【文献】
Nature,2012年 5月17日,vol.485, no.7398,p.391-394,doi:10.1038/nature10998
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
FGF-1化合物を含む、個体の代謝障害を処置するための薬学的組成物であって、前記FGF-1化合物が、FGF-1タンパク質、または該FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントである、前記薬学的組成物。
FGF-1化合物が、FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントである、請求項1記載の組成物。
代謝障害が、血糖上昇、耐糖能障害、インスリン抵抗性、II型糖尿病、肥満、体脂肪率上昇、および脂肪肝疾患から選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
代謝障害が、血糖上昇、耐糖能障害、およびインスリン抵抗性から選択され、ならびにFGF-1化合物が、個体における血中のブドウ糖レベルを低下させる、請求項7記載の使用。
FGF-1化合物が、FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントである、請求項7〜15のいずれか一項記載の使用。
追加の治療用化合物が、アルファ・グルコシダーゼ阻害剤、アミリンアゴニスト、ジペプチジル・ペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、メグリチニド、スルホニル尿素、またはペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)γアゴニストである、請求項15記載の使用。
PPARγアゴニストが、チアゾリジンジオン(TZD)、アレグリタザル(aleglitazar)、ファルグリタザル、ムラグリタザル(muraglitazar)、またはテサグルタザルである、請求項19記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜140、アミノ酸1〜141、アミノ酸14〜135、またはアミノ酸13〜135を含む、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜140、アミノ酸1〜141、アミノ酸14〜135、またはアミノ酸13〜135からなる、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有する、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135を含む、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135からなる、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも90 %のアミノ酸同一性を有する、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも95 %のアミノ酸同一性を有する、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも98%のアミノ酸同一性を有する、請求項1または2記載の組成物。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜140、アミノ酸1〜141、アミノ酸14〜135、またはアミノ酸13〜135からなる、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有する、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135を含む、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸14〜135からなる、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも90 %のアミノ酸同一性を有する、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも95 %のアミノ酸同一性を有する、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
FGF-1タンパク質に対して少なくとも80 %のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むFGF-1の機能性フラグメントが、FGF-1タンパク質のアミノ酸1〜141に対して少なくとも98%のアミノ酸同一性を有する、請求項7〜16のいずれか一項記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
I. 序論
本明細書に提供されるのは、FGF-1およびその機能性バリアントを用いて代謝障害を処置するのに有用な方法および組成物である。本発明者らは、FGF-1が、血糖の正常化、インスリン感受性の増進、体脂肪率および総体重の減少、除脂肪率の増加ならびに脂肪肝(肝臓脂肪変性)の軽減を含む、迅速かつ持続的な効果を有することを示した。
【0018】
II. 定義
本明細書においては以下の略語が使用されている:
FGF 線維芽細胞増殖因子
NHR 核ホルモン受容体
PPAR ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体
PPRE PPAR応答エレメント
TSS 転写開始部位
TZD チアゾリジンジオン
BAT 褐色脂肪組織
WAT 白色脂肪組織
HFD 高脂肪食
i.p. 腹腔内注射
s.c. 皮下注射
p.o. 経口投与
i.v. 静脈内注射
【0019】
別途定義がなされていない限り、本明細書において使用される技術・科学用語は、当業者によって広く理解されているのと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994); Sambrook et al., MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照のこと。本発明の実施には、本明細書において記載されているのと同様または等価なあらゆる方法、装置および材料を使用することができる。以下の定義は、本明細書において頻繁に使用されている特定の用語の理解を容易にするために提供されるものであり、本開示の範囲の限定を意味するものではない。
【0020】
FGF-1化合物という用語は、FGF-1または少なくとも1つのFGF-1活性(例えば、FGF-1と比較して少なくとも10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %、80 %またはそれ以上の比率の活性)を保持するそのバリアント(FGF-1フラグメント、FGF-1部分、修飾型FGF-1、FGF-1に対する実質的同一性を有するタンパク質、FGF-1アナログ等)を表す。したがって、FGF-1化合物には、機能性FGF-1フラグメント、機能性FGF-1バリアントおよび機能性FGF-1アナログが含まれる。FGF-1と実質的に同一なFGF-1化合物の例は、FGF-1に対して少なくとも80 %、85 %、90 %、95 %、98 %、99 %または100 %のアミノ酸同一性を有するタンパク質である。いくつかの態様において、FGF-1化合物は、例えばFGF-1に対して95 %、98 %、99 %またはそれ以上の%同一性を有するポリペプチドを含み、その非同一部分は、その活性を実質的に変化させない保存的な置換または付加または欠失である。
【0021】
FGF-1(または酸性FGF)は、ヘパリン(例えば、ヘパリン硫酸)ならびにFGF受容体ファミリーメンバー1および4に結合する分泌タンパク質である。そのヒトタンパク質は155アミノ酸長であり、その配列はSwissProtアクセッション番号P05230.1の下で公開されている。「FGF-1」という用語は、天然の、単離された、組換えまたは合成のタンパク質を表す。FGF-1には、対立遺伝子バリアントおよび種ホモログも含まれる。
【0022】
FGF-1活性には、ヘパリン、FGFR1、およびFGFR4への結合、ならびにGLUT1および/またはGLUT4の発現の増進が含まれる。FGF-1活性には、(数ある中でも)糖尿病の個体におけるブドウ糖レベルの低下、耐糖能の改善、およびインスリン感受性の増進も含まれる。さらなるFGF-1活性には、個体における体脂肪率の減少、脂肪肝疾患の軽減、および除脂肪率の増加が含まれる。
【0023】
機能性FGF-1フラグメントは、FGF-1の全長配列よりも短い配列を有するが、少なくとも1つのFGF-1活性の少なくとも25、50、または80 %活性を保持しているタンパク質である(例えば、FGF-1 14〜135、1〜140、13〜135、1-141等)。機能性FGF-1フラグメントは、全長FGFポリペプチド配列未満の任意の長さのアミノ酸配列、例えば50、50〜80、50〜100、120〜150、100〜150、または100を超えるアミノ酸を有し得る。いくつかの態様において、機能性FGFフラグメントは、全長配列の対応する部分(例えば50〜150アミノ酸)に関して、FGF-1と少なくとも80 %、85 %、90 %、95 %、98 %または100 %同一である。いくつかの態様において、機能性FGF-1フラグメントは、FGF-1 1-141に対して90 %超、例えば95 %、98 %、99 %またはそれ以上の%同一性を有する。いくつかの態様において、機能性FGF-1フラグメントは、FGF-1 1-141に対して90 %超、例えば95 %、98 %、99 %またはそれ以上の%同一性を有し、その非同一部分は、その活性を実質的に変化させない保存的な置換または付加または欠失である。
【0024】
機能性FGF-1アナログは、少なくとも1つのFGF-1活性の少なくとも25、50または80 %活性を保持する修飾または合成(例えば、ペプチド模倣)型のFGF-1である。ヘパリン結合活性を保持するFGF-1アナログの例は、WO2006/093814に開示されている。FGF-1アナログは、非天然アミノ酸または修飾アミノ酸、例えばそのタンパク質の(貯蔵時もしくはインビボの)安定性または薬理学的特性(組織プロフィール、半減期等)を改善する非天然アミノ酸または修飾アミノ酸を含み得る。機能性FGF-1アナログはまた、機能性FGF-1バリアント、例えばFGF-1に対して90 %超、例えば95 %、98 %、99 %またはそれ以上の%同一性を有する機能性FGF-1バリアントであり得る。いくつかの態様において、機能性FGF-1アナログは、FGF-1に対して少なくとも95 %、98 %、99 %またはそれ以上の%同一性を有し、その非同一部分は、その活性を実質的に変化させない保存的な置換または付加または欠失である。
【0025】
「組換え」という用語は、例えば細胞、もしくは核酸、タンパク質またはベクターを参照して使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入またはネイティブの核酸もしくはタンパク質の変更によって修飾されていること、またはその細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)型の細胞では見られない遺伝子を発現するか、または、そうでなければ発現に異常がある、発現抑制されるもしくは全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0026】
「異種」という用語は、核酸の一部を参照して使用される場合、その核酸が、自然界ではそれと同じ相互関係で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、典型的には、新規の機能性核酸を作製するために配列された無関係の遺伝子由来の2つ以上の配列、例えば、ある供給源由来のプロモーターと別の供給源由来のコード領域を有する核酸が、組換え生産される。同様に、異種タンパク質は、そのタンパク質が、自然界ではそれと同じ相互関係で見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0027】
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよび一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のそれらのポリマーならびにそれらの相補体を表す。「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの直鎖配列を表す。「ヌクレオチド」という用語は、典型的には、ポリヌクレオチドの一単位、すなわちモノマーを表す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはそれらの修飾体であり得る。本明細書において想定されているポリヌクレオチドの例には、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA(siRNAを含む)ならびに一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNAが混在するハイブリッド分子が含まれる。
【0028】
「相補的」または「相補性」という単語は、あるポリヌクレオチド中の核酸が第2のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成する能力を表す。例えば、配列A-G-Tは、配列T-C-Aに対して相補的である。相補性は、核酸の一部のみが塩基対形成に関して適合しているという意味で部分的なもの、または全核酸が塩基対形成に関して適合しているという意味で完全なものであり得る。
【0029】
「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という単語は、置き換え可能に使用され、アミノ酸ポリマーまたは2つ以上の相互作用もしくは結合しているアミノ酸ポリマーのセットを表す。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー、修飾された残基を含むそれら、および非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0030】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と類似の機能を発揮するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を表す。天然アミノ酸は、遺伝子暗号によってコードされているアミノ酸、ならびに事後的に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、例えば水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合されたα炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを表す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有し得るが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と類似の機能を発揮する化学的化合物を表す。
【0031】
アミノ酸は、本明細書において、それらの広く知られている三文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一文字記号のいずれかにより表され得る。同様に、ヌクレオチドは、それらの広く受け入れられている一文字暗号により表され得る。
【0032】
「保存的修飾バリアント」は、アミノ酸および核酸の両方の配列に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的修飾バリアントは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸か、または、その核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は、本質的に同一または関連する、例えば自然界で連続している配列を表す。遺伝子暗号には縮重性があるため、ほとんどのタンパク質は、多数の機能的に同一の核酸によってコードされている。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより指定されているあらゆる位置において、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく、上記の対応するコドンの別のものに変更することができる。そのような核酸のバリエーションは、「サイレントバリエーション」であり、これは保存的修飾バリエーションの一種である。
【0033】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変更、付加、または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、または付加は、その変更がそのアミノ酸と化学的に同等のアミノ酸との置換である場合、「保存的修飾バリアント」であると当業者は認識しているであろう。機能的に同等のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。そのような保存的修飾バリアントは、本発明の多型バリアント、種間ホモログおよび対立遺伝子に加わるべきものであり、これらを除外するものではない。典型的に、以下のアミノ酸は、相互に対して保存的置換体である:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0034】
「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、2つ以上の核酸または2つ以上のポリペプチドとの関係において、同じであるか、または、BLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを、以下に記載されるデフォルトパラメータで用いてまたは手作業による整列および目視調査により測定した場合に、同じヌクレオチドまたはアミノ酸を特定比率(すなわち、比較ウィンドウまたは指定領域において最大一致数となるよう比較および整列させた場合に、特定領域において約60 %の同一性、好ましくは65 %、70 %、75 %、80 %、85 %、90 %、91 %、92 %、93 %、94 %、95 %、96 %、97 %、98 %、99 %またはそれ以上の同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を表す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTにてNCBIウェブサイトを参照のこと。そのような配列は、「実質的に同一」と称される。この定義はまた、ヌクレオチド試験配列の相補鎖(compliment)を表す、またはこれに適用され得る。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列ならびに置換を有する配列も含む。アルゴリズムは、ギャップ等を考慮することができる。同一性は、一般に、少なくとも約25アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域または50〜100アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にまたがって存在するものである。
【0035】
「代謝障害」という用語は、本明細書において広義の意味で使用され、インスリンおよび/またはブドウ糖の調節異常に関連する状態、疾患および障害を表す。代謝障害には、2型糖尿病、インスリン非感受性、耐糖能異常、血糖レベル上昇、肥満、高体脂肪率、脂肪肝等が含まれる。当業者は、代謝障害が、幅広い他の障害、例えば、高血圧、心疾患、循環不良等に関連しかつそれらを引き起こし得、これらは本発明の方法にしたがい代謝障害に対処することで緩和され得ることを理解するであろう。
【0036】
「生検」または「患者由来の生物学的サンプル」は、本明細書において使用される場合、代謝障害を有するまたは有する疑いのある患者から得られたサンプルを表す。いくつかの態様において、生検は、血液サンプルであり、これは血液成分(血漿、血清、白血球、赤血球、血小板等)に分離され得る。いくつかの態様において、サンプルは、組織生検、例えば針生検、細針生検、外科生検等である。組織サンプルは、脂肪、筋肉、肝臓等から得ることができる。
【0037】
「生物学的サンプル」または「細胞サンプル」は、患者、例えば生検から、動物、例えば動物モデルから、または培養細胞、例えば細胞株もしくは観察のために患者から取り出され培養物中で成長させた細胞から、得ることができる。生物学的サンプルには、組織および体液、例えば血液、血液画分、リンパ液、唾液、尿、糞便等が含まれる。
【0038】
「対象」、「患者」、「個体」およびその類語は、置き換え可能に使用され、指定されている場合を除いて、哺乳動物、例えばヒトおよび非ヒト霊長類、ならびに家畜および伴侶動物を表す。この用語は、必ずしもその対象が代謝障害について診断されていることを示すものではないが、典型的には、医学的監視下に置かれている個体を表す。患者は、処置、モニタリング、現行治療計画の調整または修正等を希望する個体であり得る。この用語は、代謝障害の発症の診断がなされた、現在その治療計画に従っている、または例えば家族歴、着座中心の生活等が原因でその危険のある個体を表し得る。
【0039】
「対照」条件またはサンプルは、試験条件またはサンプルとの比較のための参照として、通常は既知の参照としての役割を果たすサンプルを表す。例えば、試験サンプルは患者サンプルであり得、対照は代謝障害を有することが分かっている個体由来または同障害を有さないことが分かっている個体由来のサンプルであり得る。別の例において、試験サンプルは試験条件から、例えば試験化合物の存在下で採取され得、既知条件由来の、例えば試験化合物の非存在下(陰性対照)または既知化合物の存在下(陽性対照)のサンプルと比較される。対照はまた、多数の試験または結果から割り出された平均値であり得る。当業者は、任意の数のパラメータの評価のために対照を設計できることを認識しているであろう。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期)または治療的尺度(例えば、利益および/または副作用の比較)に基づき治療的利益を比較するよう設定され得る。当業者は、その状況においてどの対照が有益であるか、および対照の値との比較に基づきデータを分析することができるのかを理解するであろう。対照はまた、データの有意性の決定にも有益である。例えば、そのパラメータに関する値が対照において大きくばらついている場合、試験サンプルにおけるバリエーションは、有意であるとみなされないであろう。
【0040】
「治療」、「処置」および「緩和」という用語は、症状の重症度の何らかの軽減を表す。代謝障害の処置の場合、この用語は、血糖の減少、インスリン感受性の増進、体重の減少、体脂肪率の減少、除脂肪率の増加、関連する治療の副作用の軽減等を表し得る。本明細書において使用される場合、「処置」および「予防」という用語は、絶対的な用語であることを意図されていない。処置は、発症の何らかの遅延、症状の緩和、患者の生存可能性の改善、生存期間または生存率の向上等を表し得る。処置の効果は、処置を受けていない個体もしくは個体群と、または処置を受ける前もしくは処置中の異なる時点の同一患者と、比較され得る。いくつかの局面において、疾患の重症度は、例えば投与前の個体または処置を行っていない対照個体との比較で少なくとも10%軽減される。いくつかの局面において、疾患の重症度は、少なくとも25 %、50 %、75 %、80 %もしくは90 %軽減されるか、またはいくつかの場合においては、標準的な診断技術を用いて検出不可能になる。
【0041】
「有効量」、「有効用量」、「治療有効量」等の用語は、障害を上記の意味で緩和させるのに十分な治療剤の量を表す。例えば、あるパラメータに関して、治療有効量は、治療の効果の少なくとも5 %、10 %、15 %、20 %、25 %、40 %、50 %、60 %、75 %、80 %、90 %または少なくとも100 %の増加または減少を示すであろう。治療効果は、「 - 倍」増加または減少とも表現され得る。例えば、治療有効量は、対照の少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはそれ以上の効果を有し得る。本発明との関係で、FGF-1化合物の有効量は、他の治療の併用または個体の代謝プロフィール(特に、年齢、疾患重症度等の因子)に依存して変化し得る。
【0042】
「診断」という用語は、対象がその代謝障害を有している相対的確率を表す。症状および診断基準は、以下にまとめられている。同様に、「予後」という用語は、ある未来の結果がその対象において起こり得る相対的確率を表す。例えば、本発明との関係で、予後は、個体が代謝障害を発症する可能性を表し得る。予後はまた、その疾患の予想重症度(例えば、症状の重症度、機能低下率、生存可能性等)を表し得る。これらの用語は、絶対的なものであることが意図されておらず、そのことは医学的診断の分野の当業者の認めるところであろう。
【0043】
III. 線維芽細胞増殖因子(FGF)-1
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、発達および成体組織の広範囲で発現される特別なポリペプチドホルモンのファミリーである(Baird et al., Cancer Cells, 3:239-243, 1991)。FGFは、血管新生、発達、細胞分裂促進、パターン形成、細胞増殖、細胞分化、代謝調節および組織損傷の修復を含む多くの生理学的機能において重要な役割を果たしている(McKeehan et al., Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 59:135-176, 1998; Beenken and Mohammadi, 2009)。FGFファミリーは、現時点で、FGF-1からFGF-23の少なくとも23のメンバーで構成されている(Reuss et al., Cell Tissue Res. 313:139-157 (2003))。
【0044】
FGFは、FGF受容体(FGFR)に結合し、そのような受容体は4種存在する(FGFR1〜4)。各FGFの受容体結合の特異性は固有のものであり、かつそれはFGFRの個々のアイソフォームにも依存し得る。例えば、FGFR1は、第3 Ig様ドメインに異なるスプライスバリアントを生じている少なくとも3つのアイソフォームを有する(Lui et al., (2007) Cancer Res. 67:2712)。FGFのシグナル伝達は、受容体および受容体アイソフォームの組織特異性によっても決定される。FGF-1は全FGFRに結合することができるが、FGFR1およびFGFR4に対する結合の際にのみ内在化されることが報告されている。FGF-FGFRの特異性に関するレビューは、例えば、Sorensen et al. (2006) J Cell Science 119:4332に見出すことができる。
【0045】
FGF-1のポリペプチドおよびコード配列は、多くの動物で公知となっており、それらはNCBIウェブサイトで公開されている。本発明の方法において使用することができるFGF-1化合物には、全長ヒトFGF-1、その種ホモログ、およびその機能性フラグメントが含まれる。使用することができるさらなるFGF-1化合物には、修飾型の(例えば、安定性が向上するよう修飾された、例えばPEG化されたまたは非天然アミノ酸を含む)FGF-1、FGF-1の機能性アナログ、およびFGF-1に対する実質的同一性を有する機能性FGF-1バリアントが含まれる。本発明の方法において使用することができる別のFGF-1化合物には、細胞中でのFGF-1の安定的または一過的発現のための発現ベクターが含まれる。FGF-1化合物には、少なくとも1つのFGF-1活性、例えばヘパリン、FGFR1、およびFGFR4への結合、ならびにGLUT1および/またはGLUT4の発現増進を保持する化合物が含まれる。FGF-1活性には、(数ある中でも)糖尿病の個体におけるブドウ糖レベルの低下(正常化)、耐糖能の改善、およびインスリン感受性の増進も含まれる。さらなるFGF-1活性には、個体における体脂肪率の減少、脂肪肝疾患の抑制、および除脂肪率の増加が含まれる。
【0046】
いくつかの態様において、FGF-1化合物は、機能性FGF-1バリアント、機能性FGF-1フラグメント、および/または機能性FGF-1アナログである。すなわち、FGF-1化合物は、そのFGF-1化合物が少なくとも1つのFGF-1活性を保持している限りにおいて、バリエーションおよび修飾または非天然アミノ酸を含む機能性FGF-1フラグメントであり得る。いくつかの態様において、FGF-1化合物は、全長FGF-1またはそのフラグメントと実質的に同一、例えば、FGF-1の関連部分において少なくとも95、98または99 %同一であり、その非同一部分がFGF-1活性を変化させない保存的な置換または付加または欠失を含むものである。FGF-1活性に関与する、したがって置換または欠失に対する許容性が小さいFGF-1アミノ酸の例には、Tyr-15、Arg-35、Asn-92、Tyr-94、Lys-101、His-102、Trp-107、Leu-133およびLeu-135が含まれる。また、ヘパリンとの相互作用に関与する、Lys-112、Lys-113、Lys-118、Arg-122およびLys-128も含まれる。これらの残基の位置は、155アミノ酸のヒト配列に基づいているが、それらは種ホモログでも決定することができる。
【0047】
いくつかの態様において、FGF-1化合物は、FGF-1のアミノ酸1〜140、またはFGF-1のアミノ酸1〜140に対して少なくとも90 %の同一性を有し、少なくとも1つのFGF-1活性を保持する配列を含む。いくつかの態様において、FGF-1活性は、個体における血糖レベルの正常化である。いくつかの態様において、FGF-1活性は、個体における体脂肪率の減少である。いくつかの態様において、FGF-1活性は、個体におけるインスリン感受性の増進である。いくつかの態様において、FGF-1活性は、FGFR1またはFGFR4への結合である。いくつかの態様において、FGF-1活性は、GLUT1の発現増進である。
【0048】
FGF-1化合物は、当技術分野で公知の任意の手段により生成、単離、および/または精製され得る。標準的な組換え方法については、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY (1989); Deutscher, Methods in Enzymology 182: 83-9 (1990); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, NY (1982)を参照のこと。
【0049】
FGF-1化合物は、修飾、例えば安定性またはその薬理学的プロフィールを改善するよう修飾され得る。化学的修飾には、例えば、化学部分の付加、新しい結合の形成、および化学部分の除去が含まれる。アミノ酸側鎖基の修飾には、リジンε-アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジンまたはリジンのN-アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が含まれる。末端アミノ基の修飾には、デス・アミノ(des-amino)、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキルおよびN-アシル修飾が含まれる。末端カルボキシ基の修飾には、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミドおよび低級アルキルエステル修飾が含まれる。
【0050】
FGF-1化合物の薬理学的プロフィールを改善することができる化合物の例には、水溶性ポリマー、例えばPEG、PEG誘導体、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン、ペプチド(例えば、Tat(HIV由来)、Ant(ショウジョウバエ(Drosophila)のアンテナペディアホメオチックタンパク質由来)またはポリArg)および低分子(例えば、脂溶性化合物、例えばコレステロールまたはDAG)が含まれる。
【0051】
いくつかの態様において、FGF-1は、ヘパリン分子に連結され、それによってFGF-1の安定性が改善され、インビボでのヘパリンとの相互作用が防止され得る。FGF-1へのヘパリンの連結により、ヘパリン修飾がない場合よりも多くの修飾FGF-1が循環中で維持されるようになる。
【0052】
FGF-1化合物は、組換え遺伝学の分野における慣用的な技術を用いて組換え発現させることができる。クローニング、DNAおよびRNAの単離、増幅および精製に関する標準的技術が使用される。一般に、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を用いる酵素反応が、製造元の指示にしたがい行われる。本発明において使用する一般的方法を開示している基本書には、当技術分野で公知となっているものの中でも特に、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; Ausubel et al. eds. (2007、2010年版までの改訂あり) Current Protocols in Molecular Biologyシリーズが含まれる。
【0053】
核酸配列、例えばFGF-1化合物をコードする核酸配列の高レベルの発現を得るために、当業者は、典型的には、本発明のポリペプチド配列をコードする核酸配列を発現ベクターにサブクローニングし、その後に適当な宿主細胞にトランスフェクトする。発現ベクターは、典型的には、転写を指令する強力なプロモーターまたはプロモーター/エンハンサー、転写/翻訳ターミネーター、およびタンパク質をコードする核酸の場合は、翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む。プロモーターは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列またはその部分配列に機能的に連結される。
【0054】
遺伝子情報を細胞に伝達するのに使用される個々の発現ベクターは特に重要ではない。真核細胞または原核細胞における発現に使用される任意の従来的なベクターが使用され得る。標準的な細菌発現ベクターには、例えばpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23DのようなプラスミドならびにGSTおよびLacZのような融合発現システムが含まれる。エピトープタグ、例えばHisタグもまた、簡便な単離方法を提供するために、組換えポリペプチドに付加され得る。いくつかの場合において、酵素切断配列(例えば、第Xa因子切断部位を形成するMet-(His)g-Ile-Glu-GLy-Arg)が、組換えポリペプチドに付加される。ポリペプチドを発現するための細菌発現システムは、例えば、大腸菌(E.coli)、バシラス種(Bacillus sp.)およびサルモネラ菌(Salmonella)用のものが利用可能となっている(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983); Mosbach et al., Nature 302:543-545 (1983))。そのような発現システムのためのキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞用の真核生物発現システムが当技術分野で周知であり、かつ市販もされている。
【0055】
本発明のポリペプチドを多量に発現する細胞株を生成するのに、標準的なトランスフェクション法を使用することができ、ポリペプチドはその後、標準的技術を用いて精製される(例えば、Colley et al., J. Biol. Chem., 264:17619-17622 (1989); Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照のこと)。細胞の形質転換は、標準的技術にしたがって行われる(例えば、Morrison, J. Bact., 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology, 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983)を参照のこと)。例えば、外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための任意の周知の手順が使用され得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクターおよびウイルスベクターの使用が含まれる(例えば、Sambrook et al., 前出を参照のこと)。
【0056】
FGF-1は、当技術分野で公知の、例えば封入体からの抽出および精製、サイズ差に基づくろ過、溶解度分画(すなわち、硫酸アンモニウムのような物質を用いる選択的沈降);カラムクロマトグラフィー、免疫精製法等を含む標準的技術により実質的純度まで精製することができる。
【0057】
FGF-1化合物はまた、例えば固相合成(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)およびAbelson et al., Methods in Enzymology, Volume 289: Solid-Phase Peptide Synthesis (1st ed. 1997)を参照のこと)を含む公知の方法を用いて化学的に合成することもできる。ポリペプチド合成は、手作業の技術によりまたは自動で実行され得る。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer (Perkin Elmer)を用いて達成され得る。あるいは、ポリペプチドの様々なフラグメント(および任意の修飾アミノ酸)を別々に化学合成し、その後に化学的方法を用いてひとつにまとめ、全長ポリペプチドを製造することができる。ポリペプチドの配列および質量は、GC質量分析装置により検証され得る。合成された後、ポリペプチドは、上記のように、例えばN末端アセチル基およびC末端アミド基により修飾され得る。合成されたポリペプチドはさらに、HPLCにより、少なくとも約80 %、好ましくは90 %、より好ましくは95 %の純度になるよう単離され得る。
【0058】
本発明はさらに、食用動物、例えば鳥類、例えばアヒル、ガチョウ、ウズラ等においてFGF-1を阻害し脂肪肝を誘導する方法を提供する。阻害された発現または活性は、未処置または野生型対照におけるそれらの40 %、50 %、60 %、70 %、80 %、90 %またはそれ未満となり得る。特定の例において、阻害は、対照と比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上である。
【0059】
典型的には、FGF-1の阻害は、高脂肪食を伴うものである。いくつかの場合において、この方法は、FGF-1活性が欠如している遺伝子改変された動物(例えば、FGF-1ノックアウト動物)を作製する工程を包含する。いくつかの態様において、FGF-1は、動物にFGF-1阻害剤を投与することによって阻害される。典型的には、阻害剤は、複数回、例えば定期的なスケジュールで(毎日、毎週等)または食事と共に、投与される。
【0060】
FGF-1阻害剤は、アンチセンス化合物であり得る。「アンチセンス」という用語は、本明細書においては、遺伝子発現を抑制するためのRNA標的ストラテジーを表す一般用語として用いられる。アンチセンスには、RNAi、siRNA、shRNA等が含まれる。典型的には、アンチセンス配列は、標的配列(またはそのフラグメント)と同一であるが、これは効果的な発現抑制のために必須ではない。例えば、アンチセンス配列は、標的RNAの相補鎖またはそのフラグメントに対して85、90、95、98または99 %の同一性を有し得る。標的フラグメントは、約10、20、30、40、50、10〜50、20〜40、20〜100、40〜200またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。
【0061】
「RNAi」という用語は、標的遺伝子の発現を抑制するRNA干渉ストラテジーを表す。RNAi技術は、センスおよびアンチセンス配列がドナーおよびアクセプタースプライス部位により適当なスプライシング方向に向けられているイントロン配列に隣接する領域に配置されている遺伝子コンストラクトを用いる。あるいは、様々な長さのスペーサー配列が、コンストラクト内の配列の自己相補領域を分離するのに使用され得る。この遺伝子コンストラクトの転写物がプロセシングされる際、イントロン配列はスプライスされ、それによってセンスおよびアンチセンス配列ならびにスプライスジャンクション配列が結合し、二本鎖RNAが形成される。次いで選択されたリボヌクレアーゼがこの二本鎖RNAに結合し、これを切断し、それによって特定のmRNA遺伝子配列の分解を引き起こすイベントのカスケードを開始し、そして特定の遺伝子をサイレンシングする。RNA干渉の現象は、Bass, Nature 411: 428-29 (2001); Elbahir et al., Nature 411: 494-98 (2001); およびFire et al., Nature 391: 806-11 (1998); ならびにWO 01/75164において記載および議論されており、この中で干渉性RNAの製造方法についても議論されている。
【0062】
「siRNA」という用語は、細胞中で、例えば哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)中でおよび体内で、例えば哺乳動物(ヒトを含む)内で、特定の遺伝子の遺伝子発現に干渉することができ、かつその転写後サイレンシングを引き起こすことができる低分子干渉性RNAを表す。本明細書において開示されている配列およびその遺伝子産物をコードする核酸に基づくsiRNAは、典型的には、100未満の塩基対を有し、例えば約30 bpまたはそれより短いものであり得、それらは相補的DNA鎖の使用または合成アプローチを含む当技術分野で公知のアプローチにより作製することができる。siRNAは、細胞中で、例えば哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)中でおよび体内で、例えば哺乳動物(ヒトを含む)内で、特定の遺伝子に干渉することができ、かつその転写後サイレンシングを引き起こすことができる。例示的なsiRNAは、最大40 bp、35 bp、29 bp、25 bp、22 bp、21 bp、20 bp、15 bp、10 bp、5 bpまたはそれに近いもしくはその間の任意の整数値を有し得る。最適な阻害性siRNAを設計するためのツールには、DNAengine, Inc.(Seattle, WA)およびAmbion, Inc.(Austin, TX)から入手可能なツールが含まれる。
【0063】
「短ヘアピンRNA」または「小ヘアピンRNA」は、遺伝子発現をサイレンシングするのに使用することができるヘアピンターンを形成するリボヌクレオチド配列である。細胞因子によるプロセシングの後、短ヘアピンRNAは相補的なRNAと相互作用し、それによってその相補的RNAの発現に干渉する。
【0064】
FGF-1阻害剤はまた、FGF-1のシグナル伝達に干渉する抗体、例えばFGF-1特異的抗体、またはその機能性フラグメントであり得る。FGF-1抗体の例は、例えば、Shi et al. (2011) IUBMB Life 63:129に記載されているが、いくつかは市販されている。抗体は、インタクトな免疫グロブリンとしてまたは特異的な抗原結合活性を含む多くの十分に特徴づけられているフラグメントのいずれかとして存在し得る。典型的には、抗体の「可変領域」が抗原結合活性を含み、結合の特異性および親和性に最も重要となる。Paul, Fundamental Immunology (2003)を参照のこと。そのようなフラグメントは、様々なペプチダーゼによる消化により生成することができる。ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合より下で抗体を消化し、ジスルフィド結合によりV
H-C
H1に繋がっている軽鎖であるFabのダイマーであるF(ab)'
2を生成する。F(ab)'
2は、穏やかな条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによってF(ab)'
2ダイマーをFab'モノマーに変換し得る。このFab'モノマーは、本質的には、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)を参照のこと)。様々な抗体フラグメントは、インタクトな抗体の消化の観点で定義されるが、当業者は、そのようなフラグメントが化学的にまたは組換えDNA法を用いることによってのいずれかによりデノボ合成され得ることを理解しているであろう。抗体という用語には、完全抗体の修飾により生成された抗体フラグメント、または組換えDNA法を用いてデノボ合成された抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリを用いて同定された抗体フラグメント(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990))が含まれる。
【0065】
FGF-1阻害剤はまた、FGF-1シグナル伝達経路の阻害剤、例えばMAPキナーゼ経路阻害剤、例えばPD-098059、PD-161570、SU5402またはSB203580であり得る。
【0066】
IV. FGF-1化合物を用いて処置可能な代謝障害
本明細書中に記載されるFGF-1化合物は、代謝障害、例えば2型糖尿病、インスリン非感受性、耐糖能異常、代謝症候群、脂肪肝疾患、肥満およびそれらに関連する状態を処置するのに使用することができる。肥満への適用に関連して、FGF-1化合物はまた、個体において体脂肪の比率を減少および/または除脂肪量の比率を増加させるのに使用することもできる。FGF-1化合物を用いた処置から利益を享受することができる代謝障害に関連する状態には、高血圧(高血圧症)、心血管疾患、高血糖症、高尿酸血症および多嚢胞性卵巣症候群が含まれる。
【0067】
代謝症候群(代謝X症候群またはX症候群としても公知)は、心血管疾患の危険を増大させる医学的障害の総称である。一般に、代謝症候群の診断は、以下の基準の少なくとも3つを要する(International Diabetes Foundation (IDF)およびU.S. National Cholesterol Education Program (NCEP)を参照のこと):
中心性肥満:胴囲≧40インチ(男性)、≧36インチ(女性)
BMI:>30 kg/m
2
トリグリセリド上昇(脂肪異常症):>150 mg/dL
HDLコレステロール低下:<40 mg/dL(男性)、<50 mg/dL(女性)
血圧(BP)上昇(高血圧症):収縮期BP>130または拡張期BP>85 mmHg
空腹時血漿ブドウ糖(FPG)上昇:>100 mg/dL
【0068】
LDLコレステロール上昇は、約100、約130、約160または約200 mg/dLを超えるレベルで注目される。代謝症候群はまた、総コレステロール上昇にも関連し得る。
【0069】
耐糖能障害は、75-g経口ブドウ糖負荷試験(WHOおよびADA準拠)において2時間の約140から約199 mg/dL(7.8から11.0 mmol)のブドウ糖レベル(糖血)と定義される。約200 mg/dlまたはそれ以上の糖血は、糖尿病とみなされる。
【0070】
高血糖症または高血糖は、約7、約10、約15または約20 mmol/L以上の血糖レベルと定義することができる。
【0071】
低血糖症または低血糖は、約4もしくは約6 mmol/L(72から108 mg/dl)以下の食前血糖または約5もしくは約8 mmol/L(90から144 mg/dl)以下の食後2時間血糖と定義することができる。
【0072】
インスリン抵抗性は、正常量のインスリンが正常以下の生物学的応答をもたらす状態と定義される。インスリン抵抗性は、高インスリン正常血糖クランプ技術、ホメオスタシスモデル評価(HOMA)または量的インスリン感受性検査指数(QUICKI)により測定することができる。
【0073】
高尿酸血症は、異常に高いレベルの血中尿酸であり、例えば女性では360μmol/L(6 mg/dL)以上、男性では400μmol/L(6.8 mg/dL)以上である。
【0074】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、乏排卵(oligoovulation)、無排卵、過剰なアンドロゲンおよび/または多嚢胞性卵巣に関連する。代謝症候群はまた、黒色表皮症にも関連し得る。
【0075】
代謝症候群はまた、炎症誘発状態(例えば、血中C反応性タンパク質レベルの上昇、例えば10 mg/L以上)および微量アルブミン尿(尿アルブミン排泄率≧20 mg/分またはアルブミン:クレアチニン比≧30 mg/g)とも関連し得る。
【0076】
いくつかの態様において、FGF-1化合物は、脂肪肝疾患またはそれに関連する状態を処置するのに使用することができる。脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、単純性脂肪肝(脂肪変性)、肝硬変、肝炎、肝線維症または脂肪壊死を処置する方法であり得る。脂肪肝疾患は、肝酵素試験(ALT、AST)、肝臓超音波検査、Fibro Test(登録商標)、Steato Test(登録商標)、国際標準化比(INR)を含む凝固試験、ならびにM30-Apoptosense ELISA、赤血球沈降速度、ブドウ糖、アルブミンおよび腎機能を含む血液試験を含む当技術分野で公知の診断法により評価することができる。
【0077】
脂肪肝疾患はまた、炎症誘発状態(例えば、血中C反応性タンパク質レベルの上昇、例えば10 mg/L以上)および肝細胞癌にも関連し得る。脂肪肝疾患はまた、無ベータリポタンパク血症、グリコーゲン貯蔵疾患、ウェーバー・クリスチャン病、ウォルマン病、急性妊娠脂肪肝、脂肪異栄養症、炎症性腸疾患、HIVおよびC型肝炎(特に遺伝子型3)、ならびにアルファ1抗トリプシン欠損症と関連し得る。
【0078】
いくつかの態様において、FGF-1化合物は、体脂肪率の減少、除脂肪率の増加、または肥満(および関連する状態)の処置に使用される。この方法は、クラスI肥満、クラスII肥満、クラスIII肥満、体重増加、ボティマス指数(BMI)上昇、ボディ体積指数(BVI)上昇、体脂肪率上昇、脂肪・筋肉比上昇、胴囲増加、またはウェスト・ヒップ比上昇を処置するのに使用することができる。
【0079】
クラスI肥満は、約30から約35のBMIにより特徴付けられ、クラスII肥満(重度の肥満)は、約35から約40のBMIにより特徴付けられ、そしてクラスIII肥満(病的な肥満)は、40またはそれ以上のBMIにより特徴付けられる。約45または50を超えるBMIは、超肥満とみなされる。体重増加は、年齢、性別、身長、体格、および/または民族性を考慮して評価され得る。
【0080】
ウェスト・ヒップ比上昇は、男性については約0.9超、女性については約0.7超と定義される。
【0081】
代謝障害は、相互に関連しており、様々な系にまたがる障害を引き起こし得る。その中心にある代謝障害に対処することにより、例えば以下を含む、患者における関連する状態の重症度を軽減することができる:
例えば、虚血性心疾患、狭心症および心筋梗塞、鬱血性心不全、高血圧、コレステロールレベル異常、深在性静脈血栓、ならびに肺塞栓を含む、心血管障害、
例えば、発作、知覚異常性大腿神経痛、片頭痛、特発性および頭蓋内圧亢進を含む、神経障害、
鬱病(特に女性)および社会的スティグマ、
例えば、痛風、運動能低下(poor mobility)、変形性関節症および腰痛を含む、リウマチおよび整形外科障害、
例えば、皮膚線条、黒色表皮症、リンパ浮腫、蜂巣炎を含む、皮膚障害、
例えば、胃食道逆流疾患(GERD)および胆石症(胆石)を含む、胃腸障害、
例えば、閉塞性睡眠時無呼吸、肥満低換気症候群、喘息、および全身麻酔時の合併症の増加を含む、呼吸障害、
例えば、勃起障害、尿失禁、慢性腎不全、および性腺機能低下症を含む、泌尿器および腎障害。
【0082】
V. 薬学的組成物
FGF-1化合物は、米国薬局方(U.S.P.)、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10
th Ed., McGraw Hill, 2001; Katzung, Ed., Basic and Clinical Pharmacology, McGraw-Hill/Appleton & Lange, 8
th ed., September 21, 2000; Physician's Desk Reference (Thomson Publishing; および/もしくはThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 18
th ed., 2006, Beers and Berkow, Eds., Merck Publishing Group; または動物の場合は、The Merck Veterinary Manual, 9
th ed., Kahn Ed., Merck Publishing Group, 2005に記載されているものを含む任意の多くの薬学的組成物として使用および処方することができる。
【0083】
本明細書中に開示されている組成物は、当技術分野で公知の任意の手段により投与することができる。例えば、組成物は、対象への静脈内投与、皮内投与、動脈内投与、腹腔内投与、病巣内投与、頭蓋内投与、関節内投与、前立腺内投与、胸膜内投与、気管内投与、鼻腔内投与、硝子体内投与、膣内投与、直腸内投与、局所投与、腫瘍内投与、筋内投与、髄腔内投与、皮下投与、結膜下投与、膀胱内投与、粘膜投与、心膜内投与、臍帯血内(intraumbilically)投与、眼球内投与、経口投与、局部投与、吸入による投与、注射による投与、注入による投与、持続注入による投与、局部潅流(localized perfusion)による投与、カテーテルを通じた投与、洗浄(lavage)を通じた投与、クリームとしての投与、または脂質組成物としての投与を含み得る。投与は、局部的なもの、例えば脂肪組織もしくは肝臓への局部的なもの、または全身性のものであり得る。
【0084】
遊離塩基または薬学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと適当に混合された水を用いて調製することができる。分散物もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物を用いて、ならびに油を用いて調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止する保存剤を含み得る。
【0085】
水溶液としての非経口投与に関して、例えば、その溶液は、適当に緩衝化されているはずであり、その液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはブドウ糖により等浸透圧性を付与されているはずである。水溶液、特に滅菌水性媒体は、静脈内、筋内、皮下および腹腔内投与に非常に適している。例えば、1回分の用量は、1 mlの等浸透圧性NaCl溶液に溶解され、そして1000 mlの皮下注入液に添加されるかまたは目的の注入部位に注射され得る。
【0086】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物またはコンストラクトを適当な溶媒に添加し、その後に滅菌ろ過することによって調製することができる。一般に、分散物は、様々な滅菌済みの活性成分を、基本分散媒を含む滅菌ビヒクルに添加することによって調製される。活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術は、滅菌注射用溶液を再構成するための滅菌粉末を調製するのに使用することができる。より濃縮されたまたは高度に濃縮された直接注射用溶液の調製もまた想定されている。DMSOは、高濃度の活性剤を小さな領域に送達する超高速浸透用の溶媒として使用することができる。
【0087】
ヘパリンは、FGF-1化合物が静脈内投与されない場合、FGF-1の循環に干渉し得る。非静脈内投与、例えば皮下投与のために、FGF-1化合物は、ヘパリン分子またはFGF-1のヘパリン結合に干渉する別の化合物に連結させることができる。インビボでのFGF-1-ヘパリンの相互作用は、循環FGF-1量および治療効果の持続期間を減少させる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、ヘパリンに連結されたFGF-1化合物を含む薬学的組成物を提供する。糖尿病薬は通常皮下投与されるので、FGF-1化合物を同じ皮下投与用組成物から受け取るか、または異なる組成物であるがそれに近い投与経路を用いる組成物から受け取るのが、患者にとって好都合であり得る。
【0088】
薬学的組成物は、鼻腔内用または吸入用の溶液もしくは噴霧剤、エアゾールまたは吸入剤を通じて送達することができる。鼻用溶液は、滴下または噴霧により鼻道に投与されるよう設計された水溶液であり得る。鼻用溶液は、多くの点で鼻汁に類似するように調製され得る。したがって、水性鼻用溶液は通常、等浸透圧性であり、かつ5.5から6.5のpHを維持するよう若干緩衝化されている。さらに、眼用調製物において使用されるのと同様の抗菌保存剤、および必要とされる場合は、適当な薬物安定剤が、処方物に添加され得る。
【0089】
経口用処方物は、賦形剤、例えば医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放処方物または散剤の形式をとり得る。いくつかの態様において、経口用薬学的組成物は、不活性希釈剤もしくは吸収性食用担体を含む場合もあり、または、それらはハードシェルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入される場合もあり、または、それらは錠剤内に圧縮される場合もあり、または、それらは日常食に直接添加される場合もある。経口治療投与のために、活性化合物は、賦形剤と混合され、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤等の形態で使用され得る。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1 %の活性化合物を含むはずである。組成物および調製物の比率は、言うまでもなく変化するものであり、便宜的には、その単位重量の約2から約75 %、または好ましくは25〜60 %であり得る。そのような組成物中の活性化合物の量は、適当な用量を得ることができるものである。
【0090】
いくつかの態様において、FGF-1は、例えばNikol et al. (2008) Mol Therに記載されるような遺伝子治療用コンストラクトを用いて投与される。したがって、いくつかの態様において、FGF-1化合物をコードする配列を含む発現ベクターを個体に投与することにより、個体の代謝障害が処置される。同様に、動物において脂肪肝を誘導する方法は、発現ベクター、この場合は、FGF-1に特異的なアンチセンスコンストラクトをコードする発現ベクターの投与に基づくものであり得る。
【0091】
いくつかの場合において、FGF-1をコードするポリヌクレオチドは、インビトロで細胞に導入され、その後にその細胞が対象に導入される。いくつかの場合において、最初に細胞が対象から単離され、次いでポリヌクレオチドを導入した後にその対象に再導入される。いくつかの態様において、FGF-1コードポリヌクレオチドまたはFGF-1阻害性ポリヌクレオチドは、インビボで対象の細胞に直接導入される。
【0092】
従来的なウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入法が、FGF-1ポリペプチドをコードする核酸を哺乳動物細胞または標的組織に導入するのに使用され得る。そのような方法は、インビトロでFGF-1ポリペプチドをコードする核酸またはFGF-1阻害性ポリヌクレオチドを細胞に投与するのに使用することができる。いくつかの態様において、そのようなポリヌクレオチドは、インビボまたはエクスビボ遺伝子治療の用途で投与される。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、および送達ビヒクル、例えばリポソームと複合体化された核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込みゲノムのいずれかを持つDNAおよびRNAウイルスが含まれる。遺伝子治療の手順のレビューについては、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds) (1995); およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照のこと。
【0093】
本発明の人工ポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃(biolistics)、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオンおよびDNAの薬剤による取り込み促進が含まれる。リポフェクションは、例えば、US 5,049,386、US 4,946,787;およびUS 4,897,355に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質には、Felgner, WO 91/17424, WO 91/16024のそれらが含まれる。送達は、細胞に対するもの(エクスビボ投与)または標的組織に対するもの(インビボ投与)であり得る。標的化リポソーム、例えば免疫脂質複合体を含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995); Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992); U.S. Pat. Nos. 4,186,183, 4,217,344, 4,235,871, 4,261,975, 4,485,054, 4,501,728, 4,774,085, 4,837,028および4,946,787を参照のこと)。
【0094】
RNAまたはDNAウイルスベースのシステムは、ウイルスに保有されているポリヌクレオチドの送達を体内の特定細胞に標的化し、そのポリヌクレオチドをその核に送達するのに使用することができる。ウイルスベクターは患者に直接的に投与することができ(インビボ)、またはそれらはインビトロで細胞をトランスフェクトするのにも使用することができる。いくつかの場合では、トランスフェクトした細胞が患者に投与される(エクスビボ)。本発明のポリペプチドの送達のための従来的なウイルスベースのシステムには、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴および単純ヘルペスウイルスベクターが含まれ得る。ウイルスベクターは、現時点で、最も効率的かつ汎用性の高い、標的細胞および組織への遺伝子移入方法である。宿主ゲノムへの組み込みはレトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスの遺伝子移入法により実現され、これはしばしば挿入した導入遺伝子の長期的発現および高い形質導入効率をもたらす。
【0095】
VI. 処置方法
本発明は、その必要のある対象において代謝障害を処置、予防および/または緩和する方法を提供する。処置過程は、対象の個々の特徴に基づき個体単位で最適となるよう決定される。処置は、対象に対して毎日、1日に2回、2日に1回、隔週、毎週、毎月または治療上有効な任意の適用可能な基準で実施することができる。処置は、単独でまたは少なくとも1つの他の治療剤、例えば同じ代謝障害または関連症候群を標的にする治療剤と組み合わせて実施することができる。追加の薬剤は、FGF-1化合物と同時に、異なる時点で、または全く異なる治療計画の中で投与することができる(例えば、FGF-1化合物を毎日投与し、追加の薬剤を毎週投与することができる)。
【0096】
個々の投与経路の適性は、一部、薬学的組成物、その成分および処置する障害に依存するであろう。非経口投与は、多くの場合、全身処置において効果的である。
【0097】
患者に投与される治療剤の用量は、広範な因子に依存して変化するであろう。例えば、ヒトに対しては、小型動物の場合よりも相当多くの用量を提供する必要があろう。用量は、患者のサイズ、年齢、性別、体重、病歴および状態、他の治療の使用、投与される物質の効能ならびに投与頻度に依存するであろう。
【0098】
FGF-1化合物の用量は、体重1kgあたり0.005〜1 mgのFGF-1に相当するものであり得る。例えば、用量は、体重1kgあたり0.01〜0.1、0.1〜0.2、0.1〜0.5、0.2〜0.5、0.5〜0.8もしくは0.5 mgまたはそれ以上のFGF-1に相当するものであり得る。当業者は、FGF-1化合物がFGF-1よりも小さい(例えば、機能性FGF-1フラグメント)または大きい(例えば、修飾FGF-1ポリペプチド)場合、その状況を理解し、調整を行うであろう。
【0099】
用量は変化するものであることを示したが、当業者は、比較的少ない量を投与し、治療効果について患者をモニターすることによって、適当な用量を決定することができると考えられる。必要な場合、用量を、所望の結果が得られるまで徐々に増加させることができる。一般に、処置は、その治療剤の最適用量未満であり得る小用量から開始される。その後、用量は、その状況下で最適な効果が達成されるまで少しずつ増加される。総一日用量は、所望の場合、小分けし、一日かけて一部ずつ投与することができる。
【0100】
薬学的調製物は、単位剤形として包装または調製することができる。そのような形態において、調製物は、適当量の活性化合物を含む単位用量に、例えば、治療剤の用量に基づいて、小分けされる。単位剤形は、包装された調製物であり、その包装物に個別の量の調製物が含まれるものであり得る。組成物はまた、所望の場合、他の適合する治療剤を含み得る。
【0101】
いくつかの態様において、FGF-1化合物は、少なくとも1つの追加の治療剤、例えば別の代謝障害処置用治療剤、または関連症状に対処するための治療剤、例えば血液希釈剤または鎮痛剤、と共に投与される。代謝障害に対して広く使用されている治療剤には、以下のクラスの薬物が含まれる:アルファ・グルコシダーゼ阻害剤、アミリンアゴニスト、ジペプチジル・ペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、メグリチニド、スルホニル尿素およびPPARアゴニスト、例えばチアゾリジンジオン(TZD)。PPARアゴニスト、例えばPPARγアゴニストには、例えば、アレグリタザル(aleglitazar)、ファルグリタザル、ムラグリタザル(muraglitazar)、テサグルタザルおよびチアゾリジンジオン(TZD)が含まれ得る。例示的なTZDには、ピオグリタゾン(Actos(登録商標))、ロシグリタゾン(Avandia(登録商標))、リボグリタゾンおよびトログリタゾン(Hauner, Diabetes Metab Res Rev 18:S10-S15 (2002))が含まれる。
【0102】
さらなる補助的な活性剤、例えばビグアニド(例えば、メトホルミン)またはスルホニル尿素もまた、適当な状況下で使用することができる。
【0103】
FGF-1化合物と別の治療剤の組み合わせは相乗効果をもたらし、代謝障害、例えば2型糖尿病および関連状態の処置における効能を向上させ得る。この相乗性により、併用時の活性剤の用量を、いずれかの活性剤単独の場合の用量と比較して減らすことができる。用量の抑制は、起こり得る任意の副作用を減らす助けとなり得る。
【0104】
したがって、併用治療において、有効量の追加の(第2の)治療剤および有効量のFGF-1化合物は、合わせて、代謝障害の症状/影響を軽減するのに効果的である。いくつかの態様において、その組み合わせは、FGF-1化合物とTZDである。FGF/TZDの組み合わせは、2型糖尿病の治療的処置に必要となるTZDの用量を減らすことができ、それによってTZD治療において典型的に観察される副作用を最小限に抑えることができる。例えば、FGF-1化合物と組み合わせて投与されるTZDの量は、2型糖尿病の処置において使用されるTZDの典型的な用量と比較して、約10 %、20 %、30 %、40 %、50 %、60 %、70 %または約80 %減少する。
【0105】
医薬の当業者は、追加の治療剤の適当な用量を、患者の状態、推奨される用量、疾患の重症度およびFGF化合物の相乗効果を考慮することによって、最適となるよう決定することができる。例えば、ロシグリタゾンの量は、1日あたり約4 mgから約8 mg(例えば、1用量あたり約2 mg、約4 mgまたは約8 mg)であり得る。ピオグリタゾンの量は、1日あたり約15 mgから約45 mg、例えば、1日あたり約30 mgであり得る。
【0106】
以下の本発明の議論は、例示および解説を目的とするものであり、本発明をその中で開示されている形態に限定することを意図するものではない。本発明の解説は、1つまたは複数の態様ならびにその一定の派生物および改変物の解説を含むものであるが、その他の派生物および改変物、例えば、本開示を理解した上で当業者の技能および知識の範囲内で得ることのできる派生物および改変物も本発明の範囲に含まれる。本明細書において引用されているすべての刊行物、特許、特許出願、Genbank番号およびウェブサイトは、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0107】
VII. 実施例
材料および方法
動物。使用した動物は、FGF-1
-/-(Miller et al., 2000)、PPARγ
f/f/aP2-Creマウス(He et al., 2003)および>99% C57/B6の遺伝的背景の野生型同腹子対照であった。
【0108】
ob/obオスマウス(8週齢、B6.Cg-Lep
obLdlr
tmlHer/J)はJackson labsから入手した。このob/obマウスモデルは、高血糖症、インスリン抵抗性および肥満の動物モデルである。オスob/obマウスを、血漿ブドウ糖レベル、脂質レベル等のモニターに使用される。
【0109】
動物は、12時間明/12時間暗のサイクルの温度管理環境下で維持した。これらに標準食(MI laboratory rodent diet 5001, Harlan Teklad)または高脂肪(60 %)・高炭水化物(HFD)食(F3282, Bio-Serv)および酸性水を自由に与えた。
【0110】
細胞培養。3T3-L1マウス前脂肪細胞は、American Type Culture Collection(ATCC, Rockville, Md.)から入手した。細胞は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に10 %仔ウシ血清を含む成長培地(GM)中、37℃および5% CO
2下で、サブコンフルエントの状態で維持した。標準的な脂肪細胞の分化のために、細胞を、コンフルエントに達して2日後(第0日とする)に、10 %ウシ胎仔血清(FBS)、5μg/mlインスリン、1μMデキサメタゾンおよび0.5μM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を含む分化培地(DM)中で48時間刺激した。その後、培地を、5μg/mlインスリンを含むDMEM 10% FBSと交換し、さらに48時間処理した。その後、細胞を、10 %FBSを含む分化後培地中で維持した。CV-1細胞をルシフェラーゼレポーターアッセイに使用した。CV-1細胞を、10 %ウシ胎仔血清を含むDMEM培地中、37℃および5% CO
2下で培養した。
【0111】
ウェスタン分析。記載されているようにして組織から総細胞溶解産物を調製した。ウェスタンブロットは、ポリクローナルヤギ抗ヒトFGF-1(C-19)抗体(1:200, Santa Cruz)、抗AKT(1:1000, Cell Signaling Technology, 9272)、モノクローナルウサギ抗GSK3b(1:1000, Cell Signaling Technology, 9315)およびポリクローナルウサギ抗p44/42 MAPK(1:1000, Cell Signaling Technology, 9102)を用いて、記載されているようにして実施した。抗体の結合は、ペルオキシダーゼ結合ロバ抗ヤギIgG(1:5000, Santa Cruz)を用いて検出した。
【0112】
血清分析。血液は、自由意思摂食状況下または一晩絶食後のいずれかで、尾からの採血により収集した。遊離脂肪酸(Wako)、トリグリセリド(Thermo)およびコレステロール(Thermo)を、製造元の指示に従い酵素比色法を用いて測定した。血清インスリンレベルは、Ultra Sensitive Insulin ELISAキット(Crystal Chem)を用いて測定した。血清アディポネクチンレベルは、ELISA(Millipore)により測定した。血漿アディポカインレベルは、Milliplex(商標)MAPキット(Millipore)を用いて測定した。
【0113】
組織学分析および免疫組織化学。標準的な手順にしたがい、組織を4 %リン酸緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンで包埋し、4μmの切片にし、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。免疫組織化学については、組織をキシレン中で脱パラフィン処理し、再水和させた。スライドを、5 %正常ロバ血清を含有するPBS(+ 0.2 % Triton-X100および1 % BSA)と共に30分間インキュベートし、その後に切片を、1:200希釈の一次抗体と共に4℃で一晩およびAlexa Fluor 488または595を二次抗体として用いてRTで2時間、インキュベートした。
【0114】
代謝研究。ブドウ糖負荷試験(GTT)は、一晩の絶食後に実施した。マウスに1gのブドウ糖/kg体重を腹腔内(i.p.)注射し、0、15、30、60、90および120分時の血糖をOneTouch Ultra血糖値メーター(Lifescan Inc)を用いてモニターした。インスリン負荷試験(ITT)は、一晩の絶食後に実施した。マウスに0.5 Uのインスリン/kg体重(Humulin R; Eli Lilly)を腹腔内注射し、0、15、30、60、90および120分時の血糖をOneTouch Ultra血糖値メーター(Lifescan Inc)を用いてモニターした。リアルタイム代謝分析は、12h/12hの明/暗サイクルの隔離部屋の中で、Comprehensive Lab Animal Monitoring System(Columbus Instruments)を用いて実施した。
【0115】
実施例5では、ob/obオスマウス(8週齢)を3グループに無作為割付し、組換えマウスFGF-1(PBS中0.5 mg/kg)の毎日の皮下(s.c.)注射、経口用ロシグリタゾン(TZD、0.5 %カルボキシメチルセルロース中5 mg/kg)、またはビヒクルで処置した。血糖レベルは、食物給餌動物において処置の1時間後に測定した。総合身体組成分析は、EchoMRI-100(商標)(Echo Medical Systems, LLC)を用いて実施した。
【0116】
遺伝子発現分析。総RNAは、TRIzol試薬(Invitrogen)を用いてマウス組織および細胞から単離した。cDNAは、SuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて1μgのDNase処理後の総RNAから合成した。mRNAレベルは、SYBR Green(Invitrogen)を用いるQPCRにより定量した。サンプルは三連で操作し、標準曲線法を用いることにより相対的mRNAレベルを算出し、これを同一サンプルにおける36B4 mRNAレベルに対して正規化した。
【0117】
統計分析。すべての値を平均±標準誤差として得た。2セットのデータ間の差の有意性を評価するのに、両側・対応のないスチューデントt検定を使用した。差は、P < 0.05の場合に統計的に有意であるとみなした。
【0118】
実施例1:PPARγの直接的標的としてのFGF-1の同定
核ホルモン受容体(NHR)の標的を同定するために、本発明者らは、全49のマウスNHRと経路特異的プロモーター・レポーターライブラリの大集団がコンビナトリアルなペアになっている検証済のcDNA発現ライブラリを含む「プロモーターオントロジー」スクリーンを使用した。このペアは、与えられた状況下での任意のNHRによる各遺伝的経路の転写調節の迅速な評価を容易にする。この高スループットのプロモータースクリーンを使用して、本発明者らは、NHRによる調節についてFGFファミリーのメンバーのプロモーターコンストラクトをスクリーンし、FGF-1をPPARγの直接的標的として同定した。より詳細には、本発明者らは、PPARγによるFGF-1の強力かつ特異的な転写調節を同定した。
【0119】
FGF-1Aプロモーターの特徴付け。FGF-1遺伝子の発現は、最大70キロ塩基対の間隔があり、非翻訳エクソンを駆動する少なくとも3つの別個のプロモーター:1A、1Bおよび1Dが指令する(
図1A)(Myers et al., 1993)。FGF-1遺伝子の、これらの非翻訳エクソンから3つのコーディングエクソンへの選択的スプライシングは、同一であるが示差的に発現されるFGF-1ポリペプチドを生じる。マウスにおいて、FGF-1Aは、心臓および腎臓において最高の発現を示すが、脂肪およびいくつかの他の組織においても発現される(
図1B)。FGF-1Bは、脳において発現されるバリアントでは唯一のものあり、これはいくつかの他の組織においても発現される(
図1C)。FGF-1Dは、主として肝臓において発現される(
図1D)。
【0120】
PPARγによるFGF-1の転写調節は、FGF-1Aと呼ばれる、FGF-1の選択的プロモーターの1つの中に位置するPPAR応答エレメント(PPRE)に対するPPARγの結合を介するものであった(
図2A)。(転写開始部位(TSS)から-60bpに位置する)FGF-1Aプロモーター内のPPREを部位特異的変異誘発により不活性化すると、PPARγに対するFGF-1Aプロモーターの応答が完全に失われた(
図2F、ヒト対ΔPPREの比較)。
【0121】
FGF-1の遺伝子構造は、幅広い哺乳動物(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、チンパンジー、オラウータン、ラット、マウスおよびフクロネズミ)において高度に保存されている。これらの種のFGF-1Aプロモーター中のPPREもまた、強い保存性を示した(
図2D、E)。これらのPPREのPPARγに対する応答性を試験するため、本発明者らは、部位特異的変異誘発によってヒトFGF-1プロモーターのPPREを、配列バリエーションを示す種(ラット、イヌ、ウマおよびフクロネズミ)のPPRE配列に変更した。このプロモーターのPPARγ活性化は、関連性が遠いイヌおよびフクロネズミを除くすべての種で保持されていた(
図2F)。まとめると、これらの発見は、生理学的に重要なPPARγによるFGF-1Aプロモーターの調節機能が幅広い哺乳動物に存在することを示唆している。このプロモーター中のPPREの強い保存性に加えて、いくつかの他の高度に保存されているエレメントが検出された(例えば、SP1、HMTB、EVI1およびE-box)。
【0122】
FGF-1の発現におけるPPARγの役割を、成熟脂肪細胞において確認した。
図21は、定量PCRの結果を示しており、PPARγがFGF1プロモーター領域に特異的に結合することを実証している。36b4は、PPARγ結合部位を含まない陰性対照の遺伝子座である。
【0123】
FGF-1はインビボでPPARγによって調節される。ロシグリタゾン(5 mg/kgを3日間)または高脂肪食(2週間)の短期間の経口投与は、WATにおいてFGF-1AのmRNAレベルを有意に増加させた(
図3A、D)。この増加は、脂肪組織における最強の公知のPPARγ標的である脂肪細胞タンパク質aP2(脂肪酸結合タンパク質4、FABP4としても公知)のそれと類似するものであった。他方、一晩の絶食は、FGF-1A mRNAレベルを約2倍減少させた。比較として、FGF-21のレベルは絶食およびHFDにより肝臓において高度に誘導され(
図3B、E)、一方、ロシグリタゾンまたはHFDの効果はWATにおいて観察されなかった(
図3C、F)。興味深いことに、ロシグリタゾンはまた、絶食後の肝臓においてFGF-21の発現を減少させた(
図3B)が、これは2型糖尿病患者においても観察されることである(Li et al., 2009)。肝臓におけるFGF-1BおよびFGF-1DならびにWATにおけるFGF-1Bについては、TZD、HFDまたは絶食による発現の変化は観察されなかった。FGF-1AおよびFGF-1Dは、それぞれ、肝臓およびWATにおいて検出されなかった。マウスにおける3ヶ月間のHFD処置もまた、FGF-1のタンパク質レベルを増加させた(
図3G)。
【0124】
実施例2. FGF-1はHFD誘導性のインスリン抵抗性に対する保護を与える
次に、本発明者らは、FGF-1ノックアウト(KO)マウスを用いて、インビボでのFGF-1消失の帰結を決定した。FGF-1 KOマウスを、創傷の治癒および心血管系の変化に関して調査した。これらのマウスもFGF-1/FGF2二重KOマウスもどちらも、正常な給餌条件下では有意な表現型を示さなかった(Miller et al., 2000)。PPARγを介するFGF-1の調節の役割を研究するため、FGF-1 KOおよび野生型同腹子に高脂肪食(HFD)を与えた。HFD誘導性の体重増加については差が観察されなかったが(
図4A)、FGF-1 KOマウスはより小さなWATおよびより大きな脂肪変性性の肝臓を有しており、このことは、FGF-1 KOマウスはそれらの脂肪組織量を増加させることに失敗し、代わりに脂肪を肝臓に移動させることを示唆している(
図4B、C)。同時に、FGF-1 KOマウスは、野生型同腹子と比較して、ブドウ糖およびインスリンの空腹時レベルの増加ならびにインスリン抵抗性の増進を示すことが、それぞれ、ブドウ糖負荷およびインスリン負荷試験(GTT、ITT)により実証された(表1および2、
図4D-F)。正常な膵島の形態、組織学およびブドウ糖刺激に対するインスリン分泌により示されたように、膵臓の機能については明らかな異常は観察されなかった。しかし、膵臓あたりの膵島の数は、わずかに増加していた(
図4H)。
【0125】
(表1)3ヶ月間の高脂肪食給餌後のオス野生型およびFGF-1
-/-マウスの代謝パラメータ
【0126】
結果を、一晩絶食後の平均血清濃度±SDで表す、n=6;nd,
*P < 0.05。
【0127】
(表2)5ヶ月間の高脂肪食給餌後のオス野生型およびFGF-1
-/-マウスの代謝パラメータ
【0128】
結果を、平均血清濃度または重量±SDで表す、n=5;nd,
*P < 0.05。
【0129】
実施例3. HFD給餌FGF-1 KOマウスのWATではAKTシグナル伝達が損なわれている
FGFは、FGFR-1から-4で示される4つの同種の高親和性チロシンキナーゼ受容体を通じてシグナルを伝達し、それによりMAPK(ERK1/2)およびPI3K/AKT経路を含む複数のシグナル伝達経路の下流活性化をもたらす。これらの経路は、インスリンに応答してグリコーゲン合成を調節するグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)の活性化およびブドウ糖輸送担体GLUT4の転位を含む、インスリン/ブドウ糖シグナル伝達経路の要素の調節を行う(Cho et al., 2001)。これらのシグナル伝達経路の完全性(integrity)を調査するため、本発明者らは、HFD給餌FGF-1 KOおよび野生型マウスのWAT、BAT、肝臓および筋肉内のその重要な成分の発現を決定した(
図5)。興味深いことに、本発明者らは、HFD処置FGF-1 KOマウスのWATにおけるAKT(およびそれよりも程度は低いがGSK3β)の全体レベルが、WTマウスと比較して減少していることを見出した。対照的に、肝臓、BATまたは筋肉におけるAKTレベルは正常であり、4つすべての組織におけるERK1/2レベルも正常であった。
【0130】
実施例4. FGF-1はインビトロでGLUT1を誘導する
FGF-1は、3T3-L1脂肪細胞においてGLUT1の発現を誘導し、ロシグリタゾンと相乗的に作用する。FGF-1は、マウス3T3-L1脂肪細胞において、長期的処置の後にブドウ糖輸送担体1(Glut1)の発現を誘導し(
図6)、ob/obマウスにおける食後血糖値を低下させる。この結果は、FGF-1が糖尿病および肥満の処置のための治療法として使用できることを示している。
【0131】
実施例5. FGF-1はインビボで低血糖化効果を有する
8週齢のオスob/obマウスを、組換えマウスFGF-1(0.5 mg/kg/日、s.c.、250μl中)、ロシグリタゾン(TZD、5 mg/kg/日、p.o.、300μl中)またはビヒクル対照(皮下ビヒクル対照0.9 % NaCl、250μl/マウス;経口ビヒクル対照0.5 % CMC、300μl/マウス)で処置した。第3日および第6日の処置1時間後に標準的なプロトコルを用いて血糖を測定した(
図7A)。
【0132】
処置以前、すべてのグループは、約400 mg/dlの血糖レベルにより示される重度の高血糖症状態にあった。第3日に、FGF-1処置およびTZD処置の両グループが、約200 mg/dlという大きく低下した血糖レベルを示した。第6日に、両グループにおける血糖レベルはさらに、130〜140 mg/dl付近まで低下した。6回目の投薬後に、血糖レベルをさらに72時間モニターした。この期間の間、FGF-1およびTZD処置の両コホートは、少なくとも48時間正常血糖レベル(< 140 mg/dl)を維持した(
図7B)。6回目の投薬から72時間後に最後の投薬を行い、そして12時間後にMRIによる総合身体組成分析、その後に剖検を実施した。
【0133】
結果は、高脂肪食(HFD)およびTZDによりFGF-1が脂肪組織において選択的に誘導されること、およびFGF-1を欠くマウスがHFD誘導性のインスリン抵抗性(IR)を発症することを示している。分子レベルでは、これらのマウスのIRは、脂肪におけるAKTシグナル伝達が損なわれることにより説明することができる。糖尿病マウスに対するFGF-1の投与は、それらのブドウ糖レベルを正常化しかつそれらの脂肪・除脂肪比を改善する。したがって、FGF-1は、脂肪組織における強力なインスリン増感剤として作用し、TZDおよびPPARγのインスリン増感作用を仲介する。
【0134】
実施例6. FGF-1はob/ob糖尿病マウスにおいてブドウ糖レベルを迅速かつ劇的に低下させる
FGF-1の血糖レベルに対する急性的効果を検証するため、用量応答曲線(
図8)ならびに皮下(
図9)および静脈内(
図10)投与後の経時変化を調査した。結果は、FGF-1がob/obマウスのブドウ糖レベルの劇的な用量依存的低下をもたらすことを示している。皮下投薬は数時間規模で効果的であり、ブドウ糖レベルの有意な低下は少なくとも2日間持続する(
図9)。
図10は、静脈内投与がブドウ糖レベルに対してより長時間持続する効果を示し、0.2 mg/kg体重の用量が少なくとも1週間の間の血糖の有意な低下をもたらすことを示している。
【0135】
実施例7. FGF-1の長期投与は血糖レベルを正常化する
ob/obマウスにおけるFGF-1の長期処置の代謝的効果を調査するため、8週齢のオスob/obマウスを36日の期間、ビヒクルまたは組換えマウスFGF-1(0.5 mg/kg/3日、s.c.)で処置した。この間、ブドウ糖レベル、食物摂取および身体組成をモニターした。
図11は、ブドウ糖レベルが試験した第1時点(第2日)までに正常化され、残りの試験期間の間これが安定的に維持されることを示している。
【0136】
実施例8. FGF-1の投与は体重および体脂肪率を減少させる
図12は、FGF-1の投与が最初にob/obマウスの食物摂取を減少させることを示している。食物摂取は約2週間以内に正常通りに戻るが、
図13に示されるように、FGF-1処置ob/obマウスの体重は未処置ob/obマウスのそれよりも低い状態を維持する。この
図13に示される体重減少は、FGF-1が迅速かつ持続的な体重減少を達成するのに使用できることを示している。
【0137】
図14および15では、FGF-1処置および未処置ob/obマウスにおける体脂肪率および除脂肪率が比較されている。これらの結果は、体重の減少の大部分が体脂肪率の減少によるものであることを示している。FGF-1処置マウスにおける除脂肪量の相対的比率は、未処置マウスよりのそれよりも有意に高い(
図15)。
【0138】
実施例9. FGF-1は耐糖能を改善しインスリン抵抗性を軽減する
図16は、FGF-1投与(0.5 mg/kg/3日、s.c.)の4週間後に実施したブドウ糖負荷試験の結果を示している。FGF-1処置ob/obマウスは、未処置マウスよりも効率的にブドウ糖を減少させた。FGF-1処置マウスはまた、インスリン感受性の増進を示すことが、ITTにおけるブドウ糖のより迅速なクリアランスにより示された(
図17)。血清脂質レベル(トリグリセリド、遊離脂肪酸およびコレステロール)は、2つのグループ間で類似していた(
図18)。これらの試験は、上記の通りに行った。
【0139】
実施例10. FGF-1はob/obマウスにおける脂肪肝を軽減する
36日の処置期間の後の肝臓組織の分析は、FGF-1処置ob/obマウスの肝臓がそれらの未処置対応動物よりもずっと健康的であることを明らかにした。
図19は、未処置(A)および処置(B)マウスのH & E染色組織を示している。未処置の肝臓は、有意な脂肪変性(脂肪蓄積および損傷)を示しているのに対して、FGF-1処置マウス由来の肝臓は、脂肪変性の程度がそれよりずっと低いこと、およびあるとしても、炎症がほとんどないことを示している。さらに、肝グリコーゲンレベルは、FGF-1処置マウスにおいてずっと高く、このことは、適切なブドウ糖処理およびインスリン応答を示している(
図20)。
【0140】
実施例11. 複数のFGF-1送達法が血糖減少に効果的である
FGF-1の効果が投与経路に依存するかどうかを決定するため、本発明者らは、皮下、腹腔内および静脈内送達した0.5 mg/kg体重のFGF-1に応じたob/obマウスの血糖レベルを試験した。対照としてPBS注射を使用した。
図22は、FGF-1の急性的効果が3つすべての注射方法でほぼ同じであることを示している。本発明者らは次に、ブドウ糖正常化効果の持続期間について静脈内および皮下注射を比較した。
図23に示されるように、静脈内投与したFGF-1は、試験期間の、少なくとも60時間の間、安定的なブドウ糖レベルを与えた。
図10のデータは、静脈内注射の効果がずっと長い持続性(少なくとも1週間)を有することを示している。
【0141】
実施例12. FGF-1は他の糖尿病モデルにおいてブドウ糖を正常化するのにも効果的である
ob/obモデルは、非常に重度の糖尿病疾患を表すものとみなされている。それよりも重症度の低い糖尿病/代謝障害モデルに対するFGF-1の効果を調査するため、本発明者らは、db/dbマウスおよび食事誘導性の肥満マウスにおける血糖レベルを試験した。
図24および25は、0.5 mg/kgのFGF-1の皮下投与が両方の系において血糖レベルを低下させるのに効果的であったことを示している。このデータは、FGF-1が異なる原因から発生したブドウ糖レベルを正常化し異なる原因から発生した代謝障害を処置するのに使用できることを示している。
【0142】
実施例13. ヒト組換えFGF-1はob/obマウスにおいてブドウ糖レベルを効果的に低下させる
図26は、皮下投与された同一用量のhrFGF-1がob/obマウスにおいてブドウ糖レベルを効果的に低下させることができることを示している。ヒト組換えFGF-1はすでに臨床的に使用されているので、それを使用して代謝障害を処置する本発明の方法は、処置に至るまでの規制上の道程が短くてすむ。
【0143】
実施例14. ブドウ糖減少効果はFGF-1に特有のものである
上述の通り、FGFファミリーの因子は、FGFRファミリーの受容体のメンバーに対して異なる特異性で結合する。FGF-1は、FGFR1およびFGFR4に優先的に結合し、これらの受容体を発現する細胞中へと内在化することができる。他のFGFタンパク質がFGF-1と類似の代謝的効果を有するかどうかを決定するために、本発明者らは、FGF-2、FGF-9およびFGF-10で処置(0.5 mg/kg s.c.)したob/obマウスにおける血糖を試験した。このFGFタンパク質の組み合わせは、多種のFGFRに結合する。
図27に示される結果は、観察された代謝的効果にはFGF-1の固有の受容体結合およびシグナル伝達特性が必要であることを実証している。