特許第5767651号(P5767651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767651
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】電気的接続部を有する窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20150730BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H01R4/02 Z
   B60J1/00 B
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-545199(P2012-545199)
(86)(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公表番号】特表2013-515340(P2013-515340A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】EP2010068804
(87)【国際公開番号】WO2011076540
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年4月10日
(31)【優先権主張番号】09180346.0
(32)【優先日】2009年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラタイチヤーク,ミチヤ
(72)【発明者】
【氏名】シユラルプ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ロイル,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ツイーグラー,シユテフアン
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/074267(WO,A1)
【文献】 特開昭60−151980(JP,A)
【文献】 特表2006−523917(JP,A)
【文献】 特開2008−218399(JP,A)
【文献】 特開平07−001179(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2519477(FR,A1)
【文献】 米国特許第4388522(US,A)
【文献】 特開2009−026500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00〜 4/22
B23K 35/24
B60J 1/00
B60S 1/58
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性構造(2)が、ガラス板(1)上に付着され、
少なくとも1つの中間層(3)が、導電性構造(2)上に付着され、
少なくとも1つの電気的接続部(4)が、中間層(3)上に付着され、
導電塊(7)が、中間層(3)、電気的接続部(4)および導電性構造(2)によって画定された少なくとも1つの空洞(5)を充填し、
導電性構造(2)が、導電塊(7)を介して電気的接続部(4)と電気的に接続され、
電気的接続部(4)とガラス板(1)との間の機械的接続が、中間層(3)を介して形成され、導電塊(7)は、通常の外気温で導電塊(7)が時としてまたは常に液体であるような低い固相線温度を有している
窓ガラス(I)。
【請求項2】
空洞(5)が、中間層(3)によって完全に囲まれる、請求項1に記載の窓ガラス(I)。
【請求項3】
中間層(3)の厚さが、0.5μmから1mm、または10μmから500μm、または100μmから300μmである、請求項1または2に記載の窓ガラス(I)。
【請求項4】
空洞(5)が、0.1mmから2mm、もしくは0.2mmから1mmの直径を有するか、または、これに相当する面積を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の窓ガラス(I)。
【請求項5】
空洞(5)が、2mmから25mm、もしくは3mmから10mm、もしくは7.5mmから8.5mmの直径を有するか、または、これに相当する面積を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の窓ガラス(I)。
【請求項6】
中間層(3)が、高分子、スクリーン印刷用セラミックペースト、ソルダレジスト、および/または接着ストリップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の窓ガラス(I)。
【請求項7】
中間層(3)が追加的な接続キャビティ(8)を含み、空洞(5)が、追加的な接続キャビティ(8)を介して、相互に連通され、および/または中間層(3)の端部と連通され、これにより、半田付け工程の間の膨張した空気またはガスの半田付け補助物が、接続キャビティ(8)を介して空洞(5)のすべてから出て行けるようになっている、請求項1に記載の窓ガラス(I)
【請求項8】
導電塊(7)が、導電性液体、金属合金、および/または複合材料を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の窓ガラス(I)
【請求項9】
導電塊(7)の固相線温度が65℃未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の窓ガラス(I)
【請求項10】
導電塊(7)が、60重量%から98重量%のガリウムを含む、請求項9に記載の窓ガラス(I)。
【請求項11】
導電性構造(2)が、ガラス板(1)上に付着され、
中間層(3)が、導電性構造(2)または電気的接続部(4)に付着され、
導電塊(7)が、電気的接続部(4)または導電性構造(2)に付着され、
電気的接続部(4)が、中間層(3)を介して、導電性構造(2)および/またはガラス板と機械的に接続され、
中間層(3)、電気的接続部(4)および導電性構造(2)によって画定される空洞(5)内の導電塊(7)が、電気的接続部(4)および導電性構造(2)と電気的に接続され、導電塊(7)は、通常の外気温で導電塊(7)が時としてまたは常に液体であるような低い固相線温度を有している
窓ガラス(I)の製造方法。
【請求項12】
中間層(3)が、導電性構造(2)上に付着され、
導電塊(7)が、電気的接続部(4)に付着される、請求項11に記載の、窓ガラス(I)の製造方法。
【請求項13】
中間層(3)が、スクリーン印刷、スプレー塗工、カーテン塗工、ローラ塗工、接着ストリップの付着、または接着のうちの少なくとも1つによって、導電性構造(2)、電気的接続部(4)、またはガラス板(1)に付着される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
電気的接続部(4)が、導電塊(7)を介して導電性構造(2)に電気的に接続されると同時に、中間層(3)を介して導電性構造(2)およびガラス板(1)と機械的に接続される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
陸上、水上、地球外、または空中における構造物/アーキテクチャまたは自動車両のグレージングにおける請求項1から10のいずれか一項に記載の窓ガラス(I)の使用。
【請求項16】
中間層(3)が、ポリアクリル酸塩、シアノアクリレート、メタクリル酸メチル、シランおよびシロキサン架橋高分子、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリアミド、アセテート、シリコーン接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類、ポリ四フッ化エチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド類、ポリベンゾイミダゾール類、熱硬化性接着剤、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物を含む、請求項に記載の窓ガラス(I)。
【請求項17】
中間層(3)が、ポリイミド類またはポリ四フッ化エチレンを含む、請求項に記載の窓ガラス(I)。
【請求項18】
導電塊(7)が、銀、スズ、亜鉛、インジウム、ビスマス、および/またはガリウムを含有する金属合金を含む、請求項に記載の窓ガラス(I)
【請求項19】
導電塊(7)が、60重量%から98重量%のガリウム、15重量%から70重量%のインジウム、50重量%から98重量%のスズ、10重量%から80重量%の亜鉛、2重量%から10重量%の銀、または30重量%から70重量%のビスマスを含有する金属合金を含む、請求項18に記載の窓ガラス(I)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続部を有する窓ガラス、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性構造を有する、窓ガラス上の電気的接続部は、例えば国際公開第2007/116088号から知られている。
【0003】
独国特許出願公開第102007059818号明細書には、窓ガラスの外表面上に取り付けられる、導電層を含む平らな導体接続部が開示されており、少なくとも1つの絶縁緩衝層が、一方で隠さず露出した半田面を有する導電層の一部分と他方でガラス板の表面との間に形成される。
【0004】
独国特許出願公開第10392500号明細書から、電気的接続部を機械的および電気的に接続する目的で半田塊を付着および保持するための方法および論文が知られている。複数の孔の形成された本体が、これらの孔の中に充填される半田塊を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/116088号
【特許文献2】独国特許出願公開第102007059818号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10392500号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知の解決策には、機械的応力が、電気的接続部とガラス板との間に発生し、この機械的応力によって、ガラス板が損傷および破損する場合があるという不都合がある。
【0007】
本発明の目的は、電気的接続部と窓ガラスとの機械的接続を改善して、これをしっかりと電気的に安定させることである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、電気的接続部を有する窓ガラスの新しい製造方法、およびその新しい使用を発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項1、11、および15に記載の特徴によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の特徴によって示される。
【0010】
本発明は、導電性構造がガラス板上に付着され、少なくとも1つの中間層が導電性構造上に付着され、少なくとも1つの電気的接続部が中間層上に付着され、中間層、電気的接続部、および導電性構造によって、少なくとも1つの空洞が形成され、空洞には導電塊が含まれる、窓ガラスを含む。
【0011】
本発明に係る窓ガラスの有利な点は、特に、電気的接続部と導電性構造との間の中間層によって、ガラス板に加わる問題のある機械的応力が最小化される点である。
【0012】
問題のある機械的応力は、点に加わる力、線に加わる力、面に加わる力、せん断力、およびねじり力の量および方向に応じて発生し、窓ガラスの製造中または使用中に加わる負荷に起因して、窓ガラスが損傷または破損する原因となる場合がある。
【0013】
温度変化によって発生する機械的応力は、特に、使用される材料の熱膨張率と粘性率との差に応じて増大する。
【0014】
機械的応力は、60℃超、特に120℃超、さらに特には158℃超の温度でガラス板と電気的接続部とを接続するときに、特に不都合となる。
【0015】
本発明によれば、空洞を中間層で完全に囲むのが有利である。その場合、空洞によって、中間層内部に少なくとも1つの隙間が形成される。隙間の範囲は、導電性構造、電気的接続部、および中間層によって定められる。
【0016】
本発明に係る空洞は、導電塊のための保持キャビティが設けられるので、有利である。導電塊の形状は、空洞の形状、空洞内部の導電塊の濡れ、ならびに製造中および使用中の導電塊の粘度に従って決まる。問題のある機械的応力は抑制される。
【0017】
空洞の形状および容積は、特に、中間層の形状および容積、ならびに電気的接続部の形状に応じて決まる。
【0018】
空洞の内部では、導電塊は3つの空間方向すべてに関して所定の幾何学的形状に保持され、電気的接続部と導電性構造との間のしっかりと、電気的な接続が得られる。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態では、導電塊が空洞の内部に充填される。空洞の外部の領域にはいかなる導電塊も見つけられない。空洞の外部の領域は、空洞の外端および/または外端の突起によって形成される。上方から窓ガラスを観察することによっては、いかなる導電塊も認められない。導電塊の端は、好ましくは、その形状、濡れ性、および粘度のゆえに、空洞の外端と同一平面である。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明に係る中間層の厚さは、0.5μmから1mm、好ましくは1μmから500μm、特に好ましくは10μmから300μmである。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態では、空洞の直径は、0.1mmから2mm、好ましくは0.2mmから1mm、または相当面積である。
【0022】
他の実施形態では、空洞の直径は、2mmから25mm、好ましくは3mmから10mm、さらに特に好ましくは7.5mmから8.5mm、または相当面積である。
【0023】
空洞は、好ましくは、円形状、楕円形状、矩形状、または多角形状であり、本発明によれば、それらの形状に合わせて、電気的接続部と窓ガラスとの機械的接続を改善して、これをしっかりと電気的に安定させる導電塊の形状が形成される。
【0024】
空洞と同等の面積を円形状の空洞の直径から計算して、この面積を、電気的接続部と窓ガラスとの機械的接続を改善して、これをしっかりと電気的に安定させる楕円形状、矩形状、もしくは多角形状、またはあらゆる形状を有する面積にも引き継ぐことができる。
【0025】
本発明に係る特に有利な点は、中間層によって、力が加えられる点が、導電塊と導電層との間で可能な限り多くなる点である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、中間層内の空洞は、電気的接続部に面する領域と、中間領域と、導電性構造から離れた方を向く領域とから形成される断面を有する。上方から見た空洞の形状を、空洞の深さによって異なるように構成することができる。これらの領域の形状は、好ましくは、円形状、楕円形状、または矩形状である。導電塊は、空洞内で特に有利な形状を形成して、それにより、導電性構造およびガラス板に加わる機械的負荷を低減することができる。これは、空洞から導電塊がはみ出ない場合に特に有利である。
【0027】
別の好ましい実施形態では、導電塊は、その濡れ性および粘度に従って空洞の内部に保持される。濡れ性または毛管力は、導電塊の材料、中間層、接続部、導電性構造、ガラス板、および/または周囲大気の界面エネルギーに従って生じる。
【0028】
本発明によれば、導電塊によって空洞の内部に凹メニスカスが形成されるのが特に好ましい。
【0029】
さらに特に好ましくは、凹メニスカスは、空洞内部の導電塊の非常に小さい濡れ角によって形成される。
【0030】
導電塊の粘度は、材料および温度に依存する。本発明によれば、導電塊の粘度に大きな変化の観察される、液相線温度と固相線温度との間の温度範囲で、成形を行うのが有利である。
【0031】
本発明に係る中間層は、電気的接続部に面する隙間の領域の直径または面積が、導電性構造に面する領域より小さい場合に、特に有利である。
【0032】
本発明に係る中間層の別の実施形態では、隙間の端部形状および電気的接続部の形状が、導電塊の流動性、粘度、および濡れ性に適合させられる。好ましくは、端部領域は、直角にされるか、丸められるか、または非常に丸められる。
【0033】
特に好ましくは、導電性構造、中間層、および電気的接続部によって、導電性構造から電気的接続部にかけて次第に細くなる双曲線漏斗が形成される。さらに特に好ましくは、隙間は、双曲線漏斗の端部領域内に関してのみ導電塊で充填される。導電塊の形状は、中間層および電気的接続部に接する導電塊の濡れ性および粘度によって予め決定される。
【0034】
これは、製造中に空洞から膨張ガスを意図的に放出させるために、特に有利である。
【0035】
機械的な力が、本発明によれば、導電塊と導電性構造またはガラス板との間を、浅い迎角にて伝わる。
【0036】
本発明によれば、形状、粘度、および凝集状態のゆえに、導電性構造および/またはガラス板に問題のある力をまったく伝達しない導電塊が、使用される。
【0037】
本発明における粘度は、固体凝集状態にある導電塊の延性のことも表している。
【0038】
本発明によれば、接続部とガラス板との機械的接続が中間層を介して形成され、また、導電塊の固相線温度が、158℃未満、好ましくは120℃未満、さらに特に好ましくは65℃未満であるのが、特に有利である。
【0039】
本発明の他の実施形態はまた、接続部とガラス板とが、導電塊を介して機械的に接続され、導電塊の固相線温度が159℃から220℃である場合に、特に有利である。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態では、導電塊が、導電性液体、金属合金、および/または複合材料、好ましくは銀、スズ、亜鉛、インジウム、ビスマス、および/またはガリウムを含有する金属合金、特に好ましくは60重量%からおよそ98重量%のガリウム、15%重量%から70%重量%のインジウム、50重量%から98重量%のスズ、10重量%から80重量%の亜鉛、2重量%から10重量%の銀、および/または30重量%から70重量%のビスマスを含有する金属合金を含む。
【0041】
固相線温度が65℃未満の導電塊は、好ましくは、60重量%からおよそ98重量%のガリウムを含む。
【0042】
固相線温度が65℃以上かつ158℃未満の導電塊は、さらに特に好ましくは、15%重量%から70%重量%のインジウム、および/または30重量%から70重量%のビスマスを含む。
【0043】
固相線温度が158℃以上の導電塊は、さらに特に好ましくは、50重量%から98重量%のスズを含む。
【0044】
導電塊は、本発明によれば、好ましくは無鉛半田である。
【0045】
本発明によれば、導電性のスポンジ状、格子状、または無機もしくは有機の複合物または混合物も、導電塊に含まれてもよい。この例として、銀ウールなどのウール状の形状の材料が挙げられる。
【0046】
導電塊は、固相線温度が低いため、通常の外気温で時としてまたは恒久的に液体である。導電塊の粘度が低い場合、空洞の内部の流れは、形状および濡れ性によって防止される。電気的接続が持続する。電気的接続部と導電性構造および/またはガラス板との間は、中間層を介して完全にまたは部分的に時としてまたは恒久的に機械的に接続される。
【0047】
導電塊が液体または低粘度もしくは高延性であると、導電塊と導電性構造および/またはガラス板との間に、問題のある機械的負荷がまったく発生しないため、特に有利である。
【0048】
ガラス板は、プレストレスを与えられた、部分的にプレストレスを与えられた、またはプレストレスを与えられていない、石英ガラス製の一枚のガラス板または複合ガラス板であり、好ましくはプレストレストを与えられていない複合ガラス板か、または部分的にプレストレスを与えられた複合ガラス板である。ガラス板の厚さは、1mmから6mm、好ましくは1.8mmから4mmである。
【0049】
ガラス板は、被覆スクリーン印刷を用いて、完全にまたは部分的に、好ましくは端部領域に関して、特に好ましくは電気的接続部の領域に関して、被膜することができる。
【0050】
窓ガラス上の導電性構造は、好ましくは、発熱導体および/またはアンテナ導体を有する伝導路である。導電性構造は、好ましくは、ガラス板の端部領域で電気的接続部と接続される。
【0051】
電気的接続部によって、例えば自動車両に取り付けられる電気システムの導電体と、窓ガラス上の導電性構造との間が、しっかりと機械的に結合および電気的に接続される。電気的接続部は、好ましくは、平らな導体、またはいわゆるリジッドコネクタ(rigid connector)として構成される。リジッドコネクタは、その材料特性、材料の厚さ、および形状により、高い剛性を有する。
【0052】
本発明の別の実施形態では、長期間にわたっては安定せず、また経年劣化する導電塊が、防食剤を用いて環境の影響から保護される。防食剤は、好ましくは、液体および/または導電性である。
【0053】
本発明の別の実施形態では、中間層は、熱安定性高分子層、スクリーン印刷用セラミックペースト、ソルダレジスト、および/または接着ストリップを含み、好ましくはポリアクリル酸塩、シアノアクリレート、メタクリル酸メチル、シランおよびシロキサン架橋高分子、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリアミド、アセテート、シリコーン接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド類、ポリベンゾイミダゾール類、ポリ四フッ化エチレン、熱硬化性接着剤、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物を含み、特に好ましくはポリイミド類またはポリ四フッ化エチレンを含む。
【0054】
本発明によれば、好ましくは、導電塊に濡れない材料が、中間層には使用される。この材料は、好ましくは、低界面エネルギーを有する。これに特によく適するのは、ポリイミド類、ポリ四フッ化エチレン、またはソルダレジスト、ならびにポリイミド類またはソルダレジストを含む複合材料である。
【0055】
本発明の別の実施形態では、本発明に係る中間層は、複数の層から構成されるが、その場合、中間層と電気的接続部の表面および導電性構造の表面とは、接着層を介して確実に接触させられる。
【0056】
特に好ましくは、本発明によれば、中間層には、空洞を相互に接続するか、またはこれらと中間層の端部とを接続する追加的な接続キャビティが含まれる。これは、電気的接続部と導電性構造とを機械的におよび電気的に接続する間のガス生成物を放出する場合に、特に有利である。接続キャビティは、本発明によれば、導電塊で充填されないかもしくはこれに濡れないか、またはほとんどそのようにはならない。
【0057】
本発明に係る窓ガラスの製造方法では、導電性構造がガラス板上に付着され、中間層が導電性構造および/もしくはガラス板または電気的接続部に付着され、導電塊が、電気的接続部または導電性構造に付着され、電気的接続部が中間層を介して導電性構造および/またはガラス板と機械的に接続されるが、その場合、少なくとも1つの空洞が形成され、導電塊が、少なくとも1つの空洞の内部で電気的接続部および導電性構造と電気的に接続される。
【0058】
好ましい実施形態では、中間層が導電性構造上に付着され、導電塊が電気的接続部に付着される。
【0059】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、中間層が、スクリーン印刷、スプレー、カーテン塗工、またはローラ塗工、接着などの方法のうちの少なくとも1つによって、導電性構造、電気的接続部、および/またはガラス板に付着される。これらの方法を用いて、隙間を有する中間層を、単純な方法を用いて必要な精度で実現することができる。
【0060】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、電気的接続部と導電性構造および/またはガラス板との機械的接続、好ましくは電気的接続部とガラス板との機械的接続は、機械的クランピング、半田付け、および/または接着を用いて行われる。接続時の温度は、本発明によれば、好ましくは158℃未満、特に好ましくは120℃未満、さらに特に好ましくは60℃未満である。
【0061】
さらに特に好ましくは、電気的接続部は、好ましくは中間層の接着作用を熱活性化させることによって、電気的接続と同時に導電性構造および/またはガラス板と機械的に接続される。例えば導電塊を半田付けすることによって、中間層の接着作用を活性化させることができる。
【0062】
本発明の例示的実施形態は、図1から図10までの図面に模式的に示されており、以下ではその詳細について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明に係る窓ガラス(I)の分解斜視図である。
図2】本発明に係る図1の窓ガラスの斜視図における断面である。
図3】本発明に係る図2の窓ガラス(I)における詳細な断面図である。
図4】本発明に係る窓ガラス(I)の好ましい実施形態における詳細な断面図である。
図5】本発明に係る窓ガラス(I)の別の好ましい実施形態における詳細な断面図である。
図6】本発明に係る窓ガラス(I)の別の好ましい実施形態における詳細な断面図である。
図7】本発明に係る窓ガラス(I)の別の好ましい実施形態における詳細な断面図である。
図8】本発明に係る窓ガラス(I)の別の好ましい実施形態における詳細な断面図である。
図9】本発明に係る窓ガラス(I)の他の実施形態の分解斜視図である。
図10】本発明に係る方法の例示的実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1から図3には、電気的接続部(4)を含む、本発明に係る窓ガラス(I)の接続領域が、様々な描き方で示されている。導電性構造(2)が、シルクスクリーン印刷用銀含有ペーストを用いて、プレストレスを与えられていないケイ酸塩ガラス板(1)上に発熱導体として印刷された。ガラス板(1)の端部上の導電性構造(2)のサブ領域上には、130μm厚の中間層(3)が、アクリルおよびポリイミドを含有する接着ストリップから形成された。直径1mmの複数の円形の隙間(5)が、接着ストリップ内に形成された。直径は、電気的接続部(4)に面する領域(5a)から導電性構造に面する領域(5c)にかけて一貫して1mmであった。中間層(3)上には、電気的接続部(4)が存在しており、電気的接続部(4)は、導体(図示せず)を介して自動車両に取り付けられた電気システム(同様に、図示せず)と接続された平らな導体として構成されていた。隙間(5)、導電性構造(2)のサブ領域、および電気的接続部(4)のサブ領域によって、導電塊(7)のための空洞(5)が形成されていた。導電塊(7)は、67重量%のビスマスおよび33重量%のインジウムを含有し、かつ110℃の固相線温度を有する低粘度、高延性の無鉛半田であった。導電塊(7)の形状は、空洞(5)の形状ならびに導電塊(7)の濡れ性および諸性質によって決定された。導電性構造(2)は、しっかりと、導電塊(7)を介して電気的接続部(4)と電気的に接続された。導電性構造(2)は、しっかりと、接着中間層(3)を介して電気的接続部(4)と機械的に接続された。本発明に係る窓ガラス(I)によって、電気的接続部(4)とガラス板(1)との機械的接続が、従来技術と比べて改善された。力を加えても問題のない複数の点が、導電性構造(2)と、導電塊(7)と、中間層(3)と、電気的接続部(4)との間に形成された。導電性構造(2)またはガラス板(1)を損傷させる原因となる場合のあった機械的な力の量および方向が、最小化された。したがって、窓ガラス(I)はしっかりと保護された。
【0065】
本発明に係る他の実施形態では、窓ガラス(I)は、銀コーティングされた0.8mm厚かつ14×24mmの銅板を有する電気的接続部(4)を含んでいた。14×24mmの中間層(3)は、250μmの厚さを有し、6×6mmの角の丸い2つの正方形の隙間(5)を有していた。中間層(3)は、幅8mmの枠状の導電性構造(2)の範囲を越えて広がっていた。空洞(5)は、電気的接続部(4)および導電性構造(2)とともに、68重量%のガリウムおよび22重量%のインジウムを含有する導電塊(7)で部分的に充填された空洞(5)を形成していた。導電塊(7)は、−19℃超では液体となるものであったが、隙間によって流出しないように防止されていた。電気的接続部(4)は、しっかりと、導電塊(7)を介して、導電性構造(2)の接触領域と電気的に接続されていた。電気的接続部(4)は、導電性構造(2)の範囲を越えて広がっていた中間層(3)の一部を介して、ガラス板(1)に接着されて、ガラス板(1)としっかりと機械的に接続された。導電塊(7)が液体状態にあったため、機械的応力は、中間層(3)を通って完全に伝導され、電気的接続部(4)とガラス板(1)との間の問題のある力は観察されなかった。
【0066】
図4には、図1から図3の例示的実施形態に連なる好ましい実施形態が示されている。中間層(3)は、厚さ100μmの半田付け耐熱性のポリイミド膜として形成された。中間層(3)は、接着剤を用いて、平らな導体(4)と導電性構造(2)との間に付着された。空洞(5)は、円形状に形成された。電気的接続部(4)に面する領域(5a)の隙間の断面は0.8mmであり、導電性構造(2)および窓ガラス(1)に面する領域(5c)の空洞(5)の断面は1.2mmであった。導電塊(7)は、隙間(5)内に双曲線逆漏斗状に形成された。導電性構造または窓ガラスを損傷させる原因となる場合のあった機械的な力の量および方向が、最小化された。
【0067】
図5には、図1から図3の例示的実施形態に連なる他の実施形態が示されている。中間層(3)は、厚さ100μmの半田付け耐熱性のポリイミド膜として形成された。同様に空洞(5)は、直径5mmの円形状に形成された。空洞(5)の領域における中間層(3)の断面に関して、上端部(5a)は、電気的接続部(4)にかけて丸められ、下端部(5c)は、導電性構造(2)の接触領域にかけて丸められていた。中間層(3)は、接着剤を用いて、電気的接続部(4)と導電性構造(2)との間に付着された。これにより、電気的接続部(4)と導電性構造(2)との間の機械的および電気的な接続を改善することのできる空洞(5)が形成された。導電塊(7)とガラス板(1)上の導電性構造(2)との間の機械的な力は、浅い迎角を有していた。本発明に係る窓ガラス(I)が損傷するのを防止することができた。
【0068】
図6には、図5に記載の例示的実施形態のさらなる改善案として、空洞(5)が、電気的接続部(4)を適合した形にすることによって、煙突状に構成されていることが示されている。この設計を用いて、冷却工程における温度分布、および半田付け工程における半田付けフラックスのアウトガスを改善することができた。空洞(2)は、おおよそ双曲線漏斗の形状に適合された。電気的接続部(4)に面する領域(5a)の表面および直径は、導電性構造(2)に面する領域(5c)の表面および直径より小さかった。このようにして、電気的接続部(4)と導電性構造(2)の接触領域との間の機械的および電気的な接続を単純な方法で改善することのできる、空洞(5)を有する中間層(3)が、発見された。
【0069】
図7には、図5に記載の例示的実施形態のさらなる改善案として、複合層として設計された中間層(3)が示されている。耐熱性ポリイミドの層は、上方のシアノアクリレート接着層および下方のシアノアクリレート接着層に面していた。接着層を用いて層を構成したため、特に有利な確実な接触が、電気的接続部(4)と、中間層(3)と、導電性構造(2)との間に形成された。導電塊(7)とガラス板(1)上の導電性構造(2)との間の機械的な力は、浅い迎角を有していた。導電性構造(2)またはガラス板(1)の損傷が防止された。
【0070】
図8には、本発明に係る窓ガラス(I)の他の実施形態が示されている。シアノアクリレートを含有する14×12mmの中間層(3)の厚さは250μmであった。電気的接続部(4)は、14×20mmの面積を有する0.8mm厚の銅板であった。電気的接続部(4)は、2つの側面に関してそれぞれ4mmだけ中間層(3)の範囲を越えて広がっており、さらにはガラス板(1)の側にわずかに湾曲していた。中間層(3)、湾曲した電気的接続部(4)、および導電性構造(2)によって、2つの側面に空洞(5)が形成されていた。空洞(5)は、導電塊(7)で部分的に充填されていた。導電塊(7)は、67重量%のビスマスおよび33重量%のインジウムを含有し、かつ110℃の固相線温度を有する半田であった。導電塊(7)によって、空洞(5)の内部に凹メニスカスが形成された。導電性構造(2)にかけて丸められた端部を有する中間層(3)が、導電塊(7)に完全に濡れていた。導電塊(7)は、湾曲した電気的接続部(4)および導電性構造(2)とに対して非常に小さい濡れ角を形成した。導電塊(7)は、完全に空洞(5)の内部に充填された。窓ガラス(I)を上から見たとき、導電塊(7)はまったく見えなかった。電気的接続部(4)は、しっかりと、導電塊(7)を介して、導電性構造(2)と電気的に接続された。電気的接続部(4)は、中間層(3)を介してガラス板(1)と、機械的に接着かつしっかりと接続された。導電塊(7)の形状および粘度のため、機械的応力は中間層(3)を介して完全に伝導された。電気的接続部(4)とガラス板(1)との間の問題のある力は、製造中および使用中に観察されなかった。
【0071】
図9には、図1の例示的実施形態の延長が示されている。複数の空洞(5)は、径がおよそ100μmの接続キャビティ(8)を介して相互に接続され、かつ中間層(3)の外端と接続されていた。接続キャビティ(8)内には、導電塊(7)が存在していなかった。半田付け工程の間は液体状である導電塊(7)によって空洞(5)の内部は濡れていた。半田付け工程の間の膨張した空気またはガスの半田付け補助物(gaseous soldering aid)が、接続キャビティ(8)を介して空洞(5)のすべてから出て行く。このようにして、空洞(5)の内部の導電塊(7)の分布が改善された。
【0072】
図10には、本発明に係る窓ガラス(I)を製造するための、本発明に係る例示的実施形態の詳細なフローチャートが示されている。
【0073】
本発明に係る窓ガラス(I)は、従来技術のものより長持ちする。
【符号の説明】
【0074】
I 窓ガラス
1 ガラス板
2 導電性構造
3 中間層
4 電気的接続部
5 中間層内の空洞、隙間
5a 電気的接続部(4)に面する、空洞(5)の上部領域
5c 導電性構造(2)に面する、空洞(5)の下部領域
7 導電塊
8 接続キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10