特許第5767735号(P5767735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767735
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ラジエータキャップ
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   F01P11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-95940(P2014-95940)
(22)【出願日】2014年5月7日
(62)【分割の表示】特願2010-286331(P2010-286331)の分割
【原出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2014-139446(P2014-139446A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】小室 朗
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−138838(JP,A)
【文献】 特開平01−290917(JP,A)
【文献】 特開2000−179340(JP,A)
【文献】 米国特許第05071020(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(1)の筒状注水口(2)の内周または外周に螺着されて、その注水口(2)内に挿入され、開口が下方に向けられた有底の筒部(4)を有するアッパーキャップ(5)と、
筒状に形成され、その内面の下端部に弁座(6)が設けられ、その上端部内周がアッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着されるロアーキャップ(7)と、
アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部とロアーキャップ(7)の内部との間に内装され、正圧弁(8)、加圧スプリング(9)、負圧弁(10)を有する弁ユニット(11)とを具備するラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周が、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着され、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部と前記ロアーキャップ(7)の内部との間に内装される弁ユニット(11)のうち、負圧弁(10)が爪部を有し、その爪部により、負圧弁(10)が両キャップ(5)(7)の内部で係脱自在に係止され、
前記ロアーキャップ(7)の下端部の底部(23)に、複数のスリット(24)が周方向に離間し、且つそのスリット(24)の内部が下方に拡開する段付き(25)に形成され、
前記爪部として、前記負圧弁(10)の外周に、前記スリット(24)に整合する弾性変形する複数の第1爪部(26)が下方に突設され、
その第1爪部(26)の先端が、スリット(24)の前記段付き(25)内に昇降自在で且つその段部で係脱自在に係止されることを特徴とするラジエータキャップ。
【請求項2】
タンク(1)の筒状注水口(2)の内周または外周に螺着されて、その注水口(2)内に挿入され、開口が下方に向けられた有底の筒部(4)を有するアッパーキャップ(5)と、
筒状に形成され、その内面の下端部に弁座(6)が設けられ、その上端部内周がアッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着されるロアーキャップ(7)と、
アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部とロアーキャップ(7)の内部との間に内装され、正圧弁(8)、加圧スプリング(9)、負圧弁(10)を有する弁ユニット(11)とを具備するラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周が、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着され、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部と前記ロアーキャップ(7)の内部との間に内装される弁ユニット(11)のうち、負圧弁(10)が爪部を有し、その爪部により、負圧弁(10)が両キャップ(5)(7)の内部で係脱自在に係止され、
前記爪部として、前記負圧弁(10)の中心軸(29)の先端部に、弾性変形する複数の第3爪部(30)が互いに離間して突設され、
前記正圧弁(8)の中心孔(31)の上端の孔縁部に負圧用スプリング(32)の下端が着座され、前記負圧用スプリング(32)の上端に補助板(33)が載置され、
前記補助板(33)の中心孔(34)の孔縁に前記中心軸(29)の第3爪部(30)が係脱自在に係止されるラジエータキャップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周に内ネジ(7b)が形成され、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に外ネジ(5g)が形成され、それらを螺着することにより、前記ロアーキャップ(7)及びアッパーキャップ(5)が係脱自在に止着されたラジエータキャップ
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のラジエータキャップにおいて、
前記弁ユニット(11)の正圧弁(8)が、被保持部(23a)を有し、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の下端内周に、弁保持部(21)が突設され、
前記弁保持部(21)に係脱自在に係止される前記被保持部(23a)が正圧弁(8)の外周に形成されたラジエータキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車用エンジンの冷却水冷却用ラジエータにおいて、そのタンク上端に設けられた注水口を開閉自在に閉塞するキャップに関し、特にキャップ内に弁座、正圧弁および負圧弁を設けたプラスチック製のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ内に弁座、正圧弁および負圧弁を設けたものとして、下記特許文献1〜特許文献3のものが提案されている。
これらは、いずれもキャップの上部部材と下部部材とを、ともに樹脂材で成形し、その下部部材を筒状に形成して、その内部に弁座を設け、両部材間に正圧弁および負圧弁等の弁ユニットを内装したものである。これは従来のタンクのフィラネック側に弁座を設けたものに比べて、加圧調整精度の信頼性が向上するとともに小型化、低コスト化が図れる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US005603425A
【特許文献2】実開昭58−042324号公報
【特許文献3】特許第4106820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記キャップ内に弁座を有し、内部に弁ユニットを設けたラジエータキャップは、その組立生産の際に、正圧弁、負圧弁、加圧スプリング、ガスケット、負圧スプリングをそれぞれキャップ内に収め、取外せないようにキャップ外装を溶着等により完全に固定する。そのため、後のメンテナンス性に欠ける欠点がある。例えば、キャップ内部のガスケットに異物が付着して、流路の詰りが発生した場合、それを取除くことができない。
そこで、本発明はキャップのメンテナンス性を向上するとともに、生産時に製造容易なものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、タンク(1)の筒状注水口(2)の内周または外周に螺着されて、その注水口(2)内に挿入され、開口が下方に向けられた有底の筒部(4)を有するアッパーキャップ(5)と、
筒状に形成され、その内面の下端部に弁座(6)が設けられ、その上端部内周がアッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着されるロアーキャップ(7)と、
アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部とロアーキャップ(7)の内部との間に内装され、正圧弁(8)、加圧スプリング(9)、負圧弁(10)を有する弁ユニット(11)とを具備するラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周が、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着され、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部と前記ロアーキャップ(7)の内部との間に内装される弁ユニット(11)のうち、負圧弁(10)が爪部を有し、その爪部により、負圧弁(10)が両キャップ(5)(7)の内部で係脱自在に係止され、
前記ロアーキャップ(7)の下端部の底部(23)に、複数のスリット(24)が周方向に離間し、且つそのスリット(24)の内部が下方に拡開する段付き(25)に形成され、
前記爪部として、前記負圧弁(10)の外周に、前記スリット(24)に整合する弾性変形する複数の第1爪部(26)が下方に突設され、
その第1爪部(26)の先端が、スリット(24)の前記段付き(25)内に昇降自在で且つその段部で係脱自在に係止されることを特徴とするラジエータキャップである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、タンク(1)の筒状注水口(2)の内周または外周に螺着されて、その注水口(2)内に挿入され、開口が下方に向けられた有底の筒部(4)を有するアッパーキャップ(5)と、
筒状に形成され、その内面の下端部に弁座(6)が設けられ、その上端部内周がアッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着されるロアーキャップ(7)と、
アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部とロアーキャップ(7)の内部との間に内装され、正圧弁(8)、加圧スプリング(9)、負圧弁(10)を有する弁ユニット(11)とを具備するラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周が、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に係脱自在に止着され、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の内部と前記ロアーキャップ(7)の内部との間に内装される弁ユニット(11)のうち、負圧弁(10)が爪部を有し、その爪部により、負圧弁(10)が両キャップ(5)(7)の内部で係脱自在に係止され、
前記爪部として、前記負圧弁(10)の中心軸(29)の先端部に、弾性変形する複数の第3爪部(30)が互いに離間して突設され、
前記正圧弁(8)の中心孔(31)の上端の孔縁部に負圧用スプリング(32)の下端が着座され、前記負圧用スプリング(32)の上端に補助板(33)が載置され、
前記補助板(33)の中心孔(34)の孔縁に前記中心軸(29)の第3爪部(30)が係脱自在に係止されるラジエータキャップである。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のラジエータキャップにおいて、
前記ロアーキャップ(7)の上端部の内周に内ネジ(7b)が形成され、前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の外周に外ネジ(5g)が形成され、それらを螺着することにより、前記ロアーキャップ(7)及びアッパーキャップ(5)が係脱自在に止着されたラジエータキャップである。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のラジエータキャップにおいて、
前記弁ユニット(11)の正圧弁(8)が、被保持部(23a)を有し、
前記アッパーキャップ(5)の筒部(4)の下端内周に、弁保持部(21)が突設され、
前記弁保持部(21)に係脱自在に係止される前記被保持部(23a)が正圧弁(8)の外周に形成されたラジエータキャップである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又は請求項2に記載の発明のラジエータキャップは、そのアッパーキャップ5とロアーキャップ7とが着脱自在に分離できるようにされているから、内部の弁ユニット11を取外すことが可能で、メンテナンス性と生産性を向上させることができる。例えば、キャップ内部のガスケットに異物が付着して流路の詰りが発生した場合、アッパーキャップ5とロアーキャップ7を着脱自在に分離して、それを取除くことができる。
また、前記アッパーキャップ5の筒部4の内部と前記ロアーキャップ7の内部との間に内装される負圧弁10が、両キャップの内部で係脱自在に係止される構造をとるため、キャップ内に内装される負圧弁10をアッパーキャップ5またはロアーキャップ7側に予め保持させることができ、ラジエータキャップの組み立てが容易となるとともに、取外し時にその部品の紛失を防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明のように、ロアーキャップ7及びアッパーキャップ5が樹脂により成形され、そのロアーキャップ7の上端部の内周に内ネジ7bが形成され、アッパーキャップ5の筒部4の外周に外ネジ5gが形成され、それらを螺着することにより、ロアーキャップ7及びアッパーキャップ5が係脱自在に止着される場合には、内部の弁ユニット11を取外すことが可能で、メンテナンス性と生産性を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明ように、正圧弁8の外周に設けた被保持部23aがアッパーキャップ5の筒部4下端の弁保持部21に係脱自在に係止される場合、正圧弁8および加圧スプリング9をアッパーキャップ5側に保持させ、ラジエータキャップの組み立てを容易にするとともに、取外し時に部品の紛失を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施例のラジエータキャップ35の分解斜視図。
図2】同組立状態を示す縦断面図。
図3】同正面図。
図4】同平面図。
図5】同ラジエータキャップをタンク1の注水口2に取付けた状態を示す断面図。
図6】本発明の第2実施例のラジエータキャップ35の分解斜視図。
図7】同ラジエータキャップ35のアッパーキャップ5とロアーキャップ7との組立説明図。
図8図7のIII−III矢視断面図。
図9】同図7のIV―IV矢視断面図。
図10】同組立状態を示す縦断面図。
図11】同ラジエータキャップ35をタンク1の注水口2に取付けた状態を示す正面図。
図12図11のVII−VII矢視断面図。
図13】同ラジエータキャップ35の左側面図。
図14図13のIX−IX矢視断面図。
図15】同実施例の加圧時の動作状態を示す説明図。
図16】同負圧時の動作状態を示す説明図。
図17】同ラジエータキャップ35を注水口2から取外す途中における内部流体の流れを示す説明図。
図18】本発明の第3実施例の一部分解縦断面図。
図19】同実施例に用いる負圧弁10の斜視図。
図20図18のXV−XV矢視図。
図21】同ラジエータキャップ35を注水口2に取付けた状態を示す縦断面図。
図22】本発明の第4実施例のラジエータキャップ35を示す縦断面図。
図23】本発明の第5実施例を示すラジエータキャップ35の一部分解縦断面図。
図24】同組立状態を示す縦断面図。
図25】本発明の第6実施例の一部分解縦断面図。
図26】同組立状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
(第1実施例)
図1は、第1実施例の分解斜視図である。
このラジエータキャップ35は、アッパーキャップ5とロアーキャップ7と弁ユニット11とシールリング19,20とを有する。アッパーキャップ5はその外周に外ネジ5fを有し、それがタンク1の上端の注水口2の内周の内ネジ2bに螺着されると共に、その注水口2内に挿入される筒部4を有する。この筒部4の下端部は下方に縮小する2段の段付きに形成され、最先端の外周に外ネジ5gが螺刻されている。
【0018】
次に、ロアーキャップ7は筒状に形成され、その上端部内周に内ネジ7bが形成され、それがアッパーキャップ5の下端部外周の外ネジ5gに螺着する。
すると、ロアーキャップ7の上端面7cが第2段目の立ち下がり面に当接する。その上端面7cと第1段の段部4dとの間に環状溝が形成される。そしてそこに弾性の上部シールリング19を配置する。それが図5の如く注水口2の内面により変形される。このとき上部シールリング19は、アッパーキャップ5の外周とロアーキャップ7の外周とタンク1の注水口2の内周との間を同時に気密にシールする。
【0019】
また、アッパーキャップ5の上端面の中心には、工具嵌着孔5dが形成され、それに整合する工具を嵌着して回転すると共に、ロアーキャップ7の外周の滑り止め手段18を把持することにより、両者を着脱自在に分離することができる。従って、この例では工具嵌着孔5dに整合する特殊工具のみにより両者の分離が可能となる。それと共に、組立てれたキャップ自体を図5の如くタンク1の注水口2の内面に着脱自在に装着することが可能となる。
【0020】
そのロアーキャップ7の内面は、下部が縮小する2段の段付き状に形成され、その第1段目の縁部に環状の弁座6が設けられている。そして、そこに加圧スプリング9を介し、正圧弁8の弁シール材8aが着座される。また、ロアーキャップ7の下面には中心孔27が設けられるとともに、その外周に互いに離間し、複数のスリット24が設けられている。そして、中心孔27の孔縁部に負圧用スプリング32の下端が着座し、上端が負圧弁10の下面に着座し、その負圧弁10を正圧弁8の弁シール材8aに圧着している。
【0021】
次に、負圧弁10の外周には図1に示す如く、弾性変形可能な複数の(この例では4つ)第1爪部26が下方に延長して突設されている。そして、ロアーキャップ7のスリット24に上部で段つきに縮小する段付き25を有する。そして、この段付き25の上端に負圧弁10の第1爪部26が係止し、負圧弁10は下方へ一定範囲で移動可能である。このように、加圧スプリング9および正圧弁8をアッパーキャップ5に保持させ、負圧弁10および負圧用スプリング32をロアーキャップ7に保持させることにより、プレッシャーキャップの分解時に部品が紛失することを防止できる。
【0022】
(第2実施例)
図6は、第2実施例の分解斜視図である。
このラジエータキャップ35は、アッパーキャップ5とロアーキャップ7と弁ユニット11とシールリング19,20とを有する。アッパーキャップ5は、タンク1の上端の注水口2の外周に螺着される外筒部3と、その注水口2内に挿入される筒部4とを有する。外筒部3の内周には右ネジが螺刻されている。筒部4の外周には周方向に90度離れて4つの係止溝14が設けられている。各係止溝14は、筒部4の下端縁から軸方向へ挿脱溝部12が形成され、その上端から周方向に楔溝部13が形成されている。
【0023】
この楔溝部13は、図7に示す如く、その下側の溝壁13aが軸線に対して水平に形成され、その上側の溝壁13bが先端側へ下がるテーパに形成されている。なお、このテーパは後述するロアーキャップ7に突設された係合部15の上端縁のテーパに整合する。また、挿脱溝部12の幅は、係合部15の幅よりも僅かに大である。さらに、楔溝部13の後端部にはストッパ部16が上方にわずかに突設されている。また、係合部15の最大高さhは、楔溝部13の後端部の入口高さよりも小さい。
【0024】
次に、ロアーキャップ7は筒状に形成され、その上端部内面に4つの係合部15が、図7および図9のごとく、等間隔に突設されている。この係合部15は、係止溝14の楔溝部13の先端部に楔着される。即ち、アッパーキャップ5に対してロアーキャップ7を軸方向に移動し、各係合部15を係止溝14の挿脱溝部12に挿入し、次いで図において右方向に回転することにより、係合部15と楔溝部13とが楔着される。このとき、図6における弁ユニット11が内部に挿入され、各部品が図10に示す如く内装される。係合部15および係止溝14の数は一例として4つの場合を挙げたが、それらの数は目的が達成できれば限定されることはない。
【0025】
図10から明らかなように、ロアーキャップ7の内面は、下部が縮小する2段の段付き状に形成され、その第1段目の縁部に環状の弁座6が設けられている。そして、そこに加圧スプリング9を介し、正圧弁8の弁シール材8aが着座される。また、ロアーキャップ7の下面には中心孔27が設けられるとともに、その外周に互いに離間し、複数のスリット24が設けられている。そして、中心孔27の孔縁部に負圧用スプリング32の下端が着座し、上端が負圧弁10の下面に着座し、その負圧弁10を正圧弁8の弁シール材8aに圧着している。
ロアーキャップ7の外周には90度ごとに孔7aが設けられている。さらに、ロアーキャップ7の下端部外周には環状溝が形成され、そこに下部シールリング20が嵌着される。また、ロアーキャップ7の上端面とアッパーキャップ5の筒部4の外周の段つき部との間に上部シールリング19が嵌着される。
【0026】
(組立方法)
一例として、第2実施例のラジエータキャップの組立て方法につき説明する。他の実施例も、そこれに準じて組み立てられる。
図6および図10において、ロアーキャップ7の下端部外周に下部シールリング20を嵌着するとともに、アッパーキャップ5の筒部4の段付き部に上部シールリング19を嵌着する。そして、ロアーキャップ7内に順に、負圧用スプリング32と負圧弁10と正圧弁8と加圧スプリング9とを載置する。
【0027】
次いで、図7に示すごとく(弁ユニットを図7では省略する)、アッパーキャップ5をロアーキャップ7側に移動し、その係合部15を挿脱溝部12から挿入し、次いでアッパーキャップ5をロアーキャップ7に対して右回転することにより、アッパーキャップ5の楔溝部13とロアーキャップ7の係合部15とを楔着し、図10のごとく組み立てる。
なお、アッパーキャップ5の外周にはローレット状の滑り止め手段17が設けられ、ロアーキャップ7の外周には三角波状の滑り止め手段18が設けられ、それらにより両者の相対回転を容易としている。
【0028】
次いで、図11図14に示す如く、そのラジエータキャップ35をタンク1の注水口2の外周に右回転することにより、両者が螺着締結される。即ち、そのアッパーキャップ5の雌ネジ5aが注水口2の外周の雄ネジ2aに螺着される。その終了時において、アッパーキャップ5の外筒部3の下端に突設された凸部5cが注水口2外周の凸条2cの端部に突設された停止部2dに係止されて停止する。そして、凸部5cは凸条2cの凹部2eに保持されるため、振動等によってそれが緩むことがない。なお、アッパーキャップ5の雌ネジ5aと注水口2の雄ネジ2aはともに右ネジに形成されている。また、前述の如く、ロアーキャップ7の係合部15とアッパーキャップ5の筒部4の楔溝部13とは右回転方向で楔着される。
【0029】
そして、図14に示す如く、ラジエータキャップ35とタンク1との間は上部シールリング19および下部シールリング20によってシールされる。その加圧スプリング9の付勢力により正圧弁8、弁シール材8aがロアーキャップ7の弁座6に圧接され、負圧用スプリング32の付勢力により負圧弁10が弁シール材8aに圧接される。その結果、タンク1の注水口2は正圧弁8,負圧弁10により密封される。
なお、第1実施例の場合には、前述の如く、アッパーキャップ5とロアーキャップ7とは螺着により着脱自在に連結される。このとき、アッパーキャップ5の工具嵌着鋼5dに螺回工具の先端を嵌着する必要がある。
【0030】
(作用)
タンク1内の温度が一定以上(例えば120℃)になり、タンク1内の内圧が高まると、加圧スプリング9に抗して正圧弁8が上昇する。すると、図15に示す如く、内部の気体および液体が弁シール材8aと弁座6との隙間から、孔7a、注水口2外周に連通したパイプ2bを介して、図示しないサージタンクに導かれる。そして、内圧が一定以下に低下すると、弁シール材8aが弁座6に着座する。
次に、エンジンが停止し、タンク1内部が冷却するとタンク1内が負圧になる。すると、負圧弁10の上方が大気圧であるため、その圧力差により、図16に示す如く、負圧弁10が負圧用スプリング32の付勢力に抗して下方に移動し、弁シール材8aと負圧弁10との隙間からサージタンク内の水がタンク1内に戻される。
【0031】
(キャップ外し時の作用)
次に、図17に基づいて、内圧の存在する状態で、ラジエータキャップ35を注水口2から取外すときの作用につき説明する。
ラジエータキャップ35の雌ネジ5aを左方向に回転することにより、アッパーキャップ5は次第に上昇する。そして、図17に示す如く、下部シールリング20が注水口2内面とから離れた直後においては、上部シールリング19は注水口2内面に接触し気密を保持している。このときタンク1内の気体および液体は、下部シールリング20と注水口2内面との隙間からパイプ2bを介して図示しないサージタンクに導かれる。このとき、上部シールリング19のシール効果によって内部の気体や液体がアッパーキャップ5の隙間から外部へ流出することはない。それによって、不用意にラジエータキャップ35の取外し中に火傷することを防止している。
【0032】
(第3実施例)
次に、図18図21は本発明の第3実施例であり、この実施例が前記第2実施例と異なる点は、加圧スプリング9および正圧弁8がアッパーキャップ5内に予め保持されると共に、負圧弁10がロアーキャップ7内に予め保持されている点である。
アッパーキャップ5の筒部4の下端部には、弾性変形する複数の弁保持部21が周方向に離間して突設されている。また、正圧弁8の外周には環状の被保持部23aが突設されている。そこで、アッパーキャップ5の筒部4内に加圧スプリング9を収納し、その下側に正圧弁8を圧入することにより、正圧弁8外周に突設された被保持部23aが弁保持部21の先端の保持部21の爪部に係止する。そして、正圧弁8は軸方向へ一定範囲で昇降可能である。
【0033】
次に、負圧弁10の外周には図19に示す如く、弾性変形可能な複数の(この例では4つ)第1爪部26が下方に延長して突設されている。そして、ロアーキャップ7の底部の中心孔27の周縁に同心状にこの例では4つのスリット24が形成されている。このスリット24は図18に示す如く、その上部で段つきに縮小する段付き25を有する。そして、この段付き25の上端に負圧弁10の第1爪部26が係止し、負圧弁10は下方へ一定範囲で移動可能である。 このように、加圧スプリング9および正圧弁8をアッパーキャップ5に保持させ、負圧弁10および負圧用スプリング32をロアーキャップ7に保持させることにより、プレッシャーキャップの分解時に部品が紛失することを防止できる。
図21は同実施例の使用状態を示す。
【0034】
(第4実施例)
次に、図22図21の実施例に加えて、アッパーキャップ5が、二部材からなり、アッパーキャップ本体5bと、筒部材4cとに着脱自在に分離できるものである。即ち、アッパーキャップ本体5bは外筒部3と天井部3aからなり、その天井部3aに円形の中心孔3bを有する。筒部材4cは、その上端に円形の嵌着部4aが突設され、それが前記中心孔3bに回転可能に嵌着する。さらに、アッパーキャップ本体5bの天井部3aの下面に突設された爪部が突設され、それが筒部材4cの上端外周の環状溝に係止されて、軸方向に両者が係止される係合手段3cを構成する。この天井部3aの爪部は周方向に弾性変形する。さらに嵌着部4aの上面には一例として六角形の回り止め手段36が凹陥されている。この回り止め手段36は、筒部4の係止溝14にロアーキャップ7の係合部15を相対回転により係止する際、筒部4の回転止めを行なうものである。この実施例のラジエータキャップは、アッパーキャップ5をタンク1の注水口2に螺着するとき、アッパーキャップ本体5bのみが回転し、ロアーキャップ7は回転しない。それにより上部シールリング19、下部シールリング20のシール性をより良好に維持することができる。
【0035】
(第5実施例)
次に、図23図24は、図18の第3実施例の変形例であり、この例が図18のそれと異なる点は負圧弁10の第2爪部28がロアーキャップ7の中心孔27に着脱自在に係止される点のみである。
図24はその組立状態を示したものである。
【0036】
(第6実施例)
次に図25図26は、本発明の第6実施例を示し、この例はアッパーキャップ5の筒部4内に加圧スプリング9と正圧弁8と負圧用スプリング32および負圧弁10を着脱自在に係止させたものである。加圧スプリング9と正圧弁8の保持状態は、図18の例と同一である。そして、負圧弁10の中心軸29の上端部に弾性変形する複数の第3爪部30を突設し、正圧弁8の中心孔31の孔縁部に負圧用スプリング32の下端を着座させ、その上端に円板状の補助板33を載置する。そして、補助板33の中心孔34に、負圧用スプリング32の圧縮状態で、第3爪部30の先端を係止させるものである。このようにすることにより、アッパーキャップ5とロアーキャップ7との組み立てが容易であるとともに、ロアーキャップ7をアッパーキャップ5から分離した際、各部品が紛失するおそれがない。
図26はアッパーキャップ5とロアーキャップ7との組立状態を示したものである。
【0037】
(変形例)
上記実施例においては、アッパーキャップ5の筒部4外周に係止溝14を形成し、ロアーキャップ7の内周に係合部15を突設したが、それに代えて、アッパーキャップ5の筒部4の内周に係止溝14を形成し、ロアーキャップ7の外周に係合部15を突設してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 タンク
2 注水口
2a 雄ネジ
2b パイプ
2c 凸条
2d 停止部
2e 凹部
2f 内ネジ
3 外筒部
3a 天井部
3b 中心孔
3c 係合手段
【0039】
4 筒部
4a 嵌着部
4b 拡開部
4c 筒部材
4d 段部
5 アッパーキャップ
5a 雌ネジ
5b アッパーキャップ本体
5c 凸部
5d 工具嵌着孔
5e 爪
5f 外ネジ
5g 外ネジ
6 弁座
【0040】
7 ロアーキャップ
7a 孔
7b 内ネジ
7c 上端面
8 正圧弁
8a 弁シール材
9 加圧スプリング
10 負圧弁
11 弁ユニット
12 挿脱溝部
【0041】
13 楔溝部
14 係止溝
15 係合部
16 ストッパ部
17 滑り止め手段
18 滑り止め手段
19 上部シールリング
20 下部シールリング
21 弁保持部
23 底部
23a 被保持部
【0042】
24 スリット
25 段付き
26 第1爪部
27 中心孔
28 第2爪部
29 中心軸
30 第3爪部
31 中心孔
32 負圧用スプリング
33 補助板
34 中心孔
35 ラジエータキャップ
36 回り止め手段
図1
図2
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