(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767317
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】食用油組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/04 20060101AFI20150730BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20150730BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20150730BHJP
A23G 3/00 20060101ALN20150730BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20150730BHJP
A23G 1/00 20060101ALN20150730BHJP
A23G 1/30 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
A23D9/04
A23D7/00 500
A23D9/00 502
A23D7/00 506
!A23G3/00
!A23G1/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-506531(P2013-506531)
(86)(22)【出願日】2011年4月21日
(65)【公表番号】特表2013-524820(P2013-524820A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011002033
(87)【国際公開番号】WO2011134627
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】10250865.2
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503352660
【氏名又は名称】ローダース・クロクラーン・ベスローテンフェンノートシャップ
(73)【特許権者】
【識別番号】512279682
【氏名又は名称】フェイェコン・ディベロップメント・アンド・インプレメンテーション・ベスローテンフェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フランク・エミール・ウボルツ
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・イキーアード
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ヨハン・アントン・シュヴァイツァー
(72)【発明者】
【氏名】ハンカム・マン
(72)【発明者】
【氏名】シンシア・アッケルマンス
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−055146(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01795257(EP,A1)
【文献】
国際公開第2006/087091(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00−9/06
CAplus/AGRICOLA/SCISEARCH/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菓子製品、マーガリンまたはスプレッドから選択される食品の調製に使用するのに適した、液体油中に分散された1質量%から15質量%の脂肪粒子を含む流動可能な食用油組成物を提供する方法であって、1質量%から15質量%の微粉化脂肪粒子を液体油と5℃から40℃の温度で混合するステップと、生成した組成物を6℃から35℃の温度で最長6週間保存するステップとを含み、前記混合および前記保存の条件により、保存後に流動可能な形態で前記組成物が得られ、少なくとも95%の前記脂肪粒子が、1μm未満の少なくとも1つの寸法を有する、方法。
【請求項2】
保存後の前記組成物が0.2cm/gから0.6cm/gの流動性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保存後の前記組成物が、スピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合、30000cP未満の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪粒子および前記液体油を、低剪断下で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体油がヒマワリ油を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪粒子が、液化状態または超臨界状態のガスを含有する液体脂肪の混合物を噴霧するステップを含む方法によって生成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪粒子が、ココアバター代用脂(CBE)、ココアバターまたはパーム油ステアリンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脂肪粒子の構造化特性が、食品の製造時に発揮できる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油組成物、その調製方法および前記組成物を使用して食品を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は、多くの食品の重要な成分であり、食品に構造、質感および風味を与えることができ、またエネルギー源としても作用し得る。多くの場合、液体油を含有する食品は、構造化剤も含有する。構造化剤は、一般的に、室温(20℃)で固体の脂肪であり、油相に構造を形成させる脂肪である。
【0003】
WO2009/090416は、脂肪相、乳化剤、および水相を含む製菓用油中水型エマルションを開示しているが、ここでの脂肪相は、第1の融点を有する、実質的に単結晶形態で存在する結晶形態が複数集まって存在し得るココアバターなどの第1の脂肪、および第1の融点より低い第2の融点を有するパーム油などの第2の脂肪を含む。
【0004】
US5858445は、ハードストック(hardstock)とも呼ばれる構造化剤を5から14%含むマーガリン脂肪ブレンドを記載している。ハードストックは、25から65%の硬化されていないラウリン系脂肪ステアリンと75から35%の硬化されていないC16+脂肪ステアリンとのエステル交換した混合物のステアリン分画である。
【0005】
EP-A-1795257は、微粉化脂肪粉を使用して、油を含む食用分散物を安定化する方法を記載している。微粉化脂肪粉は、構造化剤として作用する。
【0006】
WO2010/053360は、構造化剤の分散系を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/090416
【特許文献2】US5858445
【特許文献3】EP-A-1795257
【特許文献4】WO2010/053360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
商業用途において、食用油と構造化剤との混合物を、食品を製造する顧客に提供することは望ましいと思われる。しかし、液体油と構造化剤との混合物をかなり長い任意の期間保存することは困難であることが判明している。それは、構造化剤が前記混合物の粘度を増加させる傾向があり、これにより前記混合物は流動可能でなくなり、取扱いが困難になるためである。その結果、混合物のポンピングおよび移動に問題が生じてしまう。
【0009】
保存時に流動可能であり続けるが、食品の製造時にプロセスの後半で構造化剤の構造化特性が「発揮」され得る、液体油と構造化剤との混合物を提供することが意外にも可能であることが今回見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、食品の調製に使用するのに適した食用油組成物の調製方法であって、1質量%から15質量%の脂肪粒子を液体油と混合するステップと、生成した組成物を最長10週間保存するステップとを含み、混合および保存の条件により、保存後に流動可能な形態で組成物が得られる調製方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、食品の調製に使用するのに適した流動可能な食用油組成物であって、液体油中に分散された1質量%から15質量%の脂肪粒子を含み、0.2cm/gから0.6cm/gの流動性(pourability)を有し、かつ/またはスピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合に30000cP未満の粘度を有する食用油組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、本発明の食用油組成物を1種または複数の追加の食用成分と混合するステップを含む、食品を製造する方法である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、食品の製造における本発明の食用油組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】同心円の4つの異なる点(A、B、CおよびD)を表す。
【
図2a】油中脂肪ブレンド製造直後の前記油中脂肪ブレンドの流動性を示す(油中脂肪2.5質量%)。
【
図2b】油中脂肪ブレンド製造直後の前記油中脂肪ブレンドの流動性を示す(油中脂肪5質量%)。
【
図2c】油中脂肪ブレンド製造直後の前記油中脂肪ブレンドの流動性を示す(油中脂肪10質量%)。
【
図2d】油中脂肪ブレンド製造直後の前記油中脂肪ブレンドの流動性を示す(油中脂肪15質量%)。
【
図3a】試料調製の直後(0週目)および3週間保存した後の試料の流動性の比較を示す(油中脂肪5質量%)。
【
図3b】試料調製の直後(0週目)および3週間保存した後の試料の流動性の比較を示す(油中脂肪10質量%)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法は、流動可能であり続ける、液体油中の構造化剤の分散系または懸濁液を提供する。好ましくは、保存後、組成物は、下記の実施例の項に記載する方法で測定した場合、0.2cm/gから0.6cm/g、より好ましくは0.30cm/gから0.55cm/gの流動性を有する。保存後の組成物の流動性は、他の方法で定めることができる。例えば、保存後の組成物は、スピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合に30000cP未満の粘度を有することが好ましい。
【0016】
脂肪は、本発明の食用油組成物中で固体(またはほぼ固体)である。脂肪は、20℃で固体のいずれの食用脂肪であってもよく、食品中の構造化剤として作用できる。好ましくは、脂肪は、ココアバター代用脂(CBE:cocoa butter equivalent)(シアバターステアリンなど)、またはココアバター、またはパーム油ステアリンである。
【0017】
液体油は、食品に有用なトリグリセリドを含有するいずれの液体油(すなわち、20℃で液体の油)でもよい。好適な液体油の例として、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油およびこれらの混合物が挙げられる。ヒマワリ油およびサフラワー油、ならびにこれらの混合物は特に好ましい。好ましくは、液体油は、ヒマワリ油を含む。
【0018】
好ましくは、脂肪粒子は、微粒化した脂肪である。脂肪粒子は、液化状態または超臨界状態のガスを含有する液体脂肪の混合物を噴霧するステップを含む方法によって製造できる。好適な方法は、EP-A-1795257およびWO2010/053360で開示されている。
【0019】
したがって、脂肪粒子は、高圧下において、液体状態の脂肪を、液化状態または超臨界状態のガスおよび場合により水と一緒に提供するステップと、混合物をより低圧に向けて噴霧して脂肪粒子を形成させるステップとを含む方法によって製造できる。脂肪粒子は、固体で製造されるが、これには冷却ステップを必要とする場合がある。
【0020】
あるいは、脂肪粒子は、高圧下において、液体状態の脂肪を、液化状態または超臨界状態のガスおよび水と一緒に提供するステップと、混合物をより低圧に向けて噴霧して脂肪粒子を形成させるステップとを含む方法によっては製造されない。
【0021】
脂肪粒子は、好ましくは、
1μm未満の少なくとも1つの寸法を有する。例えば、脂肪粒子は、厚さが1μm未満、例えば0.01μmから0.5μmの厚さの小板の形態、または肉厚が1μm未満、例えば0.01μmから0.5μmの肉厚の泡の形態の場合がある。
【0022】
好ましくは、少なくとも95%の脂肪粒子が、
1μm未満の少なくとも1つの寸法を有する。例えば、少なくとも95%の脂肪粒子は、厚さが1μm未満、例えば0.01μmから0.5μmの厚さの小板の形態、または肉厚が1μm未満、例えば0.01μmから0.5μmの肉厚の泡の形態であってもよい。
【0023】
好ましくは、脂肪粒子および液体油は、低剪断下で混合される。
【0024】
通常、脂肪粒子および液体油は、5℃から40℃、より好ましくは10℃から30℃の温度で混合される。
【0025】
好ましくは、組成物は、6℃から35℃、より好ましくは10℃から30℃の温度で保存される。組成物は、最長10週間、例えば1日から8週間または2日から6週間、例えば2日から3週間、保存される。好ましくは、組成物は、保存の間、継続的にまたは断続的に撹拌される。これが保存時の安定性に有益であることが分かっているためである。
【0026】
組成物は、混合温度より高い温度で保存してもよい。
【0027】
脂肪粒子は、食用油組成物中に、1質量%から15質量%、好ましくは2質量%から13質量%、例えば5質量%から12質量%または6質量%から11質量%の量で存在する。
【0028】
本発明の方法によって製造される組成物は、食品の調製に使用するのに適した流動可能な食用油組成物であって、液体油中に分散された1質量%から15質量%の脂肪粒子を含み、0.2cm/gから0.6cm/gの流動性を有し、かつ/またはスピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合に30000cP未満の粘度を有する食用油組成物である。
【0029】
本発明の組成物は、任意選択により、レシチンなどの乳化剤を、より好ましくは、組成物に対して最大2質量%(または最大1質量%)の量で含有する。好ましくは、乳化剤は、脂肪粒子中に組み込まれている(または別法で脂肪粒子に付随している)。換言すれば、脂肪粒子は、液体油との混合前に乳化剤を含むことが好ましい。
【0030】
食品は、エマルション、例えば油中水型または水中油型エマルションの形態であってもよい。食品がエマルションの形態の場合、これは、組成物を水相と混合するステップを含む方法によって形成できる。通常、乳化剤(レシチンなど)は、エマルションを安定化させるためにも存在するであろう。
【0031】
食品は、好ましくは菓子製品である。菓子製品は、フィリングおよびコーティングを含む。本発明の食用油組成物は、好ましくは、フィリングまたはコーティング中に脂肪を構成する。
【0032】
菓子製品は、通常、1種または複数の製菓用食品添加物を含む。菓子製品は、好ましくは、本発明の食用油組成物の他に、砂糖、ココアパウダー、粉乳、ヨーグルトパウダー、香料および乳化剤から選択される製菓用食品添加物を1種または複数種含む。好ましくは、菓子製品は、少なくとも砂糖およびココアパウダー、ならびに場合により1種または複数種の他の成分を含む。他の菓子製品は、少なくとも砂糖および香料、ならびに場合により1種または複数種の他の成分を含む。着色剤および保存料などの追加の成分は、任意選択により組成物中に存在し得る。砂糖は、スクロース(蔗糖)、デキストロース(ブドウ糖)およびフルクトース(果糖)(好ましくはスクロース)が挙げられる。香料は、例えば、ストロベリー、ラズベリー、バニラ、ミント、オレンジ、レモン、ライム、コーヒーなどが挙げられる。好適な乳化剤の例として、レシチンがある。菓子製品は、ナッツペーストなどのナッツ固形食(例えばピーナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオナッツ、マカデミアナッツおよびピーカンナッツ由来)を含有してもよい。
【0033】
菓子製品は、油中水型エマルションなどのエマルションでもよい。
【0034】
菓子製品は、好ましくは、周囲温度、すなわち10℃から30℃で、保存および/または販売および/または消費されるように適合される。あるいは、菓子製品は、アイスクリームなどの冷凍製品の場合もある。菓子製品は、ビスケット、スポンジまたはウエハースなどの下地を含んでもよく、この下地にコーティングまたはフィリングを塗る。また含浸させてウエハースに仕上げてもよい。ビスケット、スポンジまたはウエハースは、単層で存在しても多層中に存在していてもよい。
【0035】
チョコレートの外層をビスケット、スポンジまたはウエハース上に塗る場合またはビスケット、スポンジまたはウエハース上に塗るのでない場合のいずれであっても、菓子製品は、チョコレートの外層で覆われたフィリングを含んでもよい。このように、好ましい菓子製品は、フィリング(場合によりフィリングと一緒にビスケット、スポンジまたはウエハースを含む)で満たされたチョコレート外層を含む。通常、チョコレートの外層は、フィリングおよびビスケットまたはウエハース(存在する場合)を封入する。菓子製品は、場合により断片に分割されたバーでもよい。断片は、利用者が製品の一部を取り外し、製品の残りの部分から分離して消費できるようになされていてもよい。
【0036】
菓子製品は、ベーカリー製品を部分的に形成するフィリングまたはコーティングであってもよい。焼き菓子としては、パン、ケーキ、ビスケットおよびスポンジが挙げられる。焼き菓子は、隣接層間にフィリングを入れた、2層以上の、ビスケット、スポンジまたはウエハースからなるビスケット、スポンジまたはウエハースを含んでもよい。ベーカリー製品は、各層の間にフィリングをはさんだ、2層の、ビスケット、スポンジまたはウエハースを含んでもよい。
【0037】
一般的に、詰めた菓子製品は、販売向けに、例えばラップで包装するであろう。
【0038】
製菓用フィリングおよびコーティングは、砂糖、ココアパウダー、粉乳、ヨーグルトパウダー、香料および乳化剤から選択される製菓用食品添加物のうち1つ以上を、本発明の組成物と合わせて製造することができる。通常、これらの成分は、40℃より高温、例えば50〜80℃で混合されるであろう。
【0039】
菓子製品は、例えば、当技術分野で周知の方法にしたがって、食用下地にフィリングを詰めて作ることができる。好適な食用下地として、ビスケット、ウエハースおよびチョコレートシェルが挙げられる。
【0040】
食品が菓子製品の場合、食用油組成物中の脂肪粒子は、ココアバターまたはココアバター代用脂(CBE)、例えばシアバターステアリンを含むことが好ましい。
【0041】
したがって、本発明の好ましい組成物は、菓子製品の調製で使用するのに適した、流動可能な食用油組成物であって、液体油中に分散された1質量%から15質量%のココアバターまたはココアバター代用脂(CBE)の粒子を含み、0.2cm/gから0.6cm/gの流動性を有し、かつ/またはスピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合に30000cP未満の粘度を有する食用油組成物である。
【0042】
あるいは、食品は、マーガリンまたはスプレッドでもよい。
【0043】
本発明の組成物の一実施形態は、マーガリンまたはスプレッドの調製で使用するのに適した、流動可能な食用油組成物であって、ヒマワリ油を含む液体油中に分散された1質量%から15質量%のパーム油ステアリンの粒子を含み、0.2cm/gから0.6cm/gの流動性を有し、かつ/またはスピンドルS-64を速度1.5rpmで使用して10秒後にBrookfield粘度計を用いて測定した場合に30000cP未満の粘度を有する食用油組成物である。
【0044】
本明細書中の、明らかに過去に発行された文書の掲載または考察は、その文書が最新技術の一部である、または一般常識であると認めるものと必ずしも捉えなくてもよい。
【0045】
以下の限定されない実施例は、本発明を説明するものであり、範囲を限定するものでは決してない。本実施例において、また本明細書全体において、すべてのパーセンテージ、部および比は、別段指定のない限り質量によって表される。
【0046】
実施例
流動性試験-プロトコル
流動性を測定するために用いた器具は、両端が開いている10mlプラスチック製シリンダー(内径φ=16mm)および複数の同心円を有するプレートからなる。これらの同心円は、流動体が特定の時間帯に移動した距離を示すために用いられる。
【0047】
流動性測定は、以下に示すステップによって行う。
1. プラスチック製シリンダーを、各同心円の中心円に置き、試料(10ml)で満たす。
2. 次いで、シリンダーを外すことにより試料の流動を開始させる。この時点で時間の測定を開始する必要がある。
3. 40秒後、流動体が覆った距離を、
図1に示す各同心円の4つの異なる点(A、B、CおよびD)で測定する。
4. 4つの測定値の平均を算出し、平均距離を求める。
5. 試験実施の前後でボードの重さを量ることにより、ボード上の試料の質量を計算できる。
6. 組成物が移動した距離は、組成物の量によって決まり、流動性の結果はcm/gで表す。
流動性=平均距離(cm)/試料の質量(g)
この手順を、各試料について少なくとも3回繰り返すことにより、いくつかの値を得て平均値が計算される。
【0048】
材料および方法
材料
脂肪粉は、340μm Spraying Systems SKシリーズの噴霧乾燥ノズルを用いて、300バールで20質量%の脂肪中CO
2、予備発泡温度50℃で、ScMM(Supercritical Melt Micronization)技術を連続操作することによって、14のヨード価(IV)を有するパーム油ステアリン(Loders Croklaan BV、Wormerveer、The Netherlandsから入手可能)から製造した。試料の製造に用いた油は、ヒマワリ油であった。
【0049】
方法
試料の製造
油中脂肪ブレンドの製造
試料は、油を所望の温度に加熱/冷却し、スプーン(低剪断)を使って適切な量の脂肪粉を油中にブレンドすることによって製造した。試料を製造したら、保存用キャビネット中に所望の温度で3週間保存した。各試料の処理条件および組成を以下の表に示す。
【0051】
流動性分析
油中脂肪ブレンドの流動性は、試料製造の直後および所望の温度で3週間保存した後に分析した。この分析に用いた方法は上記の通りである。
【0052】
粘度分析
油中脂肪ブレンドの粘度は、3週間の保存後に、Brookfield粘度計を用いて測定した。測定は、スピンドルS-64を速度1.5r.p.m.で使用して10秒後に得られた。
【0053】
安定性分析
油中脂肪ブレンドを、特定の温度で3週間保存した。試料の安定性は、肉眼検査および油の浸出現象の分析によって評価した。
【0054】
結果
流動性および粘度の結果
試料調製直後の流動性
図2は、油中脂肪ブレンド製造直後の前記油中脂肪ブレンドの流動性を示す。
図2a) 油中脂肪2.5質量%、
図2b) 油中脂肪5質量%、
図2c) 油中脂肪10質量%、および
図2d) 油中脂肪15質量%。
【0055】
これらの結果から、混合温度の上昇が流動性の減少をもたらし、この影響はブレンドの脂肪含量が多くなる場合により激しくなることが分かる。脂肪含量が2.5質量%の試料の流動性は、考慮される温度範囲内で大きな変化はない。脂肪含量が5質量%の試料は、40℃で流動性に大きな減少が見られ、脂肪含量が10質量%および15質量%の試料は、およそ30℃で流動性に激しい減少を示す。したがって、各脂肪濃度について、粉の構造化特性を引き出す温度があるように見える。試料の流動性は、脂肪含量の増加に伴って減少する。
【0056】
3週間保存した後の流動性および粘度
3週間保存した後の油中脂肪ブレンドの流動性および粘度のデータを表2に示す。これらの分析は、スプーンで試料を撹拌して浸出油を再度ブレンドし、均一混合物を得た後に行った。
【0058】
さらに、以下の
図3は、試料調製の直後(0週目)および3週間保存した後の試料の流動性の比較を示す。
図3a) 油中脂肪5質量%、および
図3b) 油中脂肪10質量%。
【0059】
前記の表に示す結果を見ると、流動性および粘度の結果が両方とも同じ結論に至るようになっていることから、両者が相互に深く関係していると結論付けることができる。しかし、試料A-3-Bおよび試料D-3が類似の流動性を示したのに対し、試料D-3の粘度は有意に低くなっている。各試料を肉眼で観察すると、試料D-3は流動性がより高く見え、したがって、試料A-3-Bより粘度が低い(粘度データと一致する)。
【0060】
低温で保存した試料は、流動性が高くなる(したがって、粘度が低くなる)ことが判明している。
【0061】
試料を混合温度より高温で保存する限り、低温で試料を混合することによって流動性/粘度が大きな影響を受けることはない。
【0062】
低温(10℃)で混合も保存も行った試料は、安定性試験の前後で流動性に大きな変化はなかった。
【0063】
高温(20℃および30℃)で混合および/または保存した試料は、流動性が大きく低減する。それにもかかわらず、40℃で保存した各試料は、保存後に高い流動性を示している。これは、温度が30℃から40℃に上昇した時に脂肪粉の固形脂肪の割合が89%から78%に減った(試験に使用した植物油の製品説明による)ことにより試料の流動性が高くなったためと考えられる。
【0064】
図3a)および3b)は、本発明の意外な影響を示している。すなわち温度の上昇に伴って流動性が一旦最小値を示し再び上昇することを示している。この予想外の影響により、所与の脂肪粒子タイプについて正しい保存温度を選択する重要性が示されている。保存温度が、流動性値が最小の範囲内にある場合、流動性が低過ぎて組成物が商業的受容性を得られない可能性がある。
【0065】
安定性の結果(油の浸出現象)
試料の安定性は、試料の肉眼検査および油の浸出現象の分析によって3週間評価した。安定性に対する、保存温度および混合温度の影響、ならびに脂肪濃度の影響を評価した。
【0066】
安定性試験で得た結果から、以下の結論に達した。
【0067】
保存温度の影響
保存温度が低いほど、試料はより白く、より不透明になる。
【0068】
保存温度が低くなるにつれ、油層の厚さが増し、これは粉の構造化能力が低くなり、結果として試料が不安定になることを意味する。しかし、40℃で保存した試料は、より低温で保存した試料より不安定である。これは、40℃での固形脂肪の割合は78%であるが、この割合がより低温時には89%を超えるためと考えられる。
【0069】
10質量%の脂肪を含有し、30℃で保存された試料は、油の浸出がなく、したがって最も安定性の高い試料である。
【0070】
混合温度の影響
試料B-2(TM=30℃、TS=30℃、脂肪含量5質量%)は、試験6日目に油の浸出があり、試料A-2-B(TM=10℃、TS=30℃、脂肪含量5質量%)は、1日目に浸出油があった。さらに、試料B-2の油層は厚さがより薄かった。したがって、混合温度の上昇は、油の浸出を減少し、したがって試料がより安定となる。しかし、この影響は、脂肪含量が10質量%の試料には当てはまらず、この場合、A-3-BおよびB-3の両試料に油の浸出は見られなかった。
【0071】
脂肪含量の影響
試料の脂肪含量が増えれば、試料はより白く、より不透明に見える。
【0072】
予想通り、試料は、脂肪含量が増えるとより安定である。