【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。なお、文中「部」「%」その他の割合は、特に記載がない限り質量基準である。また、構造式中、EOはオキシエチレン基を表す。
【0043】
1.乳化重合用乳化剤の調製
(製造例A1)
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30質量比)636g(2.0モル)、触媒として水酸化カリウム10gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、エチレンオキサイド132g(3.0モル)を逐次導入しながら圧力0.15MPa、温度120℃の条件にて反応させた後、温度100℃でアリルグリシジルエーテル342g(3.0モル)をオートクレーブに導入して5時間攪拌継続して反応させた。次いで、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド1760g(40モル)を逐次導入して反応させて、次式で表される本発明に係る化合物[A1]を得た。
【化6】
【0044】
(製造例A2)
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30、質量比)636g(2.0モル)、触媒として水酸化カリウム10gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、アリルグリシジルエーテル342g(3.0モル)をオートクレーブに導入して5時間攪拌継続して反応させた。次いで、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド880g(20モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和して次式で表される中間体(A)(化合物[A2])を得た。
【化7】
【0045】
次いで、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に中間体(A)895gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、温度120℃の条件にてスルファミン酸97gを反応させた後、精製して次式で表される本発明に係る化合物[A3]を得た。
【化8】
【0046】
(製造例A3)
エチレンオキシドの導入量を880gから1760g(40モル相当)に変更した以外は製造例A2に記載した製造条件に従って、次式で表される本発明に係る化合物[A4]を得た。
【化9】
【0047】
(製造例A4)
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、ベンジル化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/60/25質量比)566g(2.0モル)、触媒として水酸化カリウム10gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、アリルグリシジルエーテル274g(2.4モル)をオートクレーブに導入して5時間攪拌継続して反応させた。次いで、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド880g(20モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和して中間体(B)を得た。次いで、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に中間体(B)860gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、温度120℃の条件にてスルファミン酸97gを反応させた後、精製して次式で表される本発明に係る化合物[A5]を得た。
【化10】
【0048】
(製造例A5)
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、クミルフェノール425g(2.0モル)、触媒として水酸化カリウム10gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換後、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、メタリルグリシジルエーテル256g(2.4モル)をオートクレーブに導入して5時間攪拌継続して反応させ、次いで、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド880g(20モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和して中間体(C)を得た。次いで、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に中間体(C)781gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、温度120℃の条件にてスルファミン酸97gを反応させた後、精製して次式で表される本発明に係る化合物[A6]を得た。
【化11】
【0049】
(製造例A6)
製造例A2で得た中間体(A)895g(1.0モル)を撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えたガラス製反応容器に仕込み、無水リン酸94g(0.33モル)を仕込み、撹拌しながら80℃で5時間リン酸化を行った後、苛性ソーダで中和して次式で表される本発明に係る化合物[A7]を得た。なお、本組成物をNMRにて確認したところ、モノエステル/ジエステルの比率は57/43であった。
【化12】
【0050】
(製造例A7)
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=70/25/5質量比)470g(2.0モル)、触媒として水酸化カリウム10gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル431g(2.0モル)を導入し、5時間攪拌して反応させ、次いでアリルグリシジルエーテル274g(2.4モル)をオートクレーブに導入して5時間攪拌継続して反応させた。次いで、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド880g(20モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和して中間体(D)を得た。次いで、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に中間体(D)1028gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換し、温度120℃の条件にてスルファミン酸97gを反応させた後、精製して次式で表される本発明に係る化合物[A8]を得た。
【化13】
【0051】
(
参考製造例A8)
アリルグリシジルエーテルの導入量を342g(3.0モル相当)から228g(2.0モル相当)に変更した以外は製造例A2に記載した製造条件に従って、次式で表され
る化合物[A9]を得た。
【化14】
【0060】
また、以下の実験で使用した比較品の構造は次の通りである。
【化23】
【0061】
2.ポリマーディスパージョンの調整
〔実験1(実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−4):メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル系ポリマーディスパージョンの調製〕
モノマーとして、メタクリル酸メチル123.75g、アクリル酸ブチル123.75g、アクリル酸2.5gを配合し、次いで表1に記載した所定量の本発明又は比較品の乳化剤及び多官能性モノマー、及びイオン交換水105gを加え、ホモミキサーで混合して、混合モノマー乳濁液を調製した。
【0062】
次に攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下漏斗を備えた反応器に、イオン交換水122g、炭酸水素ナトリウム0.25gを仕込み、窒素を通気しながら撹拌を継続し、ここに上記の事前調製した混合モノマー乳濁液の一部36gを仕込み、80℃に昇温した。その後、15分間撹拌を継続した後に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5gをイオン交換水20gに溶解したものを加えて重合を開始させた。次いで、重合開始剤の添加15分後より3時間かけて、混合モノマー乳濁液の残部324部を滴下して重合させた。さらに、続けて2時間熟成した後、冷却してアンモニア水でpH8に調整して本発明の評価実験に供試するポリマーディスパージョンを得た。
【0063】
〔実験2(実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−4):スチレン/アクリル酸ブチル系ポリマーディスパージョンの調製〕
上記実施例1において、モノマー成分であるメタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルをスチレン及びアクリル酸ブチルに変更し、表2に記載した本発明又は比較品の乳化剤にて上記実験1と同様の操作で乳化重合を行い、本発明の評価実験に供試するポリマーディスパージョンを得た。
【0064】
〔実験3(実施例3−1〜3−5、比較例3−1〜3−4):酢酸ビニル/アクリル酸ブチル系ポリマーディスパージョンの調製〕
上記実施例1において、モノマー成分をメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルから酢酸ビニル、アクリル酸ブチルに変更し、表3に記載した本発明又は比較品の乳化剤にて上記実験1と同様の操作で乳化重合を行い、本発明の評価実験に供試するポリマーディスパージョンを得た。
【0065】
〔実験4(実施例4−1〜4−3、比較例4−1〜4−4):スチレン/ブタジエンディスパージョンの調製〕
反応器として、耐圧性を有するガラス瓶、具体的には炭酸飲料用の空き瓶を用い、これにイオン交換水60gを仕込み、窒素ガスにて溶存酸素を除去した。このガラス瓶を氷水浴中で冷却した後、表4に記載の本発明品又は比較品の乳化剤及び多官能性モノマーを加え、更にナフタレンスルホン酸ホリマリン縮合物0.12g、炭酸ナトリウム0.12g、ドデシルメルカプタン0.12gを加え、ゴム栓でガラス瓶に仮栓した。このガラス瓶軽く手振りして内容物を均一化させた後、開栓し、スチレン20g、過硫酸カリウム0.12gを仕込み、ガラス瓶を再度ゴム栓で仮栓し、氷水浴中に冷静置した。次いで、メタノールドライアイス浴中の目盛付き試料採取管にブタジエンボンベからブタジエンを導入し、液化させて計量したブタジエン20gをストップコック付きのシリンジを用いてガラス瓶に仕込み、直ちに所定の金属製王冠を被せて打栓して瓶重合反応器を準備した。次いで、打栓した該ガラス瓶を強振して、ガラス瓶中の内容液を乳濁状態とした。次に、水温50℃に調整した瓶重合用の回転式重合槽内のホルダーにガラス瓶をセットし、回転数50rpmにて20時間重合させ、瓶重合法により乳化重合を行った。その後、ガラス瓶を氷水浴中に投入して冷却した後、開栓し、p−tert−ブチルカテコール0.12gを添加し、ドラフト内で窒素ガスバブリングにて未反応ブタジエンを気散留去してポリマーディスパージョンを得た。
【0068】
3.ポリマーディスパージョン及びポリマーフィルムの評価試験
上記実験1〜6の各実施例及び比較例において得られたポリマーディスパージョン及びポリマーフィルムについて、以下の評価試験を行った。その結果をそれぞれ表1〜表6に示す。
【0069】
(1)ポリマーディスパージョン評価
以下の方法に従い、固形分、重合安定性、平均粒子径、気泡性、機械的安定性、反応性乳化剤の共重合率、フィルターろ過性(但し、上記実験4のディスパージョンのみ)を測定し又は評価した。
【0070】
[固形分]
ポリマーディスパージョン2gをアルミ製カップに秤取し、105℃で2時間乾燥後の残渣質量から固形分質量を求め、その固形分質量をポリマーディスパージョン秤取量に対する質量%で示した。
【0071】
[重合安定性]
ポリマーディスパージョンを80メッシュの金網で乳化重合工程中に生成した凝集物をろ過して、ろ過残渣を水洗後、105℃で2時間乾燥し、その質量をディスパージョンの固形分に対する質量%で示した。なお、本測定において凝集物量が小さい程、乳化重合工程における重合安定性が高いことを意味する。
【0072】
[平均粒子径]
ポリマーディスパージョンの一部を取り、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、製品名MICROTRAC UPA9340)にて粒子径を測定した。
【0073】
[起泡性]
実験1〜4の結果物については次のAの方法で、実験5,6の結果物については次のBの方法で、それぞれ起泡性を評価した。
【0074】
A:ポリマーディスパージョン100mlと水100mlを1Lのメスシリンダーに取り、25℃に調温した後、木下式ガラスボールフィルターの502G・No.2(40〜50μm)を通して窒素ガスを300ml/分で1分間通気した後、窒素ガスの通気を停止し、その直後の泡高さ(泡量)を直後泡高さ(ml)として読み取った。また更に、窒素ガス通気停止5分後の泡高さ(泡量)を5分後泡高さ(ml)として読み取り、下記計算式にて泡切れ性(%)を求めた。なお、この場合、直後泡高さ(ml)がより低い程、また、泡切れ性(%)がより低い程、ポリマーディスパージョンの起泡性は低泡性であることを示す。
【0075】
泡切れ性(%)=5分後泡高さ(ml)/直後泡高さ(ml)×100
B:ポリマーディスパージョンを水で2倍に希釈し、100mlネスラー管に30ml入れ、30回倒立させてから静置5分後における泡の量(ml)を測定した。
【0076】
[機械的安定性]
ポリマーディスパージョンの50gを秤取し、マーロン型試験機にて荷重10kg、回転数1,000rpmで5分間処理し、生成した凝集物を所定の金網(実験1〜4では150メッシュ、実験5,6では80メッシュ)でろ過し、残渣を水洗後、105℃で2時間乾燥し、その質量をディスパージョンの固形分に対する質量%で示した。なお、本測定において凝集物量が小さいほど、高せん断条件下におけるポリマーディスパージョンの安定性が高いことを意味する。
【0077】
[反応性乳化剤の共重合率]
ポリマーディスパージョンの一定量を秤取し、過剰のメタノールを加えた。このメタノール希釈溶液の遠心分離処理を行い、ポリマーと上澄み液に分けた。次いでその上澄みを回収し、減圧蒸留後に得られた残渣の
1H−NMR測定から乳化剤の共重合率を測定した。
【0078】
[フィルターろ過性]
得られたポリマーディスパージョン80gを200メッシュの金網で重力ろ過して、そのろ過に要する時間を計測し、併せて金網上に残る凝集物残渣の状況を目視確認して、以下の基準に基づいてフィルターろ過性の評価を行った。なお、本測定においてろ過時間が短く、金網上の残渣が少ない程、乳化重合工程における重合安定性が高く、商業生産上で歩留り率が高く、ろ過フィルター目詰まりによる工程トラブル発生が少ないことを意味する。
【0079】
◎:ろ過所要時間は15秒以内で金網上に固形状物質が見られない
○:ろ過所要時間は15秒以内であるが、金網上に固形状残渣が僅かに見られる
△:ろ過所要時間が15秒超、30秒以内であり、金網上に固形状残渣が見られる
×:ろ過所要時間が30秒超、又は目詰まりが観察され、金網上に多くの固形状残渣が見られる
【0080】
(2)ポリマーフィルム評価
実験4の結果物を除き、以下の方法に従い、耐水白化性、剥がれ状態、吸水率を測定又は評価した。
【0081】
[耐水白化性]
ポリマーディスパージョンを市販のガラス板に膜厚120μm(dry)になるように塗布し、20℃×65%RHの雰囲気下で24時間乾燥させたものを25℃のイオン交換水に浸漬し、16ポイントの印刷文字の上にガラス板を置き、ポリマーフィルムを通して文字を透かして見たときに、その文字が判別できなくなるまでの日数を測定した。
【0082】
[剥がれ状態]
上記耐水白化性評価試験において16ポイントの文字が見えなくなった時点のポリマーフィルムの状態を目視にて観察し、以下の基準に基づいて評価を行った。
【0083】
◎ :全く剥がれていない
○ :周りがわずかに剥がれている
△ :ほとんどの部分がガラスから剥がれている
× :完全にガラスから剥がれている
【0084】
[吸水率]
得られたポリマーディスパージョンを市販のガラス板に膜厚120μm(dry)になるように塗布し、20℃×65%RHの雰囲気下で24時間乾燥させ、ポリマーフィルムをガラス板から注意深く剥がし、そのポリマーフィルムを5cm×5cmの大きさに切り出し、ポリマーフィルム質量(初期質量)を測定した。次いで、これを25℃のイオン交換水に浸漬し、24時間後、水からポリマーフィルムを取り出し、表面の水分を清浄なろ紙で軽くふき取った後、ポリマーフィルム質量(浸漬後質量)を測定し、下記計算式にてフィルムの吸水率を求めた。
【0085】
【数1】
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】