固定要素6は、遠位(より狭い)チャネル部分33を取り囲む締結具部分によって構成され、固定ツール13をより広いチャネル部分32からより狭いチャネル部分に押し込むことで進展および液化され、これにより液化した材料を締結具外面に通路5を通って押し出す。
図8に示されるような締結具および固定処理のさらなる実施例および詳細が、US−2008/262517公報(Stryker Trauma GmbH)に記載され、その開示は全文本願明細書において参照により援用される。
【0064】
図9Aは、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13とを含む集合のさらなる実施例を通る軸方向断面図である。締結具3は、移植片1とともに骨開口部2内に圧着される。この図の左側は固定ステップの前を示し、右側は固定ステップの後を示す。この実施例は、
図6および
図8に従った実施例の組合せであると考えられ得る。すなわち、締結具3内に統合され、完全に固定材料からなり得るが、低濃度の場合がある充填材を含む場合がある少なくとも1つの固定要素6を含むと考えられ得る。その場合、
図8に関連して論じたように、他の領域においてよりも材料が液化することになる。しかしながら、
図8に示されるのとは別の態様では、固定要素6または液化されることになる材料は、
図6に関連して論じたように、それぞれ締結具の中央領域に位置せず、その周面に位置する。先細りになる遠位端を好ましくは有する固定ツール13は、液化可能材料の表面領域において骨開口部の壁に平行な締結具材料内に押し込まれる。固定ステップの完了の後、固定ツールが取り除かれると、締結具の中央領域と、骨壁における固定部15との間にボイド15´が残る。
図9B(固定された締結具3を通る断面)において明確に分かるように、固定部15は、ボイド15´に近接して締結具の他の部分に接続される。
【0065】
図10〜
図17は、
図1〜
図5に示されるように締結具の原理(締結具周面に接続される内部キャビティ4と、締結具の内部キャビティ内に嵌合するよう適合される固定要素とを有する締結具)に基づくが形態が異なる締結具3のさまざまな実施例を示す。これらのすべての締結具3は、
図1〜
図5に示されるような固定方法および用途において適用可能である。
【0066】
図10は、丸くされた遠位端を有する円筒の形状を有する非常に単純な締結具3の3次元図である。締結具3は、内部キャビティ4と、1つだけのスロット形の通路5とを含む。通路5は内部キャビティ4を締結具周面に接続する。
【0067】
図11〜
図13は、
図10の締結具に類似したさらなる締結具3の3次元図である。これらの締結具は、右側(締結具周面の固定区域)に、締結具周面を内部キャビティ4に接続する通路5を含む。
図11および
図13において通路は、軸方向に延在する、穴の2つの列(1列が図示される)である。
図12では、通路は、実質的に円周方向に延在するスロットの軸方向に延在する1つの列である。
図11〜
図13の締結具はさらに、左側(締結具周面の押圧区域34)に、固定されるべき移植片を収容するための浅い溝を形成する平坦または凹型区域を含む。さらに、
図13の締結具は、押圧区域34の中心において、軸方向に延在するリッジ35を含む。このリッジは、折り重ねられた移植片(図示せず)を保持するために機能する。移植片は、
図4に関連して論じたのと同様の態様で締結具3とともに骨開口部の中に押し込まれるために、リッジ35の遠位端の上で折り重ねられる。
【0068】
図14は、さらなる締結具3の軸方向断面図である。締結具は、骨開口部において移植片1とともに圧着されるように示される。さらに
図14は、固定要素6と、固定ツール13と、
図7に関連して論じたような案内ツールに類似した案内ツール14とを示す。これら全体の集合は固定ステップを行う準備ができている。締結具3は、締結具軸に対してある角度で延びる少なくとも1つのチャネル4/5(内部キャビティ4および通路5の組合せ)を含む。少なくとも1つのチャネル4/5は、締結具近位面に第1の口部と、締結具の周面に第2の口部とを含む。第1の口部は、固定要素6と、場合によっては固定ツールの遠位端との導入のために機能する。第2の口部は、固定材料を骨開口部の骨壁に対して押圧するために機能する。固定材料は、チャネル4/5内または骨壁との界面のいずれかで液化する。この目的のために、チャネル4/5は好ましくは内部のエネルギー方向付け部を含む。
【0069】
図15は、内部キャビティ4と通路5とを含むさらなる締結具の実施例の軸方向断面図である。内部キャビティ4は、締結具軸と非同軸に配され、固定要素6を通路5に向かって進路を変えることが可能な段4´または対応する湾曲部を含む。この配置は、
図7に関連して論じたのと同様の態様で、固定材料を締結具表面または骨壁のそれぞれに向かって押し込む効果につながる。
【0070】
図16は、内部キャビティ4と内部キャビティを締結具周面に接続する通路5とを含むさらなる締結具3の側面図である。締結具は、中央領域よりも断面が大きい遠位および近位端領域を含む。これら2つの端部領域は特に、球状である。
図16に従った締結具は、円筒形の締結具と同じぐらい良好に圧着を提供するが、より小さい力で骨開口部内に導入され得るということが実験において示されている。
【0071】
図17は、移植片に近接して骨開口部内に導入されるのが有利な締結具3の遠位端の3次元図である。移植片は、
図17では締結具の左側である締結具3の一方側に位置決めされる。締結具の遠位端は、骨開口部内において移植片の近傍に締結具を導入する際の移植片の破損を防止するために、この移植片側上にて先細りになっている。締結具の遠位端は、非移植片側(
図17の右側)上でも先細りになっているがより少なく先細りになっている。案内ワイヤの収容のために締結具を通る軸方向の貫通穴の遠位口部が、その中に位置する。
図1に関連してすでに述べたように、貫通穴37と、それとともに案内ワイヤとを、偏心するとともに締結具の固定側に可能な限り近く位置決めすることが有利である。貫通穴37またはその近位セクションは、たとえば
図1または
図5に従った締結具実施例に記載されるように内部キャビティ4として機能してもよいし、しなくてもよい。
【0072】
図18〜
図22は、本発明に従った固定において、締結具3が移植片1および骨開口部2に適合され得る方法を示す。示される締結具はすべて、移植片外固定に好適であり、
図1〜
図5に示されるような締結具原理(内部キャビティと、キャビティを締結具周面に接続する少なくとも1つの通路とを有する締結具、および内部キャビティ内に位置決めされるようにされる固定要素)に部分的に基づくとともに、
図6および
図7に示されるような締結具原理(軸方向に延びる少なくとも1つの表面溝を有する締結具、および当該溝内で進展するように適合される固定要素)に部分的に基づく。
図8および
図9に従った締結具原理(締結具に統合された固定要素、および固定ツールを締結具内に押し込むことにより締結具から押し込まれる固定材料)への適合は、本発明から逸脱することなく本開示を知った当業者によって容易に想到され得る。
【0073】
図18は、固定された締結具3および移植片1を通る断面図である。締結具3は開口部の実質的に円形断面よりも小さい実質的に丸形断面を有する。容易に圧縮可能である必要がある移植片1は、開口部の壁と、この壁における締結具の固定部15とは反対側の締結具3の周面との間の狭いスロット内に詰められる。
図18に従った締結具3、移植片1、および骨開口部についての例示的な寸法は以下のとおりである。すなわち、開口直径が8mm、締結具直径が7mm、(たとえば縫付端部を有する)移植片は7mmの穴を容易に通過できるようにサイズ決めされる。
【0074】
図19は、移植片を収容するための、非常に浅い軸方向に延在する溝を形成する少なくとも部分的に凹型の押圧区域34を含む締結具3の上面図である。(押圧区域34とは反対の)締結具3の固定区域は、実質的に円形であり、締結具のために設けられる骨開口部2と同じ半径を有する。締結具3はさらに、
図4および
図17に関連して論じたように、締結具を案内ワイヤに沿って進展させるおよび/または縫付移植片の端部分から突出する縫合端部を締結具に通すために用いられるように適合される軸方向の貫通穴37を含んでもよい。
図19に従った締結具3、移植片、およびそれに適合された骨開口部のための例示的な寸法はたとえば以下のとおりである。開口直径が8mmであり、締結具の固定区域の半径が4mmであり、締結具の断面と開口部の断面との面積比が
図18の締結具の場合の面積比と同じであり、(たとえば縫付端部を有する)移植片は、7mmの穴を容易に通過するようサイズ決めされる。
【0075】
図20は、締結具3と、骨開口部2内に固定される移植片1とを通る断面図である。締結具は、
図11〜
図13に関連して論じたように、平坦な押圧区域34を含む。移植片1は、この押圧区域34と開口部の壁との間のギャップ内で圧縮される。押圧区域34の正確な形状は、移植片の形状およびその圧縮性に適合される。
【0076】
図21では、締結具3はさらに、開口部2の実質的に円形断面よりもかなり小さい実質的に円形断面を有する。締結具3の両側および場合によっては移植片1の両側では骨開口部2が空のまま残っているが、固定要素の液化した固定材料が、開口部の骨壁への浸透に加えてこの空の空間に流れ込むための手段が締結具3上に設けられていない場合には、あまり変形可能でない移植片1内に締結具3の周面が押し込まれる。
【0077】
図22では、移植片1は、ほとんど圧縮可能および変形可能ではなく、たとえば実質的に円形断面を有する。浅い溝(押圧区域34)が移植片1を収容するために締結具内に設けられる。
【0078】
図18〜
図20はかなり理論上のものである。なぜならば、これらの図は、実際には骨開口部の周りの骨組織が、締結具の導入時に骨開口部に作用する力と、骨開口部の断面が変形するようにこの導入を通じて達成される圧着とによって圧縮されるという事実を無視しているからである。この変形の程度は、骨組織の機械的性質に依存している。
【0079】
図23は、骨における開口部2がその場で液化されるべき液化可能材料の第1の部分で前処理される本発明に従った方法の実施例を示す。当該液化可能材料は、開口部2の壁の柱構造および/またはその中に設けられるキャビティに浸透し、再凝固の際にある種の複合層40を形成する。複合層40では、液化可能材料および骨組織は確実な嵌合接続で互いに接続される。好ましくはこの前処理ステップは、開口部2の断面が実質的に変わらないままであるように行われる。前処理ステップの後、この固定は、たとえば
図1または
図5に示されるような方法について記載されるのと同じように行われる。固定ステップでは、固定要素によって構成される液化可能材料の第2の部分がその場で液化され、第1の部分と接触して接合される。液化可能材料の第1および第2の部分は好ましくは、熱可塑性を有する同じ材料を含むが、異なるそのような材料も含んでもよい。しかしながら、そのような材料は、固定ステップの条件において接合接続部41を形成することができるよう選択される必要がある。
図5〜
図9に示されるような他の締結具原理に
図23に示される方法を適合することは、当業者にとっては、本発明の範囲から逸脱することなく本開示の知見により容易に可能なことである。
【0080】
前処理ステップはたとえば、
図5に従った方法の固定ステップについて下の記載と同じ態様で行われる。締結具が骨開口部2に位置決めされず、フットピースおよび固定要素の断面が骨開口部の断面よりも非常に若干小さい。前処理ステップを行うためのさらなる例示的な方法が、WO2009/141252(Nexilis)およびWO−2010/045751に記載され、それらの全開示は本願明細書において参照により援用される。
【0081】
移植片と骨開口部の壁の骨組織との間の骨組織再生を損なわないために、上述の前処理を締結具の固定側に制限することが有利であり得る。骨の開口部の壁のこのような選択的な前処理は、
図8に関連して上述したWO−2010/045751に記載される。
【0082】
図24は、移植片外固定に好適な拡張可能な締結具の例示的な実施例と、
図1〜
図5に示される方法について記載されるような固定ステップとを示す。締結具は、スロットが設けられたスリーブ部分3aと、たとえばねじ形である拡大部分3bとを含む。スリーブ部分3aは少なくとも近位方向へ開口しており、スリーブ部分3aの一方の側(固定区域)にのみ面するように配される少なくとも1つの軸方向のスロット43または複数のこのようなスロットを含む。拡大部分3bは、軸方向チャネル44と、軸方向チャネル44を拡大部分3bの周面に接続する通路45とを含む。拡大部分3bは、スリーブ部分3aへ拡大部分3bを導入する際、スリーブ部分が半径方向に拡張してスロット43が開くかまたは広がるように、スリーブ部分3aに適合される。骨に設けられる開口部は、スリーブ部分3aが実質的な力の必要なく移植片の後または移植片と一緒に開口部内へと導入され得るように、かつ位置決めされたスリーブ部分内に拡大部分3bを導入することにより十分な圧着を達成するためにスリーブ部分の十分な拡張を引き起こすように、スリーブ部分3aに適合される。スロット43が骨壁に面した状態で開口部の骨壁と移植片との間にスリーブ部分3aを位置決めし、次いで拡大部分3bをスリーブ部分3a内にねじ込むことにより圧着が作り出される。固定ステップはたとえば
図1〜
図5に関連して上述したように行われる。液化可能材料は拡大部分3bの軸方向チャネル44において液化され、通路45およびスロット43を通って流れて開口部の壁に接触する。スリーブ部分の固定区域にのみスロット43が存在するので、拡大部分3bは、回りに通路45を含んでもよい。最終的に押圧区域に位置決めされるこのような通路はスリーブ部分によって閉じたままにされることになる。
【0083】
当業者ならば、
図1〜
図9または
図23にいずれか1つに示されるような本発明に従った方法に好適であるように容易に適合できる拡張可能な締結具の他の実施例が分かる。
【0084】
図25は移植片1が骨開口部2(たとえば骨貫通孔内における移植片外固定)内に固定される本発明に従った方法のさらなる実施例を示す。
図25の左側は、固定要素6が固定処理に対して準備できた状態(たとえば固定ツール13に固く固定される)で、貫通孔に圧着される締結具3および移植片1(導入方向は図面の上部からの方向とする)を示し、右側は、圧着および固定された締結具3、すなわち完成した固定部を示す。この方法において用いられる締結具3は、押圧面部分と固定面部分とを含む。これらの異なる部分は締結具軸に沿って配される(前述の図とは異なり、区域は締結具の円周の周りに配される)。換言すると、押圧面部分は、固定面部分がその近位方向および場合によっては遠位方向に配された状態で、締結具の周り全体に延在する。締結具3は均一な近位面を有してもよいが、好ましくは、骨壁のより多くを移植片表面よりも自由にするよう方位付けられた傾斜または段差が設けられた近位面を有する。締結具近位面の選択された部分は、粗くてもよく、または他の態様で好適に構造化されてもよい。固定要素6は締結具3の断面と実質的に同じであり得る断面を有し、開口部の骨壁と移植片1との間の空間の中へ締結具近位面に向かって押し込まれると同時に、固定ツール13は振動される(または他のエネルギーを固定要素に伝達するために活性化される)。これにより、液化可能材料は、少なくとも貫通孔の骨壁と接触している箇所、好ましくはさらに締結具3の近位面と接触している箇所にて液化され、これにより骨壁において近位固定部を締結具3に提供する。移植片と接触するところでは、液化可能材料は全く液化しないか、またはほとんど液化しない。なぜならば、移植片は、開口部の骨壁とは反対に、おおむね軟らかく、このような液化を始めるためのエネルギー方向付け部を提供することができないからである。
【0085】
固定要素6と移植片1との間で摩擦および熱エネルギーの伝達を完全に防止するために、
図25に示されるような方法において、締結具断面の一部にのみに対応する断面(たとえば固定要素および固定ツールについては半円形断面であるとともに、締結具断面は実質的に円形)の固定要素6と、有利なことに固定ツール13とを用い、かつ固定要素6および移植片1が接触しないか、または少なくとも互いに押圧しないように、移植片に近接して固定要素6を骨開口部2内に導入することが有利であり得る。
【0086】
所望の場合、固定要素6.1を用いる遠位の固定が、近位の固定とまったく同じ態様で行われる。
【0087】
上で詳述したように、締結具3と同じ方向に固定要素を進展させることが有利である。なぜならば締結具3は、締結具を貫通孔内に押し込むことにより達成される圧着を固定処理が決して弱め得ないことを確実にするために、貫通孔内に押し込まれるからである。したがって、遠位の固定も望ましい場合、まず近位の固定(固定要素6)を行って、次いで遠位の固定(固定要素6.1)を行うことが有利であろう。
【0088】
固定要素6および6.1は、上述したように締結具3と実質的に同様の断面を有してもよい。しかしながら、これは必須ではない。固定要素はたとえば、固定要素が開口部内に進展する間に開口部の壁に溝を設けるかまたは拡張するための軸方向に延在する溝縁部または拡張構造をさらに含んでもよい。さらに、開口部はたとえば、締結具が位置決めされることになる領域においてよりも、固定要素が位置決めされることになる領域においてより広くなるように設けられてもよい。
【0089】
図26は、押圧のために具備される近位面部分と固定のために具備される遠位面部分とを含む締結具3を用いて、止まり開口部内に移植片1の端部を固定(移植片外固定)することを示す。固定処理の原理は、締結具3が好ましくは移植片の端部を超えて実質的に開口部2の底面壁と接触するよう開口部2内に押し込まれるという相違点を除けば、
図1〜
図4に示されるのと同じである。締結具3は次いで横方向(固定部15L)および/または遠位方向(固定部15D)に固定される。
【0090】
図27〜
図36は本発明に従った移植片内固定を示す。このような移植片内固定の原理は、移植片外固定について上で論じたのと同じである。特定的には、移植片外固定について上述したすべての固定原理は、以下に具体的に論じられるかどうかから独立して移植片内固定についても適用可能であるということを意味する。
【0091】
図27〜
図29は、一定または一定ではない断面を有する貫通孔または止まり穴である骨開口部における移植片内固定に適用可能な締結具3を通る断面図である。
図27および
図28に従った締結具は、2つのストランド(または2つの対に分けられた4つのストランド)を有する移植片に対して適用可能であり、したがって好ましくは締結具の対向する側同士の上に位置する2つの押圧区域34を含む。これらの締結具の遠位端には、好ましくは移植片がたとえばそこで折り重ねられる移植片端部の収容のための横断溝が設けられる。
図27および
図28に従った締結具は、締結具の内部キャビティ4内に導入される固定要素を用いて骨開口部の壁内に固定される。液化した材料は、通路5を通って骨壁に対して送られる。
図27によると、通路5は、締結具の一方の側にのみ(一方の固定区域のみ)に配される。
図28によると、締結具の対向する側同士(2つの対向する固定区域)に配される。
図27に従った締結具はさらに、
図4に関連して論じたように、案内ワイヤの使用のために適合されたおよび/または縫付移植片端部から突出する縫合端部の部分を通すために適合された軸方向の貫通穴37を含む。
【0092】
図29は
図27および
図28と同じ締結具原理を示すが、4ストランドの移植片にも適用可能である。4ストランドは、互いに分離され、4つの押圧区域34内に収容される。4つの押圧区域34は、たとえば規則的なパターンで締結具3の周りに配される。これら押圧区域34の間に通路5の口部(固定区域)が配される。
図29に従った締結具3は、好ましくは2つの折り重ねられたストランドを含む移植片のために用いられ、その遠位端にて好ましくは2つの交差して配された横断溝を含む。横断溝の各々は、2つのストランド折り重ね部のうちの1つを収容するためのものである。
【0093】
図30〜
図33は、
図27または
図28に示される断面と同様の断面を有する締結具の3次元図である。これらの締結具は、押圧区域の設計において互いに異なるとともに、
図27および
図28に示される締結具とも異なる。
図30によると、押圧区域は、横断リブ38の形態にある保持手段を含む。その一方、
図31〜
図33によれば、押圧区域の締結具表面は実質的に平滑である。
図30および
図31の締結具3の場合、押圧区域34を構成する浅い溝は締結具の長さに沿って一定の断面を有する。
図32の締結具の場合、当該溝は、締結具遠位端に向かって減少する深さおよび幅を有する。
図33の締結具の場合、締結具近位端に向かって減少する深さおよび幅を有する。
図30〜
図33に従った締結具を用いた比較実験により、
図31に従った締結具が最も良好な圧着を達成したことが示されている。
【0094】
図34Aおよび
図34Bは、骨の貫通孔または止まり開口部において、2つのストランド(またはストランド群の対で分離される2つより多いストランド)を含む移植片1の移植片内固定に好適な締結具3、固定要素6、および固定ツール13の集合を示し、特定的には締結具3の上で折り重ねられるとともに締結具3とともに貫通孔または止まり開口部内に押し込まれる移植片1の固定を示す。
図34Aおよび
図34Bに示されるような集合により達成される固定は、
図6または
図7に示される固定原理に基づく。
【0095】
図34Aは、固定の前の完全な集合を通る軸方向断面図である。
図34Bは、固定の前(上)および固定が完了した際(下)の締結具3および移植片1を通る2つの断面図を含む。
【0096】
図34Aおよび
図34Bに従った締結具3は、押圧のために具備される2つの表面区域と、固定のために具備される2つの表面区域とを含む。異なる区域が締結具の円周の周りに交互に存在する。押圧区域34は、遠位横断溝52において遠位方向に終端し得る浅い軸方向溝を含む。遠位横断溝52では、移植片の折り重ねられた端部が収容される。固定区域は、
図6または
図7に従った締結具の固定区域のように具備される。締結具のための締結処理は、特に
図6および
図7に関連して記載されたのと実質的に同じである。したがって、上記の記載の対応する部分に参照がなされる。
【0097】
図35Aおよび
図35Bは、ダブルストランドの移植片を骨開口部2(貫通孔または止まり開口部)に固定するための移植片内固定を示す。この固定は、移植片外固定について
図25に示される近位固定に類似した近位固定を含む。
図35Aは、軸方向に断面にされた骨開口部における処理を示す。
図35Bは、固定要素6を通る断面図である。両方の図では、左側が近位固定が行われる前の状況を示し、右側が完了した固定を示す。締結具3は、前述の図に示される方法のうちの任意の方法を用いて、周囲開口部の周壁2に圧着および場合によっては横方向に固定される(横方向固定部15L)。次いで、締結具3と同様の断面を有するとともに錐台の形態にあってもよい近位固定要素6が開口部2内に進展され、好適に適合された固定ツール13を用いて締結具の近位面に対して押圧される。これにより、締結具3に対して近位の骨開口部2の壁と、場合によってはさらに締結具近位面とにおいて固定が達成される。
図25に関連して上で論じたように、ひとたび近位固定がなされて、圧着を行うために用いられる力の方向と反対の方向を有する力を用いて遠位の固定要素を進展させるために必要な力によって圧着が弱まるのが防止されると、締結具の遠位側上に同様の固定(図示せず)を実行することが可能である。
【0098】
図1〜
図34に示されるすべての締結具は、実質的に円筒形または若干円錐形であり、実質的に円形断面を有することを包含する(固定要素を案内するための締結具表面の固定区域に設けられる溝と、軟組織または固定されるべき移植片ストランドを保持するために設けられた押圧区域34内の平坦または凹型の形状とは考慮しない)。これは、単純な円筒形の形状を有する、ドリルで設けられた開口部に導入されるのに好適であるので好ましい締結具の形状であるが、本発明についての条件ではない。すべての締結具は、任意の断面(たとえば楕円形、長方形、多角形)を有してもよく、対応する断面の開口部に嵌合してもよく、連続的または段階的に遠位端に向かって先細りになってもよく、連続的または段階的に先細りになる開口部に嵌合されてもよい。
【0099】
図36は、非円形断面を有する締結具3を用いて非円形の骨開口部内において移植片内固定を行う例を示す(固定する締結具3およびダブルストランドの移植片1を通る断面図)。骨開口部は、たとえばパンチングにより設けられ、細長い断面を有する。2つの移植片ストランドのうち、1つは開口部の細長い断面の1つの端部に圧着され、他方のストランドは他の端部に圧着される。締結具3は、細長い断面の中心に位置決めおよび固定される(固定部15)。開口部の断面は、たとえば楕円または長方形(丸い縁部を有する)であってもよく、示されるように曲がっていてもよく、または実質的にまっすぐであってもよい。特定的には、固定部位の解剖学的特性に適合されてもよい。
図36に示されるような固定はたとえばACL手術に適用可能であり、固定のフットプリントに関して自然な状態の再建が非常に良好となる。これにより、自然の関節でのように、特定の解剖学的状況と膝関節内の2つのストランドの交差とに適合することが可能である。現状技術によると、細長いフットプリントは互いの間の距離を最小にすることが必要である、2つの別個の穴内での固定によってのみ達成され得るが、
図36に従った固定は、それよりもかなり小さな空間において実現され得るのでたとえば女性患者の膝においても容易に可能となる。
【0100】
図37、
図38A/B、および
図39A/B/Cは、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13と、案内ツール14とのさらなる集合を示す。案内ツール14は、固定ツール13と、場合によっては固定要素6とを固定の進行の間に案内するのに好適なだけでなく、好ましくは移植片1の圧着を確立して固定部3を骨開口部2に固定するために案内ワイヤ60に沿って締結具を骨開口部内に押し込むためにも好適である。この示された集合は、移植片外固定に好適であるが、移植片内固定にも容易に適合され得る。
【0101】
図37は、骨開口部2に圧着される締結具3および移植片1を軸方向断面図で示す。締結具は、たとえば
図1または
図5において示されるような固定処理に好適である。案内ワイヤ60および案内ツール14も示される。案内ワイヤ60は、締結具の内部キャビティ4を通って延びる。内部キャビティ4は、この目的のために、遠位端部分と、案内ワイヤ60の断面に適合される断面を有する口部とを含む。内部キャビティ4は、たとえば締結具3の固定側上に偏心的に位置決めされる。これにより、案内ワイヤ60に沿って骨開口部内に締結具を導入することを促進する。案内ツール14はたとえば手動操作のために形状決めされ、締結具3の近位断面に適合される断面を有する遠位端を含む。すなわち案内ツール14は、締結具の内部キャビティ4を近位方向において連続させるよう適合される軸方向の貫通穴を含み、たとえば突出部62といった、締結具3の対応する窪み内に嵌合するプッシュオン接続で好ましくは締結具を保持するための手段をさらに含む。集合はさらに、ピン形であるとともに、案内ツール14の軸方向穴を通って締結具3の内部キャビティ4内に導入されるように適合される固定要素6と、その遠位端部分も案内ツール14の軸方向穴を通って導入されるように適合される固定ツール13とを含む。固定要素および固定ツールは
図37には示されない。
【0102】
図37に従った集合を用いて、固定処理は、移植片1および案内ワイヤ60を骨開口部内に導入するステップと、締結具3を案内ツール14に取り付けるステップと、たとえば案内ツール14の近位端に適用される詰込ツール、または場合によっては案内ワイヤ60の近位端を保護するために、案内ツール14の近位面上に位置決めされるカニューレ状の界面ピース63に適用される詰込ツールを用いることによって、案内ワイヤ60の近位端を内部キャビティ4の遠位口部に導入し、締結具3を案内ワイヤ60に沿って開口部内に押し込むステップと、界面ピース63および案内ワイヤ60を除去するステップと、案内ツール14の軸方向穴を通って締結具に向かって固定要素6および固定ツール13を導入するステップと、固定処理のために固定ツール13を通じて固定要素6にエネルギーを伝達するステップと、エネルギー伝達を停止して、固定ツール13および案内ツール14を除去するステップとを含む。
【0103】
締結具3が案内ワイヤのために別個の軸方向穴を含む場合、たとえば
図19および
図27に示されるように、案内ワイヤは固定ステップの間はこの穴の中に残されてもよく、固定ツールおよび案内ツールと一緒に取り除かれてもよい。このような場合、
図14に示される固定処理と同様の固定処理のために、内部キャビティが案内ワイヤのための貫通穴に対して角度付けされることが可能になる。
【0104】
図38Aおよび
図38Bは、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13と、案内ツール13とを含むさらなる集合を軸方向断面図(
図38A)および断面図(
図38B)で示す。固定部は、骨開口部2において移植片1とともに圧着され、集合は固定ステップに対して準備ができた状態である。この集合は、案内ワイヤ60に沿って締結具3を骨開口部2内に導入するとともに、
図25に示される方法と同様の方法を用いて締結具3を固定するために好適である。締結具3は、固定要素6を含む。固定要素6は、締結具の近位面上に取り付けられ、たとえば固定要素6の実質的に半円の断面および締結具3の実質的に円形の断面といった締結具断面の一部を構成する断面を有する。締結具3および固定要素は好ましくは一体として作製され、同じ熱可塑性材料からなる。固定要素6から締結具3への遷移部では、固定要素は、たとえば固定要素6と締結具3との間を周面に沿って延在する溝70を通る低減された断面を含む。この断面の低減は、固定要素の液化が断面低減の領域内で、すなわちそれぞれ固定要素の遠位側または締結具の近位面上で開始されるように、固定要素6に固定ツールが伝達する振動エネルギーを集中させるために機能する。締結具3および場合によっては固定要素6はさらに、案内ワイヤ60の収容のための軸方向の貫通穴を含む。
【0105】
固定ツール13の断面は、固定要素6の断面に適合される。案内ツール14は案内ワイヤ60のための軸方向穴と、固定要素6および固定ツール13の断面に適合されたチャネルとを含む。案内ツール14は、案内ワイヤ60のための穴と、固定要素6に適合された溝とを有する内側部分14.1と、薄い管からなる外側部分14.2とを含む場合、より容易に製造され得る。外側部分14.2においては、内側部分14.1が固定される。外側部分14.2は、内側部分の溝を閉じて固定要素6と固定ツール13の遠位端のためのチャネルを構成する。外側部分14.2は、固定側(
図38Aでは左側)上にて、骨開口部内と、溝70のちょうど近位の軸方向位置とに到達する。これにより、固定要素の液化した材料の近位過ぎる流出も防止する。
【0106】
図38Aおよび
図38Bに従った集合を用いる固定は、
図37に従った集合について記載したのと同様の態様で行われる。案内ワイヤ60は、固定ステップの前に取り除かれる必要はない。
図38Aおよび
図38Bは、案内ワイヤが未だ適切な位置にある状態で、固定ステップに対して準備ができた集合を示す。
【0107】
図39A/B/Cは、締結具3と、固定要素6と、固定ツール13と、案内ツール14とのさらなる集合を示す。この集合は、2つの側面図(
図39Aおよび
図39Aに対して軸周りに90°回転された
図39B)で示されるとともに、軸方向の断面として示される(
図39C)。この集合は組み立られた状態で示され、固定ステップの準備ができている(案内ワイヤが除去される;図示せず)。集合は、
図1に示されるような方法を用いる固定に好適である。締結具3は、固定要素6に適合される内部キャビティ4を含み、通路5によって締結具周面に接続され、案内ワイヤのための狭い遠位口部を含んでもよい。案内ツール14上に搭載されるために、締結具は、段差が設けられた近位プロファイル72と近位内部のねじ山とを含む。
【0108】
案内ツール14は内側部分14.1および外側部分14.2を含む。これら2つの部分は回転可能であり、互いに対して軸方向に変位可能である。案内ツール14の内側部分14.1は、固定ツール13および固定要素6の導入のための穴と、その遠位端にて、内側案内ツール部分14.1と締結具3との間のねじ込み接続73のための固定部の雌ねじに適合された雄ねじとを含む。外側案内ツール部分14.2は、締結具3の段差が設けられるプロファイル72内に嵌合する段差が設けられたプロファイル72´をその遠位端に含む。内側案内ツール部分14.1の近位端は外側案内ツール部分14.2のランタン形の近位端部分75内に位置決めされるハンドルノブ74を含む。案内ツール14の外側部分14.2に対して内側部分14.1を回転させるために、作業者はハンドルノブ74を指でつかむことができる。
【0109】
締結具3を案内ツール14に搭載するために、締結具3は、案内ツール14の遠位端に対して押圧され、締結具3の段差が設けられたプロファイルと、外側案内ツール部分14.1の遠位端が噛み合う。次いで、内側案内ツール部分14.1は、噛み合っている段差が設けられたプロファイル72および72´による回転が防止された締結具3内へその遠位端がねじ込まれるために回転される。案内ワイヤが締結具3を骨開口部内に導入するために用いられる場合、組み立てられた集合は、
図37に従った集合について記載されるように用いられる。案内ワイヤの除去の後、固定要素6および固定ツール13は、案内ツール14の軸方向穴内に導入される。固定ツール13は、エネルギー源(好ましくは振動源)にすでに結合されてもよい。このような結合のために、たとえば好適に適合された超音波装置の筐体が、外側案内ツール部分14.2のランタン形の近位端部分上にねじ込まれるかまたは嵌め込まれる。これにより、固定ツールを振動発生機に嵌込結合する。好適な超音波装置がたとえば、まだ公表されていない特許出願PCT/CH2010/000279に記載され、その開示は本願明細書において全文参照により援用される。
【0110】
上記の記述および添付の図面において、本発明に従った方法、締結具、および集合の複数の実施例が開示される。各々の図は、特徴の特定の組合せを示す。当業者ならば、好適な態様で、創造性の必要なく、本発明の範囲から逸脱することなく、これらのうちの具体的な特徴の選択された特徴を一実施例から別の実施例に容易に転換することができる。
【0111】
実験結果
本発明に従った移植片外固定を実現するとともに、現状技術に従った干渉ねじを用いて行われた同様の固定、および本発明に従った締結具を用いて行われるが開口部内には固定されない(圧着のみ)同様の固定と比較した。さらに、Mayrらによる最初に参照された文献に記載されるような単純な圧着ドエルについての公表されたデータとこれらの固定を比較した。この比較では、固定強さ、固定剛性、低いサイクル疲労条件(0.5Hzの周波数の1000サイクル)での移植片移動、および最終破損原因を評価した。
【0112】
実験で用いられた締結具は、
図10〜
図13に示される締結具であった。これらの締結具と、比較のために用いられた干渉ねじとは、直径が7mmであり、長さが30mmであり、チタン、ステンレス鋼、PEEK、またはHA−PLAから形成された。固定要素はPLDLLAから形成された。移植片は、牛の前肢からの指伸筋からなる、2つのサイズ決めされた腱を2つに折ることによる4ストランドの移植片である。最終の移植片は、7.5mmの直径の穴を容易に通過した。移植片が固定された骨開口部は、脛骨皮質リーマを用いて牛の脛骨にドリルで穴開けされた直径8mmの貫通孔である。
【0113】
一般的に言うと、本発明に従った固定を用いると、130%までだけ高い初期の引張力、100%までだけ高い初期破損力、低いサイクル疲労条件下での相当する移植片移動にて40%だけ高い固定剛性、および干渉ねじと比較するとより少ない移植片の損傷を達成することが可能であるということがこの比較によって示された。