【実施例1】
【0020】
図1〜
図8に示す実施例1の内燃機関の可変動弁機構9は、バルブ7をバルブスプリング8の復元力に抗して押圧して駆動するための機構であって、次に示す高リフトカム10と、低リフトカム20,20と、入力アーム30と、出力アーム40と、切換ピン50と、押圧装置60と、リターンスプリング70と、ストッパ機構80とを含み構成されている。そして、押圧装置60とリターンスプリング70とストッパ機構80とが、切換ピン50を変位させる変位装置59を構成している。なお、以下では、出力アーム40の幅方向の一方を左といい、他方を右というが、左と右とが反対であってもよい。
【0021】
[高リフトカム10]
高リフトカム10は、入力アーム30を押圧するためのカムであって、カムシャフト25に設けられている。この高リフトカム10は、断面形状が真円形のベース円部11と、ベース円部11から突出したカムノーズ部12とを含み構成されている。
【0022】
[低リフトカム20,20]
低リフトカム20,20は、出力アーム40を押圧するための一対のカムであって、カムシャフト25の高リフトカム10の左右両側に設けられている。各低リフトカム20は、断面形状が真円形のベース円部21と、ベース円部21から突出したカムノーズ部22とを含み構成されている。そして、この低リフトカム20のカムノーズ部22は、高リフトカム10のカムノーズ部12よりも低く(リフト量が小さく)なっている。
【0023】
[入力アーム30]
入力アーム30は、高リフトカム10に押圧されて揺動するアームである。この入力アーム30は、後端部に被支持孔32を備え、その被支持孔32と出力アーム40の後部に設けられた支持孔46とに支持ピン33が挿入されることによって、出力アーム40に支持ピン33を介して揺動可能に支持されている。そして、先端部の上面には、高リフトカム10に当接する被押圧面31が設けられている。また、先端部の下面には、切換ピン50を押圧して駆動するための駆動部35が凸設されている。
【0024】
[出力アーム40]
出力アーム40は、揺動してバルブ7を駆動するアームである。この出力アーム40は、入力アーム30の左右両側に並設されたアウタアーム部41,41と、アウタアーム部41,41の先端どうしを連結してなる先端部42と、アウタアーム部41,41の後端どうしを連結してなる後端部43と、アウタアーム部41,41の下端部どうしの間に設けられた底部44とを含み構成されている。そして、後端部43は、ラッシュアジャスタ48によって揺動可能に支持されている。また、先端部42はバルブ7のステムエンドに当接している。また、アウタアーム部41,41の長さ方向中間部には、切換ピン50を挿入するためのピン孔45,45が左右方向に貫設されている。また、アウタアーム部41,41のピン孔45,45よりも後方には、前述の支持孔46,46が貫設されている。そして、入力アーム30の下面と出力アーム40の底部44の上面との間には、入力アーム30を高リフトカム10に付勢するロストモーションスプリング34が介装されている。また、出力アーム40は、入力アーム30と出力アーム40との連結が解除される非連結時に、低リフトカム20に押圧される一対のローラ47,47を備えている。
【0025】
[切換ピン50]
切換ピン50は、出力アーム40のピン孔45,45に挿入されて入力アーム30と出力アーム40とに通された1本のピンであって、入力アーム30と出力アーム40とを相対揺動不能に連結する右側の連結位置Pと、その連結を解除する左側の非連結位置Qとの間で変位可能に設けられている。そして、この切換ピン50の左端は出力アーム40の左側面から左方に突出し、右端は出力アーム40の右側面から右方に突出している。よって、この切換ピン50は、従来例とは違い、非連結位置Qでの入力アーム30と出力アーム40との間で複数本に分割されておらず、連結位置P及び非連結位置Qのいずれの位置でも入力アーム30と出力アーム40との間を左右方向に跨ぐように構成されている。そして、この切換ピン50の長さ方向中間部には、非連結位置Qに配されたときには入力アーム30の駆動部35が揺動時に進入でき、連結位置Pに配されたときには入力アーム30の駆動部35が揺動時に進入できない逃し溝53が凹設されている。また、この切換ピン50の逃し溝53の左右両側には、前述の一対のローラ47,47が回転可能に外嵌されている。
【0026】
それによって、左から順に、左側のローラ47、入力アーム30,右側のローラ47が並んでいる。そして、左側のアウタアーム部41の右側面が、一対のローラ47,47及び入力アーム30が左方に変位するのを規制し、右側のアウタアーム部41の左側面が、一対のローラ47,47及び入力アーム30が右方に変位するのを規制している。
【0027】
[押圧装置60]
押圧装置60は、切換ピン50を左方に押圧して右側の連結位置Pから左側の非連結位置Qに変位させるための装置である。この押圧装置60は、出力アーム40よりも右方に設けられており、入力アーム30及び出力アーム40のいずれとも一緒に揺動しない。この押圧装置60は、左右方向に変位可能に設けられた押圧部材61と、該押圧部材61を油圧変化で左右方向に変位させる本体部(図示略)とを含み構成されている。そして、押圧部材61の左端面が切換ピン50の右端面に当接している。
【0028】
[リターンスプリング70]
リターンスプリング70は、先端部で切換ピン50の左端面を右方に押圧して切換ピン50を左側の非連結位置Qから右側の連結位置Pに押し戻すための捻りコイルバネである。このリターンスプリング70は、出力アーム40よりも左方に設けられた支持部75に支持されており、入力アーム30又は出力アーム40のいずれとも一緒に揺動しない。
【0029】
[ストッパ機構80]
ストッパ機構80は、切換ピン50の左方への変位を非連結位置Qで停止させ、かつ、右方への変位を連結位置Pで停止させるための機構であって、次に示す変位規制溝81とロック部材86とを含み構成されている。変位規制溝81は、切換ピン50の外周面の逃し溝53の真下に位置する部分に凹設されて左右方向に延びている。また、ロック部材86は、出力アーム40の底部44に貫設された上下方向に延びる取付孔87に取り付けられて該取付孔87から上方に突出して変位規制溝81に係入している。そして、変位規制溝81の右端82がロック部材86に当接することによって、切換ピン50を非連結位置Qで停止させ、変位規制溝81の左端83がロック部材86に当接することによって、切換ピン50を連結位置Pで停止させる。また、このストッパ機構80は、切換ピン50の出力アーム40に対する回動を防止する回動防止機構も兼ねており、変位規制溝81の内側面84がロック部材86に当接することで前記回動を防止する。
【0030】
次に、可変動弁機構9でバルブ7を駆動する際の様子を、[i]切換ピン50を非連結位置に配する非連結時と、[ii]切換ピン50を連結位置に配する連結時とに分けて以下に説明する。
【0031】
[i]非連結時
非連結時には、
図5(a)に示すように、押圧部材61が切換ピン50を左方に押圧することによって切換ピン50が左方に変位する。そして、その左方への変位は、変位規制溝81の右端82がロック部材86に当接することによって止まる。それによって、切換ピン50が非連結位置Qに止まる。そのため、
図6(a)(b)及び
図7(a)(b)に示すように、入力アーム30の駆動部35が逃し溝53に進入することにより、入力アーム30は出力アーム40に対して相対揺動(空振り)をする。よって、入力アーム30の駆動部35が切換ピン50を押圧することはない。そのため、切換ピン50に外嵌されたローラ47,47が低リフトカム20,20によって押圧され、出力アーム40が低リフトカム20,20のカムプロフィールで揺動してバルブ7を駆動する。
【0032】
[ii]連結時
連結時には、
図5(b)に示すように、押圧部材61が切換ピン50を左方に押圧しないことによって切換ピン50がリターンスプリング70の復元力で右方に変位する。そして、その右方への変位は、変位規制溝81の左端83がロック部材86に当接することによって止まる。それによって、切換ピン50が連結位置Pに止まる。そのため、
図8(a)(b)に示すように、入力アーム30の駆動部35は逃し溝53に進入することなく切換ピン50を押圧する。そのため、出力アーム40は、入力アーム30と共に高リフトカム10のカムプロフィールで揺動してバルブ7を駆動する。
【0033】
本実施例1によれば、次の[1]〜[4]の効果を得ることができる。
[1]リターンスプリング70を出力アーム40の外部に設けることによって、左側内部に設ける従来例に比べて出力アーム40を左方向(幅方向)に小型化及び軽量化することができる。そのため、可変動弁機構9の小型エンジンへの搭載性やエンジンの燃費を向上させることができる。
【0034】
[2]ストッパ機構80を、切換ピン50の外周面に設けられて左右方向に延びる変位規制溝81とそれに係入したロック部材86とから構成することによって、左ストッパ機構と右ストッパ機構とを出力アームの左右両端部に設ける従来例に比べて、出力アーム40を左右方向に小さくすることができる。また、ストッパ機構80を回動防止機構と兼用にすることによっても、可変動弁機構9をコンパクトにすることができる。そのため、可変動弁機構9の小型エンジンへの搭載性やエンジンの燃費を向上させることができる。また、変位規制溝81は、逃し溝53の真下にあるため、高精度で位置決めが可能となる。また、ストッパ機構80は回動防止機構も兼ねるため、ストッパ機構80で切換ピン50を所定の角度に固定することができ、それによって、駆動部35が逃し溝53に進入可能なストロークを最大限確保することができる。
【0035】
[3]ローラ47,47を支持するローラ軸を切換ピン50と兼用にすることで、ローラ47,47を支持するローラ軸の構造を一重にすることができる。そのため、ローラ軸の構造をシンプルかつ径方向に小型にすることができる。そのため、可変動弁機構9の小型エンジンへの搭載性やエンジンの燃費を向上させることができる。
【0036】
[4]切換ピン50に逃し溝53を凹設することによって、切換ピン50を従来例のように非連結位置Qでの入力アーム30と出力アーム40(アウタアーム部41,41)との間で3本に分割しなくても、連続した1本の状態で切換を行えるようにすることができる。そのため、可変動弁機構9をシンプルかつ小型にすることができる。そのため、可変動弁機構9の小型エンジンへの搭載性やエンジンの燃費を向上させることができる。
【実施例2】
【0037】
図9に示す実施例2の内燃機関の可変動弁機構9’は、リターンスプリング70が出力アーム40の左側面に取り付けられている点で実施例1と異なり、その他の点で実施例1と同様である。よって、リターンスプリング70は、出力アーム40と一緒に揺動する。本実施例2によっても実施例1と同様の効果を得ることができる。但し、出力アーム40がリターンスプリング70の分だけ重くなる点で実施例1よりも不利であり、リターンスプリング70と切換ピン50との間の摺動摩擦がなくなる点で実施例1よりも有利である。
【0038】
なお、本発明は前記実施例1,2の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもでき、例えば次の変更例1〜4のように変更してもよい。
【0039】
[変更例1]
押圧装置60で切換ピン50を非連結位置Qに変位させ、リターンスプリング70の復元力で切換ピン50を連結位置Pに変位させる代わりに、押圧装置60で切換ピン50を連結位置Pに変位させ、リターンスプリング70の復元力で切換ピン50を非連結位置Qに変位させるようにしてもよい。そして、このような設計変更は、切換ピン50の逃し溝53の位置を変更して連結位置Pと非連結位置Qとを左右に入れ換えることで行ってもよいし、押圧装置60の位置とリターンスプリング70の位置とを左右に入れ換えることで行ってもよい。
【0040】
[変更例2]
押圧装置60を、油圧変化で押圧部材61を左右方向に変位させる油圧式の押圧装置にする代わりに、磁力の変化で押圧部材61を左方方向に変化させる電磁式の押圧装置にしてもよい。
【0041】
[変更例3]
切換ピン50に、低リフトカム20に回転可能に当接するローラ47,47を回転可能に外嵌する代わりに、出力アーム40の上面に低リフトカム20に摺接するスリッパフォロアを設けてもよい。
【0042】
[変更例4]
低リフトカム20の代わりに、断面形状が真円形の円カムを設け、低リフト状態の代わりに休止状態になるようにしてもよい。