特許第5767640号(P5767640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5767640-車両バッテリ安全システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767640
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】車両バッテリ安全システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20150730BHJP
   B60L 3/04 20060101ALI20150730BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20150730BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20150730BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20150730BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
   B60L3/04 D
   B60R16/04 W
   B60R21/0136
   H01M10/48 P
   H01M10/48 Z
   H01M10/48 301
   H02J7/00 P
   H02J7/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-527845(P2012-527845)
(86)(22)【出願日】2009年9月4日
(65)【公表番号】特表2013-504296(P2013-504296A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】SE2009050996
(87)【国際公開番号】WO2011028160
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2012年7月12日
【審判番号】不服2014-10155(P2014-10155/J1)
【審判請求日】2014年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】510162344
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】シュセロン、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ナイト−ニューベリー、ヒース
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
【審判官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−263193(JP,A)
【文献】 特開平10−66248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(2)と乗員安全装置(6)とを有する車両バッテリ安全システム(1)であって、
加速度に応答する衝突センサ(10)と;
前記バッテリの状態を示すバッテリパラメータを監視するために配置された複数個のバッテリセンサ(13〜17)と;
前記乗員安全装置を作動させるための第1のアクチュエータ(8)と;
複数個のバッテリ安全装置(20、21、22)と;
前記バッテリ安全装置(20、21、22)を作動させるための第2のアクチュエータ(23、24、25)と;
前記衝突センサ(10)および前記バッテリセンサ(13〜17)の両方からの信号(x、b)を受信して処理するように動作可能な制御ユニット(9)とを備え、
前記制御ユニット(9)が、前記衝突センサ(10)からの信号xに応答して前記乗員安全装置(6)を作動させるために、作動コマンドを前記第1のアクチュエータ(8)へ発行するように動作可能であり、
前記制御ユニット(9)は、更に、i)前記衝突センサ(10)からの信号xが第1の閾値Xを上回り、且つ、前記閾値第1の閾値Xより高い第2の閾値Xを上回った場合に、前記バッテリセンサ(13〜17)から受信された前記信号(b)とは無関係に、前記第2のアクチュエータ(23、24、25)へ作動コマンドを送信し;ii)前記衝突センサ(10)からの信号xが第1の閾値Xを上回らない場合でも、前記信号(b)少なくとも1つが所定のバッテリパラメータ閾値Bを上回り、且つ、当該信号(b)の変化率が所定の変化率の閾値Rを上回るときに、作動コマンドを前記第2のアクチュエータ(23、24、25)の少なくとも1つに送信し;iii)前記衝突センサ(10)からの信号xが第1の閾値Xを上回るが前記第2の閾値Xを上回らない場合には、前記信号(b)の少なくとも1つの変化率が所定の変化率の閾値Rを上回るときに、作動コマンドを前記第2のアクチュエータ(23、24、25)の少なくとも1つに送信することにより、前記複数個のバッテリ安全装置を選択的に作動させることを特徴とする車両バッテリ安全システム
【請求項2】
前記複数個のバッテリセンサ(13〜17)は異なるパラメータを検出する複数種類のセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両バッテリ安全システム。
【請求項3】
前記バッテリ(2)内の二酸化炭素または一酸化炭素の存在を検出し、検出された二酸化炭素または一酸化炭素のレベルを示す信号(b)を発生させるように構成されているガスセンサ(13)の形をした前記バッテリセンサを備える、請求項1又は2に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項4】
前記バッテリ(2)の内部温度を測定し、前記温度を示す信号(b)を発生させるように構成されている温度センサ(15)型の前記バッテリセンサを備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項5】
前記バッテリ(2)内の内部ガス圧を測定し、前記圧力を示す信号(b)を発生させるように構成されている圧力センサ(14)型の前記バッテリセンサを備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項6】
前記バッテリ(2)によって供給された電流を測定し、前記電流を示す信号(b)を発生させるように構成されている電流測定装置(16)型の前記バッテリセンサ(17)を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項7】
前記バッテリ(2)の放電率を測定し、前記放電率を示す信号(b)を発生させるように構成されている放電モニタ型の前記バッテリセンサ(17)を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項8】
前記制御ユニット(9)が、前記バッテリ安全装置(20、21、22)を作動させるために前記第2のアクチュエータ(23、24、25)へ作動コマンドが発行された後に、前記バッテリセンサ(13〜17)を継続して監視するように構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【請求項9】
前記制御ユニット(9)が、独立した電源(9a)に電気的に接続されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車両バッテリ安全システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の安全装備に関し、より詳しくは、電池と、エアバッグまたはシートベルト・プリテンショナのような乗員安全装置とを有する自動車用の安全装備に関する。
【背景技術】
【0002】
大抵の自動車は、通常、内燃機関を備えており、内燃機関は、この内燃機関を始動するための電池と組み合わされて、推進力と、エンジンが動いていない間は補助機能に対して電力とを供給する。
【0003】
車両を巻き込む衝突において車両の乗員を保護するために、例えば、エアバッグ、または、シートベルト・プリテンショナのような安全装置を作動させるように構成された衝突検出器装備を自動車に設けることが、現在では慣例になっている。このような衝突検出器装備は、典型的には、個々のセンサからの信号を受信して処理し、衝突センサから受信された信号が衝突を示す特定の規準を満たす場合に乗員安全装置を作動させる作動コマンドを発行するように構成された電子制御ユニットと組み合わせて、加速度計型の1つ以上の衝突センサを備える。
【0004】
内燃機関によって動力供給された自動車がもつ環境への影響に対する懸念が増しているのを考慮して、現在では、環境に有害だと思われるガスの汚染を減少させるいわゆる「よりクリーンな」自動車を提供することへの関心および重要性が増大している。その結果、現在では、少なくとも自動車の運転中は電気的に動力供給される自動車を提供することがますます一般的になってきている。例えば、充電式バッテリから電力を引き出す大型電気モータによって駆動される電気自動車を提供することが提案されている。
【0005】
極めて燃料効率がよく、かつ、「クリーンな」内燃機関を電気モータと典型的に組み合わせるいわゆる「ハイブリッド」自動車を提供することがさらに提案されている。このタイプのハイブリッド車両は、可能なとき、または、都合がよいときにいつでも電気モータによって駆動されるように構成されている。しかしながら、ハイブリッド車両は、例えば、モータによって提供された推進力が瞬時性能要求を満たすのに不十分であるとき、内燃機関によって駆動される。これは、この要求が単にモータの性能限界を超えるからであり、または、例えば、モータが電力を引き出す電気エネルギー源の充電が不十分だからである。このような装備では、モータは、典型的には、内燃機関が動いているとき、エンジンに接続されたオルタネータから充電するように配置された大容量充電式バッテリから電力を引き出す。しかしながら、モータが、電気化学バッテリそれ自体からではなく、一連の高容量キャパシタから電力を引き出す電動装備を提供することも提案されている。したがって、本特許明細書中で使用される用語「バッテリ」は、電気化学バッテリ、キャパシタ、スーパーキャパシタなどを含むが、これらに限定されない、任意の電気エネルギー蓄積装置を指すことが意図されている。
【0006】
したがって、当然のことながら、電気的に動力供給される車両と、上述された一般的なタイプのいわゆるハイブリッド車両とは、推進モータのための十分な電力を供給するために、比較的大型のバッテリを必要とする。その結果、このようなバッテリは、典型的には、極めて高電圧(典型的には、およそ300V)であり、極めて大量の電気的エネルギー(典型的には、2〜10kWh)を蓄積するように構成され、特に、車両が衝突に巻き込まれているか、または、バッテリ内で内部短絡が発生する場合に、それ自体で重大な電気的障害となる。その上、電気車両またはハイブリッド車両で用いるのに適しているタイプのバッテリは、現在では、車両のコスト全体に対して非常に大きく寄与している。例えば、このような車両のバッテリユニットが車両の総コストの10〜30%を占めることは、珍しくない。したがって、車両が偶発事故に巻き込まれている場合、バッテリユニットを損傷から保護し、それにより、より安価な車両の修理を容易にすることが望ましい。
【0007】
当然のことながら、上述のタイプのバッテリは、衝突の結果として短絡が内部的または外部的に発生する場合、極めて高温になる可能性があり、したがって、このような状況では火災または爆発の危険性を表す。
【0008】
このタイプの高エネルギー電気装備に対する別の懸念は、偶発事故の場合に自動車に引き起こされる損傷により車両の内部回路の部品が損傷し、活線が露出する可能性があり、車両の運転手および乗員に感電事故をもたらし、さらに随行している救急隊員にも感電事故をもたらすことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、偶発事故が発生した場合に、車両のバッテリを安全にするように構成されている安全装備を現代の自動車に設ける必要性がある。
【0010】
本発明の目的は、電気バッテリおよび乗員安全装置を有する自動車で用いるのに適したタイプの改良型安全装備を提供することである。
【0011】
本明細書中に記載された発明は、推進モータに動力供給するための大容量バッテリを有する車両で用いるのに特に適しているが、このアプリケーションは、内燃機関を始動するために比較的小容量バッテリが設けられている自動車でも使用できることに注意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、バッテリと乗員安全装置とを有する自動車用の安全装備であって、加速度に応答する衝突センサと、バッテリの状態を示すバッテリパラメータを監視するために配置されたバッテリセンサと、乗員安全装置を作動させるアクチュエータと、衝突センサおよびバッテリセンサの両方からの信号を受信して処理するように動作可能な制御ユニットとを備え、制御ユニットは、衝突センサからの信号に応答して乗員安全装置を作動させるために、作動コマンドをアクチュエータへ発行するように動作可能である装備を提供する。
【0013】
好ましくは、安全装備は、バッテリ安全装置を作動させるための第2のアクチュエータを備え、制御ユニットは、i)少なくとも1つの上記衝突センサからの所定の閾値を上回る信号と、ii)少なくとも1つの上記バッテリセンサからの所定の規準を満たす信号との両方を受信した直後に、作動コマンドを上記第2のアクチュエータへ発行するように動作可能である。
【0014】
都合のよいことには、上記制御ユニットは、上記バッテリパラメータの変化率を計算するのに有効であるアルゴリズムに応じてバッテリセンサからの上記信号を処理するステップを実行するように動作可能である。
【0015】
有利なことには、上記制御ユニットは、上記計算された変化率の値を所定の変化率の閾値と比較するステップを実行するように動作可能であり、上記所定の規準は、上記計算された変化率の値が変化率の閾値を上回るときに満たされる。
【0016】
好ましくは、上記制御ユニットは、衝突センサからの上記所定の閾値を上回る信号の受信に応答して、処理して比較する上記ステップを実行するように構成されている。
【0017】
都合のよいことには、上記制御ユニットは、所定のバッテリパラメータ閾値を上回る上記バッテリパラメータを表すバッテリセンサからの信号の受信に応答して、処理して比較する上記ステップを実行するように構成され、制御ユニットは、衝突センサからの上記所定の閾値を上回る信号がない場合であっても、上記変化率の閾値を上回る上記計算された変化率の値に応答して、バッテリ安全装置を作動させるために、作動コマンドを上記第2のアクチュエータへ発行するように動作可能である。
【0018】
有利なことには、制御ユニットは、衝突センサから受信された信号を上記所定の閾値より高い第2の閾値と比較するようにも構成され、制御ユニットは、バッテリセンサから受信された信号とは無関係に、上記衝突センサからの上記第2の閾値を上回る信号を受信した直後に、バッテリ安全装置を作動させるのに有効である上記第2のアクチュエータへ作動コマンドを発行するように動作可能である。
【0019】
好ましくは、上記制御ユニットは、バッテリ安全装置を作動させるために第2のアクチュエータへ作動コマンドが発行された後に、バッテリセンサを継続して監視するように構成されている。
【0020】
安全装備は、上記バッテリ内の二酸化炭素または一酸化炭素の存在を検出し、検出された二酸化炭素または一酸化炭素のレベルを示す信号を発生させるように構成されているガスセンサ型の上記バッテリセンサを備えてもよい。
【0021】
付加的、または、代替的に、安全装備は、上記バッテリの内部温度を測定し、上記温度を示す信号を発生させるように構成された温度センサ型の上記バッテリセンサを備えてもよい。このような装備では、温度センサからの信号が比較して評価される所定のバッテリパラメータ閾値は、およそ40℃に設定されてもよいと考えられ、40℃を上回る温度信号は、異常とみなされる。さらに、このような装備では、温度センサから得られた計算された変化率の値と比較される所定の変化率の閾値は、およそ10℃/秒に設定されてもよいと考えられる。
【0022】
安全装備は、上記バッテリ中の内部ガス圧を測定し、上記圧力を示す信号を発生させるように構成されている圧力センサ型のバッテリセンサを備えてもよい。このような装備では、制御ユニットは、ボイルの法則に従って予測圧力値を計算するように構成されてもよいと考えられ、圧力センサからの信号が比較して評価される上記所定のバッテリパラメータ閾値は、予測圧力値よりおよそ10%上に設定されてもよい。
【0023】
さらに、このような装備では、圧力センサから得られた計算された変化率の値と比較される所定の変化率の閾値は、およそ毎秒5%に設定されてもよい。
【0024】
安全装備は、上記バッテリによって供給された電流を測定し、上記電流を示す信号を発生させるように構成されている電流測定装置型のバッテリセンサを備えてもよい。
【0025】
安全装備は、バッテリの放電率を測定し、上記放電率を示す信号を発生させるように構成されている放電モニタ型のバッテリセンサを備えてもよい。このような装備では、センサから得られた放電率と比較される所定の変化率の閾値は、バッテリの仕様によって規定された最大値の約98%に設定されると考えられる。バッテリの最大規定値の100%より大きい放電率は、バッテリ安全装置が作動されるべき危険状態を表すと考えられる。
【0026】
好ましくは、上記制御ユニットは、メイン車両バッテリから分離した独立した電源に電気的に接続されているので、安全装備の制御ユニットおよび関連回路は、メインバッテリの故障または切断後に動作のための十分な電力を引き出すことができる。
【0027】
本発明がより容易に理解され、本発明のさらなる特徴が認められるように、本発明の実施形態が今度は添付図面を参照して一例として記述される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態による安全装備の構成要素を示す概略ブロック図である。
図2図1の安全装備の動作概要を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に図1をより詳細に参照すると、本発明による自動車安全装備1が示されている。特に、相互に直列に電気的に接続されている複数の個別のセル4が内部に設けられているバッテリ筐体3を備える車両バッテリ2が示されている。例えば、電動車両またはハイブリッド車両の場合、バッテリ2は、このバッテリに総出力電圧約300Vおよび総エネルギーレベル約2〜10kWhを与えるように接続された一連のセルを備えるリチウム・イオン・バッテリであり得ると考えられる。バッテリは、自動車の電気系統に電気的に接続された1対の端子5を有する。
【0030】
一般的に従来の方法では、自動車には、関連したアクチュエータ8を有する膨張式エアバッグ7の形態で示されている図1に概略的に示された装置6のようないくつかの乗員安全装置が設けられている。アクチュエータ8は、電子制御ユニット9に電気的に接続されており、電子制御ユニット9は、バッテリまたはキャパシタのような独立した電源9aに電気的に接続されており、メイン車両バッテリ2から分離し、メインバッテリ2の故障の場合、または、車両の電気系統からメインバッテリ2が切断された場合に、安全装備の制御ユニット9および関連した構成要素が(少なくとも限定された期間に亘って)動作するのに十分な電力を供給するように構成されている。制御ユニット9は、自動車の内部に適切な方法で分布し、本質的に知られている方法で個々に加速度に応答するいくつかの衝突センサ10から信号を受信するように配置されている。
【0031】
衝突センサ10は、それぞれの接続線11を介して制御ユニット9に電気的に接続され、制御ユニットは、出力線12を介して乗員安全装置6のアクチュエータ8に電気的に接続されている。一般的に従来の方法では、制御ユニットは、衝突の発生を示す1つ以上の衝突センサ10からの信号に応答して乗員安全装置6を作動させるために、出力線12を介してアクチュエータ8へ作動コマンドを発行するように動作可能である。
【0032】
衝突センサ10に電気的に接続されるのに加えて、本発明の制御ユニット9は、バッテリの物理的状態または電気的状態を示すバッテリパラメータを監視するように配置され構成されている少なくとも1つのバッテリセンサにも電気的に接続されている。図1に示された特定の装備は、複数のこのようなバッテリセンサ13〜17を備え、個々のバッテリセンサは、それぞれのバッテリパラメータを監視し、測定されたパラメータを表す信号を制御ユニット9へ送信するように配置されている。
【0033】
特に、図1に示された装備内のバッテリ2は、ガスセンサ13、圧力センサ14、温度センサ15、電流センサ16、および、放電率センサ17が設けられ、これらはそれぞれ、それぞれの入力線18を介して制御ユニット9の入力に電気的に接続されている。
【0034】
ガスセンサ13は、バッテリ筐体3に搭載されるように構成され、筐体の中へ伸びるガス検出プローブ19を備える。ガスセンサ13は、二酸化酸素および/または一酸化炭素の存在を検出するように構成されており、それゆえ、バッテリ筐体3の内部の燃焼ガスの蓄積に応答して信号を生成するのに有効である。
【0035】
圧力センサ14は、バッテリ筐体3の内部ボリュームの中へ延びるようにも構成され、筐体3中の内部ガス圧力を測定するように配置されている。
【0036】
温度センサ15は、バッテリ筐体3の内部ボリュームの中へ延びるように配置されたプローブを備え、バッテリ2の内部温度を測定するように配置されている。
【0037】
電流センサ16は、1対のバッテリセル4の間に接続され、バッテリ2によって供給される電流のレベルを表す信号を生成するように構成されている電流測定装置の形態をとっている。
【0038】
放電センサ17は、両方のバッテリ端子5の間に電気的に接続され、バッテリの瞬時放電率を表す信号を生成するように構成されている
【0039】
安全装備1は、いくつかのバッテリ安全装置20、21、22をさらに備え、個々のバッテリ安全装置は、それぞれのアクチュエータ23、24、25と関連付けられ、これらのアクチュエータはそれぞれ、それぞれの出力線26を介して制御ユニット9に電気的に接続されている。
【0040】
個々のバッテリ安全装置20、21、22は、異なった形態をとることができ、それゆえ、様々なバッテリ状態を表すバッテリセンサからの信号に応答して動作直後にバッテリを安全にするように構成されていると考えられる。例えば、バッテリ安全装置20のうちの1つは、例えば、圧縮ガス源を使用することによってバッテリを冷却するように構成された冷却装置の形態で設けてもよく、この冷却装置は、温度センサ15からの適切な信号によって、安全装備が異常または危険なバッテリの温度増加を検出した場合に作動するように意図されている。
【0041】
別のバッテリ安全装置21は、作動直後に自動車の電気回路からバッテリを電気的に切断するように構成されてもよい。この点に関して、切断装置21は、バッテリを可逆的、非可逆的、または、準可逆的のいずれかで切断するように構成することができると考えられる。
【0042】
別の安全装置22は、制御ユニット9からの適切な作動コマンドに応答して両方のバッテリ端子5の間に電気的に接続した直後、バッテリを急激に放電させることが意図された放電装置の形態をとることができる。例えば、安全装置22は、装置22の作動直後にバッテリの両方の端子5の間の電気的接続のために配置されたいくつかの放電抵抗器を備えてもよい。
【0043】
制御ユニット9は、場合によっては、サイレンもしくはスピーカ27、警告灯もしくは閃光灯28、および/または、非常信号送信機29のような1つ以上の周辺装置に接続されてもよい。
【0044】
本発明の主たる特徴は、制御ユニット9が衝突センサ10からの信号を受信して処理し、そのような衝突信号に依存して乗員安全装置6を作動させるように構成されているが、しかし、1つ以上のバッテリセンサ13〜17から受信された信号を受信して処理するようにも配置されていることに注意されたい。図1に示された装備では、制御ユニット9は、偶発事故が1つ以上の衝突センサ10によって検出された場合に、かつ、所定の作動規準を満たす1つ以上のバッテリセンサ13〜17からの信号に応答して、作動コマンドを少なくとも1つのバッテリ安全装置20、21、22のアクチュエータへ発行するようにも構成されている。その結果、当然のことながら、また、以下でより詳細に説明されるように、本発明の安全装備は、自動車を巻き込む衝突の検出直後に乗員安全装置を作動させるようにも機能する統合制御ユニットの使用によって、バッテリ2内の危険な故障の発生を検出するように構成されている。
【0045】
したがって、本発明は、多数の自動車において現在見出され、かつ例えば、エアバッグ、および/または、シートベルト・プリテンショナのような乗員安全装置を含む乗員安全システムの動作および作動を管理するように特に構成されているタイプの他の標準的な制御ユニット9の比較的僅かな変更だけによって、バッテリ安全装備の設置を可能にする。
【0046】
本発明の好ましい実施形態は、衝突の発生を示す衝突センサ10からのいかなる信号も存在しない場合に、正常運転状態中にバッテリ2の電気的状態および/または物理的状態を実質的に継続的に監視するように構成されることが意図されている。したがって、正常運転状態中に、制御ユニット9は、個々のバッテリセンサ13〜17からの信号bを監視するように動作することが意図されている。制御ユニット9は、バッテリの個々の測定されたパラメータに関してそれぞれの所定のバッテリパラメータ閾値Bが予め書き込まれたメモリを含む。関連する所定の閾値Bを上回る個々の測定されたパラメータを表すバッテリセンサ13〜17のうちのいずれか1つから信号bを受信した後、制御ユニット9は、例えば、警告灯28を点灯することによって、および/または、スピーカ27によって警告を鳴らすことによって、異常バッテリ状態が検出されたことを自動車の運転手に警告するように動作する。関連する閾値Bを上回るバッテリ信号bを受信した直後、制御ユニット9は、上記パラメータの変化率Δb/tを計算するのに有効なアルゴリズムに従って信号bを処理するように動作可能である。次に、制御ユニットは、パラメータの計算された変化率の値Δb/tを継続して監視し、制御ユニットのメモリ内に保持された所定の変化率の閾値Rと比較する。計算された変化率の値Δb/tが所定の変化率の閾値Rを上回る場合、制御ユニットは、関連したバッテリ安全装置20、21、22を作動させるために線18に沿って作動コマンドを発行する。例えば、このような状況では、制御ユニットは、バッテリ切断装置21および/またはバッテリ冷却装置20を作動させるように動作すると考えられる。
【0047】
自動車が衝突に巻き込まれている場合、1つ以上の衝突センサ10は、衝突の深刻さを示す衝突信号xをそれぞれの入力線11に沿って制御ユニットへ送信する。制御ユニット9のメモリは、2つの衝突信号の閾値、すなわち、第1の比較的低い閾値X−iおよび第2の比較的高い閾値Xが予め書き込まれている。制御ユニット9は、偶発事故の深刻さを評価するために、衝突センサ10から受信された衝突信号xをこれらの2つの閾値と比較するように動作可能である。例えば、いずれの閾値も上回らない衝突センサからの信号xは、衝突が発生していないこと、または、バッテリ2に対していかなる感知される危険ももたらさない極めて低速の衝突を表す。一方、第1の閾値Xを上回り、第2の閾値Xを上回らない衝突信号xは、バッテリへの危険を増加させる低速の衝突を表し、バッテリの監視が必要なほどに十分深刻であるとみなされる。両方の閾値X、Xを上回る衝突信号xは、バッテリに重大な危険をもたらし、バッテリ安全装置と、特に、切断装置21、および、場合によっては、冷却装置20の即座の作動を必要とする高速の衝突を表す。
【0048】
安全装備1の好ましい動作概要は、図2のフローチャートによって概略的に示されている。
【0049】
図示されているように、衝突センサ信号xの受信(30)直後、制御ユニット9は、信号を第1の閾値Xと比較する(31)。xがX未満である場合、制御ユニットは、バッテリセンサ13〜17を監視し始める(ステップ32)。制御ユニットがバッテリセンサ13〜17のいずれかから比較ステップ33によって所定のバッテリパラメータ閾値Bより大きいと判定された信号bを受信した場合、制御ユニットは、モードを変更し、関連するバッテリパラメータの変化率Δb/tを監視し始める(ステップ34)。一方、bがB未満である場合、制御ユニットは、ステップ32でバッテリセンサを監視する初期モードに戻る。
【0050】
ステップ34から得られる計算された変化率の値は、その後、ステップ35で所定の変化率の閾値Rと比較される。Δb/tがRを上回ると判定された場合、作動コマンドは、ステップ36でバッテリ切断装置21を作動させるために、制御ユニットから関連した出力線26を介して発行される。
【0051】
衝突センサパラメータ比較ステップ31aを再度考えると、衝突信号xが第1の閾値Xより大きいと判定された場合、制御ユニットは、衝突信号xが第2の閾値Xと比較されるステップ31bを実行する。xがX未満である場合、制御ユニットは、ステップ34へ進み、このステップ34で、制御ユニットは、上記提案のように、関連したバッテリパラメータの変化率Δb/tを監視し始める。
【0052】
図2には示されていないが、バッテリ切断装置21が、その後、このように第1の閾値Xを上回る衝突信号xに応答して後に続く比較ステップ35に従って作動される場合、制御ユニットは、バッテリセンサから受信された信号を継続して監視すると考えられる。例えば、温度センサ15が切断後にバッテリの温度の継続的な増加を表す信号を発行する場合、または、圧力センサ14がバッテリ筐体内の圧力の継続的な増加を表す信号を発行する場合、制御ユニットは、作動コマンドをバッテリ冷却装置20および/またはバッテリ放電装置22へ発行する。
【0053】
比較ステップ32で、衝突信号xが第2の閾値Xを上回ることが判明した場合、制御ユニット9は、作動コマンドをバッテリ切断装置21と、場合によっては、さらにバッテリ冷却装置20とへ発行するように直ちに動作する。このような状況では、制御ユニット9が1つ以上のバッテリセンサ、例えば、温度センサ15によって発行された信号bを継続して監視し、バッテリの温度が救急隊員にとって危険であるとみなされる所定のレベルに達している場合、救急隊員に警告するために、ランプ28、および/または、サイレン27、および/または、送信機29を用いて警告信号を送信することも提案されている。したがって、制御ユニット9と関連付けられた別個の電源9aは、このモードにおいて安全装備の数時間動作のための電力を供給するのに十分な容量を有すると考えられる。
【0054】
用語「備える(comprise)」および「備えている(comprising)」とこれらの変化形は、本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、指定された特徴、ステップまたは整数が包含されることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素を排除するものとして解釈されるべきでない。
【0055】
具体的な形式で、開示された機能を実行するための手段の観点から、または、開示された結果を得るための方法もしくはプロセスの観点から表現された以上の説明、または、以下の特許請求の範囲もしくは添付図面に開示された特徴は、必要に応じて、別々に、または、そのような特徴を任意に組み合わせて、本発明を様々な形で実現するために利用されてもよい。
【0056】
本発明は、上記の例示的実施形態と併せて説明されているが、本開示が与えられた場合、多数の等価的な変更および変形は当業者には明白である。したがって、上述された本発明の例示的実施形態は、例証であり、限定的なものではないと考えられる。説明された実施形態に対する様々な変更は、本発明の要旨および範囲を逸脱することなく行われてもよい。
図1
図2