特許第5767316号(P5767316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767316受取確認経路選択に基づいて利用可能な経路ビットレートを評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767316
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】受取確認経路選択に基づいて利用可能な経路ビットレートを評価する方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/70 20130101AFI20150730BHJP
   H04L 12/721 20130101ALI20150730BHJP
【FI】
   H04L12/70 100Z
   H04L12/721 Z
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-505419(P2013-505419)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-526168(P2013-526168A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011055934
(87)【国際公開番号】WO2011131565
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年3月20日
(31)【優先権主張番号】10305413.6
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グワッシュ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブシラ,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ビショー,ギヨーム
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0027884(US,A1)
【文献】 特開2007−043678(JP,A)
【文献】 Jiemin Liu ,Asymmetric-Path RTT Measurement and Optimization in Mobile Multi-Homed SCTP Multimedia Transport,Wireless Communications, Networking and Mobile Computing, 2008. WiCOM '08. 4th International Conference on ,2008年,pp.1-4
【文献】 Noonan,J. et al,Stall and Path Monitoring Issues in SCTP,INFOCOM 2006. 25th IEEE International Conference on Computer Communications. Proceedings ,IEEE,2006年,pp.1-9
【文献】 Sarkar, D. ,A Concurrent Multipath TCP and Its Markov Model,Communications, 2006. ICC '06. IEEE International Conference on ,2006年,pp.615-620
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/70
H04L 12/721
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のエンドポイントにおいて、前記第一のエンドポイントと第二のエンドポイントを結ぶ少なくとも二つの経路のうちの評価経路を通じた利用可能なビットレートを評価する方法であって、前記第一のエンドポイントはデータ・パケットを前記第二のエンドポイントに送るよう構成され、前記第二のエンドポイントは各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記少なくとも二つの経路のうちの、各データ・パケット受信の際に選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイントに送るよう構成され、当該方法は:
・前記評価経路を通じて前記第二のエンドポイントに伝送されるべき前記データ・パケットのうちからの第一のデータ・パケットにおいてフラグを設定する段階と;
・前記評価経路を通じて前記第一のデータ・パケットを送る段階と;
・前記第一のエンドポイントからの前記第一のデータ・パケットの送信時刻を測定および記録する段階と;
・前記フラグが前記第一のデータ・パケット中で設定されている場合、前記第二のエンドポイントにおける前記第一のデータ・パケットの受信を受取確認するために前記第二のエンドポイントによって前記評価経路を通じて送られた受取確認メッセージを受け取り、前記フラグが前記第一のデータ・パケット中で設定されてない場合、前記第二のエンドポイントにおける前記第一のデータ・パケットの受信を受取確認するために前記第二のエンドポイントによって前記少なくとも二つの経路のうちの任意の経路を通じて送られた受取確認メッセージを受け取る段階と;
・前記第一のエンドポイントにおいて前記受取確認メッセージの到着時刻を測定および記録する段階と;
・前記送信時刻と前記到着時刻の間の間隔および前記第一のデータ・パケットのサイズから、前記利用可能なビットレートを評価する段階とを含む、
方法。
【請求項2】
前記第一のデータ・パケットのサイズとは異なるサイズをもつ第二のデータ・パケットを使って、前記評価経路上で、利用可能なビットレートの第二の評価が実現される場合、当該方法が、前記評価経路上の単位パケット・サイズ当たりのパケット準備継続時間および送達スピードを評価するさらなる段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フラグ挿入が、前記第一のデータ・パケットのサイズに影響を及ぼさない、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記データ・パケットがヘッダを含み、前記フラグが、前記第一または第二のデータ・パケットのヘッダのリザーブされているビットに挿入される、請求項1ないし3のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記第一のエンドポイントから前記第二のエンドポイントに前記少なくとも二つの経路を通じてデータ・パケットを転送するために転送プロトコルが使われる、請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記転送プロトコルがSCTPである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第二のエンドポイントにおいて、第一のエンドポイントと前記第二のエンドポイントを結ぶ少なくとも二つの経路のうちの評価経路を通じて、受取確認メッセージを送る方法であって、前記第一のエンドポイントがデータ・パケットを前記第二のエンドポイントに送り、各データ・パケット受信に際して前記第二のエンドポイントは受取確認メッセージを、前記少なくとも二つの経路のうちの、各データ・パケット受信の際に該データ・パケットについて選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイントに送り、当該方法は:
・前記経路のうちの任意の経路を通じて前記第一のエンドポイントによって送られたデータ・パケットを受信する段階と;
・受信された前記データ・パケットが設定されたフラグを含んでいる場合、前記データ・パケットが受信された経路と同じ経路を通じて、前記第二のエンドポイントにおける前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイントに受取確認メッセージを送る段階と;
・受信された前記データ・パケットが設定されていないフラグを含んでいる場合、前記少なくとも二つの経路のうちの任意の経路を通じて、前記第二のエンドポイントにおける前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイントに受取確認メッセージを送る段階とを含む、
方法。
【請求項8】
第一のエンドポイントと第二のエンドポイントを結ぶ少なくとも二つの経路のうちの評価経路を通じた利用可能なビットレートを評価する装置であって、前記第一のエンドポイントはデータ・パケットを前記第二のエンドポイントに送り、前記第二のエンドポイントは各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記少なくとも二つの経路のうちの、各データ・パケット受信の際に該データ・パケットについて選択された一つを通じて、前記第一のエンドポイントに送り、当該装置は:
・第一のデータ・パケット内に、該データ・パケットが前記評価経路を通じて前記第二のエンドポイントに送られる前に、フラグを挿入する手段と;
・前記第一のエンドポイントからの前記第一のデータ・パケットの送信時刻を測定および記録する手段と;
・前記フラグが前記第一のデータ・パケット中で設定されている場合、前記第二のエンドポイントにおける前記第一のデータ・パケットの受信を受取確認するために前記第二のエンドポイントによって前記評価経路を通じて送られた受取確認メッセージを受け取り、前記フラグが前記第一のデータ・パケット中で設定されてない場合、前記第二のエンドポイントにおける前記第一のデータ・パケットの受信を受取確認するために前記第二のエンドポイントによって前記少なくとも二つの経路のうちの任意の経路を通じて送られた受取確認メッセージを受け取る手段と;
・前記受取確認メッセージの前記第一のエンドポイントにおける到着時刻を測定および記録する手段と;
・前記送信時刻と前記到着時刻の間の間隔および前記第一のデータ・パケットのサイズから、前記利用可能なビットレートを評価する手段とを有する、
装置。
【請求項9】
経路を通じた前記利用可能なビットレートの二つの相続く評価の結果から、前記評価経路上の単位パケット・サイズ当たりのパケット準備継続時間および送達スピードを評価する手段をさらに有する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第一のエンドポイントが前記第一のエンドポイントから前記第二のエンドポイントにデータ・パケットを送るための転送プロトコルとしてSCTPを使う、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記フラグが前記第一のデータ・パケットのヘッダの、一つのリザーブされたビットに位置される、請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記第一のエンドポイント内に位置されている、請求項8ないし11のうちいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
第一のエンドポイントと前記第二のエンドポイントを結ぶ少なくとも二つの経路のうちの評価経路を通じて、受取確認メッセージを送る装置であって、前記第一のエンドポイントがデータ・パケットを前記第二のエンドポイントに送り、前記第二のエンドポイントは、各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記少なくとも二つの経路のうちの、各データ・パケット受信の際に前記データ・パケットについて選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイントに送り、当該装置が:
・前記経路のいずれかを通じて前記第一のエンドポイントによって送られたデータ・パケットを受信する手段と;
・受信された前記データ・パケットが設定されたフラグを含んでいる場合、前記データ・パケットが受信された経路と同じ経路を通じて、前記第二のエンドポイントにおける前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイントに受取確認メッセージを送る手段と;
・受信された前記データ・パケット設定されていないフラグを含んでいる場合、前記少なくとも二つの経路のうちの任意の経路を通じて、前記第二のエンドポイントにおける前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイントに受取確認メッセージを送る手段とを有する、
装置。
【請求項14】
前記第二のエンドポイント内に位置される、請求項13記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチパス通信の分野に関する。より詳細には、本発明は、受取確認経路選択に基づいて利用可能経路ビットレートを評価する方法を扱う。
【背景技術】
【0002】
マルチパス通信は、所与のネットワーク・エンドポイントに到達するためにいくつかのIPアドレス(IPは「Internet Protocol(インターネット・プロトコル)」の略)をサポートすることに関するマルチホーミング機能から受け継いでいる。マルチパス技術において対処すべき問題および論点はよく知られている。たとえば、第一のエンドポイントから第二のエンドポイントに情報パケットを送信するために複数の経路を使うとき、第一のエンドポイントは、第一および第二の経路をリンクする利用可能な諸経路の間でデータ・パケットを均衡させるパケット配分戦略を使う必要がある。そのような戦略のねらいは、それらのエンドポイントで走っているアプリケーション(データの型)および経路特性/状態に依存して経路を選択することである。後者は、真のネットワーク状態と整合している必要があり、よって、連続的な測定を通じて最新のものに維持される。
【0003】
アプリケーションに依存して、少なくともビデオ送達については、経路を特徴付けるために以下のパラメータが普通に使われる:帯域幅、ジッタ、遅延。これらのパラメータは、エンド・ツー・エンドの測定方法を通じて測定できる。測定プロセスはデータ転送を乱してはいけないので、これは自明なことではないかもしれない。以下では、ある時間期間の間にある量のデータを送達する経路の能力を記述するパラメータである帯域幅が主要な関心対象であり、以下、「帯域幅」という表現ではなく「ビットレート」という表現が優先的に使用されるが、これらは等価と考えられる。
【0004】
そのようなパラメータを測定するために、たとえばストリーム制御伝送プロトコル(SCTP: Stream Control Transmission Protocol)またはTCPのようなエンド・ツー・エンドの転送プロトコルが、往復遅延時間(RTT: Round-trip-time)測定から利用可能なビットレートを測定してもよい。往復遅延時間は、第一のエンドポイントが第二のエンドポイントにデータ・パケットを送った時刻と第二のエンドポイントが第一のエンドポイントに送られた受取確認パケットの到着時刻との間の差に等しいと考えられる。前記受取確認は第二のエンドポイントが前記データ・パケットを受信したあとすぐに送るものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】技術文書「RFC4960―Stream Control Transmission Protocol」、インターネットでアドレスhttp://tools.ietf.org/html/rfc4960において見出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、データ・パケットの受取確認を送るための戦略が全体的な伝送に影響することがあることが示された。たとえばSCTPでは、最も高速な利用可能な経路を通じてデータ・パケットの受取確認を送れば全体的な伝送が速まる。そのような戦略が使われる場合、受取確認がデータ・パケット自身と同じ経路を通じて返送されることは保証できない。すると、往復遅延時間を評価するためにデータの受取確認を使うことは、適切ではない。
【0007】
すると、問題は:経路上の利用可能なビットレートを、高い追加負荷を生じることなく、データ送達を管理するために使われる受取確認経路選択の戦略と組み合わせて、いかにして頻繁に測定するかということになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、第一のエンドポイントと第二のエンドポイントをリンクする経路P1を通じて利用可能なビットレートの測定を、経路P1を介して第一のエンドポイントから送られた特別なデータ・パケットの受信に際して、第二のエンドポイントに、同じ経路P1を通じて受取確認を返送させるよう強制することによって行うことである。そのような状況では、データ・パケットおよび受取確認はいずれも同じ経路P1を通じて伝送される。これは、データ・パケットの特別化(particularization)を可能にするデータ・パケット中に位置される専用の信号伝達/フラグの使用を通じて達成できる。
【0009】
こうして、本発明は、第一の側面によれば、第一のエンドポイント1と第二のエンドポイント2を結ぶ少なくとも二つの経路P1、P2、P3のうちの一つの間の経路P1を通じた利用可能なビットレートBR11を評価する方法であって、前記経路P1は評価経路と呼ばれ、前記第一のエンドポイント1はデータ・パケットを前記第二のエンドポイント2に送るよう構成され、前記第二のエンドポイント2は各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記少なくとも二つの経路P1、P2、P3のうちの、前記第二のエンドポイント2による各データ・パケット受信の際に選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイント1に送るよう構成される、方法に関する。
【0010】
本発明のある実施形態によれば、第一のエンドポイント1において:
・評価経路P1を通じて前記第二のエンドポイント2に伝送されるべき前記データ・パケットのうちからの第一のデータ・パケットDP1にフラグAを挿入する段階と;
・評価経路P1を通じて前記第一のデータ・パケットDP1を送る段階と;
・前記第一のエンドポイント1からの前記第一のデータ・パケットDP1の送信時刻t1を測定および記録する段階と;
・前記第二のエンドポイント2における前記第一のデータ・パケットDP1の受信を受取確認するために前記第二のエンドポイント2によって前記評価経路P1を通じて送られた受取確認メッセージAckを受け取る段階と;
・前記第一のエンドポイント1において前記受取確認メッセージAckの到着時刻t2を測定および記録する段階と;
・前記送信時刻t1と前記到着時刻t2の間の間隔および前記第一のデータ・パケットDP1のサイズから、利用可能なビットレートBR11を評価する段階とを含む。
【0011】
第二の側面によれば、本発明は、第一のエンドポイント1と第二のエンドポイント2を結ぶ少なくとも二つの経路P1、P2、P3のうちの一つの間の経路P1を通じて、受取確認メッセージAckを送る方法であって、前記第一のエンドポイント1がデータ・パケットを前記第二のエンドポイント2に送り、各データ・パケット受信に際して前記第二のエンドポイント2は受取確認メッセージを、前記経路P1、P2、P3のうちの、各データ・パケット受信の際に前記第二のエンドポイント2によって選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイント1に送る、方法に関する。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、第二のエンドポイント2において:
・経路P1、P2、P3の間の一つの経路P1を通じて前記第一のエンドポイント1によって送られたデータ・パケットを受信する段階と;
・前記データ・パケットがフラグAを含んでいるかどうかを検出し、どの経路P1を通じて前記第二のエンドポイント2が前記データ・パケットを受信したかを決定する段階と;
・前記データ・パケット内にフラグAが検出される場合、前記経路P1を通じて、前記第二のエンドポイント2における前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイント1に受取確認メッセージAckを送る段階とを含む。
【0013】
第三の側面によれば、本発明は、第一のエンドポイント1と第二のエンドポイント2を結ぶ少なくとも二つの経路P1、P2、P3のうちの一つの間の経路P1を通じた利用可能なビットレートBR11を評価する装置であって、前記経路P1は評価経路と呼ばれ、前記第一のエンドポイント1はデータ・パケットを前記第二のエンドポイント2に送るよう構成され、前記第二のエンドポイント2は各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記経路P1、P2、P3のうちの、各データ・パケット受信の際に該データ・パケットについて選択された一つを通じて、前記第一のエンドポイント1に送る、装置に関する。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、それは:
・前記データ・パケットが評価経路P1を通じて前記第二のエンドポイント2に送られる前に第一のデータ・パケットDP1にフラグAを挿入する手段と;
・前記第一のエンドポイント1からの前記第一のデータ・パケットDP1の送信時刻t1を測定および記録する手段と;
・前記第二のエンドポイント2における前記第一のデータ・パケットDP1の受信を受取確認するために前記第二のエンドポイント2によって前記評価経路P1を通じて送られた受取確認メッセージAckを受け取る手段と;
・前記受取確認メッセージAckの前記第一のエンドポイント1における到着時刻t2を測定および記録する手段と;
・前記送信時刻t1と前記到着時刻t2の間の間隔および前記第一のデータ・パケットDP1のサイズから、利用可能なビットレートBR11を評価する手段とを有する。
【0015】
第四の側面によれば、本発明は、第一のエンドポイント1と第二のエンドポイント2を結ぶ少なくとも二つの経路P1、P2、P3のうちの一つの間の経路P1を通じて、受取確認メッセージAckを送る装置であって、前記第一のエンドポイント1がデータ・パケットを前記第二のエンドポイント2に送り、前記第二のエンドポイント2は、各データ・パケット受信に際して受取確認メッセージを、前記受取確認経路P1、P2、P3のうちの、各データ・パケット受信の際に前記データ・パケットについて選択されていた一つを通じて、前記第一のエンドポイント1に送る、装置に関する。
【0016】
本発明のある実施形態によれば、それは:
・経路P1、P2、P3のいずれかを通じて前記第一のエンドポイント1によって送られたデータ・パケットを受信する手段と;
・前記データ・パケットがフラグAを含んでいるかどうかを検出し、どの経路Pを通じて前記第二のエンドポイント2が前記データ・パケットを受信したかを決定する手段と;
・前記データ・パケット内にフラグAが検出される場合、前記経路P1を通じて、前記第二のエンドポイント2における前記データ・パケットの受信を受取確認するために前記第一のエンドポイント1に受取確認メッセージAckを送る手段とを有する。
【0017】
ある実施形態によれば、前記フラグ挿入は、前記第一のデータ・パケットDP1のサイズに影響を及ぼさない。
【0018】
すべてのデータ・パケットはヘッダを含む。
【0019】
ある実施形態によれば、フラグAは、第一または第二のデータ・パケットDP1、DP2のヘッダのリザーブされているビットに挿入される。
【0020】
ある実施形態によれば、第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2に前記経路P1、P2、P3を通じてデータ・パケットを転送するために転送プロトコルが使われる。
【0021】
ある実施形態によれば、前記転送プロトコルはSCTPである。
【0022】
ある実施形態によれば、前記フラグAは前記第一のデータ・パケットDP1のヘッダの、一つのリザーブされたビット内に位置される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第一の利点は、データ・パケット中に挿入されている単一のフラグから、利用可能な経路ビットレートの指標を、送信側において利用可能にすることを許容するということである。この単一のフラグは追加的な負荷を発生させない。これは、高頻度で実現される利用可能なビットレートの評価の場合に特に有利である。
【0024】
本発明の第二の利点は、データ転送のために実行される受取確認の機構に依拠しているということである。データ受取確認機構が全体的な伝送を改善するために使われるといっても、それは、全体的な伝送に対して知覚できるほどの負の効果を誘起することなく、利用可能なビットレートの評価に貢献するために暫時修正されることができる。
【0025】
第三の利点は、二つ以上のスループット測定が実行されるとすぐ許容されるスマートなグッドプット測定にある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、決して限定するものではない以下の実施形態および実施例によってよりよく理解され、例解される。下記の図面が参照される。
図1】経路P1、P2、P3によって結ばれる第一および第二のエンドポイントを表す図である。
図2】aは、典型的なSCTPデータ・パケット(またはデータ・チャンク)の詳細を、bは本発明に基づく方法を実行するための適応されたSCTPデータ・パケットの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の図面および記述は本発明の明瞭な理解のために関連する要素を例解するために簡略化されていることは理解しておくべきである。一方で、明確のため、典型的なデジタル・マルチメディア・コンテンツ送達の方法およびシステムに見られる他の多くの要素は省いてある。しかしながら、そのような要素は当技術分野においてよく知られているので、そのような要素の詳細な議論はここでは与えない。本稿の開示は、当業者にわかるあらゆる変更および修正に向けられる。
【0028】
図1は、三つの経路P1、P2およびP3によって結ばれる第一のエンドポイント1および第二のエンドポイント2を示している。
【0029】
第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2に前記経路P1、P2およびP3によってデータを転送するために、転送プロトコルが使われる。
【0030】
第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2にデータを送るために経路P1が現在使われる状況において、経路P1上の利用可能なビットレートを測定したい。
【0031】
ある量のデータDが、第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2に経路P1を通じて送られるべき諸データ・パケットの形で分割され、転送されることを考えよう。
【0032】
第一のエンドポイント1は、経路P1を通じてデータ・パケットを逐次送る。各データ・パケットの受信に際して、第二のエンドポイント2は古典的には第一のエンドポイント1に受取確認を送る。この受取確認は、利用可能な経路P1、P2、P3の一つを通じて送られ、必ずしも対応するデータ・パケットを転送するために使われた経路P1を通じてではない。受取確認を転送するための経路P1、P2、P3の選択は、第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2へのデータ・パケットの全体的な伝送を高速化するといった目標を達成するために実行される。この目標を達成するために使われる戦略の例を以下で簡単に述べる。特に、前記データ受取確認は必ずしも同じ経路P1を通じて送られるとは限らない。具体的には、受取確認する対応するデータ・パケットと同じ経路P1を通じて送られるとは限らない。受取確認が必ずしも対応するデータ・パケットと同じ経路上で転送されるのではない状況では、該受取確認は往復時間を評価するために使われることはできない。
【0033】
前記データ受取確認を転送するための経路を選択するために第二のエンドポイント2が従う戦略は、追求される目的との関係で決定される。たとえば、目的が、データ・パケット転送の全体的なスピードを最適化することであれば、好適な戦略は第二のエンドポイント2についての受取確認を常に、当該データ・パケットの受信の時点で最も速い経路を通じて送ることであろう。輻輳問題または他の何らかのイベントのため、この最も速い経路は時間に依存してP1、P2またはP3であることができる。
【0034】
本願の発想は、第二のエンドポイントに、暫時、ある(特別な)諸データ・パケットについて、あらかじめ定義された戦略を中断するよう強制するというものである。その際、第一のエンドポイント1は、たとえばデータ・パケットDP1が第一のエンドポイント1から送られる前に前記データ・パケットDP1にフラグAを挿入することによって、前記データ・パケットDP1を特別化する(particularizing)よう適応されたデバイスを有する。
【0035】
第二のエンドポイントが、前記経路P1を介して転送されたそのような特異な第一のデータ・パケットDP1を受信することを検出するとき、第二のエンドポイントは、応答して、対応する受取確認を送る。この受取確認は、強制的に、同じ経路P1を通じて第一のエンドポイントに送られる。この特別なデータ・パケットについては、第二のエンドポイントは、利用可能な経路のうちから前記データ受取確認を転送するための経路の選択に関する前記戦略に従わない。
【0036】
有利なことに、フラグ挿入は前記データ・パケットのオーバーヘッドを変更しない。オーバーヘッドは、データ・パケットに含まれるデータのサイズとパケットのサイズ全体との間の比である。特に、フラグAの挿入はデータ・パケットのサイズを変更しない。
【0037】
経路P1を通じて逐次送られる情報の表現が図1の上部に示されている。ここで、黒い四角はフラグが挿入されている第一のデータ・パケットDP1を示す。他の白い四角は、第一のエンドポイントによって挿入されたいかなるフラグも含まないデータ・パケットを表す。これらの後者のデータ・パケットは以下では「通常データ・パケット」と称される。
【0038】
第二のエンドポイント2による通常データ・パケットの受信に続いて、前記第二のエンドポイントは、応答して、あらかじめ定義された戦略に依存して利用可能な経路P1、P2またはP3の一つを通じて、第一のエンドポイント1に受取確認を送る。
【0039】
第二のエンドポイント2による第一のデータ・パケットDP1(特別なデータ・パケット)の受信に続いて、前記第二のエンドポイントは、応答して、第二のエンドポイントにデータ・パケットが送られた経路と同じ経路P1を通じて第一のエンドポイントに受取確認Ackを送る。
【0040】
第二のエンドポイント2は、データ・パケット中に挿入された1にセットされたフラグの存在を調べることによって、受信されたデータ・パケットが通常データ・パケットか特別データ・パケットかを判別する。
【0041】
第一のエンドポイント1は、前記第一のエンドポイントからのこの第一のデータ・パケットDP1の送信の日時t1を評価する手段と、この第一のデータ・パケットDP1の送信の日時t1を記憶する手段と、そして前記第一のエンドポイントによる、この特定の受取確認の受信の日時t2を評価する手段とを有し、さらに、送信時刻t1と到着時刻t2との間の間隔および第一のデータ・パケットDP1のサイズから利用可能なビットレートBRを評価する手段とを有する。
【0042】
その際、第一のエンドポイント1において、たとえば受取確認のための転送継続時間は0に等しいと仮定することによって、送信時刻t1と到着時刻t2との間の間隔から利用可能なビットレートBRを評価する。
【0043】
第一のエンドポイント1から第二のエンドポイント2にデータ・パケットを転送するために使われるプロトコルがSCTPである場合、非特許文献1の段落3.3.1から、SCTPデータ・チャンク(またはSCTPデータ・パケット)のペイロード構造がどのようなものであるかがわかる。
【0044】
このペイロード構造は図2のaに表現されている。これは、特に、リザーブされており、デフォルトで0に設定され、通例、データ・パケットの受信の際に無視される5ビットの存在を示している。
【0045】
この特定の実施形態では、本発明は、これらのリザーブされているビットの少なくとも一つを使うことを提案する。図2のbは、これら5つのリザーブされているビットの一つをフラグAと考えるためのSCTPデータ・パケット構造の修正の例示的な実施形態を示している。このフラグは、第一のエンドポイントによって1に設定されることができる。
【0046】
そのようなフラグAが1に設定されているデータ・パケットが第二のエンドポイント2によって受信されるとき、前記第二のエンドポイントは、第一のエンドポイント1に受信の受取確認を伝えるために経路を選択するための戦略の機能を停止し、強制的に、第一のデータ・パケットDP1を受信したのと同じ経路P1を通じて、受取確認Ackを送る。
【0047】
有利には、フラグの挿入は、データ・パケットのヘッダにおいてリザーブされているビットを1に設定することからなる。
【0048】
第一のデータポイント1から第二のデータポイント2に第一のデータ・パケットDP1および第二のデータ・パケットDP2が逐次送られるとき、かつ第一および第二のパケットDP1、DP2が二つの異なるサイズをもつとき、二つの異なる量のデータに対応して逐次の転送継続時間(t2−t1)測定が得られる。パケット・サイズ対前記転送継続時間(t21−t1)の線形回帰計算から、評価経路P1上での、単位パケット・サイズ当たりのパケット準備所要時間およびスピードを得る。
【0049】
ある実施形態によれば、第一のパケットDP1のサイズとは異なるサイズをもつ第二のデータ・パケットDP2を使うことによって、前記評価経路P1上で利用可能なビットレートの第二の評価BR12が実現されるとき、それは、評価経路P1上で単位パケット・サイズ当たりのパケット準備所要時間および送達スピードを評価するさらなる段階を含む。
【0050】
本稿において、「一つの実施形態」または「ある実施形態」への言及は、その実施形態との関連で記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも一つの実装に含まれることができることを意味する。本明細書の随所において「ある実施形態では」という句が現れることは、必ずしも全部が同じ実施形態に言及しているのではないし、必ずしも互いに排他的な別個のまたは代替的な実施形態というわけでもない。
図1
図2