特許第5767441号(P5767441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767441
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】有害物質分解材
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20150730BHJP
   B01J 23/74 20060101ALI20150730BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B01D53/86
   B01J23/74
   B01J37/08
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-94511(P2010-94511)
(22)【出願日】2010年4月15日
(65)【公開番号】特開2011-194393(P2011-194393A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2013年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-40777(P2010-40777)
(32)【優先日】2010年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰美
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕次
(72)【発明者】
【氏名】前馬 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 真実
(72)【発明者】
【氏名】堀口 晋市
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−007156(JP,A)
【文献】 特開昭52−030283(JP,A)
【文献】 特開2004−337731(JP,A)
【文献】 特開昭51−054888(JP,A)
【文献】 特開2001−321677(JP,A)
【文献】 特開2009−082908(JP,A)
【文献】 特開平05−345130(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/065125(JP,A1)
【文献】 特開2009−291714(JP,A)
【文献】 特開平11−333235(JP,A)
【文献】 特開平08−266602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
B01J 23/74
B01J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物と、コバルトと、カ−ボンブラック、黒鉛、コークス、活性炭、褐炭、泥炭、豆炭、カ−ボンナノチュ−ブ、カ−ボンナノホ−ン、カ−ボンナノファイバ−及びカ−ボンフィブリルからなる群より選択される1種又は2種以上の炭素材料とを含有する原料の炭素化により得られ、光触媒及び貴金属触媒を含むことなくホルムアルデヒド又は一酸化炭素を分解する触媒活性を有する炭素触媒と、
前記炭素化後に前記炭素触媒が担持された有機繊維基材と、
を含む
ことを特徴とするホルムアルデヒド又は一酸化炭素分解材。
【請求項2】
前記有機繊維基材は、紙基材である
ことを特徴とする請求項1に記載されたホルムアルデヒド又は一酸化炭素分解材。
【請求項3】
前記炭素触媒を含む原料スラリーの抄紙により得られた
ことを特徴とする請求項に記載されたホルムアルデヒド又は一酸化炭素分解材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質分解材に関し、特に、有害物質を分解する炭素触媒を含む有害物質分解材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質を除去する方法としては、例えば、二酸化チタン等の光触媒を使用する方法、活性炭やゼオライト等の吸着剤を使用する方法、白金等の貴金属触媒を使用する方法があった。特許文献1には、紙基材の表面を、バインダーと光触媒とを含有するコート剤で被覆してなる光触媒含有シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の有害物質除去方法には次のような問題があった。すなわち、光触媒は、その光触媒反応を起こすために十分な光量を必要とするため、光源のない環境では使用することができなかった。吸着材は、使用に伴い吸着能力が低下するため、繰り返しの使用には不向きであった。貴金属は、高価であり、埋蔵量による制限を受けるため、汎用性に乏しかった。
【0005】
また、光触媒を基材に担持して使用する場合には、光触媒反応によって当該基材が劣化するという問題があった。そこで、従来、特許文献1に記載のように、光触媒と基材との直接接触を避けるため、当該光触媒及び基材をコーティングする等の特殊な加工を施す工夫がなされてきた。
【0006】
しかしながら、光触媒をコーティングする場合には、当該光触媒の性能が低下することを避けることはできなかった。また、基材の劣化を低減するための特殊な加工は、製造方法を煩雑化させることとなっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、基材を劣化させることなく有害物質を効果的に分解する有害物質分解材を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る有害物質分解材は、有害物質を分解する触媒活性を有する炭素触媒と、前記炭素触媒を担持する基材と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、基材を劣化させることなく有害物質を効果的に分解する有害物質分解材を提供することもできる。
【0009】
また、前記有害物質は、揮発性有機化合物であることとしてもよい。この場合、前記揮発性有機化合物は、アルデヒド類及びその酸化物であることとしてもよい。また、前記炭素触媒は、有機物と金属とを含有する原料の炭素化により得られたこととしてもよい。
【0010】
また、前記基材は、繊維基材であることとしてもよい。この場合、前記繊維基材は、有機繊維基材であることとしてもよい。また、この場合、前記有機繊維基材は、紙基材であることとしてもよい。さらに、この場合、前記有害物質分解材は、前記炭素触媒を含む原料スラリーの抄紙により得られたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材を劣化させることなく有害物質を効果的に分解する有害物質分解材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の一実施形態に係る実施例において、紙基材に炭素触媒を担持してなる有害物質分解材を走査型電子顕微鏡で観察した結果の一例を示す説明図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る実施例において、炭素触媒を担持していない紙基材を走査型電子顕微鏡で観察した結果の一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実施例におけるホルムアルデヒド分解試験の結果の一例を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実施例における基材の劣化試験の結果の一例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る実施例における一酸化炭素酸化分解試験の結果の一例を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る実施例における抗菌性試験の結果の一例を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る実施例におけるかび抵抗性試験の結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0014】
本実施形態に係る有害物質分解材(以下、「本分解材」という。)は、有害物質を分解する触媒活性を有する炭素触媒と、当該炭素触媒を担持する基材と、を有する。
【0015】
本分解材に含まれる炭素触媒は、それ自身が有害物質を分解する触媒活性を有する炭素材料である。すなわち、本分解材は、基材に担持された炭素触媒の触媒活性を効果的に利用することにより、有害物質を分解する。本分解材により分解される有害物質は、気体であってもよいし、水その他の溶媒中に溶解されていてもよい。
【0016】
本分解材により分解される有害物質(すなわち、炭素触媒により分解される有害物質)としては、例えば、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound:VOC)が挙げられる。
【0017】
VOCとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノネナール、アクロレイン等のアルデヒド類、ギ酸、酢酸、イソ吉草酸、酪酸、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、蟻酸メチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フェノブカルブ等のエステル類、トルエン、キシレン、フェノール、スチレン、ベンゼン、エチルベンゼン、安息香酸、リモネン、クメン等の芳香族炭化水素類、メタン、エタン、プロパン、ヘキサン、ペンタン、テトラデカン、シクロへキサン、シクロペンタノン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、インドール等の複素環類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、シクロヘキシルアミン、N−メチル−2−ピロリドン等のアミン類、クロルピリホス、ダイアジノン等のリン化合物類、四塩化炭素、クロロメタン、クロロホルム、クロロエチレン、パラジクロロベンゼン等の塩素化合物類からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。すなわち、本分解材は、例えば、アルデヒド類、又はアルデヒド類及びその酸化物を分解する分解材とすることができる。
【0018】
また、本分解材により分解される有害物質としては、例えば、悪臭物質が挙げられる。悪臭物質としては、例えば、腐卵臭を生じる硫黄化合物、体臭や排泄物臭を生じるアミン類、カルボン酸類及びアルデヒド類、醗酵した臭いを生じるアルコール類、塗料等に含まれるケトン類、エステル類及び芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0019】
より具体的に、悪臭物質としては、例えば、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン等の硫黄化合物、アンモニア、トリメチルアミン等のアミン類、プロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸、イソ吉草酸等のカルボン酸類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド等のアルデヒド類、イソブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、スチレン、キシレン等の芳香族炭化水素類、オゾンからなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0020】
また、炭素触媒は、上述のように有害物質を分解する触媒活性を有することに加えて、有毒ガスを酸化分解する触媒活性を有する炭素材料とすることもできる。本分解材により酸化分解される有毒ガス(すなわち、炭素触媒によって酸化分解される有毒ガス)としては、例えば、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。すなわち、本分解材は、例えば、常温又は高温で一酸化炭素を酸化分解することができる。また、本分解材は、例えば、常温でも窒素酸化物及び/又は硫黄酸化物を酸化分解することができる。この場合、本分解材は、いわゆるセルフクリーニング機能を有することができる。
【0021】
また、炭素触媒は、上述のように有害物質を分解する触媒活性を有することに加えて、当該有害物質を実質的に吸着しない炭素材料とすることもできる。この場合、例えば、有害物質を実質的に吸着しない基材を使用することにより、本分解材は、有害物質を実質的に吸着しない分解材とすることができる。
【0022】
また、炭素触媒は、比較的低い温度の環境下においても有害物質を分解することができる。この場合、本分解材は、例えば、0℃以上で有害物質を分解することができる。より具体的に、本分解材が有害物質を分解する温度は、例えば、0℃以上、300℃以下とすることができ、0℃以上、100℃以下とすることができ、0℃以上、40℃以下とすることもできる。
【0023】
また、炭素触媒は、有機物と金属とを含有する原料の炭素化により得られた炭素材料とすることができる。この場合、原料に含まれる有機物は、炭素化できるもの(炭素源として使用できるもの)であれば特に限られず、任意の1種又は2種以上を使用することができる。
【0024】
すなわち、有機物としては、例えば、高分子量の有機化合物(例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂)及び低分子量の有機化合物の一方又は両方を使用することができる。また、例えば、植物廃材等のバイオマスを使用することもできる。
【0025】
有機物としては、例えば、窒素を含有する有機物を好ましく使用することができる。窒素を含有する有機物は、その分子内に窒素原子を含む有機化合物を含有するものであれば特に限られず、任意の1種又は2種以上を使用することができる。
【0026】
有機物としては、例えば、金属に配位可能な配位子を好ましく使用することができる。すなわち、この場合、その分子内に1又は複数個の配位原子を含む有機化合物を使用する。より具体的に、例えば、配位原子として、その分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子からなる群より選択される1種又は2種以上を含む有機化合物を使用することができる。また、例えば、配位基として、その分子内にアミノ基、フォスフィノ基、カルボキシル基、チオール基からなる群より選択される1種又は2種以上を含む有機化合物を使用することもできる。
【0027】
具体的に、有機化合物としては、例えば、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3−メチルポリピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、ピラン、モルホリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾ−ル、キノキサリン、アニリン、ポリアニリン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリスルフォン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ベンゾイミダゾ−ル、ポリベンゾイミダゾ−ル、ポリアミド、ポリエステル、ポリ乳酸、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエ−テル、ポリエ−テルエ−テルケトン、セルロ−ス、リグニン、キチン、キトサン、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、アイオノマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリアミドアミン、ポリカルボジイミド、ポリアクリロニトリル−ポリメタクリル酸共重合体、フェノール樹脂、メラミン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0028】
廃材等のバイオマスとしては、例えば、酒粕、麹、コーヒー出し殻、お茶出し殻、ビール絞り粕、米ぬか等の食品産業廃棄物、林地残材、建築廃材等の木質系廃材、下水汚泥等の生活系廃材からなる群より選択される1種又は2種以上を使用することができる。有機物は、例えば、炭素触媒の活性を向上させる成分として、ホウ素、リン、酸素、硫黄からなる群より選択される1種又は2種以上をさらに含有することもできる。
【0029】
原料に含まれる金属は、炭素触媒の触媒活性を阻害しないものであれば特に限られず、任意の1種又は2種以上を使用することができる。すなわち、金属としては、例えば、遷移金属を好ましく使用することができ、周期表の3族から12族の第4周期に属する金属を特に好ましく使用することができる。
【0030】
具体的に、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、亜鉛、銅、クロムからなる群より選択される1種又は2種以上を好ましく用いることができ、コバルト、鉄、マンガン、ニッケルを特に好ましく使用することができる。
【0031】
金属としては、当該金属の単体又は当該金属の化合物を使用することができる。金属化合物としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭素化物、金属錯体を使用することができ、金属塩、金属酸化物、金属硫化物、金属錯体を好ましく使用することができる。なお、上述の有機化合物として配位子を使用する場合には、原料中において金属錯体が形成されることとなる。
【0032】
炭素触媒の原料は、さらに炭素材料を含有することもできる。この炭素材料は、その全体又は一部が炭素化された材料であれば特に限られず、任意の1種又は2種以上を使用することができる。すなわち、この炭素材料としては、例えば、それ自身は触媒活性を有しないものを使用することができる。
【0033】
具体的に、例えば、有機物の炭素化により得られた炭素材料又は天然鉱物であって、それ自身は触媒活性を有しないものを使用することができる。より具体的に、例えば、カ−ボンブラック(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック)、黒鉛、コークス、活性炭、褐炭、泥炭、豆炭、カ−ボンナノチュ−ブ、カ−ボンナノホ−ン、カ−ボンナノファイバ−、カ−ボンフィブリルからなる群より選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
原料の炭素化は、上述のような有機物と金属とを含有する原料を加熱して、当該原料を炭素化できる所定温度(炭素化温度)で保持することにより行う。炭素化温度は、原料を炭素化できる温度であれば特に限られず、例えば、300℃以上とすることができ、好ましくは700℃以上とすることができる。より具体的に、炭素化温度は、例えば、300〜3000℃の範囲とすることができ、好ましくは700〜2000℃の範囲とすることができ、より好ましくは700〜1500℃の範囲とすることができる。
【0035】
炭素化温度までの昇温速度は、例えば、0.5〜300℃/分の範囲とすることができる。上述の炭素化温度で原料を保持する時間は、例えば、5分〜24時間の範囲とすることができ、好ましくは20分〜5時間の範囲とすることができる。炭素化は、窒素等の不活性ガスの流通下で行うことが好ましい。
【0036】
炭素触媒は、例えば、原料の炭素化により得られた炭素材料を粉砕したものとすることもできる。粉砕方法は、特に限られず、例えば、ボールミルやビーズミル等の粉砕装置を使用することができる。粉砕後の炭素触媒の平均粒径は、例えば、1000μm以下とすることができ、好ましくは150μm以下とすることができる。
【0037】
炭素触媒は、例えば、原料の炭素化により得られた炭素材料に対して、金属の含有量を減少させ又は金属を除去する洗浄処理を施して得られた炭素材料とすることもできる。この洗浄処理には、例えば、塩酸や硫酸等の酸を好ましく使用することができる。
【0038】
炭素触媒は、例えば、原料の炭素化により得られた炭素材料を賦活化して得られた炭素材料とすることもできる。賦活方法は特に限られず、例えば、アンモオキシデーション、二酸化炭素賦活、リン酸賦活、アルカリ賦活、水蒸気賦活を使用することができる。
【0039】
炭素触媒は、例えば、原料の炭素化により得られた炭素材料に熱処理を施して得られる炭素材料とすることもできる。この熱処理は、炭素化により得られた炭素材料を、さらに所定の温度で保持することにより行う。熱処理の温度は、例えば、300〜1500℃の範囲とすることができる。
【0040】
炭素触媒は、例えば、原料の炭素化により得られた炭素材料に対して、金属含浸法、メカニカルアロイング法等の方法により金属を添加して得られた炭素材料とすることもできる。炭素化後に添加する金属は、炭素材料の触媒活性を阻害しないものであれば特に限られず、例えば、チタン、マンガン、ニッケル、ジルコニウム、コバルト、アルミニウム、鉄、ニオブ、バナジウム、マグネシウム、パラジウム、カルシウム、亜鉛、白金類金属を好ましく使用することができる。
【0041】
本分解材に含まれる基材は、上述のような炭素触媒を担持できるものであれば特に限られず、任意の1種又は2種以上を使用することができる。
【0042】
基材としては、例えば、繊維基材を使用することができる。繊維基材としては、有機繊維基材を使用することができる。有機繊維基材としては、紙基材又は有機繊維の布基材を使用することができる。
【0043】
紙基材を構成する有機繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ等の木材パルプや、コットンリンターパルプ、ケナフ、バンブー、バガス、麻、バナナ、ケブラー(トワロン)等の非木材パルプが挙げられる。
【0044】
布基材としては、例えば、有機繊維の不織布、織布又は編物を使用することができる。布材を構成する有機繊維としては、例えば、綿、絹、麻、毛等の天然有機繊維や、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、アセテ−ト繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリ塩化ビニル繊維等の合成有機繊維が挙げられる。
【0045】
また、繊維基材としては、無機繊維基材を使用することもできる。無機繊維基材を構成する無機繊維としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維が挙げられる。
【0046】
なお、本分解材に含まれる有機繊維基材は、例えば、光触媒を担持した場合には当該光触媒による光触媒反応によって劣化するような、有機繊維を主成分とする繊維基材であればよく、さらに無機繊維等の他の成分が添加されたものであってもよい。
【0047】
また、基材としては、樹脂成形体を使用することもできる。この場合、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエ−テル、ポリサルホン、フェノ−ル樹脂、フェノ−ルホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、カルボジイミド樹脂、ユリア樹脂等の樹脂を所定の形状に成形して得られる樹脂成形体を使用することができる。また、基材としては、セラミックス(例えば、アルミナやコージライト)タイル、ガラス等の無機材料や、金属を使用することもできる。
【0048】
基材の形状は、当該基材による炭素触媒の担持が可能であれば特に限られず、例えば、シート状、フィルム状、繊維状、網状、プレート状、板状、ハニカム状、プリーツ状、コルゲート状、コルゲートハニカム状、ペレット状、粒状、わた状、ウール状、ブロック状、円柱状、多角柱状、中空体、発泡体、多孔質体とすることができる。
【0049】
すなわち、これらの場合、本分解材の形状もまた、シート状、フィルム状、繊維状、網状、プレート状、板状、ハニカム状、プリーツ状、コルゲート状、コルゲートハニカム状、ペレット状、粒状、わた状、ウール状、ブロック状、円柱状、多角柱状、中空体、発泡体、多孔質体とすることができる。また、本分解材は、例えば、紙、織物、編地、不織布等の繊維体や、フィルター、塗工シート、多層体とすることができる。
【0050】
本分解材において、基材は、炭素触媒の表面の少なくとも一部が露出するように、当該基材の表面及び/又は内部に当該炭素触媒を担持する。
【0051】
繊維基材を使用する場合には、例えば、当該繊維基材の製造時に、繊維間に炭素触媒を取り込むことにより、又は予め製造された当該繊維基材に炭素触媒を付着させることにより、当該炭素触媒を当該繊維基材に担持することができる。
【0052】
繊維基材への炭素触媒の担持は、例えば、当該繊維基材にバインダーを介して当該炭素触媒を付着させることにより行うことができる。また、繊維基材を構成する繊維の融点付近での融着により、当該繊維基材に炭素触媒を付着させることもできる。この場合、バインダーを使用することなく、炭素触媒を繊維基材に直接担持させることができる。
【0053】
紙基材を使用する場合、本分解材は、例えば、炭素触媒を含む原料スラリーの抄紙により得られた分解材とすることができる。すなわち、この場合、まず、紙繊維原料(例えば、パルプ)と炭素触媒とを混合することにより、当該紙繊維原料と炭素材料とを含む原料スラリー(例えば、パルプスラリー)を調製し、次いで、当該原料スラリーを用いて抄紙を行うことにより、本分解材を製造することができる。抄紙方法としては、公知の方法を使用することができる。
【0054】
この場合、バインダーを使用することなく、炭素触媒を紙基材に直接担持させることができる。また、抄紙においては、従来公知のサイズ剤、填料、紙力増強剤、染料、塗料等の添加剤を使用することもでき、当該添加剤を使用しないとすることもできる。これらの方法により、炭素触媒が紙基材から脱落する問題(いわゆる粉落ち)を効果的に回避することができる。また、一般的な抄紙方法をそのまま利用できるため、簡便な方法によって、優れた有害物質分解性能を有する本分解材を確実に製造することができる。なお、紙基材への炭素触媒の担持は、上述の抄紙に限られず、例えば、予め製造された当該紙基材に、バインダーを介して当該炭素触媒を付着させることにより行うこともできる。
【0055】
無機繊維基材を使用する場合には、例えば、樹脂による融着、無機繊維の表面処理又はハイブリダイゼーションにより、本分解材を製造することができる。また、本分解材は、例えば、フィルター(例えば、ハニカム状のフィルター)を構成する繊維基材と、当該フィルターに充填された炭素触媒と、を含むものとすることもできる。
【0056】
基材として樹脂成形体を使用する場合には、例えば、当該樹脂成形体を構成する樹脂の融点付近での融着により、当該樹脂基材に炭素触媒を付着させることができる。また、本分解材は、例えば、樹脂と炭素触媒との混合物の成形体とすることもできる。この場合、例えば、樹脂原料を溶融し又は溶媒で溶解し、次いで当該樹脂原料に炭素触媒を分散した後、得られた混合物を所定の形状に成形することにより、本分解材を製造することができる。
【0057】
本分解材は、基材を劣化させることなく有害物質を効果的に分解する。すなわち、本分解材に含まれる炭素触媒は、有害物質を効果的に分解する優れた触媒活性を有することに加えて、当該触媒活性の発現により基材を劣化させることがない。
【0058】
このため、本分解材においては、例えば、上述のように、炭素触媒を基材に直接担持することができる。したがって、本分解材は、炭素触媒が有する触媒活性を最大限に利用して、優れた有害物質分解性能を発揮することができる。また、本分解材は、煩雑で特殊な加工を含まない簡便な方法により、効率よく且つ確実に製造することができる。
【0059】
また、本分解材は、例えば、基材に担持されていない炭素触媒より高い有害物質分解性能を有することができる。すなわち、例えば、所定量の炭素触媒を基材に担持してなる本分解材は、当該基材に担持されていない当該所定量の炭素触媒に比べて、大きな有害物質分解速度を示すことができる。
【0060】
また、光触媒がその触媒活性を発揮する上では、当該光触媒への光照射が必要となるが、本分解材による有害物質の分解には、そのような光照射は必要ない。したがって、本分解材は、光源のない環境(例えば、遮光下)においても、有害物質を効果的に分解することができる。
【0061】
また、本分解材による有害物質の分解は、炭素触媒の触媒活性に基づくものであり、且つ当該炭素触媒の触媒反応は基材を劣化させない。このため、本分解材は、繰り返し、長期間にわたって使用することができる。したがって、本分解材を使用することにより、環境負荷やランニングコストを効果的に低減しつつ有害物質を効率よく分解することができる。
【0062】
また、本分解材に含まれる炭素触媒は、それ自身で優れた触媒活性を示すため、本分解材は、光触媒や貴金属触媒を含むことなく、有害物質を効果的に分解することができる。したがって、本分解材は、安価で汎用性の高い有害物質分解材とすることができる。
【0063】
また、本分解材は、優れた抗菌性やかび抵抗性を有することもできる。したがって、本分解材は、例えば、抗菌性やかび抵抗性が要求されるような用途にも使用することができる。
【0064】
本分解材を使用して有害物質を分解する方法においては、例えば、本分解材を、除去すべき有害物質を含有する流体(気体又は液体)と接触させる。具体的に、例えば、本分解材を、VOC等の有害物質を含有する気体と接触させることにより、当該有害物質を分解する。また、例えば、本分解材を、CO、NOx、SOx等の有毒ガスを含有する気体と接触させることにより、当該有毒ガスを酸化分解することもできる。
【0065】
なお、本分解材は、他の有害物質除去材と併用することもできる。すなわち、例えば、本分解材と、他の有害物質分解材及び/又は有害物質吸着剤と、を組み合わせて使用することもできる。
【0066】
また、本分解材の用途としては、例えば、有害物質の分解や一酸化炭素の酸化分解等に関連して、内燃機関等における排ガス浄化、喫煙品(タバコフィルター)、改質ガス中のCO選択酸化(例えば、水素リッチガス等の燃料改質ガス中のCO除去)、ガスセンサー(電気化学的酸化含む)、高純度ガスの精製、光触媒反応装置(光触媒との併用)、水生ガスシフト触媒、メタノール改質用マイクロリアクター、エタノール酸化による酢酸製造、防毒マスク、石油ストーブのガスフィルター、空気清浄機のフィルターが挙げられる。また、本分解材の用途としては、例えば、有害物質の分解や窒素酸化物及び/又は硫黄酸化物の酸化分解等に関連して、屋内及び屋外におけるセルフクリーニング、防汚機能を持つ外壁材や窓ガラス、タイル、防曇機能を持つ自動車ドアミラーが挙げられる。
【0067】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0068】
[電子顕微鏡観察]
走査電子顕微鏡(S−4800、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、100倍率で写真を撮影した。
【0069】
[アルデヒド分解試験]
25℃でテドラーバッグに、試料を収納すると共に、ホルムアルデヒドを1000ppmの濃度で含有する空気3Lを注入し、暗室下で放置した。3時間及び24時間後、テドラーバッグ内のホルムアルデヒド濃度と、当該ホルムアルデヒドが分解されることにより発生した二酸化炭素の濃度と、を測定した。ホルムアルデヒドの濃度及び二酸化炭素の濃度は、ホルムアルデヒド用検知管及び二酸化炭素用検知管(株式会社ガステック製)でそれぞれ測定した。
【0070】
そして、ホルムアルデヒド分解率(%)を次の式;ホルムアルデヒド分解率(%)=[3時間後又は24時間後の二酸化炭素濃度(ppm)−大気中の二酸化炭素量(ppm)]/初期のホルムアルデヒド濃度(ppm)×100;により求めた。また、ホルムアルデヒド消失率(%)を次の式;ホルムアルデヒド消失率(%)=[(初期のホルムアルデヒド濃度(ppm)−3時間後又は24時間後のホルムアルデヒド濃度(ppm))/初期のホルムアルデヒド濃度(ppm)]×100;により求めた。さらに、ホルムアルデヒド吸着率(%)を次の式;ホルムアルデヒド吸着率(%)=ホルムアルデヒド消失率(%)−ホルムアルデヒド分解率(%);により求めた。
【0071】
[劣化試験]
25℃のテドラーバッグに、試料を収納すると共に、空気3Lを注入した。次いで、紫外線ランプ(ブラックライト蛍光ランプFL15BLB-A:ピーク波長352nm、東芝ライテック株式会社製)を用いて、テドラーバッグに対して、0.1mW/cmの強度で紫外線の照射を開始した。
【0072】
24時間後、テドラーバッグ内の基材が分解されることにより発生した二酸化炭素及び一酸化炭素の濃度を、二酸化炭素及び一酸化炭素用検知管(株式会社ガステック製)で測定した。
【0073】
24時間後におけるテドラーバッグ内の二酸化炭素及び一酸化炭素の濃度は、測定された濃度から大気中の濃度を減じた値として算出した。また、試験前後の基材の黄変化の有無を目視により確認した。
【0074】
[実施例1]
1.5gのポリアクリロニトリル−ポリメタクリル酸共重合体(PAN/PMA)を30mLのジメチルホルムアミドに溶解させ、さらに1.5gの2−メチルイミダゾールと、1.5gの塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)(関東化学株式会社製)と、を加え、室温で2時間攪拌した。こうして得られた混合物に、ケッチェンブラック(ECP600JD、ライオン株式会社製)を、溶媒を除いた成分中の含有量が30重量%となるように加え、乳鉢を用いて混合した。得られた混合物を、60℃で12時間、真空乾燥した。
【0075】
さらに、この混合物を大気中で加熱して、30分間で室温から150℃まで昇温し、続いて2時間かけて150℃から220℃まで昇温した。その後、混合物を220℃で3時間保持し、当該混合物の不融化を行った。こうして原料を調製した。
【0076】
次に、上述のようにして得られた原料を石英管に入れ、イメージ炉にて、20分間窒素パージし、窒素雰囲気中で加熱により18分かけて室温から900℃まで昇温した。その後、この原料を900℃で1時間保持した。こうして原料の炭素化を行った。
【0077】
さらに、遊星ボールミル(P−7、フリッチュジャパン株式会社製)内に直径が10mmのジルコニアボールをセットし、当該遊星ボールミルによって炭素材料を回転速度650rpmで5分間粉砕する処理を10サイクル行った。こうして炭素材料を粉砕した。その後、粉砕した炭素材料を取り出し、目開き106μmの篩にかけた。そして、篩を通過した炭素材料を、粉砕された微粒子状の炭素触媒1(PCo)として得た。
【0078】
次に、上述のようにして得た炭素触媒1(PCo)を紙基材に担持した。すなわち、針葉樹晒クラフトパルプ50質量部と広葉樹クラフトパルプ50質量部とを水に離解し、3.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを叩解して400mlc.s.fに調整した。
【0079】
そこに、湿潤紙力増強剤を固形分で0.5質量%添加し、乾燥紙力増強剤を固形分で1質量%添加して分散し、さらに炭素触媒1(PCo)を固形分で40質量%添加して攪拌した。
【0080】
その後、このパルプスラリーを用いて、JIS P 8222に準拠した抄紙方法により、炭素触媒1(PCo)を紙基材に担持してなるシート状の有害物質分解材として、坪量70g/mのペーパーシートを製造した。
【0081】
こうして得られたペーパーシートの走査型電子顕微鏡観察を行った。また、200mgの炭素触媒1(PCo)を含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験及び劣化試験を行った。
【0082】
[実施例2]
5gの黒鉛AG.B(伊藤黒鉛工業株式会社製)、5gのコハク酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)、5gの塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)を50mLの蒸留水に混合溶解した。こうして得られた溶液を100℃で12時間、乾燥させ、さらに乳鉢で粉砕して、原料を得た。
【0083】
次に、上述のようにして得られた原料を石英管に入れ、管状炉にて20分間窒素パージし、窒素雰囲気中で加熱により90分かけて室温から900℃まで昇温した。その後、この原料を900℃で1時間保持した。こうして原料の炭素化を行った。
【0084】
さらに、こうして得られた炭素材料を乳鉢により粉砕した。その後、粉砕した炭素材料を取り出し、目開き106μmの篩にかけた。そして、篩を通過した炭素材料を、粉砕された微粒子状の炭素触媒2(AGBCo)として得た。
【0085】
炭素触媒1(PCo)に代えて炭素触媒2(AGBCo)を使用した以外は上述の実施例1と同様にして、当該炭素触媒2(AGBCo)を紙基材に担持してなるシート状の有害物質分解材として、坪量70g/mのペーパーシートを製造した。そして、200mgの炭素触媒2(AGBCo)を含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0086】
[実施例3]
上述の実施例1と同様にして炭素触媒1(PCo)を得た。次いで、この炭素触媒1(PCo)を有機繊維不織布に担持した。すなわち、5.16gのポリビニルアルコール系水性バインダー(PVA R1130、株式会社クラレ製)を78.4gの水道水で溶解させた後、分散機で撹拌させながら、徐々に13.94gの炭素触媒1(PCo)を添加した。全ての成分を混合した後、混合液を1000rpmで10分間、撹拌した。撹拌後、混合液をコットン不織布(オイコス:目付け40g/m、日清紡テキスタイル株式会社製)に浸透させ、100℃の熱風乾燥機にて1分間乾燥させることにより、炭素触媒1(PCo)を有機繊維不織布基材に担持してなるシート状の有害物質分解材を製造した。そして、200mgの炭素触媒1(PCo)を含む不織布(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0087】
[実施例4]
1gの黒鉛AG.B(伊藤黒鉛工業株式会社製)、5gの20重量%ポリアクリルアミド系紙力剤(星光PMC株式会社製)、1gの硫酸コバルト七水和物(CoSO・7HO)を混合し、得られた粘調溶液を80℃で12時間、乾燥させた。
【0088】
次に、原料の炭素化を行った。すなわち、上述のようにして得られた原料を石英管に入れ、イメージ炉にて20分間窒素パージし、加熱により90分かけて室温から900℃まで昇温した。その後、この原料を900℃で1時間保持し、炭素化材料を得た。
【0089】
さらに、炭素化材料を乳鉢により粉砕した。その後、粉砕した炭素化材料を取り出し、目開き106μmの篩いを通過した炭素化材料を、粉砕された微粒子状の炭素触媒3(AASCo)として得た。
【0090】
炭素触媒1(PCo)に代えて炭素触媒3(AASCo)を使用した以外は上述の実施例1と同様にして、当該炭素触媒3(AASCo)を紙基材に担持してなるシート状の有害物質分解材として、坪量70g/mのペーパーシートを製造した。そして、200mgの炭素触媒3(AASCo)を含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0091】
[比較例1]
有害物質分解材として炭素触媒1(PCo)の粉末をそのまま用いた。200mgの炭素触媒1(PCo)の粉末を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0092】
[比較例2]
有害物質分解材として炭素触媒2(AGBCo)の粉末をそのまま用いた。200mgの炭素触媒2(AGBCo)の粉末を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0093】
[比較例3]
炭素触媒1(PCo)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法により、ペーパーシート(すなわち、実施例1に係る有害物質分解材の紙基材のみ)を製造した。得られたペーパーシートの電子顕微鏡観察を行った。また、このペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験及び劣化試験を行った。
【0094】
[比較例4]
炭素触媒に代えて高性能活性炭(関西熱化学株式会社製、MSC−30)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該活性炭を紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgの活性炭を含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0095】
[比較例5]
炭素触媒に代えてY型ゼオライト(HISIV6000、ユニオン昭和株式会社製)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該Y型ゼオライトを紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgのY型ゼオライトを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0096】
[比較例6]
炭素触媒に代えてA型ゼオライト(モレキュラシーブ4Aパウダー、ユニオン昭和株式会社製)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該A型ゼオライトを紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgのA型ゼオライトを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0097】
[比較例7]
炭素触媒に代えてX型ゼオライト(ゼオラムF−9、東ソー株式会社製)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該X型ゼオライトを紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgのX型ゼオライトを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0098】
[比較例8]
炭素触媒に代えて光触媒A(石原産業株式会社製、ST-01)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該光触媒Aを紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgの光触媒Aを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験及び劣化試験を行った。
【0099】
なお、アルデヒド分解試験及び劣化試験においては、紫外線ランプ(ブラックライト蛍光ランプFL15BLB-A:ピーク波長352nm、東芝ライテック株式会社製)を用いて、ペーパーシートに対して0.1mW/cmの強度で紫外線を照射した。
【0100】
[比較例9]
上述の比較例8と同様の方法で得た200mgの光触媒Aを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、紫外線を照射しない以外は上述の比較例8と同様の方法でアルデヒド分解試験を行った。
【0101】
[比較例10]
炭素触媒に代えて光触媒B(TP-S201、住友化学株式会社製)を用いた以外は上述の実施例1と同様の方法により、当該光触媒Bを紙基材に担持してなるペーパーシートを製造した。そして、200mgの光触媒Bを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験及び劣化試験を行った。
【0102】
なお、アルデヒド分解試験及び劣化試験においては、紫外線ランプ(ブラックライト蛍光ランプFL15BLB-A:ピーク波長352nm、東芝ライテック株式会社製)を用いて、ペーパーシートに対して0.1mW/cmの強度で紫外線を照射した。
【0103】
[比較例11]
上述の比較例10と同様の方法で得た200mgの光触媒Bを含むペーパーシート(10cm×10cm)を試料として用いて、紫外線を照射しない以外は上述の比較例10と同様の方法でアルデヒド分解試験を行った。
【0104】
[比較例12]
炭素触媒1に代えてZSM-5ゼオライト(ユニオン昭和株式会社製、HISIV3000)を用いた以外は上述の実施例3と同様の方法により、当該ZSM-5ゼオライトを有機繊維不織布基材に担持してなる不織布を製造した。そして、200mgのZSM-5ゼオライトを含む不織布(10cm×10cm)を試料として用いて、アルデヒド分解試験を行った。
【0105】
[電子顕微鏡観察の結果]
図1A及び図1Bには、上述の実施例1及び比較例3で得られた電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。図1Aに示すように、実施例1で製造されたペーパーシートにおいては、紙基材の紙繊維間に炭素触媒の微粒子が分散して担持されていることが確認された。また、炭素触媒は、その表面の大部分が露出した状態で、且つ紙基材に強固に付着していた。
【0106】
[アルデヒド分解試験の結果]
図2に、アルデヒド分解試験で得られた結果を示す。図2には、実施例1〜4及び比較例1〜12の各々について、3時間後及び24時間後における、ホルムアルデヒド(HCHO)濃度(ppm)、二酸化炭素(CO)濃度(ppm)、ホルムアルデヒド分解率(%)、ホルムアルデヒド消失率(%)及びホルムアルデヒド吸着率(%)を評価した結果を示す。なお、二酸化炭素濃度は、テドラーバッグ内における測定値から、大気中(テドラーバッグ外)の測定値を減じた値である。
【0107】
図2に示すように、実施例1に係る炭素触媒1(PCo)を含むペーパーシート、実施例2に係る炭素触媒2(AGBCo)を含むペーパーシート、実施例3に係る炭素触媒1(PCo)を含む有機繊維不織布及び炭素触媒3(AASCo)を含むペーパーシートは、いずれも、24時間後において、100%のホルムアルデヒド分解率を達成した。すなわち、実施例1〜4に係る有害物質分解材は、優れたアルデヒド分解性能を有することが確認された。
【0108】
また、3時間後におけるアルデヒド分解率から明らかなように、これら実施例1〜4に係る有害物質分解材のアルデヒド分解速度は、比較例1に係る炭素触媒1(PCo)粉末や比較例2に係る炭素触媒2(AGBCo)粉末に比べて顕著に大きかった。すなわち、炭素触媒1(PCo)粉末、炭素触媒2(AGBCo)粉末及び炭素触媒3(AASCo)粉末は、紙基材や不織布といった繊維基材に担持されることによって、その有害物質分解速度が顕著に向上した。また、実施例1〜4に係る有害物質分解材は、ホルムアルデヒドを実質的に吸着しなかった。
【0109】
なお、比較例8及び比較例10に係る光触媒を含むペーパーシートからは、24時間の紫外線照射によって、アルデヒドの初期濃度1000ppm以上の大量のCOが発生した。したがって、光触媒を含むペーパーシートにおいては、紙基材の顕著な劣化が起こったと考えられた。
【0110】
[劣化試験の結果]
図3に、劣化試験で得られた結果を示す。図3に示すように、実施例1に係る炭素触媒1(PCo)を紙基材に担持してなるペーパーシート及び比較例3に係る当該紙基材からなるペーパーシートからは、24時間の紫外線照射によっても、二酸化炭素(CO)及び一酸化炭素(CO)は全く発生しなかった。また、これらのペーパーシートにおいては、紫外線照射による外観上の黄変化も認められなかった。
【0111】
これに対し、比較例8及び比較例10に係る光触媒を含むペーパーシートからは、24時間の紫外線照射によって、大量の二酸化炭素及び一酸化炭素が発生した。この大量の二酸化炭素及び一酸化炭素の発生は、光触媒を含むペーパーシートにおいては、紙基材が劣化したことによるものと考えられた。さらに、光触媒を含むペーパーシートは、紫外線が照射されることによって、その外観に黄変化が見られた。
【0112】
このようなアルデヒド分解試験及び劣化試験により、実施例1〜4に係る炭素触媒を含む有害物質分解材は、基材を劣化させることなく、有害物質を効果的に分解することが確認された。
【0113】
[一酸化炭素の酸化分解試験]
実施例1に係る100mgの炭素触媒1(PCo)を含むペーパーシート(5cm×10cm)又は比較例1に係る100mgの炭素触媒1(PCo)粉末を、25℃のテドラーバッグに収納すると共に、当該テドラーバッグに、一酸化炭素を2100ppmの濃度で含有する空気3Lを注入し、暗室下で放置した。
【0114】
24時間後及び60時間後に、テドラーバッグ内の一酸化炭素濃度と、当該一酸化炭素が酸化分解されることにより発生した二酸化炭素の濃度と、を測定した。一酸化炭素の濃度及び二酸化炭素の濃度は、一酸化炭素用検知管及び二酸化炭素用検知管(株式会社ガステック製)で測定した。
【0115】
そして、一酸化炭素分解率(%)を次の式;一酸化炭素分解率(%)=[24時間後又は60時間後の二酸化炭素濃度(ppm)−大気中の二酸化炭素量(ppm)]/初期の一酸化炭素濃度(ppm)×100;により求めた。また、一酸化炭素消失率(%)を次の式;一酸化炭素消失率(%)=[(初期の一酸化炭素濃度(ppm)−24時間後又は60時間後の一酸化炭素濃度(ppm))/初期の一酸化炭素濃度(ppm)]×100;により求めた。さらに、一酸化炭素吸着率(%)を次の式;一酸化炭素吸着率(%)=一酸化炭素消失率(%)−一酸化炭素分解率(%);により求めた。
【0116】
図4に、一酸化炭素の酸化分解試験の結果を示す。図4に示すように、実施例1に係るペーパーシートは、一酸化炭素を酸化分解することが確認され、且つ当該ペーパーシートは、比較例1に係る炭素触媒1(PCo)粉末そのものに比べて高い一酸化炭素酸化分解性能を有することが確認された。また、実施例1に係るペーパーシートは、比較例1に係る炭素触媒1(PCo)と同様、一酸化炭素を実質的に吸着しなかった。
【0117】
[抗菌性試験]
実施例1に係る炭素触媒1(PCo)を紙基材に担持してなるペーパーシート,比較例3に係る当該紙基材からなるペーパーシート及び比較例8に係る光触媒を紙基材に担持してなるペーパーシートの抗菌性を評価した。
【0118】
抗菌性は、JIS L 1902−2008により規定される繊維製品の抗菌性方法に準拠した定性試験(ハロー試験)における、ハロー(発育阻止帯)の有無及び幅により評価した。供試菌として、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538P)又は大腸菌(Escherichia coil NBRC3301)を使用した。
【0119】
図5には、抗菌性試験の結果を示す。図5に示すように、実施例1に係るペーパーシートを用いた場合にのみ、発育阻止帯が生成された。すなわち、実施例1に係るペーパーシートは抗菌性を示すことが確認された。
【0120】
[かび抵抗性試験]
実施例1に係る炭素触媒1(PCo)を紙基材に担持してなるペーパーシート,比較例3に係る当該紙基材からなるペーパーシート及び比較例8に係る光触媒を紙基材に担持してなるペーパーシートのかび抵抗性を評価した。
【0121】
かび抵抗性は、JIS Z 2911−2000(湿式法)のかび抵抗試験方法に準拠した試験により評価した。すなわち、平板培地上にペーパーシートの試験片(5cm×5cm)を密着させて貼付し、次いで、当該試験片にかび混合胞子懸濁液を吹き付け、28±2℃で1週間培養した。供試菌として、Aspergillus niger NBRC 6341、Penicillium citrnum NBRC 6352、Chaetomium globosum NBRC 6347又はMyrothecium verrucaria NBRC 6113を使用した。
【0122】
そして、試料に発育したかびの面積により、当該試料のかび抵抗性を評価した。具体的に、試料にかび胞子を接触させた部分に菌糸の発育が認められない場合には「0」と評価し、試料にかび胞子を接触させた部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超えない場合には「1」と評価し、試料にかび胞子を接触させた部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超える場合には「2」と評価した。
【0123】
図6には、かび抵抗性試験の結果を示す。図6に示すように、実施例1に係るペーパーシートにおいてのみ、かび菌糸の発育が認められなかった。すなわち、実施例1に係るペーパーシートは、かび抵抗性を有することが確認された。
図2
図3
図4
図5
図6
図1A
図1B