(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767499
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】電気接続端子用操作装置
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20150730BHJP
H01R 13/633 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
H01R4/48 A
H01R4/48 B
H01R13/633
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-83593(P2011-83593)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2011-222509(P2011-222509A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】10 2010 014 143.7
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511051753
【氏名又は名称】ヴァーゴ・フェアヴァルトゥングスゲゼルシャフト・エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ビーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ガッサウアー
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−162532(JP,A)
【文献】
特開2000−187785(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第03743410(DE,A1)
【文献】
特開平08−329997(JP,A)
【文献】
実開平01−179379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 13/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続端子(1)用操作装置であって、
前記電気接続端子(1)が、絶縁材ハウジング(2)内に配置された、導体(5)用導体締付接続部をもつ接点フレーム(4)を含み、
前記操作装置が、プッシャ(21)として形成された、前記絶縁材ハウジング(2)と一体に結合されている操作要素を含み、
前記接点フレーム(4)における前記導体締付接続部が少なくとも1つのばね要素(9)により形成され、ばね要素(9)の自由端部は、導体(5)に対して向けられ且つ締付力が加えられる締付端縁(10)を形成し、
前記導体締付接続部は、プッシャ(21)によって前記締付力に抗してばね要素(9)に力が加えられることによる、少なくとも1つのばね要素(9)へのプッシャ(21)の作用によって開くことが可能である、電気接続端子(1)用操作装置において、
前記プッシャ(21)はプッシャ・アーム(23)からなり、
前記プッシャ・アーム(23)は、その一方の端部により、絶縁材ハウジング(2)に結合され、
前記プッシャ・アーム(23)は、相互に角度をなして配置された絶縁材ハウジング(2)の2つの表面(18、20)の少なくとも1つの部分区間に沿って伸長し、
前記プッシャ・アーム(23)は、ハウジング(2)の後面側(20)の伸長方向に適合された第1のプッシャ・アーム部分(24)およびハウジング(2)の表面(18)の伸長方向に適合された第2のプッシャ・アーム部分(25)から形成されており、
前記プッシャ・アーム(23)は絶縁材ハウジング(2)の凹部(22)内に配置されている、ことを特徴とする電気接続端子用操作装置。
【請求項2】
相互に角度をなして配置された2つの前記表面(18、20)は相互に少なくともほぼ直角に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記プッシャ・アーム(23)はくぼみ形凹部をもつ操作面(27)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記プッシャ・アーム(23)は弾性変形可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項5】
前記ばね要素が少なくとも1つの板ばね(9)またはばねアームとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項6】
前記接点フレーム(4)はチャネル形に形成され、前記接点フレーム(4)は、前記導体締付接続部を形成するために、各側壁にそれぞれ、平坦な金属部分から打ち抜かれた舌片の形の板ばね(9)を有し、板ばね(9)は、板ばね(9)の自由端部が導体(5)に対して向けられた締付端縁(10)を形成するように、平坦な金属部分の面から曲げられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項7】
前記板ばね(9)にそれぞれ、電気接続端子(1)の外側に向けられた突出斜面(12)が形成され、突出斜面(12)は相互に漏斗形に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の操作装置。
【請求項8】
前記プッシャ・アーム(23)は操作部分を有し、前記操作部分は、絶縁材ハウジング(2)に結合された端部とは反対側にあり且つほぼくさび形のプッシャ面(26)を有し、導体(5)の前記締付接続部を板ばね(9)の押し拡げによって開くために、くさび形のプッシャ面(26)は、相互に漏斗形に形成された突出斜面(12)を介して板ばね(9)の間に押し入ることが可能であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項9】
絶縁材ハウジング(2)および接点フレーム(4)が組み立てられた状態において、プッシャ・アーム(23)にプレストレスが与えられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項10】
少なくとも1つのばね要素(9)およびプッシャ(21)の少なくともいずれかに対して過負荷保護が設けられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の操作装置。
【請求項11】
板ばね(9)として形成された前記ばね要素のたわみは、絶縁材ハウジング(2)の側壁(33)および中間壁(34)の少なくともいずれかによって制限可能であることを特徴とする請求項10に記載の操作装置。
【請求項12】
前記プッシャ・アーム(23)のたわみは、板ばね(9)として形成された少なくとも1つのばね要素にプッシャ・アーム(23)が当接することによって制限可能であることを特徴とする請求項10または11に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続端子用操作装置であって、この場合、電気接続端子が、絶縁材ハウジング内に配置された、導体用導体締付接続部をもつ接点フレームを含み、および操作装置が、プッシャとして形成された、絶縁材ハウジングと一体に結合されている操作要素を含み、およびこの場合、接点フレームにおける導体締付接続部が少なくとも1つのばね要素により形成され、ばね要素の自由端部は、導体に対して向けられ且つ締付力が加えられる締付端縁を形成し、および導体締付接続部は、プッシャによって締付力に抗してばね要素に力が加えられることによる、少なくとも1つのばね要素へのプッシャの作用によって開くことが可能である、電気接続端子用操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スペイン特許公開第2159247号は、ばね締付接点をもつ、差込導体用ハウジング付電気接続端子を示す。ハウジングの上面側にレバー式プッシャが一体に形成されている。プッシャにプラグが設けられ、プラグは、ハウジングの凹部並びに接点突起の凹部内に係合し、締付ばねに、プッシャを操作したときに締付接点を開くように働く。有効なレバー・アームを達成するために、プッシャは全体としてきわめて大きい形状となり且つ高価となる。これと同等な形態が欧州特許公開第1182750号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】スペイン特許公開第2159247号
【特許文献2】欧州特許公開第1182750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、導体の確実な締付けを保証し且つ同時に簡単な構造を有する、導体の接続用電気接続端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴によって解決される。請求項1によれば、電気接続端子用操作装置であって、この場合、電気接続端子が、絶縁材ハウジング内に配置された、導体用導体締付接続部をもつ接点フレームを含み、および操作装置が、プッシャ(換言すれば、押し部材)として形成された、絶縁材ハウジングと一体に結合されている操作要素を含み、およびこの場合、接点フレームにおける導体締付接続部が少なくとも1つのばね要素により形成され、ばね要素の自由端部は、導体とは反対方向に向けられ且つ締付力が加えられる締付端縁を形成し、および導体締付接続部は、プッシャによって締付力に抗してばね要素に力が加えられることによる、少なくとも1つのばね要素へのプッシャの作用によって開くことが可能である、電気接続端子用操作装置に対して、本発明により、プッシャはプッシャ・アームからなり、この場合、プッシャ・アームは、その一方の端部により、絶縁材ハウジングに結合され、およびプッシャ・アームは、相互にある角度をなして配置された絶縁材ハウジングの2つの表面の少なくとも1つの部分区間に沿って伸長するように設計がなされている。
【0006】
このようにアングル形(換言すれば、略L字形)に形成されているプッシャの本発明による形態は、それに対応して長いレバー・アームをもつ比較的長い有効プッシャ・アームを可能にし、このことは、特に、設置空間比率が小さいとき、または小さい絶縁材ハウジングをもつきわめて小さい電気接続端子において有利である。即ち、特に小形接続端子において、本発明によるプッシャの形態によりはじめて、接点フレームの操作のために有効なプッシャを提供することが可能となる。
【0007】
好ましい一実施形態において、相互にある角度をなして配置された2つの表面は相互に少なくともほぼ直角に配置されている。したがって、プッシャ・アームは、ハウジング後面側の伸長方向に適合された第1のプッシャ・アーム部分およびハウジング表面の伸長方向に適合された第2のプッシャ・アーム部分から形成されている。さらに、プッシャ・アームは絶縁材ハウジングの凹部内に配置されていることが好ましい。
【0008】
特に有利な一実施形態において、プッシャ・アームはくぼみ形凹部をもつ操作面を有しているので、操作工具のためのアクセス可能性が簡単に提供され、これにより、プッシャは確実に操作可能である。
【0009】
プッシャ・アームは弾性変形可能に形成されていることが好ましく、これにより、最小構造費用で、プッシャの簡単な運動ないしはたわみが保証可能である。
好ましい一実施形態において、ばね要素は少なくとも1つの板ばねまたはばねアームとして形成され、これにより、チャネル形(換言すれば、溝形)の接点フレームの好ましい形態において、接点フレームは、導体締付接続部を形成するために、各側壁にそれぞれ、平坦な金属部分から打ち抜かれた舌片の形の板ばねを有し、板ばねは、板ばねの自由端部が導体とは反対方向を向く締付端縁を形成するように、平坦な金属部分の面から曲げられている。したがって、電気接続端子は、2つの構造部分、即ち一体化されたプッシャをもつ絶縁材ハウジング並びに一部品の接点フレームのみから形成されているので、簡単な構造および簡単な組立が低コストで保証可能である。
【0010】
板ばねにそれぞれ、電気接続端子の外側に向けられた突出斜面が形成され、突出斜面は相互に漏斗形に形成されていることが好ましい。これにより、導体の締付接続部を板ばねの押し拡げによって開くために、プッシャは簡単に板ばねの間に押し入ることが可能である。このために、プッシャは、対応するくさび形のプッシャ面を有していることが好ましく、くさび形のプッシャ面は、プッシャ・アームの、絶縁材ハウジングに結合された端部とは反対側の端部に形成されている。
【0011】
接点フレームが絶縁材ハウジング内に装着されている、電気接続端子が組み立てられた状態において、プッシャ・アームにプレストレスが与えられているので、プッシャ・アームはハウジング上面側の表面から突出している。操作されていない状態においてプッシャ・アームにプレストレスが与えられていることにより、プッシャ・アームに加えられる応力は小さくてよい。操作されていない状態におけるプッシャ・アームのたわみは比較的小さいので、プレストレスの値もまた比較的小さい。操作された位置におけるプッシャ・アームの、絶縁材ハウジング内へのたわみもまた、操作されていない状態においてよりもそれほど大きくないので、プッシャ・アームに加えられる応力は全体として小さくてよい。プッシャないしはプッシャ・アーム内の低い応力値は、プッシャのみならず絶縁材ハウジングもまた小さくてよいことに寄与している。
【0012】
少なくとも1つのばね要素および/またはプッシャの損傷特に破損を効果的に回避するために、好ましい一実施形態において、これらに対して過負荷保護が設けられている。この場合、板ばねとして形成されたばね要素のたわみは、絶縁材ハウジングの側壁および/または中間壁によって制限可能であることが有利である。さらに、プッシャのプッシャ・アームのたわみの制限は、板ばねとして形成された少なくとも1つのばね要素にプッシャ・アームが当接することによって行われることが有利である。この実施形態は、電気接続端子の本質的な適合なしに過負荷保護を可能にするので、コスト的に有利である。
【0013】
以下に図面に示された一実施例により本発明が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、組み立てられた本発明による接続端子の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、導体が差し込まれ且つ絶縁材ハウジングが取り除かれた、プリント回路板上に配置された本発明による接続端子の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、導体が差し込まれた、プリント回路板上に配置された本発明による接続端子の断面斜視図を示す。
【
図5a】
図5aは、プッシャが操作されていない、
図1のIV−IV断面に対応する本発明による接続端子の断面図を示す。
【
図5b】
図5bは、プッシャが操作された、
図1のIV−IV断面に対応する本発明による接続端子の断面図を示す。
【
図6a】
図6aは、絶縁材ハウジングの第1の斜視図を示す。
【
図6b】
図6bは、絶縁材ハウジングの第2の斜視図を示す。
【
図7】
図7は、
図5aのVII−VII断面に対応する本発明による接続端子の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、絶縁材ハウジング2を備えた本発明による電気接続端子1を示し、絶縁ハウジング2内にメタル接点フレーム4が受け入れられている。絶縁材ハウジング2は、前面側19に、導体5を差し込むための少なくとも1つの導体挿入開口3を有している(
図4)。図示の実施例において、接続端子1は、それぞれ極ごとに導体挿入開口3および接点フレーム4をもつ二極形で形成されている。しかしながら、接続端子は各々他の任意の極数を有していてもよい。
【0016】
さらに、
図1に、接点フレーム4の接続領域16が示され、接続領域16はプリント回路板7の対応する接点部分28例えばプリント配線と接触している(
図2)。この場合、接続領域16は、特にはんだ結合(SMDはんだ結合)を介して接点部分28と結合されているが、プラグ結合もまた考えられる。
図2に、プリント回路板7上に保持された接点フレーム4が示されている。この図においては絶縁材ハウジング2が取り除かれているので、導体5と接点フレーム4との接続がよくわかる。導体5は、リング形に曲げられ且つ少なくともほぼ閉じた形に形成された接点フレーム4のチャネル入口8から挿入され、この場合、導体5の絶縁剥離端部6は、板ばね9として形成された、チャネル形の接点フレーム4の側壁間に受け入れられている。この場合、板ばね9は平坦な金属部分から曲げられ且つその自由端部は締付端縁10を形成しているので、板ばね9の相互に向かい合う2つの締付端縁10は導体5に対する締付位置を形成する。この場合、導体挿入開口3に続く接点フレーム4のチャネル入口8から、締付端縁10により形成された締付位置までの領域は、導体挿入領域30を形成する。
【0017】
接点フレーム4の構造が
図3にわかりやすく示され、この場合、板ばね9の自由端部に締付端縁10を形成するために、締付作用を改善するように、導体5に対して追加のフレア部(換言すれば、当接部)12が打ち出され、ないしは成形されていることがわかる。さらに、接点フレーム4は接点底部11を有し、接点底部11は、接点底部11がチャネル入口8から締付位置の方向に、即ちほぼ導体挿入領域30内において差し込まれた導体5の方向に上昇して傾けられて形成されているように、平坦な金属部分の面から形成され、ないしはそれから曲げられている。接点底部11には、一端のチャネル入口8において第1の接点領域16が接続され、他端において第2の接点領域16が接続されている。さらに、
図3に、リング形のチャネル入口8に成形された前方止めフック14が示され、前方止めフック14は、絶縁材ハウジング2と固定結合するために、導体挿入開口3の付近に配置された対応する前方止め凹部17内に係合する。締付端縁10により形成された締付位置と、リング形のチャネル入口8とは離れた側の後方接点領域16との間の領域内において、接点底部11には、接点底部11の側部に配置された後方止めフック15が設けられ、後方止めフック15は、プリント回路板7から、ないしは接点領域16により形成された面から間隔をなしていることが好ましく、且つ図示されていない絶縁材ハウジング2の止め凹部内に係合している。
【0018】
それぞれに締付端縁10が形成されている板ばね9の自由端部の領域内において、板ばね9はそれぞれ、接点底部11とは幅方向反対側に突出斜面12を有し、突出斜面12はそれぞれ接続端子1の外側に向けられている。したがって、接点フレーム4の突出斜面12は、共に、接点底部11から離れる方向に上方に開いた漏斗形受入部を形成する。
【0019】
図4並びに5aおよび5bは、それぞれ、接点フレーム4および絶縁材ハウジング2から構成された本発明による電気接続端子1の断面図を示し、この場合、
図4には、さらに、接続された導体5が示されている。これらの図において、ハウジング内壁31が傾斜領域を有し、傾斜領域の内部において、ハウジング内壁31は差し込まれた導体5に向かって傾斜して形成されていることがわかる。この傾斜領域は上で定義された導体挿入領域30の内部にあるが、導体挿入領域30の全体にわたって伸長していてもよい。
【0020】
これらの図において、さらに、導体挿入領域30が、接点フレーム4の形状に基づいて、その板ばね9およびその接点底部11並びに絶縁材ハウジング2のハウジング内壁31により、少なくとも断面において漏斗形の形状を有していることがわかり、この場合、漏斗形の導体挿入領域30は接点フレーム4および絶縁材ハウジング2から構成されている。この場合、漏斗形の導体挿入領域30は周囲側において少なくともほぼ完全に閉じられている。一方で板ばね9と接点底部11との間、および他方で板ばね9とハウジング内壁31との間においてのみ、狭い隙間が設けられている。導体挿入領域30の断面は、この実施例においては、ほぼ矩形ないしは正方形に形成されているが、各々が任意の他の形状を有し、特に円形、または少なくとも断面において円形またはアーチ形を有していてもよい。
【0021】
この場合、漏斗形の導体挿入領域30は、差し込まれる導体5に対して、特にその絶縁剥離端部6に対して案内部を形成しているので、絶縁剥離端部6は適切に締付位置へ供給可能である。電気接続端子1は、特に、締付端縁10により形成された締付位置が、プッシャ21として形成されている操作要素により、導体5の差込み前に開かれたとき、多線導体5に対しても使用可能である。多線導体5の個々の線は、周囲側がほぼ閉じられた導体挿入領域30に基づき、ほどけることなく確実に締付端縁10により締め付けられて保持可能である。この場合、導体挿入領域30の漏斗形部分の、導体挿入開口3の側のより大きな断面をもつ端部は、導体5の絶縁部分に対する停止部としても使用可能であることは望ましい。
【0022】
漏斗形の導体挿入領域30は、絶縁材ハウジング2および接点フレーム4から、ないしはこれらの2つの構造部分から形成されることにより、簡単且つ有効な導体案内部が達成され、この場合、特に、接点フレーム4は、きわめて簡単に、コンパクトに且つ材料を節約して形成可能である。
【0023】
図4、5aおよび5bに、さらに、プッシャ・アーム23をもつ操作要素としてのプッシャ21が示され、プッシャ・アーム23は絶縁材ハウジング2と一体に形成されている。この場合、プッシャ21は突出斜面12に作用し、且つ操作したとき、即ち力Fにより絶縁材ハウジング2の方向に押し込んだとき、この突出斜面12を板ばね9と共に押し拡げる。これにより、板ばね9の締付端縁10もまた押し拡げられ、且つ導体5を取り出すために、または導体5特に多線導体5を差し込むために、締付位置が開かれる。
【0024】
プッシャ・アーム23は、
図6aおよび6bに示すように、ハウジング後面側20の領域内において、好ましくはハウジング上面側18とは反対側の下側半分内において、絶縁材ハウジング2に一体に成形されている。この場合、プッシャ・アーム23は絶縁材ハウジング2の輪郭に沿っているので、ハウジング後壁20に結合された第1のプッシャ・アーム部分24は、ほぼハウジング後面側20の面内に、またはほぼそれに平行に伸長している。プッシャ・アーム23の輪郭はさらにハウジング後面側20からハウジング上面側18への移行部の輪郭の伸長方向に沿っているので、第1のプッシャ・アーム部分24と一体に結合されている第2のプッシャ・アーム部分25は、ほぼハウジング上面側18の面内に、またはほぼそれに平行に伸長している。この場合、ハウジング後面側20およびハウジング上面側18は相互にある角度をなして配置され、ハウジング後面側20およびハウジング上面側18は相互に少なくともほぼ直角に配置されていることが好ましい。したがって、プッシャ・アーム23は本質的にアングル(換言すれば、略L型材)として形成されている。第2のプッシャ・アーム部分25に、第1のプッシャ・アーム部分24とは反対側のその端部に操作面27が成形され、操作面27は、この実施例においては、くぼみ形に形成されているが、その代わりに、他の任意の形、例えばスリットまたは十字スリットの形もまた想定可能である。したがって、プッシャ21は、ハウジング後面側20およびハウジング上面側18にわたって伸長するハウジング凹部22内に配置されていることがわかる。この場合、ハウジング凹部22は本質的に貫通穴として形成されているので、プッシャ21は、絶縁材ハウジング2の内部に配置された接点フレーム4に作用可能である。これにより、操作要素としてのプッシャ21は、曲げられた形状をもって、絶縁材ハウジング2の壁ないしは表面内に組み込まれて絶縁材ハウジング2それ自身の一部を示している。
【0025】
組み立てられていない状態において、プッシャ・アーム23ないしはその外表面は、ハウジング上面側18の領域内においてのみならず、ハウジング後面側20の領域内においてもまた、ほぼ絶縁材ハウジング2の表面輪郭の面内に存在している。これに対して、絶縁材ハウジング2内に組み込まれる接点フレーム4と組み立てられ且つ操作されていない状態においては、
図5aからわかるように、プッシャ21は少なくともハウジング上面側18から僅かに飛び出している。この場合、接点フレーム4の突出斜面12は、プッシャ21に、またはより正確にいえばそのプッシャ面26に当接し(
図7)、且つプッシャ21を外方に押し上げているので、プッシャ・アーム23に弾性プレストレスが与えられている。
図5bに操作された状態が示され、この状態においては、プッシャ21に対して、くぼみ形の操作面27の領域内に操作力Fが与えられている。プッシャ・アーム23は操作力Fを受けてほぼ均等に弾性変形することがわかり、この場合、プッシャ面26をもつプッシャ21の領域は板ばね9の間にもぐり込む。プッシャ・アーム23は均等弾性変形に対してほぼ均等な強さまたは厚さを有している。操作過程の間に、即ちプッシャ21の押込みの間に、プッシャ21は、ハウジング上面側18の上方に突出している位置から、プッシャ・アーム23特に第2のプッシャ・アーム部分25が絶縁材ハウジング2内にもぐり込んだ位置に移動される。この場合、プッシャ・アーム23の弾性プレストレスは除去され且つプッシャ・アーム23には逆方向の応力が与えられるので、プッシャ・アームは、再び外方に移動してその初期位置に到達しようとする。
【0026】
図6aおよび6bは絶縁材ハウジング2を単一部品として示し、この場合、特に、プッシャ21の上記の形状およびプッシャ・アーム23の絶縁材ハウジング2との結合がさらによくわかる。さらに、絶縁材ハウジング2がハウジング下面側にそれぞれ凹部32を有していることがわかり、凹部32内に接点フレーム4の接点領域16が係合し、これにより、これらの接点領域16は、ハウジング後面側20から、および導体挿入開口3をもつハウジング前面側19から突出可能である(
図1もまた参照)。同時に、組み立てられた電気接続端子1のハウジング下面側は、飛び出す部品のないほぼ平らな面を形成することが達成される。したがって、絶縁材ハウジング2は、プリント回路板7上に配置された状態において直接プリント回路板の表面まで到達し、ないしはプリント回路板7に当接することが可能である。
【0027】
図7は、再びプッシャ21の接点フレーム4への作用方法を示している。プッシャ21のプッシャ面26はほぼくさび形に形成され、且つそれに対応する、斜めに配置された接点フレーム4の突出斜面12に作用する。操作面27を介してプッシャ21に力Fを加えたとき、くさび形のプッシャ面26は突出斜面12上を滑り、このとき板ばね9の間にもぐり込み、且つ板ばね9を押し拡げる。プッシャ21から操作力Fが取り除かれたとき直ちに、板ばね9は、その復元力に基づき、突出斜面12並びにそれに対応するプッシャ面26を介してプッシャ21を再び初期位置に押し戻す。
【0028】
図示されたプッシャ21のアングル形の形状は、それに対応する長いレバー・アームをもつ比較的長い有効プッシャ・アーム23を可能にし、このことは、特に小さい設置空間比率において、または小さい絶縁材ハウジングをもつきわめて小さい電気接続端子において有利である。即ち、特に小形接続端子においては、プッシャ21の本発明による形状によってはじめて、接点フレーム4を操作するための有効なプッシャ21を提供することを可能にする。
【0029】
操作されていない状態においてプッシャ・アーム23にプレストレスが与えられていることにより、プッシャ・アーム23に加えられる応力は小さくてよい。操作されていない状態におけるプッシャ・アーム23の飛び出しもまた比較的小さいので、プレストレスの値は比較的小さい。絶縁材ハウジング2内に操作された位置におけるプッシャ・アーム23のたわみもまた、操作されていない状態においてよりもそれほど大きくないので、プッシャ・アーム23に加えられる応力もまた比較的小さくてよい。これに対して、仮に応力のないプッシャ・アーム23に全操作ストロークが与えられられた場合には、プッシャ・アーム23に作用する応力は本質的により大きくなるので、プッシャ・アーム23もまた全体としてより大きい寸法としなければならないであろう。即ち、接続端子1内のプッシャ21のこの配置およびプッシャ21と接点フレーム4との協働作用により、プッシャ21は全体としてきわめて小さくすることが可能であり、したがって、このプッシャ21は特にきわめて小さい構造の接続端子に対して適している。
【0030】
電気接続端子のこのような形態により、板ばね9に対してのみならずプッシャ21に対してもまた過負荷保護が実現可能である。
図7からわかるように、板ばね9に配置された突出斜面12は、板ばね9が十分にたわんだとき、絶縁材ハウジング2の側壁33および/または接続端子1の極間に配置された1つまたは複数の絶縁材ハウジング2の中間壁34に当接するであろう。したがって、側壁33および/または中間壁34は板ばね9のたわみを制限し、且つこれらに過負荷が与えられて塑性変形したりまたは破断したりすることを阻止する。
【0031】
しかしながら、同時に、プッシャ21ないしはプッシャ・アーム23に対してもまた過負荷保護が実現可能である。板ばね9の制限されたたわみにより、相互に付属された2つの板ばね9の間に制限された中間空間のみが形成可能である。板ばね9の間にもぐり込むプッシャ・アーム23の部分の最大幅が最大にたわんだ板ばね9の間の中間空間よりも大きいかぎり、プッシャ・アーム23は制限されてのみたわむことが可能であるので、プッシャ・アーム23には過大な荷重が与えられることなく、プッシャ・アーム23の破損は有効に回避される。
【0032】
プッシャ21ないしはそのプッシャ・アーム23に対する過負荷保護は、板ばね9の間にもぐり込むプッシャ・アーム23の部分にストッパが設けられることによってもまた達成可能であり、ストッパは、プッシャ・アーム23の最大たわみにおいて、ないしは最大もぐり込み深さにおいて、板ばね9または突出斜面12に当接するので、プッシャ・アーム23のそれ以上のたわみは阻止され且つプッシャ21の損傷が回避される。
【符号の説明】
【0033】
1 接続端子
2 絶縁材ハウジング
3 導体挿入開口
4 接点フレーム
5 導体
6 導体の絶縁剥離端部
7 プリント回路板
8 チャネル入口
9 板ばね
10 締付端縁
11 接点底部
12 突出斜面
13 板ばねの自由端部のフレア部(当接部)
14 前方止めフック
15 後方止めフック
16 接点領域
17 前方止め凹部
18 ハウジング上面側
19 前面側
20 ハウジング後面側
21 プッシャ
22 ハウジング凹部
23 プッシャ・アーム
24 第1のプッシャ・アーム部分
25 第2のプッシャ・アーム部分
26 プッシャ面
27 操作面
28 プリント配線、接点部分
30 導体挿入領域
31 ハウジング内壁
32 凹部
33 側壁
34 中間壁
F 操作力