特許第5767594号(P5767594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767594
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】窒化用鋼材およびこれを用いた窒化部材
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20150730BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C22C38/00 301N
   C22C38/38
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-31032(P2012-31032)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-166997(P2013-166997A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆
(72)【発明者】
【氏名】安藤 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】冨田 邦和
(72)【発明者】
【氏名】小野坂 高志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 庸一
(72)【発明者】
【氏名】福井 隆志
【審査官】 蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−321731(JP,A)
【文献】 特開2009−287111(JP,A)
【文献】 特開2011−122208(JP,A)
【文献】 特許第5449626(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 〜 38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.10%未満(ただし、0は含まない)、
Si:0.05〜0.30%、
Mn:1.2〜2.5%、
Cr:0.3〜1.5%、
Mo:0.05〜0.30%、
V:0.1〜0.5%、
Nb:0.020〜0.200%、
Al:0.005〜0.040%、
N:0.0050〜0.0200%を含有し、
残部:Feおよび不可避不純物からなり、
ベイナイト分率:80%以上、残部:フェライトまたはマルテンサイトであり、
窒化前芯部硬さ:HV260未満
であることを特徴とする窒化用鋼材。
【請求項2】
不可避不純物としてのTiの含有割合が0.010%未満であることに特徴を有する、請求項1に記載の窒化用鋼材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化用鋼材により製造されることを特徴とする窒化部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化を施すことにより優れた耐摩耗性と疲労強度とが得られる窒化用鋼材およびこれを用いた窒化部材、特に、自動車用歯車をはじめとする種々の機械構造用部品に用いられる、耐摩耗性、疲労特性、さらには被削性に優れた窒化用鋼材およびこれを用いた窒化部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用歯車等の機械構造部品には、優れた疲労特性が要求されることから、このような部品には、表面硬化処理が施されるのが通例である。表面硬化処理としては、浸炭処理、高周波焼入処理および窒化処理が良く知られている。
【0003】
浸炭処理は、高温のオーステナイト域においてCを浸入・拡散させるために、深い硬化深さが得られ、疲労強度の向上に有効である。しかしながら、熱処理歪が発生することから、静粛性等の観点より厳しい寸法精度の要求される、例えば歯車等の部品には、浸炭後に歯研等の処理が行われている場合もある。
【0004】
高周波焼入処理は、高周波誘導加熱により表層部を焼入れする処理であり、浸炭処理と同様に変態を伴うため、寸法精度に劣る。
【0005】
窒化処理は、Ac1変態点以下の温度域で窒素を浸入・拡散させて表面硬さを高める処理であるが、処理時間が50〜100時間と長く、また処理後に表層の脆い化合物層を除去する必要があった。
【0006】
このようなことから、従来の窒化処理と同程度の処理温度で、窒化を短時間で処理する窒化処理が開発され、近年では窒化処理が機械構造用部品等を対象に広く普及している。窒化処理は、500〜600℃の温度域でNとCを同時に浸入・拡散させて、表面を硬化するもので、従来の窒化処理と比較して処理時間を半分以下とすることが可能である。
【0007】
しかしながら、浸炭処理では、焼入硬化により芯部硬度を上昇させることが可能であるのに対し、窒化処理では、鋼の変態点以下の温度で処理を行うため、芯部硬度が上昇しない。従って、窒化処理材は、浸炭処理材と比較すると、疲労強度が劣る。
【0008】
窒化処理材の疲労強度を高めるため、通常、窒化前に焼入・焼戻し処理により、芯部硬度を上昇させることが行われるが、得られる疲労強度は、十分と言い難く、また、製造コストが上昇し、機械加工性も低下する。
【0009】
このような問題を解決するため、特許文献1および2には、鋼の成分組成を、Ni、Al、Cr、Tiを含有する成分組成とし、窒化時に芯部は、Ni−Al、Ni−Ti系の金属間化合物あるいはCu化合物により時効硬化させ、表面は、その窒化層中にCr、Al、Ti等の窒化物や炭化物を析出硬化させることが記載されている。
【0010】
特許文献3には、Cuを0.5〜2%含有した鋼を、熱間鍛造で鍛伸後、空冷してCuを固溶したフェライト主体組織とし、580℃×120分の窒化処理中にCuを析出させ、さらに、Ti、V、Nb炭窒化物の析出硬化も併用して、窒化処理後において優れた曲げ疲労特性を備えた鋼とすることが記載されている。
【0011】
特許文献4には、Ti炭窒化物の析出硬化の活用により、窒化処理後に優れた疲労強度を備えた鋼材を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−59488号公報
【特許文献2】特開平7−138701号公報
【特許文献3】特開2002−69572号公報
【特許文献4】特開2010−163671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1および2に記載された窒化鋼は、Cu等の析出硬化により、曲げ疲労強度は向上するものの、被削性の確保が十分とは言い難く、特許文献3に記載された窒化鋼は、Cu、Ti、V、Nbを比較的多量に添加することが必要で、生産コストが高い。さらに、特許文献3および4にて活用するTi炭窒化物の析出硬化は、靭性の著しい低下を同時にもたらす問題を有していた。
【0014】
従って、この発明の目的は、比較的安価な生産コストで、窒化前の被削性を大きく損なわず、しかも、窒化後の疲労特性に優れる窒化用鋼材およびこの鋼材を用いた窒化部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋼の窒化後の疲労特性に及ぼす組織、組成の影響について鋭意検討を重ねた。その結果、以下のような知見を得た。
【0016】
(1)窒化時に、芯部の窒素非拡散領域にも微細な炭窒化物を析出させて芯部硬度を上昇させた場合、窒化後に優れた疲労特性が得られる。
(2)窒化時の炭窒化物析出による芯部の硬度上昇を図るためには、窒化前の芯部組織を主としてベイナイトとすることにより、窒化前芯部のフェライト分率を低位に制御して、窒化前の炭窒化物析出を抑制するとともに、マルテンサイトの生成を抑制すれば、被削性を確保することが可能である。
(3)鋼中Tiの含有量を少なくし、TiNの生成を抑制することが疲労強度および低温靭性の向上に有効である。
【0017】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とする。
【0018】
請求項1に記載の発明は、質量%で、C:0.10%未満(ただし、0は含まない)、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.2〜2.5%、Cr:0.3〜1.5%、Mo:0.05〜0.30%、V:0.1〜0.5%、Nb:0.020〜0.200%、Al:0.005〜0.040%、N:0.0050〜0.0200%を含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなり、ベイナイト分率:80%以上、残部:フェライトまたはマルテンサイトであり、窒化前芯部硬さ:HV260未満であることに特徴を有するものである。

【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、不可避不純物としてのTiの含有割合が0.010%未満であることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の窒化用鋼材により製造される窒化部材に特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、窒化前の被削性を大きく損なわず、しかも、窒化後の疲労特性に優れる窒化用鋼材およびこの鋼材を用いた窒化部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明における窒化用鋼材の化学成分組成の数値の限定理由について説明する。なお、化学成分組成の単位は、何れも、質量%である。
【0023】
C:0.10%未満(ただし、0は含まない)
Cは、窒化時に窒素が供給されない鋼材中心部における硬度上昇に有効であるものの、窒化前の切削時における主相をベイナイトとするこの発明においては、Cを多量に鋼中に含有すると、ベイナイトの硬さが著しく上昇し、窒化処理前の被削性が甚だしく劣化し、しかも、窒化後の鋼材全体の延性および靭性を著しく低下させる。従って、この発明では、C含有量を0.10%未満(ただし、0は含まない)とした。
【0024】
Si:0.05〜0.30%
Siは、脱酸のため添加するが、0.50%を超えるとフェライトおよびベイナイト組織中に固溶し、機械加工性および冷間加工性を劣化させるため0.30%以下とする。一方、0.05%未満では、鋼中酸素の低減が困難となる。従って、この発明では、Siの含有割合を0.05〜0.30%の範囲内とした。
【0025】
Mn:1.2〜2.5%
Mnは、ベイナイト組織生成ならびに窒化後の強度向上に有効なため積極的に添加するが、1.2%未満では、窒化前組織におけるフェライト分率の低下が困難となる。一方、2.5%を超えると、機械加工性および冷間加工性を劣化させる。従って、この発明では、Mnの含有割合を1.2〜2.5%の範囲内とした。好ましくは、1.3%〜2.0%の範囲内である。
【0026】
Cr:0.3〜1.5%
Crは、焼入性を高める元素であり、強度を上昇させるために0.3%以上添加する。しかし、1.5%を超えて添加すると、焼入性が過大となり延性や溶接性を劣化させる。従って、この発明では、Crの含有割合を0.3〜1.5%の範囲内とした。
【0027】
Mo:0.05〜0.30%
Moは、ベイナイト組織生成ならびに窒化後の強度向上に有効なため積極的に添加するが、0.05%未満の添加では、窒化前組織におけるフェライト分率の低下が困難となる。一方、0.30%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか冷間加工性を劣化させ、さらには、鋼材コストの著しい増大を招く。従って、この発明では、Moの含有割合を0.05〜0.30%の範囲内とした。好ましくは、0.10〜0.25%の範囲内である。
【0028】
V:0.1〜0.5%
Vは、炭窒化物の形成により芯部の強度上昇に有効な元素であるが、0.1%未満の添加では十分な効果が得られない。一方、0.5%を超えると、オーステナイト域で析出した炭窒化物が窒化前の組織におけるフェライト生成を促進し、窒化時の析出強化量を逆に低下させ、さらには、このように高温で析出した粗大な炭窒化物は著しく靭性を劣化させる。従って、この発明では、Vの含有割合を0.1〜0.5%の範囲内とした。
【0029】
Nb:0.020〜0.200%
Nbは、鋼中に微細な炭窒化物を形成し、窒化後の芯部硬度の上昇に有効な元素である。また、析出炭窒化物がTiNと比較して、さらに微細であるため、靭性への悪影響も小さい。また、Vとの複合添加により、さらなる時効時の芯部の硬度上昇が可能となる。しかし、その含有量が0.020%未満では十分な効果が得られない。一方、0.200%を超えると、Nb炭窒化物であっても窒化後鋼材の靭性を著しく劣化させる。従って、この発明では、Nbの含有割合を0.020〜0.200%の範囲内とした。
【0030】
Al:0.005〜0.040%
Alは、鋼の脱酸のために添加するが、0.005%未満ではその効果が少ないため0.005%以上を添加する。しかし、0.040%を超えて添加した場合には脱酸の効果が飽和するとともに、鋼中の窒素とオーステナイト域で結びついてAlNを形成し、窒化時の芯部強度上昇に有効なNb、Vの炭窒化物の形成量を低下させる。従って、この発明では、Alの含有割合を0.005〜0.040%の範囲内とした。
【0031】
N:0.0050〜0.0200%
Nの含有割合が0.0050%未満では、窒化後の鋼材中心部の強度を得るために必要な炭窒化物析出を十分に得ることが困難となる。一方、0.0200%を超えると、形成する窒化物が粗大化して鋼材の靭性を低下させる。従って、この発明では、Nの含有割合を0.0050〜0.0200%の範囲内とした。
【0032】
Ti<0.010%
Tiは、窒化後の窒素拡散層中にTiNを形成し、窒化用鋼によく用いられる合金元素である。しかしながら、特に、窒化前鋼中にTiおよび窒素の含有量が高い場合には、鋼中Tiがこれら窒素と結合して鋼材芯部にTiNが形成される。形成されるTiNは、VやNbの炭窒化物等に比較して、粗大化しやすく靭性を著しく低下させる。Tiは、基本的に含有しないことが望ましいが、不可避的不純物として許容し得る含有割合は、0.010%未満である。
【0033】
窒化前の組織
この発明では、窒化前のミクロ組織をベイナイト主体とし、その面積率を80%以上に規定する。この規定よりもベイナイト分率が低下し、フェライト分率が上昇した場合には、析出強化に活用する炭窒化物が、窒化よりも前の段階で粗大に析出し、窒化後に必要とする芯部強度が得られなくなる。一方、マルテンサイトの分率が上昇してベイナイト分率が80%未満となった場合には、窒化前の硬さが上昇しすぎて冷間加工の実施が困難となる。従って、この発明では、ベイナイト分率を80%以上とした。
【0034】
窒化前後の硬さ
窒化後芯部硬さがHv290以下の場合には、窒化後に優れた疲労強度を得ることが困難となる。一方、窒化前芯部硬さがHv260以上となると、歯切り等の冷間加工が実質的に困難となる。従って、この発明では、窒化前の硬さをHv260未満、窒化後の硬さをHv290超とした。
【0035】
なお、この発明において芯部とは、窒化処理前後で窒素濃度差が10%未満の領域をさす。
【0036】
窒化条件は、500〜650℃で1〜10hとすることが好ましい。これよりも温度が低く保持時間が短い場合には、十分な析出量が得られず、一方、温度が高く時間が長い場合には、析出物が粗大化して、何れの場合も窒化後に十分な疲労強度が得られなくなる。なお、窒化条件により窒化後の表面に化合物層の残留がある場合とない場合とが存在するが、この発明においては、何れにおいても、その効果を発揮し得るため、その如何を問わない。
【実施例】
【0037】
次に、この発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
【0038】
表1に示す化学組成の鋼A〜Rを転炉にて溶製し、連続鋳造によりブルームとした。次いで、ビレット圧延を経てさらに棒鋼圧延により50mmφの棒鋼とした。こうして調製した棒鋼を、さらに、1200℃に加熱後、1100℃にて熱間鍛造を行い、36mmφとし、1℃/secで室温まで冷却して、供試体No.1〜18を得た。そして、各供試体のビッカース硬さを測定するとともに、各供試体に以下に示す種々の熱処理を施して、下記のように供試体の特性試験を行った。
【0039】
なお、表1中の鋼Rは、代表的な機械構造用合金鋼であるJIS−SCr420に相当する。
【0040】
上記各供試体について、被削性をドリル切削試験により評価した。ドリル切削試験は、下記の通りであった。
【0041】
熱間鍛造材を20mm厚に切断したものを試験材として、JIS高速度工具鋼SKH51の6mmφのストレートドリルで、送り0.15mm/rev、回転数745rpmの条件で、1断面当たり5箇所の貫通穴を開け、ドリルが切削不能になるまでの総穴数で評価した。
【0042】
また、各供試体について、芯部の硬度をビッカース硬度計を用い、試験荷重100gにて試験を行った。
【0043】
鋼A〜Rからなる供試体No.1〜18の熱間鍛造材を、以下の形状に機械加工した。
【0044】
(a)平行部φ12mm×50mm、中央部にR0.6mm、底部φ9mm形状のノッチを有する小野式回転曲げ疲労試験片。
【0045】
(b)10×10×55mm、中央部に10mmRノッチのシャルピー衝撃試験片。
【0046】
これらの形状に加工したものについて、ガス窒化処理をした。ガス窒化処理は、NH3:N2:CO2=50:45:5の雰囲気で525〜625℃に加熱し、5時間保持して行った。
【0047】
窒化処理した上記(a)の形状について、組織観察、硬度および疲労特性調査を行った。また、窒化処理した上記(b)の形状について、20℃にてシャルピー衝撃試験を行い、衝撃吸収エネルギーを測定した。
【0048】
これらの試験結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表2から明らかなように、本発明範囲にある供試体No.1〜5は、何れも、代表的な機械構造用鋼である供試体No.18(JIS−SCr420鋼)よりも、窒化後に高い芯部硬さを有しており、優れた疲労強度と靭性とを両立していた。
【0052】
次に、比較例である供試体No.6〜17について評価する。
【0053】
C含有量が本発明範囲を外れて高い供試体No.6、Si含有量が本発明範囲を外れて高い供試体No.7は、何れも、熱間鍛造後の硬さが高く、ドリル穿孔特性が発明例に比較して著しく劣っていた。
【0054】
Mn含有量が本発明範囲を外れて低い供試体No.8、Cr含有量が本発明範囲を外れて低い供試体No.9、Mo含有量が本発明範囲を外れて低い供試体No.10は、何れも、熱間鍛造後の組織のベイナイト分率が低く、窒化時の硬化が十分に得られないため、窒化後の芯部硬さが低く、疲労強度が発明例に比べて劣っていた。
【0055】
窒化時の硬化を引き起こす微細析出物の構成元素である、V、NbおよびN含有量が本発明範囲をそれぞれ外れて低い供試体No.11、供試体No.13、供試体No.17は、窒化時の硬化が十分に得られず、窒化後の疲労強度が発明例よりも劣っていた。
【0056】
また、Al含有量が本発明範囲を外れて高い供試体No.15でも、同様に窒化時の硬化が十分に得られず、窒化後の疲労強度が発明例よりも劣っていた。
【0057】
一方、V含有量が本発明範囲を外れて高い供試体o.12、Nb含有量が本発明範囲を外れて高いNo.14は、熱間鍛造後の硬さが上昇してドリル穿孔特性が発明例よりも劣っていた。また、窒化時の硬化量は、本発明例に比較して更なる増大は認められず、疲労強度は却って本発明に比べて劣っていた。さらに、窒化後の靭性も発明例に比較して低下する傾向が認められた。
【0058】
さらに、Ti含有量が本発明範囲を超えて高い供試体No.16は、窒化後の表面硬さおよび芯部硬さは発明例と同等であるにもかかわらず、疲労強度および靭性は、本発明例に比べて大幅に劣っていた。
【0059】
以上の実施例から明らかなように、この発明によれば、優れた部品成形時の被削性と、窒化後の表層、芯部硬さを有し、疲労強度に優れた窒化用鋼材およびこの鋼材を用いた窒化部材を提供することができる。