(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
OLEDデバイスは、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視角が広く、フル・カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
【0003】
真空環境における物理的蒸着は、小分子OLEDデバイスで利用されているように、有機薄膜材料を堆積させる主要な方法である。このような方法は周知であり、例えば、Barrのアメリカ合衆国特許第2,447,789号や、Tanabeらのヨーロッパ特許第0 982 411号に記載されている。OLEDデバイスの製造に用いられる有機材料は、速度に依存した望ましい気化温度またはそれに近い温度に長時間にわたって維持したとき、分解することがしばしばある。敏感な有機材料をより高温にすると、分子の構造が変化し、それに伴って材料の性質が変化する可能性がある。
【0004】
このような材料が熱に敏感であるという問題を解決するには、ほんの少量の有機材料を供給源に装填し、加熱をできるだけ少なくする。このようにすると、材料は、顕著な分解を引き起こす閾値温度に到達する前に消費される。この方法の限界は、ヒーターの温度に制約があるために利用できる気化速度が非常に小さいことと、供給源に存在する材料が少量であるためにその供給源の稼働時間が非常に短いことである。堆積速度が小さいこと、そして供給源に材料を頻繁に再充填せねばならないことは、OLED製造設備のスループットにとって大きな制約となる。
【0005】
装填した有機材料の全体をほぼ同じ温度に加熱することの二次的な帰結は、追加するドーパントなどの有機材料を、そのドーパントが気化するときの挙動および蒸気圧が、ホスト材料が気化するときの挙動および蒸気圧と非常に近い場合を除き、ホスト材料に混合できないことである。ドーパントがそのようなものであることは一般にはないため、従来の装置では、ホスト材料とドーパント材料を同時に堆積させるのに別々の供給源を用いる必要がある。
【0006】
熱による気化で複数材料の混合物から望ましい組成の膜を得ることは、半導体デバイスに関する従来技術でも検討されてきた。Gerethらに付与されたアメリカ合衆国特許第3,607,135号には、互いに大きく異なる蒸気圧曲線を有するAsとGaの混合物から得られる膜の組成を維持するという問題を解決するため、ガイド用の筒と管を利用した供給メカニズムと組み合わせたフラッシュ気化が開示されている。連続的稼働は、ネジが切られたピストン機構を利用して管の中を粉末を前進させることによって実現される。管が粉末を振動している溝部に送り、その溝部が材料をガイド用の筒に供給し、さらにフラッシュ気化領域へと送り込む。フラッシュ気化領域と、ガイド用の筒の表面と、供給用の管の相対的な温度を注意深く制御し、稼働中はこの供給メカニズムが詰まらないようにする。Kinoshitaらに付与されたアメリカ合衆国特許第3,990,894号には、特別なSe-Te合金の薄膜を作る際にSeとTeの蒸気圧曲線が異なっていることに起因する組成のドリフトを打ち消すため、材料組成の異なるいくつかの熱蒸着源を順番に使用することが開示されている。仙庭らの日本国特開平06-161137には、純粋なSeと、Se/Te合金と、Se/Asの合金を堆積させるのにコンベア・ベルト式供給メカニズムとフラッシュ気化を利用することが開示されている。この特許公開文書によると、コンベア・ベルトから供給される材料は、粒径が1〜2mmの粗い粒子である。
【0007】
白色発光デバイスを形成するための公開されている他のフラッシュ気化利用法としては、酸化物緩衝層の堆積、金属薄膜抵抗層の堆積、超微粒子の生成、ポリマー層と多層の堆積、OLED材料の混合物の堆積などがある。Tatsumiらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,453,306号には、キャリア・ガスを利用して粉末をプラズマ・トーチに供給することで酸化物緩衝層を堆積させることが開示されている。Thielらに付与されたアメリカ合衆国特許第4,226,899号には、連続的なワイヤ供給をフラッシュ気化と組み合わせて利用し、望ましい温度係数の抵抗を持つ薄膜抵抗層を形成することが開示されている。Mikhaelらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,040,017号には、噴霧化したポリマー液体をフラッシュ気化して多層ポリマーを形成することが開示されている。Affinitoらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,268,695号には、OLEDデバイスの障壁材料のためのポリマー-酸化物多層を堆積させる際に可能な技術としてのフラッシュ気化について記載されている。古川らの日本国特開平09-219289には、フラッシュ気化を利用して混合粉末成分から白色発光OLEDを堆積させることが開示されている。これら公開文書のいくつかには粉末の利用について記載されているが、そのいずれにも、粉末または弱く凝集した固体を一定速度でフラッシュ気化源に供給することは記載されておらず、粉末供給メカニズム内での不均一な供給速度を補償する適切な方法についても記載されていない。
【0008】
静止した基板への堆積に関しては、コーティングの厚さを制御するための制約因子は、材料供給速度がどの程度一定であるかである。厚さモニタ技術を利用する場合でさえ、堆積速度が適度に安定でないと、望ましい最終的な厚さを実現するのは難しい可能性がある。振動に基づいた方法(例えばアメリカ合衆国特許第3,607,135号に開示されている方法)は、供給経路で材料が凝集するために供給速度が一定にならない確率が大きい。そのため、非常にさまざまなサイズの粒子が制御されずにフラッシュ気化領域に入るときにブロックされたり、速度が遅くなったり、蒸気の供給速度が一定でなくなったりする可能性がある。同様に、コンベア・ベルトから粉末が落ちる方法(日本国特開平06-161137)は、小さな粒子に関して供給速度が一定にならない確率が大きい。すると小さな粒子がある程度制御されずにコンベア・ベルトに付着する傾向があるため、材料がフラッシュ気化領域に落ちる速度が変動する。
【0009】
粉末の供給に基づく他の方法と同様、組成の制御は、堆積させる材料を供給メカニズムに導入する前に混合することによって実現できる。別の方法として、2004年2月23日にMichael Longらによって「温度に敏感な材料を気化させるための装置と方法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号の方法(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)がある。この方法では、フラッシュ気化領域の面積が小さいため、材料を気化させて加熱されたマニホールドに導入するのに単一成分の供給源を複数個配置することができる。(材料供給速度とヒーターの温度を通じて)各供給源の相対速度を制御することで、堆積される膜の組成を制御することが可能になる。譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号には、材料を制御可能なやり方で一定速度にて供給する優れた方法が開示されているが、柱状の粉末または弱く結合した固体を極めて一定の材料供給速度でフラッシュ気化領域に供給せねばならないという問題が相変わらず残っている。
【0010】
大面積の基板(すなわち20cm×20cmを超える基板)のコーティングでは、堆積領域全体にわたって基板の速度を実質的に一定に維持するという別の問題がある。基板の速度を一定にする必要性と材料供給速度を一定にする必要性の組み合わせは、フラッシュ気化による大面積のコーティングにとって技術的に大きな挑戦課題である。さらに、多成分の膜では、再現可能な組成を得るためには、または膜全体で一定の組成を得るためには、全成分の材料供給速度を同じようにうまく制御して堆積させねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】フラッシュ気化源の概略断面図であり、フラッシュ気化パルスに応答する供給源をモデル化するためのさまざまなパラメータが示してある。
【
図2】
図1の供給源でモデルとなる蒸発体(すなわち堆積される材料)の表面温度とマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示した一例である。
【
図3】
図1の供給源をモデルとして、蒸気圧パルスが完全に減衰するまでに必要なオフ時間t
オフを冷却時定数τ
Cの関数として示したグラフである。
【
図4A】冷却時定数τ
Cの値がそれぞれ1秒と20秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体(すなわち堆積される材料)の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図3に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図4B】冷却時定数τ
Cの値がそれぞれ1秒と20秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体(すなわち堆積される材料)の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図3に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図5】
図1の供給源に関して平均圧力(したがって平均速度)を維持するのに必要な熱入力T
最大を加熱時定数τ
Hの関数として示したグラフである。
【
図6A】加熱時定数τ
Cの値がそれぞれ0.1秒と10秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図5に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図6B】加熱時定数τ
Cの値がそれぞれ0.1秒と10秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図5に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図7】
図1の供給源に関して平均圧力(したがって平均速度)を維持するのに必要な熱入力T
最大をベース温度T
bの関数として示したグラフである。
【
図8A】ベース温度T
bがそれぞれ273Kと423Kの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図7に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図8B】ベース温度T
bがそれぞれ273Kと423Kの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図7に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図9】
図1の供給源をモデルとして平均圧力(したがって相対速度)をパルス継続時間t
パルスの関数として示したグラフであり、パルス幅を制御することによって堆積速度を操作できることを示している。
【
図10A】パルス継続時間t
パルスがそれぞれ1秒と4秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図9に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図10B】パルス継続時間t
パルスがそれぞれ1秒と4秒の場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図9に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図11】
図1の供給源をモデルとして平均圧力(したがって相対速度)をパルス熱入力T
最大の関数として示したグラフであり、パルス高(すなわちパルスの振幅)を制御することによって堆積速度を操作できることを示している。
【
図12A】パルス熱入力T
最大がそれぞれ755Kと890Kの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図11に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図12B】パルス熱入力T
最大がそれぞれ755Kと890Kの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。このモデルでの応答は、
図11に示したデータを得るのに用いたセットからのものである。
【
図13A】蒸発体の表面積A
s=1cm
2、τ
v=80秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=0.3秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=8秒それぞれの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。
【
図13B】蒸発体の表面積A
s=1cm
2、τ
v=80秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=0.3秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=8秒それぞれの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。
【
図13C】蒸発体の表面積A
s=1cm
2、τ
v=80秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=0.3秒;A
s=0.01cm
2、τ
v=8秒それぞれの場合について、モデルとなる代表的な蒸発体の表面温度T
vとマニホールドの圧力が熱パルスに対してどのように応答するかを時間の関数として示したグラフである。
【
図14】
図1の供給源の蒸着体の表面積A
sが0.01cm
2の場合をモデルとして、圧力パルスが完全に減衰するまでに必要なパルス間の時間t
オフを気化時定数τ
vの関数として示したグラフである。
【
図15A】一様にコーティングするための供給源の配置を、基板の長さに沿った方向(概略断面図)と表面積の大きな基板(概略上面図)に関してそれぞれ大まかに示している。
【
図15B】一様にコーティングするための供給源の配置を、基板の長さに沿った方向(概略断面図)と表面積の大きな基板(概略上面図)に関してそれぞれ大まかに示している。
【
図16】表面積の大きな基板に一様にコーティングするために配置された細長いマニホールドのアレイである。
【
図17A】ホストとドーパントの相対速度をパルス高(パルスの振幅)を用いて制御した場合、ホストとドーパントの相対速度をパルス幅を用いて制御した場合、2つの成分を交互に堆積させた層の場合をそれぞれ示している。
【
図17B】ホストとドーパントの相対速度をパルス高(パルスの振幅)を用いて制御した場合、ホストとドーパントの相対速度をパルス幅を用いて制御した場合、2つの成分を交互に堆積させた層の場合をそれぞれ示している。
【
図17C】ホストとドーパントの相対速度をパルス高(パルスの振幅)を用いて制御した場合、ホストとドーパントの相対速度をパルス幅を用いて制御した場合、2つの成分を交互に堆積させた層の場合をそれぞれ示している。
【
図18】熱パルスと、基板の移動と、材料の供給とが同期したフラッシュ気化蒸着システムの概略図である。
【
図19】コーティング領域全体にわたって基板をステップ状に移動させたときの堆積の一様性を計算するのに用いる代表的な幾何学的構造を示している。
【
図20】
図19の幾何学的構造を用いて1ステップ、2ステップ、6ステップにしたモデルでの厚さプロファイルである。
【
図21】
図19に示した幾何学的構造において、線状供給源で供給源-基板の間隔とプルームの形状因子をさまざまな値にしたモデルでの不均一性をステップ数の関数として示したグラフである。
【
図22】
図19に示した幾何学的構造において、点状供給源で供給源-基板の間隔とプルームの形状因子がさまざまな値にしたモデルでの不均一性をステップ数の関数として示したグラフである。
【
図23】熱パルスの制御によって、または熱パルスの制御と材料供給の制御の組み合わせによって蒸気パルスを発生させるためのフラッシュ気化源の断面を側方から見た図である。
【
図24】OLEDデバイスの製造に用いる層構造の断面を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の利点を示すため、2つのモデルを作った。第1のモデルでは、蒸発体(すなわち気化によって堆積される材料)に印加される熱パルスに応答して気化マニホールドの内側で時間変化する圧力を計算する。第2のモデルでは、特定の形状の蒸気プルームを発生させる供給源を含む堆積領域を何回かのステップで横断する基板の移動方向に沿ったコーティングの一様性を計算する。
【0021】
供給源の幾何学的形状とモデルのパラメータを
図1に示してある。蒸着源1は、出口表面3を有する加熱されたマニホールド2を備えている。この出口表面3には1つまたは複数の開口部4があり、全コンダクタンスがC
Aとなっている。蒸発体5(すなわち堆積される材料、昇華体、気化または昇華する材料)が気化領域6に位置している。この蒸発体5の一方の表面は加熱素子7に接するようにされ、残りの面の大部分は温度がより低い領域8と接触している。蒸発体の塊はそのより低い温度T
bに維持されているのに対し、加熱素子7は、それが接触している面の温度を気化温度T
vにする。
【0022】
T
vにするのに必要な時間は、熱入力と、T
bに維持されている領域に対する材料の熱接触状態によって異なる。したがって、T
vが時間に依存することに伴う加熱時定数τ
Hと冷却時定数τ
Cが存在する。加熱素子7に入力される電力は温度T
最大として表現される。この温度は、蒸発体表面からその蒸発体を通じて温度がより低い領域に熱が拡散する以外の冷却が存在しない場合の蒸発体表面の定常状態の温度になろう。冷却に関するニュートンの法則を用いると、蒸発体表面温度T
vの変化速度は以下の式で与えられる。
【数1】
【0023】
面積がA
vである蒸発体の表面を温度T
vにすることによって得られる気化速度は、以下の式で表わされる。
【数2】
ただし、V
mはマニホールド2の容積であり、kはボルツマン定数であり、Mは蒸発体を構成する材料の分子量であり、P
vはこの材料の蒸気圧である。気化は熱によって活性化されるプロセスであるため、蒸気圧P
vはしばしば以下の形になる。
【数3】
気化によるマニホールドの圧力増加に加え、マニホールド内の実際の圧力Pによる面積A
sへの圧力損失と、全コンダクタンスC
Aを有する開口部を通じた圧力損失が存在する。したがってマニホールド内の正味の加圧速度は以下の式で与えられる。
【数4】
マニホールド外の圧力は無視できる(真空である)ことと、マニホールドの壁面は十分に高温であるため、その壁面上で顕著な凝縮が起こらないことを仮定する。気化時定数τ
v=V
m/C
Aを用いると、上記の式における開口部の損失項はdP=-(P/τ
v)dtと表わされる。
【0024】
加熱素子7に印加される熱パルス9は、パルス幅t
パルスと、パルス高T
最大と、パルス間の時間t
オフを有する。パルスがオンであるときには式(1)のT
最大-T
vという項が適用される。パルスがオフのときには加熱項がゼロになり、冷却項T
v-T
bだけが残る。
【0025】
初期条件P=0、T
v=T
bから出発すると、T
vとPの変化は、所定の時間ステップdtに関してdT
v(式1)とdP(式3からのP
vを用いた式4)を計算することによって得られる。次に、それぞれdT
vとdPを加えることによってT
vとPの値を更新し、別の時間ステップに移る。このプロセスを、望む数の時間ステップが終わるまで繰り返す。dT
vの計算では、熱パルスの形状を考慮するにあたって、熱パルスがオフのときには加熱項を落とし、熱パルスがオンのときにはその項を適用する。
【0026】
最終結果は、P(t)とT
v(t)の数値のアレイである。アルミニウムトリスキノレート(Alq
3)に関するP(t)とT
v(t)の計算値の一例を
図2に示してある。この計算では、パラメータを以下の値に設定した:T
b=473.16K、T
最大=835K、t
パルス=2秒、t
オフ=2秒、τ
H=1秒、τ
C=1秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは5×10-3秒に設定した。Alq
3の蒸気圧曲線に関する近似として、a=24.706 ln(トル)とb=16743Kを式(3)で使用した。これらパラメータは、Alq
3について測定した蒸気圧にクヌーセン・セル法を利用してフィットさせることによって得た。
【0027】
時定数τ
C、τ
H、τ
vは、パルス間の最小時間を決め、したがって堆積プロセスが進行できる速度を決めると予想される。P(t)に関する上記のモデルを適用すると、τ
Hの値が大きい(すなわち応答時間が長い)という問題は、T
vの応答時間を制限することなしに、したがってPを制限することなしに、熱入力をより大きくする(すなわち適用するT
最大の値をより大きくする)と解決できることがわかる。さらに、τ
vは、蒸発体のうちでT
vになる表面積が非常に小さいときだけ重要になることもわかる。それに加え、P
vはT
vに対する指数的な依存性を示すため、τ
Cの効果は実質的に小さくなることがわかる。典型的な指数的減衰ではほぼ完全に減衰するのに5τの時間が必要だが、圧力パルスP
vの効果は、P
vがT
vとともに急速に小さくなるためにτ
C未満またはτ
Cのオーダーでほぼ完全に減衰する。
【0028】
このような効果を説明するため、パラメータの“標準”セットを用いてP(t)に関するモデルをプロットし、基準点とした。次に、特に注目しているさまざまなパラメータを変化させ、マニホールドの平均圧力Pに対する効果を評価した。すなわちパルス同士が許容できる間隔のときにマニホールド内が同じ平均圧力になるようにt
パルス、t
オフ、T
最大の値を調節し、これらパラメータに対して必要とされる調節を特に注目するパラメータの関数として調べた。
【0029】
図3には、マニホールドを同じ様に応答させるのに必要なパルス(t
オフ)相互間の遅延時間に対するτ
Cの効果が示してある。
図3のデータは、以下の設定で計算した:T
b =373.16K、τ
H=1秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは、τ
Cをどのように選択するかに応じて0.008秒と0.0175秒の間で変え、似た数の蒸気パルスが得られるようにした。T
最大、t
パルス、t
オフを調節し、時間平均した圧力が同じような値になるとともに、次のパルスよりも前の最小圧力に対するピーク圧力の比が同じような値になるようにした。目標とする平均圧力は、ほぼ0.076トルである。この値は、上記の開口部コンダクタンスC
Aを有する供給源の中心の直上10cmの距離で堆積速度がほぼ50オングストローム/秒であることに対応する。速度に関するこの見積もりは、2003年1月28日にJeremy M. Graceらによって「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号に記載されている計算に基づいている(参考としてその開示内容はこの明細書に組み込まれているものとする)。τ
Cが大きくなるにつれ、圧力パルスの大きさを同じにするには、熱パルスをより短く(t
パルスをより短く)、パルス間の時間(t
オフ)をより長くして減衰時間を長くする必要がある。さらに、定常状態の形状のパルスが得られるまでに必要なパルス数は多くなる。なぜなら、温度パルス中のより低い温度が定常状態の極限に到達するのにパルスが数個必要だからである。
【0030】
図3からわかるように、t
オフは、τ
Cに対してほぼ直線状に増加する。蒸発体の表面が冷えるまでの時間が長くなるにつれ、圧力パルスが完全に減衰するまでに必要な時間はより長くなる。表面積A
sは凝縮する蒸気のシンクとして機能するため、そして気化速度は温度に対して指数的な依存性を示すため、蒸気パルスの減衰時間は、5τ
Cのオーダーではなく、τ
Cよりも短い。これは、圧力パルスが温度パルスの後に直線的に並ぶ場合に予想されることである。τ
Cの値が小さな極限では、パルス間で圧力が減衰する際にτ
vが制限因子になる可能性がある。さらに、非常に小さなτ
Cは、気化領域の材料とT
bに維持されている領域の間の熱接触が優れていることを意味する。そのような場合、気化させるのに必要な熱が顕著に増大する。圧力応答と温度応答の計算値を、τ
C=1秒とτ
C=20秒の場合についてそれぞれ
図4Aと
図4Bに示してある。
【0031】
図5は、τ
Hの効果を示している。
図5のデータは、以下の設定で計算した:T
b=373K、τ
C=3秒、t
パルス=1秒、t
オフ=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは0.005秒であった。T
最大を調節し、時間平均した圧力が同じような値になるとともに、次のパルスよりも前の最小圧力に対するピーク圧力の比が同じような値になるようにした。
図3に関して説明したように、目標とする平均圧力はほぼ0.076トルであり、Alq
3に関する同じ蒸気圧パラメータを使用した。
図5からわかるように、τ
Hの値が大きくなると、(圧力パルスの大きさに直接関係する)マニホールドの平均圧力を同じにするためのT
最大がより大きくなる。T
最大の値がτ
Hとともに増加している場合でさえ、T
vの実際のピーク値は同じ(ほぼ650K)であり、パルス間に必要とされる時間t
オフは変化しない。T
最大の値は、温度上昇を十分に速くして選択したt
パルスという期間内にT
vを必要な値まで上昇させようとすると、より大きな電力が必要とされることを示している。圧力応答と温度応答の計算値を、τ
H=0.1秒とτ
H=10秒の場合についてそれぞれ
図6Aと
図6Bに示してある。
【0032】
T
bの効果を
図7に示してある。
図7のデータは、以下の設定で計算した:τ
H=1秒、τ
C=3秒、t
パルス=1秒、t
オフ=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは、0.005秒であった。T
最大を調節し、時間平均した圧力が同じような値になるとともに、次のパルスよりも前の最小圧力に対するピーク圧力の比が同じような値になるようにした。
図3に関して説明したように、目標とする平均圧力はほぼ0.076トルであり、Alq
3に関する同じ蒸気圧パラメータを使用した。
図7からわかるように、T
bが上昇すると、マニホールドの平均圧力(したがって圧力パルスの大きさ)を同じにするためのT
最大が小さくなる。T
最大の値はT
bとともに変化するためT
vの実際のピーク値も変化するが、T
最大ほど劇的には変化しない。さらに、T
bが上昇するにつれて圧力パルスの形状が広くなる。T
bを大きくし過ぎると、蒸気パルスは決して完全には減衰しない。なぜなら、T
bを十分に高温にしてかなり気化させることができるため、パルス式加熱素子を通じて追加の熱を供給しなくてもマニホールドの圧力に寄与するからである。T
bによる蒸気圧がピーク圧力のかなりの割合(すなわち0.1%超)になると、圧力パルスは決して“オフ”にならない。パルス間に顕著な堆積が起こらない用途では、T
bをある最大値よりも小さな値に維持する必要がある。速度をベース値よりも大きな値で変動させる用途では、そのベース値が実現されるようにT
bを設定することと、そのベース値よりも上で適切な変調が実現されるように熱パルス・パラメータを選択することができる。圧力応答と温度応答の計算値を、T
b=273KとT
b=423Kの場合についてそれぞれ
図8Aと
図8Bに示してある。
【0033】
図9は、t
パルスを利用するとマニホールドの平均圧力(または圧力パルスの大きさ)が変化することを示している。
図9のデータは、以下の設定で計算した:T
b=373.16K、T
最大=755K、τ
H=1秒、τ
C=3秒、t
オフ=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは、0.005秒であった。上記のように、Alq
3に関する同じ蒸気圧パラメータを使用した。t
パルスを変化させ、マニホールドの平均圧力に対するt
パルスの効果を示した。その結果、圧力パルスの幅は、t
パルスが長くなるにつれて増大した。t
パルスで使用した値の範囲を超えると、t
オフの間のパルス間の圧力の減衰は、t
パルスを変化させても大きな影響は受けなかった。
図9からわかるように、マニホールドの平均圧力(と、圧力パルスの大きさ)、したがって堆積速度(またはパルス1個につき堆積される材料)は、t
パルスを変化させることによって顕著に変化させることができる。したがって
図9は、供給源から放出される蒸気のパルス幅の変化を示している。圧力応答と温度応答の計算値を、t
パルス=1秒とt
パルス=4秒の場合についてそれぞれ
図10Aと
図10Bに示してある。
【0034】
図11は、T
最大を利用するとマニホールドの平均圧力(または圧力パルスの大きさ)が変化することを示している。
図11のデータは、以下の設定で計算した:T
b=373.16K、t
パルス=1秒、t
オフ=2秒、τ
H=1秒、τ
C=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=0.8秒)。時間ステップのサイズは、0.005秒であった。上記のように、Alq
3に関する同じ蒸気圧パラメータを使用した。T
最大を変化させ、マニホールドの平均圧力に対するT
最大の効果を明らかにした。その結果、圧力パルスの高さは、t
パルスが長くなるにつれて大きくなった。T
最大で使用した値の範囲を超えると、t
オフの間のパルス間の圧力の減衰は、t
パルスを変化させても大きな影響は受けなかった。
図11からわかるように、マニホールドの平均圧力(と、圧力パルスの大きさ)、したがって堆積速度(またはパルス1個につき堆積される材料)は、T
最大を変化させることによって顕著に変化させることができる。したがって
図11には、供給源から放出される蒸気のパルス高(またはパルスの振幅)の変化を示している。圧力応答と温度応答の計算値を、T
最大=755KとT
最大=890Kの場合についてそれぞれ
図12Aと
図12Bに示してある。
【0035】
図13A〜
図13Cと
図14は、蒸発体の表面積とτ
vの効果を示している。
図13Aにおける圧力応答と温度応答の計算値は、以下の設定で計算した:T
b=373.16K、t
パルス=1秒、t
オフ=4秒、τ
H=1秒、τ
C=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、C
A=60×0.02リットル/秒=1.2×10
-3m
3/秒、A
s=1cm×1cm=1×10
-4m
2。(VとC
Aの値に関してはτ
v=80秒)。時間ステップのサイズは、0.008秒であった。τ
vの値が大きいにもかかわらず、マニホールドの応答は、τ
v=0.8秒(C
A=1.2×10
-3m
3/秒)である以外は同じ設定での応答を示す
図10Aと極めて似ている。τ
vが大きいことの小さな効果は、圧力パルスのピーク圧力の値がより大きくなることである。しかし全体的な応答は極めて似ている。
図13Bと
図13Cに面積A
sがどのような役割を果たすかが示してある。
図13Bと
図13Cにおける圧力応答と温度応答の計算値は、以下の設定で計算した:T
b=373.16K、τ
H=1秒、τ
C=3秒、V=0.04cm×0.04cm×60cm=9.6×10
-4m
3、A
s=0.1cm×0.1cm=1×10
-6m
2。C
Aを調節し、τ
vが
図13Bでは0.3秒、
図13Cでは8秒になるようにした。T
最大、t
パルス、t
オフを調節し、時間平均した圧力が同じような値になるとともに、次のパルスよりも前の最小圧力に対するピーク圧力の比が同じような値になるようにした。時間ステップを調節し、t
オフが大きくなったときにほぼ同数の熱パルスが得られるようにした。τ
vが0.8秒、3秒、4秒となるようにC
Aを調節して追加の計算を同様にして実行した。
図14に、熱パルスが十分に減衰するまでに必要な時間t
オフをτ
vに対してプロットしたグラフを示してある。
図13B、
図13C、
図14からわかるように、A
sが顕著に小さな値(すなわち1/100のオーダー)になると、τ
vの値に対して敏感に応答する。この状態では、今や開口部コンダクタンスがパルス間におけるマニホールドの圧力の減衰の制限因子であるため、パルス間の時間をほぼ5τ
vに設定せねばならない。したがって気化領域で加熱素子と接触している蒸発体の面積を大きくすると、マニホールドの応答時間を改善するとともに、マニホールドの応答時間のτ
vに対する依存性を顕著に小さくすることができる。
【0036】
熱パルスを利用した堆積は、均一な蒸気流を特定の基板領域全体に供給するためのマニホールドを構成することによって、または一連のマニホールドを組み合わせること(
図16)(例えば1列に並べた複数の細長いマニホールドや、円形または正方形のマニホールドからなるアレイ)によって、またはこれらの何らかの組み合わせによって、実現できる。あるいはマニホールドなしの複数の供給源を配置して(
図15Aと
図15B)一様なコーティングにすることもできる。
【0037】
図15Aには、一連の供給源20が基板22の下方に一列に配置されている様子を示してある。必要とされる一様性の程度に応じ、供給源20の距離hと数を適切に選択することができる。さらに、基板の縁部付近における供給源相互間の間隔d2は、基板の縁部から遠く離れた供給源相互間の間隔d1よりも小さくすることができる。それに加え、複数の供給源20からの相対的な堆積速度を調節することで、長さが有限であるために基板の縁部付近で厚さが薄くなる効果を打ち消すことができる。特に、両端部の供給源20は、基板の縁部からより遠い供給源20よりも高速で稼働させることができ、基板の縁部からより遠いそのような供給源のいくつかは、基板の中心に近い供給源と比べて低速で稼働させることができる。したがってさまざまな供給源の相対速度を個別に調節することで、基板22の全長にわたって一様性を向上させることができる。供給源20は、単一材料の供給源、多成分(すなわち混合した複数の材料)の供給源、異なる材料を同時に供給する供給源クラスターのいずれかにすることや、複数の気化領域を有するために複数の材料が同時に供給される単一の供給源にすることができる。パルス式堆積を利用すると、上記のようにパルスごとに材料を制御すると同時にパルスの頻度を制御することにより、異なる材料の相対速度の制御と、基板の軸線に沿った各供給源からの相対的堆積速度の制御を実現することができる。
【0038】
図15Bは、基板27の下方に配置した複数の供給源25からなるアレイに関する上面図である。
図15Aにおけるように、基板の縁部付近の供給源相互間の間隔は、基板の縁部からより遠い供給源相互間の間隔よりも狭くすることができ、供給源の数と、供給源が存在する平面と基板が存在する平面の距離は、必要とされるコーティングの一様性の程度に応じて選択することができる。さらに、
図15Aに関して説明したように、各供給源からの相対速度を位置に応じて調節することができるため、一様性がさらに改善される。供給源は、単一材料の供給源、多成分(すなわち混合した複数の材料)の供給源、異なる材料を同時に供給する供給源クラスターのいずれかにすることや、複数の気化領域を有するために複数の材料が同時に供給される単一の供給源にすることができる。上記のようにパルスごとに材料を制御すると同時にパルスの頻度を制御することにより、異なる材料の相対速度の制御と、各供給源からの相対的堆積速度の制御を実現することができる。
【0039】
図16は、基板32の下方に配置した複数のマニホールド30からなるアレイの上面図である。各マニホールド30は、1つまたは複数の開口部34を備えており、その間隔とサイズは、マニホールドの長さの一部(基板の幅)に沿って材料の均一な流れが生じるように選択されている。穴のサイズとマニホールドの大きさは、2003年1月28日にJeremy M. Graceらによって「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているコンダクタンスの基準に従って選択し、長さ方向に実質的に一様な厚さが堆積されるようにする。マニホールド30と開口部34アレイは、必要とされる一様性の程度に応じ、基板の幅よりも長くしたりも短くしたりすることができる。マニホールド30相互の間隔と、基板からマニホールドが存在する平面までの距離は、どの程度の一様性を望むかに合わせて適切に選択する。マニホールドは、単一材料の供給源、多成分(すなわち混合した複数の材料)の供給源、異なる材料を同時に供給する供給源クラスターのいずれかにすることや、複数の気化領域を有するために複数の材料が同時に供給される単一の供給源にすることができる。上記のようにパルスごとに材料を制御すると同時にパルスの頻度を制御することにより、異なる材料の相対速度の制御と、各マニホールドからの相対的堆積速度の制御を実現することができる。別々のマニホールドからの材料を同時に堆積させるため、マニホールド30をマニホールド-基板の法線に対して傾け、気化した材料成分がマニホールド30と基板32の間を移動する間にその材料成分が最適に混合されるようにすることもできる。
【0040】
パルス1つごとの材料の量を正確に制御することにより、さまざまな成分の相対量を制御することができる。例えば堆積される膜の組成において優勢なホスト材料は、強力な(T
最大の値が大きな)パルスまたは長いパルス(長時間のt
パルス)を用いて堆積させることができ、堆積される膜の組成において小さな割合であるドーパント材料は、弱い(T
最大の値が小さな)パルスまたは短いパルス(短時間のt
パルス)を用いて堆積させることができる。
【0041】
気化領域と加熱素子を適切に構成すると、熱パルスの形状とサイズにより、パルス1つにつき堆積される材料の量が決まることになろう。各成分について異なる数のパルスを供給することにより、堆積されて膜になる成分の相対量をさらに制御することができる。異なる気化領域からのパルス列がどのようなものであるかに応じ、パルス(の高さまたは幅)を変化させるとともにパルスのカウント数を変えることで、単一の層内の組成を調節すること、または異なる2つの層の相対的な厚さを調節することができる。さまざまな熱パルス列を
図17A〜
図17Cに示してある。
図17Aには、高さの異なるパルスを利用してホスト(すなわち優勢な成分)とドーパント(すなわちホストと比べて濃度が小さい成分)の組み合わせを堆積させる熱パルス列を示してある。ホスト・パルス40は、ドーパント・パルス41よりもかなり高い。その結果、堆積される層では、ホストとドーパントの相対量は、圧力-時間のグラフにおける各パルスの面積に比例することになろう。
図17Bには、パルス幅を変えることによってホストとドーパントを堆積させるパルス列を示してある。ホスト・パルス44は、ドーパント・パルス45よりもかなり長い。堆積される膜内の材料の相対量を制御するのに高さの違うパルスを利用する場合(
図17A)、層の厚さ全体を通じた膜組成の一様性は、堆積される異なる個々の材料についてパルスの形状が似ている程度によって決まる。堆積される材料の相対量を制御するのに長さの違うパルスを利用する場合(
図17B)、組成は、パルス1つごとに堆積される厚さの中で変化する。というのも、より短いパルスは堆積時間の一部の間しか材料を供給しないのに対し、より長いパルスはその短いパルスによって材料が供給された後も材料の堆積を続けるからである。どちらの場合(すなわち
図17Aと
図17B)にも、気化時定数τ
vが長いほうのパルスの長さよりもはるかに長く、そのτ
vが制限時定数であるならば、τ
vが長くなると、諸成分がよりよく混合するようになろう。
図17Cには、異なる2つの層を堆積させるためのパルス列が示してある。第1の材料を熱パルス48を用いて堆積させた後、第2の材料を熱パルス49を用いて堆積させる。
図17A〜
図17Cには2つの成分しか示していないが、
図17A〜
図17Cに示したのと同じ方法を利用して多成分膜または多層膜を実現できることは明らかなはずである。そのとき、追加の供給源からの熱パルスを追加し、そのパルスの高さまたは幅を調節するか、他のパルスに対する相対的なタイミングを調節することにより、1つの層または多層構造の内部で組成または厚さを望みのままに制御する。
【0042】
上記の議論では、堆積パルスを発生させてその大きさを制御するのに、熱パルスの代わりに、または熱パルスに加えて機械式パルスを使用できることが理解できるはずである。所定の時間にわたって堆積される材料が加熱素子に対して力を及ぼす機械式パルスは、熱パルスの持続時間によって量を制御するのと同様、その機械式パルスの持続時間が長くなるにつれて増加する所定量の気化材料を生成させるであろう。さらに、機械式パルスと熱パルスを組み合わせると、冷却時定数τ
Cが制限因子であってτ
Cがヒーターの冷却応答時間によってほぼ決まるケースでは、気化が少なくなるまでの時定数がある熱パルスだけを用いる場合と比べて小さくなる可能性がある。
【0043】
堆積される膜の厚さと組成を制御するのにパルスの変調とパルスの並び方を利用すると、一定かつ連続的な材料供給速度で気化領域に材料を供給する必要性が少なくなる。気化領域内の条件をパルスとパルスの間に(t
オフの間に)繰り返しリセットできるのであれば、パルス1つごとに予定する制御された量の材料が供給されよう。さらに、材料のパルス式堆積と基板のステップ式運動を組み合わせると、基板を一定速度で並進運動させる必要性が少なくなる。
図18に、熱パルスの発生を材料の供給および基板の運動と同期させるという制御方式が示してある。フラッシュ気化源51が、堆積領域53を決めるシールド52の間に配置されている。基板54が並進台55の表面に取り付けられている。この並進台55はモータ57によって駆動され、並進メカニズム56に沿って移動する。モータ制御ユニット58を利用して並進台55の運動を制御する。主制御ユニット60(例えばコンピュータ、マイクロプロセッサなど)が制御信号をモータ制御ユニット58と、熱パルス発生装置61と、材料供給制御ユニット62に送る。適切なプログラムまたはロジックにより、基板54の運動を、フラッシュ気化源51への熱パルスおよび材料供給と同期させる。基板54を所定の位置に移動させ、熱パルス列をフラッシュ気化源51に適用する。次いで蒸発体材料を前進させるか、供給メカニズムをリセットまたは再配置した後、次の堆積パルス列のために基板54を次の位置に移動させる。基板54と並進台55が堆積領域53の一端から他端に移動するまで、同期したステップ式移動というこのプロセスを続ける。
【0044】
フラッシュ気化源51は、2004年2月23日にMichael Longらによって「温度に敏感な材料を気化させるための装置と方法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているものにすること、または堆積させる材料をパルスで供給できる他の何らかの蒸発源にすることができる。基板の並進台55と基板54は、堆積されたコーティングをパターニングするためのマスクその他の固定部材を備えた組立体を含むことができる。並進台55と、基板54と、この組立体は、供給源51に対して並進移動させることができる。その場合、基板の並進台55を供給源51に対して移動させるか、堆積領域53を決める要素(すなわち供給源51、シールド52と、堆積領域を決める要素を合わせて並進移動させるのに必要なあらゆるベース・プレートまたは固定部材)を移動させる。コーティングに必要とされる組成と層構造がどのようであるかに応じ、似た材料または異なる材料を供給する1つ以上の供給源51が存在していてよい。したがって並進メカニズム56は、基板54と基板の並進台55が移動する位置か、1つまたは複数の供給源51と対応するシールド52、ならびに付随する他の要素が移動する位置に配置するとよい。
【0045】
熱パルス発生装置61は、複数の出力と複数のセンサー(例えば熱電対や他の温度感知装置)入力を有する、閉鎖ループ式ヒーター制御システムにすることができる。1セットの入力と出力を利用し、上記のベース温度T
bを維持することができる。制御方式は、閉鎖ループになったハードウエアまたはソフトウエアで実現した比例微分(PD)制御または比例-積分-微分(PID)制御にすることができる。さらに、フィードフォワード制御技術を利用することができる。定常状態の温度を制御するため、ヒーターの出力は、位相角ファイアードAC電圧、パルス幅変調DC電圧、非同期パルス幅変調AC電圧のいずれか、またはヒーターにとって利用可能な電力を計量供給する他の何らかの手段にすることができる。供給源51のヒーター素子(図示せず)をパルス式に作動させるためには、追加の出力とセンサー入力を利用することができる。これら熱パルスを利用して上記のような蒸気パルスを発生させる。さらに、追加のセンサー入力とヒーター出力を利用すると、上記のような多彩な制御方式のうちの任意の方式を利用してマニホールド(図示せず)と供給源51の開口面(図示せず)で必要とされる温度を維持することができる。
【0046】
材料供給制御ユニット62は、1つ以上の材料供給メカニズム(図示せず)を制御するためのセンサー入力と制御信号出力が複数ある閉鎖ループ式制御システムにすることができる。供給メカニズム内にある(例えば力、応力、速度、変位や、供給源51の内部にある加熱素子の温度などを感知するための)センサーを利用すると、PD、PID、状態変数、フィードフォワード、または他の制御方式を利用した制御ユニット62を用いて供給速度を制御することができる。さらに、材料供給制御ユニット62は、材料供給メカニズムに対し、熱パルス発生装置61からの熱パルスと同期するとともに、モータ制御ユニット58によって駆動される基板の運動とも同期して、制御パルスを供給することができる。供給メカニズムが何であるかに応じ、制御パルスは、供給源51から供給される蒸気パルスの減衰を促進するため、材料の供給を一時停止させるだけでなく、材料を戻したり、供給源51内の加熱素子との接触を少なくしたりすることもできる。あるいは制御パルスにより、所定のサイクルで望む量の材料を供給することができる。
【0047】
モータ制御ユニット58は、適切な運動センサー、位置センサー、運動アクチュエータ、位置アクチュエータを備えた運動制御システムにすることができる。制御ユニット58、61、62と主制御ユニット60の間での通信を通じ、基板54の運動を熱パルスおよび材料供給と同期させる。
【0048】
基板のステップ状の運動と熱パルスが同期していることを利用して一様な層を堆積させるという考え方を説明するため、モデルを作った。このモデルでは、特定の形状の蒸気プルームを放出する供給源を含む堆積領域を基板がステップ状に横断して移動する場合について、基板の運動方向に沿ったコーティングの一様性を計算する。
【0049】
このモデルに関係する幾何学的構成を
図19に示してある。堆積領域70は、堆積用供給源73の中心に対して+ L
z/2と- L
z/2の位置にある鉛直なシールド71によって決まる。蒸気プルーム75は、熱パルスが印加されたときにこの供給源から放出される。基板77は、L
z/sに等しいサイズのステップでステップ状に移動する(ただしsは、堆積領域を横切るのに必要なステップ数である)。プルームの形状の効果は、基板77までの鉛直方向の距離dと、供給源73の中心から基板77上の点xまでの径方向の距離とに挟まれた角度θの関数として、以下のように表わされる。
【数5】
ただしRは堆積速度であり、pはプルームの形状指数である。cos(θ)=d/rという関係を利用すると、以下の式が得られる。
【数6】
ただし線状供給源ではq=1であり、点状供給源ではq=2であり、指数部の+1は、堆積流束と基板の法線の内積から生じる。式(6)を用いると、s回のステップで基板に沿って堆積される材料の相対量が得られる。そのためには、ステップ・サイズに沿って相対速度Rを積分し(θをxの関数として表わし、基板のステップに沿ってxの値に関して積分する)、x方向に基板を1ステップ分のL
z/sだけ移動させ、Rを再び積分し、全sステップについてステップ・サイズに沿った寄与をすべて足し合わせるという計算を行なう。ステップの長さに沿って得られた材料の分布から、基板に沿った不均一性(ここでは、厚さが取りうる値の範囲を平均値で割った値として定義する)が、2(max-min)/(max+min)と計算される。ただしminとmaxは、それぞれ基板の1区画に沿った厚さの合計の最小値と最大値である。モデルに入力するパラメータは、L
z、d、p、q、sである。
【0050】
図20には、基板の1区画L
z/sに沿った3つの堆積プロファイルが示してある。これらプロファイルは、d=10cm、L
z=40cm、p=1.5を用いて計算した。大きなピークのあるプロファイルはs=1の場合であり、モデル化したプロファイルを得るのに用いたプルームの形状がわかる。u字形のプロファイルはs=2の場合である。ここでは、ステップ・サイズが堆積領域の長さの半分であるため、基板の縁部(x=0)で最大堆積速度になる。平坦なプロファイルはs=6の場合であり、かなり一様である(不均一性=0.003。すなわち0.3%)。
【0051】
図21と
図22は、線状供給源(q=1)と点状供給源(q=2)のそれぞれについて、プルームの2つの形状に関して計算で求めた不均一性を、ステップ数sと鉛直方向の距離d(2通り)の関数として示した結果である。
図21では、計算値は、p=1.5、d=10(●)、p=20、d=10(黒塗の三角形)、p=1.5、d=4(○)、p=20、d=4(△)に関するものである。
図22では、計算値は、p=1.5、d=10(◆)、p=20、d=10(黒塗の四角形)、p=1.5、d=4(◇)、p=20、d=4(□)に関するものである。
図21と
図22からわかるように、最少のステップ数で不均一性を最も少なくするには、プルームの幅をより広くする(pの値を小さくする)ことが好ましい。
図21と
図22から、モデルの条件下では点状供給源と線状供給源で似た結果が得られることもわかる。
【0052】
ここで
図23を参照すると、パルス式気化に適すると同時に、パルス式気化と基板の運動を同期させるのに適した本発明のフラッシュ気化源が示してある。気化装置80が材料を気化させて基板の表面に膜を形成する。この気化装置80は、第1の加熱領域82と、その第1の加熱領域82とは離れた第2の加熱領域84を備えている。第1の加熱領域82には、ベース・ブロック85で表わされる第1の加熱設備が含まれている。ベース・ブロック85は、加熱ベース・ブロックと冷却ベース・ブロックの一方または両方にすることができ、制御通路86を備えることができる。第2の加熱領域84には、マニホールド88と加熱素子87に囲まれた領域が含まれる。加熱素子87は、マニホールド88の一部であってもよい。加熱素子87は、透過性にすることや、そうでない場合には気化した材料がマニホールド88の方向に逃げていけるような形状にすることができる。加熱素子87の1つの特徴は応答時間である。応答時間は、構造に依存するだけでなく、固定部材および材料92を通じたベース・ブロック85との熱的接触にも依存する。応答時間がより短いと、加熱素子87のパルスの頻度をより多くすることができる。マニホールド88には、1つ以上の開口部89も含まれる。マニホールド88のうちで開口部89のある領域を別に加熱することで、マニホールドの出口面(すなわち開口部89の内壁面と、マニホールド88で開口部89に近い面)が十分に熱くなって蒸気の凝縮が阻止され、その結果として出口の空間が詰まらないようにする。チェンバー90には所定量の材料92(すなわち堆積させる蒸発体、昇華体、材料)を収容することができる。材料92を計量供給する1つの手段は、材料92を収容するためのチェンバー90と、チェンバー90の中で材料92を上方に移動させるためのピストン95と、加熱素子87を備えている。
【0053】
駆動ユニット96がピストンを前進させる。長時間にわたって稼働させるため、ピストン95と駆動ユニット96の代わりに、粉末、圧縮材料または溶融成形材料から形成された固体、液体のいずれかを連続供給するメカニズムを用いることができる。駆動制御ユニット97が制御信号を駆動ユニット96に供給する。この駆動制御ユニット97を利用してピストン95の運動をプログラムすること、または材料供給メカニズムからの材料の計量供給を制御することができる。加熱素子制御ユニット98が、加熱素子87に電流または電圧の波形(すなわちパルス、交流、直流いずれかの形態の電圧または電流)を供給する。別のヒーター制御ユニット群(図示せず)がマニホールド88とベース・ブロック85をそれぞれ一定の温度に維持する。気化装置80は、1つ以上の放射シールド100を備えることができる。
【0054】
材料92は、圧縮した固体またはあらかじめ凝縮させた固体であることが好ましい。しかし粉末形態の材料も許容できる。材料92は、単一の成分を含むこと、または気化温度がそれぞれ異なる2種類以上の成分を含むことができる。材料92は、第1の加熱設備(ベース・ブロック85)と閉じた状態で熱接触している。このブロックを貫通する制御通路86により、温度制御用の流体流(すなわち、第1の加熱領域82から熱を吸収するか、第1の加熱領域82に熱を供給するのに適した流体)が通過することができる。この流体は、気体、液体、混合相のいずれかにすることができる。気化装置80は制御通路86を通じて流体を吸引する。適用可能なポンプ設備(図示せず)は当業者には周知である。材料92は、上に説明したように、望むベース温度T
bになるまで第1の加熱領域82で加熱される。第1の加熱領域82は、材料92が消費されていく間も一定の温度に維持される。
【0055】
材料92は、制御された速度で第1の加熱領域82から第2の加熱領域84に移動する。第2の加熱領域84は、上記の望ましい気化温度T
vよりも高温に加熱される。第1の加熱領域82の温度はT
bに維持されるのに対し、第2の加熱領域84の温度は、速度に依存した望ましい気化温度T
vまたはそれ以上である。この実施態様では、第2の加熱領域84に、マニホールド88に囲まれた領域が含まれる。材料92は、ピストン95によって加熱素子87に押しつけられる。加熱素子87とピストン95(または別の供給メカニズム)の一方または両方は、それぞれの制御ユニット97と98によってパルス式に作動させることができる。
【0056】
マニホールド88を使用している場所では圧力が上に説明したように変化し、蒸気が一連の開口部89を通ってマニホールド88から出て行く。マニホールドの長さ方向に沿ったコンダクタンスは、開口部コンダクタンスの合計よりもほぼ2桁大きくなるように設計する。
それについては、2003年1月28日にJeremy M. Graceらによって「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号に記載されている(参考としてその開示内容はこの明細書に組み込まれているものとする)。このコンダクタンス比によってマニホールド88内の圧力が実質的に均一になることが促進されるため、圧力が局所的に不均一になる可能性があるにもかかわらず、供給源の長さに沿って分布している開口部89を通じた流れの不均一性は小さくなる。
【0057】
加熱されたマニホールド88の近くには1つ以上の放射シールド100が配置されていて、そのシールドと向かい合った標的となる基板に対して放射される熱を減らしている。これら熱シールドは、シールドから熱を逃がすためにベース・ブロック85に熱的に接続されている。シールド100の上部は、開口部がある平面よりも下に来るように設計し、その相対的に冷たい表面に凝縮する蒸気を減らす。
【0058】
材料92のほんのわずかな部分、すなわち第2の加熱領域84の中で加熱素子87の最も近くにある部分がT
vに加熱される一方で、この材料の大部分はT
vよりもはるかに低温に維持されるため、第2の加熱領域84における加熱を中断することによって気化を中断することができる。そのためには、例えば、加熱素子87に対する熱の供給を止めたり、ピストン95(または別の材料供給メカニズム)の運動を停止したり、第2の加熱領域84または加熱素子87から材料を強制的に引き出したり、熱の供給と材料の機械式操作を止めたりする。
【0059】
加熱素子87は、粉末または圧縮された材料がその加熱素子の内部を自由に通過できるようにすることを目的として細かいメッシュ・スクリーンにできるため、気化装置80は任意の方向を向けて使用できる。例えば気化装置80は、
図18に示した方向から180°回転した方向を向けることで、その下に位置する基板のコーティングを行なうことができる。これは、従来の加熱ボートでは見られない利点である。
【0060】
好ましい一実施態様では、加熱したときに昇華する粉末材料または圧縮材料を気化装置80で使用するが、いくつかの実施態様では、材料92は、気化する前に液化する材料や、第1の加熱領域82の温度で液体になることができる材料にすることができる。そのような場合、加熱素子87は液化した材料92を毛管作用を通じて制御可能な方法で吸収して保持できるため、気化速度を制御することができる。
【0061】
パルス式フラッシュ気化源(
図23に示したものや、材料がパルス式に気化して基板の下方にある堆積領域に導入される他の供給源)の圧力は一定でないため、(例えば一時的な流れまたは分子流に)圧力に依存したコンダクタンスが存在する限りは、蒸気流へのコンダクタンスは時間とともに変化することになろう。マニホールドを使用する場合、そのマニホールドに不活性ガスを導入してマニホールド内の圧力を十分に大きくして小さなコンダクタンス比(マニホールド内の蒸気流のコンダクタンスに対するマニホールドを出て行く蒸気流のコンダクタンス)を維持することが望ましい。(反応性気化、反応性スパッタリング、または他の反応性堆積技術で一般に行なわれているように)アルゴンと窒素のほか、堆積させる材料と望ましくない反応をしないことが知られている任意のガスや、堆積させる材料と望ましい反応をすることが知られている任意のガスを、この目的で使用することができる。
【0062】
パルス・モード操作に適したフラッシュ蒸発源の他の実施態様としては、堆積させる材料が、エーロゾルの形態、ナノ粒子の形態、キャリア・ガス流に伴われた形態、ワイヤの形態、ロッドの形態、液体形態のいずれかで導入される供給源がある。
【0063】
ここで
図24を参照すると、一部を本発明に従って製造できる発光OLEDデバイス110の1つの画素の断面が示してある。このOLEDデバイス110は、少なくとも、基板120と、カソード190と、カソード190から離れているアノード130と、発光層150を備えている。このOLEDデバイスは、正孔注入層135と、正孔輸送層140と、電子輸送層155と、電子注入層160も備えることができる。正孔注入層135、正孔輸送層140、発光層150、電子輸送層155、電子注入層160は、アノード130とカソード190の間に配置された一連の有機層170を備えている。有機層170は、本発明の装置と方法によって堆積させることが最も好ましい層である。これらの要素についてより詳しく説明する。
【0064】
基板120は、有機または無機の固体にすること、または有機と無機の固体を含むことができる。基板120は堅固でも可撓性があってもよく、独立した個別の部材(例えばシートやウエハ)として処理すること、または連続したロールとして処理することができる。典型的な基板材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、半導体窒化物、またはこれらの組み合わせがある。基板120は、諸材料の均一な混合物、諸材料の複合体、諸材料の多層体のいずれかにすることが可能である。基板120は、OLEDデバイスの製造で一般に使用される基板であるOLED基板(例えばアクティブ-マトリックス低温ポリシリコン基板、またはアモルファス-シリコンTFT基板)にすることができる。基板120は、どの方向に光を出したいかに応じて透光性か不透明にすることができる。透光性は、基板を通してEL光を見る場合に望ましい。その場合には透明なガラスまたはプラスチックが一般に使用される。上部電極を通してEL光を見る用途では、底部支持体の透光特性は重要ではないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。本発明で用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、回路板材料や、OLEDデバイス(パッシブ-マトリックス・デバイスでもアクティブ-マトリックス・デバイスでもよい)を形成するのに一般に使用される他のあらゆる材料などがある。
【0065】
1つの電極は基板120上に形成され、アノード130にされるのが最も一般的である。EL光を基板120を通して見る場合には、アノード130は、興味の対象となる光に対して透明であるか、実質的に透明である必要がある。本発明で有用な透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物とスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛、インジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード材料として用いることができる。EL光を上部電極を通して見るような用途では、アノード材料の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電体としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。好ましいアノード材料は、透過性であろうとなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させることができる。アノード材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。
【0066】
必ずしも必要なわけではないが、有機発光ディスプレイでは、正孔注入層135をアノード130の上に形成すると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、その後に形成する有機層の膜形成特性を改善することと、正孔輸送層への正孔の注入を容易にすることに役立つ。正孔注入層135で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、無機酸化物(例えば、バナジウム酸化物(VO
x)、モリブデン酸化物(MoO
x)、ニッケル酸化物(NiO
x))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0067】
必ずしも必要なわけではないが、正孔輸送層140をアノード130の上に形成すると有用であることがしばしばある。望ましい正孔輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、本発明の装置と方法で堆積させることができる。正孔輸送層140で有用な正孔輸送材料は周知であり、例えば、芳香族第三級アミンなどの化合物がある。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0068】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化1】
で表わされるものがある。ただし、
Q
1とQ
2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、
Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
【0069】
一実施態様では、Q
1とQ
2の少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q
1とQ
2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0070】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化2】
で表わされる。ただし、
R
1とR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R
1とR
2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R
3とR
4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化3】
に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R
5とR
6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R
5とR
6のうちの少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0071】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(D):
【化4】
で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に、アリーレン基(例えばフェニレン基またはアントラセン基)の中から選択され;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R
7、R
8、R
9は、独立に、アリール基の中から選択される。
【0072】
典型的な一実施態様では、Ar、R
7、R
8、R
9のうちの少なくとも1つは多環縮合構造(例えばナフタレン)である。
【0073】
上記の構造式A、B、C、Dのさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0074】
OLEDデバイスにおける正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物、または芳香族第三級アミン化合物の混合物から形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式Bを満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式Dに示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間に配置された層となる。この明細書に記載した装置と方法を利用すると、単一成分または複数成分の層を堆積させることと、複数の層を順番に堆積させることができる。
【0075】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0076】
発光層150は、正孔-電子再結合に応答して光を出す。発光層150は、一般に正孔輸送層140の上に配置される。望ましい有機発光材料は、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、照射線によるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができ、この明細書に記載した装置と方法によって堆積させることができる。有用な有機発光材料は周知である。アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物またはドーパントをドープしたホスト材料を含んでいる。後者の場合、光は主としてドーパントから発生する。ドーパントは、特定のスペクトルを有する着色光が発生するように選択する。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。ドーパントは、通常は、強い蛍光を出す染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である可能性がある。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。この明細書に記載した装置と方法を利用すると、複数の蒸発源を必要とせずに複数成分のゲスト/ホスト層を形成することができる。
【0077】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0078】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0079】
【化5】
ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0080】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価の金属を使用することができる。
【0081】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環(その少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である)を含む複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0082】
発光層150に含まれるホスト材料は、9位と10位に炭化水素置換基または置換された炭化水素置換基を有するアントラセン誘導体にすることができる。例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0083】
ベンズアゾール誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]である。
【0084】
望ましい蛍光ドーパントとしては、一般に、ペリレンまたはペリレンの誘導体や、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ビス(アジニル)メタンホウ素錯体化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0085】
他の有機発光材料として、ポリマー物質が可能である。それは、例えば、譲受人に譲渡されたWolkらのアメリカ合衆国特許第6,194,119 B1号とその中で引用している参考文献に記載されているポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体である。
【0086】
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイス110は、発光層150の上に配置された電子輸送層155を備えていると有用であることがしばしばある。望ましい電子輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができ、そのためにはこの明細書に記載した装置と方法を利用することができる。電子輸送層155で用いられる好ましい電子輸送材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。考慮するオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式(E)を満たす化合物である。
【0087】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。構造式(G)を満たすベンズアゾールも、電子輸送材料として有用である。
【0088】
他の電子輸送材料としては、ポリマー物質が可能である。それは例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンや、他の導電性ポリマー有機材料(例えば『導電性分子と導電性ポリマーのハンドブック』、第1〜4巻、H.S. Nalwa編、ジョン・ワイリー&サンズ社、チチェスター、1997年に記載されているもの)である。
【0089】
電子注入層160もカソードと電子輸送層の間に存在することができる。電子注入材料の具体例として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属のハロゲン化塩(例えば上記のLiF)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした有機層などがある。
【0090】
カソード190は、電子輸送層155の上に形成され、電子輸送層を使用しない場合には、発光層150の上に形成される。アノード130を通して光が出る場合には、カソード材料をほぼ任意の導電性材料にすることができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(3.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとしては、仕事関数が小さな金属または金属塩からなる薄い層の上に導電性金属からなるより厚い層を被せた二層がある。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に記載されているものがある。
【0091】
カソード190を通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、そのような材料を含んでいる必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第5,776,623号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0092】
カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0093】
本発明は、(特にOLEDデバイスのための)有機材料の堆積を利用できることに加え、他の用途のための無機材料または有機材料の堆積にも同様にして利用することができる。高温材料(すなわち有用な蒸気圧を得るのに800Kを超える温度が必要な材料)に関しては、基板をマニホールドからの過剰な熱に曝すことなく大きな基板全体にわたって望ましい一様なコーティングを実現するため、マニホールドを省略して(線状または二次元の)熱パルス気化源のアレイを用意することが望ましかろう。あるいは1つまたは複数の熱シールドの中にマニホールドを収容することでマニホールドの最も外側が冷却され、堆積中に基板が放射によって過剰に加熱されないようにできる。