【実施例1】
【0017】
まず、給油式圧縮機の全体構成を
図1に示す系統図により説明する。
図において、1はスクリュー圧縮機などで構成された圧縮機本体、2は前記圧縮機本体1を駆動するための電動機、3は前記圧縮機本体1の吸入側に空気を導入するための吸入配管で、この吸入配管3には吸込フィルタ4及び吸込絞り弁5が設けられている。6は前記圧縮機本体1の吐出側に接続された吐出配管で、この吐出配管6には、油分離器7と、この油分離器7の下流側にアフタークーラ8が設けられている。
【0018】
前記油分離器7の下部には油戻し配管9が設けられており、前記油分離器7に溜まった油(潤滑油)は前記油戻し配管9から取り出された後、一部はバイパス配管9a側に流れ、残りは油戻し配管9bを通ってオイルクーラ10へ導かれて冷却された後、前記バイパス配管9aを流れる油と合流し、その後油戻し配管9cを通って前記圧縮機本体1の圧縮作動室へ注入される。
【0019】
なお、図示してはいないが、圧縮機本体1へ注入される油の温度が適切な温度になるように前記バイパス配管9aを流れる油の量は調整される。例えば、前記バイパス配管9aとオイルクーラ10からの油戻し配管9bとの合流部に温調弁などを設け、オイルクーラ10からの油の温度に応じて前記バイパス配管9aを流れる油のバイパス量を調整し、予め決められた所定の温度範囲の油温となるように温度調節されて圧縮機本体1に注入されるように構成されている。
【0020】
11は前記アフタークーラ8を流れる圧縮空気及び前記オイルクーラ10を流れる油を冷却するための冷却ファンで、この冷却ファン11は電動機12により駆動される。
前記油分離器7内の上部中央にはフィルタ13が設けられており、前記吐出配管6から油分離器7内に導入された圧縮空気に混入されている油は、遠心分離により一次分離され、その後前記フィルタ13を通過して二次分離され、油が分離された圧縮空気は吐出配管6aを通って前記アフタークーラ8に入り、冷却された後、圧縮機外部の空気槽(図示せず)などに送られる。
【0021】
前記フィルタ13内の底部には二次分離された油が貯留されるので、ここに貯留された油は回収配管14を介して前記圧縮機本体1の圧縮作動室に注入される。15は前記回収配管14に設けられたオリフィスで、このオリフィス15により、前記フィルタ13内の底部に貯留された油の回収量を制限し、油分離器7内の圧縮空気が圧縮機本体側へ流れ込んでしまうのを抑制して、圧縮機性能が低下するのを防止している。
【0022】
なお、前記油分離器7内の圧力と、前記圧縮作動室内の圧力との圧力差を利用して、前記油戻し配管9及び前記回収配管14を介して、油分離器7内の油を圧縮作動室側に流すことができるようになっている。
【0023】
図2は
図1に示す給油式圧縮機に使用されている従来の一般的な油分離器の例を示す縦断面図、
図3は
図2のIII−III線矢視断面図である。これらの図に示す矢印A〜Dは、油分離器7内の圧縮空気の流れを示している。
【0024】
油分離器7は、油を遠心分離して貯留するための外筒16と、この外筒16内の上部に、前記外筒16と同心円状に設けられた内筒17を備えており、前記外筒16の下部は、一次分離された油が溜まる一次貯留部18となっている。前記内筒17内には円筒状のフィルタ13が同心円状に設けられており、このフィルタ13の下端開口は底部材22により塞がれ、この底部材22の上部はフィルタ13で二次分離された油が溜まる二次貯留部13aとなっている。
【0025】
前記油分離器7の上部は第1蓋部材19と第2蓋部材20で塞がれており、前記内筒17は前記第1蓋部材19に、前記フィルタ13は前記第1蓋部材19と前記第2蓋部材20の間にシール材、例えばパッキンを介して取り付けられている。前記第2蓋部材20の中央部には吐出路20aが形成されており、この吐出路20aを覆うように調圧逆止弁21が設けられている。この調圧逆止弁21の入口部21aは前記吐出路20aと接続され、出口部21bは前記アフタークーラ8に圧縮空気を導くための前記吐出配管6aに接続されている。また、前記入口部21aと出口部21bとの間には弁体21cが設けられており、この弁体21はその入口部21aの圧力が一定圧力以上で且つ出口部21bの圧力よりも大きくなった場合にのみ開くように構成されている。
【0026】
圧縮機本体1(
図1参照)で圧縮された空気は油(潤滑油)と共に圧縮機本体1から吐出され、吐出配管6を介して、矢印Aで示すように油分離器7の中へ流入する。油分離器7に流入した圧縮空気と油の混合体は、矢印Bで示すように、前記外筒16と内筒17との間の空間を円周方向に流れることにより遠心力が働き、圧縮空気と油との比重差により油は外筒16側へ、圧縮空気は内筒側へと遠心分離される。この遠心分離により一次分離された油は外筒16の壁面に沿って落下し、油分離器7の下部の一次貯留部18に貯留される。この貯留された油は、油分離器7内の圧力と、前記圧縮機本体1の圧縮作動室内の圧力との圧力差により、油戻し配管9(
図1参照)を介して、前記圧縮機本体1側に戻される。油分離器7内の油は高温となっているため、前述したようにオイルクーラ10(
図1参照)で冷却された後、圧縮機本体へ供給されるように循環経路が構成されている。
【0027】
一方、前記遠心分離により分離できなかった圧縮空気中の細かい粒子状の油は、圧縮空気と共に、矢印Cで示すように、前記内筒17とフィルタ13との間の空間へ回り込み、フィルタ13を通過する。このとき、粒子状の潤滑油はフィルタ13により捕捉され、フィルタ13内底部の二次貯留部13aに滴下して貯留される。二次貯留部13aに貯留された油は、油分離器7内の圧力と圧縮機本体1の圧縮作動室内の圧力との圧力差により、回収配管14を介して圧縮機本体1側へ回収される。
【0028】
また、前記フィルタ13を通過することで油を分離された圧縮空気は、矢印Dで示すように、油分離器7上部に設けた吐出路20aから前記調圧逆止弁21を介して吐出配管6aに流出し、アフタークーラ8(
図1参照)を経て冷却された後、圧縮機外部に設けた空気槽などへ流入し、ここから需要先に供給される。
【0029】
このように構成された油分離器7の構成では、前記回収配管14の径を大きくする(或いはオリフィス15(
図1参照)の径を大きくしてその絞り量を小さくする)と、二次貯留部の油を回収するのと同時に圧縮空気も圧縮機本体1側に流れ込んで圧縮機性能を低下させる。逆に、前記回収配管14の径を小さくする(或いはオリフィス15の径を小さくしてその絞り量を大きくする)と、前記二次貯留部13aに貯留された油を十分に回収できず、油の持去りを防止できない。
【0030】
そこで、本実施例の給油式圧縮機においては、前記油分離器7を
図4〜
図8に示すように構成している。
図4は本実施例における油分離器7の要部縦断面図で、圧縮機運転中における状態を示す図、
図5も本実施例における油分離器7の要部縦断面図で、圧縮機停止中における状態を示す図、
図6は
図4に示すフィルタの下部の部分を拡大して示す拡大断面図、
図7は
図6のE部を拡大して示す図で、開閉装置が閉じている状態を示す図、
図8も
図6のE部を拡大して示す図で、開閉装置が開いている状態を示す図である。なお、圧縮機運転中(或いは圧縮機始動時)とは前記圧縮機本体1が前記電動機2により駆動されて圧縮ガスを前記油分離器7内に吐出している状態、圧縮機停止中(或いは圧縮機停止時)とは前記圧縮機本体1の駆動が停止されて圧縮機本体1から圧縮ガスが吐出されていない状態をいう。
【0031】
本実施例における油分離器7では、回収配管14を介して油分離器7内の圧縮空気が圧縮機本体1側に流れ込んで圧縮機性能を低下させることがないように、前記回収配管14の径(或いはオリフィス15の径)を小さく構成している。また、フィルタ13の下端開口を塞いでいる底部材22は、
図6の拡大図に示すように、その中央部が下方に凸となるように窪ませた構成にすることにより二次貯留部13aが形成されると共に、その最下部は平面部22aに構成され、この平面部22aにはフィルタ13の一次側(フィルタ13の外側)の空間と二次側(フィルタ13の内側)の空間を連通する開口部22bが形成されている。
【0032】
前記底部材22の下面には前記開口部22bを開閉するための開閉装置23が備えられており、本実施例では、前記開閉装置23は、
図7に示すように、前記底部材22に対して回動自在に設けられて前記開口部22の下部側を開閉するスイング式の弁体23aと、この弁体23aの一端側を前記底部材22に対し回動自在に取り付けるための軸部23bと、前記弁体23aに設けられ該弁体23aと前記底部材22との間をシールするためのシール材23cにより構成されている。前記弁体23aは、前記フィルタ13の一次側(フィルタ13の外側)の空間の圧力と、二次側(フィルタ13の内側)の空間の圧力との圧力差で開閉するように構成されている。
【0033】
即ち、給油式圧縮機の通常運転中では、前記フィルタ13の二次側(フィルタ13の内側)空間の圧力は、圧縮ガスがフィルタ13を通過する際に圧力損失が生じるので、フィルタ13の一次側(フィルタ13の外側)空間の圧力よりも小さくなっている。このため、
図7に示すように、弁体23aは前記圧力差により、前記底部材22に押し付けられて前記開口部22bを塞ぐ。このため、フィルタ13で二次分離された油は前記二次貯留部13aに溜められる。
【0034】
この二次貯留部13aに溜められた油は、
図4に示す回収配管14を介して、油分離器7内の圧力と圧縮機本体1の圧縮作動室内の圧力(油を吸込側に戻す場合には吸込側の圧力)との圧力差により、圧縮機本体1側に回収される。しかし、本実施例では、前記回収配管14を介して油分離器7内の圧縮空気が圧縮機本体1側に大量に流れ込んで圧縮機性能を低下させないように、前記回収配管14の径(或いはオリフィス15の径)を小さく構成している。圧縮機運転中は、前記回収配管14の径を小さくしても前記二次貯留部13aの油は圧縮機本体1側に回収されているので、前記二次貯留部13aには油が溜まらないか、僅かに溜まる程度にすることができる。しかし、
図2に示す従来の一般的な油分離器では、圧縮機停止中にフィルタ13から滴下して二次貯留部に大量の油が溜まってしまうので、前記回収配管14の径を小さく場合、圧縮機始動時に前記二次貯留部13aに溜められた油を全て前記回収配管14により圧縮機本体1側に回収することはできず、油の持去りを防止することはできなかった。
【0035】
これに対し、本実施例では、上述したように、フィルタ13の前記底部材22に開口部22bと、この開口部22bを開閉する前記開閉装置23を設けているので、圧縮機停止中にフィルタ13の一次側空間と二次側空間との間に圧力差がなくなると、前記開閉装置23の弁体23aは、その自重により、或いは二次貯留部に溜められた油の重さにより、
図8に示すように、下方に回動し、開口部22bは開かれる。従って、圧縮機停止中にフィルタ13から油が滴下しても、その油は、前記二次貯留部13aに貯留されず、前記開口部22bを介して油分離器7の一次貯留部18に落下する。このように、本実施例では、圧縮機始動時に前記二次貯留部13aには油が貯留されていないから、前記回収配管14の径を小さく構成しても、油の持去りを確実に防止することができる。
【0036】
また、圧縮機が始動すると、フィルタ13の一次側空間と二次側空間との間に圧力差が発生するので、この圧力差で、前記開閉装置23の弁体23aは、
図7に示すようにすぐに開口部22bを閉じるから、圧縮ガスはフィルタ13を通過して二次分離された後、油分離器7から外部に吐出される。
【0037】
なお、前記弁体13aを、圧縮機始動後、フィルタ13の一次側と二次側との圧力差で前記開口部22bを容易に閉じるように作動させるため、前記弁体23aの回動角度は、二次貯留部13aの油が通過して落下可能な範囲でできるだけ小さい角度に抑えられるように、回動角度を制限するストッパ部23dなどを設けておくと良い。
【0038】
このように、本実施例によれば、圧縮機停止中に二次貯留部の油を排出することができるため、圧縮機始動時における油の持去りを防止することが可能となる。
【0039】
また、給油式圧縮機においては、一般に、圧縮機の停止直後に、油分離器7内に潤滑油のフォーミング現象が発生する。フォーミングが発生してフィルタ13が油没すると圧縮機停止中にフィルタ13の二次貯留部13aに油が大量に溜まってしまう。このため、従来の一般的な油分離器においては、油分離器7内の油面高さからフィルタ13の下端までの寸法を大きく構成することで、フォーミング発生時にフィルタ13が油没するのを回避していた。従って、従来のものでは、油分離器が大形化していた。
【0040】
これに対し、本実施例のものでは、圧縮機停止中に二次貯留部13aに油が大量に溜まっても、その油を、前記開口部22bと前記開閉装置23により排出することが可能となる。従って、フォーミング現象が発生してフィルタ13が油没し、二次貯留部13aに油が大量に溜まったとしても、その油を容易に排出できるから、従来のように油分離器を大形化する必要がなく、油分離器7を小形化できる効果も得られる。
【0041】
本実施例では、前記開閉装置23の設置位置は、フィルタ13の下部中央部(底部材22の中央部)としている。これは、油分離器7の内部流れが旋回流のため、中央部ほど流速が遅くなることと、圧縮空気はフィルタ13の側面(外周側)から内部に流れ込むため、フィルタ13の下部は澱み点となることから、フィルタ13の下部中央部は静圧が支配的となり、この部分に前記開閉装置23を置くことにより、弁体23aに作用する圧力を安定化できるためである。
【0042】
また本実施例では、フィルタ13の下部中央部を下方に凸となるように窪ませて前記二次貯留部13aを設けているので、この部分に容易に油を貯留させることができ、この部分に溜まった油を容易に排出することができる。更に、前記底部材22の最下部を平面部22aに構成し、この平面部22aに前記開口部22bを形成すると共に、この開口部22bを開閉するための開閉装置23を前記平面部22aに設けているから、開閉装置23の弁体23aを前記平面部22aに密着させることが容易に可能となり、前記開口部22bの開閉を確実に行うことができる。
【0043】
前記開口部22bは円形とするのが好ましく、円形とすることにより、前記シール材23cを前記開口部22bの周囲に容易に設置可能となる。なお、前記開口部22bは円形以外の形状とすることも可能である。
上記実施例では、空気を圧縮する給油式スクリュー圧縮機の例で説明したが、被圧縮流体は空気に限らず他のガスであっても構わない。また、圧縮機もスクリュー圧縮機に限られるものではなく、スクロール圧縮機などの場合でも同様に適用できる。
【実施例2】
【0044】
本発明の実施例2を
図9〜
図12により説明する。
図9は本発明の給油式圧縮機の実施例2における油分離器の要部縦断面図で、圧縮機運転中における状態を示す図、
図10は本発明の給油式圧縮機の実施例2における油分離器の要部縦断面図で、圧縮機停止中における状態を示す図、
図11は
図9に示すフィルタ下部の部分を拡大して示す拡大断面図、
図12は
図11のF部を拡大して示す要部拡大図で、(a)図は開閉装置が閉じている状態を示す図、(b)図は開閉装置が開いている状態を示す図である。
【0045】
前述した実施例1では、フィルタ13の底部材22に設けた開閉装置23としてスイング式の弁体23aを使用した例を説明したが、この実施例2では、前記開閉装置23の代わりに、圧力差と弾性体を利用して弁体を開閉するように構成した開閉装置24を設けたものである。
【0046】
なお、
図9〜
図12において、
図1〜
図8と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しており、実施例1と同一部分については説明を省略する。
【0047】
本実施例においては、
図9に示すように、フィルタ13の底部材22中央に、開閉装置24が設けられており、この開閉装置24は、弾性体(ばね)24aにより上方に付勢された弁体24bと、この弁体24bの移動をガイドするハウジング(シリンダ部材)24cを備えている。
【0048】
前記弁体24bは、圧縮機停止時にフィルタ13の一次側空間と二次側空間との間に圧力差がなくなった場合でもばねなどにより僅かな力で底部材22に押圧されるように構成しておき、圧縮機停止中にフィルタの油が滴下して二次貯留部13aに溜まると、その油の重さで弁体24bを下方に押し下げ、開口部22bを開いて、二次貯留部に貯留された油が一次貯留部に回収されるように構成されている。
【0049】
上記開閉装置24の部分の構成を
図11及び
図12に示す拡大図により更に詳細に説明する。
図11と
図12(a)は、圧縮機運転中における開閉装置24の動作を示している。前記開閉装置24の弁体24bはI形に構成されており、下方の弁部24baと上方のピストン部24bbが一体に構成され、前記弁部24baは前記底部材22の中央付近に複数個形成された開口部22cを下方から開閉するように構成されている。また、前記ピストン部24bbは前記ハウジング(シリンダ部材)24c内を上下に摺動するように構成され、このピストン部24bbの下面と前記底部材22との間には前記弾性体24aが設けられてピストン部24bbを上方に付勢している。また、前記ピストン部24bbの上面とハウジング24cとの間にはシリンダ室24gが形成されている。
【0050】
24dは弁体24bと底部材22との間をシールするシール材、24eは前記弁体24bのピストン部24bbの外周に設けられ、前記ハウジング(シリンダ部材)との間をシールするシール材、24fは前記ハウジング24bに形成され前記二次貯留部13aとハウジング24c内とを連通する孔、24hは同様に前記ハウジング24bに形成され前記フィルタ13の二次側空間と前記シリンダ室24gとを連通する孔である。
【0051】
これら
図11及び
図12(a)に示すように、圧縮機の運転中においては、開閉装置24の弁体24bが、前記弾性体24aと油分離器7の一次側の圧力により上方に押し上げられ、前記開口部22cを塞ぐように動作する。即ち、前記開閉装置24の弁体24bは、前記フィルタ13の一次側空間と二次側空間との間に圧力差が発生するとその圧力差も加わって前記開口部を閉じるように構成されているので、フィルタ13から滴下した油は二次貯留部13a内に溜められるが、この油は前記回収配管14(
図9参照)により圧縮機本体1(
図1参照)側に回収される。
【0052】
圧縮機が停止されると、フィルタ13の油が滴下して二次貯留部13aに溜まっていき、その油の重さで、
図10及び
図12(b)に示すように、前記弾性体24aを圧縮して前記弁体24bを下方に押し下げる。即ち、前記開閉装置24の弁体24bは、前記フィルタ13の一次側空間と二次側空間との間に発生していた圧力差がなくなると、弁体の自重或いは貯留された油の重さにより、前記底部材22に形成されている開口部22cを開くように構成されている。これにより一次貯留部18と二次貯留部13aが連通され、フィルタ13内の前記二次貯留部13aに貯留された油を、前記孔24f及び開口部22cを介して、前記一次貯留部18に排出することができる。
【0053】
従って、本実施例においても、圧縮機の停止中に二次貯留部13aの油を排出することができるため、圧縮機始動時における油の持去りを防止することが可能となるなど、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0054】
本発明の実施例3を
図13〜
図16により説明する。
図13は本発明の給油式圧縮機の実施例3における油分離器の要部縦断面図で、圧縮機運転中における状態を示す図、
図14は本発明の給油式圧縮機の実施例3における油分離器の要部縦断面図で、圧縮機停止中における状態を示す図、
図15は
図13に示すフィルタ下部の部分を拡大して示す拡大断面図、
図16は
図15のF部を拡大して示す要部拡大図で、(a)図は開閉装置が閉じている状態を示す図、(b)図は開閉装置が開いている状態を示す図である。
【0055】
前述した実施例2では、圧力差と弾性体を利用して弁体を開閉するように構成した開閉装置を使用した例を説明したが、この実施例3では、外部圧力を利用して弁体を開閉するように構成した開閉装置24を設けたものである。
【0056】
なお、
図13〜
図16において、
図1〜
図12と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しており、上記実施例1または実施例2と同一部分については説明を省略する。
【0057】
本実施例においては、
図13に示すように、フィルタ13の底部材22中央に、開閉装置24が設けられており、この開閉装置24は、弾性体(ばね)24aにより上方に付勢された弁体24bと、この弁体24bの移動をガイドするハウジング(シリンダ部材)24cと、空気槽に接続されている前記吐出配管6a内の圧縮空気を前記
ハウジング24c内に導くための制御配管25と、この制御配管25に設けられた制御弁26と、この制御弁26を制御する制御装置27を備えている。前記制御弁26は圧縮機が停止されると開かれるように前記制御装置27により制御され、前記吐出配管6a内の例えば0.7MPaの高圧空気を前記ハウジング24c内に導く。これにより、
図14に示すように、前記弁体24bは下方に押圧され、前記弾性体24aの押上力に勝って前記弁体24bを下方に押し下げる。この結果、フィルタ13内下部の二次貯留部13aに溜められていた油は、前記ハウジング24cに形成された孔と前記底部材22に形成された開口部を介して油分離器7内の一次貯留部18(
図2参照)に落下するように構成されている。
【0058】
上記開閉装置24の部分の構成を
図15及び
図16に示す拡大図により更に詳細に説明する。
図15と
図16(a)は、圧縮機運転中における開閉装置24の動作を示している。前記開閉装置24の弁体24bは、実施例2と同様にI形に構成されており、下方の弁部24baと上方のピストン部24bbが一体に構成され、前記弁部24baは前記底部材22の中央付近に複数個形成された開口部22cを下方から開閉するように構成されている。また、前記ピストン部24bbは前記ハウジング(シリンダ部材)24c内を上下に摺動するように構成され、このピストン部24bbの下面と前記底部材22との間には前記弾性体24aが設けられてピストン部24bbを上方に付勢している。また、前記ピストン部24bbの上面とハウジング24cとの間にはシリンダ室24gが形成され、このシリンダ室24gには前記制御配管25が連通されている。
【0059】
24dは弁体24bと底部材22との間をシールするシール材、24eは前記弁体24bのピストン部24bbの外周に設けられ、前記ハウジング(シリンダ部材)との間をシールするシール材、24fは前記ハウジング24bに形成され前記二次貯留部13aとハウジング24c内とを連通する孔である。
【0060】
これら
図15及び
図16(a)に示すように、圧縮機の運転中においては、開閉装置24の弁体24bが、前記弾性体24aと油分離器7の一次側の圧力により上方に押し上げられ、前記開口部22cを塞ぐように動作するので、フィルタ13から滴下した油は二次貯留部13a内に溜められるが、この油は前記回収配管14(
図13参照)により圧縮機本体1(
図1参照)側に回収される。
【0061】
圧縮機が停止されると、
図14に示すように、前記制御装置27にその停止信号が送られ、該制御装置27は前記制御弁26を開状態に制御する。圧縮機停止直後は空気槽に圧縮空気が貯留されており、調圧逆止弁21の二次側である前記吐出配管6a内は前記空気槽と同圧となっている。従って、前記制御弁26を開状態にすると、前記吐出配管6a内の高圧空気は、
図16(b)に示すように、制御配管25を介して、開閉装置24のハウジング24cとピストン部24bbの上部とで形成された前記シリンダ室24gへ流れ込む。この結果、前記弾性体24aを圧縮して前記弁体24bを下方に押し下げるので、前記底部材22に形成されている開口部22cは開かれ、一次貯留部18と二次貯留部13aが連通される。これにより、フィルタ13内の前記二次貯留部13aに貯留された油を、孔24f及び開口部22cを介して、前記一次貯留部18に排出することができる。
【0062】
従って、本実施例においても、二次貯留部13aに溜められた油を、圧縮機の停止中に排出することができるため、圧縮機始動時における油の持去りを防止することが可能となるなど、上記実施例1及び実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、給油式圧縮機が停止する条件としては、操業時間内に制御により一時停止される場合と、操業時間外の長期停止があるが、何れの場合でも圧縮機の停止直後は前記空気槽に圧縮された高圧空気が貯留されているので、その高圧空気を利用して、
図16(b)に示すように、弁体24bを下方に押し下げることができ、何れの場合でも圧縮機停止時には前記二次貯留部13aに溜まっている油を排出することができる。従って、次に圧縮機を始動するときには油の持去りを防止できる。
【0064】
一方、圧縮機が運転開始されると、前記制御装置27にその運転開始信号が送られ、該制御装置27は前記制御弁26を閉状態に制御する。この結果、前記弁体24bには弾性体24aのばね力に加え、一次貯留部18(フィルタ13の一次側)の圧力が上昇することにより、前記弁体24bには上方向に押上力が発生する。この結果、
図16(a)に示すように、前記弁体24bは上方に押し上げられて、弁体24bの弁部24baが前記開口部22cを塞ぐため、この開口部22cを介しての前記一次貯留部18(一次側)と前記二次貯留部13a(二次側)との連通は遮断される。従って、吐出配管6(
図2参照)から油分離器7内に流入した圧縮空気は、油が一次分離された後、前記フィルタ13を通ることで油が二次分離され、その後前記調圧逆止弁21、吐出配管6a及びアフタークーラ8を介して圧縮機外部の空気槽などに送られる。
【0065】
以上説明したように、本発明の各実施例によれば、圧縮機停止時に、フィルタ内下部の二次貯留部に貯留された油を一次貯留部側に排出するように構成した開閉装置をフィルタの底部材に設けているので、圧縮機が停止すると前記二次貯留部に貯留された油を、油の自重で自動的に排出できるため、圧縮機が再始動される際の油の持去りを確実に防止することができる。従って、圧縮機運転中に前記二次貯留部に溜まった油を圧縮機本体側に回収するための回収配管の径(或いはオリフィスの径)を小さくすることが可能となるから、圧縮機運転中に前記回収配管を介して、圧縮空気が圧縮機本体側(圧縮作動室或いは吸込側)に流れ込んでしまうのを抑制することができ、この結果圧縮機性能が低下するのを防止することができる。