特許第5767601号(P5767601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767601
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   G01N27/58 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-97809(P2012-97809)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-210358(P2013-210358A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-44021(P2012-44021)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 建弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】多比良 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古田 紘也
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−053425(JP,A)
【文献】 特開2000−249678(JP,A)
【文献】 特開2008−070380(JP,A)
【文献】 特開2008−139278(JP,A)
【文献】 特開2009−168677(JP,A)
【文献】 特開2009−002890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/407
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、被測定ガス中の被検出ガス濃度を検出するセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側に配置される絶縁部材であり、軸線方向に貫通する貫通孔と、軸線方向に貫通し、リード線と電気的に接続される端子金具が保持された端子収納穴とを有する筒状の絶縁部材と、
前記絶縁部材の後端向き面に自身の先端向き面を接して配置され、軸線方向に貫通する略円形の大気導入孔を有する筒状のシール部材と、該大気導入孔に嵌挿される略円筒状のフィルタ留具と、前記フィルタ留具に保持され、前記大気導入孔を閉塞する通気性のフィルタと、
を備えるガスセンサであって、
前記大気導入孔は、前記貫通孔と少なくとも一部で重なり、
前記フィルタ留具の先端側から径方向外側にフランジ部が延び、該フランジ部の後端向き面は前記シール部材の先端に向く係止面に係止され、該フランジ部の先端向き面の少なくとも一部は前記絶縁部材の後端向き面によって後端側に当接され、
前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の最大内接円の直径は、前記フィルタ留具の内径より小さく、
前記貫通孔は、多角形状の断面を有するガスセンサ。
【請求項2】
前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の断面積は、前記フィルタ留具の内面の断面積より大きい請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記貫通孔は、矩形状の断面を有する請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
軸線方向に延び、被測定ガス中の被検出ガス濃度を検出するセンサ素子と、
前記センサ素子の後端側に配置される絶縁部材であり、軸線方向に貫通する貫通孔と、軸線方向に貫通し、リード線と電気的に接続される端子金具が保持された端子収納穴とを有する筒状の絶縁部材と、
前記絶縁部材の後端向き面に自身の先端向き面を接して配置され、軸線方向に貫通する略円形の大気導入孔を有する筒状のシール部材と、該大気導入孔に嵌挿される略円筒状のフィルタ留具と、前記フィルタ留具に保持され、前記大気導入孔を閉塞する通気性のフィルタと、
を備えるガスセンサであって、
前記大気導入孔は、前記貫通孔と少なくとも一部で重なり、
前記フィルタ留具の先端側から径方向外側にフランジ部が延び、該フランジ部の後端向き面は前記シール部材の先端に向く係止面に係止され、該フランジ部の先端向き面の少なくとも一部は前記絶縁部材の後端向き面によって後端側に当接され、
前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の最大内接円の直径は、前記フィルタ留具の内径より小さく、
前記貫通孔は、楕円形状の断面を有するガスセンサ。
【請求項5】
前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の断面積は、前記フィルタ留具の内面の断面積より大きい請求項4に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出するセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の酸素等の被検出ガス濃度を検出するガスセンサとして、軸線方向に延び、酸素イオン透過性の固体電解質と1対の電極とを有するセルを備えたセンサ素子を有するものが知られている。
この種のガスセンサとして、上記セルのセンサ出力の基準電位を生じさせる基準酸素(大気)を、ガスセンサの外部から取り込む外気導入型のガスセンサが知られている(特許文献1、2)。例えば、図11に示すように、外気導入型のガスセンサ2000においては、ガスセンサの最後端に配置されたゴム製のグロメット(弾性のシール部材)1700に軸線O方向に貫通する大気導入孔1700hを設け、この大気導入孔1700hに円筒状のフィルタ留具172を嵌挿し、大気導入孔1700hとフィルタ留具172の間に撥水通気性のフィルタ174を保持している。これにより、大気導入孔1700hを介してガスセンサ2000の内部に大気が導入され、センサ素子10の基準電位を生じさせることができる。
又、軸線O方向に沿ってセンサ素子10と弾性シール部材1700との間には絶縁部材1660が配置され、絶縁部材1660の軸線O方向に貫通した複数の端子収納穴1660aに複数の端子金具21a、22aが保持されている。そして、この端子金具21a、22aを、センサ素子10後端の電極パッド(又は電極リード)11a、12aに電気的に接続することにより、センサ出力が取り出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−242121号公報
【特許文献2】特開2008−111820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図11に示した従来のガスセンサ2000の場合、絶縁部材1660には上記端子収納穴1660a以外に貫通孔を設けないことが多く、シール部材の大気導入孔1700hからガスセンサ内部に導入された大気は、絶縁部材1660の端子収納穴1660aを通ってセンサ素子10まで流入するようになっていた。
しかしながら、端子収納穴1660aは比較的小径であり、さらにその内部に端子金具21a、22a、及びこれに接続されるリード線146が挿通していることから有効な開口段面積は小さく、通気抵抗が高くなってセンサ素子10に十分に大気が導入されないという問題があった。
又、大気導入孔1700hからガスセンサ内部に導入された大気は、絶縁部材1660の後端面に衝突した後に端子収納穴1660aを通るため、大気の流入が阻害されていた。それ故、スムースにセンサ素子へと大気を導入することができないという問題があった。
特に、排気管等に取り付けられるガスセンサ2000の先端側にて、センサ素子10の周囲のシールを完全にするのは難しく、センサ素子10の内部に若干の排気ガス(被測定ガス)が流入することがある。このような場合、排気ガスが大気によって速やかに入れ替わらないと、上記セルが排気ガスを基準電位として検出してしまい、センサの出力不良が発生するおそれがある。
一方、ガスセンサの使用時の振動等により、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から先端側へ脱落する恐れがあり、これを有効に防止することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、絶縁部材に所定の貫通孔を設けることで、フィルタ留具(及びフィルタ)をシール部材に確実に保持しつつ、ガスセンサ内部のセンサ素子に速やかに大気を導入してセンサの出力不良を抑制することができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、被測定ガス中の被検出ガス濃度を検出するセンサ素子と、前記センサ素子の後端側に配置される絶縁部材であり、軸線方向に貫通する貫通孔と、軸線方向に貫通し、リード線と電気的に接続される端子金具が保持された端子収納穴とを有する筒状の絶縁部材と、前記絶縁部材の後端向き面に自身の先端向き面を接して配置され、軸線方向に貫通する略円形の大気導入孔を有する筒状のシール部材と、該大気導入孔に嵌挿される略円筒状のフィルタ留具と、前記フィルタ留具に保持され、前記大気導入孔を閉塞する通気性のフィルタと、を備えるガスセンサであって、前記大気導入孔は、前記貫通孔と少なくとも一部で重なり、前記フィルタ留具の先端側から径方向外側にフランジ部が延び、該フランジ部の後端向き面は前記シール部材の先端に向く係止面に係止され、該フランジ部の先端向き面の少なくとも一部は前記絶縁部材の後端向き面によって後端側に当接され、前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の最大内接円の直径は、前記フィルタ留具の内径より小さく、前記貫通孔は、多角形状の断面を有する
【0007】
このガスセンサによれば、大気導入孔と貫通孔とが少なくとも一部で重なって配置されているため、大気の流入経路にはその流入を阻害する障害となるものがない。それ故、外部からフィルタ留具内に流入した大気はスムースにセンサ素子へと大気を導入することができる。
又、絶縁部材の後端向き面における貫通孔の最大内接円の直径は、フィルタ留具の内径より小さく、貫通孔より径方向外側にフランジ部の一部がはみ出しているため、当該はみ出し部分を介して絶縁部材(の後端向き面)がフランジ部の先端向き面を押圧することができる。従って、貫通孔の断面積を確保しつつもフィルタ留具(及びフィルタ)がシール部材から脱落することを防止することができる。さらに、ガスセンサの使用時の振動等により、絶縁部材とシール部材が径方向に互いにずれても、フィルタ留具(及びフィルタ)がシール部材から脱落することが回避される。
なお、貫通孔の最大内接円とは、貫通孔の内側に接する円のうち最大径のものをいう。
また、前記貫通孔は、多角形状の断面を有するので、貫通孔の短辺に沿う方向において、上記したはみ出し部分の長さを比較的長くとることができる。そのため、ガスセンサの使用時の振動等により、絶縁部材とシール部材が径方向に互いにずれても、上記距離に十分の余裕があるため、絶縁部材によってフランジ部を押圧する面積が低減せず、フィルタ留具(及びフィルタ)の保持がより確実になる。
【0008】
前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の断面積は、前記フィルタ留具の内面の断面積より大きいことが好ましい。
【0009】
この場合、貫通孔の断面積がフィルタ留具の内面の断面積より大きいため、外部からフィルタ留具内に流入した大気は、フィルタ留具より断面積の大きい貫通孔で広がって流れ、貫通孔内の通気抵抗が低くなり、センサ素子に十分に大気を導入することができる。そのため、センサ素子の内部に排気ガス(被測定ガス)が流入しても、排気ガスが大気によって速やかに入れ替わり、センサの出力不良を抑制することができる。
【0010】
前記貫通孔は矩形状の断面を有することがより好ましい。
この場合、貫通孔の短辺に沿う方向において、上記したはみ出し部分の長さを比較的長くとることができる。そのため、ガスセンサの使用時の振動等により、絶縁部材とシール部材が径方向に互いにずれても、上記距離に十分の余裕があるため、絶縁部材によってフランジ部を押圧する面積が低減せず、フィルタ留具(及びフィルタ)の保持がより確実になる。
【0011】
又、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、被測定ガス中の被検出ガス濃度を検出するセンサ素子と、前記センサ素子の後端側に配置される絶縁部材であり、軸線方向に貫通する貫通孔と、軸線方向に貫通し、リード線と電気的に接続される端子金具が保持された端子収納穴とを有する筒状の絶縁部材と、前記絶縁部材の後端向き面に自身の先端向き面を接して配置され、軸線方向に貫通する略円形の大気導入孔を有する筒状のシール部材と、該大気導入孔に嵌挿される略円筒状のフィルタ留具と、前記フィルタ留具に保持され、前記大気導入孔を閉塞する通気性のフィルタと、を備えるガスセンサであって、前記大気導入孔は、前記貫通孔と少なくとも一部で重なり、前記フィルタ留具の先端側から径方向外側にフランジ部が延び、該フランジ部の後端向き面は前記シール部材の先端に向く係止面に係止され、該フランジ部の先端向き面の少なくとも一部は前記絶縁部材の後端向き面によって後端側に当接され、前記絶縁部材の後端向き面における前記貫通孔の最大内接円の直径は、前記フィルタ留具の内径より小さく、前記貫通孔は、楕円形状の断面を有する。
このガスセンサによれば、大気導入孔と貫通孔とが少なくとも一部で重なって配置されているため、大気の流入経路にはその流入を阻害する障害となるものがない。それ故、外部からフィルタ留具内に流入した大気はスムースにセンサ素子へと大気を導入することができる。
又、絶縁部材の後端向き面における貫通孔の最大内接円の直径は、フィルタ留具の内径より小さく、貫通孔より径方向外側にフランジ部の一部がはみ出しているため、当該はみ出し部分を介して絶縁部材(の後端向き面)がフランジ部の先端向き面を押圧することができる。従って、貫通孔の断面積を確保しつつもフィルタ留具(及びフィルタ)がシール部材から脱落することを防止することができる。さらに、ガスセンサの使用時の振動等により、絶縁部材とシール部材が径方向に互いにずれても、フィルタ留具(及びフィルタ)がシール部材から脱落することが回避される。
なお、貫通孔の最大内接円とは、貫通孔の内側に接する円のうち最大径のものをいう。
また、前記貫通孔は、楕円形状の断面を有するので、貫通孔の後端向き面において、フランジ部のはみ出し部分が存在するため、上記同様にフィルタ留具(及びフィルタ)がシール部材から脱落することを防止することができる。


【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、絶縁部材に所定の貫通孔を設けることで、フィルタ留具(及びフィルタ)をシール部材に確実に保持しつつ、ガスセンサ内部のセンサ素子に速やかに大気を導入してセンサの出力不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
図2】センサ素子の斜視図である。
図3】先端側から見たセパレータの底面斜視図である。
図4】グロメット近傍の構成を示す図1の部分拡大図である。
図5】先端側から見たセパレータの底面図である。
図6】端子金具を保持したセパレータの底面図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】外部からフィルタ留具を経て貫通孔へ流入する大気の流れを示す模式図である。
図9】先端側から見たときのセパレータの変形例を示す底面図である。
図10】先端側から見たときのセパレータの別の変形例を示す底面図である。
図11】従来のガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
図12】後端側から見たセパレータの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)200の長手方向に沿う全体断面図、図2はセンサ素子10の斜視図、図3は先端側から見たセパレータ166の底面斜視図、図4はグロメット170近傍の構成を示す図1の部分拡大図、図5は先端側から見たセパレータ166の底面図、図6は端子金具を保持したセパレータ166の底面図、図7図6の部分拡大図である。
このガスセンサ200は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサであり、酸素イオン透過性の固体電解質と1対の電極とを有するセル(図示せず)を備えたセンサ素子10を有する。そして、このセルのセンサ出力の基準電位は、ガスセンサの外部から取り込んだ基準酸素(大気)を基準とするようになっている。
【0015】
図1において、ガスセンサ200は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(ガスセンサ200の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、軸線方向に貫通する貫通孔168の先端側の内部に、センサ素子10の後端部の周囲を取り囲む状態で配置されるセラミック製のセパレータ(特許請求の範囲の「絶縁部材」)166と、センサ素子10とセパレータ166との間に配置される4個の端子金具21a、21b、22a、22b(図1では、2個のみを図示)とを備えている。
又、センサ素子10の先端のガス検出部10aは、アルミナ等の多孔質保護層20で覆われている。
【0016】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する挿通孔154を有し、挿通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この挿通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が挿通されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0017】
なお、主体金具138の挿通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層153、156(以下、滑石リング153、156ともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されており、セラミックホルダ151と主体金具138の棚部152との間には、滑石リング153やセラミックホルダ151を保持するための金属ホルダ158が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0018】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重のプロテクタである、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0019】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、センサ素子10の4個の端子金具21a、21b、22a、22b(図1では、2個のみを表示)とそれぞれ電気的に接続される4本のリード線146(図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔(図示せず)が形成された、弾性のあるゴム製筒状のグロメット(特許請求の範囲の「シール部材」)170が配置されている。
さらに、グロメット170の軸方向中心には基準雰囲気となる大気を導入するための略円形の大気導入孔170hが形成され、この大気導入孔170hには金属製の略円筒状のフィルタ留具172が嵌挿されている。そして、大気導入孔170hとフィルタ留具172の間に、空気は通すが水を通さない撥水通気性のフィルタ174が保持され、大気導入孔170hを介してガスセンサ200の内外に大気を導入可能になっている。なお、フィルタ留具172は金属製でなく、樹脂製等であってもよい。
【0020】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、セパレータ166が配置される。なお、このセパレータ166は、センサ素子10の後端側の主面に形成される合計4個の電極パッド(図1では2個の電極パッド11a、12aのみを表示)の周囲に配置される。このセパレータ166は、軸線方向に貫通する貫通孔168を有する筒状形状に形成されると共に、外表面から径方向外側に突出する鍔部167が備えられている。セパレータ166は、鍔部167が保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に保持される。
【0021】
図2に示すようにセンサ素子10は、軸線O方向に延びる板状をなし、先端部10sが酸素濃度を検出するガス検出部10aとなっていて、ガス検出部10aは多孔質保護層20で覆われている。なお、センサ素子10自身は公知の構成であり、図示はしないが酸素イオン透過性の固体電解質体と1対の電極とを有するガス検出部と、ガス検出部を加熱して一定温度に保持するヒータ部とを備えている。
そして、センサ素子10の一方の主面10Aの後端側には、幅方向に2つの電極パッド11a、11bが並び、ガス検出部10aからのセンサ出力信号がリード部(図示せず)を介してこれら電極パッド11a、11bから出力される。又、主面10Aに対向するように設けられた他の主面10Bの後端側には、幅方向に2つの電極パッド12a、12bが並び、リード部(図示せず)を介してヒータ部に電力を供給するようになっている。
各電極パッド11a、11b、12a、12bは、軸線O方向に長い矩形状になっていて、例えばPtを主体とする焼結体として形成することができる。
【0022】
図3は、先端側から見たセパレータ166の底面斜視図を示す。セパレータ166の中心には、センサ素子10の断面とほぼ同一形状の断面矩形の貫通孔168が軸線方向に貫通している。そして、貫通孔168の径方向外側には、貫通孔168の2つの長辺にそれぞれ沿って矩形孔からなる端子収納穴166aが2個ずつ(合計4個)並び、各端子収納穴166aは軸線方向に貫通している。
さらに、貫通孔168と4個の端子収納穴166aとの間の部分はセパレータ166の最先端となる先端縁166eから段状に後退し、棚状の先端向き面166sが形成されている。
【0023】
図4は、グロメット170近傍の構成を示す図1の部分拡大図である。フィルタ留具172は先端側が開口し、後端面に底部を有する内径dの略円筒状をなし、フィルタ留具172の先端側から径方向外側にフランジ部172fが延びている。又、フィルタ留具172の後端面には、内径dよりやや小さい直径dの開口172hが形成され、この開口172hからフィルタ174を介して大気を導入可能になっている。
一方、グロメット170の大気導入孔170hの先端は、フランジ部172fを収容可能に拡径しており、この拡径部分の先端向き面が係止面170sとなっている。そして、フィルタ174を被せたフィルタ留具172をグロメット170の先端側から大気導入孔170hに嵌挿すると、フランジ部172fの後端向き面172sがフィルタ174を介して係止面170sに係止され、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170の軸線O方向に位置決めされる。
なお、図1に示したように、グロメット170は外筒144によって加締められて固定される一方、セパレータ166は保持部材169の弾性力によりグロメット170に向かって付勢されている。従って、フランジ部172fの先端向き面172fsはセパレータ166の後端向き面166tによって後端側に押圧され、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170内に保持される。
【0024】
図5は、先端側から見たセパレータ166の底面図を示す。また、図12は、後端側から見たセパレータ166の上面図を示す。このセパレータ166に対し、図6に示すように、端子金具21a、21b、22a、22bが、互いに接触しないよう隔離された状態でセパレータ166の各端子収納穴166a内に保持されると共に、貫通孔168の先端側に臨んでいる。なお、図6においては、端子金具21aの先端部(電極パッドに接する部分)を省略している。
又、端子金具21a(他の端子金具21b、22a、22bも同様)は、全体として軸線O方向に延び、その先端縁から後端に向かって折り返された先端部が電極パッドに接する。又、端子金具21aの後端がリード線146に圧着される。
ここで、詳しくは後述するように、貫通孔168より径方向外側にフランジ部172fの一部Rがはみ出している。
【0025】
図7は、図12の部分拡大図である。セパレータの後端向き面における、貫通孔168の断面積は、フィルタ留具172(フランジ部172f)の内面の断面積より大きくなっている。これにより、図8に示すように、外部からフィルタ留具172内に流入した大気は、フィルタ留具172より断面積の大きい貫通孔168で広がって流れるので、貫通孔168内の通気抵抗が低くなり、センサ素子10に十分に大気を導入することができる。そのため、センサ素子10の内部に排気ガス(被測定ガス)が流入しても、排気ガスが大気によって速やかに入れ替わり、センサの出力不良を抑制することができる。
なお、フィルタ留具172の内面の断面積(つまり、直径dの円の面積)よりも、フィルタ留具172の後端面の開口172hの断面積(つまり、直径dの円の面積)の方が小さく、大気導入の際には開口172hが律速となるが、貫通孔168への大気の流れとの関係では、貫通孔168に隣接するフィルタ留具172の内面の方が影響が大きいので、本発明ではフィルタ留具172の内面の断面積を規定する。
【0026】
ところで、単純に貫通孔168の断面積を、フィルタ留具172の内面の断面積より大きくすべく、例えば貫通孔168をフィルタ留具172の外径より大径の円形とした場合、フィルタ留具172(フランジ部172f)全体が貫通孔168の内部に位置し、貫通孔168より径方向外側にフランジ部172fがはみ出す部分が存在しない。そのため、フランジ部172f(の先端向き面172fs)をセパレータ166によって押圧することができず、ガスセンサの使用時の振動等により、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落する恐れがある。
そこで、貫通孔168の最大内接円Cの直径dINがフィルタ留具172の内径dより小さくなるように貫通孔168の断面形状を規定すれば、貫通孔168より径方向外側にフランジ部172fの一部Rがはみ出すため、当該はみ出し部分Rでセパレータ166(の後端向き面166t)がフランジ部172f(の先端向き面172fs)を押圧することができる。従って、貫通孔168の断面積を確保しつつもフィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落することを防止することができる。
さらに、dIN<dとしているため、ガスセンサの使用時の振動等により、セパレータ166とグロメット170が径方向に互いにずれても、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落することが回避される。
貫通孔168の最大内接円Cとは、貫通孔168の内側に接する円のうち最大径のものをいう。
なお、はみ出し部分Rは、フィルタ留具172の中心軸を基準にみて対称に存在する方が好ましい。このような構成であれば、仮に貫通孔168の中心がフィルタ留具172の中心から大きく偏位したとしても、はみ出し部分Rがフィルタ留具172を安定して押圧するため、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落することをより確実に防止することができる。
【0027】
なお、仮に貫通孔168をフィルタ留具172の外径より大径の円形とした場合であっても、貫通孔168の中心をフィルタ留具172の中心から大きく偏位させれば、貫通孔168より径方向外側にフランジ部172fの一部をはみ出させることはできる。但し、このような場合、ガスセンサの使用時の振動等により、セパレータ166とグロメット170が径方向に互いにずれると、フィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落するおそれがある。又、貫通孔168をフィルタ留具172から大きく偏心させると、貫通孔168とフィルタ留具172の連通部分の断面積が大幅に減少し、大気導入の際の通気抵抗が大きくなるので好ましくない。
なお、本発明においても、dに比べてdINを過度に小さくすると、やはり貫通孔168とフィルタ留具172の連通部分の断面積が減少するので、0.8×d≦dINとするのが好ましい。
【0028】
さらに、本実施形態のように、貫通孔168の断面形状を細長い矩形とすると、図7に示すように、貫通孔168の短辺に沿う方向において、上記したはみ出し部分Rに介在するセパレータ166の長さLを比較的長くとることができる。そのため、ガスセンサの使用時の振動等により、セパレータ166とグロメット170が径方向に互いにずれても、距離Lに十分の余裕があるため、セパレータ166によってフランジ部172fを押圧する面積が低減せず、フィルタ留具172(及びフィルタ174)の保持がより確実になる。
【0029】
図9は、先端側から見たときのセパレータ166の変形例を示す底面図である。セパレータ166xにおいては、貫通孔168xは断面が楕円状をなしている。又、図10は、先端側から見たときのセパレータ166の変形例を示す底面図である。セパレータ166yにおいては、貫通孔168yは断面が不定形状をなしている。
セパレータ166x、セパレータ166yにおいても、それぞれ貫通孔168x、168yの最大内接円Cの直径dINがフィルタ留具172の内径dより小さく、貫通孔168x、168yより径方向外側にフランジ部172fの一部Rがはみ出している。
又、それぞれ貫通孔168x、168yの断面積は、フィルタ留具172(フランジ部172f)の内面の断面積より大きい。
これらにより、貫通孔168x、168y内の通気抵抗が低くなり、センサ素子10に十分に大気を導入することができると共に、貫通孔168x、168yの断面積を確保しつつもフィルタ留具172(及びフィルタ174)がグロメット170から脱落することを防止することができる。
【0030】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
貫通孔の形状は上記実施形態に限定されず、例えば三角形や五角形などの多角形断面を有する貫通孔を用いてもよい。
又、ガスセンサは、板状のセンサ素子の他、筒状のセンサ素子を有していてもよい。ここで、筒状のセンサ素子の場合、固体電解質体からなる筒部の内面及び外面の先端にはそれぞれ電極が形成され、この電極から電極リード等を介して筒部の後端に端子接続部が一体に形成される。そして、上記電極パッドの代わりに、端子接続部が端子金具に電気的に接続される。
又、端子金具の形状も限定されず、例えば筒状のセンサ素子の外面に形成された端子接続部に接続される端子金具においては、端子接続部に接する先端部を環状とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 センサ素子
166、166x、166y 絶縁部材(セパレータ)
166t 絶縁部材の後端向き面
168、168x、168y 貫通孔
はみ出し部分
170 シール部材(グロメット)
170h 大気導入孔
170s シール部材の係止面
172 フィルタ留具
172f フィルタ留具のフランジ部
172fs フランジ部の先端向き面
172s フランジ部の後端向き面
174 フィルタ
200 ガスセンサ
O 軸線方向
最大内接円
IN 最大内接円の直径
フィルタ留具の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12