【実施例】
【0098】
以下の実施例により本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0099】
[オキシメチレン樹脂組成物(P)の調製]
実施例および比較例の樹脂組成物に用いた成分を以下に説明する。また、各樹脂組成物等を構成する各成分について下記表1〜3に示す。
【0100】
1.オキシメチレンコポリマー(A)
1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整した。該重合機に、トリオキサンを4kg/hrと、コモノマーとして1,3−ジオキソランと、連鎖移動剤としてメチラールとを供給して重合を行なった。コモノマーの供給量は、オキシメチレンコポリマー(A)中のオキシアルキレン成分の含有割合が、オキシメチレン成分に対して、0.6モル%となるように調整を行なった。また同様にメチラールの供給量は、オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が3g/10分となるように調整を行なった。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10
-5モルとなる量で、連続的に添加し重合を行ない、粗オキシメチレンコポリマーを得た。
【0101】
次に、重合機より排出された粗オキシメチレンコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活した粗オキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した。その後、この粗オキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、上記式<1>で表される窒素量に換算して20質量ppmとした。当該添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
【0102】
前記乾燥後の粗オキシメチレンコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融している粗オキシメチレンコポリマー100質量部に対して、水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間の条件で、その不安定末端部分の分解除去処理を行なった。不安定末端部分の分解されたオキシメチレンコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、さらにオキシメチレンコポリマー100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.35質量部を添加し、溶融混練し造粒することによりオキシメチレンコポリマー(A−1)のペレットを得た。
【0103】
1.2.オキシメチレンコポリマー(A−2)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が12g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−2)のペレットを得た。
【0104】
1.3.オキシメチレンコポリマー(A−3)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が40g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−3)のペレットを得た。
【0105】
1.4.オキシメチレンコポリマー(A−4)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)中のオキシアルキレン成分の含有割合が、オキシメチレン成分に対して、0.2モル%となるようにコモノマーの供給量を調整した以外は、上記1.2.オキシメチレンコポリマー(A−2)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−4)のペレットを得た。
【0106】
1.5.オキシメチレンコポリマー(A−5)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)中のオキシアルキレン成分の含有割合が、オキシメチレン成分に対して、1.5モル%となるようにコモノマーの供給量を調整した以外は、上記1.2.オキシメチレンコポリマー(A−2)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−5)のペレットを得た。
【0107】
〈オキシアルキレン成分の含有割合の測定方法〉
上記コモノマーの供給量の調整により得られた各オキシメチレンコポリマーにおけるオキシメチレン成分a(モル数)に対するオキシアルキレン成分b(モル数)の割合(モル%)(以下「(b/a)×100」とも記す。)を下記表1〜3に示す。ここで(b/a)×100は、以下のようにして求めた。
【0108】
得られた各ポリオキシメチレンコポリマーを、溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)−d
2(D化率97%、和光純薬98%assay)中に、24時間かけて溶解させることにより、ポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を調製した。
【0109】
上記のポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を検体として、JEOL−400核磁気共鳴分光計(
1H:400MHz)を用い、55℃および積算回数500回の条件下、オキシメチレン成分aと、当該成分a以外のオキシアルキレン成分bとの帰属ピークを積分した。このようにして得られた積分値から、オキシメチレン成分a(モル数)に対するオキシアルキレン成分b(モル数)の割合(モル%)「(b/a)×100」を求めた。
【0110】
〈メルトフローレートの測定方法〉
上記連鎖移動剤の供給量の調整により得られた各オキシメチレンコポリマーのメルトフローレートを下記表1〜3に示す。ここでメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)は、メルトインデクサー(東洋精機(株)社製、F−W01)を用いて求めた。
【0111】
2.オキシメチレンホモポリマー(A’)の調製
攪拌羽根の付いた、連続式にモノマー等を供給できるタンクに、脱水したホルムアルデヒドガス100質量部、触媒としてジメチルジステアリルアンモニウムアセテート0.1質量部を投入した。次いで、該タンクに、分子量調節剤として無水酢酸を、重合後のオキシメチレンホモポリマーのメルトフローレートが12g/10分となるような量で連続的に供給しながら、58℃で重合を行い、粗ポリオキシメチレンホモポリマーを得た。
【0112】
得られた粗ポリオキシメチレンホモポリマーを、ヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒に入れ、140℃で2時間、末端基を化学処理した。末端基を化学処理した粗ポリオキシメチレンホモポリマーを120℃、3時間、1mmHgの条件で真空乾燥した。次に、乾燥した粗オキシメチレンホモポリマー100質量部に対して、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.35質量部添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりオキシメチレンホモポリマーのペレットを得た。得られたオキシメチレンホモポリマー(A’)について、上記同様のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)の測定を行なったところ、12g/10分であった。
【0113】
3.充填材(B)
充填材(B)として、用いた充填材(B−1)〜(B−9)を以下に列挙する。市販品を原料として、下記に示す平均粒径の充填材を得た。該平均粒径は、以下のとおり求めた。測定対象となる充填材粒子のサンプリングを行い、サンプリングした粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率1千倍から5万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の充填材粒子の、それぞれの最大粒径を測定し、得られた各最大粒径の相加平均を平均粒径として求めた。
【0114】
(B−1):白石工業製炭酸カルシウム「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.7)
(B−2):日本タルク製含水珪酸マグネシム「MS」(平均粒径11μm、表面未処理)
(B−3):白石工業製炭酸カルシウム「白艶華PZ」(平均粒径80nm、表面未処理、pH=9.3)を分級し、平均粒径30nmの粒子を採取した。
【0115】
(B−4):白石工業製炭酸カルシウム「PC−700」(平均粒径1.2μm、表面未処理、pH=9.9)を分級し、平均粒径900nmの粒子を採取した。
【0116】
(B−5):巴工業社製珪酸カルシウム「NYAD1250」(平均粒径5μm、L/D=3、表面未処理)
(B−6):協和化学工業製ハイドロタルサイト「DHT−4C」(平均粒径0.5μm、表面未処理)
(B−7):白石工業製炭酸カルシウム「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=9.1)
(B−8):白石工業製炭酸カルシウム「Brilliant−1500」(平均粒径150nm、表面未処理、pH=10.2)
(B−9):白石工業製炭酸カルシウム「Vigot−15」(平均粒径150nm、表面脂肪酸処理)
4.脂肪酸(C)
脂肪酸(C)として、用いた炭素数12〜27の1価の脂肪酸(C1)と炭素数28〜36の1価の脂肪酸(C2)とを以下に列挙する。
【0117】
(C1−1):和光純薬工業製 ステアリン酸(融点64℃)
(C1−2):和光純薬工業製 ベヘン酸(融点82℃)
(C2−1):和光純薬工業製 モンタン酸(融点84℃)
(C2−2):和光純薬工業製 メリシン酸(融点94℃)
4.脂肪酸のカルシウム塩(D)
脂肪酸のカルシウム塩(D)として、用いた(D−1)と(D−2)とを以下に列挙する。
【0118】
(D−1):堺化学工業製 ステアリン酸カルシウム「SC−100」
(D−2):堺化学工業製 ビス(12−ヒドロキシステアリン酸)カルシウム「SC−120H」
[オキシメチレン樹脂組成物等のペレット(P)の製造]
〈ペレット(P1〜P28)の製造〉
オキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜P28)を、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−26SS押出機」、L/D=48、ベント付き)を用いて以下のとおり製造した。
【0119】
前記2軸押出機のホッパー下を冷却水により冷却し、210〜215℃に設定し、ダイヘッドを210℃に設定した。この温度条件で、表1および2に示すように、オキシメチレンコポリマー(A)、充填材(B)、脂肪酸(C)、必要に応じて脂肪酸のカルシウム塩(D)を、前記2軸押出機のトップより定量フィーダーを用いて供給した。スクリュー回転数150rpmの条件で前記各成分の混合物を溶融混練し、ベントより脱気し、ダイヘッドから溶融混練物を押し出し造粒し、オキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜P28)を得た。なお、造粒中にオキシメチレン樹脂組成物の生産性を後述のとおり評価した。
【0120】
〈ペレット(P29〜P31)の製造〉
表3に示すように、上記調製したオキシメチレンコポリマー(A−1)〜(A−3)だけを2軸押出機に供給した((B)〜(D)成分を供給しなかった)以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜P3)の製造と同様の方法でオキシメチレンコポリマー(A−1)〜(A−3)のペレット(P29〜P31)を製造した。
【0121】
〈ペレット(P32)の製造〉
表3に示すように、オキシメチレンコポリマー(A−1)に代えて、上記調製したオキシメチレンホモポリマー(A’)を用いた以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)の製造と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P32)を製造した。
【0122】
〈ペレット(P33)の製造〉
表3に示すように、脂肪酸(C)および脂肪酸のカルシウム塩(D)を供給しなかった以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P33)を製造した。
【0123】
なお、後述するとおり、上記ペレット(P29〜P33)を造粒する際も、生産性や状態観察を行い、充填材を含まない上記ペレット(P30)の場合を評価の基準とした。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
[実施例1〜
19、21〜22、24〜28
ならびに参考例1および2]
上記製造したオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜28)を下記条件で射出成形することにより、
図1に示す形状の各成形片(ロボット用外装部品に相当)を作製した。作製した各成形片について、後述のとおり各評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
【0127】
射出成形機:(株)日本精鋼所製;J110AD−180H、
シリンダー温度:200℃、
射出圧力:80MPa、
射出時間:40秒、
冷却時間:20秒、
金型温度:85℃。
【0128】
[比較例1〜5]
上記製造したペレット(P29〜33)を実施例1と同様の条件で射出成形することにより、
図1に示す形状の各成形片(ロボット用外装部品に相当)を作製した。作製した各成形片について、後述のとおり各評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0129】
[評価項目]
1.生産性の評価
ロボット用外装部品の生産性の評価は、オキシメチレン樹脂組成物等のペレットの生産性および外装部品の代表として
図1に示す成形片の成形性および品位により行った。
【0130】
(1)オキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価
オキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価は、2軸押出機のトルクを、充填材を含まないペレット(P30)を造粒した場合と同じになるように調整して造粒したときの、オキシメチレン樹脂組成物等の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、並びにペレットの外観および臭気などにより、総合的に行った。具体的には、充填材を含まないペレット(P30)を造粒した場合を評価の基準として、以下のとおりオキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価を行った。
【0131】
(生産性評価)
◎:平均造粒量の低下が5%未満でペレット(P30)の生産性と同等の場合、
○:平均造粒量の低下が5%以上15%未満の場合、
◇:平均造粒量の低下が15%以上25%未満の場合、
△:平均造粒量の低下が25%以上35%未満、またはペレットの着色・臭いなどが若干発生した場合、
×:平均造粒量の低下が35%以上、またはストランドギレもしくはストランド径が不安定になったりするなど明らかに造粒状態が悪化した場合。
【0132】
(2)ロボット用外装部品の品位評価
ロボット用外装部品の品位の評価には、実施例および比較例で作製した成形片を用いて行なった。
【0133】
なお、実施例および比較例における成形片の成形は100ショット実施し、その中で安定してきた40ショットから100ショットまでの計量時間や離型状況などの運転状態の観察と、80ショットから100ショットの成形片の品位(外観(光沢、平滑性、シルバーやフローマークなど)や色、それらの安定性など)の目視による観察とを行なった。
【0134】
具体的には、充填材を含まないペレット(P30)を造粒した場合を評価基準として、以下のとおりロボット用外装部品の品位評価を行った。
【0135】
(品位評価)
◎:外観がペレット(P30)よりも良好な場合、
○:外観がペレット(P30)と同等レベルの場合、
◇:若干外観の低下が確認された場合、
△:機能的には問題ないが着色やシルバーなどが部分的に確認された場合、
×:意匠面の中央にシルバーなどが確認されたり、運転状態や品位がショットにより安定しなかったりなど、ロボット用外装部品の使用に際し明らかに不良と判断された場合。
【0136】
2.物性バランスの評価
物性バランスの評価は、実施例および比較例で作製した成形片の
図2に示す部分を万能試験機(島津製作所製、オートグラフAGS−X)で引張試験(試験方法としてはISO527に準拠、但し伸度はチャック間伸度とした)をn=5で実施し、得られた弾性率(TM)と伸度(TE)とをそれぞれ相加平均した値を用いて行なった。
【0137】
比較として用いる値は、比較例1〜3で作製した成形片の物性バランスであり、これらの弾性率と伸度との結果を
図3に示す。
【0138】
これらの弾性率と伸度との結果より、比較例1〜3で作製した成形片の物性バランスの関係は下記数式<2>で表わすことができる。
【0139】
(数2)
弾性率(TM’)=(−25)×伸度(TE)+3675・・・<2>
実施例1〜
19、21〜22、24〜28
、参考例1および2ならびに比較例4および5で作製した成形片の伸度(TE)を用いて、上記数式<2>から求めた弾性率(TM')と、実際に引張試験により得られた弾性率(TM)とを比較することにより物性バランスの評価を行なった。
【0140】
具体的には、下記数式<3>の計算により得られたバランス評価値により下記基準で物性バランスの評価を行った。
【0141】
(基準)
×:バランス評価値が0%未満の場合((TM)が(TM’)より小さい場合)、すなわち充填材を含まないペレット(P29〜31)から作製した比較例1〜3の成形片の物性バランスより低下している場合、
△:バランス評価値が0%以上5%未満の場合、
◇:バランス評価値が5%以上10%未満の場合、
○:バランス評価値が10%以上15%未満の場合、
◎:バランス評価値が15%以上の場合。
【0142】
【数3】
3.通常の耐久性の評価
耐久性の評価には、実施例および比較例で作製した成形片を使用した。該成形片について、下記(1)または(2)のとおり、作動油または洗浄剤を作用させた後、上記2.物性バランスの評価と同様の引張試験を実施した。該引張試験を、n=5で行い、各試験片の引張伸度を相加平均により求めた。該引張伸度と、上記2.物性バランスの評価で求めた耐久性評価前の引張伸度との変化により、通常の耐久性の評価を行なった。また、当該耐久性評価前後において、成形片の意匠面の外観保持性の変化も観察した。
【0143】
(1)耐作動油性
耐作動油性を作動油の代表としてシェルテラスオイル32(昭和シェル石油製)に対する耐久性により評価した。具体的には、実施例および比較例で作製した成形片を用いて、同作動油に試験片を浸漬後密閉し、80℃で800時間経過後の試験片の引張伸度の低下の割合を求め、下記評価基準により評価を行なった。なお、充填材を含まないペレット(P30)から作製した比較例2の成形片の引張伸度の低下率は50%以上であった。
【0144】
(評価基準)
×:引張伸度の低下率が50%以上または外観(クラックの発生、光沢や色の変化など)が著しく変化した場合、
△:少し改善がみられ引張伸度の低下率が40%以上50%未満、または外観の変化が若干みられたが、使用において問題ない場合、
◇:意匠面に大きな外観の変化がなく、引張伸度の低下率が30%以上40%未満の場合、
○:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%以上30%未満の場合、
◎:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%未満と大きく改善が見られた場合。
【0145】
(2)耐洗剤性
耐洗剤性を洗剤の代表として復活洗浄剤/錆取用(カンペハピオ製)に対する耐久性により評価した。具体的には、実施例および比較例で作製した成形片を用いて、同洗浄剤に試験片を浸漬後密閉し、30℃で800時間経過後の試験片の引張伸度の低下の割合を求め、下記評価基準により評価を行なった。なお、充填材を含まないペレット(P30)から作製した比較例2の成形片の引張伸度の低下率は50%以上であった。
【0146】
(評価基準)
×:引張伸度の低下率が50%以上または外観(クラックの発生、光沢や色の変化など)が著しく変化した場合、
△:少し改善がみられ引張伸度の低下率が40%以上50%未満、または外観の変化が若干みられたが、使用において問題ない場合、
◇:意匠面に大きな外観の変化がなく、引張伸度の低下率が30%以上40%未満の場合、
○:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%以上30%未満の場合、
◎:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%未満と大きく改善が見られた場合。
【0147】
4.特殊環境に対する耐久性の評価
特殊環境に対する耐久性の評価には、実施例および比較例で作製した成形片を使用した。該成形片について、下記(1)または(2)のとおり、切削油や消毒剤を作用させた後、上記2.物性バランスの評価と同様の引張試験を実施した。該引張試験を、n=5で行い、各試験片の引張伸度を相加平均により求めた。該引張伸度と、上記2.物性バランスの評価で求めた耐久性評価前の引張伸度との変化により、特殊環境に対する耐久性の評価を行なった。また、当該耐久性評価前後において、成形片の意匠面の外観保持性の変化も観察した。
【0148】
(1)耐切削油性
耐切削油性を切削油の代表としてユシロンカットUB100(ユシロ化学工業製)に対する耐久性により評価した。具体的には、実施例および比較例で作製した成形片を用いて、同切削油に試験片を浸漬後密閉し、80℃で800時間経過後の試験片の引張伸度の低下の割合を求め、下記評価基準により評価を行なった。なお、充填材を含まないペレット(P30)から作製した比較例2の成形片の引張伸度の低下率は50%以上であった。
【0149】
(評価基準)
×:引張伸度の低下率が50%以上または外観(クラックの発生、光沢や色の変化など)が著しく変化した場合、
△:少し改善がみられ引張伸度の低下率が40%以上50%未満、または外観の変化が若干みられたが、使用において問題ない場合、
◇:意匠面に大きな外観の変化がなく、引張伸度の低下率が30%以上40%未満の場合、
○:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%以上30%未満の場合、
◎:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%未満と大きく改善が見られた場合。
【0150】
(2)耐消毒剤性
耐消毒剤性を消毒剤の代表としてオキシドール(日本薬局方製)に対する耐久性により評価した。具体的には、実施例および比較例で作製した成形片を用いて、同消毒剤に試験片を浸漬後密閉し、20℃で4000時間後の試験片の引張伸度の低下の割合を求め、下記評価基準により評価を行なった。
なお、充填材を含まないペレット(P30)から作製した比較例2の成形片の引張伸度の低下率は50%以上であった。
【0151】
(評価基準)
×:引張伸度の低下率が50%以上または外観(クラックの発生、光沢や色の変化など)が著しく変化した場合、
△:少し改善がみられ引張伸度の低下率が40%以上50%未満、または外観の変化が若干みられたが、使用において問題ない場合、
◇:意匠面に大きな外観の変化がなく、引張伸度の低下率が30%以上40%未満の場合、
○:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%以上30%未満の場合、
◎:外観変化がなく、引張伸度の低下率が20%未満と大きく改善が見られた場合。
【0152】
[実施例1〜11、比較例1〜5の評価結果]
実施例1〜11、比較例1〜5の評価結果を下記表4に示す。
【0153】
実施例1〜11、比較例1〜5の評価結果から、本実施の形態のロボット用外装部品は、生産性を維持でき優れた物性バランスを有するとともに、通常の耐久性や特殊環境に対する耐久性に優れることがわかった。
【0154】
実施例1〜5、比較例1〜3、4の結果から、特に、好ましいメルトフローレートおよびコモノマー量のオキシメチレンコポリマー(A)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた物性バランスを有する傾向があることがわかった。
【0155】
実施例2、6〜8、比較例1〜3の結果から、特に、好ましい量の充填材(B)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0156】
実施例2、9〜11、比較例1〜3、5の結果から、特に、好ましい量の脂肪酸(C)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0157】
【表4】
[実施例2、12〜
19、21〜22、24〜28
、参考例1および2、比較例1〜3の評価結果]
実施例12〜
19、21〜22、24〜28
、参考例1および2の評価結果を下記表5に示す。
【0158】
実施例12〜
19、21〜22、24〜28の評価結果から、本実施の形態のロボット用外装部品は、生産性を維持でき優れた物性バランスを有するとともに、通常の耐久性や特殊環境に対する耐久性に優れることがわかった。
【0159】
実施例2、12、13、比較例1〜3の結果から、特に、好ましい粒径の無機酸塩系充填材(B)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0160】
実施例2、14〜16、比較例1〜3の結果から、特に、炭酸塩系および珪酸塩系の無機酸塩系充填材を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた物性バランスおよび耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0161】
実施例2、17〜19、比較例1〜3の結果から、特に、炭酸カルシウムを含み、好ましいpHであり、表面処理がなされていない充填材(B)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より優れた物性バランスおよび耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0162】
実施例2、
21〜22、24〜25
、参考例1および2、比較例1〜3の結果から、特に、脂肪酸(C)として炭素数12〜27の1価の脂肪酸(C1)と、炭素数28〜36の1価の脂肪酸(C2)とを、好ましい比率で含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より優れた物性バランスおよび耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0163】
実施例2、26〜28、比較例1〜3の結果から、特に、好ましい量の脂肪酸のカルシウム塩(D)を含む樹脂組成物からなるロボット用外装部品は、より生産性を維持でき優れた耐久性を有する傾向があることがわかった。
【0164】
【表5】