特許第5767355号(P5767355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767355
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】果実の処理装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 4/24 20060101AFI20150730BHJP
   A23N 4/12 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   A23N4/24
   A23N4/12
【請求項の数】1
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-52650(P2014-52650)
(22)【出願日】2014年3月14日
(62)【分割の表示】特願2010-141631(P2010-141631)の分割
【原出願日】2010年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-128284(P2014-128284A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2009-152531(P2009-152531)
(32)【優先日】2009年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003794
【氏名又は名称】押尾産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正昭
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特表平01−501441(JP,A)
【文献】 特開2000−093139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 4/24
A23N 4/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実を果肉部分及び種子部分に分離するための果実の処理装置であって、果実を収容する収容部と、果実を通過させることにより果肉部分及び種子部分に分離する分離部と、前記収容部に収容された果実を前記分離部に向って押し込む押込部とを備え、
前記押込部の先端には、前記収容部に収容された果実内に挿入されて同果実内の種子を挟持する挟持手段が設けられ
前記収容部は、前記挟持手段により果実内の種子が挟持された後に、当該収容部における前記分離部側の部分が開放されることを特徴とする果実の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果皮(外果皮)と種子との間に果肉層を有する果実(例えば、桃、あんず等の核果類、及びマンゴー、アボカド等の熱帯果樹類)を、果肉部分と種子部分とに分離するための果実の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実を特定の必要部分と不要部分とに分離する果実の処理装置として、特許文献1に開示される装置が知られている。特許文献1の処理装置は、筐体下部に配置される芯取り分割カッターと、同芯取り分割カッターの上部に配置される昇降動可能な押子とを備えている。そして、この芯取り分割カッターは、円筒状の外輪刃と、その内部中央に位置する六角筒状の芯取り刃と、芯取り刃から外輪刃に向って放射状に延びる複数の分割刃とから構成されている。特許文献1の処理装置では、分割カッター上に載置された果実を上記押子によって押下して分割カッターを通過させることにより、不要部分である中心部分と必要部分である周囲の果肉部分とに果実を分離する。より具体的には、不要部分である果実の中心部分は上記芯取り刃の内部を通過するとともに、必要部分である周囲の果肉部分は上記芯取り刃の外部を通過するようにして分離される。また、果肉部分については上記分割刃によって、さらに所定形状に分割される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−093139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、押し込み時における種子の位置ずれを抑制することのできる果実の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の果実の処理装置は、果実を果肉部分及び種子部分に分離するための果実の処理装置であって、果実を収容する収容部と、果実を通過させることにより果肉部分及び種子部分に分離する分離部と、前記収容部に収容された果実を前記分離部に向って押し込む押込部とを備え、前記押込部の先端には、前記収容部に収容された果実内に挿入されて同果実内の種子を挟持する挟持手段が設けられ、前記収容部は、前記挟持手段により果実内の種子が挟持された後に、当該収容部における前記分離部側の部分が開放されることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、押し込み時において、挟持手段が果実の種子を挟持することにより、押込部の先端に対して果実の種子を固定した状態で果実を分離部側へ押し込むことができる。そのため、押し込み時における種子の位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の果実の処理装置によれば、押し込み時における種子の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の処理装置の全体図。
図2】(a)は第1実施形態の押込体の側面図、(b)は第1実施形態の押込体の下面図。
図3】分離部の上面図。
図4図1のX’−X’線断面図。
図5図1のY’−Y’線断面図。
図6】(a)はマンゴーの種子の正面図、(b)はマンゴーの種子の側面図。
図7】第2実施形態の処理装置の全体図。
図8】(a)は第2実施形態の押込体の側面図、(b)は第2実施形態の押込体の下面図、(c)は別例の押込体の側面図、(d)は別例の押込体の下面図。
図9】(a)は第2実施形態の第1修正シリンダのヘッド部の斜視図、(b)は第2実施形態の第1修正シリンダのヘッド部の斜視図、(c)は第2実施形態の第2修正シリンダのヘッド部の斜視図、(d)は第2実施形態の判定用シリンダのヘッド部の斜視図。
図10図7のX’’−X’’線断面図。
図11図7のY’’−Y’’線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明をマンゴーの処理装置に具体化した第1実施形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
まず、第1実施形態の処理装置の処理対象となるマンゴーMについて、図6に基づいて説明する。マンゴーMには、その中心部分に側面視略四角形状の扁平な種子M1が含まれている。そして、種子M1と果皮との間に果肉M2が存在し、とくに扁平状をなす種子M1の両側に多くの果肉M2が付いた状態となっている。また、種子M1の隅部分には蔕につながる蔕部M3が存在する。この蔕部M3は通常、平面状に延びた形状となっているが(図6(b)の実線部参照)、稀に蔕部M3が湾曲した曲面状に延びた形状(歪んだ形状)となっている場合もある(図6(b)の鎖線部分参照)。このように蔕部M3が歪んだ種子M1を含むマンゴーMを、従来の処理装置にて種子部分と果肉部分とに分離処理すると、蔕部M3が切り取られて果肉部分側に混入する可能性が高くなる。
【0011】
また、図6(a)に示すように、種子M1の表面は繊維により覆われている(図6(b)については図示を省略している。)。この繊維は蔕部M3側から対角側の隅部に向って流れるように生えている。とくに、蔕部M3側の端縁から側縁にかけて比較的長い繊維が密集する密集部M4がある。処理装置にてマンゴーMを処理する際には、こうした繊維についても果肉部分側に混入させないことが求められる。
【0012】
次に、第1実施形態の処理装置について説明する。なお、本明細書では、水平面上における互いに直交する2方向をそれぞれX方向及びY方向とするとともに、同水平面に対して直交する方向をZ方向として記載する。図1に示すように、天板と一対の脚部とからなる下向溝状(下向コ字状)の基台1の上面の一隅部には、4本の支柱を有する枠状の支持柱2が立設されている。そして、図1及び図4に示すように、基台1の天板の中央部(支持柱2に対してX方向における前方)には、天板を上下に貫通する円形状の貫通孔が設けられている。同貫通孔には、マンゴーMを通過させることによりマンゴーMを種子部分と果肉部分とに分離する分離部3が取り付けられている。
【0013】
図3〜5に示すように、分離部3は、円筒状の外周部31と、外周部31の中央部に配される略楕円筒状の環状刃32と、環状刃32から外周部31に向って放射状に延びる6本の分割刃33とから形成されている。図3に示すように、略楕円筒状の環状刃32には、その一部を外方に向って延出させた延出部32aが設けられている。そして、分離部3の中心軸線P(以下、「軸線P」と記載する。)から延出部32a側の端縁までの長さL1は、軸線Pからその反対側の端縁までの長さL2よりも長くなっている(図3及び5参照)。この延出部32aは、分離部3に対してマンゴーMを通過させる際に、その種子M1の密集部M4と環状刃32との干渉を避けるために設けられる。
【0014】
また、外周部31の上端縁には取付用のフランジが形成されている。そして、分離部3は基台1の貫通孔に対して上方から挿入されるとともに、延出部32a側の端縁がY方向後方側に位置するようにして基台1に対して回転不能に取り付けられている。なお、環状刃32及び分割刃33の上縁部分は先端が鋭利となるように加工仕上げされた状態となっている(図示略)。
【0015】
また、図1、4及び5に示すように、支持柱2の内側面には、X方向前方に向って延びるとともに、水平な載置面4aを有する第1載置台4が取り付けられている。また、支持柱2のY方向後方側の外側面には、X方向前方に向って延びるとともに、基台1側に向かって下方に傾斜する載置面5aを有する第2載置台5が取り付けられている。第2載置台5の載置面5aは、第1載置台4の載置面4aよりも上方に位置するように設けられている。
【0016】
第1載置台4の中央部には、収容筒6を取り付けるための取付孔4bが分離部3の上方に位置するように形成されている。取付孔4bに取り付けられる収容筒6は、円筒状に形成されるとともに、取付孔4bに取り付けた状態においてその中心軸が軸線Pと重なるように構成されている。図1及び4に示すように、収容筒6の上部は上端縁に向かって拡径するテーパ状に形成されている。また、収容筒6の周壁中央部には一対の挿通孔6aがX方向に対向するように設けられている。
【0017】
図1に示すように、支持柱2のX方向前方側の外側面上部には、Z方向(上下方向)にスライド移動可能なスライドテーブル8aを有する押込用シリンダ8が取付板7を介して取り付けられている。スライドテーブル8aには、Z方向に延びる棒状の軸体91と、軸体91の先端に設けられる押込体92とからなる押込部9が固定されている。押込部9はスライドテーブル8aのスライド移動に伴ってZ方向にスライド移動することにより、収容筒6及び環状刃32内まで押込体92を進出させた押込位置と、収容筒6から先端を退避させた退避位置とをとることができる。なお、押込部9は、軸線Pに沿ってZ方向にスライド移動するように構成されている。つまり、押込部9の押し込み方向は軸線Pに一致する。
【0018】
図1及び2に示すように、押込体92は、分離部3の環状刃32と略同形の楕円柱形状をなし、環状刃32内を挿通可能な大きさに形成されている。そして、押込体92の先端面には、X方向に延びる3本の溝93a〜93cが並設されるとともに、同溝には板状の押込板94a〜94cが取り付けられている。各押込板94a〜94cはそれぞれZ方向における長さが異なり、Y方向前方側に向かって順にその長さが長くなるように形成されている(図2(a)参照)。つまり、押込板94a、押込板94b、押込板94cの順にZ方向における長さが長くなる。
【0019】
また、押込体92の先端面には、種子M1を挟持する挟持手段として、Z方向に延びる4本の挟持ピン95が突設されている。挟持ピン95は押込板94aと押込板94bとの間、及び押込板94bと押込板94cとの間にそれぞれ2本ずつ配置され、全体として四角形の各頂点をなすように配置されている(図2(b)参照)。なお、挟持ピン95は各押込板94a〜94cよりもZ方向における長さが長くなるように形成されている。
【0020】
さらに、押込用シリンダ8には、押込板94a〜94cと収容部に収容されたマンゴーMの種子M1との接触を感知する第1感知手段(例えば、ロードセル)が設けられている(図示略)。具体的には、第1感知手段は押込板94a〜94cに対して、予め設定された所定値以上の負荷が作用した場合に、押込板94a〜94cの先端と種子M1とが接触した状態と判断するように構成されている。なお、上記所定値は押込板94a〜94cが果肉M2を貫通する際に作用する負荷よりも大きい値に設定される。
【0021】
図1に示すように、基台1の上面において分離部3のY方向前方側にはY方向にスライド移動可能なヘッド部10aを有する遮蔽用シリンダ10が配置されている。このヘッド部10aには、収容筒6と分離部3との間を遮蔽するための遮蔽板10bが取り付けられている。この遮蔽板10bはヘッド部10aのスライド移動に伴ってY方向にスライド移動することにより、収容筒6と分離部3との間を遮蔽する遮蔽位置と、収容筒6と分離部3との間を開放する開放位置をとることができる。図1は遮蔽板10bが開放位置にある状態を示し、図4及び5は遮蔽板10bが遮蔽位置にある状態を示している。なお、収容筒6と遮蔽板10bとによって果実(マンゴーM)を収容する収容部が構成される。
【0022】
図1及び4に示すようにまた、基台1の上面には、分離部3を挟んでX方向に対向する一対の判定用シリンダ11、12が配置されている。判定用シリンダ11、12は判定手段として機能する。判定用シリンダ11、12は、その配置位置が異なる点を除いて同様に構成される部材である。そのため、以下では判定用シリンダ11についてのみ説明する。
【0023】
図4に示すように、判定用シリンダ11はX方向にスライド移動可能なヘッド部11aを有するとともに、ヘッド部11aには、X方向に(分離部3の中心軸線Pに向って)延びる針状の判定部材11bが取り付けられている。そして、判定部材11bはヘッド部11aのスライド移動に伴ってX方向にスライド移動することにより、収容部内に先端を進出させた判定位置(図4の2点鎖線部分)と、収容部から先端を退避させた退避位置(図4の実線部分)とをとることができる。
【0024】
なお、判定位置は、X方向については、判定部材11bの先端位置が分離部3の環状刃32のZ方向(上方向)における延長線上となる位置に設定される。また、Z方向においては、所定の規格のマンゴーMを、蔕を下側にして収容部に収容したときに、種子M1の蔕部M3に対応する位置に設定される。さらに、Y方向については、軸線PよりもY方向前方側の位置に設定される。
【0025】
また、判定用シリンダ11には、判定位置にある判定部材11bと収容部に収容されたマンゴーMの種子M1との接触を感知する第2感知手段(図示略)が設けられている。感知手段は判定部材11bに対して、予め設定された所定値以上の負荷が作用した場合に、判定部材11bの先端と種子M1とが接触した状態と判断するように構成されている。そして、判定用シリンダ11は感知手段に基づく判定部材11bと種子M1との接触の有無の情報を制御装置(図示略)に出力する。なお、上記所定値は判定部材11bが果肉M2を貫通する際に作用する負荷よりも大きい値に設定される。
【0026】
図1及び4に示すように、第1載置台4の載置面4aには、収容筒6を挟んでX方向に対向する一対の第1修正用シリンダ13、14が配置されている。第1修正用シリンダ13、14は修正手段として機能する。第1修正用シリンダ13、14は、その配置位置が異なる点を除いて同様に構成される部材である。そのため、以下では第1修正用シリンダ13についてのみ説明する。
【0027】
図4に示すように、第1修正用シリンダ13は、X方向にスライド移動可能なヘッド部13aを有するとともに、ヘッド部13aには、X方向に(分離部3の中心軸線Pに向って)延びる針状の第1修正部材13bが取り付けられている。第1修正部材13bの先端は、収容筒6に形成される挿通孔6a対向するように配置されている。そして、第1修正部材13bはヘッド部13aのスライド移動に伴ってX方向にスライド移動することにより、挿通孔6aを通過して収容筒6内に先端を進出させた修正位置(図4の2点鎖線部分)と、収容筒6から先端を退避させた退避位置(図4の実線部分)とをとることができる。
【0028】
なお、修正位置は、X方向については、第1修正部材13bの先端位置が、分離部3の環状刃32のZ方向(上方向)延長線上よりも軸線P側であり、かつ軸線Pに達しない範囲内となる位置で任意に設定することができる。Y方向については軸線Pと重なる位置に設定される。また、Z方向については、所定の規格のマンゴーMを、蔕を下側にして収容部に収容したときに、種子M1の上端部側(蔕部M3と反対側の端部側)に対応する位置に設定される。
【0029】
図1及び5に示すように、第2載置台5の載置面5aには、第2修正用シリンダ15が配置されている。第2修正用シリンダ15は修正手段として機能する。図5に示すように、第2修正用シリンダ15は、収容筒6の開口に向ってスライド移動可能なヘッド部15aを有するとともに、ヘッド部15aには収容筒6の開口に向って(分離部3の中心軸線Pに向って)延びる針状の第2修正部材15bが取り付けられている。そして、第2修正部材15bはヘッド部15aのスライド移動に伴ってスライド移動することにより、収容筒6内に先端を進出させた修正位置(図5の2点鎖線部分)と、収容筒6から先端を退避させた退避位置(図5の実線部分)とをとることができる。
【0030】
なお、修正位置は、Y方向については、第2修正部材15bの先端位置が、分離部3の環状刃32のZ方向(上方向)延長線上よりも軸線P側であり、かつ軸線Pに達しない範囲内となる位置で任意に設定することができる。X方向については、軸線Pと重なる位置に設定される。また、Z方向については、所定の規格のマンゴーMを、蔕を下側にして収容部に収容したときに、種子M1の上端部側(蔕部M3と反対側の端部側)に対応する位置に設定される。
【0031】
また、図4及び5に示すように、基台1の下側には、分離部3の下方に位置するように果実受け16が配置されている。果実受け16は分離部3から落下するマンゴーMの種子部分及び果肉部分を収集する。
【0032】
次に、第1実施形態の処理装置によってマンゴーを処理する態様について具体的に説明する。
(収容工程)
まず、押込部9、判定部材11b、12b、第1修正部材13b、14b及び第2修正部材15bがそれぞれ退避位置に位置するとともに、遮蔽板10bが遮蔽位置に位置する状態(初期状態)で、収容部に対して皮むき処理されたマンゴーMが投入される。このときマンゴーMは蔕側を下方に向けるとともに、蔕をY方向前方側に向けるようにした状態で収容部内に収容される(図5参照)。つまり、マンゴーMの蔕を分離部3側に向けるとともに、密集部M4が環状刃32の延出部32a側に位置するように配置する。これにより、後の押し込み工程において、マンゴーMが分離部3を通過する際に、種子M1の繊維の流れに対して順方向に環状刃が入ることになる。また、密集部M4が環状刃32の延出部32aを通過する。
【0033】
(第1修正工程)
次に、軸線Pに対する種子M1のX方向の傾きを修正する第1修正工程が行なわれる(図4参照)。一方の第1修正用シリンダ13が駆動されて、第1修正部材13bが修正位置へ移動する。そして、第1修正部材13bは、収容部内に収容されたマンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に突き当たるとともに、同種子M1を軸線P側へX方向後方側から付勢する。続いて、他方の第1修正用シリンダ14が駆動されて、第1修正部材14bが修正位置へ移動する。そして、第1修正部材14bは、マンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に突き当たるとともに、同種子M1を軸線P側へX方向前方側から付勢する。これらの修正動作により、X方向における種子M1の位置が軸線P側に向って修正される。同時に、種子M1の姿勢が軸線Pに沿って直立する状態へと修正される、つまり、軸線Pに対する種子M1のX方向における傾きが修正される。
【0034】
(第2修正工程)
次に、軸線Pに対する種子M1のY方向の傾きを修正する第2修正工程が行なわれる(図5参照)。第2修正用シリンダ15が駆動されて、第2修正部材15bが修正位置へ移動する。そして、第2修正部材15bは、収容部に収容されたマンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に突き当たるとともに、同種子M1を軸線P側へY方向後方側から付勢する。この修正動作により、Y方向における種子M1の位置が軸線P側に向って修正される。同時に、種子M1の姿勢が軸線Pに沿って直立する状態へと修正される、つまり、軸線Pに対する種子M1のY方向における傾きが修正される。なお、蔕側を下方に向けるとともに、蔕をY方向前方側に向けた状態で収容されたマンゴーMは比較的Y方向後方側へ傾きやすい。そのため、種子M1をY方向後方側から付勢するように第2修正用シリンダ15を配置している。
【0035】
(判定工程)
続いて、収容部に収容されているマンゴーMについて、その種子M1が分離部3を通過可能な状態であるか否かを判定する(分離部3に対して種子M1が通過可能か否かを判定する)判定工程が行なわれる(図4参照)。両判定用シリンダ11、12が駆動されて判定部材11b、12bが判定位置へ移動する。このとき、判定位置にある判定部材11b、12bと種子M1との接触が第2感知手段によって検出された場合、両判定用シリンダ11、12はその検出情報(検出あり)を制御装置に出力する。そして、制御装置は種子M1が分離部3を通過不能な状態にあると判定して、続く処理動作を中断するとともに警報音(ブザー)等によって作業者に対する告知を行なう。
【0036】
一方、判定位置にある判定部材11b、12bと種子M1との接触が第2感知手段によって検出されなかった場合には、両判定用シリンダ11、12はその検出情報(検出なし)を制御装置に出力する。そして、制御装置は、種子M1が分離部3を通過可能な状態にあると判定して続く処理動作を続行させる。
【0037】
(押し込み工程)
次にマンゴーMを分離部3に向って押し込むとともに、マンゴーMを種子部分と果肉部分とに分離する押し込み工程が行なわれる(図4及び5参照)。押込部9が収容部内のマンゴーMに向って軸線Pに沿って降下するとともに、その先端の押込体92がマンゴーの果肉M2内に進入する。そして、押込体92の挟持ピン95が種子M1上端を挟持するとともに、押込板94a〜94cが同種子M1に当接した状態(図4及び5の2点鎖線部分)となると、押込板94a〜94cと種子M1との接触を第1感知手段が感知して押込部9の降下が一旦停止する。
【0038】
続いて、判定部材11b、12b、第1修正部材13b、14b及び第2修正部材15bが退避位置に退避するとともに、遮蔽板10bが開放位置に移動する。そして、収容筒6と分離部3との間が開放された状態にて、押込部9が再び降下して、その先端に挟持されたマンゴーMを分離部3に向って押し込む。これにより、マンゴーMは環状刃32にて種子部分と果肉部分とに分離されるとともに、果肉部分は分割刃33にてさらに6分割される。そして、分離部3を通過したマンゴーMの種子部分及び果肉部分は、果実受け16により落下収集される。
【0039】
次に第1実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)処理装置は、収容部に収容されたマンゴーMに対して、マンゴーM内の種子M1が分離部3を通過可能な状態にあるか否かを判定する判定用シリンダ11、12を備えている。この構成によれば、マンゴーM内の種子M1が分離部3を通過可能であるか否か、即ち、押し込み工程における押し込み動作時に種子M1と分離部3とが干渉するか否かが判定される。そのため、内部の種子M1が分離部3を通過不能な状態にあるマンゴーMを、押し込み工程前に判別することができる。そのため、そのようなマンゴーMに対しては、その除去や位置の修正を行なうことが可能となる。これにより、種子M1と分離部3とが干渉し得る状態で押し込み工程がなされてしまい、果肉部分側へ種子片が混入することを抑制できる。
【0040】
(2)判定用シリンダ11、12の判定位置は、種子M1の蔕部M3に対応する位置に設定されている。そのため、蔕部M3が歪んだ種子M1を含むマンゴーM(図6(b)の鎖線部分参照)であっても、その蔕部M3が分離部3を通過可能であるか否かを判定することができる。
【0041】
(3)処理装置は、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1の位置及び姿勢を修正する第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ15を備えている。この構成によれば、種子M1が分離部3に干渉することなく通過する状態(位置や姿勢)となるように、収容部内におけるマンゴーMの収容状態が修正される。したがって、判定用シリンダ11、12によって不可判定がなされるケースが低減される。
【0042】
(4)第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ15は、押込部9の押し込み方向(軸線Pに沿った方向)に対する種子M1の傾きを修正するように構成されている。この構成によれば、扁平形状をなすマンゴーMの種子M1の姿勢を、分離部3を通過可能な状態へ効率的に修正することができる。
【0043】
(5)第1修正用シリンダ13、14は、種子M1のX方向における傾きを修正するように構成される。そして、第2修正用シリンダ15は、種子M1のY方向における傾きを修正するように構成されている。この構成によれば、種子M1が分離部3に干渉することなく通過する状態となるように、マンゴーMの姿勢をより高精度に修正することができる。
【0044】
(6)修正工程では、第1修正用シリンダ13による修正動作、第1修正用シリンダ14による修正動作、及び第2修正用シリンダ15による修正動作が順に行なわれる。この構成によれば、各シリンダの修正動作を同時に行なう構成と比較して、種子の状態(位置及び姿勢)をより確実に所定の状態へ修正することができる。
【0045】
(7)押込体92の先端面には、挟持手段としての挟持ピン95が設けられている。この構成によれば、押し込み工程時において、挟持ピン95が種子M1を挟持した状態、つまり、押込部9に種子M1を固定した状態でマンゴーMを分離部3側へ押し込むことができる。したがって、押し込み工程時における種子M1の位置ずれを抑制することができる。
【0046】
(8)押込体92の先端面には、押し込み工程時にマンゴーMの果肉M2内に挿入されて、種子M1を押し込む押込板94a〜94cが設けられている。そして、押し込み工程時において、押込部9は種子M1を分離部3側へ押し込むように構成されている。果肉M2を押し込むように構成した場合には果肉M2が押し潰されて崩れてしまう可能性があるが、上記構成によれば、そうした果肉M2の崩れが生じ難くなる。
【0047】
(9)一般に、押込体92と対向するマンゴーMの種子M1部分(蔕側と反対側の端部)の形状は一方に傾斜する斜面状になっている。この点について、押込板94a〜94cは、Z方向の長さが異なっているため、押込体92は、より早いタイミングでより広範囲に種子M1を押し込むことが可能となる。
【0048】
(10)環状刃32の一端には、その一部を外方に延出させた延出部32aが設けられている。これにより、分離部3に対してマンゴーMを通過させる際に、種子M1の密集部M4が環状刃32に干渉し難くなる。これにより、環状刃32によって密集部M4の繊維が切断されることが抑制され、引いては、果肉部分側に繊維が混入することを抑制できる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、図7〜11に基づいて、第2実施形態の処理装置を第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0050】
図7に示すように、第2実施形態の処理装置では、支持柱2、押込用シリンダ8、第2修正用シリンダ15、及び遮蔽用シリンダ10の配置位置が変更されている。具体的には、分離部3に対して支持柱2及び押込用シリンダ8をY方向後方側に配置するとともに、第2修正用シリンダ15及び遮蔽用シリンダ10を支持柱2の内部に収容するように配置している。
【0051】
図7及び11に示すように、第2修正用シリンダ15は支持柱2の内部において遮蔽用シリンダ10の上方に水平に配置され、第2修正用シリンダ15のヘッド部15aを収容筒6に向かってY方向にスライド移動可能としている。そして、同ヘッド部15aに取り付けられる第2修正部材15bは、ヘッド部15aとともにY方向にスライド移動することにより、収容筒6に新たに設けた挿通孔6bを通過して収容筒6内に先端を進出させた修正位置(図11の2点鎖線部分)と、収容筒6から先端を退避させた退避位置(図11の実線部分)とをとることができる。
【0052】
また、図7及び10に示すように、第2実施形態の処理装置では、第1修正用シリンダの配置個数が変更され、第1修正用シリンダ13、14がそれぞれ上下2段に水平に配置されている。上側に配置される第1修正用シリンダ13、14のZ方向における配置位置は、第2修正用シリンダ15と同じとなるように設定されている。
【0053】
さらに、第2実施形態の処理装置では、押込体92、第1修正用シリンダ13、14のヘッド部13a、14aに取り付けられる第1修正部材13b、14b、第2修正用シリンダ15のヘッド部15aに取り付けられる第2修正部材15b、及び判定用シリンダ11、12のヘッド部11a、12aに取り付けられる判定部材11b、12bの構成が変更されている。
【0054】
図8(a)、(b)に示すように、第2実施形態の押込体92は、下方に開口を有する四角箱状をなし、長四角状の底壁96aと、底壁96aの四隅に配置される4本の挟持ピン95と、挟持ピン95間を連結する4枚の側壁96b〜eとから形成されている。Y方向において対向する一対の側壁96b、96dはZ方向の長さが異なるように形成されている。そして、X方向において対向する一対の側壁96c、96eは、側壁96b側から側壁96d側へ向かってZ方向の長さが徐々に長くなるように形成されている。
【0055】
第2実施形態の第1修正部材13b、14bのうち、上側に位置する第1修正用シリンダ13、14に取り付けられる第1修正部材13b、14bは、2本の針状の部材により形成されている(図9(a)参照)。下側に位置する第1修正用シリンダ13、14に取り付けられる第1修正部材13b、14bは、L字状に屈曲した板状の部材により形成されている(図9(b)参照)。また、同板状の部材の先端は、鋭利となるように加工されている。
【0056】
図9(c)に示すように、第2実施形態の第2修正部材15bは、棒状部材の先端に先端面側が凹曲面状をなす板状部材を取り付けたものである。なお、収容筒6に設けられる挿通孔6a、6bは、第1修正部材13b、14b及び第2修正部材15bが挿通可能な形状に形成されている(図10及び11参照)。図9(d)に示すように、第2実施形態の判定部材11b、12bは、ヘッド部11a、12a側から垂直に延びる平板状の部材であり、その先端が鋭利となるように加工されている。
【0057】
図10に示すように、基台1の天板には、分離部3を収容筒6の下方位置(収容部に対向する位置)から退避させるための退避手段が設けられている。この退避手段は、分離部3を含む基台1の天板の一部を下方側へ向けて回動させる回動装置1aにより構成されている。回動装置1aは、分離部3を収容筒6の下方に位置させる処理位置(図10の実線部分)と、分離部3を含む基台1の天板の一部を下方側へ向けて回動させて、分離部3を収容筒6の下方から退避させた退避位置(図10の2点鎖線部分)とをとることができる。
【0058】
図10及び11に示すように、押込部9の軸体91の先端と押込体92との間には、表面に樹脂層97aが形成された板材97が、樹脂層97aを押込体92側にして取り付けられている。この板材97は、収容筒6を通過可能な大きさ且つ分離部3の環状刃32よりも大きくなるように形成されている。
【0059】
次に、第2実施形態の処理装置によってマンゴーを処理する態様について具体的に説明する。
(収容工程)
第1実施形態の処理装置の収容工程と同様であり、収容部に対して皮むき処理されたマンゴーMが、蔕側を下方に向けるとともに、蔕をY方向前方側に向けるようにした状態で収容される(図11参照)。
【0060】
(第1修正工程及び第2修正工程)
第2実施形態の処理装置では、まず、軸線Pに対する種子M1のY方向の傾きを修正する第2修正工程から行われる(図11参照)。第2修正用シリンダ15が駆動されて、第2修正部材15bが修正位置へ移動する。そして、第2修正部材15bは収容部に収容されたマンゴーMの果肉M2の上部を軸線P側へY方向後方側から付勢する。この修正動作により、Y方向におけるマンゴーM及び種子M1の位置が軸線P側に向かって修正される。同時に、マンゴーM及び種子M1の姿勢が軸線Pに沿って直立する状態へと修正される。
【0061】
続いて、押込部9が収容部内のマンゴーMに向って軸線Pに沿って降下するとともに、その先端の押込体92がマンゴーMに接触する位置まで下降する(図10及び11の二点鎖線部分)。このとき、押込体92がマンゴーMを下方に押圧することで、マンゴーMの傾倒が防止される。その後、第2修正部材15bが退避位置へ退避する。
【0062】
次に、軸線Pに対する種子M1のX方向の傾きを修正する第1修正工程が行なわれる(図10参照)。まず、上側の第1修正用シリンダ13、14が駆動されて、第1修正部材13b、14bが修正位置へ移動する。そして、第1修正部材13b、14bは、収容部内に収容されたマンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に突き当たるとともに、同種子M1の上部を軸線P側へX方向前方側及び後方側から付勢する。このとき、上側の一対の第1修正用シリンダ13、14のうち、一方側の第1修正用シリンダ13が先に駆動されてマンゴーMの種子M1をX方向後方側から付勢し、その後、他方側の第1修正用シリンダ14が駆動されてマンゴーMの種子M1をX方向前方側から付勢する。
【0063】
次に、下側の第1修正用シリンダ13、14が駆動されて、第1修正部材13b、14bが修正位置へ移動する。そして、第1修正部材13b、14bは、収容部内に収容されたマンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に突き当たるとともに、同種子M1の下部を軸線P側へX方向前方側及び後方側から付勢する。このとき、下側の一対の第1修正用シリンダ13、14のうち、一方側の第1修正用シリンダ13が先に駆動されてマンゴーMの種子M1をX方向後方側から付勢し、その後、他方側の第1修正用シリンダ14が駆動されてマンゴーMの種子M1をX方向前方側から付勢する。
【0064】
これらの修正動作により、X方向における種子M1の位置が軸線P側に向って修正される。同時に、種子M1の姿勢が軸線Pに沿って直立する状態へと修正される。
(判定工程)
両判定用シリンダ11、12によって判定位置(図10の2点鎖線部分)へ移動した判定部材11b、12bと、収容部に収容されているマンゴーMの種子M1との接触の有無により、マンゴーMの種子M1が分離部3を通過可能な状態であるか否かを判定する。第2実施形態の処理装置では、X方向における判定位置が異なっており、判定部材11bの先端位置が分離部3の環状刃32のZ方向(上方向)における延長線上よりも軸線P側(内側)に設定されている。なお、判定工程における具体的処理は、上記判定位置の違いを除いて、第1実施形態の処理装置の判定工程と同様である。
【0065】
(押し込み工程)
マンゴーMを分離部3に向って押し込むとともに、マンゴーMを種子部分と果肉部分とに分離する押し込み工程が行なわれる(図10及び11参照)。まず、第1修正部材13b、14bが退避位置に退避し、その後、判定部材11b、12bが退避位置に退避する。なお、判定部材11b、12bは自身が退避位置に退避するまでの期間、継続的にマンゴーMの種子M1との接触を検出する。つまり、判定部材11b、12bよりも先に退避位置へ退避する第1修正部材13b、14bの退避時及び退避後の一定時間においても、マンゴーMの種子M1との接触を検出可能となっている。そして、マンゴーMの種子M1との接触が検出された場合には、押し込み工程を停止するように制御している。たとえば、第1修正部材13b、14bが退避することにより、支えが失われてマンゴーMが傾倒してしまい、種子M1が分離部3を通過不能となる場合がある。このような場合にも、マンゴーMの傾倒に伴う種子M1と判定部材11b、12bとの接触を検出して、押し込み工程が停止されることで、分離部3を通過不能となるほどにマンゴーMが傾倒した状態で押し込み工程が行われることを抑制できる。
【0066】
続いて、押込部9が収容部内のマンゴーMに向って軸線Pに沿ってさらに降下して、マンゴーMを分離部3に向って押し込む。これにより、マンゴーMは環状刃32にて種子部分と果肉部分とに分離されるとともに、果肉部分は分割刃33にてさらに6分割される。なお、押し込み途中において、第1実施形態のように押込体92がマンゴーMの果肉M2内に進入し、押込体92の挟持ピン95が種子M1上端を挟持する。
【0067】
押込部9は板材97の樹脂層97aと分離部3(特に環状刃32)とが当接する位置まで降下する。押込部9の樹脂層97aと分離部3との間にマンゴーMを挟みつつ、押込部9の樹脂層97aと分離部3(特に環状刃32)とが当接する位置まで押込部9を降下させることにより、マンゴーMがより確実にスライスされる。さらに、押込部9の樹脂層97aと分離部3とが当接することにより、分離部3にマンゴーMの切りかすが残存することを抑制できる。そして、分離部3を通過したマンゴーMの種子部分及び果肉部分は、果実受け16により落下収集される。
【0068】
また、上記判定工程において種子M1が分離部3を通過可能であると判定された場合にも、何らかの原因(例えば、判定後の位置ずれ)によって、押し込み工程時にマンゴーMの種子M1と分離部3とが接触する場合がある。そこで、第2実施形態の処理装置では、マンゴーMを分離部3に向って押し込む際に、種子M1と分離部3との接触を第1感知手段によって検出するように構成されている。第1感知手段は、押込体92に対して、予め設定された所定値以上の負荷が作用した場合に種子M1と分離部3とが接触したと判断する。
【0069】
種子M1と分離部3との接触が第1感知手段により検出された場合、第1感知手段はその情報を制御装置(図示略)に出力する。制御装置は基台1に設けられた回動装置1aを作動させて分離部3を退避位置に移動させた後、押込部9による押し込み動作を継続させる。これにより、種子M1が分離部3に接触したマンゴーMは分離部3を通過することなく、果実受け16により落下収集される。
【0070】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2実施形態においては、以下のような作用効果が得られる。
(11)第1修正用シリンダ13、14を上下2段に配置している。これにより、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1は、X方向における両側及びその上下の合計4箇所で位置及び姿勢が修正される。そのため、マンゴーMの種子M1の位置及び姿勢の修正精度が向上する。
【0071】
(12)判定用シリンダ11、12のX方向における判定位置が、分離部3の環状刃32のZ方向における延長線上よりも軸線P側(内側)に設定されている。これにより、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1が分離部3を通過可能であるか否かをより厳格に判定することができる。よって、押し込み工程時に種子M1と分離部3とが接触する可能性をより低くすることができる。
【0072】
(13)押込体92の各挟持ピン95が側壁96b〜eによって連結されている。挟持ピン95にマンゴーMの種子M1を挟持させる動作を繰り返し行うと、挟持ピン95の先端が徐々に開いていく傾向があるが、上記構成によれば、挟持ピン95間を連結する側壁b〜eが挟持ピン95を支持することにより、挟持ピン95の先端の開きが抑制される。
【0073】
(14)第2実施形態では、押し込み工程時に、マンゴーMの種子M1と分離部3との接触を第1感知手段により検出する。そして、マンゴーMの種子M1と分離部3との接触が検出された場合には、退避手段によって分離部3を収容部に対向する位置から退避させるように構成している。
【0074】
マンゴーMの種子M1と分離部3とが接触したにもかかわらず、強引に分離部3を通過させると、分割されたマンゴーMの果肉に種子M1の欠片が混入する。この場合、種子M1の欠片が混入した果肉を仕分ける必要があるが、分割処理された果肉のなかで種子M1の欠片が混入した果肉を見つけることは非常に困難である。
【0075】
上記構成によれば、マンゴーMの種子M1と分離部3との接触が検出された場合、分離部3が退避位置に移動することによって、マンゴーMは分離部3を通過することなく果実受け16に落下収集される。つまり、種子M1と分離部3との接触が検出されたマンゴーMは分割処理されることなくそのままの状態で落下収集される。そのため、作業者は通常の分割処理がなされた果肉のなかに混在する分割処理ができなかったマンゴーMを一目で見つけることができる。なお、分割処理ができなかったマンゴーMは、作業者が手作業で分割処理するなど、別途処理するようにすればよい。また、上記構成によれば、分離部3とマンゴーMの種子M1との干渉、例えば強引な種子M1の切断を回避することができ、分離部3の破損や劣化を抑制することができる。
【0076】
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記各実施形態を変更することも可能である。
【0077】
・ 上記各実施形態はマンゴーMを処理対象とする処理装置であったが、処理対象とする果実はマンゴーMに限られるものではない。処理対象とする果実は、果皮(外果皮)と種子との間に果肉層を有する果実であればよく、例えば、桃、あんず等の核果類、及びアボカド等の熱帯果樹類が挙げられる。
【0078】
・ 上記各実施形態の処理装置では、分離部3、収容部、押込部9、判定用シリンダ11、12、第1修正用シリンダ13、14、及び第2修正用シリンダ15の配置位置及びその動作に関して適宜変更してもよい。たとえば、上記各実施形態では、X−Y平面を水平面とするように構成していたが、X−Z平面又はY−Z平面を水平面とするように構成してもよい。
【0079】
・ 上記各実施形態では、判定手段として判定用シリンダ11、12を採用したが、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1の状態を検出可能であれば、判定手段はどのようなものであってもよい。例えば、判定手段として電磁波を利用したセンサを用いてもよい。
【0080】
・ 判定用シリンダ11、12の数及びその配置位置は特に限定されるものではない。例えば、Y方向において対向するように配置してもよいし、分離部3の周囲に放射状に複数配置してもよい。また、Z方向に複数配置してもよい。
【0081】
・ 判定用シリンダ11、12の判定位置は、分離部3の環状刃32のZ方向における延長線上となる位置、又はその位置よりも軸線P側(内側)となる位置であればどのような位置に設定されていてもよい。たとえば、マンゴーMの上部、すなわち収容筒6の上部側に判定用シリンダ11、12を追加し、マンゴーMの上部においても種子M1が分離部3を通過可能であるか否かを判定するように構成してもよい。この場合、Z方向の広範囲で種子M1の位置を検出可能となることから、判定用シリンダ11、12に取り付けられる判定部材11b、12bは、X−Y面に直交する縦向きの板状に形成することが好ましい。
【0082】
・ 上記各実施形態では、第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ15を設けていたが、両シリンダを備えない構成としてもよいし、一方のみを備える構成としてもよい。
【0083】
・ 上記各実施形態では、第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ15は、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1の位置及び姿勢を修正するように構成していたが、位置又は姿勢の一方のみを修正するように構成してもよい。
【0084】
・ 修正用シリンダ(第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ)の数及びその配置位置は特に限定されるものではない。例えば、X方向及びY方向以外の方向における種子M1の傾きを修正する第3修正用シリンダをさらに設けてもよい。また、第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダをZ方向に複数配置してもよい。
【0085】
・ 第1修正用シリンダ13、14及び第2修正用シリンダ15の修正位置は特に限定されるものではなく、対象とする果実の種子M1の形状や分離部3(環状刃32)の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0086】
・ 修正工程において、各修正用シリンダによる修正動作の順番は特に限定されるものではなく、どのような順番であってもよい。また、各修正用シリンダが同時に修正動作を行なうように構成してもよい。たとえば、第1実施形態において、第2修正用シリンダ15による修正動作、第1修正用シリンダ13による修正動作、第1修正用シリンダ14による修正動作の順で行ってもよいし、第1修正用シリンダ13による修正動作と第1修正用シリンダ14による修正動作とを同時に行ってもよい。
【0087】
・ 押し込み工程において、判定部材11b、12b、第1修正部材13b、14b及び第2修正部材15bの退避位置への退避動作の後に押込部9の押し込み動作(降下)が行なわれるように構成してもよいし、同退避動作と同時に押込部9の押し込み動作が行なわれるように構成してもよい。たとえば、押込部9の押し込み動作開始時点を基準として、予め設定された所定時間経過後に上記退避動作が行なわれるように構成してもよい。この場合、上記所定時間は、押込部9の押し込み動作開始から押込部9がマンゴーMに達するまでの時間内に設定することが好ましい。
【0088】
・ 分離部3において、環状刃32の形状は特に限定されるものでなく、例えば、円筒状及び多角筒状であってもよい。また、延出部32aを設けない構成としてもよい。
・ 分離部3において、果肉部分を分割するための分割刃33の数、配置位置及び形状は特に限定されるものではなく、所望の分割形状に応じて適宜設定すればよい。また、分割刃33を設けない構成としてもよい。
【0089】
・ 挟持手段は、針状の挟持ピン95に限られるものではなく、果肉M2内に挿入されて内部の種子M1を挟持可能な構成であればどのようなものであってもよい。例えば、一対の板状の挟持板により挟持手段を構成してもよい。また、挟持手段を設けない構成としてもよい。
【0090】
・ 上記各実施形態では、押込体92に対して、果肉M2内に挿入されて種子M1を押し込むための押込手段として、押込板94a〜94c、又は底壁96a及び側壁96b〜eを設けていたが、押込手段の構成はこれに限られるものではない。例えば、針状の押込ピンにより押込手段を構成してもよい。また、押込体92に対して押込手段を設けない構成としてもよい。
【0091】
・ 第1実施形態において、押込板94a〜94cの数、寸法、及び形状を変更してもよい。例えば、押込板の数は1枚又は2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。押込板94a〜94cのZ方向の長さについては、全て同じ長さに設定してもよいし、一部の押込板の長さのみを長くする又は短くするように設定してもよい。押込板94a〜94cの形状を円板状や三角形や五角形等の多角板状に形成してもよい。
【0092】
・ 押込体92を図8(c)、(d)に示すように構成してもよい。つまり、下方に開口を有する四角箱状の押込部材98と、押込部材98の内側四隅に配置される4本の挟持ピン95とから押込体92を構成してもよい。この場合にも、長期使用に伴う挟持ピン95の先端の開きを抑制することができる。
【0093】
・ 上記各実施形態では、押し込み工程において、マンゴーMの種子M1を押し込むように構成していたが、果肉M2を押し込むように構成してもよいし、種子M1及び果肉M2の両方を押し込むように構成してもよい。
【0094】
・ 分離部3、収容筒6及び押込体92を取付・取外し可能に構成し、果実の種類や規格(大きさ)等に応じて各部材を交換できるように構成してもよい。
・ 上記各実施形態の処理装置を、収容部へ果実を輸送・供給するための第1輸送手段、及び処理装置により分離処理された果実の果肉部分及び種子部分を所定箇所まで輸送する第2輸送手段と組み合わせて果実の処理システムとしてもよい。この場合には、果実受け16は省略される。このように構成した場合には、大量の果実を効率的に処理することが可能となる。なお、第1輸送手段及び第2輸送手段としては、例えばベルトコンベアを用いることができる。また、上記第1輸送手段として、収容筒6を複数配した回転台を採用し、その回転台の回転に伴って果実を収容した状態の収容筒6が交換されていくように構成してもよい。
【0095】
・ 判定工程を修正工程の一部と同時に行うようにしてもよい。たとえば、第2実施形態における第1修正工程と判定工程とを同時に行ってもよい。
・ 第1修正部材13b、14b、及び第2修正部材15bの形状は、収容部に収容されたマンゴーMの種子M1の位置及び姿勢の少なくとも一方を修正可能な形状であれば特に限定されるものではない。
【0096】
・ 判定部材12bの形状は、収容部に収容されたマンゴーMの果肉M2を貫通して所定の判定位置に移動可能な形状であれば特に限定されるものではない。
・ 判定工程及び第1、第2修正工程において、判定部材11b、12b及び各修正部材がマンゴーMの果肉M2を貫通して種子M1に接触するように構成した場合には、判定部材11b、12b及び各修正部材の移動軌跡が、分離部3の分割刃33のZ方向における延長線上に位置するように判定用シリンダ11、12、第1修正用シリンダ13、14、及び第2修正用シリンダ15の位置を設定することが好ましい。こうした場合には、判定部材11b、12b及び各修正部材がマンゴーMの果肉M2を貫通して形成される穴や溝の位置と、分割刃33による切断面とが一致するようになるため、分割処理されたマンゴーMの果肉M2に上記穴や溝の跡が残り難くなる。
【0097】
・ 第2実施形態において、マンゴーMの種子M1と分離部3との接触が検出された場合に、果実受け16を通常の果実受けからエラー用の果実受けに変更するように構成してもよい。この場合、後工程において、通常の分割処理がなされたマンゴーMと、分離部3と種子M1とが接触して通常の分割処理ができなかったマンゴーMとの仕分け処理を省略することができる。
【0098】
・ 第2実施形態では、マンゴーMの種子M1と分離部3との接触が検出された場合に、退避手段によって分離部3を収容部に対向する位置から退避させるように構成していたが、退避手段を省略してもよい。この場合、分離部3に対してマンゴーMを強引に通過させて、上記エラー用の果実受け落下収集させる、又は装置を停止させて作業者に処理させるようにすることが好ましい。
【0099】
また、退避手段の構成は、分離部3を収容部に対向する位置から退避可能な構成であれば特に限定されるものではなく、例えば分離部3をスライド移動させて退避させる構成であってもよい。
【0100】
・ 第1実施形態の各構成及び第2実施形態の各構成は個々に入れ替えることが可能である。たとえば、第1実施形態の押込体92の構成を第2実施形態に採用してもよいし、第2実施形態におけるマンゴーMの種子M1と分離部3との接触が検出された場合のエラー処理の構成を第1実施形態に採用してもよい。
【0101】
次に、上記実施形態及び別例から導き出される技術思想を示す。
(イ)果実を果肉部分及び種子部分に分離するための果実の処理装置であって、果実を収容する収容部と、果実を通過させることにより果肉部分及び種子部分に分離する分離部と、前記収容部に収容された果実を前記分離部に向って押し込む押込部とを備え、前記収容部に収容された果実の種子の位置又は姿勢を修正する修正手段を備えることを特徴とする果実の処理装置。
【0102】
(ハ)前記収容部に収容された果実を前記分離部に向って押し込む押込工程における果実の種子と前記分離部との接触を感知する感知手段を備え、種子と前記分離部との接触が感知された果実と感知されなかった果実とを別々に収集するように構成したことを特徴とする果実の処理装置。
【0103】
(二)前記収容部に収容された果実を前記分離部に向って押し込む押込工程における果実の種子と前記分離部との接触を感知する感知手段と、前記分離部を収容部に対向する位置から退避させるための退避手段とを備え、前記感知手段によって種子と前記分離部との接触が感知された場合に、前記退避手段を作動させて前記分離部を退避させることを特徴とする果実の処理装置。
【符号の説明】
【0104】
3…分離部、6…収容筒、9…押込部、10b…遮蔽板、11、12…判定用シリンダ、11b、12b…判定部材、13、14…第1修正用シリンダ、13b、14b…第1修正部材、15…第2修正用シリンダ、15b…第2修正部材、32…環状刃、33…分割刃、94a〜94c…押込板、95…挟持ピン、96…押込部材。
図1
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図11