(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層が設けられ、該外層が熱貼合により形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の耐熱食品容器。
主層となるPET樹脂に4個以上のエポキシ基を有する鎖延長剤とタルク2〜15重量%を添加し、ベント孔が2以上の主押出機に投入するとともに、内層となるPET樹脂をベント孔が1以上の副押出機に投入し、夫々のPET樹脂が加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、共押出法により主層と内層とを形成し、該主層に、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層を熱貼合により積層し、該内層、主層及び外層からなる積層シートを熱成形機で真空・圧空形成し、成形金型内で100℃〜220℃に保持することを特徴とする耐熱食品容器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記C−PET樹脂を用いて成形された容器は、C−PET樹脂自体が高価であるので、容器も高価となるものであった。また、前記全芳香族ポリエステルを用いて成形された容器は、全芳香族ポリエステル樹脂を新に合成しなければならず、高価となるものであった。以上のように、従来、250℃までの耐熱性を有し、オーブンレンジによる加熱調理に耐え得る食品容器は、高価なものしか存在しないものであった。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解決し、コストの安い一般的なPET樹脂や、更にコストの安い繊維用のPET樹脂や回収PETフレークを用いて安価に製造でき、しかも250℃までの高い耐熱性を有する食品容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、コストの安い一般的なPET樹脂、繊維用のPET樹脂、回収PETフレーク等に、PET樹脂鎖の端を結び付ける鎖延長剤と、タルクとを混合し、この混合樹脂を、ベント孔を有する押出機に投入し、加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空化で吸引・脱気して原料のPET樹脂を乾燥することなく、鎖延長剤で高分子量化した後、押出成形したシートを熱成形機で成形し、成形金型内で100〜220℃に保持してPET樹脂を結晶化させ、PET樹脂の結晶部分とタルクの含有量が25%以上であればオーブンレンジの180〜250℃の耐熱性を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
請求項1に掛かる耐熱食品容器は、PET樹脂に鎖延長剤と
2〜15%のタルクを添加し、ベント孔が2以上の押出機に投入し、PET樹脂を加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、押出成形によりシートを形成し、該シートを熱成形機で真空・圧空形成し、成形金型内で100〜220℃に保持して容器を形成し、該容器の下記の式で示される結晶部分の量とタルクの含有量の合計量が25%以上であることを特徴として構成されている。
【0011】
【数1】
【0012】
請求項2に係る耐熱食品容器は、鎖延長剤が
スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジルであることを特徴として構成されている。
【0013】
請求項3に係る耐熱食品容器は、PET樹脂層からなる内層が設けられ、該内装が共押出法により形成されていることを特徴として構成されている。
【0014】
請求項4に係る耐熱食品容器は、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層が設けられ、該外層が熱貼合により形成されていることを特徴として構成されている。
【0015】
請求項5に係る耐熱食品容器の製造方法は、主層となるPET樹脂に4個以上のエポキシ基を有する鎖延長剤とタルク2〜15重量%を添加し、ベント孔が2以上の主押出機に投入するとともに、内層となるPET樹脂をベント孔が1以上の副押出機に投入し、夫々のPET樹脂が加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、共押出法により主層と内層とを形成し、該主層に、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層を熱貼合により積層し、該内層、主層及び外層からなる積層シートを熱成形機で真空・圧空形成し、成形金型内で100℃〜220℃に保持することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る耐熱食品容器においては、PET樹脂に鎖延長剤とタルクを添加した樹脂組成物で形成されている。PET樹脂に鎖延長剤を添加することにより、低分子量のPET分子の末端を結び付け、3次元構造の高分子量のPET樹脂に改質することが出来、その結果、繊維用のPET樹脂や回収PETフレーク等の溶融張力が低くて押出成形が出来ない樹脂であっても溶融張力を上げることが出来、押出成形することが出来る。また、
2〜15%のタルクを添加することにより、容器の耐熱性を向上させることが出来る。
また、PETの結晶核剤となって結晶化を促進することができ、純PETより低温側まで結晶化を促進することが出来る。
【0017】
上記PET樹脂から成る樹脂組成物を、ベント孔が2以上の押出機に投入し、PET樹脂を加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、押出成形によりシートを形成するので、PET樹脂を乾燥することなく使用することが出来、製造コストを軽減することが出来、特に、回収PETフレーク等であっても乾燥工程を経ることなく使用できるので、安価に製造することが出来る。
【0018】
さらに、押出成形により形成されたシートを、熱成形機で真空・圧空成形し、成形金型内で100〜220℃に保持するので、結晶化度を高めることができる。そして、その結晶部分とタルクの含有量の合計量が25重量%以上であるので、250℃までの耐熱性を有することとなり、オーブンレンジにおけるグラタン等の焦げ目を付ける加熱が可能となる。
【0019】
請求項2に係る耐熱食品容器においては、鎖延長剤が
スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジルであるので、PET分子の末端を効果的にエポキシ基に結び付けることができ、3次元構造の高分子量のPET樹脂に効率よく改質することができる。
【0020】
請求項3に係る耐熱食品容器においては、PET樹脂層からなる内層が設けられ、この内層は共押出法により形成されているので、主層(請求項1、2に係る樹脂組成物で形成される層)の原料に回収PETフレーク等を用いた場合であっても、バージンPET樹脂で内層を形成することにより、高安全衛生性を確保でき、食品容器として問題なく用いることができる。
【0021】
請求項4に係る耐熱食品容器においては、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層が設けられ、この外装は熱貼合により形成されているので、容器の外観に美粧性を付与することができる。
【0022】
請求項5に係る耐熱食品容器の製造方法においては、主層となるPET樹脂に4個以上のエポキシ基を有する鎖延長剤とタルク2〜15重量%を添加し、ベント孔が2以上の主押出機に投入するとともに、内層となるPET樹脂をベント孔が1以上の副押出機に投入し、夫々のPET樹脂が加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、共押出法により主層と内層とを形成し、該主層に、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムからなる外層を熱貼合により積層し、該内層、主層及び外層からなる積層シートを熱成形機で真空・圧空形成し、成形金型内で100℃〜220℃に保持するので、上述した耐熱食品容器を容易に製造することが出来、その結果、250℃までの耐熱性、安全衛生性及び美粧性に優れた耐熱食品容器を安価に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の耐熱食品容器においては、まず、PET樹脂に鎖延長剤とタルクを添加混合したPET樹脂材を作製する。PET樹脂としては、バージンPET樹脂、繊維用PET樹脂、回収PETフレーク等、特に限定されないが、繊維用PET樹脂、回収PETフレーク等を用いると、より安価に製造できるので好ましい。
【0025】
鎖延長剤は、低分子量のPET分子の末端を結び付け、3次元構造の高分子量のPET樹脂に改質するためのものである。鎖延長剤としては、1分子中に4個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、エポキシ基の数が増加するにつれて反応性も増加する。このような鎖延長剤としては、1分子中に9〜10個のエポキシ基を持ち高反応性のスチレン・アクリルオリゴマー(Mn=3,000)、具体的には三元系のスチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジルである「ADR4368S」(BASFジャパン(株))、等がある。
【0026】
鎖延長剤の添加量は、販売されている鎖延長剤の性能により、各社指定の添加量に従って決定すればよく、前記「ADR4368S」の場合は、PET樹脂に対し0.5重量%以下である。このように添加量が少ない場合は、PETG樹脂に20〜40重量%混練したマスターバッチ(以下、「MB」という)を作製し、MBとして添加すれば良い。
【0027】
タルクは、耐熱性を向上させるとともに、結晶化の核剤となって結晶化速度を速めるものであり、PET樹脂の結晶化部分と相俟って耐熱性を250℃まで向上させている。
【0028】
図5は、タルクを0.5%添加した時のPETの結晶化速度を表わしたもので、横軸に結晶化温度、縦軸に半結晶化時間を採ったものである。この図から、タルク0.5%添加したPETは、純PETに比べて最も近づいている150〜160℃の範囲でも約1.5倍結晶化速度が速くなっており、150℃以下の温度では更にその差は大きく広がっており、純PETより低温側まで結晶化を促進することが出来る。
【0029】
一般に、添加した核剤の作用メカニズムを報告している例は少なく、核剤にPETが吸着され分子鎖のTrans−Conformation(横断構造)が増加しているからという説や、核剤とPETの反応によるChemical Nucleation(化学核)説がある。
【0030】
タルクは核剤としての働きの他に、耐熱性や剛性の向上の役割も担っている。すなわちPETは非結晶部分と結晶部分とから成り、硝子転位点(70℃内外)以上の温度では、非結晶部分は硝子と同様温度の上昇とともに徐々に軟らかくなり、変形に対する保持力が弱くなる。一方、結晶部分は融点温度(PETでは260℃)で溶融するまでは固体であり変形に対する保持力が弱くなることはない。タルクも無機物であり260℃でも固体である。従ってPETの結晶物と同様の働きで両方相俟って耐熱性を向上させる。耐熱性の向上は、PETの非晶部分の海に固体であるPETの結晶部分とタルクの島が存在し、PETの硝子転位点を越えて温度が上昇し、非晶部分が軟らかくなり変形しようとしても、結晶部分とタルクの固体部分が多くあれば、固体間の距離が近くなっているので、非晶部分が軟らかくなって変形しようとしても、固体が変形しないので変形に耐えられるものと考えられる。
【0031】
そして、最終的に、容器の下記の式で示される結晶部分の量とタルクの含有量との合計量が25%以上となるようにする。合計量が25%以上とすることにより、250℃までの耐熱性を確保することが出来る。
【0032】
【数1】
タルクの平均粒径は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。平均粒径が20μmを超えると、分散が悪くなり、また同じ添加量でも核剤としての数が少なくなる。
【0033】
タルクは粉末状であるので、取り扱いが面倒であり、またPET樹脂中ではダマとなり均一に分散させずらいので、PET樹脂のMBとして添加することが好ましい。タルクのMBとしては、タルクを50〜80重量%混練した高濃度のものが好ましい。
【0034】
以上のように均一に分散混合されたPET樹脂材を、ベント孔が2以上の押出機に投入し、PET樹脂を加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、押出成形によりシートを形成する。
【0035】
このように押出機において脱気した後押出し成形することにより、乾燥工程を経ることなくシートを形成できるので、コストを低減することが出来る。すなわち、一般に、PET樹脂を押出機で押出する場合、PET樹脂が水分を含有していると加水分解を起して劣化するので、通常50ppm以下に乾燥させる必要がある。乾燥は120〜140℃の温度で行い、含有水分量にもよるが、バージンPET樹脂の場合の数時間から、回収PETフレークの場合の10数時間と膨大なエネルギー費がかかりコストが高くなるものである。したがって、無乾燥のPET樹脂や回収PETフレーク等を乾燥工程を経ることなくそのまま使用することが出来るので、乾燥工程に要したコストを削減することが出来る。
【0036】
次に、シートを熱成形機で真空・圧空成形し、成形金型内で100〜220℃に保持して容器を形成する。すなわち、シートの温度を80〜130℃に加熱して、熱成形機で真空又は真空・圧空成形によって容器に成形し、同じ成形金型内で100〜220℃、好ましくは100〜200℃に3〜10秒間保持して金型から取り出す。成形金型は、通常の雌金型とプラグアシストで成形する金型でも、雌金型と雄金型とが相似形であるいわゆるマッチモールドの金型でも良い。マッチモールドの金型の場合は、雌金型、雄金型のどちらか一方の金型を加熱金型とし、もう一方の金型を冷却金型とすれば最初に加熱金型でPETの結晶化を促進し、次いで冷却金型で冷却すれば容器取出しまでの時間を短くすることができる。
【0037】
例えば、雄金型を加熱金型とした場合は、雄金型の真空口を真空にするとともに冷却金型の雌金型から圧空を吹き出して容器を成形する。そして、成形した容器を雄金型に密着させて所定の時間100〜220℃に加熱して保持し、結晶化を促進させる。次いで雄金型の真空口から圧空を吹き出すとともに雌金型の真空口を真空にして容器を雌金型に押し付けて冷却する。
【0038】
雌金型を加熱金型とした場合は、雌金型の真空口を真空にするとともに雄金型の真空口から圧空を吹き出して容器を成形する。そして、成形した容器を密着させて所定の時間100〜220℃に加熱して保持し、結晶化を促進させる。次いで雄金型の真空口を真空にするとともに雌金型の真空口から圧空を吹き出して容器を雄金型に押し付けて冷却する。
【0039】
以上のように、成形金型内で100〜220℃に保持することにより、容器の結晶部分が、タルクとの合計量で25%以上となるようにする。
【0040】
また、PET樹脂に鎖延長剤とタルクを添加したPET樹脂層のみで容器を形成しても良いが、このPET樹脂層を主層とし、その内側にバージンPET樹脂層を内層として形成してもよい。内層を形成することにより、主層に用いるPET樹脂が回収フレークのようなものであっても、極めて高い衛生性を確保することが出来る。内層を形成するには、共押出法により、主層の形成と同時に形成することが出来る。また、内層は、ベント孔を1以上有する副押出機を用い、ベント孔から吸引・脱気しながら未乾燥のPET樹脂を押出すことにより、乾燥工程を省略して安価に製造することが出来る。内層の厚みは、25μm以上が好ましい。
【0041】
さらに、PET樹脂に鎖延長剤とタルクを添加したPET樹脂層に、A−PETフイルム又はA−PETフイルムをMD方向に1.5〜2.5倍延伸したフイルムにグラビア印刷を施した印刷フイルムを外層として形成してもよい。外層を形成することにより、容器表面の美粧性を向上させることが出来る。外層を形成するには、PET樹脂層を押出し成形する際、同時に熱貼合により積層することにより形成することが出来る。
【0042】
次に、本発明による耐熱食品容器用シートの製造装置について説明する。
【0043】
図1は耐熱食品容器用シートの製造装置の概略図、
図2は耐熱食品容器用シートの製造装置に用いる押出機のシリンダー部分の模式図、
図3は積層シートの加熱部の模式図、
図4は熱成形機の模式図である。
【0044】
図1において、10は定量フィーダー、20は混合機、30は主押出機、40は副押出機、50はフィードブロック、60はTダイ、70は冷却ロール、80は印刷フイルム繰出しロール、90は巻取りロールである。前記定量フィーダー10は、PET樹脂用フィーダー11、鎖延長剤用フィーダー12、タルク用フィーダー13及び顔料用フィーダー14から構成されており、それぞれ所定量を混合機20に投入するようになっている。混合機20は、本体21と下端に設けられたロータリーバルブ22とから構成され、定量フィーダー11、12、13、14より投入された材料を本体21で均一に混合してPET樹脂材を調整するとともに、ロータリーバルブ22より所定量づつ主押出機30へ供給するものである。主押出機30においては、投入されたPET樹脂材を加熱・溶融した状態でベント孔から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気した後、押出すものである。
【0045】
主押出機30のシリンダー部の模式図を
図2に示す。
図2において、31はシリンダーで、このシリンダー31の内部にはスクリュー32が設けられ、基端側(樹脂投入側)から、第1ベント孔33及び第2ベント孔34が形成されている。スクリュー32には、加圧圧縮部35とシール部36とが交互に配置されており、シール部36においては、スクリューの溝巾を狭くし、その間を溶融PET樹脂が満たして加圧圧縮部35における背圧9807〜19613kPa(100〜200kg/cm
2)の高圧と、ベント孔33、34の−99.99kPaの高真空との圧力差をシールするもので、樹脂はスクリュー32の回転のみで押し進むようにしてベント孔33、34からの溶融PET樹脂の吹き上がりを防止している。
【0046】
ベント孔33、34は、コンデンサー(凝縮機)を介して油回転式真空ポンプに連結されており、コンデンサーは真空度を維持することと、油回転式真空ポンプの油の質を維持するためのものである。コンデンサーがなければ、例えば、水分3,000ppmのPET樹脂を500kg/hrの吐出量で運転したとすれば、500,000g×0.3/100=1,500g/hrもの水蒸気が発生して高真空を維持出来ず、油回転式真空ポンプの油も水が混入して変質する。
【0047】
以上のような押出機において、PET樹脂を溶融・押出すには、PET樹脂をシリンダー31に投入し、押出し温度280℃内外、背圧9807〜19613kPa(100〜200kg/cm
2)、ベント孔33、34から−99.99kPa以上の高真空下で吸引・脱気しながら押出す。
【0048】
投入されたPET樹脂は、まず、第1ゾーンにおいて、加熱・溶融されて添加された鎖延長剤のMB、タルクのMBと混練される。溶融したPETは水と熱による加水分解や熱分解で解重合が起こり、低分子のPET鎖やエチレングリコール、アセトアルデヒドが発生していると考えられる。しかし鎖延長剤が添加されて混練されているので、低分子のPET鎖を結び付けて3次元の高分子量化や、エチレングルコールやアセトアルデヒドの捕捉などの重合反応も起こり始めていると考えられる。すなわち、エポキシ基
【0049】
【化2】
は開裂して、カルボキシル基(−COOH)、アルデヒド基(−CHO)、水酸基(−OH)等の官能基と結び付き、PET分子鎖を3次元の網目構造の高分子にするとともに、解重合で生じたエチレングリコール、エチレングリコールから発生するアセトアルデヒドをも高分子の一部として捕捉する。又、含有している水分は、280℃における飽和水蒸気圧は6374kPa(65kg/cm
2)であるので、背圧9806kPa(100kg/cm
2)以上では液体の状態である。
【0050】
そして、エチレングリコール、アセトアルデヒド、水を含んだ溶融PET樹脂は、第1ベント孔33まで来ると、−99.99kPa以上の高真空下となっているので、エチレングリコール(沸点198℃)、アセトアルデヒド(沸点20℃)、水(沸点100℃)は気体となり、第1ベント孔3から吸引・脱気される。そして、第1ベント孔33から吸引・脱気し切れなかったエチレングリコール、アセトアルデヒド及び水は、第2ベント孔34により吸引・脱気される。第2ゾーンにおいては、解重合も一部起こっていると考えられるが、大部分は鎖延長剤による重合反応が起こっていると考えられる。
【0051】
第3ゾーンでは殆ど鎖延長剤による重合反応のみが起っているので、新たにアセトアルデヒドが発生しておらず、溶融PET樹脂は、残留アセトアルデヒドがない状態で押出される。
【0052】
このように、重合反応によって3次元の高分子量に改質できるので通常、ボトルや容器に使われているPET樹脂のみならずコストの安い繊維用のPET樹脂や回収PETフレーク等も改質して有用に利用することができる。
【0053】
なお、副押出機40も、主押出機30と略同様に、シリンダー41、スクリュウ42、第1ベント孔43、第2ベント孔44、加圧圧縮部(図示せず)、シール部(図示せず)が設けられており、投入されるPET樹脂も略同様の工程で水分が除去されている。
【0054】
主押出機30及び副押出機40の押出口37、45は、フィードブロック50を介してTダイ60に連結されており、Tダイ60により、主押出機30から供給されて来たPET樹脂と、副押出機40から供給されてきたバージンPET樹脂とを共押出しにより主層と内層とから成る積層シートaを成形する。また、この時、印刷フィルム繰出しロール80より印刷フィルムbを繰出し、冷却ロール70において、積層シートaの主層に重ね合わせ、外層として熱貼合する。そして、この内層、主層及び外層からなる積層シートcを巻取りロール90に巻き取る。
【0055】
次に、以上のようにして成形された積層シートを容器に成形するには、
図3に示すように、積層シートcをヒータ100で加熱した後、
図4に示す熱成形機で容器に成形する。
図4において、111は雌金型、112は雄金型であり、これらの雌金型111及び雄金型112にはヒーター113が埋設されている。また、雌金型111には真空口(図示せず)が多数形成されているとともに、雄金型112にも真空口(図示せず)が多数形成されている。
【0056】
このような熱成形機で耐熱透明容器を製造するには、積層シートcを熱成形機に導入し、雄金型112の真空口から吸引するとともに雌金型111の真空口から圧空を吹出して積層シートcを雄金型112に密着して容器状に形成する。この状態でしばらく保持して熱固定した後、雄金型112の真空口から圧空を吹出すとともに雌金型111の真空口から吸引して容器を雌金型111に圧接させ、容器の外側を冷却する。
【実施例1】
【0057】
〔PET樹脂材の調製〕
PET樹脂(ユニチカ(株)製「MA−2101M」:固有粘度0.62dl/g、水分量2,900ppm)87重量部と、タルクMB(松村化学(株)試作品:PETG40重量%+タルク60重量%)8重量部と、鎖延長剤MB(明彩化学(株)試作品:PETG70重量%+BASFジャパン(株)製ADR4368S30重量%)1重量部と、白色顔料MB(大日本インキ(株)製「L−9583」:PET50重量%+白色顔料50重量%)4重量部とを、重量式定量フィーダを用いて夫々を計量し、混合機で均一に混合した。
【0058】
[積層シートの作製]
このPET樹脂材(主層用)を主押出機(日本製鋼所(株)製「TEX105α」:L/D=31.5、2軸、2ベント孔)に投入し、押出温度280℃、ベント孔から−101kPaの高真空下で吸引・脱気しながら押出すとともに、PET樹脂(内層用:ユニチカ(株)製「MA−2101M」:固有粘度0.62dl/g、水分量2,900ppm)を、副押出機(日本製鋼所(株)製「TEX65α」:L/D=31.5、2軸、2ベント孔)に投入し、押出温度280℃、両ベント孔から−101kPaの高真空下で吸引・脱気しながら押出し、Tダイより共押出で主層と内層とから成る積層シートを成形した。
【0059】
また、同時に、厚さ30μmのA−PETフイルムに調理済みのグラタンの絵柄と説明文等の文字が印刷された印刷フイルム(外層用)を繰り出し、Tダイからの共押出樹脂層(主層/内層)の主層の外側に合わせて熱貼合によって積層し、外層(30μm)/主層(300μm)/内層(30μm)総厚360μmの積層シートを作製した。
【0060】
<水分量の挙動>
連続押出し中のスクリュー及び真空吸引を一時停止し、主押出し機、副押出し機の第1及び第2ベント孔位置の樹脂をサンプリングし、含有水分量を測定した。水分測定はプラスチック用水分気化装置(京都電子工業(株)製「ADP−351型」)及びカールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製「MKC−210型」)を用いた。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
主押出機の樹脂も副押出機の樹脂も投入前の大量の含有水分が第1ベント孔の位置ではいずれも10ppm以下となり、通常PET樹脂の押出し時に必須である50ppm以下をクリアーしている。第2ベント孔の位置では0ppmとなりベント孔から吸引・脱気することにより事前に乾燥する必要がないことが解る。
【0063】
<残留アセトアルデヒドの評価>
前記積層シートを1cm×2cmの大きさに裁断して食品トレーの裁断片を作製し、そして、表裏の表面積が全体で250cm
2に相当する量の多数の裁断片を、500mlスリ合せ共栓付の硝子製の三角フラスコに投入した。次に、40℃の室で40℃のN
2ガスで三角フラスコ中の空気を置換した(N
2ガス2ml/表面積1cm
2)後、共栓で密封し、40℃で24時間放置した。
【0064】
このように処理した三角フラスコの気相中のアセトアルデヒドをガスクロマトグラフ(島津製作所(株)製「GC−6A型」FID検出器付)で測定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
ガスクロマトグラフでアセトアルデヒドは検出されなかった。したがって、残留アセトアルデヒドは無いことが確認された。
【0067】
〔耐熱食品容器の成形〕
真空・圧空成形機((株)脇坂エンジニアリング製「FVS−5000P」)を用い、成形金型を雌金型と雄金型の金型間隔が1.0mmになるように相似形で作製し、雌金型と雄金型両方に0.7mmの真空・圧空口を形成して真空と圧空を切り替えて吸引と圧空吹込みが出来るようにした。金型形状は雌金型として上部径128mmΦ、下部径95mmΦ、深さ35mmとして下部コーナーを丸みのあるR形状とした。
【0068】
前記作製した積層シートを加熱ヒーターで表面温度が130℃になるように加熱して軟化させた後、雌金型を170℃、雄金型を70℃に設定した。この状態で雌金型の真空・圧空口を真空にし、雄金型の真空・圧空口を圧空にして0.5MPaの圧空を吹き込み、5.0秒間積層シートを雌金型に密着させて容器に成形し、次いで雌金型の真空・圧空口を圧空にして0.5MPaの圧空を吹き込むとともに雄金型の真空・圧空口を真空にして容器を雄金型に5.0秒間密着させて冷却して容器を取り出した。成形品は金型からの離型も良く、しわ、変形もなく完全に金型形状を再現していた。また外観も印刷インキの退色や変色もなく美粧性に優れた外観であった。
【0069】
<成形品の結晶化度>
成形品の底部の一部を切り取りその10.0mgをサンプルとし、示差走査熱量計(セイコー電子「DSC220」)で各熱量を求め、下記式に基づいて算出した。測定条件は測定サンプル(10.0mg)に窒素50ml/min.を流しながら昇温速度10℃/min.で20〜300℃まで昇温して測定した。
【0070】
【数2】
結晶化度は21.9%であった。
【0071】
<耐熱性に寄与する固体分量>
前述したようにPETの非晶部分の軟らかい海に固体であるPETの結晶部分とタルクの合計量が耐熱性に寄与し、その存在する量が耐熱性を左右する。
【0072】
【数3】
【0073】
PETの結晶化度は成形品全体としての量であり、タルク含有量は主層のみの含有量であるが耐熱性に寄与するのはこの主層の耐熱性が主であり、この合計量によって耐熱性を判断出来る。また、タルクが添加されたPETの結晶化速度は、
図5より明らかなように、純PETより結晶化速度が大きいので、主層の結晶化度は、上記値(21.9)より大きいものと思われる。
【0074】
<成形品の耐熱性>
成形品を200℃の恒温乾燥機に入れ30分間放置した。外観を観察したところちぢれやしわもなく何の変形もなくテスト前の形状を保持していた。DSCで結晶化度を測定したところテスト前の21.9%がテスト後では27.9%となり結晶化が進んでいると考えられ、200℃で0分、10分、20分、30分の経時による結晶化度を測定した。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
時間の経過とともに結晶化が進み耐熱性が向上していると考えられる。
【0076】
<加熱調理>
成形容器に市販の冷凍グラタンを入れ、オーブンで250℃−15分間の加熱調理を行なった。グラタンは良く調理されており、中身を取り出し、水洗後容器の変形の有無、内層のPET樹脂層の外観を観察したが、ちぢれやよじれ等の変形もなかった。すなわち、加熱調理の前後において、成形容器に何の変化も認められなかった。
【0077】
中身を取り出し水洗後、容器の結晶化度をDSCで測定したところ、25.3%(結晶化度+タルク量=30.1%)であった。250℃で加熱しているが容器は中身と接触しているためその温度までは上がらず、
図5に示す最適結晶化温度の100℃から220℃を経過している時間に結晶化が進んだものと考えられる。
【実施例2】
【0078】
〔積層シートの作製〕
主押出機用として、PET樹脂(ユニチカ(株)製「MA−2101M」)88重量部と、鎖延長剤MB(明彩化学(株)試作」)1重量部と、タルクMB(松村化学(株)試作品:PETG40重量%+タルク60重量%)8重量部と、黒色顔料MB(大日本インキ(株)「BK−250DCT」:PET70%+黒色顔料30%)3重量部とから成るPET樹脂材を用い、副押出機用として、PET樹脂(ユニチカ(株)製「MA−2101M」)を用いた他は、実施例1と同一の装置及び条件で、主層(300μm)/内層(30μm)総厚330μmの積層シートを作製した。なお、印刷フイルム(外層)は貼合していない。
【0079】
〔耐熱食品容器の成形〕
実施例1と全く同一の真空・圧空成形機及び金型を用い、雄金型を加熱金型、雌金型を冷却金型として成形した。すなわち、前記積層シートを加熱ヒーターで表面温度が130℃になるように加熱して軟化させた後、170℃に設定した雄金型の真空・圧空口を真空にし、70℃に設定した雌金型の真空・圧空口を圧空にして0.5MPaの圧空を吹き込み、5.0秒間積層シートを雄金型に密着させて容器に成形し、次いで雌金型の真空・圧空口を真空にするとともに雄金型の真空・圧空口を圧空にして0.5MPaの圧空を吹き込み、容器を雌金型に密着させて冷却し、容器を取り出した。成形品は金型からの離型も良く、しわ、変形もなく完全に金型形状を再現していた。
【0080】
<成形品の結晶化度>
実施例1と同様、底部の一部を切り取りDSCによって結晶化度を測定した。結果23.0%であった。タルクの含有量4.8%と合わせ、
【0081】
【数4】
となる。
したがって、実施例2の固体分量(結晶化度+タルク量)は、実施例1の固体分量より多いので、実施例1より大きい耐熱性があると考えられる。