(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードから他方のモードへの移行を禁止する、請求項1に記載の電動二輪車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コーナリング中に前記状態値が所定範囲外となることで通常モードから別の出力モードに自動的に移行すると、運転者がナーバスになるコーナリング中において走行動力が変動することなるため、運転フィーリングを悪化させることになる。特に、二輪車の場合には、コーナリングの際に車体をバンクさせるため、運転フィーリングへの影響は大きくなる。
【0005】
そこで本発明は、運転指令以外の状態値に応じて運転モードが移行する乗物において、コーナリング中の運転フィーリングを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る電動二輪車は、運転者からの運転指令を検出する運転指令検出手段と、前記運転指令とは異なる状態値を検出可能な状態値検出手段と、駆動輪に伝達される走行動力を発生する電動モータと、前記運転指令検出手段で検出された前記運転指令に応じて前記電動モータの出力を制御する通常モードと、前記電動モータの出力を前記通常モードに対して異ならせる非通常モードとを実行可能であり、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードにおいて前記状態値検出手段で検出される前記状態値に所定の移行条件が成立すると、前記通常モード及び前記非通常モードのうち他方のモードへと移行させる制御手段と、電動二輪車がコーナリング中であるか否かを判定するコーナリング判定手段と、を備え、
前記通常モードと前記非通常モードとの両方で前記電動モータの出力が走行動力とされ、前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中ではないと判定され且つ前記移行条件が成立したときよりも、前記電動モータの出力変化を抑制する。
【0007】
前記構成によれば、コーナリング中であると判定され且つ移行条件が成立したときには、電動モータは出力変化を抑制するように制御されるので、コーナリング中に走行動力が大きく変動することが抑制される。よって、運転指令以外の状態値に応じて運転モードが移行する電動二輪車において、コーナリング中の運転フィーリングを向上することが可能となる。なお、「出力変化を抑制」とは、モード移行を禁止することでモード移行に伴う出力変化を防止することと、非コーナリング時よりもモード移行に伴う出力変化を少なく保ちながらモード移行することとを含む意味である。
【0008】
前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードから他方のモードへの移行を禁止してもよい。
【0009】
前記構成によれば、コーナリング中であると判定され且つ移行条件が成立したときには、モード移行が禁止されるので、モード移行に伴う電動モータの出力変動を防止することができる。よって、コーナリング中の運転フィーリングを簡単かつ確実に向上させることが可能となる。
【0010】
前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中ではないと判定され且つ前記移行条件が成立したときよりも、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードから他方のモードへ移行する際における前記電動モータの出力の変化量及び時間変化率の少なくとも一方を低減してもよい。
【0011】
前記構成によれば、コーナリング中であると判定され且つ移行条件が成立したときには、モード移行する際における電動モータの出力の変化量及び変化率の少なくとも一方が低減されるので、モード移行を実施しながらもモード移行に伴う電動モータの出力変動を抑制することができる。よって、モード移行による制御効果とコーナリング中の運転フィーリングの向上とを好適に両立することが可能となる。
【0012】
前記電動モータに電力を供給するためのバッテリと、前記電動モータと前記バッテリとの間に介設されたインバータとを備え、前記状態値検出手段は、前記電動モータ、前記バッテリ及び前記インバータを含む駆動系電気機器のうち少なくとも1つの状態を前記状態値として検出し、前記移行条件は、前記通常モードから前記非通常モードに移行させるための条件であって前記状態値が所定の非通常値であるとの非通常モード移行条件と、前記非通常モードから前記通常モードに移行させるための条件であって前記状態値が所定の通常値であるとの通常モード移行条件とを有し、前記制御手段は、前記非通常モードにおける前記電動モータの出力を、前記通常モードにおける前記電動モータの出力よりも減少させてもよい。
【0013】
前記構成によれば、通常モードにおいて駆動系電気機器の状態が非通常状態となったときに、非通常モードに移行して電動モータの出力を減少させるので、駆動系電気機器を保護することができる。
【0014】
前記電動モータに電力を供給するためのバッテリと、前記バッテリと前記電動モータとの間に介設されたインバータと、を備え、前記状態値検出手段は、前記バッテリ、前記インバータ及び前記電動モータのうち少なくとも1つの温度を前記状態値として検出する温度センサ、前記バッテリの放電能力を前記状態値として検出するバッテリセンサ、前記電動モータの回転数を前記状態値として検出する回転数センサ、走行速度を前記状態値として検出する車速センサ、及び、前記電動モータの制御のための入力情報を検出するセンサの異常を前記状態値として検知する異常検知手段のうち少なくとも1つを含み、前記移行条件は、前記温度センサで検出される温度が所定の許容値を超えているとの条件、前記バッテリセンサで検出される放電能力が所定の許容値を下回っているとの条件、前記回転数センサで検出される回転数が所定の上限回転数以上であるとの条件、前記車速センサで検出される走行速度が所定の上限速度以上であるとの条件、及び、前記異常検知手段で異常が検知されたとの条件のうち少なくとも1つである出力制限モード移行条件を有し、前記非通常モードは、前記通常モードよりも前記電動モータの出力を減少させる出力制限モードを有し、前記制御手段は、前記通常モードにおいて前記出力制限モード移行条件が成立すると、前記出力制限モードに移行させてもよい。
【0015】
前記構成によれば、出力制限モードでは電動モータの出力を減少させるので、例えば、電動モータ、バッテリ及び/又はインバータを保護したり、バッテリ放電能力低下時やセンサ異常時に走行速度を落としたり、回転数や車速にリミッタを掛けたりすることができる。
【0016】
前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立することで前記電動モータの出力変化を抑制された状態から、前記移行条件が成立したまま前記コーナリング判定手段によりコーナリングが終了したことが判定されると、前記電動モータの出力の目標値をモード移行後の目標値に徐々に近づけるように制御してもよい。
【0017】
前記構成によれば、コーナリング中に出力変化を抑制していた状態からコーナリングが終了すると、モータ出力の目標値をモード移行後の目標値に徐々に近づけるので、運転フィーリングを良好に保ちながらモード移行を完了させることができる。
【0018】
前記移行条件は、所定の出力急増モード移行条件を有し、前記非通常モードは、前記運転指令検出手段で検出されたアクセル操作量の増加率が所定の閾値以上であるときに、前記通常モードよりも前記電動モータの出力を一時的に増加させる出力急増モードを有し、前記制御手段は、前記通常モードにおいて前記出力急増モード移行条件が成立すると、前記出力急増モードに移行させてもよい。
【0019】
前記構成によれば、出力急増モードでアクセル操作量が急増したときには、通常モードでアクセル操作量が急増したときよりもモータ出力を一時的に増加させるので、瞬間的に通常よりも大きな加速を発生させ、運転者の体感する加速レスポンスを向上させることができる。
【0020】
走行状態がコーナリングの終盤であるか否かを判定するコーナリング状態判定手段を備え、前記制御手段は、前記コーナリング状態判定手段により走行状態がコーナリングの終盤であると判定された場合には、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ前記出力急増モード移行条件が成立しても、前記電動モータの出力変化の抑制を実施しなくてもよい。
【0021】
前記構成によれば、コーナリングの終盤のときには、電動モータの出力増加は抑制されずに大きな加速が許容されるので、コーナリング出口でのスムーズな加速走行を実現することができる。
【0022】
運転者に通知するための通知手段を備え、前記制御手段は、前記コーナリング判定手段で電動二輪車がコーナリング中であると判定されかつ前記移行条件が成立したときには、前記電動モータの出力変化を抑制している旨を前記通知手段により運転者に通知させてもよい。
【0023】
前記構成によれば、電動モータの出力変化を抑制している旨が運転者に通知されるので、運転者は車両の制御状態を把握することができる。
【0024】
前記制御手段は、コーナリング中の車両運転状態に応じて前記電動モータの出力変化の抑制の程度を変化させてもよい。
【0025】
前記構成によれば、コーナリング中の車両運転状態に応じて電動モータの出力変化の抑制の程度を変えるよう調整するので、モード移行による制御効果とコーナリング中の運転フィーリングの向上とを好適に両立することが可能となる。
【0026】
また本発明に係る乗物制御装置は、運転者からの運転指令を受信する運転指令受信部と、前記運転指令とは異なる状態値を受信可能な状態値受信部と、前記運転指令に応じて
電動モータの出力を制御する通常モード実行部と、前記
電動モータの出力を前記通常モードに対して異ならせる非通常モード実行部と、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードにおいて前記状態値受信部で受信される前記状態値に所定の移行条件が成立すると、前記通常モード及び前記非通常モードのうち他方のモードへと移行させるモード移行制御部と、乗物がコーナリング中であるか否かを判定するコーナリング判定部と、を備え、
前記通常モードと前記非通常モードとの両方で前記電動モータの出力が走行動力とされ、前記モード移行制御部は、前記コーナリング判定部で乗物がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記コーナリング判定部で乗物がコーナリング中ではないと判定され且つ前記移行条件が成立したときよりも、前記
電動モータの出力変化を抑制する。
【0027】
また本発明に係る乗物制御方法は、運転者からの運転指令を受信する運転指令受信工程と、前記運転指令とは異なる状態値を受信可能な状態値受信工程と、前記運転指令に応じて
電動モータの出力を制御する通常モード実行工程と、前記
電動モータの出力を前記通常モードに対して異ならせる非通常モード実行工程と、前記通常モード及び前記非通常モードのうち一方のモードにおいて前記状態値に所定の移行条件が成立すると、前記通常モード及び前記非通常モードのうち他方のモードへと移行させるモード移行制御工程と、乗物がコーナリング中であるか否かを判定するコーナリング判定工程と、を備え、
前記通常モードと前記非通常モードとの両方で前記電動モータの出力を走行動力とし、前記モード移行制御工程では、前記コーナリング判定部で乗物がコーナリング中であると判定され且つ前記移行条件が成立したときには、前記コーナリング判定部で乗物がコーナリング中ではないと判定され且つ前記移行条件が成立したときよりも、前記
電動モータの出力変化を抑制する。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、運転指令以外の状態値に応じて運転モードが移行する乗物において、コーナリング中の運転フィーリングを向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る電動二輪車1(乗物)の右側面図である。
図1に示すように、電動二輪車1は、従動輪である前輪2と駆動輪である後輪3とを備えている。前輪2は、各々略上下方向に延びる左右一対のフロントフォーク4の下端部に回転自在に支持されており、フロントフォーク4の上部は上下一対のブラケット4a,4bを介してステアリング軸(図示せず)に支持されている。そのステアリング軸は車体側のヘッドパイプ5に内挿された状態で回転自在に支持されており、上側のブラケット4bには左右へ延びるバー型のハンドル6が取り付けられており、運転者がハンドル6を左右に回動させることで前輪2を操舵することができる。ハンドル6の右側には運転者の右手により把持されて、手首のひねりによって回転されるようにアクセルグリップ7が設けられ、そのアクセルグリップ7の前側にはブレーキレバー8が設けられている。また、ハンドル6の左側には、運転者の左手により把持される固定グリップ(図示せず)が設けられ、その固定グリップの前側にはクラッチレバー(図示せず)が設けられている。
【0032】
電動二輪車1の車体フレームは、ヘッドパイプ5から左右に分かれて後方に向かい若干下方に傾斜しながら側面視で略直線状に延びる一対のメインフレーム9を備えている。メインフレーム9の前端部には、そこから下方に延びる左右一対のダウンフレーム10が接続されている。メインフレーム9の後端部には、枠状のピボットフレーム11の上部が設けられている。ピボットフレーム11には、パワープラント12のケース13の後部が締結されており、このケース13の前部はダウンフレーム10の下端部に締結されている。ピボットフレーム11には、後輪3を支持するスイングアーム14の前端部が上下に揺動可能に支持されている。スイングアーム14の中間部とメインフレーム9の後端部との間にはリヤサスペンション15が介設されている。なお、
図1において仮想線で示すようにスイングアーム14の上方には騎乗用のシート16が配設され、このシート16はメインフレーム9に接続された図示しないリヤフレームによって支持されている。また、シート16の前方にはダミータンク17が設けられ、運転者が両膝で挟めるようになっている。
【0033】
パワープラント12のケース13には、走行動力を発生する電動モータ18と、電動モータ18からの回転動力を変速して後輪3に伝達するためのトランスミッション19と、電動モータ18とトランスミッション19との間の動力伝達を接続又は遮断するクラッチ20とが収容されている。パワープラント12のケース13の前側上方には、電動モータ18に給電するためのバッテリ21が配設されている。パワープラント12のケース13の後側上方には、バッテリ21の直流電力を交流電力に変換して電動モータ18に供給する又は電動モータ18を発電機として発電した交流電力(回生電力)を直流電力に変換してバッテリ21に充電するインバータ22が配設されている。左右一対のメインフレーム9の間には、後で詳述するECU23(乗物制御装置)が配設されている。なお、本実施形態では、電動モータ18、バッテリ21及びインバータ22を駆動系電気機器と称する。
【0034】
図2は、
図1に示す電動二輪車1の制御系統を説明するブロック図である。
図2に示すように、ECU23には、各種のセンサ30〜41が入力として接続されている。モータ温度センサ30、インバータ温度センサ31及びバッテリ温度センサ32は、それぞれ電動モータ18、インバータ22及びバッテリ21の温度を検出するものである。バッテリ電圧センサ33は、バッテリ21の出力電圧を検出するものであり、バッテリ残量センサ34は、バッテリ21の残量を検出するものである。即ち、バッテリ電圧センサ33及びバッテリ残量センサ34によりバッテリ21の放電能力が検出される。回転数センサ35は、電動モータ18の回転数を検出するものである。車速センサ36は、電動二輪車1の走行速度を検出するものであり、例えば、従動輪である前輪2の回転数を検出する前輪速センサなどが用いられる。アクセル操作量センサ37は、アクセルグリップ7の操作量(開度)を検出するものである。ブレーキセンサ38は、ブレーキレバー8の操作量(制動量)を検出するものである。クラッチスイッチ39は、クラッチ20が接続状態にあるか遮断状態にあるかを検出するものである。ギヤ位置センサ40は、トランスミッション19の変速ギヤの位置(減速比)を検出するものである。バンク角センサ41は、電動二輪車1の車体を直立状態から横方向へ傾斜させたときの車体傾斜角を検出するものである。
【0035】
ECU23は、センサ異常検知部45、状態値受信部46、移行条件判定部47、運転指令受信部48、コーナリング判定部49、モード移行制御部50、通常モード実行部51、出力制限モード実行部52、回生モード実行部53、及び、出力急増モード実行部54を備えている。センサ異常検知部45は、電動モータ18の制御のための入力情報を検出する各種のセンサ30〜41の異常を検知するものである。例えば、各センサ30〜41を一対ずつ設け、センサ異常検知部45は、それら一対のセンサ30〜41からそれぞれ検出される値が互いに同じであるとセンサが正常であると検知し、互いに異なるとセンサが異常であると検知する。
【0036】
状態値受信部46は、モータ温度センサ30、インバータ温度センサ31、バッテリ温度センサ32、バッテリ電圧センサ33、バッテリ残量センサ34、回転数センサ35、車速センサ36及びセンサ異常検知部45等からの信号を受信するものであって、運転指令ではない状態値を受信するものである。即ち、本実施形態では、モータ温度センサ30、インバータ温度センサ31、バッテリ温度センサ32、バッテリ電圧センサ33、バッテリ残量センサ34、回転数センサ35、車速センサ36及びセンサ異常検知部45が状態値検出手段を構成する。ここで、状態値とは、運転者からの運転指令が無くとも変化する車載機器の状態に関する値を意味し、また、運転指令とは、アクセル操作量やブレーキ操作量やクラッチ操作状態や変速ギヤ位置等のように運転者が電動二輪車1の走行状態を変えるための指令を意味する。
【0037】
移行条件判定部47は、後述するように、通常モードと、通常モードとは異なる駆動力を出力する非通常モード(出力制限モード、回生モード、出力急増モード)との間でモード移行を行わせる所定の移行条件を状態値受信部46で受信される状態値が満たすか否かを判定するものである。運転指令受信部48は、アクセル操作量センサ37、ブレーキセンサ38、クラッチスイッチ39及びギヤ位置センサ40等からの信号を受信するものであって、運転者からの運転指令を受信するものである。即ち、本実施形態では、アクセル操作量センサ37、ブレーキセンサ38、クラッチスイッチ39及びギヤ位置センサ40の少なくとも1つが運転指令検出手段を構成する。コーナリング判定部49は、電動二輪車1がコーナリング中であるか否かを判定するものである。例えば、コーナリング判定部49は、バンク角センサ41で検出された車体の直立状態からの傾斜角が所定角以上であるときに、電動二輪車1がコーナリング中であると判定する。
【0038】
モード移行制御部50は、移行条件判定部47での判定結果及びコーナリング判定部49での判定結果に基づいて各運転モード(通常モード、出力制限モード、回生モード、出力急増モード)の間でのモード移行を制御する。また、電動二輪車1は、ランプの点灯等による表示やスピーカによる音などにより運転者に情報を通知する通知装置55を備えており、モード移行制御部50は、後述するように移行条件の成立中にもかかわらずモード移行を禁止しているときには、その旨を通知装置55により運転者に通知させる。また、モード移行制御部50は、回転数センサ35、車速センサ36及びギヤ位置センサ40からの信号に応じてモード移行中のモータ出力の制御を変えることもできる。
【0039】
通常モード実行部51は、運転指令受信部48で受信された運転指令に応じて電動モータ18の出力(具体的には、トルク)を制御する通常モードを実行するものである。出力制限モード実行部52は、電動モータ18、インバータ22及びバッテリ21の保護等のために電動モータ18の出力を通常モードよりも制限する出力制限モードを実行するものである。回生モード実行部53は、電動モータ18を発電機として用いて回生電力を生成させる回生モードを実行するものである。出力急増モード実行部54は、アクセル操作量センサ37で検出されるアクセル操作量の増加率が所定値以上である急加速指令時に、アクセル操作量に対応するモータ出力を通常モードに比べて一時的に増量補正させる出力急増モードを実行するものである。
【0040】
図3は、
図2に示す電動二輪車1の制御を説明するフローチャートである。
図4は、
図3に示す出力制限モードを説明するフローチャートである。
図5は、
図3に示す制御における出力制限モード移行に関するグラフである。
図6は、
図3に示す制御における出力制限モード移行に関する別のグラフである。
図3及び5に示すように、まず、電動二輪車1の電源が投入されると、モード移行制御部50は、運転モードを通常モードに設定する(ステップS1)。この通常モードでは、運転指令受信部48で受信された運転指令に応じて電動モータ18の出力を制御し、アクセル操作量の増減に応じて電動モータ18の出力を増減させる。
【0041】
次いで、移行条件判定部47は、出力制限モード移行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS2)。出力制限モード移行条件は、電動モータ18、バッテリ21及びインバータ22を含む駆動系電気機器の状態が通常状態とは異なる所定の非通常状態となった、即ち、状態値受信部46で受信された状態値が所定の非通常値となったとの条件を有する。より具体的には、出力制限モード移行条件は、温度センサ30〜32で検出される電動モータ18、バッテリ21又はインバータ22の温度が所定の許容値を超えているとの条件、バッテリ電圧センサ33で検出される電圧が所定の許容値を下回っているとの条件、バッテリ残量センサ34で検出されるバッテリ残量が所定の許容値を下回っているとの条件、回転数センサ35で検出される回転数が所定の上限回転数以上であるとの条件、車速センサ36で検出される車速が所定の上限速度以上であるとの条件、及び/又は、センサ異常検知部45で異常が検知されたとの条件を有する。
【0042】
ステップS2において、出力制限モード移行条件が成立していないと判定されるとステップS8に進む。ステップS2において、出力制限モード移行条件が成立したと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS3)。そして、コーナリング中でないと判定されると(ステップS3:N)、モータ出力の目標値を出力制限モードのものに徐々に近づけるようにして出力制限モードへと自動的に移行する(ステップS4)。
【0043】
一方、出力制限モード移行条件が成立していても(ステップS2:Y)、コーナリング中であると判定されると(ステップS3:Y)、出力制限モードへの移行を禁止する(ステップS5)。即ち、
図5に示すように、通常モードにおけるモータ出力の目標値が一定であると仮定した場合、出力制限モード移行条件が成立したとき、コーナリング中でなければ、非通常モードである出力制限モードに移行する(
図5の二点鎖線II)。一方、出力制限モード移行条件が成立していても、コーナリング中であれば、モータ出力の目標値を通常モードのものから出力制限モードのものに減少させることなく、コーナリングが終了するまで通常モードのまま維持する(
図5の実線I)。これにより、コーナリング中にモード移行に伴う電動モータ18の出力変化が発生することが防止される。よって、運転指令以外の状態値に応じて通常モードから出力制限モードに移行する電動二輪車1において、コーナリング中の運転フィーリングを向上させることが可能となる。また、それと同時に、モード移行制御部50は、モード移行を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップS6)、ステップS2に戻る。これにより、電動モータ18の出力変化を抑制している旨が運転者に通知されるので、運転者は電動二輪車1の制御状態を把握することができる。
【0044】
次いで、出力制限モード移行条件の成立中に(ステップS2:Y)、コーナリングが終了したと判定されると(ステップS3:N)、モータ出力の目標値を出力制限モードのものに徐々に近づけるようにして出力制限モードへと自動的に移行する(ステップS4)。このように、モード移行時にモータ出力の目標値をモード移行後の目標値に徐々に近づけることで、運転フィーリングを良好に保ちながらモード移行が完了できることとなる。
【0045】
図4に示すように出力制限モードに移行すると、通常モードに比べてモータ出力の目標値が低くなるように制限される(ステップS21)。このように電動モータ18の出力が減少することで、例えば、電動モータ18、バッテリ21及び/又はインバータ22を保護したり、バッテリ21の放電能力低下時やセンサ異常時に走行速度を落としたり、回転数にリミッタを掛けたりすることができる。そして、出力制限モード移行条件が成立しているか否かを判定し(ステップS22)、まだ成立していればステップ21に戻る。ステップS21において、出力制限モード移行条件が成立していないと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS23)。そして、ステップS23において、コーナリング中であると判定されると、通常モードへの復帰(移行)を禁止する(ステップS24)。また、それと同時に、モード移行制御部50は、通常モードへの復帰を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップ25)、ステップS22に戻る。次いで、出力制限モード移行条件の成立していない状態で(ステップS22:N)、コーナリングが終了したと判定されると(ステップS23:N)、出力制限を解除し(ステップS26)、モータ出力の目標値を通常モードのものに徐々に近づけるようにして通常モードへ移行する(ステップS1)。
【0046】
また、
図6に示すように、コーナリング中であると判定される前から出力制限モードにある場合には、出力制限モード移行条件が非成立となったとき、コーナリング中でなければ、出力制限を解除して通常モードに移行する(
図6の二点鎖線II)。一方、出力制限モード移行条件が非成立となっても、コーナリング中であれば、モータ出力の目標値を出力制限モードのものから通常モードのものに増加させることなく、コーナリングが終了するまで出力制限モードのまま維持する(
図6の実線I)。よって、運転指令以外の状態値に応じて出力制限モードから通常モードに移行する電動二輪車1において、コーナリング中の運転フィーリングを向上させることが可能となる。そして、出力制限モード移行条件が非成立となった状態で(ステップS22:Y)、コーナリングが終了したと判定されると(ステップS23:N)、モータ出力の目標値を通常モードのものに徐々に近づけるようにして出力制限を解除し(ステップS26)、通常モードへと自動的に移行する(ステップS1)。
【0047】
図7は、
図3に示す回生モードを説明するフローチャートである。
図8は、
図3に示す制御における回生モード移行に関するグラフである。
図9は、
図3に示す制御における回生モード移行に関する別のグラフである。
図3及び7に示すように、移行条件判定部47は、ステップS7において、回生モード移行条件が成立しているか否かを判定する。回生モード移行条件は、回生動作を実行可能な可能条件と、回生動作の開始を示す開始条件との両方が成立することを条件として設定される。可能条件は、回生動作に関係する電気機器の電気的条件であって、例えばバッテリが充電可能な所定の状態を満足するとの条件である。具体的には、バッテリ温度センサ32で検出されるバッテリ21の温度が所定の許容範囲内であるとの条件、バッテリ電圧センサ33で検出される電圧が所定値以下であるとの条件、及び/又は、バッテリ残量センサ34で検出されるバッテリ残量が所定値以下であるとの条件を有する。開始条件は、例えば路面に対する摩擦で回転される車輪がモータ出力軸へ動力を与える状態を満足するとの条件である。具体的には、クラッチスイッチ39によりクラッチ20が接続状態であることが検出され、かつ、回転数センサ35、車速センサ36、アクセル操作量センサ37及びブレーキセンサ38のうち少なくとも1つからの情報により車両が減速状態にあると判定されたとの条件や、運転者からのモータによるトルク発生の停止指令条件(回生開始指令)などの条件を有する。
【0048】
ステップS7において、回生モード移行条件が成立していないと判定されるとステップS12に進む。ステップS7において、回生モード移行条件が成立したと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS8)。そして、ステップS8において、コーナリング中であると判定されると、回生モードへの移行を禁止する(ステップS10)。これにより、回生モード移行条件が成立しても電動モータ18は発電状態とならずに駆動状態が維持される。よって、コーナリング中に回生モードに移行することにより、電動モータ18に発電による負トルクが発生して出力変動が大きくなることが防止される。また、それと同時に、モード移行制御部50は、モード移行を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップS11)、ステップS7に戻る。
【0049】
次いで、回生モード移行条件の成立中に(ステップS7:Y)、コーナリングが終了したと判定されると(ステップS8:N)、回生モードへと自動的に移行する(ステップS9)。
図7に示すように回生モードに移行すると、電動モータ18を駆動状態から発電状態に変え、走行慣性により後輪3から伝達される運動エネルギーを電動モータ18で電気エネルギーに回生し、バッテリ21に充電する(ステップS31)。
【0050】
次いで、回生モード移行条件が成立しているか否かを判定し(ステップS32)、まだ成立していればステップ31に戻る。ステップS32において、回生モード移行条件が成立していないと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS33)。そして、ステップS33において、コーナリング中であると判定されると、通常モードへの復帰(移行)を禁止する(ステップS34)。また、それと同時に、モード移行制御部50は、通常モードへの復帰を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップ35)、ステップS32に戻る。次いで、回生モード移行条件の成立していない状態で(ステップS32:N)、コーナリングが終了したと判定されると(ステップS33:N)、回生状態を解除して電動モータ18を発電状態から駆動状態に戻し(ステップS36)、通常モードへ移行する(ステップS1)。
【0051】
また、
図9に示すように、回生モード移行条件が成立して回生モードに移行し始めて回生トルクが増加している最中に、コーナリングを開始した旨が判定された場合には、コーナリング中のトルク変動を抑制するため、コーナリング中の回生トルクの増加を制限してもよく、例えば、コーナリング中の回生トルクを略一定としてもよい。そして、その場合に、回生モード移行条件が成立した状態でコーナリングが終了したと判定されると、目標の回生トルクに徐々に近づけるようにするとよい。
【0052】
図10は、
図3に示す出力急増モードを説明するフローチャートである。
図11は、
図3に示す制御における出力急増モード移行に関するグラフである。
図3及び10に示すように、移行条件判定部47は、ステップS14において、出力急増モード移行条件が成立しているか否かを判定する。出力急増モード移行条件は、出力急増動作を実行可能な可能条件と、出力急増動作の開始を示す開始条件との両方が成立することを条件として設定される。可能条件は、出力急増動作に関係する電気機器の電気的条件であって、例えばバッテリが充電可能な所定の状態を満足するとの条件である。具体的には、バッテリ温度センサ32で検出されるバッテリ温度センサ32で検出されるバッテリ21の温度が所定の許容範囲内であるとの条件、バッテリ電圧センサ33で検出される電圧が所定値以上であるとの条件、及び/又は、バッテリ残量センサ34で検出されるバッテリ残量が所定値以上であるとの条件を有する。開始条件は、運転者から急増出力を望む信号を直接または間接的に取得したとの条件である。具体的には、アクセルグリップ7が急加速操作された、即ち、アクセル操作量センサ37で検出されるアクセル操作量の増加率が所定値以上であると判定されたとの条件を有する。なお、アクセルグリップ7の急加速操作のほか、急加速スイッチ、クラッチによって非接続状態でアクセル操作されるなど特別な動作を条件としてもよい。
【0053】
ステップS12において、出力急増モード移行条件が成立していないと判定されるとステップS2に戻る。ステップS12において、出力急増モード移行条件が成立したと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS13)。そして、ステップS13において、コーナリング中であると判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリングの終盤であると判定されているか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、コーナリング判定部49が、コーナリングの終盤であるか否か、即ち、電動二輪車1がコーナーを脱出しようとしているか否かを判定するコーナー脱出判定部を兼ねており、例えば、バンク角センサ41により検出されるバンク角の増加率が正から負に反転したとき、及び/又は、コーナリング中にアクセル操作量が増加したときなどに、コーナリングの終盤であると判定する。
【0054】
そして、ステップS16において電動二輪車1がコーナリングの終盤であると判定されなかった場合には、出力急増モードへの移行を禁止する(ステップS15)。よって、
図11に示すように、通常状態が維持される。これにより、コーナリング中に出力急増モードに移行して出力急増条件が成立し、モータ出力が増量補正されて出力変動が大きくなることが防止される。また、それと同時に、モード移行制御部50は、モード移行を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップS16)、ステップS12に戻る。次いで、出力急増モード移行条件の成立中において(ステップS12:Y)、コーナリング中でないと判定されたときには(ステップS13:N)、モード移行制御部50は、出力急増モードへと移行させる(ステップS17)。また、出力急増モード移行条件の成立中において(ステップS12:Y)、コーナリングの終盤であると判定されたときにも(ステップS14:Y)、モード移行制御部50は、出力急増モードへと移行させる(ステップS17)。これによれば、コーナリングの終盤のときには、モータ出力の増量補正は禁止されずに大きな加速が許容されるので、コーナリング出口でのスムーズな加速走行を実現することができる。
【0055】
図10及び11に示すように、出力急増モードでは、通常モードにおけるアクセル操作量とモータ出力との対応関係に比べて、モータ出力を増量補正する(ステップS41)。これにより、アクセル操作量が急増したときにモータ出力が通常モードよりも一時的に増加し、瞬間的に通常よりも大きな加速が生じ、運転者の体感する加速レスポンスが向上する。
【0056】
次いで、出力急増モード移行条件が成立しているか否かを判定し(ステップS42)、まだ成立していればステップ41に戻る。ステップS42において、出力急増モード移行条件が成立していないと判定されると、モード移行制御部50は、コーナリング判定部49により電動二輪車1がコーナリング中であると判定されているか否かを判断する(ステップS43)。そして、ステップS43において、コーナリング中であると判定されると、通常モードへの復帰(移行)を禁止する(ステップS44)。また、それと同時に、モード移行制御部50は、通常モードへの復帰を禁止している際には、その旨を通知装置55により運転者に通知させ(ステップ45)、ステップS42に戻る。次いで、出力急増モード移行条件の成立していない状態で(ステップS42:N)、コーナリング中でないと判定されると(ステップS43:N)、モード移行制御部50は、出力急増を終了し(ステップS46)、通常モードへ移行させる(ステップS1)。
【0057】
以上のように本実施形態では、コーナーリング中においては、運転指令以外の出力変化を禁止することで、コーナリング中の運転フィーリングを向上させることができる。特に、運転者が体重移動を用いて車体を傾斜させてコーナリング走行する乗物である自動二輪車においては、運転指令以外の情報によるモータの出力変化が防がれることので、コーナリング中の運転フィーリングの向上効果が大きい。具体的には、コーナリング中に電動モータ、バッテリおよびインバータのような車両走行に関係する電気機器の異常を判断したとしても、コーナリング終了するまで出力状態を維持して、コーナリング中に出力変化が生じることを防ぐことで、コーナリング中の運転フィーリングを維持することができる。さらにコーナリング終了後には電気機器の異常発生時に起因した出力制限を実行することで、出力制限時に生じる走行フィーリング変化の影響を少なくして、電気機器の保護、異常状態での出力抑制走行などを図ることができる。同様にコーナリング中に電気機器の異常状態の解消を判断したとしても、コーナリング終了するまで出力制限状態を維持して、コーナリング中に出力が増大することを防ぐことで、コーナリング中の運転フィーリングを維持することができる。
【0058】
なお、上述したコーナリング中の出力変化制限は、運転指令以外の情報に限定されるため、コーナリング中であっても、運転者の意思に応じて車両出力を変化させることができ、操作性の低下が防がれる。また、回生動作の開始/終了および出力急増許可の開始/終了に起因する出力変化についても、コーナリング中に禁止することで、運転フィーリングの維持という同様の効果を得ることができる。なお、例外的にコーナリング終盤では、運転者の要求に基づく出力急増許可モードの実行を許可することで、運転者の望む走行操作を得ることができる。
【0059】
図12は、出力制限モード移行に関する第1変形例の
図8相当のグラフである。
図13は、出力制限モード移行に関する第2変形例の
図8相当のグラフである。前述した実施形態では、
図3及び5に示したようにステップS5(
図3)においてモード移行を禁止したが、その代わりに、
図12の実線Aに示すように、モード移行条件が成立して且つコーナリング中であると判定されたときには、モード移行条件が成立して且つコーナリング中ではないと判定されたときに比べて、電動モータ18の出力の時間変化率を低減するように出力変化を抑制してもよい。このようすれば、モード移行する際における電動モータ18の出力の変化率が低減されるので、モード移行を実施しながらもモード移行に伴う電動モータ18の出力変動を抑制することができる。さらにその代わりに、コーナリング中であると判定され且つモード移行条件が成立したときには、
図13の実線Aに示すように電動モータ18の出力の変化量を低減するようにしてもよい。このようすれば、モード移行する際における電動モータ18の出力の変化量が低減されるので、モード移行を実施しながらもモード移行に伴う電動モータ18の出力変動を抑制することができる。
【0060】
前記第1及び第2変形例のように、出力変化を禁止ではなく、出力変化を抑制することでも本発明の効果、すなわち走行フィーリングの低下を防ぐという効果を得ることができる。各変形例の発明によれば、コーナーリング中でも出力変化を緩和しつつ、出力変化を実行することで、コーナーリング中でも出力変化による効果を得ることができる。たとえば非コーナーリング時に比べれば変化幅又は時間変化が小さいかもしれないが、電気機器の保護効果、回生効果などを得ることができる。
【0061】
また、
図12及び13の一点鎖線Bに示すように、モード移行制御部50は、コーナリング中の車両運転状態(バンク角、モータ回転数、車速、ギヤ比、コーナー曲率の少なくとも1つ)に応じて電動モータ18の出力変化の抑制の程度を変化させてもよい。例えば、走行動力の変動の運転者への影響が小さい車両運転状態のときには、電動モータ18の出力変化の抑制の程度を小さくし(
図12及び13の実線A)、走行動力の変動の運転者への影響が大きい車両運転状態のときには、走行動力の変動の運転者への影響が小さい車両運転状態のときに比べて、電動モータ18の出力変化の抑制の程度を大きくする(
図12及び13の一点鎖線B)。換言すれば、車両運転状態が走行動力の変動の運転者への影響が大きい状態になるにつれて、モード移行条件が成立して且つコーナリング中ではないと判定されたときに比べて、電動モータ18の出力の時間変化率を小さくするようにしてもよい。また例えば、走行動力の変動の運転者への影響が小さい車両運転状態のときには、電動モータ18の出力変化を抑制せず、走行動力の変動の運転者への影響が大きい車両運転状態のときには、電動モータ18の出力変化を抑制するようにしてもよい。具体的には、バンク角センサ41で検出されるバンク角が所定の第1バンク角未満であるとき、回転数センサ35で検出されるモータ回転数が所定の第1回転数以上であるとき、車速センサ36で検出される車速が所定の第1車速以上であるとき、ギヤ位置センサ40で検出されるギヤ位置の減速比が所定値未満であるとき、及び/又は、コーナー曲率が所定値未満であるときなどに、走行動力の変動の運転者への影響が小さい車両運転状態であると判定すればよい。そうすれば、モータ出力変化の抑制の程度を小さくしたときにはレーンチェンジなどを迅速に行うことができ、モード移行による制御効果とコーナリング中の運転フィーリングの向上とを好適に両立することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、コーナリング判定部49はバンク角センサ41からの情報に基づいてコーナリング中か否かを判定したが、他の方法で行ってもよい。例えば、ステアリング角センサで検出される操舵角が所定値より大きくなったときにコーナリング中であると判定してもよいし、横加速度センサで検出される横加速度が所定値より大きくなったときにコーナリング中であると判定してもよいし、ジャイロセンサで検出される横方向の車体傾斜角が大きくなったときにコーナリング中であると判定してもよい。
【0063】
また、前輪回転数と後輪回転数との差に基づいてコーナリング判定をしてもよい。詳しくは、前後輪の車輪幅や断面半径が異なる場合には、車体のコーナーリングに対応して、前後輪の速度差が変化する。したがって、前後輪の速度差に関連する値に基づいて、車体のコーナリングの有無を判定できる。たとえば、後輪に比べて前輪の回転速度が所定値以上大きい場合に、コーナーリング状態として判断してもよい。
【0064】
また、本実施形態では、コーナリング状態として直立状態からの車両の傾斜角が所定角以上である場合としたがこれに限らず、複数のコーナーリングを連続して行なうスラローム走行についてもコーナリング状態として判断してもよい。この場合、コーナリング状態がスラローム走行の場合には、スラローム走行状態が終了する状態がコーナリングの終了であるとしてもよい。たとえば、前記傾斜角が所定値未満となってから所定時間、たとえば1秒が経過すればコーナリング終了として判断してもよい。これによってスラローム走行中に一時的に直立状態となっただけであるときに、コーナリング終了として誤判定する可能性を防ぐことができる。そのほか傾斜角が所定値未満に近づく場合の傾斜角の時間変化が短い場合などにはスラローム走行であると判断してもよい。またその他の方法にてスラローム走行判定を行なってもよい。当然にスラローム走行を含まない場合も本発明に含まれる。
【0065】
また本実施形態については、出力減少側および出力増大側のいずれについても、コーナーリング中の変化を抑制するとしたが、これに限定されず、出力減少側と出力増大側とのいずれか一方についてだけ抑制する場合も本発明に含められる。また本実施形態では、コーナリング中における、出力制限モード、回生モード、出力急増モードの3つの出力変化モードに関する出力変化を制限するようにしたが、すべて有する必要はなく、少なくともいずれか1つを制限する場合も本発明に含まれる。また本実施例では、制御開始から、出力制限モード、回生モード、出力急増モードの順で動作が行なわれたが、それら3つのモードの順序が異なっている場合も本発明に含まれる。また本実施形態で記載した運転モード移行例は一例であり、運転者から与えられる指令とは異なる情報に基づいて、運転モードを異ならせるものであれば、本発明を適用可能であって、本実施形態以外の運転モードへの移行例も含まれる。たとえば、走行状態に応じた回生力調整、トルク・回転数・走行速度の制限に起因する運転モード移行も含まれる。
【0066】
また、前述した
図5ではコーナリング中であると判定された状態で出力制限モード移行条件が成立したときにモード移行を禁止しているが、出力制限モード移行条件が成立して出力制限モードに移行している過渡期の状態でコーナリング中である(コーナリングが開始した)との判定がされたときも、その時点でモード移行を一時停止してモード移行に伴う出力変化を抑制し、コーナリングが終了してから移行を完了させてもよい。また、乗物の走行駆動源は、電動モータ18に限らず、エンジンなどの駆動源でもよい。また、乗物は二輪車に限らず、四輪車、小型滑走艇などの乗物に適用可能であるが、コーナリング時に車体を傾斜させる乗物に好適に用いられる。また、本実施形態では、コーナリング中に出力抑制するとしたが、走行フィーリングを重視する第1状態と、電気機器の保護を重視する第2状態とで、コーナーリング中の出力抑制の有無を切換えてもよい。すなわち第1状態ではコーナーリング中の出力抑制を行わず、第2状態ではコーナーリング中の出力抑制をイ行うようにしてもよい。
【0067】
また本実施形態では、コーナリング中であることによりモード移行を禁止している状態からコーナリングが終了すると、モータ出力を移行後のモードの目標値に徐々に近づけたが一気に近づけてもよい。また、出力抑制の解除は運転者の意思で出来るようにしてもよい。たとえば出力抑制解除を指示するためのスイッチが設けられ、運転者の操作によってスイッチから与えられる信号によって出力抑制を解除してもよい。これによって利便性を向上することができる。また抑制変化の設定、抑制モードに入るしきい値などが変化可能に構成されてもよい。
【0068】
また、コーナリング終盤を判定する方法としては、コーナーリング判定後に、傾斜角(操舵角)が小さくなった場合、傾斜角(操舵角)変化が小さくなった場合、傾斜角(操舵角)変化が反転した場合、ギアチェンジされた場合、クラッチ操作された場合、アクセル操作増加された場合などに、コーナリング終盤であると判定するようにしてもよい。また、制御対象であるモータ出力として、トルクを用いる代わりにモータ回転速度を用いてもよい。また、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。