特許第5767714号(P5767714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767714
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】リン酸セメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 12/02 20060101AFI20150730BHJP
   C04B 28/34 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/24 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 16/08 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/16 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/18 20060101ALI20150730BHJP
   C04B 14/08 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C04B12/02
   C04B28/34
   C04B14/24
   C04B16/08
   C04B14/16
   C04B14/18
   C04B14/08
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-534990(P2013-534990)
(86)(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-540098(P2013-540098A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011056638
(87)【国際公開番号】WO2012054429
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】12/909,483
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ・デュービー
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0132608(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101381219(CN,A)
【文献】 特開2008−169108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度セメント製品を製造するためのリン酸セメント組成物であって、
リン酸一カリウムと、
前記リン酸一カリウム100部当たり20〜100部の量のIIA族金属酸化物と、
前記リン酸一カリウム100部当たり3〜30部の量のオルトリン酸一カルシウムとを含む組成であり、
セメントスラリーとしたとき9未満のpHを有し、且つそのセメントスラリーを硬化させて得られる硬化物が24時間で13.5メガパスカル(1958psi)を超える圧縮強度を有するように、前記リン酸一カリウム、前記IIA族金属酸化物、及び前記オルトリン酸一カルシウムの比率を選択することを特徴とするリン酸セメント組成物。
【請求項2】
前記IIA族金属が、マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のリン酸セメント組成物。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムが、硬焼酸化マグネシウム又は死焼酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項2に記載のリン酸セメント組成物。
【請求項4】
砂、中空ガラスミクロスフェア、中空セラミックミクロスフェア、中空プラスチックミクロスフェア、軽石、膨張パーライト、珪藻土及びこれらの組合せからなる群より選択される充填剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のリン酸セメント組成物。
【請求項5】
不連続補強繊維を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のリン酸セメント組成物。
【請求項6】
連続補強材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のリン酸セメント組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のリン酸セメント組成物と水とで流動性にしたことを特徴とするリン酸セメントスラリー。
【請求項8】
リン酸セメント製品を製造する方法であって、
請求項7に記載のリン酸セメントスラリーを得る工程と、
前記リン酸セメントスラリーをセメント製品の形にする成形工程と、
セメント製品の形にしたセメントスラリーを硬化させる工程と、を含んでなることを特徴とするリン酸セメント製品の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程が、床材製品の形にすることを特徴とする請求項8に記載のリン酸セメント製品の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程が、パネル製品の形にすることを特徴とする請求項8に記載のリン酸セメント製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
セメントは、多くの理由から建築資材として一般に使用されている。セメントは、実質的にどのような形態にでも成形又は成型することができる。液体セメントスラリーを成形型に流し込んで、コンクリートブロック等の製品を製造することができる。また、セメントスラリーは、現場打ち(poured)セメントの床又は壁を形成するのに有用である。床用組成物は、セルフレベリング性であり、経時的に強度が増すことが知られている。
【0002】
セメント膠着材用の典型的なセメント組成物は、ポルトランドセメント等のケイ酸セメント、砂又はその他骨材、水、及び目的とする用途に特異的な添加剤でなるものである。用途が現場打ち床である場合、例えば、添加剤は、床をセルフレベリング性にするための流動化剤滑らかで強い表面に仕上げるためにオープンタイムを長くするため凝固遅延剤が加えられ、凝固するセメントスラリーの生強度を改善するために任意石膏が加えられる。
【0003】
セメントに水を添加すると、化学的水和反応が始まる。この反応は発熱反応であって、水がセメントに化学的に結合して結晶を形成する。前記結晶の形状は、出発材料に依存する。多くの場合、様々なセメントを用いて、特定の形状の結晶を有するか又は特定の強度特性を発揮する組成物が製造される。含水結晶が形成されるにつれて、それらは織り合わせ型(interwoven)結晶マトリックスになる。結晶マトリックスの強度は、結晶が互いにどの程度容易に分離するかに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遅乾性セメントは、建造に必要な時間を増加させてコスト高となる。例えば、床を打った直後では、作業者や装備の重量を支えるのに十分な強度を有しないので、作業ができない。速やかに硬化し且つ速やかに強度発現するセメント組成物が当技術分野において必要とされている。
【0005】
多くのセメントの別の問題点は、腐食性が高いことである。皮膚と接触した場合、腐食性の高いセメントスラリーは刺激が強い。また、タイル又はカーペット用の接着剤を分解する場合もある。接触する人々及び製品に対する適合性を高めるために、より低pHのセメントが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
高強度セメント製品を製造するためのリン酸セメント組成物は、リン酸一カリウムと、リン酸一カリウム100部当たり20〜100部の量のIIA族金属酸化物と、リン酸一カリウム100部当たり3〜30の量のオルトリン酸一カルシウムとを含む組成であり、セメントスラリーとしたとき9未満のpHを有し、且つそのセメントスラリーを硬化させて得られる硬化物が24時間で13.5メガパスカル(1958psi)を超える圧縮強度を有するように、リン酸一カリウム、IIA族金属酸化物、及びオルトリン酸一カルシウムの比率を選択する。
【0007】
本発明のリン酸セメント組成物は、水と混合したとき、非常に速やかな凝固挙動を示す。セメントスラリーの凝固時間は、原材料の比率を変動させることによって、即時凝固〜混合してから数時間後の凝固まで変動させることができる。この凝固時間の汎用性によって、本発明のリン酸セメント組成物は、多くの用途において非常に有用となる。
【0008】
また、凝固物の硬度も、原材料の比率を選択することによって変動させることができる。原材料の混合後2時間以内に41メガパスカル(5947psi)を超える圧縮強度を発現する凝固物とすることもできる。
【0009】
リン酸セメント組成物の別の利点は、セメントスラリーのpHを目的に合わせて調整できることである。セメントスラリーは、任意に7.0〜9.0、好ましくは7.08.0の範囲のpHを有するように調製される。pHをよりうまく制御すると、アルカリ性を低くすることができ、他の建築資材との適合性が高くなり、且つセメントスラリーがより使用者にとって使い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1表1〜5のデータをグラフにしたものであり、MCPとMgOの量によるリン酸セメント組成物が、セメントスラリーのpHに及ぼす影響を示している。
図2表1〜5のデータをグラフにしたものであり、MCPとMgOの量によるリン酸セメント組成物が、セメントスラリー硬化物の24時間圧縮強度に及ぼす影響を示している。
図3表1〜5のデータをグラフにしたものであり、MCPとMgOの量によるリン酸セメント組成物が、セメントスラリー硬化物の7日間湿態圧縮強度に及ぼす影響を示している。
図4表1〜5のデータをグラフにしたものであり、MCPとMgOの量によるリン酸セメント組成物が、セメントスラリー硬化物の7日間乾態圧縮強度に及ぼす影響を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、高強度セメント製品を製造するためのリン酸セメント組成物に関する。リン酸セメント組成物は、混合することによって膠着材となる。以下の文章で、特に明記しない限り、「部」と称する全ての百分率、比率、又は量は、成分又は成分の組合せの重量に基づく。リン酸セメント組成物の基本成分は、リン酸一カリウム(MKP)、IIA族金属酸化物、及びオルトリン酸一カルシウム(MCP)である。
【0012】
リン酸セメント組成物の基本成分の1つは、リン酸一カリウム(MKP)である。適切なMKPの例は、ICL Performance Products LP(St.Louis,MO)から入手可能である。
【0013】
IIA族金属酸化物は、好ましくは、酸化マグネシウム(「MgO」又はマグネシア)である。酸化マグネシウムは、一般的に、マグネシウム化合物を焼成することによって得られ、MgOは、軽焼、硬焼、及び死焼の3つの形態で製造される。軽焼MgOが、最も活性が高い。軽焼MgOは、700℃〜1000℃の温度で焼成される。硬焼は、1000℃〜1500℃の温度で調製される。死焼又は過焼MgOは、最も厳しい加工条件下で調製され、最も活性が低い。この耐火性等級のマグネシアは、1500℃超の温度でか焼される。硬焼及び死焼等級の酸化マグネシウムが、本発明のリン酸セメント組成物において最も有用である。推奨されるMgOの供給元は、Martin Marietta Magnesia Specialties(Baltimore,MD)である。
【0014】
本発明のリン酸セメント組成物の実施形態では、IIA族金属酸化物は、MKP100部当たり20部〜100部の量で、又はMKP100部当たり80部未満の量で用いられる。幾つかの実施形態は、同じ基準で、40部〜80部の量のIIA族金属酸化物を用いる。任意で、IIA族金属酸化物は、MKP100部当たり50部〜70部であってよい。
【0015】
リン酸セメント組成物の別の成分は、オルトリン酸一カルシウム(MCP)である。幾つかの実施形態では、MCPは、MKP100部当たり30部の量で使用される。幾つかの他の実施形態は、MKP100部に基いて7.530部の量のMCPを使用する。幾つかの他の実施形態は、MKP100部に基いて12.520部の量のMCPを使用する。MCPの供給元の例は、ICL Performance Products LP(St.Louis,MO)である。
【0016】
リン酸セメント組成物は、任意に、フライアッシュ、シリカフューム、軽石、珪藻土、パーライト、メタカオリン、スラグ、破砕シリカ、石膏、金属炭酸塩、タルク、雲母、砂、中空ガラスミクロスフェア、中空セラミックミクロスフェア、中空プラスチックミクロスフェア又はこれらの組合せから選ばれる1以上の無機鉱物又は充填剤添加剤を含むことができる。鉱物又は充填剤添加剤は、任意の利用可能な形態で使用されることが意図される。一例として、フライアッシュは、クラスC又はクラスFのフライアッシュ使用できる。石膏は、二水石膏、半水石膏又は硬石膏の形態で存在してよいパーライトは、天然の形態であってもよく、膨張していてもよい。リン酸セメント組成物中、鉱物又は充填剤添加剤は、MKP及びMgO及びMCPの合計100部に基づいて、400重量部以下の量である。フライアッシュ鉱物又は充填剤添加剤として用いるとき、MKPMgO及びMCPの合計100部に対して4部以下の量のフライアッシュはリン酸セメント組成物の主成分であるMKP、金属酸化物、MCPのいずれかに置き換えて、十分な機械性能を維持することができる。
【0017】
リン酸セメント組成物のセメントスラリーを凝固及び乾燥させて得られる硬化物の密度は、1602400Kg/m(10〜150ポンド/立方フィート)で変動する。幾つかの実施形態で、その密度は、9601600Kg/m(60〜100ポンド/立方フィート)又は11201440Kg/m(70〜90ポンド/立方フィート)である。発泡体の添加又は軽量充填剤の使用を含む幾つかの方法のうちのいずれかを用いて、密度を変動させることができる。軽量充填剤は、膨張パーライト、中空ミクロスフィア、及びこれらの組合せがある。発泡体を用いて密度を低下させるとき、リン酸セメント組成物に発泡剤を加えて混合して発泡させる、又はブレンドされたリン酸セメント組成物に予め作成した発泡体合わせる。
【0018】
補強材は、強度を付加するためにパネルコア等の製品の表面上において任意で使用される。1つの選択肢は、パネルコアを作製するために用いられる流体セメントに不連続繊維を添加することである。適切な不連続繊維の例は、細切のEガラス繊維、玄武岩繊維、耐アルカリ性ガラス繊維、セラミック繊維、有機高分子繊維(PVA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、セルロース)、金属繊維及びこれらの組合せである。別の選択肢は、流体セメントに連続繊維を添加することである。連続補強材の例は、繊維ガラスメッシュ、ガラスマット、セラミック繊維、有機高分子繊維(ケブラー繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維)、又はこれらの組合せである。また、連続又は不連続な補強材はいずれも、セメントで作製されたパネルの表面上において有用である。また、コアにおいて不連続繊維を使用し、羽目の表面上において連続補強材を使用する等の、補強材の任意の組合せの使用も考えられる。
【0019】
セメントスラリーの一つの態様は、pHである。本発明のリン酸セメント組成物における実施形態は、セメントスラリーとしたとき9未満のpHを有する。また、多くの好ましい態様は、未満のpHを有する。別の有用なpH範囲は、7.08.5である。MKP、MgO及びMCPの比率を変動させて、満足なpHを得ることができる。pHを低下させるためには、MKP及びMCPの量に対してMgOの比率を少なくする。
【0020】
また、本発明のリン酸セメント組成物のセメントスラリーを硬化させて得られた硬化物は、強度が高い。幾つかの実施形態では、本発明のリン酸セメント組成物は、24時間で10メガパスカル(1450psi)又は24時間で13.5メガパスカル(1958psi)を超える圧縮強度を有するセルフレベリング床材製品を作製するために使用される。セルフレベリング床材製品の幾つかの実施形態では、20メガパスカル(2900psi)を超える圧縮強度が24時間で得られる。多くの実施形態において、20メガパスカル(2900psi)を超える圧縮強度の硬化物が、2時間以内に得られる。速やかな凝固と強度発現は、例えば、作業者が、セメントを打った後直ちに作業を続けることができるので、床材において有利である。本発明で使用する「強度」は、全体としての材料強度の尺度である。これは、表面硬度と区別するためであり、必ずしも永続的に強い物質を示すものではない。
【0021】
リン酸セメント組成物は乾燥粉末であり、水と合わせて流動性のセメントスラリーとする。水は、目的とする用途に対して適切な稠度にするのに十分な量使用される。ある用途は、噴霧可能なセメントスラリーを必要とする。床材製品を調製するとき、多くの場合、セルフレベリングなセメントスラリーとすることが重要である。一般的に、セルフレベリングなセメントスラリーは、仕上げ床よりも多くの水を必要とするが、この目的のために公知である分散剤又はその他の化学物質を添加することによって流動性を高めることもできる。幾つかの実施形態では、水は、乾燥リン酸セメント組成物100部当たり45の量で用いられる。他の実施形態は、乾燥リン酸セメント組成物100部当たり7.540部の範囲で用いる。更に他の実施形態では、水は、乾燥リン酸セメント組成物100部当たり1030部の量で添加される。
【0022】
セメントスラリーを作製するための水は、セメントスラリー及び凝固物の両方の特性を最もよく制御するために、できる限り純粋でなければならない。促進剤から凝固遅延剤まで多岐にわたるセメントの凝固時間を変化させるための塩及び有機化合物が周知である。幾つかの不純物は、噛み合い(interlocking)結晶マトリクスを形成するので構造が不規則になり、凝固物の強度を低下させる。したがって、できる限り夾雑物を含まない水を使用することにより、セメントスラリーの稠度及び凝固物の強度を大きくすることができる。
【0023】
リン酸セメント組成物をセメントスラリーとするのは、当技術分野において公知である通り、任意の方法で合わせることができる。幾つかの実施形態では、全ての乾燥成分を合わせ、乾燥リン酸セメント組成物として袋詰めされて販売されている。作業現場において、乾燥リン酸セメント組成物を水と混合して、セメントスラリーを形成する。セメントスラリーを作製する別の方法は、合わせた乾燥成分をミキサーに添加することである。また、幾つかの乾燥成分を、順次又は同時に、他の成分とは別々に水に添加してもよい。本発明の幾つかの実施形態により、非常に速やかな硬化を実現することができる。製品に成形される前にセメントスラリーが凝固しないように、成分の組合せ及び混合が十分に速やかに行われるよう注意しなければならない。
【0024】
本発明のリン酸セメント組成物を用いて、構造用パネル、屋根材下敷、流し込み可能な下敷、屋根瓦、外壁羽目板部品、固体又は中空部分を有する構造用形材、パッチング材、シンセットモルタル又はグラウト、傾斜安定化のためのコーティング又は吹付コンクリートなど、これらに限定されない様々な製品を作製することができる。
【0025】
構造用パネルを製造するために用いるとき、セメントスラリーとして成形型に流し込むか、又は当技術分野において公知の任意の方法によって連続鋳造法を用いてパネルを製造する。セメントパネルは、床、屋根、及び外装用途に用いられる。パネルは、任意、細切のEガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、高分子繊維、金属繊維等の不連続繊維で補強される。別の選択肢は、繊維ガラスメッシュ、ガラスマット、玄武岩マット及びメッシュ、スクリム及び無機材料(セラミック繊維)や有機材料(ケブラー繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維などの有機高分子繊維)から製造される不織布マット等の連続補強材の使用である。セメントスラリーは、ミキサーから移動表面上に流し込んで堆積させる、又は化粧材上に直接流し込む。ここで、化粧材は、紙、繊維ガラス、スクリム、プラスチックシート又は他の公知の化粧材である。補強材はいずれも、パネルの表面、パネルのコア、又は両方に存在してよい。これら補強材はいずれも、不連続繊維及び連続マットを共に用いるか、又は不連続繊維がパネルのコアに存在し、連続繊維マットがパネルの表面に存在する等、任意の他の補強材と合わせてもよいと考えられる。
【0026】
本発明の別の実施形態は、応力外皮パネルである。このパネルは、内部又は外部の下地板用途として、壁パネルとして、外装パネルとして、屋根材下敷として有用である。本発明に係る応力外皮パネルは、セメント上に外皮補強材を用いて製造することができる。外皮補強材の例は、繊維ガラスメッシュ、ガラスマット、玄武岩マット及びメッシュ、無機材料(セラミック繊維)や有機材料(ケブラー繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維などの有機高分子繊維)から製造される不織布マット、セラミック繊維、有機高分子繊維(ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維等)、金属繊維等があり、これらに限定されない。また、これらパネルは、屋根材下敷、外装パネル、断熱パネル、内張りタイル及びパネルとして有用である。
【0027】
床張材下敷は、床の占めるスペース上にセメントスラリーを直接注ぐことにより調製される。下敷は、セルフレベリング型であってもよく、又は注いで、従来の仕上用具を使用して仕上げてもよい。セルフレベリング型のセメントスラリーは、流動性を改善する分散剤又は他の添加剤の添加により、他の下敷よりも粘度が低いことが多い。また、下敷を流動可能にするために更に水を使用してもよいが、水が多すぎると、硬化物の強度が低下する場合がある。また、流し込み可能なリン酸セメント組成物は、コンクリート及び他の物質のスラブ上の保護下敷として有用である。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態は、成形可能であるが、セルフレベリング性ではない。これら実施形態は、道路、シンセットモルタル、注入材及び壁板の目地材、セメントボード及び他の用途のための修復及びパッチング材を含むが、これらに限定されない。また、セメントのコーティング、噴霧可能なコーティング、及び傾斜安定化及びトンネル覆工のためのショットクリーティグを含むコーティングとして使用することも考えられ、本発明のリン酸セメント組成物は、強く早い凝固、及び速やかな早強度が有利である任意の用途において用いることができる。
【0029】
本発明の他の実施形態は、屋根瓦、外壁羽目板部品、壁パネル、床パネル、屋根パネル、固体又は中空部分を有する構造用形材、合成セラミックタイル及び合成石である。
【実施例】
【0030】
リン酸一カリウム(MKP)、IIA族金属酸化物、オルトリン酸一カルシウム(MCP)の相対量を変えた一連のリン酸セメント組成物を調製した。IIA族金属酸化物として、死焼酸化マグネシウムを選択した。
1〜5に示すMKP、MgO、及びMCPの他に、各セメントサンプルは、FILLITE 500(登録商標)として知られている充填剤360グラム、水450グラム及びホウ酸12グラムを加えた。中、「24時間」と記載された列は、硬化物の24時間圧縮強度(psi)(ニュートン/平方センチメートル)であり、「7日間湿態」は、硬化物の7日間湿態圧縮強度(psi)(ニュートン/平方センチメートル)であり、「7日間乾態」は、硬化物の7日間乾態圧縮強度(psi)(ニュートン/平方センチメートル)である。pHは、凝固前のセメントスラリーのpHである。
【0031】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0032】
図1〜4は、リン酸セメント組成物におけるMCP、MKP、及びMgOの比率を変化させることによる効果を示す。図1では、凝固前のセメントスラリーのpHを報告する。MgOの比率が低いと、pHは、一般的に、MCPの量と共に上昇する。しかし、MgOが70〜80部の場合、最高pHは、最低量のMCPで生じる。
【0033】
24時間圧縮強度を図2に要約する。0MCP及び最高量のMCPでは、圧縮強度は、明らかに非常に低かった。MKS100部当たりMCP3.75〜30部等の中間量のMCPでは、MKP100部当たりMgO60部未満のMgO濃度でより高い強度が生じた。
【0034】
同様に、7日間湿態及び乾態圧縮強度は、全範囲のMgO濃度にわたって観察したとき、中間値のMCPで最も高い。したがって、これら実験の結果は、一定濃度のMKPにおいて、請求の範囲のMCP及びMgOを支持する。
【0035】
リン酸セメント組成物の具体的な実施形態を図示及び記載してきたが、具体的な実施形態の要素が他の実施形態の要素と交換可能であることを当業者は理解するであろう。より広い態様における本発明から逸脱することなく、且つ以下の特許請求の範囲に記載の通り、これら及び他の変更及び改変を行うことができる。
図1
図2
図3
図4