(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正係数決定手段は、前記第1の放射温度計の出力と第2の放射温度計の出力との比に基づいて、前記補正係数を決定していることを特徴とする請求項1に記載の被測定板の温度測定装置。
前記第1の放射温度計及び第2の放射温度計は、前記測定点に対する指向角度が平面視で互いに異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の被測定板の温度測定装置。
前記第1の放射温度計及び第2の放射温度計は、前記測定点に対する指向角度が側面視で互いに異なっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被測定板の温度測定装置。
前記被測定板は長尺材であって、前記長尺材の被測定板の幅方向中央から見て一方側に前記第1の放射温度計が設けられると共に、他方側に第2の放射温度計が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被測定板の温度測定装置。
前記参照板の温度を被測定板と同じ温度になるように温度調整する温度調整手段が備えられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被測定板の温度測定装置。
被測定板の片面に対面して設置されると共に前記被測定板と同じ温度になるように温度調整された参照板と、前記被測定板の片面の測定点に対して互いに異なる角度から指向するように設置されて、前記測定点の放射温度をそれぞれ計測可能とされた第1の放射温度計及び第2の放射温度計と、を備えた温度測定装置を用いて測定された温度を補正するに際しては、
前記第1の放射温度計の出力及び第2の放射温度計の出力に基づいて、被測定板の振れに伴う温度計測誤差を補正する補正係数を決定し、決定された補正係数に基づいて、前記第1の放射温度計及び第2の放射温度計の出力を補正することを特徴とする測定温度の補正方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る被測定板Wの温度測定装置1を図に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の温度測定装置1が設けられた溶融亜鉛めっき設備2を例示している。なお、溶融亜鉛めっき設備2は例示であり、第1実施形態の温度測定装置1は他の装置に設置されていてもよい。
【0015】
この溶融亜鉛めっき設備2は、前工程で圧延などを終えた鋼板W(被測定板)を連続的に通過させて溶融亜鉛めっきを行うものであり、亜鉛めっき鋼板Wを製造するために用いられる。溶融亜鉛めっき設備2は、この設備の入側にめっき前の鋼板Wを熱処理する焼鈍炉3を備えている。この焼鈍炉3の内部には鋼板Wを上下に通板させるロール搬送機構4が設けられており、鋼板Wに対してめっきの前処理を兼ねた熱処理を施せるようになっている。
【0016】
焼鈍炉3の下流側には熱処理後の鋼板Wを冷却する冷却帯5が設けられており、冷却帯5で冷却された後の鋼板Wはスナウトを介してめっきポット6へ送られる。このめっきポット6内には溶融した亜鉛めっき浴が収容されており、めっきポット6内で溶融亜鉛めっき処理された鋼板Wは、めっきポット6の上方に位置する空冷部7で冷却され、次工程に送られる。
【0017】
上述した冷却帯5や空冷部7では、鋼板W(被測定板W)の温度を精確に把握する必要があり、何らかの温度測定装置1、例えば、非接触型の放射温度計が設けられるのが一般的である。
ところで、上述したような放射温度計で、溶融亜鉛めっき設備2内を通板する鋼板Wの温度を計測しようとすると、鋼板Wの振れが原因で大きな温度計測誤差が発生する場合がある。例えば、溶融亜鉛めっき設備2には、上流側のガイドロールから1つ下流側に位置するガイドロールまでの距離が離れている場所があり、このような場所で鋼板Wの温度を計測しようとすると、鋼板Wが大きく振れて温度計測が困難になってしまうことがある。
【0018】
つまり、上述したような場所では、鋼板Wが厚み方向に沿って振れる「振動」、鋼板Wが板幅方向に沿って振れる「蛇行」、鋼板Wが搬送方向に沿った軸回りにねじれる「ねじり」などが発生しやすい。これらの種類の振れが鋼板Wに起こると、放射温度計から見た鋼板Wの位置が変化し、温度を測定しようとする測定点の位置も変動するため、放射温度計で計測される温度に温度計測誤差が発生する可能性が大きくなる。
【0019】
このような温度計測誤差を補正するために、本願出願人は、特許文献1(特開2010−38562号公報)に開示した温度測定装置、すなわち、鋼板の表裏両面に、参照板と放射温度計をそれぞれ配備したものを開発しているが、この装置は比較的大がかりなものとなっていて、溶融亜鉛めっき設備などの量産設備には放射温度計を鋼板の表裏両面に設置しうるスペースがない場合も多い。
【0020】
そこで、第1実施形態の温度測定装置1では、鋼板Wの片面に対面して、被測定板Wと同じ温度になるように温度調整された参照板8を設け、放射率の影響を相殺するようにしている。さらに、第1実施形態の温度測定装置1では、鋼板Wの片面(一方側表面)の測定点Mに対して互いに異なる角度から指向するように第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10を設置している。そして、第1の放射温度計9からの出力及び第2の放射温度計10からの出力に基づいて、鋼板Wの振れに伴う温度計測誤差を補正する演算手段11、を設けているのである。
【0021】
この演算手段11は、温度計測誤差を補正するための補正係数を決定する補正係数決定手段12と、補正係数決定手段12で決定された補正係数に基づいて、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の出力を補正すると共に、補正後の出力から測定点Mの温度を求める温度算出手段13とを備えるものとなっている。
以下、第1実施形態の温度測定装置1の詳細を説明する。
【0022】
図2は、第1実施形態の温度測定装置1を拡大して示したものである。詳しくは、
図2(a)は、鋼板Wが振動する前の状態を示したものであり、
図2(b)は、鋼板Wが振動した後の状態を拡大して示したものである。なお、
図2(a)及び
図2(b)は、いずれも上下2つの図から成っており、上図が水平に置かれた鋼板Wの表面を上面から見たもの(平面視)、また下図が鋼板Wを側面視したものである。
【0023】
鋼板Wは長尺な帯板状に形成されており、
図2(a)では紙面の右側から左側に向かって通板する鋼板Wが記載されている。
図2(a)の下図から明らかなように、鋼板Wの上面には温度を計測しようとする測定点M(実線の丸印で示された点)が位置しており、図例の温度測定装置1は鋼板Wの上面の温度を計測する構成となっている。さらに、この鋼板Wの上方には、鋼板Wより搬送方向に短尺で且つ幅方向に広い参照板8が配備されている。
【0024】
参照板8は、鋼板W(被測定板)の片面(図例では上面)から上方に向かって一定の距離をあけて、鋼板Wに対して平行乃至は所定の傾きとなるように配備されている。この参照板8は、鋼などで形成された平担な板材などが用いられる。参照板8は、図示しない温度調整装置を用いて鋼板Wと同じ温度(放射温度計で測定した温度)となるように制御されている。
【0025】
なお、参照板8には、背景放射の影響を小さくできるように、鋼板Wの測定点Mから見て参照板8以外の背景放射が可能な限り小さくなるように、鋼板Wよりも十分に大きな面
積のものを採用するのが好ましい。
第1の放射温度計9、第2の放射温度計10は、鋼板Wと参照板8との間の隙間であって、鋼板W及び参照板8の双方から一定の距離だけ離れた位置に配備されている。そして、これら2つの放射温度計は、鋼板Wの表面上の測定点Mに対して傾斜した方向に設置されており、測定点Mから放射される放射エネルギ(電磁波エネルギ)を計測可能とされている。この放射温度計には、放射エネルギを感知可能なセンサ、例えば赤外線センサなどが用いられている。
【0026】
次に、本発明の温度測定装置1の特徴である、第1の放射温度計9、第2の放射温度計10の設置状況(レイアウト)、及び演算手段11について説明する。
図2(a)に示すように、本発明の放射温度計には、鋼板Wの幅方向の中央を挟んで一方側に配備された第1の放射温度計9と、他方側に配備された第2の放射温度計10とがあり、測定点Mの幅方向左右両側から同一の測定点Mの表面温度を計測できるようになっている。
【0027】
これらの第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10は、測定点Mに対する指向角度が側面視では同じであるが、平面視では互いに異なっている。つまり、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の指向角度には、鋼板Wの表面に対する仰角と、通板ライン方向に対する傾斜角との2つがあり、第1実施形態では2つの放射温度計の仰角は同じ(θ
s1=θ
s2)であるが傾斜角は互いに異なっている(θ
1≠θ
2)。
【0028】
演算手段11は、第1の放射温度計9からの出力(測定温度の指示値)及び第2の放射温度計10からの出力(測定温度の指示値)に基づいて、被測定板Wの振れに伴う温度計測誤差を補正するものである。
この演算手段11は、具体的には、補正係数を決定する補正係数決定手段12と、補正係数決定手段12で決定された補正係数に基づいて、それぞれの放射温度計で計測された温度指示値を補正する温度算出手段13とを有している。なお、演算手段11は、実際にはパソコン上で動作するソフトウエアで構成されている。
【0029】
補正係数決定手段12は、第1の放射温度計9からの出力及び第2の放射温度計10からの出力に基づいて、被測定板Wの振れに伴う温度計測誤差を補正する補正係数を決定するものである。この補正係数決定手段12に入力される放射温度計からの出力には、それぞれの放射温度計で計測された温度指示値の結果だけでなく、放射温度計で計測された放射エネルギの強度などを用いることもできる。
【0030】
補正係数決定手段12には、第1の放射温度計9からの出力と第2の放射温度計10からの出力とが入力されており、入力された両出力の値の比を取るか、又は、両出力の差を一旦算出し、算出された比や差の値に基づいて補正係数を決定しており、決定された補正係数を温度算出手段13に送っている。なお、補正係数の決定に出力の比や差を用いる理由については、後ほど詳述する。
【0031】
温度算出手段13は、補正係数決定手段12で決定された補正係数に基づいて、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の出力を補正している。そして、温度算出手段13では、決定された補正係数に基づいて補正を行った後の測定温度の値を「補正後の測定温度」として出力している。
ところで、上述した補正係数決定手段12で放射温度計からの出力の比や差を用いるのは、以下のような理由からである。
【0032】
例えば、
図2(a)に示すように、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10が互いに鋼板Wに対する指向角度が異なる位置に設置されている場合を考える。このとき、
図2(a)では、それぞれの放射温度計の仰角θ
sは同じであるが、通板ライン方向に対する傾斜角が異なっていて、第1の放射温度計9の傾斜角はθ
1、第2の放射温度計10の傾斜角はθ
2(θ
2>θ
1)となっている。
【0033】
斯かる装置レイアウトのもと、
図2(b)に示すように、鋼板Wが振動によりδだけ下方に移動した場合、図中に点線の丸印で示すように第1の放射温度計9の測定点Mの位置は実線の丸印の位置から右上に、また第2の放射温度計10の測定点Mの位置は右下に移動する。この測定点Mの移動距離は、第1の放射温度計9の場合、鋼板Wの送り方向にδ
/tanθ
s×cosθ
1、板幅方向にδ/tanθ
s×sinθ
1となる。また、第2の放射温度計10の測定点Mの移動距離は、鋼板Wの送り方向にδ/tanθ
s×cosθ
2、板幅方向にδ/tanθ
s×sinθ
2となり、測定点Mの移動距離は両温度計で互いに異なっている。
【0034】
特に、第1実施形態では参照板8の面積を可能な限り小さくできるように、上述した参照板8は鋼板Wの板幅方向に長く、送り方向に短く形成されている。そのため、測定点Mが板幅方向へ移動しても温度計測値は殆ど変化しないが、測定点Mが長手方向に移動した場合には温度計測値に大きな変化が出やすくなる。つまり、第1実施形態では、測定点Mが長手方向に移動した場合に温度計測値が大きな影響を受けやすい。
【0035】
それゆえ、
図2(a)に示されるような放射温度計、参照板8及び鋼板Wの配置(以降、単にレイアウトという)としておけば、鋼板Wの振れ幅(振幅)に対してそれぞれの放射温度計で計測される測定温度の計算結果も異なったものとなる。
つまり、
図3(a)に示されるように、第1の放射温度計9の温度指示値も、第2の放射温度計10の温度指示値も、振幅が大きくなるに連れて緩やかにカーブを描いて増加するような変化傾向を示す。傾斜角がθ
1と小さい第1の放射温度計9の指示値の変化は、傾斜角がθ
2と大きい第2の放射温度計10の指示値の変化よりも、振幅が負の領域では大きく変化する。このように、第1の放射温度計9の温度指示値の曲線と、第2の放射温度計10の温度指示値の曲線とが異なるのは、設置角度θ
1、θ
2の違いに伴う背景放射量の変化や参照板8の形態係数の変化によるものである。
【0036】
ところで、実際の温度測定装置1では、鋼板Wが実際にどの程度振れているか、言い換えれば鋼板Wの移動距離δを計測することが困難であり、
図3(a)の横軸で示される振幅を得ることが不可能な場合も多い。それゆえ、
図3(a)のようなグラフを用いて、温度計測値の指示値を補正することは現実的ではない。
そこで、第1実施形態の温度測定装置1では、第1の放射温度計9の温度指示値と、第2の放射温度計10の温度指示値との双方の値に対して、これらの値の比を求め、求められた比(放射温度計指示値比)と鋼板Wの移動距離δとの関係を求めている。
【0037】
つまり、まず第2の放射温度計10の温度指示値(
図3(a)の実線の結果)を、第1の放射温度計9の温度指示値(
図3(a)の点線の結果)で除した値を、振幅に対する変化としてまとめると、
図3(b)に示すような関係が得られる。この
図3(b)では、振幅の増加に対して温度指示値の比は徐々に減少するような変化傾向が示される。
以上のようにして得られた
図3(b)と
図3(a)の関係を基にすれば、
図3(c)に示すように、放射温度計指示値比に対する補正係数の関係を示す曲線を得ることができる。この曲線は、第1の放射温度計9、第2の放射温度計10のそれぞれについて決定される。
【0038】
図3(c)に示すように、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の補正係数は、いずれも「放射温度指示値比=第1の放射温度計9の温度指示値/第2の放射温度計10の温度指示値」に対して略比例関係にあり、「放射温度指示値比」を算出しておけば、容易に第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の補正係数を精度良く且つ容易に求めることができる。
【0039】
また、
図3(c)を用いることで、鋼板Wの振幅δを知らなくても、放射温度計に対する補正係数を算出することができ、鋼板Wが実際にどの程度振れているかを知ることが困難な実際の温度測定装置1でも採用が可能となる。
なお、
図3(c)に示すように、放射温度計指示値比が1以下の場合、言い換えれば鋼板Wが参照板8に近づいて来る場合は、補正係数は殆ど1前後の値のまま変化しない。それゆえ、実際の補正に際しては、放射温度計指示値比が1以下となる場合は、補正係数を1として補正を行ってもよい。
【0040】
次に、
図4を用いて、上述した演算手段11で行われる信号処理、言い換えれば本発明の放射温度計による測定温度の補正方法を説明する。
まず、ステップ1(S1)では、鋼板Wの片側に、鋼板Wと略平行となるように対向状に参照板8を設置する。この参照板8には、参照板8の温度を鋼板Wの温度に合わせるように温度調整可能な温度調整装置が設けられている。また、参照板8の温度を測定する温
度センサも別途用意されている。
【0041】
ステップ2(S2)では、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10を、鋼板Wに対してそれぞれ異なる角度となるように取り付ける。そして、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10で鋼板W表面の測定点Mの温度を計測する。
ステップ3(S3)では、第1の放射温度計9の指示値に対して、第2の放射温度計10の指示値が変動しているかどうかを判断する。ここで第2の放射温度計10の指示値が第1の放射温度計9の指示値に対して十分に変動している(両指示値の差が所望の値を超える)と判断された場合は、被測定板Wの振れに伴う温度計測誤差が大きいものと考えて、ステップ4に進んで補正を行う。一方、変動していないと判断された場合は、温度計測誤差は無視できる程度である(指示値の補正は必要ない)と考えてステップ7に進む。
【0042】
ステップ4(S4)では、第1の放射温度計9で計測された測定温度の指示値Tm1で、第2の放射温度計10で計測された測定温度の指示値Tm2を除して、両指示値の信号比m(=Tm2/Tm1)を算出する。なお、鋼板Wに対する角度が小さい放射温度計が第1の放射温度計9であり、鋼板Wに対する角度が大きい放射温度計が第2の放射温度計10とされている。
【0043】
ステップ5(S5)では、上述したステップ4で求められた信号比m、及び
図3(c)を用いて、この信号比mに対応する第1の放射温度計9の補正係数R1(m)、第2の放射温度計10の補正係数R2(m)を決定する。また、決定された補正係数R1(m)及びR2(m)を用いて、測定対象である鋼板Wの振動の影響を排除した第1の放射温度計9の計測値Tm01及び第2の放射温度計10の計測値Tm02を求める。
【0044】
次に、ステップ5で求められた第1の放射温度計9の計測値Tm01及び第2の放射温度計10の計測値Tm02の平均値を求め(S6)、求められた平均値を補正後の指示値Tmとして、板温Tsを求める(S8)。
なお、ステップ3において、両指示値の間に大きな変動がないと判断された場合も、第1の放射温度計9の計測値Tm01及び第2の放射温度計10の計測値Tm02の平均値を求め(S7)、求められた平均値を補正後の指示値Tmとして、多重反射方式に基づいた手法(例えば、特許文献1に開示の手法)に拠り、板温Tsを求める(S8)。
【0045】
上述した被測定板Wの温度測定装置1及び放射温度計による測定温度の補正方法によれば、参照板8の設置数が鋼板Wの片面だけで済むため、温度測定装置1の設置に大きなスペースを必要としないし、複雑な装置構成を必要とすることもない。それゆえ、簡単な構成でありながら背景放射の影響を確実に且つ容易に排除して鋼板Wの放射温度を精確に計測することができる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態の被測定板Wの温度測定装置1について説明する。
【0046】
図5に示すように、第2実施形態の温度測定装置1は、測定点Mに対する第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の指向角度が平面視で同じであり、側面視で互いに異なっている。
つまり、
図5(a)に示すように、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10はいずれも鋼板Wの送り方向に対して同じ角度θ
1であるが、第1の放射温度計9の仰角はθ
s1、第2の放射温度計10の仰角はθ
s2(θ
s2>θ
s1)となり、それぞれの傾斜角は互いに異なっている。
【0047】
それゆえ、
図5(b)の下図に示すように、鋼板Wが振動によりδだけ下方に移動した場合には、図中に点線で示すように第1の放射温度計9の測定点Mの位置は、第2の放射温度計10の測定点Mの位置よりも遠方側(通板ラインに沿って離れた位置で、幅方向で縁端側)にずれる。具体的には、この測定点Mの移動距離は、第1の放射温度計9の場合、鋼板Wの送り方向にδ/tanθ
s1×cosθ
1、板幅方向にδ/tanθ
s1×sinθ
1となる。また、第2の放射温度計10の測定点Mの移動距離は、鋼板Wの送り方向にδ/tanθ
s2×cosθ
1、板幅方向にδ/tanθ
s2×sinθ
1となる。
【0048】
つまり、上述した第2実施形態のレイアウトの場合でも、仰角が互いに異なるため第1の放射温度計9と第2の放射温度計10とは測定点Mに対して互いに異なる角度から指向
するようになる。その結果、鋼板Wが距離δだけ移動した際には、それぞれの放射温度計の測定温度は全く異なった変化傾向を示す。それゆえ、第2実施形態でも、第1実施形態で説明したような演算手段11、言い換えればそれぞれの放射温度計からの出力比に基づいて決定された補正係数を用いて測定温度の補正を行って、鋼板Wの放射温度を精確に計測することができる。
【0049】
なお、第1の放射温度計9と第2の放射温度計10との配置に関しては、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたレイアウトにしてもよい。すなわち、測定点Mに対するそれぞれの放射温度計の指向角度が平面視で異なっていて(θ
1≠θ
2)、加えて、側面視でも互いに異なっている(θ
s1≠θ
s2)ようにしてもよい。この場合であっても、鋼板Wの移動距離δに対する測定温度の変化はそれぞれの放射温度計で全く異なったものとなり、上述したような補正が可能となる。
【0050】
また、本発明の温度測定装置1は、第1の放射温度計9及び第2の放射温度計10の双方が、鋼板Wの幅方向の中央を挟んで一方側のみ(例えば右側)に配備されていても良い。鋼板Wの右側に2つの放射温度計が配置されていて左側には配備されていなくても、測定点Mに対するそれぞれの放射温度計の指向角度が平面視で異なっていたり(θ
1≠θ
2)、側面視でも互いに異なっていれば(θ
s1≠θ
s2)、鋼板Wの移動距離δに対する測定温度の変化はそれぞれの放射温度計で全く異なったものとなり、上述したような補正が可能となるからである。
【0051】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。