(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ネジ溝を利用して気体を排気する形式の排気ポンプにおいては、そのポンプ全体の大きさを変えずに排気性能を向上させる1つの方法として、例えば特許文献1に開示された方法が知られている。
【0003】
この方法は、同文献1の
図1に記載されているように、筒形回転部材(4a)の外周及び内周にネジ溝(30、31)を設ける。これにより、筒形回転部材(4a)とその外周を囲む外側筒形固定部材(33)との間に、螺旋状の外側ネジ溝排気通路が形成されるとともに、筒形回転部材(4a)とその内周によって囲まれる内側筒形固定部材(7)との間に、螺旋状の内側ネジ溝排気通路が形成され、これら内外のネジ溝排気通路で並行して気体分子を排気するものである(並行流排気方式)。
【0004】
ところで、前記並行流排気方式を採用した排気ポンプでは、内側ネジ溝排気通路へ気体分子を導くために、筒形回転部材(4a)に連通開口部(4b)を開設している(特許文献1の
図1参照)。かかる連通開口部(4b)の上流端の上方には回転翼(5)が存在するので、その連通開口部(4b)を形成する場合には筒形回転部材(4a)の内側から丈の長い工具で穿孔するようにしている。
【0005】
しかしながら、前記のような穿孔による連通開口部(4b)の形成方法では、連通開口部(4b)の上流端にバリが発生する。このため、連通開口部(4b)の上流端側に前述の回転翼(5)が存在する場合はその回転翼(5)がバリ取り作業の障害となり、バリを簡単に取り除くことができない。
【0006】
前記並行流排気方式の採用によって排気ポンプの排気性能は向上したが、近年の半導体やフラット・パネル、ソーラー・パネル等の大型化に伴い、これらを生産する密閉チャンバも大型になっており、密閉チャンバ内で使用される反応性ガス等のガス量も増加したため、かかるガスを排気する手段としての排気ポンプについて、更なる排気性能の向上が要請されている。
【0007】
なお、以上の説明において、カッコ内の符号は特許文献1で使用されている符号である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、願書に添付した図面を参照しながら説明する。
【0019】
《第1の実施形態》
図1は本発明の第1の実施形態である排気ポンプの断面図である。同図の排気ポンプPは、例えば半導体製造装置、フラット・パネル・ディスプレイ製造装置、ソーラー・パネル製造装置におけるプロセスチャンバやその他の密閉チャンバのガス排気手段等として利用される。この排気ポンプは、外装ケース1内に、回転翼13と固定翼14により気体を排気する翼排気部Ptと、ネジ溝19A、19Bを利用して気体を排気するネジ溝排気部Psと、これらの駆動系とを有している。
【0020】
外装ケース1は、筒状のポンプケース1Aと有底筒状のポンプベース1Bとをその筒軸方向にボルトで一体に連結した有底円筒形になっている。ポンプケース1Aの上端部側はガス吸気口2として開口しており、ポンプベース1Bの下端部側面にはガス排気口3を設けてある。
【0021】
ガス吸気口2は、ポンプケース1A上縁のフランジ1Cに設けた図示しないボルトにより、例えば半導体製造装置のプロセスチャンバ等、高真空となる図示しない密閉チャンバに接続される。ガス排気口3は、図示しない補助ポンプに連通するように接続される。
【0022】
ポンプケース1A内の中央部には各種電装品を内蔵する円筒状のステータコラム4が設けられており、ステータコラム4はその下端側がポンプベース1B上にネジ止め固定される形態で立設してある。
【0023】
ステータコラム4の内側にはロータ軸5が設けられており、ロータ軸5は、その上端部がガス吸気口2の方向を向き、その下端部がポンプベース1Bの方向を向くように配置してある。また、ロータ軸5の上端部はステータコラム4の円筒上端面から上方に突出するように設けてある。
【0024】
上記ロータ軸5は、ラジアル磁気軸受10とアキシャル磁気軸受11により径方向と軸方向が回転可能に支持され、この状態で駆動モータ12により回転駆動される。
【0025】
駆動モータ12は、固定子12Aと回転子12Bとからなる構造であって、ロータ軸5の略中央付近に設けられている。かかる駆動モータ12の固定子12Aはステータコラム4の内側に設置しており、同駆動モータ12の回転子12Bはロータ軸5の外周面側に一体に装着してある。
【0026】
ラジアル磁気軸受10は、駆動モータ12の上下に1組ずつ合計2組配置され、アキシャル磁気軸受11はロータ軸5の下端部側に1組配置されている。
【0027】
2組のラジアル磁気軸受10、10は、それぞれ、ロータ軸5の外周面に取り付けたラジアル電磁石ターゲット10A、これに対向するステータコラム4内側面に設置した複数のラジアル電磁石10B、およびラジアル方向変位センサ10Cを備えて構成される。ラジアル電磁石ターゲット10Aは高透磁率材料の鋼板を積層した積層鋼板からなり、ラジアル電磁石10Bはラジアル電磁石ターゲット10Aを通じてロータ軸5を径方向に磁力で吸引する。ラジアル方向変位センサ10Cはロータ軸5の径方向変位を検出する。そして、ラジアル方向変位センサ10Cでの検出値(ロータ軸5の径方向変位)に基づきラジアル電磁石10Bの励磁電流を制御することによって、ロータ軸5は径方向所定位置に磁力で浮上支持される。
【0028】
アキシャル磁気軸受11は、ロータ軸5の下端部外周に取り付けた円盤形状のアーマチュアディスク11Aと、アーマチュアディスク11Aを挟んで上下に対向するアキシャル電磁石11Bと、ロータ軸5の下端面から少し離れた位置に設置したアキシャル方向変位センサ11Cとを備えて構成される。アーマチュアディスク11Aは透磁率の高い材料からなり、上下のアキシャル電磁石11Bはアーマチュアディスク11Aをその上下方向から磁力で吸引するようになっている。アキシャル方向変位センサ11Cはロータ軸5の軸方向変位を検出する。そして、アキシャル方向変位センサ11Cでの検出値(ロータ軸5の軸方向変位)に基づき上下のアキシャル電磁石11Bの励磁電流を制御することによって、ロータ軸5は軸方向所定位置に磁力で浮上支持される。
【0029】
ステータコラム4の外側には筒形回転部材としてロータ6が設けられている。このロータ6(筒形回転部材)は、ステータコラム4の外周を囲む円筒形状であって、その略中間に位置する環状の板体60によって、直径の異なる2つの筒体(第1の筒体61と第2の筒体62)をその軸方向に連結した構造になっている。この連結構造の一例として、
図1の排気ポンプPでは、第2の筒体62の下端に前記板体60を一体に設けるとともに、その板体60の裏面外周部にリング状凸部60Aを一体に設けている。そして、かかるリング状凸部60Aの外周に第1の筒体61が嵌め込み装着されることにより、第1の筒体61と第2の筒体62とがその軸方向に連結されるように構成してある。
【0030】
図1の排気ポンプPでは、前記リング状凸部60Aの外周に鍔部60B(
図3(a)から(c)参照)を設け、鍔部60Bに第1の筒体61の上端部が当接する構成を採用しているが、
図4(a)から(c)のように鍔部60Bは省略することもできる。
【0031】
第2の筒体62の上端にはその上端面を構成する部材として別の板体63が一体に設けられており、この板体63を介してロータ6とロータ軸5は一体化されている。このような一体化構造の一例として、
図1の排気ポンプPでは、板体63の中心にボス孔7を設けるとともに、ロータ軸5の上端部外周に段状の肩部(以下「ロータ軸肩部9」という)を形成している。そして、ロータ軸肩部9より上のロータ軸5先端部を板体63のボス孔7に嵌め込み、かつ、板体63とロータ軸肩部9とをボルトで固定することにより、ロータ6とロータ軸5は一体化している。
【0032】
図1の排気ポンプPでは、ポンプ全体の軽量化やロータ6の回転速度の高速化を図るため、第1の筒体61はAFPR(アラミド繊維強化プラスチック)、BFRP(ボロン繊維強化プラスチック)、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック)、DFRP(ポリエチレン繊維強化プラスチック)、又はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)等の高強度プラスチック材料で形成している。第1の筒体61以外のロータ構成部分、具体的には第2の筒体62や板体60、63は、いずれもアルミニウム又はその合金等の軽量な金属材料で形成している。
【0033】
図1の排気ポンプPでは、第1の筒体61をプラスチックの高強度材料で形成しているので、
図5に示したように、ロータ6のバランスを調整するための質量付加溝Dは、金属材料からなる板体60の内周面に設ける。このような質量付加溝Dは更に第2の筒体62の内周面に設けてもよい。また、第1の筒体61が前記金属材料で形成されるなら、第1の筒体61の内周面に質量付加溝Dを設けてもよい。
【0034】
さらに、前記ロータ6は、ロータ軸5を介してラジアル磁気軸受10、10及びアキシャル磁気軸受11で、その軸心(ロータ軸5)周りに回転可能に支持されるように構成してある。
【0035】
従って、
図1の排気ポンプPでは、ロータ軸5、ラジアル磁気軸受10、10及びアキシャル磁気軸受11が、ロータ6をその軸心周りに回転可能に支持する支持手段として機能する。また、ロータ6はロータ軸5と一体に回転するので、ロータ軸5を回転駆動する駆動モータ12が、ロータ6を回転駆動する駆動手段として機能する。
【0036】
《翼排気部Ptの詳細構成》
図1の排気ポンプPでは、ロータ6(筒形回転部材)の略中間より上流(ロータ6の略中間からロータ6のガス吸気口2側端部までの範囲)が翼排気部Ptとして機能するように構成してある。以下この翼排気部Ptを詳細に説明する。
【0037】
ロータ6の略中間より上流側のロータ6外周面(具体的には第2の筒体62外周面)には回転翼13が一体に複数設けられている。これら複数の回転翼13は、ロータ6の回転軸心(ロータ軸5)若しくは外装ケース1の軸心(以下「ポンプ軸心」という)を中心として放射状に並んでいる。一方、ポンプケース1Aの内周面側には固定翼14が複数設けられており、これらの固定翼14は、ポンプ軸心を中心として放射状に並んで配置されている。そして、上記回転翼13と固定翼14とがポンプ軸心に沿って交互に多段に配置されることによって翼排気部Ptを形成している。
【0038】
いずれの回転翼13も、ロータ6の外径加工部と一体的に切削加工で切り出し形成したブレード状の切削加工品であって、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。いずれの固定翼14もまた、気体分子の排気に最適な角度で傾斜している。
【0039】
《翼排気部Ptによる排気動作説明》
以上の構成からなる翼排気部Ptでは、駆動モータ12の起動により、ロータ軸5、ロータ6および複数の回転翼13が一体に高速回転し、最上段の回転翼13がガス吸気口2から入射した気体分子に下向き方向の運動量を付与する。この下向き方向の運動量を有する気体分子が固定翼14によって次段の回転翼13側へ送り込まれる。以上のような気体分子への運動量の付与と送り込み動作とが繰り返し多段に行われることにより、ガス吸気口2側の気体分子はロータ6の下流に向かって順次移行するように排気される。
【0040】
《ネジ溝排気部Psの詳細構成》
図1の排気ポンプPでは、ロータ6(筒形回転部材)の略中間より下流(ロータ6の略中間からロータ6のガス排気口3側端部までの範囲)がネジ溝排気部Psとして機能するように構成してある。以下このネジ溝排気部Psを詳細に説明する。
【0041】
ロータ6の略中間より下流側のロータ6(具体的には第1の筒体61の部分)は、ネジ溝排気部Psの回転部材として回転する部分であって、ネジ溝排気部Psの内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18B間に所定のギャップを介して挿入・収容される構成になっている。
【0042】
内外2重円筒形のネジ溝排気部ステータ18A、18Bのうち、外側ネジ溝排気部ステータ18Aは、外側筒形固定部材として、ロータ6の外周(ロータ6の略中間より下流の部分)を囲むように配置されている。また、この外側ネジ溝排気部ステータ18Aの内周部には、深さが下方に向けて小径化したテーパコーン形状に変化するネジ溝19Aを形成してある。このネジ溝19Aは、ネジ溝排気部ステータ18Aの上端から下端にかけて螺旋状に刻設してあり、このようなネジ溝19Aにより、ロータ6と外側ネジ溝排気部ステータ18Aとの間には、螺旋状のネジ溝排気通路(以下「外側ネジ溝排気通路S1」という)が設けられる。尚、外側ネジ溝排気部ステータ18Aはその下端部がポンプベース1Bで支持されるようになっている。
【0043】
内側ネジ溝排気部ステータ18Bは、内側筒形固定部材として、ロータ6の内周によって囲まれるように配置されている。この内側ネジ溝排気部ステータ18Bの外周部にも同様にネジ溝19Bを形成してある。このようなネジ溝19Bにより、ロータ6と内側ネジ溝排気部ステータ18Bとの間にも、螺旋状のネジ溝排気通路(以下「内側ネジ溝排気通路S2」という)が設けられる。なお、内側ネジ溝排気部ステータ18Bもまたその下端部がポンプベース1Bで支持されるようになっている。
【0044】
図示は省略するが、先に説明したネジ溝19A、19Bをロータ6の外周面又は内周面に形成することで、前記のような外側ネジ溝排気通路S1や内側ネジ溝排気通路S2が設けられるように構成してもよい。
【0045】
ネジ溝排気部Psでは、ネジ溝19Aとロータ6の外周面でのドラッグ効果やネジ溝19Bとロータ6の内周面でのドラック効果により気体を圧縮しながら移送するため、ネジ溝19Aの深さは、外側ネジ溝排気通路S1の上流入口側(ガス吸気口2に近い方の通路開口端)で最も深く、その下流出口側(ガス排気口3に近い方の通路開口端)で最も浅くなるように設定してある。ネジ溝19Bも同様である。
【0046】
外側ネジ溝排気通路S1の上流入口は、多段に配置されている回転翼13のうち最下段の回転翼13Eと後述する連通開口部Hの上流端との間の隙間(以下「最終隙間G」という)に連通しており、同通路S1の下流出口は、ガス排気口3側に連通するように構成してある。内側ネジ溝排気通路S2の上流入口は、ロータ6の略中間でロータ6の内周面に向って開口し、同通路S2の下流出口は、外側ネジ溝排気通路S1の下流出口と合流してガス排気口3に連通するように構成してある。
【0047】
ロータ6(筒形回転部材)の略中間には連通開口部Hが開設されており、連通開口部Hは、ロータ6の表裏面間を貫通するように形成されることで、ロータ6の外周側に存在する気体の一部を内側ネジ溝排気通路S2へ導くように機能する。
【0048】
かかる機能を備えた連通開口部Hは、具体的には、板体60の外周部及びリング状凸部60Aの外周部を切り欠いてなる孔H1、H2からなるとともに、その孔H1、H2全体のうち横穴の形態で開口している部分(具体的には孔H2)が第1の筒体61の上端部外周で塞がれた構造になっている。
【0049】
図3(a)と(b)は、リング状凸部60Aの外周に鍔部60Bを有する構成例において、前記連通開口部Hを形成する作業工程の説明図、同図(c)は、その作業工程によって形成された連通開口部Hの説明図である。また、
図4(a)と(b)は、リング状凸部60Aの外周に鍔部60Bを有しない構成例において、前記連通開口部Hを形成する作業工程の説明図、同図(c)は、その作業工程によって形成された連通開口部Hの説明図である。
【0050】
前記構造の連通開口部Hは、下記の手順1及び2によって作製することができる。
【0051】
[手順1]
手順1では、
図3(a)又は
図4(a)のように、リング状凸部60Aの外周に第1の筒体61を嵌め込む前に予め、板体60の外周から板体60とリング状凸部60Aの境界部付近を工具Tで切り欠くことにより前記孔H1を形成する。
【0052】
前記孔H1、H2を形成する工具Tとしては
図3(a)、
図4(a)に示す形状のエンドミル(工具T)を使用することができるが、それ以外の別の工具を使用してもよい。
図3(a)及び
図4(a)中の矢印は、孔H1、H2を形成するときのエンドミル(工具T)の切込み方向を示している。
図3(a)と
図4(a)の例では、板体60とリング状凸部60Aの境界付近にエンドミル(工具T)を接近させ、そのエンドミルの3方向切込み量(ロータ6の軸心方向、これにほぼ直角の方向、ロータ6の周方向への切込み量)を調整することによって、孔H1、H2を形成している。
【0053】
図4(a)に示すエンドミル(工具T)はその先端部の刃先が円弧形状になっているので、孔H1、H2は角部のない孔形状となり、これにより孔H1、H2に生じうる応力集中は緩和される。
【0054】
前記孔H1、H2の形成加工により生じたバリを取り除く作業は、リング状凸部60Aの外周に第1の筒体61を嵌め込む前に予め行うことができ、その際、バリは、前記孔H1、H2全体のうち横穴として開口している部分(具体的には孔H2)から該孔H1、H2内にバリ取り用工具を挿入することによって容易に取り除くことができる。
【0055】
また、前記孔H1、H2は、板体60の外周から板体60とリング状凸部60Aの境界付近に工具Tを接近させて形成することができるので、かかる孔H1、H2全体のうち縦穴の形態で開口している部分(具体的には孔H1)の上方に回転翼13Eがあっても(
図1参照)、そのような回転翼13が孔H1、H2の形成時に障害物とならず、かかる孔H1、H2からなる連通開口部Hは容易に形成することができる。
【0056】
[手順2]
手順2では、手順1で孔H1、H2を形成した後、
図3(b)又は
図4(b)のようにリンク状凸部60Aに第2の筒体62を嵌め込む。これにより、その孔H1、H2のうち横穴の形態で開口している部分(具体的には孔H2)は第1の筒体61の上端部外周で塞がれるようになる。
【0057】
図1の排気ポンプPにおいては、
図2のように、先に説明した連通開口部Hを複数設けており、これら複数の連通開口部Hの位置が排気ポンプPのポンプ軸心に対して点対称となるように配置したことにより、ロータ6の重心位置が半径方向に対してずれ難く、バランスの修正も容易になるように構成してある。
【0058】
《ネジ溝排気部Psにおける排気動作説明》
先に説明した翼排気部Ptの排気動作による移送で外側ネジ溝排気通路S1の上流入口や最終隙間Gに到達した気体分子は、外側ネジ溝排気通路S1や、連通開口部Hから内側ネジ溝排気通路S2に移行する。移行した気体分子は、ロータ6の回転によって生じる効果、すなわち、ロータ6の外周面とネジ溝19Aでのドラッグ効果やロータ6の内周面とネジ溝19Bでのドラッグ効果によって、遷移流から粘性流に圧縮されながらガス排気口3に向って移行し、最終的に図示しない補助ポンプを通じて外部へ排気される。
【0059】
先に説明したように前記連通開口部Hは、孔H1、H2全体のうち横穴の形態で開口している部分(具体的には孔H2)を第1の筒体61の上端部外周で塞いだ構造になっているので、その部分も外側ネジ排気通路S1の一部として前記ドラッグ効果による気体の排気動作が有効となる。
【0060】
《第2の実施形態》
図6は本発明の第2の実施形態である排気ポンプの断面図である。同図の排気ポンプPは、先に説明した
図1の排気ポンプP(第1の実施形態)におけるネジ溝排気部PSのみを備える形式の排気ポンプ(ドラックポンプ)であるので、
図1の排気ポンプPと共通する部材には共通の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0061】
この
図6の排気ポンプPは、ロータ6(筒形回転部材)と、ロータ6をその軸心(ロータ軸5)周りに回転可能に支持する支持手段(ラジアル磁気軸受10及びアキシャル磁気軸受11)と、ロータ6を回転駆動する駆動モータ12(駆動手段)と、ロータ6の外周を囲むように配置された外側ネジ溝排気部ステータ18A(外側筒形固定部材)と、ロータ6の内周によって囲まれるように配置された内側ネジ溝排気部ステータ18B(内側筒形固定部材)と、ロータ6と外側ネジ溝排気部ステータ18Aの間に設けた螺旋状の外側ネジ溝排気通路S1と、ロータ6と内側ネジ溝排気部ステータ18Bの間に設けた螺旋状の内側ネジ溝排気通路S2と、ロータ6に開設され、そのロータ6の外周付近に存在する気体の一部を内側ネジ溝排気通路S2へ導く連通開口部Hと、を具備している。
【0062】
この
図6の排気ポンプPのロータ6もまた、
図1の排気ポンプPのロータ6と同様に、裏面外周部にリング状凸部60Aを有する板体64と、該リング状凸部60Aの外周に嵌め込み装着される筒体61(
図1の排気ポンプPにおける第1の筒体61に相当)と、を備えている。
【0063】
なお、
図6の排気ポンプPでは、前記板体64が筒体61の上端面を構成し、かつ、その板体64の中心にボス孔7を設けている。そして、ロータ軸肩部9より上のロータ軸5先端部が前記板体64のボス孔7に嵌め込まれ、かつ、その板体64とロータ軸肩部9とをボルトで固定することにより、ロータ6とロータ軸5が一体化されるように構成してある。
【0064】
この
図6の排気ポンプPには
図1の排気ポンプPのような翼排気部Ptがないので、
図6の排気ポンプPのロータ6は、
図1の排気ポンプPのロータ6における第2の筒体62を省略した形状になっている。
【0065】
また、
図6の排気ポンプPの連通開口部Hは、
図1の排気ポンプPの連通開口部Hと同じような構成になっている。すなわち、
図6の排気ポンプPの連通開口部Hは、板体64の外周部及びリング状凸部62Aの外周部を切り欠いてなる孔H1、H2(
図3(a)及び(b)参照)からなるとともに、その孔H1、H2全体のうち横穴の形態で開口している部分(具体的には孔H2)が筒体61の上端部外周で塞がれた構造になっている。