(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キャパシタフィルム及び/または前記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の灰分含量が100ppm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャパシタフィルム。
キャパシタフィルム及び/または前記二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の低温キシレン可溶性成分量(XCS)が、6.0wt%までである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキャパシタフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
典型的には、キャパシタフィルムは、厚さが10.0μmを超えず、好ましくは5.0μmを超えず、より好ましくは3.0μmを超えず、さらに好ましくは0.5から3.5μmの範囲であり、例えば1.0から3.0μmの範囲である。
【0012】
また、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、高純度を特徴とする。したがって、キャパシタフィルム及び/又は二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、灰分が好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、この高純度は洗浄工程により達成されるものではない。
【0014】
上記のとおり、キャパシタフィルムのポリプロピレンは二軸配向している。好ましくは、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、機械方向の延伸比が少なくとも4.0であり、横方向の延伸比が少なくとも4.0である。このような比率が好ましいのは、市販の二軸配向ポリプロピレンは、少なくとも上記に定める程度までは破損することなく延伸可能でなければならないからである。縦方向に延伸すると試料の長さが増加することから、縦方向の延伸比は、試料の最初の長さに対する現在の長さの比に基づき算出される。続いて、試料を横方向に延伸すると、試料の幅が増加する。したがって、延伸比は、試料の最初の幅に対する現在の幅の比に基づき算出される。好ましくは、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の機械方向の延伸比は、4.0から8.0の範囲、より好ましくは4.5から6.5の範囲である。二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の横方向の延伸比は、好ましくは6.0から10.0の範囲、より好ましくは7.0から9.5の範囲である。好ましい実施形態では、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、機械方向の延伸比が4.5から7.0、特に4.5から5.0であり、横方向の延伸比が6.0から10.0、特に8.0から10である。
【0015】
二軸配向ポリプロピレン(BOPP)に加工されるポリプロピレンは、いかなるポリプロピレンであってもよいが、プロピレンランダムコポリマーまたはプロピレンホモポリマーが好ましく、後者が特に好ましい。したがって、本願において二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の特性について言及する場合は、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の調製に用いられるポリプロピレンの特性もまた、それと同様に定義される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、二軸配向ポリプロピレンランダムコポリマーである。ランダムという用語は、IUPAC(Glossary of basic terms in polymer science; IUPAC recommendations 1996)に従って解されるものとする。したがって、二軸配向プロピレンランダムコポリマーは、ランダム性が少なくとも40%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも55%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも65%である。
【0017】
二軸配向プロピレンランダムコポリマーである場合、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、プロピレンと重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/またはC
4からC
12のα−オレフィン、特にエチレン及び/またはC
4からC
10のα−オレフィン、例えば1−ブテン及び/または1−ヘキセンを含有する。好ましくは、二軸配向プロピレンランダムコポリマーは、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群から選択される、プロピレンと重合可能なモノマーを含有し、特にそれらのみからなる。より具体的には、二軸配向プロピレンランダムコポリマーは、(プロピレン以外に)エチレン及び/または1−ブテン由来の構成単位(ユニット)を有する。好ましい実施形態では、二軸配向プロピレンランダムコポリマーは、エチレン及びプロピレン由来の構成単位のみを有する。二軸配向プロピレンランダムコポリマーにおけるコモノマー含有量は、比較的低いことが好ましく、すなわち6.0wt%まで、より好ましくは0.5から6.0wt%、さらに好ましくは0.5から4.0wt%、なおさらに好ましくは0.5から2.0wt%である。
【0018】
本発明で用いられる二軸配向ホモポリマーという表現は、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)に関し、実質的にプロピレンユニットのみからなる、すなわちプロピレンユニットが少なくとも99.5wt%、より好ましくは少なくとも99.8wt%からなるものを指す。好ましい実施形態では、二軸配向プロピレンホモポリマーからは、プロピレンユニットのみが検出可能である。コモノマー含有量は、以下の実施例において説明するように、FT赤外線スペクトル法により求めることができる。
【0019】
上記のように、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、二軸配向プロピレンホモポリマーであることが特に好ましい。
【0020】
好ましくは、ポリプロピレンはイソタクチックである。したがって、ポリプロピレンは、ペンタッド分率(pentad concentration)がむしろ高いことが好ましく、すなわち90%より高く、より好ましくは92%より高く、さらに好ましくは93%より高く、なおさらに好ましくは95%より高く、例えば少なくとも97%である。
【0021】
二軸配向ポリプロピレン(BOPP)のさらなる特徴は、ポリマー鎖におけるプロピレンの誤挿入が少ないことである。したがって、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、
13C−NMRスペクトル法により求められる<2,1>エリスロレギオ欠陥の量が少なく、すなわち0.4モル%を超えず、より好ましくは0.2モル%を超えず、例えば0.1モル%を超えないことを好ましい特徴とする。
【0022】
キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、広い範囲の低温キシレン可溶性成分量(XCS)が許容され、すなわち6.0wt%まで許容される。したがって、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、低温キシレン可溶性成分量(XCS)が0.3から6.0wt%、例えば0.5から5.5wt%の範囲であってよい。
【0023】
しかしながら、好ましい実施形態では、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、
低温キシレン可溶性成分量(XCS)が0.5から4.0wt%の範囲、より好ましくは0.5から3.0wt%の範囲、さらに好ましくは0.5から2.0wt%である。
【0024】
この
低温キシレン可溶性成分量(XCS)は、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)が、エチレンプロピレンゴムなどの何らかの弾性ポリマー成分を好ましくは含まないことも示している。言い換えれば、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、異相ポリプロピレン、すなわち弾性相が分散したポリプロピレンマトリクスからなる系ではないものとする。そのような系は、低温キシレン可溶性成分量がむしろ高いことを特徴とする。
【0025】
本発明のさらなる側面は、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)が、どちらかと言えば高い融点を有することである。したがって、本発明のキャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、ISO11357−3に従って測定される溶融温度(T
m)が、好ましくは少なくとも145.0℃であり、より好ましくは少なくとも155.0℃であり、さらに好ましくは少なくとも158℃である。よって、ISO11357−3に従って測定される、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の溶融温度(T
m)は、145から168℃の範囲であることが特に好ましく、より好ましくは155から164℃の範囲、さらに好ましくは160から164℃の範囲である。
【0026】
また、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、どちらかと言えば高い結晶化温度(T
c)を有することが好ましい。よって、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、ISO11357−3に従って測定される結晶化温度(T
c)が、少なくとも110℃であることが好ましく、より好ましくは少なくとも111℃である。したがって、キャパシタフィルム及び/または二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、ISO11357−3に従って測定される結晶化温度(T
c)が、好ましくは110から120℃の範囲であり、より好ましくは111から117℃の範囲である。
【0027】
分子量分布(MWD)とは、ポリマー中の分子数と個々の分子鎖長との関係である。分子量分布(MWD)は、重量平均分子量(M
w)と数平均分子量(M
n)との比として表される。数平均分子量(M
n)とは、分子量に対して各分子量域における分子数をプロットしたものの一次モーメントとして表される、ポリマーの平均分子量である。実際には、全分子の分子量の合計を分子数で除したものである。一方、重量平均分子量(M
w)とは、分子量に対して各分子量域のポリマー重量をプロットしたものの一次モーメントである。
【0028】
数平均分子量(M
n)及び重量平均分子量(M
w)は、分子量分布(MWD)と共に、オンライン粘度計を備えたWaters AllianceのGPCV2000装置を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により求められる。オーブン温度は140℃である。トリクロロベンゼンを溶媒として用いる(ISO16014)。
【0029】
したがって、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、重量平均分子量(M
w)が100,000から600,000g/molであることが好ましく、より好ましくは200,000から500,000g/molである。
【0030】
分子量分布(MWD)が広いと、ポリプロピレンの加工性が良くなる。したがって、ISO16014に従って測定される分子量分布(MWD)は、少なくとも2.8であることが好ましく、より好ましくは少なくとも3.0、例えば少なくとも3.3である。一方で、どちらかと言えば広い分子量分布(MWD)は、低分子量画分の量が多くなることを示し、低分子量画分によりキシレン可溶性成分量は増えるが誘電特性は改善されない。したがって、別の実施形態では、分子量分布(MWD)は、好ましくは2.8から10.0の間であり、より好ましくは3.0から8.0の範囲である。
【0031】
さらに、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、メルトフローレート(MFR)が、所定の範囲であることが好ましい。230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(ISO1133)を、MFR
2(230℃)と表す。したがって、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、MFR
2(230℃)が0.5g/10分を超えることが好ましく、より好ましくは1.0g/10分を超える。したがって、ISO1133に従って測定されるMFR
2(230℃)は、0.5から10.0g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0から6.0g/10分の範囲、さらに好ましくは1.5から4.0g/10分の範囲である。
【0032】
また、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、直鎖構造であって分岐のようなものが見られない(あるいはほとんど見られない)ことが好ましい。したがって、本発明の二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、分岐指数g’が0.9以上であることが好ましく、好ましくは0.9を超え、例えば少なくとも0.95である。言い換えれば、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)がなんらかの分岐を有する場合は、当該分岐はどちらかと言えば中程度のものとする。したがって、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の分岐指数g’は、好ましくは0.9から1.0の範囲、より好ましくは0.9より大きく1.0までの範囲、例えば0.96から1.0の範囲である。特に好ましい実施形態では、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)には分岐が見られない。すなわち、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、分岐指数g’が1.0である。分岐指数g’は、g’=[IV]
br/[IV]
linと定義される。ここで、g’は分岐指数、[IV]
brは分岐ポリプロピレンの固有粘度、[IV]
linは当該分岐ポリプロピレンと同じ重量平均分子量(±3%の範囲内)を持つ直鎖ポリプロピレンの固有粘度である。したがって、低いg’値は、高分岐型のポリマーであることの指標となる。言い換えれば、g’値が低下すると、ポリプロピレンの分岐が増加する。これに関しては、B.H.Zimm及びW.H.Stockmeyer,J.Chem.Phys.17,1301(1949)を参照されたい。この文書は、参照により本願に含められる。
【0033】
本発明の二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、好ましくは非分岐型構造を取るため、ゲル含有量もまた多くは無い。ゲルは、架橋したポリプロピレンに典型的な現象である。よって、ゲル含有量は、ポリプロピレンの化学修飾を示す良い指標である。したがって、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、沸騰キシレンに不溶なポリマーの相対量(熱キシレン不溶性画分、XHI)として求められるゲル含有量が比較的中程度、すなわち0.50wt%以下、より好ましくは0.25wt%以下、さらに好ましくは0.15wt%以下、例えば0.15wt%未満、さらに好ましくは0.10wt%以下であることを特徴とする。特に好ましい実施形態では、ゲル成分は検出されない。
【0034】
上記のように、本発明のさらなる必須な知見は、キャパシタフィルムが特定範囲の脂肪酸アルカリ土類塩を有さなければならないということである。したがって、キャパシタフィルム中に脂肪酸アルカリ土類塩が100ppmより多く600ppm以下の範囲、より好ましくは100ppmから400ppmの範囲、
例えば110から400ppmの範囲、さらに好ましくは110ppmから350ppmの範囲、さらに好ましくは115から300ppmの範囲、例えば120から230ppmの範囲で存在することが、本発明の要件の一つになる。脂肪酸アルカリ土類塩の上限量としては、200ppmがより好ましく、180ppmが特に好ましい上限である。
【0035】
上記のように、本発明のキャパシタフィルムでは、脂肪酸アルカリ土類塩が比較的多量に用いられているが、脂肪酸アルカリ土類塩の量は、灰分に悪影響を及ぼす値を超えないものとする。よって、キャパシタフィルム中の脂肪酸アルカリ土類塩の量は、それによって灰分が上記の上限、すなわち100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、なおさらに好ましくは30ppm以下の灰分を超過することとなる値を超えないことが好ましい。
【0036】
脂肪酸アルカリ土類塩は、好ましくはC
12からC
26脂肪酸のアルカリ土類塩、より好ましくはC
14からC
24脂肪酸のアルカリ土類塩、さらに好ましくはC
18からC
22脂肪酸のアルカリ土類塩、例えばC
18脂肪酸のアルカリ土類塩である。また、脂肪酸アルカリ土類塩は、飽和脂肪酸、特に本段落で定める飽和脂肪酸のアルカリ土類塩であることが好ましい。
【0037】
脂肪酸アルカリ土類塩のアルカリ土類元素は、好ましくはマグネシウムまたはカルシウムであり、後者が特に好ましい。
【0038】
したがって、ある実施形態では、脂肪酸アルカリ土類塩は、C
14からC
24脂肪酸のカルシウム塩、例えばステアリン酸カルシウムである。
【0039】
上記のように、キャパシタフィルムは、抗酸化剤などの公知の添加剤をさらに有してもよい。しかしながら、絶縁破壊の挙動に悪影響を及ぼす添加剤は避けるべきである。
【0040】
二軸配向ポリプロピレン(BOPP)は、公知の方法にて製造することができる。最初の工程では、二軸配向材料の調製に用いられるポリプロピレンを調製する。好ましくスラリー反応器、例えばループ型反応器中にてポリプロピレンを、任意で少なくとも他のC
2からC
12α−オレフィン(コモノマー)と共に重合触媒の存在下で重合させて、ポリプロピレンの一部分を生成する。次いで、この一部分を後続の気相反応器に移す。気相反応器では、プロピレンを、任意で上記に定めるコモノマーと共に最初の工程における反応生成物の存在下で反応させて、さらなる一部分を生成する。この反応手順により、ポリプロピレンを構成する(i)部分(A画分)及び(ii)部分(B画分)の反応器ブレンドが得られる。本発明では、最初の反応を
気相反応器で行い、2番目の重合反応をスラリー反応器、例えばループ型反応器で行うことも当然可能である。さらに、上記ではまず(i)部分を生成し、次いで(ii)部分を生成する順序で記載したが、(i)及び(ii)部分の生成順序を逆にすることも可能である。上記の少なくとも2段の重合工程を有する製法は、制御が容易な工程を用いることにより所望の反応器ブレンドを調製することが可能になるという点において有利である。得られる重合生成物の特性を適切に調節することを目的として、重合工程を調節してもよく、例えば、モノマーの供給、コモノマーの供給、水素の供給、温度、圧力を適切に選択してもよい。
【0041】
こうした製法は、ポリプロピレンの調製に適したあらゆる触媒を用いて行うことができる。好ましくは、上記の製法は、チーグラー・ナッタ触媒、特に高収量チーグラー・ナッタ触媒(第4または第5世代型と呼ばれ、低収量のいわゆる第2世代チーグラー・ナッタ触媒と区別される)を用いて行われる。本発明において用いられる好適なチーグラー・ナ
ッタ触媒は、触媒成分、共触媒成分、及び少なくとも1種の電子供与体(内部及び/または外部電子供与体、好ましくは少なくとも1種の外部供与体)を有する。好ましくは、触媒成分はTi−Mg系触媒成分であり、典型的な共触媒はAl−アルキル系化合物である。好適な触媒は、具体的にはUS5,234,879、WO92/19653、WO92/19658及びWO99/33843に開示されている。
【0042】
好ましい外部供与体は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはシクロヘキシルメチルジメトキシシランなどの公知のシラン系供与体である。
【0043】
上記製法の実施形態の一つがループ−気相製法であり、例えばEP0887379A1及びWO92/12182に記載される、Borealisが開発したBorstar(登録商標)テクノロジーとして知られる製法などである。
【0044】
上記の好ましいスラリー−
気相製法に関し、その製造条件として以下の一般情報を挙げ
ることができる。
【0045】
温度は40から110℃、好ましくは60と100℃の間、特に80と90℃の間であり、圧力は20から80barの範囲、好ましくは30から60barであり、任意で分子量を調節するための水素を添加する。次いで、好ましくはループ型反応器にて行われたスラリー重合の反応生成物を、後続の
気相反応器に移す。ここで、温度は好ましくは50から130℃の範囲、より好ましくは80から100℃、圧力は5から50barの範囲、好ましくは15から35barであり、同様に任意で分子量を調節するための水素を添加する。
【0046】
滞留時間は、上記の反応器ゾーンによって様々である。実施形態としては、スラリー反応の滞留時間は、例えばループ型反応器では0.5から5時間の範囲、例えば0.5から2時間である。一方、気相反応器での滞留時間は、一般的に1から8時間となる。
【0047】
上記にて概説した製法により生成されるポリプロピレンの特性は、当業者に公知の製造条件、例えば1つまたはそれ以上の下記のパラメータ:温度、水素の供給、コモノマーの供給、プロピレンの供給、触媒、外部供与体の種類及び量、マルチモーダルポリマーを構成する2以上の成分への分割、により調節及び制御することができる。
【0048】
上記の製法により、ポリプロピレンを反応器で製造するのに極めて適した手段が実現される。
【0049】
二軸配向ポリプロピレン(BOPP)及びそのキャパシタフィルムは、従来公知の延伸加工により調製することができる。したがって、本発明のキャパシタフィルム、すなわち二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の製造工程には、本願で定めるポリプロピレンを使用することと、当該ポリプロピレンを好ましくは公知のテンター法によりフィルムに形成することとが含まれる。
【0050】
テンター法とは、具体的には、本願に定めるポリプロピレンをTダイなどのスリットダイから溶融押出し、冷却ドラムで冷却して未延伸のシートを得る方法である。当該シートを、例えば加熱した金属ロールで予備加熱し、次いで周速が異なるように設定された複数のロール間で縦方向に延伸し、次いで両端をグリッパーで挟み、テンターによってオーブン中でシートを横方向に延伸して、二軸延伸フィルムを得る。縦方向に延伸する際の当該延伸シートの温度は、本願に定めるポリプロピレンの融点の温度範囲内(−15または+5℃)となるように調節されることが好ましい。横方向の延伸におけるフィルム厚の均一性は、縦方向の延伸後にフィルム上の固定部分をマスクし、横方向に延伸した後に当該マ
スクの間隔を測定して実際の延伸係数を測定する方法により評価することができる。
【0051】
続けて、金属化に供するフィルムの表面を、空気、窒素、二酸化炭素ガスまたはこれらの混合物中でコロナ放電により処理することで、蒸着される金属に対する接着力を高めることができる。そして巻取り機で巻き取る。
【0052】
得られたフィルムを真空金属化装置にセットし、グラビアコーターなどを使用して好ましくはオイルを塗布して、所望の目的に合わせた絶縁溝を形成することができる。次いで、所定の層抵抗となるように、所望の目的に合わせた金属を蒸着する。また、金属化処理は、抵抗値がフィルムの横方向で連続的に変化するように、必要に応じてくし型の蒸着防止プレートを介して行う。金属化したフィルムをスリット状にして、キャパシタデバイスを構成する一組2枚の金属化したリールを作成する。次いで、リールを巻回してデバイスを形成し、当該デバイスを熱プレスにより平板状に形成した後、端部に金属溶射を施し、リード線を取り付け、必要に応じて絶縁オイルを含浸させ、包装してキャパシタを作成する。
【0053】
また本発明は、脂肪酸アルカリ土類塩、好ましくは上記に定める脂肪酸アルカリ土類塩を100ppmより多く600ppm以下、好ましくは110から400ppmの範囲、より好ましくは110ppmから350ppmの範囲、さらに好ましくは115ppmから300ppmの範囲、例えば120から230ppmの範囲、さらに好ましくは120から200ppm、特に好ましくは120から180ppm含有するポリプロピレン、好ましくは二軸配向ポリプロピレン(BOPP)の、それぞれ二軸配向ポリプロピレン(BOPP)及びキャパシタフィルムの調製のための使用を対象とする。また、本発明は、本願に定めるキャパシタフィルムのキャパシタにおける使用を対象とする。
【0054】
さらに、本発明は、本願に定めるキャパシタフィルムを有する層を少なくとも1層有するキャパシタを対象とする。また、当該キャパシタは、金属層、特に上記の製法により得られる金属層を有することが好ましい。
【0055】
ここで、本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0056】
A.測定方法
以下の用語の定義及び測定法は、別段の定義がある場合を除き、以下の実施例に加えて、上記の本発明の全般的な説明にも適用される。
【0057】
13C−NMRスペクトル法によるポリプロピレンのイソタクティシティの定量
イソタクティシティは、定量
13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル法により、例えばV.Busico及びR.Cipullo,Progress in Polymer Science,2001,26,443−533にあるような基本的な帰属を行った後に求める。実験パラメータは、本実験に対応した定量スペクトルの測定が可能となるよう、例えばS.Berger及びS.Braun,200 and More NMR Experiments: A Practical Course,2004,Wiley−VCH,Weinheimに倣って調整した。定量値は、各部位におけるシグナル積分値に対する単純補正した比を用いて、公知の方法により算出する。イソタクティシティは、ペンタッドの程度、すなわちペンタッド分布のmmmm分率として求める。
【0058】
<2,1>−プロピレンの挿入(<2,1>エリスロレギオ欠陥)
分子鎖におけるプロピレンモノマーの2,1−挿入の相対量は、
13CNMRスペクトル法により求め、EP0629632B1の記載に基づき算出する。
【0059】
ランダム性
FTIR測定では、250−mm厚のフィルムを225℃で圧縮成形し、Perkin−ElmerのSystem2000FTIR装置で調べた。エチレンピーク領域(760から700cm
−1)を、総エチレン含有量の測定に用いた。−P−E−P−構造(プロピレンユニット間に1つのエチレンユニット)の吸収バンドは、733cm
−1に現れる。このバンドにより、ランダムなエチレンの含有量が示される。より長いエチレンの並び(2ユニット以上)に対しては、吸収バンドは720cm
−1に現れる。一般的にランダムコポリマーでは、より長い連続エチレンに対してはショルダーが観察される。面積に基づく総エチレン含有量と、733cm
−1におけるピーク高に基づくランダムエチレン(PEP)含有量について、
13C−NMRによるキャリブレーションを行った(Thermochimica Acta,66(1990)53−68)。
ランダム性=ランダムエチレン(−P−E−P−)含有量/総エチレン含有量
x100%
【0060】
Mw、Mn、MWD
Mw/Mn/MWDは、以下の方法に従いゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(MWD=Mw/Mn)は、ISO16014−1:2003及びISO16014−4:2003に基づく方法により測定する。屈折率検出器及びオンライン粘度計を備えたWaters AllianceのGPCV2000装置を用い、TosoHaasのTSKゲルカラム(GMHXL−HT)
x3、及び溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6−ジtertブチル−4−メチルフェノールで安定化)を使用して、145℃、1mL/minの定流速とする。分析ごとに216.5μLの試料溶液を注入する。カラムセットは、0.5kg/molから11500
kg/molの範囲の19種のMWDが狭い標準ポリスチレン(PS)及び特性の明らかな広分布標準ポリプロピレンのセ
ットを用いた相対キャリブレーションにより較正する。試料はすべて、10mL(160℃)の安定化したTCB(移動相と同じ)に5から10mgのポリマーを溶解し、GPC装置へのサンプリング前に3時間連続撹拌して調製した。
【0061】
メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、230℃、2.16kg荷重(MFR
2)にて測定する。メルトフローレートとは、ISO1133に準じた試験機が、温度230℃、2.16kgの荷重下で10分間に押し出すポリマー量をグラムで表したものである。
【0062】
コモノマー含有量
コモノマー含有量(wt%)は、フーリエ変換赤外線スペクトル法(FTIR)による測定と
13C−NMRによるキャリブレーションに基づいた公知の方法により求める。
【0063】
低温キシレン可溶性成分量(XCS、wt%)
低温キシレン可溶性成分量(XCS)は、ISO6427に従って23℃で求める。
【0064】
ゲル含有量は、熱キシレン不溶性(XHI)画分に一致するものとして、これを細かく裁断したポリマー試料1gを沸点のキシレン350mlによりソックスレー抽出器を用いて48時間抽出して求める。残った固体分を90℃で乾燥し、秤量して不溶成分量を求める。
【0065】
溶融温度Tm、結晶化温度Tc及び結晶化度:5から10mgの試料を、MettlerのTA820示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。結晶化曲線及び溶融曲線は、どちらも30℃から225℃間での10℃/分の冷却及び加熱走査により求めた。溶融
温度及び結晶化温度は、吸熱及び発熱ピークとして観察された。
【0066】
灰分:灰分は、ISO3451−1標準法に従って測定する。
【0067】
B.実施例
実施例では、MFR
2(230℃)が3.3g/10分、溶融温度が163℃及びペンタッド分率が97.4%の
ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)を用いている。
13C−NMRスペクトル法では、分子鎖中にプロピレンモノマーの2,1−挿入は検出されなかった。
【0068】
比較例(CE1)
ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)中のステアリン酸カルシウム含有量が75ppmとなるように、ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)にステアリン酸カルシウム(CAS−No.1592−23−0)を添加している。得られた組成物は、灰分が15ppmであった。
【0069】
比較例(CE2)
ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)中のステアリン酸カルシウム含有量が600ppmとなるように、ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)にステアリン酸カルシウム(CAS−No.1592−23−0)を添加している。得られた組成物は、灰分が63ppmであった。
【0070】
実施例(IE)
ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)中のステアリン酸カルシウム含有量が150ppmとなるように、ポリプロピレンホモポリマー(PP−H)にステアリン酸カルシウム(CAS−No.1592−23−0)を添加している。得られた組成物は、灰分が29ppmであった。
CE及びIEを以下のワークフローに供してキャストフィルムを作成した:材料を冷却したロール上に押出鋳造して、急冷フィルムシートを生成した。表1に示す設定条件を用いた。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例及び実施例によるキャストフィルムの摩擦挙動を、ISO8295(1995)に従って測定した。
【0073】
比較例(CE1)を成分とするキャストフィルム(1)の摩擦は、実施例(IE)から調製したキャストフィルム(2)と比較してより顕著であった。経験上、これは、キャストフィルム(2)を構成する実施例(IE)が、キャストフィルム(1)と比較して平板状キャパシタへと加工するのにより好適であることを示している。