(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水硬性セメント、例えばポートランドセメントなどを製造する工程では、セメント粒子を小さくして粒径を相対的により小さくする目的で粉砕工程が用いられる。「クリンカー」と呼ばれる球形の出発材料(これは本質的に水硬性ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウムおよびカルシウムアルミノフェライトで構成されている)を少量の石膏と混合した後に粉砕して微細な粒子を生じさせる。クリンカーを粉砕してセメントを生じさせる時にかなりの時間およびエネルギーが消費されることから、セメント産業では、粉砕工程の効率を向上させてある単位のセメントの粉砕に要する動力を低下させるか或は別法として高いセメント要求に対応するようにセメント生産量を向上させる目的で粉砕助剤を用いることが一般的な実施である。粉砕助剤を添加すると、セメントクリンカーの発生期表面の被覆によって微細材料が粉砕用媒体および製粉機の壁を覆って蓄積する度合が抑制されることから、製粉機でクリンカーを粉砕してサイズをより小さくする工程をより低いエネルギーで行うことが可能になる。
【0003】
クリンカーから水硬性セメントを生じさせる粉砕の効率を向上させる目的で水溶性ジオールを用いることが特許文献1に提案された。その後、クリンカー粉砕工程の効率を向上させる目的でトリオール、例えばグリセロールなどを用いることが特許文献2に提案された。
【0004】
用語「グリセロール」はしばしば用語「グリセリン(glycerin)」および「グリセリン(glycereine)」と互換的に用いられる。しかしながら、より適切に述べると、用語「グリセロール」は化学的に高純度の化合物である1,2,3−プロパントリオールに適用される一方、用語「グリセリン(glycerin)」および「グリセリン(glycereine)」はグリセロール含有量が一般に95%以上の精製された商業的製品に適用される。商業的に供給されるグリセリンは大部分が脂肪にメタノールを用いたエステル化を受けさせることによるメチルエステル製造中に生じる。本発明者らは、そのようなグリセリンがセメントおよびコンクリート組成物に入れる混和材として用いられてはいるが、本発明までは、動物または植物脂肪を用いてエステル化されたグリセリンをセメント、セメントクリンカーまたは他のセメント製造用原料の粉砕助剤として用いられることはなかったと考えている。
【0005】
セメントの粉砕では副生成物として得られる粗および廃棄グリセリン[本発明に示す如きバイオ燃料(biofuel)生成には関係しない]が以前から用いられている。そのような1つのグリセロール混合物が特許文献3に記述された。W.R.Grace & Co.−Conn.は化石燃料処理に由来する粗ポリグリセリンを1980年代のある時期に粉砕補助添加剤配合で以前に用いていた。しかしながら、グリセロール濃度に換算したグリセリンの純度は約50%であり、従って、他の粉砕助剤成分と一緒に配合する時にスラッジが生じないように注意を払う必要があった。セメント用途におけるグリセリン残留物、粗グリセリンおよび廃棄グリセリンの他の使用が特許文献4および5に記述されている。そのような材料はいろいろな分子量を有するグリセロールを含有しておりかつ大部
分が塩、例えば塩化ナトリウムなどを15%に及ぶ量で含有すると考えている。ポリグリセリンが高濃度で存在するとそのような粗グリセリンが前記工程で示す粉砕補助効率が低下する。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明者らは、バイオマス源に変換を受けさせることで生じさせたポリオール、好適には低分子量のジオールおよび/またはトリオール(「バイオマス由来ポリオール」)をセメント、セメントクリンカー、原料、例えば高炉スラグ、石灰石、粘土、頁岩、砂などを粉砕してより微細な粒径にする粉砕工程で用いると前記工程の効率が向上する点で化石燃料源に由来するグリセリンに比べて有利であることを見いだした。
【0008】
好適なバイオマス由来グリセリンは、例えばバイオディーゼル燃料(biodiesel fuel)の製造に由来して得たグリセリンであり、それをセメント粉砕助剤として適切に用いることができる。そのようなバイオマス由来グリセリンの方が化石燃料に由来するグリセリンよりもセメントおよび他の材料の粉砕に関して有利であると考えている、と言うのは、それの方が高純度グリセロールの量が多いからである。また、それの方がスラッジが生じる傾向が低いとも考えている、と言うのは、それの方が有害な高分子量成分、例えばポリグリセロール(2個以上のグリセロール基がエーテル結合で連結している)などの量が少ない可能性があるからである。
【0009】
経済的観点から、しばしば、極性のある有機低分子の低コスト流れをセメント粉砕助剤として用いるのが有利である。消費者にとって石油が基になった燃料のコストの方が野菜または植物材料から生産されたバイオ燃料よりも安価なままであるが、バイオ燃料由来グリセリンに必要な天然源は再生可能であり、このことは、近い将来、セメント製造業者にとって充分により魅力的になり得る。
【0010】
本発明のバイオマス由来ポリオール系セメント粉砕助剤はまたセメントおよびセメント系粒子を粉砕した後の圧縮固化も抑制すると考えている。言い換えれば、バイオマス由来ポリオールはまたセメントの流動開始に要し得るエネルギー量を低下させるとも考えており、このことは、乾燥セメント粉末を貯蔵サイロまたは貯蔵所から取り出す時もセメントをトラック、運搬船または鉄道ホッパー車で輸送した後に取り出す時にも重要である。粉砕後にもたらされるセメントが示す高い表面エネルギーを低くすることができれば、そのような圧縮固化の傾向が抑制される。
【0011】
従って、本発明の典型的な方法は、ジオール、トリオールまたはこれらの混合物から選択した少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールを含有して成る粉砕助剤組成物を無機粒子(より微細な粒径になるように粉砕すべき)に導入することを含んで成る。
【0012】
本発明の好適な粉砕助剤組成物は、バイオマス源に由来するグリセリンに入っているグリセロール(1,2,3−プロパントリオール)を少なくとも50−95%、より好適には少なくとも80%の濃度で含有して成る。そのような粒子を粉砕している間または粉砕
する前の粉砕製粉工程に本バイオマス由来ポリオール含有組成物を個別に添加するか或は1種以上の通常のセメント粉砕助剤および/または1種以上の通常のセメント品質向上剤(例えばセメント水和制御剤)および/または他のセメント用添加剤、例えば六価クロム含有減水剤(hexavalent chromium reducing agents)と一緒にして添加してもよい。
【0013】
本発明の別の典型的な粉砕助剤組成物は、(A)バイオマス由来ポリオール、例えばバイオ燃料生産に由来するグリセリンなど、および(B)グリコール(当該ポリオールがグリセロールの場合)、トリエタノールアミン、酢酸またはこれの塩、トリイソプロパノールアミン、酢酸ナトリウム、ジエタノールイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシルエチレンジアミン、炭水化物、ポリカルボキシレートエーテル、空気連行剤、塩化物、亜硝酸塩および硝酸塩から成る群から選択した少なくとも1種の追加的成分(即ち、通常のセメント用添加剤)を含有して成る。
【0014】
本発明のさらなる典型的な粉砕助剤組成物は、(A)バイオマス由来ポリオール、例えばバイオ燃料生産に由来するグリセリンなど、および(B)少なくとも1種の減水用添加剤を含有して成る。典型的な減水用添加剤にはリグノスルホン酸塩(例えばリグノスルホン酸カルシウム)、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物またはこれらの混合物が含まれる。
【0015】
本発明のさらなる典型的な粉砕助剤組成物は、(A)バイオマス由来ポリオール、例えばバイオ燃料生産に由来するグリセリンなど、および(B)少なくとも1種の六価クロム含有減水剤を含有して成る。
【0016】
粗バイオマス由来ポリオール、例えば食用ではない獣脂または精製大豆油などに由来する粗グリセリンを用いる場合、それにはセメントを生じさせる目的でセメントクリンカーを粉砕する時に用いる適切でない脂肪酸が多い量で存在する可能性はあるが、そのような特に粗形態のグリセリンはクリンカーの製造で用いられる原料、例えば石灰石、粘土、頁岩および/または砂などの製粉で用いるには適すると考えている。
【0017】
本発明のさらなる粉砕助剤組成物では、バイオマス由来ポリオールを他の少なくとも1種の添加剤または添加剤組み合わせと一緒に用いることも可能であり、そのような他の添加剤には、通常のセメント用添加剤、減水用添加剤および/または六価クロム含有減水剤が含まれる。
【0018】
上述した組成物を粉砕工程に組み込む方法に加えて本発明のさらなる利点、特徴および態様を本明細書の以下に更に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適な態様の詳細な説明
用語「バイオマス」は再生可能ベースで入手可能な有機物質のいずれかを意味し、これには、エネルギー専用作物および木、農業食料および飼料用作物、農業作物廃棄物および残渣、木廃棄物および残渣、水生植物、動物排泄物、地方自治体廃棄物および他の廃棄材料が含まれる。
【0020】
用語「バイオ燃料」を本明細書で用いる場合、これを本明細書では用語「バイオディーゼル燃料」と互換的に用いるかもしれない。
【0021】
用語「粉砕」は、粒子の平均粒径を小さくしかつ材料の単位質量当たりの表面積を大きくするための製粉または粉砕を包含する。粒子を粉砕する本発明の方法は、粒子を粉砕す
る回転式ボールミルまたは回転式窯の使用を包含する。本方法に、また、粒子を破砕するためのローラー(回転式シリンダー)が用いられている製粉機の使用を伴わせることも可能である。例えば、そのようなローラーを対になったロール間隙形態で用いてもよく、その間に粒子を通すことで破砕させる。別法として、そのようなローラーを水平な面、例えば円形テーブル上などで用いることも可能であり、そのテーブルの表面の上を前記ローラーが回転する時に敷き詰められた粒子が破砕される。
【0022】
本明細書で用いる用語「粒子」は、水和性セメントおよびセメントクリンカー(しばしば石膏および硫酸カルシウムと一緒に粉砕して水和性セメントを生じさせる)を包含する。本発明は、クリンカーからセメントを生じさせる粉砕およびセメント粒子から更により微細な粒子を生じさせる粉砕に関するばかりでなくまたセメントクリンカーの製造で用いられる原料の粉砕にも関する。そのような原料にはカルサイト、石灰石、アラゴナイト、貝殻、泥灰土、リモナイト、粘土、頁岩、砂およびボーキサイトが含まれることが一般に知られている。例えばConcrete Admixtures、Vance Dodson(Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク、NY 1990)の4頁を参照のこと。
【0023】
この上で述べたように、本発明は、無機粒子を粉砕して粒径をより小さくする目的でバイオマス源、例えば動物および/または植物材料などに変換を受けさせることで生じさせたポリオールを用いることを伴う。
【0024】
本発明のバイオマス由来ポリオールには、水溶性ジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、前記グリコールのいずれかまたは全部の混合物、それらの誘導体、およびエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドまたはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを活性水素が基になった化合物(例えばポリアルコール、ポリカルボン酸、ポリアミンまたはポリフェノール)と反応させることで生じさせた反応生成物などが含まれ得る。本発明で使用を意図する他のグリコールには、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ブタンジオール、およびブチンジオールおよびブテンジオールの如き不飽和ジオールが含まれる。エチレンとプロピレンのポリグリコールが最も好適である。
【0025】
ポリオールをバイオマスから生じさせることはかなり以前から産業規模で成されてきた。例えば、International Polyol Chemicals,Inc.(「IPCI」)は、あらゆる種類の糖から工業用グリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびグリセリン)を製造する新規な「グリーン(green)」化学的工程技術を開発することに20年前に焦点を当て始めた。以前のそのような製品は主に石油源に由来するものであった。熱帯地域では、タピオカ、サトウキビおよび糖蜜が好適である。通常ではない糖、例えばラクトース(これはチーズ製造用乳清の副生成物である)もまた可能な原料候補品である。その上、植物または野菜繊維に酵素または酸による加水分解を受けさせることで糖を生じさせることも可能であり、そのような糖もまたグリコール生産の原料になり得る。そのようなIPCI工程は下記の2つの基本的段階を有すると考えている:即ち(1)グルコースまたは単糖に連続的接触水添を受けさせることでソルビトールを生じさせ、そして(2)ソルビトールに連続的接触水素化分解を受けさせることでグリコールを生じさせる。次に、その結果として得たグリコールを蒸留で分離した後、典型的には食品、化粧品および製薬学産業で用いる。本発明者らは、そのようなバイオマス由来ポリオールをセメント、セメントクリンカー、原料、例えばスラグなどおよび他の粒子をより微細な粒径にする粉砕を向上させる目的で用いることができると考えている。
【0026】
本発明の目的に適したポリオールを生じさせる別のバイオマス源は家畜糞尿である。米国で1年間に生じたそれは160百万トンであり、それの大部分に炭水化物成分が豊富に存在し、本発明者らは、それは数多くの公知触媒作用手段のいずれかを用いてジオールおよび/またはトリオールに変化させることが可能な炭素数が5および6の糖源であると見なす。勿論、そのような方法は農業バイオマス原料、例えば小麦廃棄物(これは主に奇麗な炭水化物で構成されている)を用いる場合に比べると望ましくない。The Pacific Northwest National Laboratory(「PNNL」)[ワシントン州にあるU.S.Department of Energy施設]は、動物排泄物を化学品に成功裏に変化させそして価値が低い他のバイオが基になった材料、例えばトウモロコシ、小麦、ジャガイモおよび乳製品の加工の結果としてもたらされる廃棄物および副生成物などを化学品に変化させるいろいろな触媒作用アプローチを開発した。そのような副生成物(ジオール形態でもトリオール形態でもない)を公知方法でジオールおよび/またはトリオールに変化させることができる。
【0027】
この上に示した方法を用いてバイオマス由来トリオールを得ることも可能ではあるが、最も好適なトリオールは、バイオ燃料の生産に由来する副生成物として得られるグリセロールである、と言うのは、グリセロール濃度が高くかつこの上で述べたようにポリグリセリドの濃度が相対的に低いか或は全く存在しないからである。特定のバイオマス源に変換を受けさせた時に高純度のグリセロールに加えてまたポリグリセリドも存在する場合、本発明者らは、大きいグリセリドよりも小さいグリセリドの方を好む(即ち、ジグリセリドが最も好適である)。
【0028】
本発明の好適なバイオマス由来ポリオールはとりわけ「バイオ燃料由来ポリオール」、例えばグリセリン(これはグリセロールを含有する)などである。植物および/または動物油からバイオ燃料を製造する方法は公知であり、粉砕助剤として用いるに有用な粗グリセリンをそのような方法の直接的副生成物として得ることができる(例えば沈澱)。例えば、植物および動物油にエステル交換を受けさせてバイオ燃料を生じさせることがDemirbas著「Biodiesel Fuels From Vegetable Oils Via Catalytic and Non−Catalytic Supercritical Alcohol Transesterification And
Other Methods:A Survey」に記述されている。また、植物もしくは動物油にエステル交換を受けさせる方法がThierry Lacome他のヨーロッパ特許出願EP 1 505 048 A1にも記述されている。バイオ燃料を製造する目的で使用可能ないろいろな植物および動物源もまた文献に見ることができる。
【0029】
エステル交換は、再生可能な原料油の分子を化学的に分解させて前記再生可能油のメチルもしくはエチルエステルを生じさせる(それと一緒にグリセロールが副生成物として生じる)目的でアルコール(例えばメタノール、エタノール、ブタノール)を触媒、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの存在下で用いる方法である。次に、植物油または動物脂肪に由来する脂肪酸のモノアルキルエステルで構成されているバイオディーゼルをグリセリンから分離することができる(通常は、エステル交換反応後に塩を添加するか或は塩が存在する結果として)[例えば、トリグリセリド+一価アルコール>グリセリン+モノアルキルエステル]。そのエステル交換にアルカリによる触媒作用、酸による触媒作用を受けさせることができ、それをエタノールまたはメタノール中で実施してもよい。Demirbasは、また、鹸化および熱分解を用いてバイオ燃料を生じさせることも記述しており、それと一緒にグリセリンが副生成物として生じる。
【0030】
しかしながら、本発明に好適な粗グリセリンを必ずしもバイオ燃料に由来するグリセリンに限定する必要はない。本発明者らは、植物または動物源を用いた石鹸製造、脂肪酸製
造および脂肪エステル製造に由来するグリセリドによる如何なるグリセロール(天然グリセロール)も粗グリセリンをいろいろな量でもたらし得ると考えている。しかしながら、本発明者らは、脂肪エステル製造でもたらされるグリセロールの濃度が最も高く、従って、脂肪エステル製造の副生成物としてもたらされるグリセリンが最も好適であると考えている。脂肪エステル製造に由来するグリセリンにはしばしば塩化物塩がある濃度(総重量の15%以下)で入っているが、その濃度は、本発明の目的に適した最終的粉砕セメント製品にとって有害ではないと考えている受け入れられる濃度である。
【0031】
バイオ燃料の製造で得られる粗グリセリンのサンプルの純度はグリセロールの濃度が92%から95%にさえ及ぶ純度であり得、その残りには塩、例えば塩化ナトリウムおよび/またはカリウムなどが含まれると考えており、従って、化石燃料に由来するグリセリンの場合にしばしば実施されている如き精製を行う必要はない。
【0032】
バイオマス由来ジオール、トリオールもしくはこれらの混合物を含有して成る典型的な粉砕助剤組成物の場合、そのようなバイオマス由来部分の平均分子量を好適には約50−200にすべきである。実際、ジオールとトリオールが一緒に混ざっている場合、本発明者らは、そのような組成物を例えば幅広い範囲の種類のセメントに粉砕助剤として用いることができる可能性があると考えている。
【0033】
従って、本発明の典型的な組成物は、(A)少なくとも1種のバイオマス由来ジオール、少なくとも1種のバイオマス由来トリオールまたはこれらの混合物、および(B)少なくとも1種の通常の粉砕助剤成分、例えばグリコール(成分Aがグリセロールの場合)、トリエタノールアミン、酢酸またはこれの塩、トリイソプロパノールアミン、酢酸ナトリウム、ジエタノールイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、炭水化物、ポリカルボキシレートエーテル、空気連行剤ばかりでなく塩化物塩、亜硝酸塩または硝酸塩などを含有して成る。例えば、成分Aが10−90%を構成する一方で成分Bが90−10%を構成するようにしてもよい(パーセントは全部本組成物の重量が基準)。
【0034】
本発明の好適な粉砕方法および粉砕助剤組成物では、バイオマス由来ポリオール、例えばバイオ燃料由来粗グリセリンの灰分含有量を好適にはゼロにすべきか或はほとんどゼロにすべきである。灰分の量を好適には50%未満、より好適には15%未満、最も好適には10%未満にすべきである。この灰分の量はグリセロール以外の有機物、即ち「MONG」(これは「Matter Organic NonGlycerol」の頭文字である)に換算して記述可能である。MONGには脂肪酸およびエステル、トリメチレングリコール(TMG)、即ちプロパン−1,3−ジオール、水、ヒ素および糖が含まれると考えている。
【0035】
従って、本発明の典型的な組成物はバイオマス由来ジオール(10−90%)、バイオマス由来トリオール(90−10%)およびMONGを0.005−50%の含有量で含有して成り得る。
【0036】
セメント粉砕助剤として用いるに適した好適なバイオ燃料由来グリセリンはWorld
Energy社から入手可能であると考えている。その植物もしくは野菜油源を確認してはいないが、World Energyのグリセリンには下記の成分:グリセリン(88%)、メタノール(0.05%)、水分(8%)、全脂肪酸含有量(0.2%)、塩化ナトリウム(2%)および「灰分」(3%)が入っていてpHが約6で硫酸塩および燐酸塩の含有量が各々約300ppm(parts per million)であると述べられている。
【0037】
別の好適なバイオ燃料由来グリセリンをImperial Western Productsから入手することができ、これは使用済み揚げ物用油に由来すると考えている。その粗グリセリンは下記の成分:グリセリン(91.57−92.19%)、メタノール(<0.01%)、水分(4.05−5.77%)、鹸化不能部分(0.056%)、灰分(1.03−1.61%)および不溶部分(0.28%)を含有する。
【0038】
石鹸(これの源は85%が獣脂で15%がヤシ油である)製造に由来してセメント粉砕補助の目的で用いるに適すると考えている別のグリセリンをTrillium Health Care Products−Perth Soapから入手することができ、これには下記の成分:グリセリン(80%)、水分(12%)、塩化ナトリウム(8%)および灰分(11%)が入っていてpHは7−11で硫酸塩含有量は約2500ppmである。
【0039】
本発明のさらなる面は、一方ではグリセロール含有量が低いことが理由でセメントクリンカーから最終的水和性セメントを生じさせる粉砕で用いるにはあまり適さないかもしれないが精製度が低い製粉または粉砕工程、例えばカルサイト、石灰石、アラゴナイト、貝殻、泥灰土、リモナイト、粘土、頁岩、砂またはボーキサイト、またはこれらのいずれかの混合物の如き原料を製粉機または回転式窯で粉砕してセメントクリンカーを生じさせる場合の工程などで用いるには適し得るバイオマス由来ポリオールである。従って、「原料」の粉砕工程の場合には、South Texas Blending社から入手可能なバイオマス由来ポリオールの使用が適切であると考えており、それは食用ではない獣脂に由来するものでありかつグリセリンを約50%含有していて残りは高濃度の脂肪酸であると考えている。また、別のバイオマス由来ポリオールをSoy Solutionsから入手することも可能であり、それはグリセリン(51%)、メタノール(6%)および「MONG」(45%)を含有して成る。
【0040】
本発明の好適な典型的粉砕助剤組成物は下記の成分を以下に示す範囲のパーセント(本組成物の総重量を基準)で含有して成る:
・ 態様1:水(10−30%)、トリエタノールアミン(10−80%)およびバイオ燃料由来グリセリン(10−80%)
・ 態様2:水(10−30%)、トリイソプロパノールアミン(10−80%)およびバイオ燃料由来グリセリン(10−80%)
・ 態様3:水(0−40%)、硫酸錫(40−70%)およびバイオ燃料由来グリセリン(10−60%)
・ 態様4:硝酸カルシウム(20−40%)、亜硝酸カルシウム(15−30%)、臭化カルシウム(2−5%)、バイオ燃料由来グリセリン(2−10%)および水(25−41%)。
・ 態様5:水(15−65%)、スクロース(10−30%)、ラウリルエーテルスルフェート(5−15%)およびバイオ燃料由来グリセリン(20−40%)
【0041】
本発明のさらなる典型的な組成物および方法では、セメント粉砕工程の効率が向上するように、バイオマス由来ポリオール(例えばバイオ燃料由来グリセリン)に修飾をポリオール(例えばジオール、例えばグリコールなど、またはトリオール、例えばグリセロールなど)と一塩基性カルボン酸(例えば酢酸)を反応させることで受けさせることも可能である。例えば、Serafinの米国特許第4,643,362号(本明細書の共通譲受人が所有)は、ポリオール、例えばモノおよびポリアルキルジオールおよびトリオールなどと一塩基性カルボン酸(例えば酢酸、蟻酸、プロピオン酸)を反応させることで生じさせたジエステルが水硬性セメント、例えばポートランドセメントなどを粉砕する時の優れた粉砕助剤であることを教示した。従って、本発明者らは、前記Serafinの修飾を用いてまた本発明のバイオマス由来ポリオール(バイオ燃料由来グリセリンを包含)に修
飾を受けさせることでも優れた粉砕助剤を得ることができると考えている。
【0042】
本発明のさらなる典型的な組成物および方法では、バイオマス由来ポリオール、例えばバイオ燃料由来グリセリンなどに置換、例えばアルコール基(OH)のいずれかに適切な元素または基、例えばハロゲンまたは有機エステル基の中の1つなどによる置換を受けさせることも可能である。セメント粉砕効率ばかりでなく完成セメントの特性を向上させる目的でグリセロールの置換を用いることに関する概念はBechtoldの米国特許第2,203,809号に開示されている。本発明者らは、バイオマス由来ポリオール、例えばジオールおよび/またはトリオールなどに前記Bechtoldの方法を用いた置換を受けさせることでセメント粉砕効率を良好にすることができると考えている。従って、好適なバイオマス由来ポリオールには、グリセロールモノクロロヒドリンおよび他の同様なハロゲン置換化合物、グリセロールのモノ酢酸エステルおよびエチル、プロピル、ブチルの系列の他の相当するエステルが含まれる。グリセロールのモノ酢酸エステルはまたモノ−アセチンとしても知られており、これはアルファおよびベータ異性形態を有するが、これらのいずれかまたは両方が適切であると考えている。
【0043】
本粉砕助剤の量は幅広い範囲内で多様であり得るが、本粉砕助剤を粉砕を受けさせる鉱物の固体の重量を基準(即ち「固体を基準にした固体」または「s/s」)にして好適には0.001から1.0重量%(添加剤の固体の)、より特別には0.005から0.05重量%の量で用いる。添加する本粉砕助剤の量には上限はないが、添加する量は一般に最も効率の良い製粉工程で所望の表面積を得るに必要な量のみである。
【0044】
本発明のバイオマス由来ポリオール系粉砕助剤を好適には単独で添加するが、また、上述した如き1種以上の通常の粉砕助剤または他の添加剤と一緒に添加することも可能である。
【0045】
本発明のさらなる典型的な組成物および方法は、更に、少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールおよび少なくとも1種の六価クロロ含有減水剤(硫酸鉄、硫酸錫、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ジチオン酸ナトリウム、硫酸マンガン、アルデヒドまたはこれらの混合物を含有)を用いることも包含する。
【0046】
本発明のさらなる典型的な粉砕助剤組成物および方法では、少なくとも1種の(A)バイオマス由来ポリオールを(B)通常のセメント用添加剤、(C)減水用添加剤および/または(D)六価クロム含有添加剤から選択した少なくとも1種の添加剤もしくは添加剤混合物と一緒にしてもよい。
【0047】
例えば、バイオ燃料由来グリセリンを通常のセメント用添加剤、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンまたはこれらの混合物など、減水用添加剤、例えばリグノスルホン酸塩(例えばリグノスルホン酸カルシウム)、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物またはこれらの混合物など、六価クロロ含有減水剤、例えば硫酸鉄、硫酸錫、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ジチオン酸ナトリウム、硫酸マンガン、アルデヒドまたはこれらの混合物など、または前記成分の任意組み合わせと一緒に用いてもよい。
【0048】
本発明のさらなる方法では、バイオマス由来ポリオールをこれが実質的にジオールを含有しないように選択してもよく、従って、それはバイオマス由来グリセリン(例えばバイオ燃料由来グリセリン)を含んで成っていてもよく、そしてそれをセメントクリンカーを製造する時の原料製粉における粉砕助剤として用いてもよい。
【0049】
この上で行った考察は単に例示の目的で示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものでない。
【0050】
以下本発明の主な特徴と態様を列挙する。
1.ジオール、トリオールまたはこれらの混合物から選択した少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールを含有して成る粉砕助剤組成物を粒子に導入することを含んで成る粒子の粉砕効率の向上方法。
2.前記粉砕助剤組成物が更にグリコール(前記バイオマス由来ポリオールがトリオールの場合)、トリエタノールアミン、酢酸またはこれの塩、トリイソプロパノールアミン、酢酸ナトリウム、ジエタノールイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、炭水化物、ポリカルボキシレートエーテル、空気連行剤、塩化物、亜硝酸塩および硝酸塩から成る群から選択した少なくとも1種の通常の粉砕助剤も含有して成る1.記載の方法。
3.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールがバイオ燃料由来グリセリンである1.記載の方法。
4.前記バイオ燃料由来グリセリンのグリセロール含有量がグリセリンの総重量を基準にして80%以上から95%以下である3.記載の方法。
5.更にグリコール、トリエタノールアミン、酢酸またはこれの塩、トリイソプロパノールアミン、酢酸ナトリウム、ジエタノールイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、炭水化物、ポリカルボキシレートエーテル、空気連行剤、塩化物、亜硝酸塩および硝酸塩から成る群から選択した少なくとも1種の成分も含める4.記載の方法。
6.前記粉砕助剤組成物が水を10%以上から30%以下の量、トリエタノールアミンを10%以上から80%以下の量および前記バイオ燃料由来グリセリンを10%以上から80%以下の量で含有して成る3.記載の方法。
7.前記粉砕助剤組成物が水を10%以上から30%以下の量、トリイソプロパノールアミンを10%以上から80%以下の量および前記バイオ燃料由来グリセリンを10%以上から80%以下の量で含有して成る3.記載の方法。
8.前記粉砕助剤組成物が水を0−40%の量、硫酸錫を40%以上から70%以下の量および前記バイオ燃料由来グリセリンを10%以上から60%以下の量で含有して成る3.記載の方法。
9.前記粉砕助剤組成物が更に硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムまたはこれらの混合物も含有して成る3.記載の方法。
10.前記バイオマス由来ポリオールを一塩基性カルボン酸と反応させることで前記ポリオールに修飾を受けさせる1.記載の方法。
11.前記バイオマス由来ポリオールの1個以上のOH基が置換されている1.記載の方法。
12.前記粉砕助剤組成物がバイオマス由来ジオールを5%以上から95%以下の量、バイオマス由来トリオールを10%以上から90%以下の量およびグリセリン以外の有機物を0.005%以上から50%以下の量で含有して成っていてパーセントが全部前記粉砕助剤の重量を基準にしたパーセントである1.記載の方法。
13.前記粒子がセメント、セメントクリンカー、カルサイト、石灰石、アラゴナイト、貝殻、泥灰土、リモナイト、粘土、頁岩、砂およびボーキサイトから成る群から選択される1.記載の方法。
14.前記粒子が平均サイズがより微細なセメント粒子に粉砕すべきセメントクリンカーである1.記載の方法。
15.前記粒子が製粉機または回転窯で粉砕してセメントクリンカーを生じさせるが、前記粒子がセメントクリンカー製造用原料でありかつそれをカルサイト、石灰石、アラゴナイト、貝殻、泥灰土、リモナイト、粘土、頁岩、砂およびボーキサイトから成る群から選
択される1.記載の方法。
16.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールが実質的にジオールを含有しないグリセリンを含んで成る15.記載の方法。
17.1.記載の方法を用いて製造されたセメント組成物。
18.(A)少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールおよび(B)通常のセメント用添加剤、(C)減水用添加剤、(D)六価クロム含有減水用添加剤またはこれらの混合物を含んで成る少なくとも1種の添加剤もしくは添加剤混合物を含有して成るセメント粉砕助剤組成物。
19.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールが通常のセメント用添加剤と組み合わされている18.記載の組成物。
20.前記通常のセメント用添加剤がトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンまたはこれらの混合物を含んで成る19.記載の組成物。
21.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールが減水用添加剤と組み合わされている18.記載の組成物。
22.前記減水用添加剤がリグノスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物またはこれらの混合物を含んで成る21.記載の組成物。
23.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールが六価クロム含有減水剤と組み合わされている18.記載の組成物。
24.前記六価クロム含有減水剤が硫酸鉄、硫酸錫、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ジチオン酸ナトリウム、硫酸マンガン、アルデヒドまたはこれらの混合物を含有して成る23.記載の組成物。
25.前記少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールが成分BからDから選択される少なくとも2種類の成分と組み合わされている18.記載の組成物。
26.前記バイオマス由来ポリオールがバイオ燃料由来グリセリンである18.記載の組成物。
27.前記バイオマス由来ポリオールを一塩基性カルボン酸と反応させることによる修飾を前記ポリオールが受けている18.記載の組成物。
28.前記バイオマス由来ポリオールの1個以上のOH基が置換されている18.記載の組成物。
29.前記バイオマス由来ポリオールがジオールとトリオールの両方を含んで成る16.の組成物。
30.14.記載の方法を用いて製造された組成物。
31.15.記載の方法を用いて製造された組成物。