(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5767427
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】電圧増倍器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/10 20060101AFI20150730BHJP
H02M 3/07 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
H02M7/10 Z
H02M3/07
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-517881(P2015-517881)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(86)【国際出願番号】IB2013054497
(87)【国際公開番号】WO2013190412
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】61/661,858
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リュルケンス,ペーター
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/017793(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/151767(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/10
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の乗算器段を有する電圧増倍器であって、
夫々の乗算器段は、第1の入力部、第2の入力部、第1の出力部及び第2の出力部を有し、前の乗算器段の第1及び第2の出力部は、次の乗算器段の第1及び第2の入力部と相互接続され、
夫々の乗算器段は、同じ電流電導方向を有する2つの直列接続されたダイオード素子を有し、該2つの直列接続されたダイオード素子は、前記第1の入力部と前記第1の出力部とを相互接続し、前記第2の出力部は、前記2つの直列接続されたダイオード素子の間に結合され、
夫々の乗算器段は、各自の第1の入力部と各自の第1の出力部とを相互接続するバッファキャパシタを有し、
少なくとも一部の乗算器段は、各自の第2の入力部と各自の第2出力部とを相互接続するプッシュプルキャパシタを有し、
最初の乗算器段の第1の入力部及び最後の乗算器段の第1の出力部は、負荷のための出力部を提供し、
前記最初の乗算器段の第2の入力部は、AC電圧源のための入力部を提供し、
前記最初の乗算器段のバッファキャパシタは、2つの直列接続されたバッファキャパシタ部分を有し、
前記AC電圧源のための入力部は、前記2つのバッファキャパシタ部分の間に設けられる、電圧増倍器。
【請求項2】
前記最初の乗算器段を除く全ての乗算器段は、各自の第1の入力部と各自の第1の出力部とを相互接続するプッシュプルキャパシタを有する、
請求項1に記載の電圧増倍器。
【請求項3】
少なくとも一部の乗算器段は、一方の端部が各自の第2の出力部へ接続され且つ他方の端部が前記2つの直列接続されたダイオード素子の間に接続される等化キャパシタを有する、
請求項1又は2に記載の電圧増倍器。
【請求項4】
前記最後の乗算器段を除く全ての乗算器段は、一方の端部が各自の第2の出力部へ接続され且つ他方の端部が前記2つの直列接続されたダイオード素子の間に接続される等化キャパシタを有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項5】
前記最初の乗算器段のバッファキャパシタは、タップ付きバッファキャパシタを有し、該タップ付きバッファキャパシタは、2つのバッファキャパシタ部分を提供し、第1のキャパシタ部分と第2のキャパシタ部分との間のタップポイントを備える、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項6】
夫々の乗算器段は、同じ電流導電方向を有する直列接続されたダイオード素子の第2の組を有し、該第2の組の直列接続されたダイオード素子は、前記第1の入力部と前記第1の出力部とを相互接続し、第3の出力部が、前記第2の組の直列接続されたダイオード素子の間に結合され、
少なくとも一部の乗算器段は、各自の第3の入力部と各自の第3の出力部とを相互接続する第2のプッシュプルキャパシタを有する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項7】
少なくとも一部の乗算器段は、一方の端部が各自の第3の出力部へ接続され且つ他方の端部が前記第2の組の直列接続されたダイオード素子の間に接続される第2の等化キャパシタを有する、
請求項6に記載の電圧増倍器。
【請求項8】
前記最初の乗算器段を除く全ての前記バッファキャパシタは、同じキャパシタ値を有する、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項9】
前記最初の乗算器段を除く全ての前記プッシュプルキャパシタは、同じキャパシタ値を有する、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項10】
前記最後の乗算器段を除く全ての乗算器段は、等化キャパシタを有し、該等化キャパシタの容量値は、乗算器ごとに増大する、
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項11】
前記最初の乗算器段の第1の入力部を前記AC電圧源のための入力部と接続している前記最初の乗算器段の第1のバッファキャパシタ部分の容量値は、前記最初の乗算器段を除く全ての前記バッファキャパシタの直列接続の容量値と前記プッシュプルキャパシタの直列接続の容量値との和に比例する、
請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項12】
前記最初の乗算器段の第1の出力部を前記AC電圧源のための入力部と接続している前記最初の乗算器段の第2のバッファキャパシタ部分の容量値は、前記最初の乗算器段を除く全ての前記バッファキャパシタの直列接続の容量値に比例する、
請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器と、
AC電圧源としての変圧器と
を有し、
前記変圧器のタップポイントは、前記AC電圧源のための入力部へ接続される、
高電圧電源。
【請求項14】
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の電圧増倍器と、
負荷としてのX線管と
を有するX線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧増倍器、高電圧電源、及びX線撮像装置に係る。
【背景技術】
【0002】
電圧増倍器又はカスケード整流器は、ダイオードと、該ダイオードを介してAC電流によって充電される所謂プッシュプルキャパシタとを有する回路である。ダイオード及びキャパシタは乗算器段において配置され、AC電流の正ピークからの電圧が各段において負ピークの電圧へ加えられて、出力電圧が各段において増倍されるようにする。
【0003】
医用X線撮像装置のための高電圧整流器は、例えば、最大160kVの所要の高出力電圧を達成するよう、高電圧周波数変圧器の出力電圧を増倍させる高電圧増倍器をしばしば有する。そのような回路の欠点は、ダイオードにおけるパルス様形状の電流の二乗平均平方根値が平均電流よりも相当に高いことであり、これは、出力電力に関係があり、よって、ダイオードにおける損失は大いに増大する。
【0004】
そのような回路の他の欠点は、プッシュプルキャパシタにおける全電流が変圧器へ向かって増大することであり、これは、変圧器側のプッシュプルキャパシタにおいて高いストレスを生じさせることがある。これは、プッシュプルキャパシタのための小型のセラミックキャパシタの利用を妨げ得る。
【0005】
国際公開第2007/017793(A1)号パンフレット(特許文献1)では、追加的な等化キャパシタ(equalizing capacitor(s))を加えることでダイオードにおけるパルス形状の電流を軽減する方法が提案されている。追加的な等化キャパシタはDCバイアスに影響されないので、非常に小さく且つ安価であることができる。特許文献1の設計によれば、プッシュプルキャパシタは、全ての他のDC電流経路がこのときキャパシタによってブロックされるので、最後の段のダイオード及び変圧器のセンタータップを介して充電されなければならない。
【0006】
他の提案は、変圧器を接地せずに、最初の乗算器段の電圧の平均半分でそれをフローティング状態のままとすることで、最初の段のプッシュプルキャパシタを回避する。これは、最初の2つのプッシュプルキャパシタの除去、ひいては、損失の幾らかの関連する部分の除去を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/017793(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低損失の電圧増倍器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項の対象によって達成される。更なる例となる実施形態は、従属請求項及び下記の説明から明らかである。
【0010】
本発明の態様は、一連の乗算器段を有する電圧増倍器に係る。
【0011】
本発明の実施形態に従って、夫々の乗算器段は、第1の入力部、第2の入力部、第1の出力部及び第2の出力部を有する。前の乗算器段の第1及び第2の出力部は、次の乗算器段の第1及び第2の入力部と相互接続される。夫々の乗算器段は、同じ電流電導方向を有する2つの直列接続されたダイオード素子を有する。該2つの直列接続されたダイオード素子は、前記第1の入力部と前記第1の出力部とを相互接続し、前記第2の出力部は、前記2つの直列接続されたダイオード素子の間に結合される。夫々の乗算器段は、各自の第1の入力部と各自の第1の出力部とを相互接続するバッファキャパシタを有する。少なくとも一部の乗算器段は、各自の第2の入力部と各自の第2出力部とを相互接続するプッシュプルキャパシタを有する。最初の乗算器段の第1の入力部及び最後の乗算器段の第1の出力部は、負荷のための出力部を提供する。前記最初の乗算器段の第2の入力部は、AC電圧源のための入力部を提供する。前記最初の乗算器段のバッファキャパシタは、2つの直列接続されたバッファキャパシタ部分を有する。前記AC電圧源のための他の入力部は、前記2つのバッファキャパシタ部分の間に設けられる。
【0012】
タッピングポイントが二次変圧器巻線のセンタータップへ接続されるタップ付きキャパシタとして最初の段のバッファキャパシタを実現することで変圧器と最初の乗算器段との間のプッシュプルキャパシタを除くことが、本発明の基本的な考えと考えられてよい。このように、それらのキャパシタの損失は回避され、最初の乗算器段及び更なる乗算器段は、等化キャパシタを設けられてよく、よって、ダイオードにおける損失を回避する。
【0013】
本発明の更なる態様は、そのような電圧増倍器を備えた高電圧電源及びX線撮像装置に係る。本発明のそれらの及び他の態様は、以降で記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に従う電圧増倍器の回路図を示す。
【
図2】本発明の実施形態に従うX線撮像装置の高電圧部品を図解的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態は、添付の図面を参照して更に詳細に記載される。
【0016】
図1は、4つの乗算器段12a、12b、12c、12dを有する電圧増倍器10を示す。
【0017】
最初の乗算器段12aは、直列に接続されており且つ同じ導電方向を有するダイオード素子D1、D2の第1の組を有する。ダイオード素子D1、D2は夫々、1つのダイオード、又は直列に接続された複数の個別ダイオードを有してよい。
【0018】
最初の乗算器段12aのバッファキャパシタC3は、その乗算器段の第1の入力部16a及び第1の出力部16bの間に接続されている。直列接続されたダイオード素子D1、D2の組の一端は、最初の乗算器段12aの第1の入力部16aへ接続されている。直列接続されたダイオード素子D1、D2の組の他端は、最初の乗算器段12aの第1の出力部16bへ接続されている。
【0019】
直列接続されたダイオード素子D1、D2の組は、正の電流が第1の入力部16aから第1の出力部16bへ流れることができるように配置される。この極性は、より容易な理解のために選択されている。電圧増倍器10は、それがX線システムにおいて選択され得るとして、負の極性により同様に動作する。以下で、説明は、正の出力極性に基づき続けられる。
【0020】
等化キャパシタC13の一端は、2つのダイオード素子D1、D2の間に結合されている。等化キャパシタC13の他端は、最初の乗算器段12aの第2の入力部14aへ及び最初の乗算器段12aの第2の出力部14bへ接続されている。第2の入力部14a及び第2の出力部14bは互いに直接接続されている。
【0021】
最初の乗算器段12aは、直列接続されたダイオード素子D3、D4の第2の組と、ダイオード素子D3、D4及び等化キャパシタC13に対して対称に配置される第2の等化キャパシタC14とを有してよい。
図1に示される電圧増倍器10は、夫々の段について二組のダイオード素子D1、D2、D3、D4を有することから、バイポーラ電圧増倍器10と見なされてよい。なお、電圧増倍器は、ただ一組のダイオード素子D1、D2を備えたユニポーラ電圧増倍器であることも可能である。
【0022】
ダイオード素子D3、D4の第2の組の一端は、第1の入力部16aへ接続されている。ダイオード素子D3、D4の第2の組の他端は、第1の出力部16bへ接続されている。ダイオード素子D1、D2の組と同じく、ダイオード素子D3、D4の組は、正の電流が第1の入力部16aから第1の出力部16bへ流れることができるように配置される。
【0023】
加えて、等化キャパシタC14の一端は、2つのダイオード素子D3、D4の間に結合されている。等化キャパシタC14の他端は、最初の乗算器段12aの第3の入力部18aへ及び最初の乗算器段12aの第3の出力部18bへ接続されている。第3の入力部18a及び第3の出力部18bは互いに直接接続されている。
【0024】
また、第2の、中間にある乗算器段12b(又は第3の、中間にある乗算器段12c)はそれらの部品、特に、ダイオード素子D5、D6(D9、D10)の第1の組、及び場合により、ダイオード素子D7、D8(D11、D12)の第2の組と、バッファキャパシタC6(C9)と、等化キャパシタC15(C17)、及び場合により、C16(C18)とを有する。
【0025】
最初の乗算器段12aの出力部14b、16b、18bは、第2の乗算器段12bの入力部14b、16b、18bであり、第2の乗算器段12bは、第3の乗算器段12cの入力部14c、16c、18cである出力部14c、16c、18cを有する。同様に、出力部14d、16d、18dは、第4の、最後の乗算器段12dの入力部14d、16d、18dである。
【0026】
第2の乗算器段12bは、第1のプッシュプルキャパシタC4が入力部14bと等化キャパシタC15の一端との間に接続されている点で、最初の乗算器段12aと相違する。そのようにして、入力部14b及び出力部14cはキャパシタC4によってデカップリングされる。第2の乗算器段12bは、等化キャパシタC16の一端へ接続されて、出力部18cから入力部18bをデカップリングする第2のプッシュプルキャパシタC5を更に有する。
【0027】
第3の乗算器段12cは、同じく第2の乗算器段12bのように設計され、やはり2つのプッシュプルキャパシタC7、C8を有する。
【0028】
最後の乗算器段12dは、中間にある乗算器段12b、12cと同様であり、バッファキャパシタC12によって相互接続されている、直列接続されたダイオード素子D13、D14の組、及び場合により、第2の組D15、D16を有する。なお、最後の乗算器段12dは、等化キャパシタを有さず、プッシュプルキャパシタC10、及び場合により、C11しか有さない。
【0029】
最後の乗算器段12dの出力部16e及び最初の乗算器段12aの入力部16aは、電圧増倍器10の出力部16a、16eを提供する。負荷、例えば、X線管が、それらの出力部16a、16eへ接続されてよく、出力部16a、16eは、最大約160kVの電圧を供給してよい。
【0030】
最初の乗算器段12aを除く全てが(単独の)バッファキャパシタC6,C9、C12と、2つの(単独の)プッシュプルキャパシタC4、C5、C7、C8、C10、C11とを有し、且つ、乗算器段12b、12c、12dは直列接続されていると見なされ得るので、電圧増倍器は、キャパシタの3つのチェーン、すなわち、バッファキャパシタC6、C9、C12のチェーン22と、プッシュプルキャパシタC4、C7、C10の第1のチェーン24aと、プッシュプルキャパシタC5、C8、C11の第2のチェーン24bとを有する。
【0031】
最初の乗算器段12aの入力部14a、18aは、電圧増倍器10の第2の入力部14a及び第2の入力部18aを提供する。第1の入力部20は、バッファキャパシタC3をタッピングすることで設けられる。
【0032】
特に、最初の乗算器段12aは、バッファキャパシタC3が、直列接続されたキャパシタC3a、C3bであることができる2つのキャパシタ部分C3a及びC3bを有する点で、他の乗算器段12b、12c、12dとは更に相違する。バッファキャパシタC3はまた、タップ付きキャパシタC3と見なされてよい。2つのキャパシタC3a、C3bの間のタッピングポイント20又は点20は、電圧増倍器10の第1の入力部20を提供する。
【0033】
入力部20、14a、18aはAC電圧源へ接続されてよい。AC電圧源は、入力部14a、18bに交流電圧を、そして、入力部20に中性点電圧を供給する。入力部14a、18aでの交流電圧によれば、乗算器段12a乃至12dのカスケードは、出力部16a、16eでDC出力電圧を生成するよう、電圧値を上げながらキャパシタC3、C6、C9、C12を充電する。
【0034】
電圧増倍器10は、X線撮像装置(例えば、医用、材料解析用及び/又は手荷物検査用撮像装置)のための高電圧整流器モジュール及び他の高電圧発生器において、例えば、静電粒子フィルタにおいて、使用されてよい。
【0035】
例えば、
図2は、電圧増倍器10を備えた高電圧源32を有するX線撮像装置30を示す。入力部14a、20、18aは、1つの一次巻線36及び直列接続された2つの二次巻線38a、38bを備えた高電圧源32の変圧器34へ接続されている。電圧増倍器10の中性点入力部20は、二次巻線38a、38bの間で変圧器34のセンタータップ40へ接続されている。よって、変圧器センタータップ40は、2つのキャパシタC3a、C3bの間のタップ20へ接続される。残り2つの入力部14a、18aは、二次巻線38a、38bの残りの端部へ接続されている。変圧器34の一次巻線36は、電力網から電圧を供給されてよい。
【0036】
バッファキャパシタC3を2つの別個のキャパシタ(C3a及びC3b)に分けることによって、電圧増倍器10は、最初の乗算器段12aにおけるプッシュプルキャパシタ、すなわち、入力部14a、18bを等化キャパシタC13、C14とともに相互接続しているプッシュプルキャパシタの必要なく、等化電流成形キャパシタC13乃至C18を使用してよい。
【0037】
最初の乗算器段12aのプッシュプルキャパシタの回避によれば、それらのキャパシタに関する損失も回避され得る。等化キャパシタC13乃至C18によれば、それらは小さいACキャパシタC13乃至C18であってよく、更にダイオード素子における損失が低減され得る。特許文献1において表されているように、完全なプッシュプルチェーンの適切な充電が達成されるとして、キャパシタC13乃至C18はAC負荷にしかさらされず、DCバイアスに影響されない。これは、関連してシステムのサイズ及び費用に寄与しない非常に小さいキャパシタC13乃至C18の利用を可能にすることができる。
【0038】
なお、キャパシタC13乃至C18に対するバイアス条件は、最初の乗算器段12aの上記のプッシュプルキャパシタを除くために、変圧器34のセンタータップ40が接地入力部20へ接続されない場合に、再び現れてよい。この効果の根本的な理由は、プッシュプルキャパシタチェーンにおける全てのDC電流経路がキャパシタによってブロックされるために、このチェーンに沿ってバイアス電荷を確立するのが不可能であることである。
【0039】
全てのプッシュプルキャパシタC4、C5、C7、C8、C10、C11は同じキャパシタ値、例えば、値Cを有してよい。また、全てのバッファキャパシタC6、C9、C12は同じ容量値を有してよい。この容量値は、プッシュプルキャパシタの容量値Cと等しくてよい。
【0040】
最初の乗算器段12aの等化キャパシタC13、C14はC/6の容量値を有してよい。第2の乗算器段12bの等化キャパシタC15、C16はC/3の容量値を有してよい。第3の乗算器段12dの等化キャパシタC17、C18はCの容量値を有してよい。
【0041】
接地20へ接続されているキャパシタC3aは6Cの値を有してよく、一方、キャパシタC3bは2Cの値を有してよい。キャパシタのこのような大きさ決めは、残りのプッシュプルキャパシタC4、C5、C7、C8、C10、C11のバイアス電荷と組み合わせて、2つのキャパシタC3a及びC3b上の等しい電圧と、プッシュプルチェーンの全てのキャパシタでの正確な電圧とにつながり、よって、等化キャパシタにおけるバイアス電圧を回避する。
【0042】
電圧増倍器10の起動中に、DCバイアスを印加されているキャパシタC4乃至C12、すなわち、バッファキャパシタ及びプッシュプルキャパシタは、出力部16e、16aの間の出力電圧Vの数分の1(例えば、1/4)まで充電される。これは、キャパシタC4乃至C12においてある期間DC電流フローを必要とする。このフェーズの終了後、全てのキャパシタC4乃至C12は、出力電圧Vの数分の1の電圧を有するべきである。すなわち、タップ付きキャパシタC3は、2つの部分C3a及びC3bの夫々でこの電圧の半分を有するべきである。また、等化電流成形キャパシタC13乃至C18は、起動の完了後にDCバイアスを有さないと考えられてよい。
【0043】
プッシュプルチェーン24a、24bの充電電流は、このとき、最後の整流器段12dからプッシュプルキャパシタの各チェーン24a、24bを通って且つ変圧器34及びキャパシタC3aを通って接地20へ進んでいる。これは、キャパシタC3aが他のキャパシタと比較して大きくされない場合に、キャパシタC3aでの電圧の更なる増大をもたらす。キャパシタC3aは、通常は、最初の乗算器段12aの電圧の半分でバッファチェーン22及び2つのプッシュプルチェーン24a、24bの電荷の和を保持すべきである。
【0044】
一般に、第1のバッファキャパシタ部分C3aの容量値は、プッシュプルキャパシタC4、C5、C7、C8、C10、C11の直列接続24a、24bの容量値と、最初の段を除く全てのバッファキャパシタC6、C9、C12の直列接続の容量値との和に比例する。
【0045】
図1に示されるバイポーラ電圧増倍器10の場合に、及び全てのキャパシタが同じ容量値Cを有する場合に、それらの値は、nが段の数であるとして、チェーン24a、24b及び22についてC/(n−1)であり、3C/(n−1)が得られる。
【0046】
ユニポーラ電圧増倍器の場合には、チェーン24a及び22しか存在せず、和は2C/(n−1)である。
【0047】
最初の乗算器段12aは半分の電圧にあり且つ電荷の和を保持すべきであると考えられるので、上記の和は2(n−1)を乗じられ、バイポーラ電圧増倍器については6C、又はユニポーラ電圧増倍器については4Cの値が得られる。
【0048】
第2のバッファキャパシタ部分C3bの容量値は、最初の段を除く全てのバッファキャパシタC6、C9、C12の直列接続の容量値に比例する。全てのキャパシタが同じ容量値Cを有する場合に、この値はチェーン22についてC/(n−1)である。キャパシタC3aと同じく、C3bについて、2Cが得られる。
【0049】
電圧容量を理由として、電圧増倍器10におけるバッファキャパシタC3、C6、C9、C12は直列な複数のキャパシタから形成されてよく、故に、キャパシタC3のセンタータップは、直列な偶数個のキャパシタがC3を実現するために使用される全ての場合において、予め存在してよい。部分C3bは変更されないままであり、一方、C3aは容量を3倍にされる必要がある。
【0050】
実際には、これは、先のプッシュプルキャパシタを、それらのACポジションから、最も低いバッファキャパシタの半分への並列接続にシフトするようなものである。なお、DCバッファチェーン22におけるリップル電流負荷は、プッシュプルチェーン24a、24bにおけるよりもずっと低く、それにより、ACキャパシタC13乃至C18における損失はほぼ完全に取り除かれ得る。大きく且つ高価なACキャパシタC13乃至C18に代えて、ずっと小さく且つ安価なDCタイプのキャパシタC13乃至C18が使用されてよい。
【0051】
要約すると、プッシュプルキャパシタC4、C5、C7、C8、C10、C11及びバッファキャパシタC6、C9、C12の配置が開示されており、この配置は、整流器ダイオード素子D1乃至D16において低ストレス波形を保ちながら多数のプッシュプルキャパシタを削除する。高電圧整流の費用は削減され、効率は改善され、より小さいサイズが実現される。これは、医用X線撮像に、特に、CT及びCV用途に特に関連がある。
【0052】
本発明は、図面及び上記の説明において詳細に図示及び記載されてきたが、そのような図示及び記載は制限ではなく例示であると考えられるべきである。すなわち、本発明は、開示されている実施形態に制限されない。開示されている実施形態に対する他の変形は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求されている発明を実施する当業者によって理解及び達成され得る。特許請求の範囲において、語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、単称(a又はan)は複数個を除外しない。単一のプロセッサ若しくはコントローラ又は他のユニットが、特許請求の範囲で挙げられている複数の項目の機能を満たしてよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項で挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すわけではない。特許請求の範囲における如何なる参照符号も、適用範囲を制限するよう解されるべきではない。
【要約】
電圧増倍器10は一連の乗算器段12a,12b,12c,12dを有する。各乗算器段、例えば、12bは、第1及び第2の入力部16b,14bと、第1及び第2の出力部16c,14cとを有する。前の乗算器段の第1及び第2の出力部は次の乗算器段の第1及び第2の入力部と相互接続される。更に、各乗算器段、例えば、12bは、同じ電流電動方向を有する2つの直列接続されたダイオード素子D5,D6を有する。ダイオード素子D5,D6は第1の入力部16bと第1の出力部16cとを相互接続する。第2の出力部14cはダイオード素子D5,D6の間に結合される。各乗算器段、例えば、12bは、第1の入力部16bと第1の出力部16cとを相互接続するバッファキャパシタC6を有する。少なくとも一部の乗算器段、例えば、12bは、第2の入力部14bと第2の出力部14cとを相互接続するプッシュプルキャパシタC4を有する。最初の乗算器段12aの第1の入力部16a及び最後の乗算器段12dの第1の出力部16eは負荷42のための出力部を提供する。最初の乗算器段12aの第2の入力部14aはAC電圧源のための入力部を提供する。最初の乗算器段12aのバッファキャパシタC3は2つの直列接続されたバッファキャパシタ部分C3a,C3bを有する。AC電圧源34のための入力部20はバッファキャパシタ部分C3a,C3bの間に設けられる。