(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力を必要とする設備が第一のグループと第二のグループに分類され、前記第一のグループには、電力を供給する電気回路として常時通電である第一の電気回路(P1)が接続され、前記第二のグループには、電力を供給する電気回路として必要時に通電、必要時以外は非通電である第二の電気回路(P2)が接続され、
前記第二の電気回路(P2)は、前記第二のグループに含まれる設備の動作確認のため、間欠的に通電の入断の制御が行われる水門設備の電源供給システム。
電力を必要とする設備が第一のグループと第二のグループに分類され、前記第一のグループには、電力を供給する電気回路として常時通電である第一の電気回路(P1)が接続され、前記第二のグループには、電力を供給する電気回路として必要時に通電、必要時以外は非通電である第二の電気回路(P2)が接続され、
前記第一のグループには、扉体(F)をその自重で落下させて流路(R)を閉鎖する自重降下手段(H)における通電により前記扉体(F)を自重による降下が規制された状態から自重により降下する状態へと解放するブレーキ装置(B1)が含まれ、前記第二のグループには、扉体(F)を原動機(M)の駆動力で昇降させて流路(R)を開閉する電動操作手段(A)における通電により前記扉体(F)を昇降させる駆動力を発生させる前記原動機(M)が含まれる水門設備の電源供給システム。
【背景技術】
【0002】
河川や水路等の各種流路に設置される水門設備として、昇降自在の扉体(ゲート)を備えるとともに、その扉体をモータやエンジン等の原動機の駆動力で昇降させて、流路を開閉する昇降式水門設備がある。水門を閉鎖することにより、緊急時に、河川や水路等への津波や高潮の遡上を防止する。
【0003】
この昇降式の水門設備では、上記のような原動機の駆動力による開閉機構に加え、主として緊急時に、扉体をその自重により降下させて流路を閉じる自重降下機能を備えたものがある。
【0004】
自重降下機能を採用すれば、緊急時には原動機の駆動力によることなく流路の閉鎖ができるので、地震等により万が一、停電や電源装置の不具合が生じても、確実に流路の閉鎖が可能である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
自重降下機能を備えた水門設備では、従来から、例えば、
図6に記載のような電源供給システムが採用されている。
【0006】
駆動力による開閉機構は、扉体(水門本体)Fを支えるワイヤWがドラムDに巻回されており、そのドラムDに、原動機の駆動力が伝達可能となっている。原動機として備えられるモータMやエンジンKの動作、及び、ブレーキ装置B0,B2、差動切換器C等の動作は、水門制御盤10が備える電動操作制御手段11が制御する。
【0007】
自重降下機能による閉鎖機構は、ドラムDの回転を制止しているブレーキ装置B1を備え、そのブレーキ装置B1を解除することにより、ドラムDが回転しながら扉体Fがその自重で落下する。このとき、ブレーキ装置B1、差動切換器C等の動作は、水門制御盤10が備える自重降下制御手段12が制御する。
【0008】
なお、扉体Fを支えるワイヤWに代えて上下方向のラック棒を扉体Fに取り付け、そのラック棒の歯に噛み合うピニオンを、原動機の駆動力で回転できるようにした構造もある。この構成の場合、自重降下機能による閉鎖機構は、ピニオンの回転を制止しているブレーキ装置を解除することにより、そのピニオンが回転しながらラック棒とともに扉体Fがその自重で落下する。
【0009】
電動操作制御手段11及び自重降下制御手段12は、それぞれ電力会社Eから供給される電力で動作するようになっている。ただし、停電等が発生した場合は、切替装置SW0を切り替えることにより、その電源を、発電機Gに切り替えることができる。
【0010】
この電源の切り替えは、発電機Gが備える停電検知機能に基づき、停電の認識とともに自動的に行われる。また、その切り替えを、遠隔監視制御システム130が実行することもできる。遠隔監視制御システム130は、遠隔地のパソコン140等により制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、
図1に示すように、河川や水路等の流路Rが海Oに臨む河口付近に設けられる水門設備、及び、その水門設備の電力供給システムである。
【0025】
この実施形態の水門設備は、流路Rを跨ぐ門形の水門構に、昇降自在の扉体(ゲート)Fが備えられている。扉体Fを支えるワイヤWは、その上部に配置された回転自在のドラムDに巻回されている。この扉体Fは、
図2及び
図3に示すように、電動操作手段Aと自重降下手段Hの二つの手段によって開動作や閉動作が可能となっている。
【0026】
電動操作手段Aは、扉体FをモータMやエンジンKの駆動力で昇降させて、その流路Rを開閉する。自重降下手段Hは、扉体Fをその自重で落下させて流路Rを閉鎖する。
【0027】
駆動力による開閉機構である電動操作手段Aは、ドラムDの回転軸に、モータMの駆動力とエンジンKの駆動力が選択的に伝達可能となっている。駆動力の切換えは、駆動源切換手段Jで行う。また、ドラムDの回転は、ブレーキ装置B0及びブレーキ装置B2によって規制できるようになっている。また、ドラムD側への駆動力伝達経路の途中に差動切換器Cが配置されている。モータMの動作、及び、ブレーキ装置B0及びブレーキ装置B2、差動切換器C等の動作は、水門制御盤10に備えられた電動操作制御手段11が制御する(
図2参照)。
【0028】
自重降下機能による閉鎖機構である自重降下手段Hは、ドラムDの回転を制止しているブレーキ装置B1を備え、そのブレーキ装置B1を解除することにより、ドラムDが回転しながら扉体Fがその自重で落下する。このとき、ブレーキ装置B1、差動切換器C等の動作は、水門制御盤10に備えられた自重降下制御手段12が制御する(同じく
図2参照)。
【0029】
図3に、駆動力伝達経路の詳細を示す。ワイヤWが巻回されたドラムD(符号65)は、その回転軸の両端にギヤ63,64を備える。ギヤ63,64には、駆動軸68に設けられたギヤ61,62が噛み合っている。駆動軸68は、軸受59,60によって軸周り回転自在に支持されている。
【0030】
駆動軸68の一端部は、カップリング58を介して差動歯車減速機57に接続されている。この差動歯車減速機57は差動切換器Cとして機能し、図中左上に示す電動操作手段Aから駆動力がギヤボックス54を介して差動歯車減速機57に入力可能で、また、差動歯車減速機57は自重降下手段Hの回転伝達経路にも接続可能となっている。差動切換器Cは、電動操作手段Aの回転伝達経路と、自重降下手段H側の回転伝達経路を、選択的に接続することができる。
【0031】
電動操作手段Aは、差動歯車減速機57に接続されるブレーキ装置B2としての油圧押上式ブレーキ53、駆動源切換手段Jとして機能するモータ・エンジン切替装置51を介してモータMとエンジンKに接続されている。モータMの駆動力は、モータ・エンジン切替装置51、差動歯車減速機57を経て駆動軸68に伝達される。また、停電等によりモータMが使用できない場合は、エンジンK(この実施形態ではディーゼルエンジン52)から、モータ・エンジン切替装置51、差動歯車減速機57を経て駆動軸68に伝達される。この駆動力の伝達によりドラムDが回転し、ワイヤWの巻き上げ、その巻き上げたワイヤWの戻し操作によって扉体Fが昇降する。
【0032】
自重降下手段Hは、差動歯車減速機57に接続されるブレーキ装置B1としての電磁ブレーキ56、ファンブレーキ55を備える。電磁ブレーキ56は常時はバネ力により連結され、駆動軸68は回転しない状態に維持されている。通電によりバネ力に抗して連結が解除されれば、駆動軸68は回転可能な状態になる。ファンブレーキ55は、駆動軸68の回転に一定の抵抗を付与し、ドラムDの回転速度を抑制する。
【0033】
なお、電動操作手段Aにより駆動軸68が回転する際は、差動歯車減速機57の機能により、駆動軸68の回転と自重降下手段H側のブレーキ装置B1の機構とは、相互に回転が伝達されない状態に切り離されるようになっている。また、その差動歯車減速機57の機能により、扉体Fの自重による落下の際に、原動機側の駆動力伝達経路とは切り離されるようになっている。
【0034】
津波や高潮等に伴う緊急信号を受けて扉体Fの自重降下を行う場合、遠隔操作によりブレーキ装置B1に通電してブレーキの解放操作をすると、扉体Fは自重降下する。
【0035】
扉体Fの降下とともにドラムD、駆動軸68が回転し、その回転は、差動歯車減速機57を経てファンブレーキ55に伝達される。このファンブレーキ55の作用により、扉体Fの降下速度は一定の速度以下に制御される。
【0036】
一旦閉鎖した扉体Fを上昇させる場合は、電動操作手段Aにより駆動軸68を回転させる。図示しない手動ハンドルによりドラムDを回転させて扉体Fを上昇させることも可能である。
【0037】
図4(a)は、モータMの駆動力によって扉体Fが開閉動作する際の回転伝達経路を示し、
図4(b)は、モータMに代わってエンジンKの駆動力によって扉体Fが開閉動作する際の回転伝達経路を示す。
図4(c)は、自重降下手段Hによって、扉体Fが閉動作する際の回転伝達経路を示す。
【0038】
図5(a)〜(e)に、扉体Fの開閉状況を示す。
図5(a)は、扉体Fが上昇した常時状態を示す。
図5(b)は、扉体Fが徐々に降下する閉動作状態を示す。
図5(c)は、扉体Fが完全に降下した全閉状態を示す。この全閉状態では、津波や高潮の流路Rへの遡上を阻止することができる。図中の符号72は、カーテンウォールを示す。
【0039】
図5(d)は、扉体Fが完全に降下した状態で、流路Rの上流側の水位が上昇した場合に、扉体Fに設けたフラップゲート73から下流側へ排水されている状態(内水排水状態)を示す。図中の符号73aは、下流側から上流側への水の侵入を阻止、上流側から下流側への水の排水のみを許容する逆止弁である。
【0040】
図5(e)は、扉体Fを常時状態よりもさらに上昇させ、扉体Fをフック71に係止した状態を示す。設備の点検時等において、このように扉体Fをフック71に係止することにより、作業の安全を図っている。
【0041】
電動操作手段Aの動作を制御する電動操作制御手段11、自重降下手段Hの動作を制御する自重降下制御手段12は、いずれも遠隔監視制御システム30によって統括されている。
【0042】
遠隔監視制御システム30は、それ自身が備えるボタン等の操作装置を作業者が操作することにより、上記の指令を発信することも可能であるが、そのシステムを配置した場所、あるいは、水門設備から離れた遠隔地のパソコン40等により指令の発信を制御することもできる。また、緊急時には、地震や津波、高潮等の緊急信号を受けて、自動的に上記の指令を発信することも可能となっている。
【0043】
すなわち、遠隔監視制御システム30が備える電動操作指令手段31が、操作装置、パソコン40からの指示信号や緊急信号等を受けて、電動操作制御手段11に制御の指令を発信する。また、遠隔監視制御システム30が備える自重降下操作指令手段32が、操作装置、パソコン40からの指示信号や緊急信号等を受けて、自重降下制御手段12に制御の指令を発信する。
【0044】
緊急信号の受信は、遠隔監視制御システム30が備える緊急信号受信手段33が行う。操作装置やパソコン40からの指示は、同じく遠隔監視制御システム30が備える指示信号受信手段34が行う。
【0045】
駆動軸68の一端部には、ドラムDと扉体Fとの間のワイヤWの弛み及び張力の過負荷を検知するゆるみ過負荷検知装置Tと、扉体Fの開閉度合を検出する位置検出装置(開度計)P(
図3に示す符号67)と、扉体Fの昇降範囲を規制する制御開閉器S(
図3に示す符号66)等の扉体監視装置Lが備えられている。
【0046】
扉体監視装置Lとは、扉体Fを開動作又は閉動作させる動作機構の状態を監視するものであり、扉体Fを昇降させる装置に何か不具合があった場合に、その不具合を検知する装置や、扉体Fの動作を止めるインターロック装置、あるいは、装置自体が壊れてしまうことを防止するために未然に扉体Fの動作を止める各種の安全装置、及び、それらのインターロック装置や各種の安全装置の動作に必要な情報を取得する装置等が挙げられる。
【0047】
これらの扉体監視装置Lに関し、この実施形態で例示した前記ゆるみ過負荷検知装置T、位置検出装置P、制御開閉器Sは、一つの水門設備に全てが備えられている場合が一般的であるが、水門設備の用途によっては、その一部又は全部の設置を省略する場合も考えられる。
【0048】
これらの扉体監視装置Lは、水門制御盤10が備える扉体監視制御手段13が制御する。扉体監視制御手段13は、遠隔監視制御システム30によって統括されている。
【0049】
遠隔監視制御システム30は、操作装置やパソコン40等からの指示信号により、扉体監視制御手段13に制御の指令を発信する。また、緊急時には、地震や津波、高潮等の緊急信号を受けて、自動的に扉体監視制御手段13に上記の指令を発信することも可能となっている。
【0050】
また、水門設備は、扉体F周囲の状況を画像、音声、若しくはセンサの反応によって確認する監視設備1と、流路Rの水の状況を検知する計測設備2と、扉体Fの開閉を光で警報する回転灯3と、扉体Fの開閉を音声で警報するスピーカ4と、扉体Fの開閉を警報音で警報するサイレン5と、扉体Fの開閉を文字で警報する掲示設備6と、扉体F周囲を照らす照明7等の付属設備Nを備える。
【0051】
付属設備Nとは、水門設備の周囲の情報を取得又は水門設備の周囲に情報を発信する設備である。付属設備Nは、大きく分けて、周辺状況把握設備X、警報設備(周辺警報設備)Y、情報提供設備Zに分類される。
【0052】
監視設備1や計測設備2等は周辺状況把握設備Xに該当する。回転灯3、スピーカ4、サイレン5、掲示設備6、照明7等は警報設備(周辺警報設備)Yに該当する。その他、水門設備から離れたエリアを含む広域に広く情報を提供する各種装置(例えば、海岸利用者向けに水門設備の情報や高潮、津波等の情報を文字や音声で提供する海岸利用者等向け情報設備8等)は、情報提供設備Zに該当する。これらは、「津波・高潮対策における水門・陸閘等管理システムガイドライン(Ver.2.0)平成25年4月(農林水産省農村振興局、農林水産省水産庁、国土交通省河川局、国土交通省港湾局)」に規定されている。
【0053】
この実施形態の水門設備は、監視設備1としてカメラを採用しているが、これに代えて又は加えて、監視設備1として流路R内の船舶等の有無を検知できるセンサを用いてもよい。また、計測設備2として水位計を採用しているが、これに代えて又は加えて、計測設備2として流速計等を採用してもよい。
【0054】
これらの付属設備Nに関し、この実施形態で例示した前記監視設備1、計測設備2と、回転灯3、スピーカ4、サイレン5、掲示設備6、照明7、海岸利用者等向け情報設備8は、一つの水門設備に全てが備えられている場合が一般的であるが、水門設備の用途によっては、その一部又は全部の設置を省略する場合も考えられる。
【0055】
これらの付属設備Nは、機器制御盤20が備える各制御手段21〜28が制御する。各制御手段21〜28は、遠隔監視制御システム30によって統括されている。
【0056】
遠隔監視制御システム30は、操作装置やパソコン40等からの指示信号により、各制御手段21〜28に制御の指令を発信する。また、緊急時には、地震や津波、高潮等の緊急信号を受けて、自動的に各制御手段21〜28に上記の指令を発信することも可能となっている。
【0057】
電力の供給回路は、
図2に示すように、上記の電力を必要とする設備群が、緊急時における設備の重要性等を基準に、第一のグループと第二のグループに分類される。
【0058】
第一のグループには、電力を供給する電気回路として常時通電である第一の電気回路P1が接続され、第二のグループには、電力を供給する電気回路として必要時に通電、必要時以外は非通電である第二の電気回路P2が接続される。
【0059】
第一の電気回路P1に接続された設備への通電は切替装置(スイッチ)SW1で入断でき、第二の電気回路P2に接続された設備への通電は、切替装置(スイッチ)SW1とは別の切替装置(スイッチ)SW2で入断できる。
【0060】
第一のグループには、自重降下手段Hが含まれる。第二のグループには、電動操作手段Aが含まれる。すなわち、自重降下手段Hの電源回路と電動操作手段Aの電源回路とは別系統であり、自重降下手段Hを動作させるための機器への通電と、電動操作手段Aを動作させるための機器への通電は切替装置(スイッチ)SW1,SW2で別々に入断できる。
【0061】
電動操作制御手段11は、津波や高潮が発生して扉体Fを緊急に閉鎖する必要がある時、あるいは、機器類の点検等により、扉体Fを開動作又は閉動作させることが求められる時等、いろいろな要因で電源を入れる必要がある時(以下、電動操作制御手段11における「必要時」と称する。)に、第二の電気回路P2を通じて電力会社Eから供給される電力で、電動操作手段Aを動作させるようになっている。ただし、その必要時において、仮に停電等が発生している場合は、スイッチSW2を切り替えることにより、電源を、ディーゼル発電機等からなる発電機Gに切り替えることができる。このとき、発電機Gの起動は、自動的に行われる。ここで、発電機Gとは、自家発電機等、電力会社が供給する電源以外の電源をいう。
【0062】
ここで、必要時には、常に第二の電気回路P2の電源を発電機Gに接続するように設定してもよい。このとき、何らかの理由で発電機Gが作動しない場合は、電力会社Eから供給される電力に切り替えることができる。また、第二の電気回路P2は、必要時にはバッテリからなる電源に接続されるようにしてもよい。
【0063】
電動操作制御手段11における必要時とは、前述のように、津波や高潮が発生して扉体Fを緊急に閉鎖する必要がある時、あるいは、機器類の点検等により扉体Fを開動作又は閉動作させることが求められる時、電源を投入することにより機器が正常であることを自動的に診断する時(後述の自己診断機能による点検時)等、電動操作制御手段11に電源を入れる必要があるすべての状態を意味する。必要時以外とは、電源を入れる必要がない時、例えば、上記以外の待機状態、あるいは、自重降下手段Hのみによる扉体Fの動作時、その他、点検等のため電源を落とす必要があるすべての状態を意味する。
【0064】
スイッチSW2の切替は、遠隔監視制御システム30が備える第一切替制御手段35が、停電の有無を判断して自動的に行う。操作装置やパソコン40等からの指示信号により切り替えることも可能である。
【0065】
また、第一切替制御手段35は、電動操作手段Aを動作させるための機器が必要時に通電、必要時以外は非通電となるように、スイッチSW2を適宜切替える。必要時であるかどうかの判断は、遠隔監視制御システム30から電動操作制御手段11への動作の指示の有無によって行うことができる。
【0066】
なお、スイッチSW2の切替は、発電機G等が備える停電検知機能に基づく停電の認識や、発電機G等が備える起動確認機能に基づく発電機Gの起動の良否等に基づいて、自動的に行われるようにしてもよい。
【0067】
自重降下制御手段12は、第一の電気回路P1を通じて電力会社Eから供給される電力で、自重降下手段Hを動作させるようになっている。ただし、仮に停電等が発生した場合は、スイッチSW1を切り替えることにより、第一の電気回路P1の電源を、発電機Gに切り替えることができる。このとき、発電機Gの起動は、自動的に行われる。
【0068】
スイッチSW1の切替は、遠隔監視制御システム30が備える第二切替制御手段36が停電の有無を判断して自動的に制御する。いずれの電源に接続されている場合においても、第二切替制御手段36は、自重降下手段Hを動作させるための機器が常時通電となるように、スイッチSW1を維持している。
【0069】
このように、自重降下手段Hと電動操作手段Aへの電力供給の回路を別回路とし、各回路に設けたスイッチSW1,SW2の制御により、自重降下手段Hを常時通電、電動操作手段Aを必要時に通電、必要時以外は非通電としたので、水門閉鎖の信頼性を落とさず、消費する電力をできる限り抑えることができる。
【0070】
また、必要時に通電、必要時以外は非通電とするために制御される第二の電気回路P2のスイッチSW2は、自己診断機能による動作確認のため間欠的に通電の入断の制御が行われるようになっている。この入断の制御は、第一切替制御手段35が行う。これにより、電動操作手段Aに不具合が生じていないかどうかを、定期的に確認できる。
【0071】
ここで、動作確認のため間欠的な通電とは、定期的な通電、例えば、1日毎に1回、数日毎に1回、あるいは、1週間毎に1回といった断続的な通電であり、その通電は、装置の不具合を確認するのに充分な通電時間とすることができる。確認に必要な通電時間は短時間であり、例えば、5分程度で確認が可能である。異常が発見された場合は、設備管理者への通知が行われる。
【0072】
また、通電の間隔は、1日毎や1週間毎等に限定されず、2週間毎、3週間毎、1ケ月毎、あるいは、2日毎、3日毎等と自由に設定することができる。また、必ずしも一定の間隔でなくてもよく、前回の通電からある時間が経過したら通電を行い、次にまたいくらかの時間が経過したら通電を行うような不定期で間欠的な通電であってもよい。動作確認のため間欠的な通電であれば、電気消費量には大きく影響しない。
【0073】
また、この実施形態では、過負荷検知装置Tと位置検出装置Pと制御開閉器S等の扉体監視装置Lは、第一のグループに含まれる。
【0074】
これらの扉体監視装置Lは、自重降下手段Hと同様、スイッチSW1の制御により第一の電気回路P1を通じて常時通電となるようになっている。扉体監視装置Lは、自重降下手段Hの動作によって扉体Fを閉鎖する際に、水門周辺の状況や、扉体Fの状況を確認するのに重要な役割を果たすので、このように常時通電とすることで、より安全度を高めることができる。
【0075】
このとき、特に必要である場合には、これらの扉体監視装置Lと自重降下手段Hの電力供給の回路を別回路とし、扉体監視装置を動作させるための機器を常時通電とするためのスイッチを、自重降下手段Hを動作させるための機器を常時通電とするためのスイッチSW1と別としてもよい。
【0076】
また、扉体監視装置Lの全部を常時通電とする態様以外にも、例えば、扉体監視装置Lの一部(例えば、位置検出装置Pのみ)を常時通電とし、他は必要時に通電、必要時以外は非通電とする態様も考えられる。必要時以外は非通電とする扉体監視装置Lは、前述のように、動作確認のため間欠的な通電を定期的に又は不定期に行うことが望ましい。さらに、扉体監視装置Lの全部を第二のグループとする態様も考えられる。すなわち、扉体監視装置Lの全部を、必要時に通電、必要時以外は非通電とする態様である。
【0077】
また、この実施形態では、監視設備1と計測設備2と回転灯3とスピーカ4とサイレン5と掲示設備6と照明7等の付属設備Nは、第二のグループに含まれる。
【0078】
これらの付属設備Nは、電動操作手段Aと同様、スイッチSW2の制御により第二の電気回路P2を通じて必要時に通電、必要時以外は非通電となるようになっている。付属設備Nは、必要時に作動すれば充分であるので、常時通電ではなく適宜の時期に行う選択的な通電とすることで、より消費電力を抑えることができる。必要時以外は非通電とするこれらの付属設備Nは、前述のように、動作確認のため間欠的な通電を定期的に又は不定期に行うことが望ましい。
【0079】
すなわち、第二の電気回路P2は、第二のグループに含まれる電動操作手段Aや付属設備N等の全ての装置の動作確認のため、間欠的に通電の入断の制御が行われることが望ましい。
【0080】
このとき、特に必要である場合には、これらの第二のグループのうち、付属設備Nと電動操作手段Aの電力供給の回路を別回路とし、付属設備の通電状態を入断するためのスイッチを、電動操作手段Aを動作させるための機器の通電状態を入断するためのスイッチSW2と別としてもよい。なお、第二のグループに含まれる電動操作手段Aや付属設備N等の全ての装置は、それぞれ対応する切替装置(スイッチ)SW70〜78によって個別に通電の入断が可能である。
【0081】
ここで、付属設備Nにおける必要時とは、津波や高潮が発生して扉体Fを緊急に閉鎖する必要がある時、あるいは、機器類の点検等により扉体Fを開動作又は閉動作させることが求められる時等において付属設備Nの機能を必要とする状態、電源を入れた状態での付属設備の点検、その他、その付属設備Nに電源を入れる必要があるすべての状態を意味する。必要時以外とは、電源を入れる必要がない時、例えば、前記待機状態、その他、点検等のため電源を落とす必要があるすべての状態を意味する。
【0082】
また、付属設備Nの全部を選択的な通電とする態様以外にも、例えば、付属設備Nの一部(例えば、監視設備1及び計測設備2のみ)を常時通電とし、その他の付属設備N(回転灯3、スピーカ4、サイレン5、掲示設備6、照明7等の周辺警報設備)は必要時に通電、必要時以外は非通電とする態様も考えられる。さらに、特に必要がある場合には、付属設備Nの全部を第一のグループとする態様も考えられる。すなわち、付属設備Nの全部を常時通電とする態様である。
【0083】
上記の実施形態は、扉体Fを支えるワイヤWがドラムDに巻回され、そのワイヤWとドラムDを通じて、駆動力による開閉動作と自重降下機能による閉鎖動作を行う水門設備において、この発明の構成を説明したが、自重降下機能による閉鎖機構を備えた他の形式の水門設備においても、この発明を適用できる。例えば、扉体Fを支えるワイヤWに代えて上下方向のラック棒を扉体Fに取り付け、そのラック棒の歯に噛み合うピニオンを原動機の駆動力で回転できるようにし、且つ、ピニオンの回転の規制及び規制解除に基づいて、扉体Fの自重降下機能を発揮できるようにした水門設備においても、この発明を適用できる。
【解決手段】電力を必要とする設備が第一のグループと第二のグループに分類され、第一のグループには、電力を供給する電気回路として常時通電である第一の電気回路P1が接続され、第二のグループには、電力を供給する電気回路として必要時に通電、必要時以外は非通電である第二の電気回路P2が接続される水門設備の電源供給システムとした。前記第一のグループには、扉体Fをその自重で落下させて流路Rを閉鎖する自重降下手段Hが含まれる。また、第二のグループには、扉体Fを原動機Mの駆動力で昇降させて流路Rを開閉する電動操作手段Aが含まれる。