【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項1、11、および15に記載の特徴によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の特徴によって示される。
【0010】
本発明は、導電性構造がガラス板上に付着され、少なくとも1つの中間層が導電性構造上に付着され、少なくとも1つの電気的接続部が中間層上に付着され、中間層、電気的接続部、および導電性構造によって、少なくとも1つの空洞が形成され、空洞には導電塊が含まれる、窓ガラスを含む。
【0011】
本発明に係る窓ガラスの有利な点は、特に、電気的接続部と導電性構造との間の中間層によって、ガラス板に加わる問題のある機械的応力が最小化される点である。
【0012】
問題のある機械的応力は、点に加わる力、線に加わる力、面に加わる力、せん断力、およびねじり力の量および方向に応じて発生し、窓ガラスの製造中または使用中に加わる負荷に起因して、窓ガラスが損傷または破損する原因となる場合がある。
【0013】
温度変化によって発生する機械的応力は、特に、使用される材料の熱膨張率と粘性率との差に応じて増大する。
【0014】
機械的応力は、60℃超、特に120℃超、さらに特には158℃超の温度でガラス板と電気的接続部とを接続するときに、特に不都合となる。
【0015】
本発明によれば、空洞を中間層で完全に囲むのが有利である。その場合、空洞によって、中間層内部に少なくとも1つの隙間が形成される。隙間の範囲は、導電性構造、電気的接続部、および中間層によって定められる。
【0016】
本発明に係る空洞は、導電塊のための保持キャビティが設けられるので、有利である。導電塊の形状は、空洞の形状、空洞内部の導電塊の濡れ、ならびに製造中および使用中の導電塊の粘度に従って決まる。問題のある機械的応力は抑制される。
【0017】
空洞の形状および容積は、特に、中間層の形状および容積、ならびに電気的接続部の形状に応じて決まる。
【0018】
空洞の内部では、導電塊は3つの空間方向すべてに関して所定の幾何学的形状に保持され、電気的接続部と導電性構造との間のしっかりと、電気的な接続が得られる。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態では、導電塊が空洞の内部に充填される。空洞の外部の領域にはいかなる導電塊も見つけられない。空洞の外部の領域は、空洞の外端および/または外端の突起によって形成される。上方から窓ガラスを観察することによっては、いかなる導電塊も認められない。導電塊の端は、好ましくは、その形状、濡れ性、および粘度のゆえに、空洞の外端と同一平面である。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明に係る中間層の厚さは、0.5μmから1mm、好ましくは1μmから500μm、特に好ましくは10μmから300μmである。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態では、空洞の直径は、0.1mmから2mm、好ましくは0.2mmから1mm、または相当面積である。
【0022】
他の実施形態では、空洞の直径は、2mmから25mm、好ましくは3mmから10mm、さらに特に好ましくは7.5mmから8.5mm、または相当面積である。
【0023】
空洞は、好ましくは、円形状、楕円形状、矩形状、または多角形状であり、本発明によれば、それらの形状に合わせて、電気的接続部と窓ガラスとの機械的接続を改善して、これをしっかりと電気的に安定させる導電塊の形状が形成される。
【0024】
空洞と同等の面積を円形状の空洞の直径から計算して、この面積を、電気的接続部と窓ガラスとの機械的接続を改善して、これをしっかりと電気的に安定させる楕円形状、矩形状、もしくは多角形状、またはあらゆる形状を有する面積にも引き継ぐことができる。
【0025】
本発明に係る特に有利な点は、中間層によって、力が加えられる点が、導電塊と導電層との間で可能な限り多くなる点である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、中間層内の空洞は、電気的接続部に面する領域と、中間領域と、導電性構造から離れた方を向く領域とから形成される断面を有する。上方から見た空洞の形状を、空洞の深さによって異なるように構成することができる。これらの領域の形状は、好ましくは、円形状、楕円形状、または矩形状である。導電塊は、空洞内で特に有利な形状を形成して、それにより、導電性構造およびガラス板に加わる機械的負荷を低減することができる。これは、空洞から導電塊がはみ出ない場合に特に有利である。
【0027】
別の好ましい実施形態では、導電塊は、その濡れ性および粘度に従って空洞の内部に保持される。濡れ性または毛管力は、導電塊の材料、中間層、接続部、導電性構造、ガラス板、および/または周囲大気の界面エネルギーに従って生じる。
【0028】
本発明によれば、導電塊によって空洞の内部に凹メニスカスが形成されるのが特に好ましい。
【0029】
さらに特に好ましくは、凹メニスカスは、空洞内部の導電塊の非常に小さい濡れ角によって形成される。
【0030】
導電塊の粘度は、材料および温度に依存する。本発明によれば、導電塊の粘度に大きな変化の観察される、液相線温度と固相線温度との間の温度範囲で、成形を行うのが有利である。
【0031】
本発明に係る中間層は、電気的接続部に面する隙間の領域の直径または面積が、導電性構造に面する領域より小さい場合に、特に有利である。
【0032】
本発明に係る中間層の別の実施形態では、隙間の端部形状および電気的接続部の形状が、導電塊の流動性、粘度、および濡れ性に適合させられる。好ましくは、端部領域は、直角にされるか、丸められるか、または非常に丸められる。
【0033】
特に好ましくは、導電性構造、中間層、および電気的接続部によって、導電性構造から電気的接続部にかけて次第に細くなる双曲線漏斗が形成される。さらに特に好ましくは、隙間は、双曲線漏斗の端部領域内に関してのみ導電塊で充填される。導電塊の形状は、中間層および電気的接続部に接する導電塊の濡れ性および粘度によって予め決定される。
【0034】
これは、製造中に空洞から膨張ガスを意図的に放出させるために、特に有利である。
【0035】
機械的な力が、本発明によれば、導電塊と導電性構造またはガラス板との間を、浅い迎角にて伝わる。
【0036】
本発明によれば、形状、粘度、および凝集状態のゆえに、導電性構造および/またはガラス板に問題のある力をまったく伝達しない導電塊が、使用される。
【0037】
本発明における粘度は、固体凝集状態にある導電塊の延性のことも表している。
【0038】
本発明によれば、接続部とガラス板との機械的接続が中間層を介して形成され、また、導電塊の固相線温度が、158℃未満、好ましくは120℃未満、さらに特に好ましくは65℃未満であるのが、特に有利である。
【0039】
本発明の他の実施形態はまた、接続部とガラス板とが、導電塊を介して機械的に接続され、導電塊の固相線温度が159℃から220℃である場合に、特に有利である。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態では、導電塊が、導電性液体、金属合金、および/または複合材料、好ましくは銀、スズ、亜鉛、インジウム、ビスマス、および/またはガリウムを含有する金属合金、特に好ましくは60重量%からおよそ98重量%のガリウム、15%重量%から70%重量%のインジウム、50重量%から98重量%のスズ、10重量%から80重量%の亜鉛、2重量%から10重量%の銀、および/または30重量%から70重量%のビスマスを含有する金属合金を含む。
【0041】
固相線温度が65℃未満の導電塊は、好ましくは、60重量%からおよそ98重量%のガリウムを含む。
【0042】
固相線温度が65℃以上かつ158℃未満の導電塊は、さらに特に好ましくは、15%重量%から70%重量%のインジウム、および/または30重量%から70重量%のビスマスを含む。
【0043】
固相線温度が158℃以上の導電塊は、さらに特に好ましくは、50重量%から98重量%のスズを含む。
【0044】
導電塊は、本発明によれば、好ましくは無鉛半田である。
【0045】
本発明によれば、導電性のスポンジ状、格子状、または無機もしくは有機の複合物または混合物も、導電塊に含まれてもよい。この例として、銀ウールなどのウール状の形状の材料が挙げられる。
【0046】
導電塊は、固相線温度が低いため、通常の外気温で時としてまたは恒久的に液体である。導電塊の粘度が低い場合、空洞の内部の流れは、形状および濡れ性によって防止される。電気的接続が持続する。電気的接続部と導電性構造および/またはガラス板との間は、中間層を介して完全にまたは部分的に時としてまたは恒久的に機械的に接続される。
【0047】
導電塊が液体または低粘度もしくは高延性であると、導電塊と導電性構造および/またはガラス板との間に、問題のある機械的負荷がまったく発生しないため、特に有利である。
【0048】
ガラス板は、プレストレスを与えられた、部分的にプレストレスを与えられた、またはプレストレスを与えられていない、石英ガラス製の一枚のガラス板または複合ガラス板であり、好ましくはプレストレストを与えられていない複合ガラス板か、または部分的にプレストレスを与えられた複合ガラス板である。ガラス板の厚さは、1mmから6mm、好ましくは1.8mmから4mmである。
【0049】
ガラス板は、被覆スクリーン印刷を用いて、完全にまたは部分的に、好ましくは端部領域に関して、特に好ましくは電気的接続部の領域に関して、被膜することができる。
【0050】
窓ガラス上の導電性構造は、好ましくは、発熱導体および/またはアンテナ導体を有する伝導路である。導電性構造は、好ましくは、ガラス板の端部領域で電気的接続部と接続される。
【0051】
電気的接続部によって、例えば自動車両に取り付けられる電気システムの導電体と、窓ガラス上の導電性構造との間が、しっかりと機械的に結合および電気的に接続される。電気的接続部は、好ましくは、平らな導体、またはいわゆるリジッドコネクタ(rigid connector)として構成される。リジッドコネクタは、その材料特性、材料の厚さ、および形状により、高い剛性を有する。
【0052】
本発明の別の実施形態では、長期間にわたっては安定せず、また経年劣化する導電塊が、防食剤を用いて環境の影響から保護される。防食剤は、好ましくは、液体および/または導電性である。
【0053】
本発明の別の実施形態では、中間層は、熱安定性高分子層、スクリーン印刷用セラミックペースト、ソルダレジスト、および/または接着ストリップを含み、好ましくはポリアクリル酸塩、シアノアクリレート、メタクリル酸メチル、シランおよびシロキサン架橋高分子、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリアミド、アセテート、シリコーン接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリ四フッ化エチレン、熱硬化性接着剤、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物を含み、特に好ましくはポリイミド類またはポリ四フッ化エチレンを含む。
【0054】
本発明によれば、好ましくは、導電塊に濡れない材料が、中間層には使用される。この材料は、好ましくは、低界面エネルギーを有する。これに特によく適するのは、ポリイミド類、ポリ四フッ化エチレン、またはソルダレジスト、ならびにポリイミド類またはソルダレジストを含む複合材料である。
【0055】
本発明の別の実施形態では、本発明に係る中間層は、複数の層から構成されるが、その場合、中間層と電気的接続部の表面および導電性構造の表面とは、接着層を介して確実に接触させられる。
【0056】
特に好ましくは、本発明によれば、中間層には、空洞を相互に接続するか、またはこれらと中間層の端部とを接続する追加的な接続キャビティが含まれる。これは、電気的接続部と導電性構造とを機械的におよび電気的に接続する間のガス生成物を放出する場合に、特に有利である。接続キャビティは、本発明によれば、導電塊で充填されないかもしくはこれに濡れないか、またはほとんどそのようにはならない。
【0057】
本発明に係る窓ガラスの製造方法では、導電性構造がガラス板上に付着され、中間層が導電性構造および/もしくはガラス板または電気的接続部に付着され、導電塊が、電気的接続部または導電性構造に付着され、電気的接続部が中間層を介して導電性構造および/またはガラス板と機械的に接続されるが、その場合、少なくとも1つの空洞が形成され、導電塊が、少なくとも1つの空洞の内部で電気的接続部および導電性構造と電気的に接続される。
【0058】
好ましい実施形態では、中間層が導電性構造上に付着され、導電塊が電気的接続部に付着される。
【0059】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、中間層が、スクリーン印刷、スプレー、カーテン塗工、またはローラ塗工、接着などの方法のうちの少なくとも1つによって、導電性構造、電気的接続部、および/またはガラス板に付着される。これらの方法を用いて、隙間を有する中間層を、単純な方法を用いて必要な精度で実現することができる。
【0060】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、電気的接続部と導電性構造および/またはガラス板との機械的接続、好ましくは電気的接続部とガラス板との機械的接続は、機械的クランピング、半田付け、および/または接着を用いて行われる。接続時の温度は、本発明によれば、好ましくは158℃未満、特に好ましくは120℃未満、さらに特に好ましくは60℃未満である。
【0061】
さらに特に好ましくは、電気的接続部は、好ましくは中間層の接着作用を熱活性化させることによって、電気的接続と同時に導電性構造および/またはガラス板と機械的に接続される。例えば導電塊を半田付けすることによって、中間層の接着作用を活性化させることができる。
【0062】
本発明の例示的実施形態は、
図1から
図10までの図面に模式的に示されており、以下ではその詳細について説明する。