特許第5767693号(P5767693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767693流体サンプルの分析用の多機能測定チャンバを有するマイクロ流体エレメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767693
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】流体サンプルの分析用の多機能測定チャンバを有するマイクロ流体エレメント
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20150730BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20150730BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20150730BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   G01N35/00 D
   G01N35/08 D
   G01N37/00 101
   G01N21/05
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-501740(P2013-501740)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公表番号】特表2013-524184(P2013-524184A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011054069
(87)【国際公開番号】WO2011120819
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】102010013752.9
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー−デスプレ,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ローレーダー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クラウニック,クリシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】レードル,ロミ
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−52010(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0161108(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/091281(WO,A1)
【文献】 特開昭63−138236(JP,A)
【文献】 実開昭62−115144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板およびカバー層により取り囲まれるマイクロ流体流路構造物とを備える、流体サンプルの光学分析のために、発光のための発光体を含む分析ユニットと共に使用するためのテストエレメントであって、
前記流路構造物(11)は、少なくとも1つの入口開口部(17)を有する測定チャンバ(13)を備え、
前記テストエレメント(3)は、前記カバー層に面し、前記流体サンプルの前記光学分析が実行される第1のレベル(24)と、前記第1のレベル(24)が前記カバー層と第2のレベル(25)との間に配置されるように、前記第1のレベル(24)と相互接続する前記第2のレベル(25)とを有し、
前記第1のレベル(24)を通して延びる前記測定チャンバ(13)の一部分は、混合領域(15)を構成する前記第2のレベル(25)内に少なくとも部分的に延びる前記測定チャンバ(13)の一部分に接続する測定領域(14)を形成し、
前記第2のレベル(25)内に配置される前記混合領域(15)は、湾曲する床部(39)を有し、
2つの光学屈折デバイス(23、23a、23b)は、前記第1のレベル(24)内に配置され、それにより、前記流体サンプルの前記光学分析のために、前記テストエレメント(3)に入射する光は、前記第1のレベル(24)を通して前記カバー層にほぼ平行に屈折し、前記測定チャンバ(13)の前記測定領域(14)を光軸(30)に沿って横断するように屈折し、
前記入射光は、前記第1の屈折デバイス(23a)により前記カバー層に平行に屈折し、前記第2の屈折デバイス(23b)により前記テストエレメント(3)から外部に導かれる、テストエレメント。
【請求項2】
前記測定チャンバ(13)の前記混合領域(15)は、前記流体サンプルと反応し、前記流体サンプル中の分析物質を検出するための試薬を含むことを特徴とする、請求項1に記載のテストエレメント。
【請求項3】
前記試薬は、固体状であり且つ乾燥状態であることを特徴とする、請求項2に記載のテストエレメント。
【請求項4】
前記測定チャンバ(13)は、前記入口開口部(17)が配置される副チャンバ(34)を備え、前記副チャンバ(34)は、前記テストエレメント(3)の前記第1のレベル(24)内に配置され、前記副チャンバ(34)の高さは、最大で、前記カバー層に垂直な前記第1のレベル(24)の高さであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のテストエレメント。
【請求項5】
前記副チャンバ(34)は、前記測定チャンバ(13)内の前記流体サンプルの光学分析用の光線により妨害されないように配置されることを特徴とする、請求項に記載のテストエレメント。
【請求項6】
平面(16)は、前記測定チャンバ(13)の前記測定領域(14)と、前記測定チャンバ(13)内への前記入口開口部(17)との間に配置され、水平面領域(36)は、前記水平面(16)と前記カバー層との間に形成され、前記測定チャンバ(13)の前記測定領域(14)の高さ未満である、前記カバー層に垂直な高さを有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のテストエレメント。
【請求項7】
傾斜面(37)は、前記測定領域(14)と前記水平面(16)との間に配置されることを特徴とする、請求項に記載のテストエレメント。
【請求項8】
前記傾斜面(37)の前記測定領域(14)に面する一方の端部は、前記測定領域(14)と前記混合領域(15)との間の遷移部分に配置されることを特徴とする、請求項7に記載のテストエレメント。
【請求項9】
前記測定チャンバ(13)の前記混合領域(15)の前記床部(39)は、球状部分(26)の形態であことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のテストエレメント。
【請求項10】
前記球状部分(26)の形態は半球状であることを特徴とする、請求項9記載のテストエレメント。
【請求項11】
前記測定チャンバ(13)は、前記測定領域(14)および前記混合領域(15)を備える測定キュベット(28)を含み、前記測定キュベット(28)の対向する側壁(41)が前記測定領域(14)の領域内で前記カバー層にほぼ垂直に向くことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のテストエレメント。
【請求項12】
前記測定チャンバ(13)の前記測定キュベット(28)は、円筒形状に形成されることを特徴とする、請求項11に記載のテストエレメント。
【請求項13】
前記測定キュベット(28)は、2つの隣接する円筒(22a、22b)を含む二重円筒(22)の形態で構成され、各円筒(22a、22b)は、前記テストエレメント(3)の前記第2のレベル(25)内に湾曲した床部(39)を有することを特徴とする、請求項12に記載のテストエレメント。
【請求項14】
前記2つの隣接する円筒(22a、22b)は部分的に重なることを特徴とする、請求項13に記載のテストエレメント。
【請求項15】
分析ユニット(2)および請求項1から10のいずれか一項に記載のテストエレメント(3)を備える、流体サンプルの光学分析用の分析システムであって、
前記分析ユニット(2)は、前記テストエレメント(3)を保持するためのホルダ(4)、測定評価デバイス(10)、受光器(9)、および発光するための発光体(8)を備え、
光学分析のために、前記テストエレメント(3)は、基板(12)と、前記基板(12)および前記カバー層により取り囲まれるマイクロ流体流路構造物(11)とを備え、
前記流路構造物(11)は、少なくとも1つの入口開口部(17)を有する測定チャンバ(13)を備え、
前記テストエレメント(3)は、前記カバー層に面し、前記流体サンプルの前記光学分析が実行される第1のレベル(24)と、前記第1のレベル(24)が前記カバー層と第2のレベル(25)との間に配置されるように、前記第1のレベル(24)と相互接続する前記第2のレベル(25)とを有し、
前記第1のレベル(24)を通して延びる前記測定チャンバ(13)の一部分は、混合領域(15)を形成する前記第2のレベル(25)内に少なくとも部分的に延びる前記測定チャンバ(13)の一部分に接続する測定領域(14)を形成し、
前記流体サンプルの前記光学分析に使用される光は、前記光が前記測定チャンバ(13)の前記測定領域(14)を光軸(30)に沿って横断するように、前記第1のレベル(24)を通して前記カバー層にほぼ平行に導かれ、
前記第2のレベル(25)内に配置される前記混合領域(15)は、湾曲するように構造化される床部(39)を有する、分析システム。
【請求項16】
前記分析ユニット(2)の前記ホルダ(4)は、前記ホルダ(4)内に保持されるテストエレメント(3)を前記ホルダ(4)の回転軸(7)の周りに回転させることができるように、前記回転軸(7)の周りに回転可能であことを特徴とする、請求項15に記載の分析システム。
【請求項17】
前記回転軸(7)は、前記保持されたテストエレメント(3)を通して延びることを特徴とする、請求項16に記載の分析システム。
【請求項18】
流体サンプルの光学分析用の方法であって、
基板(12)と、前記基板(12)およびカバー層により取り囲まれ、少なくとも1つの入口開口部(17)を有する測定チャンバ(13)を備える、マイクロ流体流路構造物(11)とを含む請求項1から12のいずれか一項に記載のテストエレメント(3)を提供するステップであって、前記テストエレメント(3)は、前記カバー層に面する第1のレベル(24)と、前記第1のレベル(24)が前記カバー層と第2のレベル(25)との間に配置されるように前記第1のレベル(24)と相互接続する前記第2のレベル(25)とを有し、前記第1のレベル(24)を通して延びる前記測定チャンバ(13)の一部分は、混合領域(15)を構成し、湾曲する床部(39)を有する前記第2のレベル(25)内に少なくとも部分的に延びる前記測定チャンバ(13)の一部分に接続する測定領域(14)を形成する、ステップと、
前記流体サンプルが、前記入口開口部(17)を通して前記測定チャンバ(13)に流れ込むことを可能にするステップと、
前記混合領域(15)および前記測定領域(14)に前記流体サンプルを充填するステップと、
前記混合領域(15)内に含まれ試薬を提供するステップと、
前記測定領域(14)および前記混合領域(15)内で前記流体サンプルを前記試薬と均質に混合するステップと、
光が前記第1のレベル(24)を通して前記カバー層にほぼ平行に導かれ、前記光が前記測定チャンバ(13)の前記測定領域(14)を光軸(30)に沿って横断するように、前記流体サンプルの光学分析用の前記テストエレメント(3)内に光を導くステップと、
前記光が前記テストエレメント(3)を出るように前記光を分離するステップと、
分析ユニット(2)の測定評価デバイス(10)の受光器から前記光を受け取り、それを評価するステップとを含む、方法。
【請求項19】
前記試薬は乾燥状態である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記テストエレメント(3)の前記カバー層に垂直な発光体(8)を使用して発光するさらなるステップと、
前記光が前記テストエレメントの前記第1のレベル(24)を通して前記カバー層にほぼ平行に導かれるように、屈折デバイス(23)を使用して前記光を屈折させるさらなるステップと、
前記光が、前記測定領域(14)を横断した後、分析ユニット(2)の受光器(9)に導かれるように、前記カバー層に垂直に前記光を屈折させるさらなるステップとを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記分析ユニット(2)のホルダ(4)内に前記テストエレメント(3)を保持するさらなるステップと、
前記流体サンプルの運動を駆動させ、前記流体サンプルを前記測定チャンバ(13)内に導くために、回転軸(7)の周りに前記テストエレメントを回転させるさらなるステップと、
前記テストエレメント(3)の回転中に、発光および受光をパルス状にするさらなるステップとを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、基板およびカバー層により取り囲まれるマイクロ流体流路構造物とを有する、流体サンプルの光学分析用のテストエレメントに関する。この流路構造物は、流体サンプル用の入口開口部を有する測定チャンバを示す。
【背景技術】
【0002】
診断テスト(体外診断)では、液体サンプルを分析し、流体を試薬と完全に混合するのに、マイクロ流体エレメントが使用される。体液は、医療目的で、その中に含まれる分析物質をテストされる。このために、流体は、液体試薬などの試薬と混合される。試薬が固体であれば、試薬は、流体により溶解され、均質化される。
【0003】
検出キュベットとして構成される、このタイプの測定チャンバが知られている。これらの測定チャンバは、回転テストエレメントまたは遠心テスト担体(ディスク)に挿入されるのが好ましい。流体中の分析物質を検出するのに適当な反応を実行するために、テストエレメントの流体構造物内で、方法の必要なステップが実行される。回転軸の周りに回転する遠心テスト担体は、例えば、EP1916524A1により知られている。
【0004】
回転および非回転の両テスト担体または両テストエレメントは、それぞれ、流体サンプルを収容するマイクロ流体流路構造物を有する。これらの流路構造物は、複雑な複数のステップのテスト手順(テストプロトコル)を実行することができるように、しばしば、複数のチャンバを備える。そうした担体は、一般に少なくとも1つの流体流路構造物を有し、複数のテストを並行して実行することができるように、しばしば複数の流体流路構造物を有する。
【0005】
いわゆる乾燥化学テストエレメントでは、テストに必要な試薬は、最初に、試薬チャンバ内に液体状態で、およびその中に乾燥状態で導かれる。試薬は、通常、流体サンプルを使用して溶解される。均質な流体サンプルを生成するために溶解し、完全に混合した後、混合流体は、別の流路を介して、試薬および混合チャンバから、分析または測定チャンバ内に導かれ、流体サンプル中の特定の分析物質を検出し、それを特定するために、流体サンプルの評価が行われる。
【0006】
サンプル流体は、テストエレメント中の試薬と反応し、テスト分析物質と明確な関係を有する測定パラメータの変化をもたらす。測定パラメータのこの変化は、テスト担体自体内で測定される。電気化学評価方法に加えて、色の変化または他の光学的に測定可能なパラメータが検出される、光学的評価方法が定常の方法である。
【0007】
したがって、テスト担体および流体エレメントは、担体材料、通常はプラスチック材料から形成される基板から構成され、基板は、光学的評価方法の場合には、少なくとも測定チャンバの領域では、少なくとも部分的に透明または不透明である。適当な材料の例は、COC(シクロオレフィンコポリマー)、またはPMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン、もしくはポリイミドなどのプラスチックである。
【0008】
テストエレメントは、基板および蓋またはカバー層により取り囲まれる流路構造物を有する。一連の複数の流路部分および拡張チャンバから構成される流路構造物は、基板または担体材料の構造化により規定される。
【0009】
マイクロ流体テストエレメント内のサンプル流体の制御された運動は、流体に作用する外力を作ることにより達成される。この力は、回転軸の周りの回転または並進運動などの、テストエレメントの運動により作ることができる。テストエレメントが静止しているとき、例えば、圧縮空気を流路構造物内に導くことにより、または水圧により駆動力を作ることができる。それに加えて、制御のために使用される構造物によって使用することができる、毛管力が作用する可能性がある。
【0010】
流体中の分析物質の検出は、免疫学的検出方法を使用して実行することができる。流体サンプル中の成分を検出するための他の検出方法も使用することができる。検出に必要な試薬が固体状で存在する固相でも、検出反応を行うことができる。免疫学的検出方法が使用されるとき、例えば、結合抗体は、適当な測定チャンバの表面上に固体状で存在することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
テスト担体を開発するときに解決すべき問題は、測定前に、サンプルを所望の試薬と可能な限り均質に混合することである。同時に、使用されるテストエレメントおよびマイクロ流体流路構造物は、1つのテスト担体上に可能な限り多くの並行流路構造物を作るために、さらにより小型になっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有するマイクロ流体テストエレメント、請求項13の特徴を有する、流体サンプルの光学的分析用の分析システム、および請求項15の特徴を有する、光学的分析用の方法により達成される。
【0013】
流体サンプルの光学分析用の本発明によるマイクロ流体テストエレメントは、基板およびカバー層または蓋により取り囲まれるマイクロ流体流路構造物を有する基板を備える。基板は、流体サンプル中の分析物質の光学検出を実行することができるように、透明または不透明であるのが好ましいプラスチック材料から構成される。基板は、成型可能なプラスチック材料であるのが好ましい。基板は、単純で、安価に作成され、所望の高精度構造物(流路構造物)を作成するのを可能とする。適当な成形方法の例は、射出成形法、ホットスタンピング、または一体型成形部分作成用の他の方法である。あるいは、ミル加工などの材料を除去する方法を使用することができる。
【0014】
テストエレメントの流路構造物は、流路構造物の一部分も形成する流入流路が接続される、少なくとも1つの入口開口部を有する多機能測定チャンバを備える。測定チャンバは、流体流の方向の流路構造物の端部に配置されるのが好ましい。
【0015】
テストエレメントは、カバー層に面する第1のレベルを有する。第1のレベルは、基板の上面およびカバー層に平行に延びるのが好ましい。第1のレベルでは、流体サンプルの光学分析が実行され、その中に含まれる分析物質を特定する。テストエレメントは、第1のレベルがカバー層と第2のレベルとの間に位置するように第1のレベルに接続する第2のレベルを有する。
【0016】
測定チャンバは、測定領域および混合領域を備え、測定領域は、第1のレベルを通して延びる測定チャンバの一部分により形成される。測定チャンバの混合領域は、第2のレベル内で延びる測定チャンバの一部分により形成される。測定領域および混合領域は、カバー層に垂直に交互に位置するように互いに配置されるのが好ましい。第2のレベルに配置される測定チャンバの混合領域は、湾曲するように構成される床部を有する。流体サンプルの光学分析に使用される光は、光軸に沿って測定チャンバの測定領域を通るように導かれる。それにより、光は、第1のレベルを通してカバー層に平行に基板の上面にそれぞれ導かれるのが好ましい。そうするとき、測定チャンバの測定領域内にある流体の一部分が、光学的に分析される。混合領域内に位置する流体の一部分は、分析されない。したがって、流体全体が均質および完全に混合されるのが重要である。流体サンプルの完全混合は、本明細書に幾何学的に画定される混合領域内だけで起こらず、混合機能に関しては一体型領域を形成する隣接測定領域内で行われる。
【0017】
本発明による測定チャンバは、光学測定がその中で実行されるだけでない利点を有する。測定チャンバは、流体中の成分の検出に必要な、さらに多い機能も担う。これらの機能は、例えば、流体の混合および完全な混合、または流体中の試薬の溶解とすることができる。混合領域の湾曲床部を有する測定チャンバ用の適用可能な幾何学的構造物は、流体の信頼性の高い混合をもたらす。したがって、試薬を溶解し、または流体が均質になるように流体を互いに混合する、流路構造物内の別のチャンバを提供することは全く必要ない。多機能測定チャンバの形態で測定チャンバ内での混合機能と測定機能とを組み合わせることは、テストエレメントの実質的なスペースを節約する。
【0018】
好ましい実施形態では、試薬が、流体サンプルのテスト分析物質を検出するために測定チャンバ内に存在する。試薬は、固体状であるのが好ましい。一般に、試薬は乾燥している。試薬を混合領域内に導くために、カバー層が基板から除去され、または、液体試薬が、カバー層のない常時開放マイクロ流体流路構造物内に作成中に導かれる。
【0019】
通常、試薬は、強い湿潤特性を示すので、本発明に関しては、測定チャンバの混合領域は、一方では、試薬を導き、それを乾燥することを可能にし、他方では、乾燥した試薬を再懸濁し、それを適切に均質化することができるように形成される必要があることがわかった。それに加えて、流体の完全な混合は、迅速および高品質でなければならない。
【0020】
本発明に関しては、混合領域内に湾曲床部を有する測定チャンバは、完全混合または試薬の再懸濁に有利なだけではないことがわかった。鋭角の端部および隅部がないことにより、液相中に存在する試薬が、測定チャンバの隅部の大きい毛管力によりキャビティを出ること、したがって、反応で部分的に失われることを防止する。特に、プラスチック面上の乾燥する必要がある多くの試薬は、強い湿潤特性を示す。したがって、好ましい実施形態では、測定チャンバの測定領域は、湾曲する上部境界面を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、混合領域は、完全混合を加速するために別の構造化エレメントを備えることができる。これらの構造化エレメントは、例えば、隔壁、隆起部、および陥没部または同様の幾何学的要素とすることができる。追加的隔壁は、試薬が乾燥されるとき、試薬の分布が可能な限り均一になるように、どんな端部も有しない混合領域の上面とも接合すべきである。
【0022】
好ましい実施形態では、混合領域の床部は、球状、好ましくは半球状の部分である。混合領域の床部は、球状または半球状の部分として形成されるのが好ましい。混合領域の床部は、長円形、楕円形、または部分円の断面を有することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、測定チャンバは、その中で乾燥された試薬が測定チャンバの混合領域のみに存在するように構成される。測定チャンバの形状のために、試薬の強い湿潤特性にかかわらず、試薬は、測定チャンバの測定領域に到達しない。検出レベルとも呼ばれ、分析物質が測定される上部の第1のレベルと、乾燥および流体の混合のための構造物が第1のレベルの下に配置される第2のレベルとを有する、テストエレメントの2層構造のために、一方の測定と、他方の試薬の混合/乾燥/溶解との間で明確に分離される。乾燥構造物は、光学測定用の測定光線の径路の外部に配置される、測定チャンバ内の陥没部と一体化される。したがって、測定に対する妨害は、例えば、乾燥した試薬のために二重安全方式で回避される。
【0024】
したがって、本発明によるテストエレメントの概念は、複数の機能を一体化する測定チャンバを提供する。測定チャンバは、流体流の径路の終点に配置されるのが好ましいので、流体の試薬との混合は、時間的に測定前および/または測定中に行われる。流路構造物を通して測定チャンバ内に入る径路での容積および試薬損失が回避される。流路構造物は、複数の機能が測定チャンバ内で組み合わされるので、極めて小型であり、その結果、複数の流路構造物を1つのテストエレメントと一体化し、または1つのテストエレメント上に互いに平行に配置することができる。混合領域に追加的構造物を一体化することにより、試薬の液体媒体との均質化をさらに加速および改善することができる。さらに、有利なことに、測定チャンバ内に適用可能な排気構造物を設けることができる。さらに、本発明による測定チャンバは、光路が妨害されないので、1つおよび同じ測定デバイスによる二重安全の検査を実行することを可能にする。1つの可能な二重安全の特徴は、例えば、測定チャンバに流体を充填する手順の完了前およびその後の、吸収量または別の光学的パラメータの段階的な特定により、測定チャンバを正しく完全に充填したことをチェックすることである。
【0025】
測定チャンバ内の様々な流体の混合挙動を観測することができるように、乾燥試薬の再懸濁中に測定を実行することもできる。本発明による測定チャンバは、連続または半連続(周期的)測定を実行することも可能にする。
【0026】
光学測定は、本発明による測定チャンバ内の第1のレベルで、チャンバの測定領域内の光軸に沿って実行される。用語「光軸」は、光学分析用の光線が通過する直線を意味するものと理解されたい。好ましい実施形態では、光線は、測定領域の長手方向軸と一致するように測定領域を通して導かれる。カバー層の面の垂線に垂直な測定チャンバの測定領域の最大寸法が、長手方向軸と呼ばれる。したがって、長手方向軸は、テストエレメントの第1のレベルにほぼ平行に延びる。好ましい実施形態では、測定チャンバは、カバー層および光軸に垂直に向く、互いに反対に着座する2つの平行な壁を有する測定キュベット(検出キュベットとも呼ばれる)である。したがって、光は、測定領域に入り、可能な限り散乱しないように反対側の壁から出ることができる。測定領域および混合領域は、共に測定キュベットまたは検出キュベットを形成するのが好ましい。
【0027】
原理上、本発明によるテストエレメントは、任意のタイプのテスト担体に挿入することができる。例えば、これらのテストエレメントは、テストストリップ状の流体デバイス内で使用することができる。しかし、これらのテストエレメントは、流路構造物を有する検出カセットと一体化することもできる。特に好ましいことに、本発明によるテストエレメントを、回転軸の周りに回転する遠心テスト担体として使用することができる。その際、テストエレメントの回転は、流体の運動を制御する。回転の交互の加速および減速(EP1894617などに説明されるシェークモードとして知られている)は、迅速な完全混合、および乾燥試薬の溶解をもたらす。
【0028】
特に、遠心テスト担体および回転テストエレメント内でしばしば使用される、複雑な流体システムによっては、分析すべき流体混合物の量をしばしば確実に制御することができない。本発明に関しては、測定チャンバの充填高さに変化が何度も変化が起こることがわかった。したがって、有利な実施形態では、測定チャンバは、入口開口部が配置される副チャンバを備える。副チャンバは、テストエレメントの第1のレベル内に配置され、副チャンバは、最大で、カバー層に垂直な第1のレベルの高さと同じ高さである。副チャンバは、測定領域および混合領域、すなわち測定チャンバの測定キュベットから分離しているが、それらの間は流体連通している。このように、余分の流体は、副チャンバ内に捕集および保存することができる。したがって、測定領域内でテストすべき流体の容積は、測定キュベットまたは測定チャンバが「過剰充填」されたときでも、一定に保つことができる。
【0029】
本発明に関しては、測定チャンバ内で乾燥試薬を溶解するとき、気泡および泡は、時々形成されることがわかった。この泡形成は、分析結果を変化させ、光学測定を乱す。測定チャンバは、排気通路内に開放する排気開口部を有するのが好ましい。排気通路は、測定チャンバから空気を逃がすことができる。排気開口部は、測定チャンバの副チャンバ内に配置されるのが好ましい。
【0030】
好ましい実施形態では、測定チャンバは、水平面とカバー層との間の水平面領域を有する、測定領域と入口開口部との間の水平面を有する。カバー層に垂直な水平面領域の高さは、測定チャンバの測定領域の高さ未満である。水平面は、テストエレメントの第1のレベル内に配置される。水平面は、副チャンバと、測定チャンバの測定領域との間に配置されるのが特に好ましい。水平面は、流体流を入口開口部内に戻すことなく、空気を排気開口部に到達させる。このように、測定領域内で形成された気泡を副チャンバ内に導くことができる。それにより、測定領域から気泡をなくす。このことは、測定領域内での信頼性の高い測定を確実にする。
【0031】
回転テストエレメントを使用するとき、副チャンバは、回転軸までのその距離が、測定チャンバの測定領域の回転軸までの距離未満となるように配置される。このように、テストエレメントの回転は、空気よりも密度の高い流体を、回転軸から離れた測定領域内に押し込む一方、「より軽い」空気は、回転軸により近い副チャンバ内に到達する。用語「回転軸から離れた」および「回転軸からより離れた」、または「回転軸に近い」もしくは「回転軸により近い」は、回転軸に関して、あるエレメントの他方のエレメントに対する相対位置を示す。したがって、回転軸から離れたエレメントは、他方のエレメントよりも回転軸からより大きい距離にあり、回転軸に近い、または回転軸により近いエレメントは、他方のエレメントよりも回転軸までより小さい距離にある。
【0032】
本発明の目的は、分析ユニットおよびテストエレメントを備える、流体サンプルの光学分析用の分析システムにより解決される。本発明の分析ユニットは、テストエレメントおよび測定評価デバイスを保持するホルダを有する。分析ユニットは、発光する発光体と、受光する受光器とを備える。光学分析用の、本発明によるテストエレメントは、基板と、基板およびカバー層に取り囲まれるマイクロ流体流路構造物とを有する。
【0033】
好ましい実施形態では、分析ユニット用のホルダは、回転軸の周りに回転可能である。ホルダ内に保持されるテストエレメントは、分析ユニットホルダの回転軸の周りに回転する。回転軸は、保持されるテストエレメントを貫通するように配置されるのが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態では、分析システムは、流体サンプルの光学分析がテストエレメントの回転中に実行されるように構成される。したがって、発光はパルス状である。したがって、放射光が受光器で受け取られ、次いで測定評価ユニットを使用して評価することができるまで、放射光が測定チャンバの測定領域を通る光軸に沿って通過する位置にテストエレメントが配置されるとき、分析ユニットの発光体は、定常的に発光する。
【0035】
流体サンプルの光学分析は、本発明による方法を使用して自動的または半自動的に実行される。最初に、本発明によるテストエレメント、請求項1の特徴を有するエレメントが提供されるのが好ましい。次のステップでは、テスト用の流体サンプルは、入口開口部を通して測定チャンバに流れ込むことが可能である。次に、測定チャンバの混合領域および測定領域が充填され、測定チャンバ内に含まれる試薬が適される。試薬は、乾燥するのが好ましい。次のステップでは、流体サンプルは、流体サンプルと均質に混合される。あるいは、混合領域内に試薬がないとき、流体サンプルは、測定領域および混合領域内で均質に分配および混合される。適宜、2つの流体を互いに均質に混合することも可能である。
【0036】
次のステップでは、流体サンプルの光学分析用の光が、テストエレメント内に導かれる。したがって、光は、第1のレベルを通してテストエレメントのカバー層にほぼ平行に導かれ、その結果、光は、測定領域および測定チャンバを光軸に沿って貫通する。このように、光は、測定領域内に含まれる流体サンプルを通して導かれる。
【0037】
次のステップでは、光は、テストエレメントから分離され、その結果、光は、テストエレメントを出る。次いで、光は、分析ユニットの測定評価デバイスにより受け取られ、評価される。測定光線がテストエレメントの上面にほぼ平行な平面内の測定領域を通して導かれる、光学測定のタイプは、「面内検出」と呼ばれる。
【0038】
したがって、血液または血漿などの体液であるのが好ましい流体サンプルの試薬との均質な混合は、混合流体の測定および分析と同じ測定チャンバ内で行われる。混合後、流体を別のチャンバに輸送する必要はない。これは、測定をより迅速に実行することができる利点を有し、それに加えて、流体の輸送中に別のマイクロ流体流路構造物を濡らすことによっては流体は失われない。
【0039】
本発明による方法の好ましい実施形態では、光は、発光体により、テストエレメントのカバー層に垂直に放射される。第1の屈折デバイスを使用して、光は、カバー層に平行な第1のレベルを通して導かれるように屈折する。光は、流体サンプルを含む測定領域を横断した後、光を分析ユニットの受光器により受け取ることができるように、別の屈折デバイスにより、もう一度カバー層に垂直に屈折する。
【0040】
本発明による方法の好ましい実施形態では、本方法は、分析ユニットにより自動的に実行され、最初に、テストエレメントは、分析ユニットのホルダ内に保持される。テストエレメント内の流体サンプルの運動は、テストエレメントのホルダの回転軸と同じ回転軸の周りのテストエレメントの回転により制御される。したがって、流体サンプルは、テストエレメントの回転により測定チャンバ内に導かれる。交互に加速および減速される「シェークモード」でテストエレメントを駆動することもできる。
【0041】
発光および受光は、テストエレメントの回転中に実行されるのが好ましい。したがって、流体サンプルの光学分析は、テストエレメントが分析ユニットのホルダ内で回転する間に実行される。したがって、光は、ストロボなどによりパルスを発生させるのが好ましい。
【0042】
特定の実施形態では、テストエレメントの測定チャンバは、副チャンバを備える。本発明による方法が実行される間、測定チャンバ内に含まれる空気は、測定チャンバの測定領域および混合領域に所望の量の流体を充填するように流体を駆動することにより副チャンバに押し込まれる。それにより、余分の流体は、測定領域および混合領域から副チャンバ内に導かれる。
【0043】
ここで、本発明は、図に示す特定の実施形態を用いて、より詳細に説明される。その中に開示した特定の特徴は、本発明の好ましい実施形態を作成するために、個別に、または組み合わせて使用することができる。本発明を明示および例示するために、テストエレメントは、回転テストエレメントを用いて説明するが、そのために説明される、すべての特徴および詳細は、回転テストエレメントにはっきりと触れない場合も、非回転、並進移動、または静止する非運動テストエレメントと共に使用することができる。説明される例示的な実施形態は、通常、特許請求の範囲に規定される発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】テストエレメント用のホルダを有する、テストエレメントおよび分析ユニットを含む分析システムを示す図である。
図2】本発明によるテストエレメントの第1の実施形態を示す図である。
図3】本発明によるテストエレメントの別の実施形態を示す図である。
図4】測定チャンバを有するテストエレメントの流路構造物の詳細を示す図である。
図5】線B−Bに沿ってテストエレメントを切り取った部分を示す図である。
図6】線C−Cに沿ってテストエレメントを切り取った部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、分析ユニット2およびテストエレメント3を有する、本発明の分析システム1を示す。分析ユニット2は、テストエレメント3が保持されるホルダ4を備える。本明細書に例示する特定の実施形態では、ホルダ4は、モータ6により駆動されるシャフト5の周りに回転可能である。シャフト5と同軸の回転軸7は、この場合、テストエレメント3を貫通する。明らかに、テストエレメント3用のホルダ4が固定される、分析ユニット2を想起することもできる。同様に、回転運動の代わりに、並進運動を実行することができる。
【0046】
本発明によれば、分析ユニット2は、発光体8、受光器9、および測定評価デバイス10を備える。発光体は、LEDまたは別の光源などを含む。発光体は、光または他の電磁放射線を放射する。放射光は、可視または不可視領域内とすることができ、X線または他の電磁放射線を含むことができる。以下、非限定的な用語「光」を使用する。光は、最終的に受光器9に到達するまで、テストエレメントを通して導かれるように案内される。受光器9は、フォトダイオードとすることができる。受光器9で検出される信号は、テストエレメント3内の流体中の分析物質またはその濃度を特定することができるように、測定評価デバイス10により評価される。
【0047】
図2は、複数のチャンバおよび流路を有するマイクロ流体流路構造物11を含む、本発明によるテストエレメント3の特定の実施形態を示す。テストエレメント3は、透明または不透明なプラスチック材料から構成される基板12を備える。基板12は、光学測定が可能となるように、不透明または透明であるのが好ましい。基板の特性および透明度は、光学測定に使用される光に依存する。
【0048】
流路構造物11は、基板12、および図に示されない蓋またはカバー層により取り囲まれる。測定領域14、混合領域15、および水平面16を備える、測定チャンバ13が、流路構造物11の端部にある。混合領域15および測定領域14は、この場合、アメリカンフットボール(回転楕円体)の形状であり、長円形の断面を有する。測定チャンバ13は、流路18に接続される、2つの入口開口部17を有し、流路自体は、流路構造物の別のチャンバ19で終了する。測定チャンバ13は、排気通路21に接続され、測定チャンバ13内に含まれる空気を逃がすことができる、排気開口部20を備える。
【0049】
図3は、その端部に配置される測定チャンバ13を有する流路構造物11を含む、テストエレメント3の別の実施形態を示す。測定チャンバ13は、同様に、流体が隣接するチャンバ19および中間流路18から測定チャンバ13に流れ込むことができる、2つの入口開口部17を備える。測定チャンバ13は、空気を排気通路21内に逃がすことができる排気開口部20を有する。水平面16が、入口開口部17と測定領域14との間に配置される。
【0050】
本発明のテストエレメント3の測定チャンバ13は、その測定領域14がほぼ円筒形状となるように形成され、円筒領域の床部およびカバー表面は、カバー層の平面とほぼ平行となるのが好ましい。特に好ましい実施形態では、測定領域14は、2つの隣接する円筒22a、22bを有する二重円筒22の形状となる。円筒22a、22bは、部分的に重なる(図3)。混合領域部分は、カバー層の表面から見て反対に向かう方向で、基板の上面12aに垂直な、測定領域14の円筒22a、22bのそれぞれに接続され、混合領域部分は、共に混合領域15を形成するのが好ましい。
【0051】
好ましい実施形態では、テストエレメント3は、テストエレメントに入射する光を屈折させる、2つの光屈折デバイス23を備え、その結果、光は、測定チャンバ13の測定領域14を通してカバー層または基板の上面12aと平行に導かれ、測定チャンバ14の下流で光学的に接続される屈折デバイスによりテストエレメントから受光器9上に導かれる。図2および3は、それぞれ、測定領域14が2つの屈折デバイス23間に位置するように配置される、2つの屈折デバイス23を有する。屈折デバイス23は、図6により詳細に示される。このタイプの屈折デバイスのさらなる説明は、DE102005062174B3に開示されている。
【0052】
測定キュベットの範囲外の任意選択の追加的屈折デバイス42は、屈折デバイス23と対照的に、測定チャンバ13の測定領域14を通してではなく、テストエレメント3の基板などの、測定チャンバ13の外部の領域を通して光を屈折する。特に、これらの追加的屈折デバイス42は、例えば、その測定値を分析物質特定に使用される測定値(屈折デバイス23を介して得られる)と比較することができる参照測定値に使用され、それにより、装置に起因する測定システムの任意の揺動に対応し、それを補償することができる。あるいは、参照測定値は、例えば、測定チャンバ13を充填する前に、空の測定チャンバ13の初期値を生成することにより作成することもでき、参照測定値は、充填された測定チャンバ13の分析物質を検出するために参照値として使用される。
【0053】
図2および3の2つのテストエレメント3は、測定チャンバ13を最適化するために使用された。測定チャンバ13は、多機能であり、一方では、光学的評価により流体中の分析物質を測定および特定するために機能する。他方では、測定チャンバ13は、例えば、流体の混合および試薬の溶解などの他の機能も有するべきである。テストに関しては、円筒測定領域14、および湾曲床部を有する相互接続混合領域15を含む測定チャンバ13は、改善された特性を有することが示された。
【0054】
図4は、流路構造物11の詳細を上面図で示す。図4は、測定チャンバ13、および分析に使用される光用の2つの屈折デバイス23を示す。図5は、線B−Bに沿った部分を示し、図6は、図4の線C−Cに沿った部分を示す。
【0055】
測定チャンバ13は、テストエレメント3の第1のレベル24内で延びる測定領域14と、テストエレメントの第2のレベル25内で測定領域14の下に配置される混合領域15とにより形成される、測定キュベット28を有する。したがって、測定領域14は、第1のレベル24内に配置される、測定キュベット28の一部分である。混合領域15は、測定領域14の下に接続し、第2のレベル25内で延びる、測定キュベットの一部分を構成する。したがって、測定領域14および混合領域15は、測定キュベット28の共通領域を形成するように上下に配置され、したがって、流体は、どちらの領域内でも動くことができる。
【0056】
したがって、測定キュベット28は、テストエレメント3の第2のレベル25内のその下端部に、混合領域15の床部39である湾曲床部39を有する。
測定キュベット28の少なくとも2つの対向する側壁41は、分析に使用される光線が、基板12の上面12aにほぼ垂直に向きながら、測定キュベットに入り、それを出る、領域内にある。側壁41のこのほぼ垂直な領域は、テストエレメントの第1のレベル24内にある。測定領域14の側壁41は、テストエレメント3の上側の面の垂線に平行に向くのが好ましい。
【0057】
特定の実施形態では、測定キュベット28は、2つの部分的に重なる円筒22a、22bを有する二重円筒22の形態である。円筒22a、22bは、共通の測定容積を形成するように重なる。二重円筒22の床部39は、この場合、多円形である。床部39は、2つの重なる球状部分26から形成され、球状部分26間に形成される重複部分27も、湾曲している(図5、6)。
【0058】
本発明に関しては、流体の混合のために測定チャンバ13の測定キュベット28を二重円筒22として形成することは、特に有利であることがわかった。個々の円筒22a、22bのそれぞれでは、テストエレメント3が回転するとき、反対の渦が形成されるのが好ましい。これらの渦は、極めて効率的で迅速な混合および再懸濁をもたらす。
【0059】
2つの円筒22a、22bは、二重円筒22により形成される測定キュベット28が長手方向軸29に沿う方向に向かう長手方向範囲を有するように配置される。長手方向軸29は、測定チャンバ13の光軸30と一致する。光軸は、測定チャンバ13を通る光が続く径路である。分析ユニット2の発光体8により放射される光(矢印40)は、テストエレメント3の下面33から基板12を通して第1の屈折デバイス23aの第1の境界面31に導かれ、基板12の上面12a、またはテストエレメント3のカバー層(図示せず)に平行に進行するように屈折する。光は、側壁41から入り、テストエレメント3の第1のレベル24内の測定領域14を横断した後、反対の側壁41から出る。次いで、光は、第2の屈折デバイス23bの第2の境界面32で再び屈折し、その結果、光は、テストエレメントの下面33から出て、分析ユニット2の受光器9に到達する。光学的分析用の光線(矢印40)は、測定領域14のみを横断するが、混合領域15を横断せず、その結果、混合領域15内に沈殿する試薬が完全に溶解されていないとき、光学的分析はここで影響を受けない。
【0060】
テストエレメント3の上面12aに平行に光学測定を行う利点は、光路が極めて長いことである。光路の必要な長さは、流体中の測定すべき分析物質の濃度範囲に依存する。光学測定が、テストエレメント3の上面12に垂直な測定により実行されたとすれば、テストエレメント3の厚さは、大幅に大きくする必要があろう。示した例では、テストエレメントの厚さは、約4mmである。この厚さは、より多量の材料消費をもたらし、取扱いが不便になるであろう。
【0061】
測定チャンバ13は、長手方向軸29に沿った測定キュベット28の長手方向範囲が測定すべき分析物質の濃度の関数として選択されるように構成される。本発明に関しては、少なくとも4mmから8mmまでの範囲の測定キュベット28の長手方向範囲、特に6mmの長さが有利であることがわかった。測定キュベット28の長手方向範囲は、テストすべき分析物質、および分析物質の所望の濃度範囲に依存する。
【0062】
測定チャンバ13は、流体が測定チャンバに入る、2つの入口開口部17を有する。測定チャンバ13からの空気を逃がすことができる排気開口部20が、流体用の2つの入口開口部17間にある。
【0063】
好ましい実施形態では、測定チャンバ13は、中に入口開口部17が配置される副チャンバ34を備える。副チャンバ34は、テストエレメント3の第1のレベル24内に配置される。基板12の上面12aに垂直な副チャンバ34の高さは、第1のレベル24の高さ未満であるのが好ましい。第1のレベル24の高さは、基板12の上面12aに垂直な第1のレベル24の範囲である。
【0064】
好ましい実施形態では、図4からわかるように、副チャンバ34は、光軸からはずれて配置される。流体サンプル中の分析物質の光学検出用の光線40は、副チャンバ34を通して導かれない。したがって、光学分析は、副チャンバ34内に集まったどんな流体にも依存しない。
【0065】
より好ましい実施形態では、水平面16は、入口開口部17と測定領域14との間の測定チャンバ13内に配置される。水平面領域36は、水平面16と、図に示していないカバー層との間に形成され、テストエレメント3の上面12aに垂直なその高さは、測定領域14の高さ未満であり、したがって、テストエレメント3の第1のレベル24の高さ未満でもある。水平面領域36の高さは、副チャンバ34の高さ未満でもあるのが好ましい。
【0066】
好ましい実施形態では、傾斜面37が、水平面16と測定領域14との間に位置し、測定領域14に面する、傾斜面37の一方の端部は、測定領域14において第1のレベル24と第2のレベル25との間の境界面に配置される。したがって、傾斜面37の一方の端部は、測定領域14と混合領域15との間の遷移部分に配置される。測定キュベット28から傾斜面37への遷移部分、および傾斜面37から水平面16への遷移部分は、湾曲するのが好ましい。したがって、流体は、毛管現象によっては測定キュベット28から逃がすことができない。
【0067】
より好ましい実施形態では、測定チャンバ13、特にキュベット28は、湾曲形状のみを有する。水平面16への遷移部分を形成する、測定領域14の上側境界面35も湾曲している。
【0068】
傾斜面37は、水平面16と、測定キュベット28の半径方向内側円筒22aとの間に延びる。傾斜面37は、水平面16がL字形となるように配置される。測定チャンバ13の本実施形態では、水平面16は、約6.6mmの最大長さ、および副チャンバ34への遷移部分で約3.3mmの最大幅を有する。傾斜面37および湾曲する傾斜面37の端部の配置により、乾燥試薬を混合領域15内で再懸濁するとき、形成される気泡が、測定キュベット28、すなわち混合領域15および測定領域14から逃げて、測定チャンバ13の副チャンバ34内まで動くことを確実にする。傾斜面37の湾曲遷移部分は、気泡または発生泡の輸送を改善し、確実に測定キュベット28から気泡をなくす。このことにより、光路内の泡形成が測定値に影響を与え、または測定値の結果を変化させることを防止する。
【0069】
流体中の分析物質の信頼性の高い測定をするために、測定キュベット28内の充填高さが一定であることが重要である。回転テストエレメント3の流路構造物11の複雑な流体システムのために、試験すべき容積は、完全に一定に保つことができない。テストでは、測定キュベット28内の充填高さの偶発的な揺動が起こる。好ましい実施形態では、余分の流体容積は、測定キュベット28から逃げる可能性がある。余分の流体は、傾斜面37を越えて水平面16上に進み、副チャンバ34内に集められる。しかし、流体は、測定チャンバ13内に残る。このように、測定キュベット28のわずかな過剰充填を補償することができる。それに加えて、副チャンバ34により、測定チャンバ13内の空気を出すように、測定チャンバ13を充填するのが可能になる。このように、流体の混合が改善される。しかし、測定キュベット28は、同時に完全に充填される。
【0070】
テストエレメント3の回転により、流体は、入口開口部17に対して回転軸7からさらに離れている、測定チャンバ13内の測定キュベット28に流れ込む。入口開口部17が第1のレベル24の上側境界面上に配置されるので、流体は、副チャンバ34を越えて直接測定キュベット28に流れ込む。空気は、そのより低い密度のために、測定キュベット28から副チャンバ34の方向に追い出され、排気開口部20を通して逃がすことができる。
【0071】
有利なことに、水平面16は、テストエレメント3の半径方向成分38の方向に延びる。半径方向成分38は、回転軸7からテストエレメント3の外側境界面に向かう方向である。好ましい実施形態では、測定チャンバ13は、光軸30と一致する長手方向軸29が、20度から40度の間の、回転テストエレメント3の半径方向成分38を有する角度を取り囲むように構成される。この角度は、25度以上35度以下であるのが好ましく、この角度は、30度であるのが特に好ましい。
【0072】
テストエレメント3のカバー層は、基板12の上面12a上に配置される。カバー層は、添付の図に示されていない。基板12と同様に、カバー層自体は、透明または不透明とすることができる。光がテストエレメント3の下面33を介して結合および分離するので、カバー層は、暗くすることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6