特許第5767749号(P5767749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5767749固化防止された甘味素材組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767749
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】固化防止された甘味素材組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/22 20060101AFI20150730BHJP
【FI】
   A23L1/22 E
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-511283(P2014-511283)
(86)(22)【出願日】2012年5月3日
(65)【公表番号】特表2014-513553(P2014-513553A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】KR2012003477
(87)【国際公開番号】WO2012157872
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0047178
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギニー
(72)【発明者】
【氏名】イム,チュンソン
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−166622(JP,A)
【文献】 特開平07−171000(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/050847(WO,A1)
【文献】 国際公開第94/012057(WO,A1)
【文献】 特表2007−525983(JP,A)
【文献】 特開平11−075777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/22−1/237
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/FSTA/FROSTI/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂糖とキシロースが混合された甘味素材に液状の難消化性マルトデキストリン噴射することにより、前記甘味素材に固化防止のためのコーティング層を形成する段階を含み、かつ、前記コーティング層が形成された甘味素材を乾燥させる段階を含む、固化防止された甘味素材組成物の製造方法。
【請求項2】
前記砂糖の平均粒径が150〜300μmである、請求項1に記載の固化防止された甘味素材組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の方法により製造された、固化防止された甘味素材組成物。
【請求項4】
前記組成物は、前記組成物の総重量を基準として、甘味素材95〜99.9重量%と、難消化性マルトデキストリン0.1〜5.0重量%と、を含む、請求項3に記載の固化防止された甘味素材組成物。
【請求項5】
前記キシロースの平均粒径が150〜350μmである、請求項に記載の固化防止された甘味素材組成物。
【請求項6】
前記砂糖とキシロースは、砂糖:キシロースが1:0.05〜1:0.5の重量比で混合されている、請求項5に記載の固化防止された甘味素材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化防止処理された甘味素材組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖は、スクロースを主成分とするものであって、飲食品に添加して甘味を出す代表的な甘味料の一つである。砂糖は、その原料に応じて、サトウキビから製造される甘蔗糖(cane sugar)、甜菜から製造される甜菜糖(beet sugar)があり、その他にもサトウカエデの樹液から製造されるカエデ糖(maple sugar)等がある。
【0003】
砂糖は、他の甘味料や調味料等と同様に、一般的に粉末形態で製品化される。したがって、粉末製品の流通中に発生する通常の問題点である固化現象は砂糖においても問題となっている。
【0004】
固化現象は、粉末製品の流通中に内容物の粒子が周辺の水分を吸収して互いにくっ付く現象であり、粉末の粒子のサイズが小さいほど、水分を吸収する面積が広くなるため、その程度が激しくなる。このような固化現象は、製品の品質を低下させるだけでなく、消費者に不便さを与える要素となる。そのため、これを防止するために、甘味素材粉末に二酸化珪素、ペクチン、澱粉等を固化防止剤として添加して混合する方法が提示されている。しかし、この固化防止剤は、甘味素材組成物を製造する際に少量で添加されるだけである。従来に公知されているこのような単純な混合方式によっては、固化防止剤が甘味素材組成物の全体に均一に分布され難いため、粉末の固化現象を効果的に抑制することはできないという問題がある。
【0005】
食物繊維は、食品のうちでも野菜、果物、海藻類等に多く含有されている繊維質またはセルロースとして知られた成分であって、人の消化酵素では消化されず、体外に排出される高分子炭水化物である。
【0006】
繊維質は、野菜の頑丈な部分(セルロース)、果物中のペクチン、ワカメや昆布等のべたべたした成分(アルギン酸)等に多く含まれている。多様な食物繊維のうち難消化性マルトデキストリン(Resistant Maltodextrin, Indigestable Maltodextrin)は、その名称からも分かるように、人体内で消化され難い食物繊維であり、一般のマルトデキストリンより炭水化物の重合度が高い高分子炭水化物の構造を有することを特徴とする。
【0007】
一方、砂糖は、甘味を出す最も良い甘味素材であって、多様な料理、加工食品等に用いられて飲食品の味を向上させ、食欲をそそる要素となるが、その有害性、具体的には、砂糖の過剰摂取により肥満や糖尿等の成人病が誘発され得るという研究結果が発表されていて、問題となっている。したがって、砂糖に代替可能な多様な甘味素材が研究されており、さらには、砂糖を摂取してもそれが体内に吸収されることを抑制する方法に関する研究が活発に行われている。
【0008】
キシロース(Xylose)は、カバノキやトウモロコシ等に存在する天然甘味料であり、砂糖の約40%程度の甘味度を有するものである。したがって、キシロースは、砂糖を補助して砂糖の有害性を補完することができる多様な甘味素材の一つとして知られている。
【0009】
キシロースと砂糖を同時に摂取する場合、砂糖の分解酵素であるスクラーゼ(sucrase)の活性を阻害して砂糖の分解を妨げることになり、砂糖の体内への吸収が抑制され、それが体外に排出される効果がある。したがって、キシロースは、急激な血糖上昇の防止及び糖尿、肥満等の成人病の予防に優れた効果を有すると認められる。
【0010】
また、アラビノース及びキシロースからなる複合多糖体であるアラビノキシランは、抗アレルギー性、免疫活性、及び抗癌に係る生理活性物質であって、最近、それに関する多様な研究結果が発表されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、固化防止処理された甘味素材組成物及びその製造方法を提供することをその目的とする。
【0012】
また、本発明は、砂糖及びキシロースを構成成分として含んで砂糖の体内への過剰吸収を抑制する、固化防止処理された甘味素材組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、甘味素材粉末粒子が食物繊維でコーティングされた、固化防止された甘味素材組成物及びその製造方法を提供する。
【0014】
前記甘味素材としては、甘味を感じさせる全ての素材を含むことができるが、砂糖を用いることが好ましく、砂糖及びキシロースをともに用いることがより好ましい。
【0015】
前記砂糖としては、原料に応じた種類等が特に限定されるものではないが、結晶性粉末形態を有する白砂糖、中双糖、または黒砂糖の何れか1つまたは2つ以上を混合して用いることができる。
【0016】
前記砂糖の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0〜600μmの範囲のものを用いることが好ましく、平均粒径が0〜500μmの範囲のものを用いることがより好ましく、平均粒径が150〜300μmの範囲のものを用いることが最も好ましい。
【0017】
前記キシロースの平均粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が0〜600μmの範囲のものを用いることが好ましく、平均粒径が0〜500μmの範囲のものを用いることがより好ましく、平均粒径が150〜350μmの範囲のものを用いることが最も好ましい。
【0018】
前記食物繊維としては、好ましくは、不溶性食物繊維、例えば、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等、または水溶性食物繊維、例えば、果実類のペクチン、植物性ガム類、海藻類の多糖類等を用いてもよく、生物工学的方法により生産されるポリデキストロース(polydextrose)、低分子量のアルギン酸、難消化性マルトデキストリン等を用いてもよい。
【0019】
前記多様な食物繊維のうちでも難消化性マルトデキストリン(Resistant Maltodextrin)は、水溶性であるという点、食品に適用する際に食品の粘度を高めないという点、一般のマルトデキストリンより炭水化物の重合度が高い高分子炭水化物構造を有するため、品質安定性が高いという点、それ自体でも人体の急激な血糖上昇を抑制する効果を有する機能性素材であるという点等の特性を有する食物繊維であって、食品に適用するに適するため、本発明の構成要素である前記食物繊維として難消化性マルトデキストリンを用いることが最も好ましい。
【0020】
前記甘味素材粉末粒子を食物繊維でコーティングする方法は、
1)液状噴射が可能な食品製造用ミキサーで甘味素材粉末を混合する段階と、
2)前記混合された粉末に食物繊維を噴射しながら混合してコーティングする段階と、
3)前記コーティングされた甘味素材粉末混合組成物を乾燥機で乾燥させる段階と、を含む方法により行われることができる。
【0021】
前記3)乾燥させる段階は、前記組成物の総重量を基準として、水分含量が約0.2重量%以下となるように行われることが好ましい。
【0022】
前記固化防止された甘味素材組成物は、前記組成物の総重量を基準として、甘味素材95〜99.9重量%と、食物繊維0.1〜5.0重量%と、を含むことが好ましい。
【0023】
前記甘味素材としては、砂糖とキシロースとを混合して用いることが好ましい。
【0024】
前記甘味素材として用いられる砂糖とキシロースとの配合比は、特に限定されるものではないが、キシロースが過度に多く投入される場合、甘味素材組成物の官能に影響を与えるため、官能に影響を与えず、且つ砂糖の体内への吸収を抑制する作用を効果的に達成できるように、砂糖キシロースの重量比を約1:0.05〜1:0.5とすることが好ましく、約1:0.07〜1:0.2とすることがより好ましく、約1:0.1とすることが最も好ましい。
【0025】
本発明の固化防止された甘味素材組成物は、単独でまたは1以上の他の食品素材と混合した形態で、甘味料等の素材として活用されることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の固化防止された甘味素材組成物は、その流通及び保管中に発生する固化現象を抑制することができる利点を有する。
【0027】
また、本発明が砂糖及びキシロースを含む場合、砂糖の体内への吸収を抑制することで、急激な血糖上昇の防止及び糖尿や肥満等の成人病の予防に優れる利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明で用いる用語を下記のとおり定義する。
【0029】
本発明で用いる用語「甘味料」とは、甘味を感じさせる調味料及び食品添加物の総称を意味する。
【0030】
本発明で用いる用語「甘味素材」とは、前記甘味料を構成する構成成分を意味する。
【0031】
本発明で用いる用語「食物繊維」とは、食品のうちでも野菜、果物、海藻類等に多く含有されている繊維質またはセルロースとして知られた成分であって、人の消化酵素では消化されず、体外に排出される高分子炭水化物を意味する。
【0032】
本発明で用いる用語「固化」とは、小さい粒子が周辺の水分を吸収して互いにくっ付く現象であって、粉末製品でよく発生する現象を意味する。
【0033】
以下、実施例、比較実施例、及び比較実験例を記述して本発明を説明する。但し、下記の実施例、比較実施例、及び比較実験例は本発明の一例示に過ぎず、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
固化防止された甘味素材組成物(砂糖及びキシロースを含む)の製造
市販の粒子の細かい砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約220μm)を入手して、前記砂糖890gとキシロース95gとをミキサーに入れて均一に混合した。次に、前記混合粉末に液状の難消化性マルトデキストリン(65 brix)15gを噴射しながら混合して均一にコーティングした後、乾燥機に移送し、前記混合された甘味素材組成物の総重量を基準として水分含量が0.2重量%以下となるように、熱風乾燥方式で乾燥する工程を経ることで、固化防止処理された砂糖及びキシロースが含まれた甘味素材組成物1kgを製造した。
【0035】
比較実施例1
砂糖及びキシロースを単純混合した甘味素材組成物の製造
市販の細かい砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約220μm)を入手して、前記砂糖900gとキシロース(平均粒径:約260μm)100gとをミキサーに入れて均一に混合した。前記実施例1のような、液状の難消化性マルトデキストリン等の食物繊維で粒子をコーティングする段階を経ずに、砂糖とキシロースとを単純混合した甘味素材組成物を製造した。
【0036】
比較実験例1
粒度測定器を用いた各甘味素材組成物の粒径の比較分析
実施例1及び比較実施例1により製造された甘味素材組成物と、市販の一般砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約455μm)及び市販の細かい砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約220μm)を入手して、四つの甘味素材組成物のそれぞれの粒径を、粒度測定器である「粒度標準網ふるい(CHUNG GEY INDUSTRIAL MFG.CO.製)」を用いて比較分析した。
【0037】
甘味料等の粉末製品でよく発生する固化現象は、粉末の粒径が小さいほど水分を吸収する表面積が広くなって、互いにくっ付く性質が強くなるため、固化現象が激しくなる。したがって、粉末の粒径の測定は有意な比較資料となる。それぞれの甘味素材組成物の粒径の比較結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
比較実験例2
粒径による甘味素材組成物の固化現象の比較分析
実施例1及び比較実施例1により製造された甘味素材組成物と、市販の一般砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約455μm)及び市販の細かい砂糖(シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約220μm)を入手して、それぞれ異なる粒径を有する四つの甘味素材組成物で発生する固化現象の程度を比較するための実験を行った。
【0040】
実験方法は、前記四つの甘味素材組成物それぞれを1kgずつ包装袋に入れ、それを開封して50℃の温度条件下で湿気を24時間(実験開始後0〜24時間)加えて吸湿させた後、96時間(実験開始後24〜120時間)乾燥させながら、24時間毎にそれぞれの甘味素材組成物の固化程度を観察した。固化程度の比較結果を下記表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
前記表2において、「良好」とは、粉末が開封直後の状態をそのまま維持する状態(粉末全体を基準として固化進行が約0%)を意味し、「固化開始」とは、開封し露出した粉末の表面が固まり始める状態(固化進行が約10%以内)を意味し、「弱い固化」とは、露出した粉末の表面から下側への約2cm程度の地点が固まっている状態(固化進行が約20%)を意味し、「固化拡大」とは、粉末が全体的に弱く固化されている状態(固化進行が約40%)を意味する。「固化」とは、粉末が全体的に硬く固化されている状態(固化進行約80%以上)を意味する。
【0043】
固化程度の比較分析結果、実験を開始した後48時間が経過したときに、全ての甘味素材組成物で固化が開始されることが観察されたが、粉末製品において問題として指摘される程度の固化現象は、粒径が最も小さい、細かい砂糖で最初に観察された。
【0044】
粒径のみを基準として見ると、粒径が最も大きい一般砂糖(平均粒径:約455μm)で固化現象が最も遅く発生すると予想されるが、実験結果、一般砂糖よりも粒径が小さい、実施例1により製造された甘味素材組成物(平均粒径:約296μm)で固化現象が最も遅く発生することが観察された。これは、甘味素材粒子が難消化性マルトデキストリンでコーティングされているため、水分吸収及び温度上昇によって甘味素材粒子が溶けて互いにくっ付く現象が防止されたためであると判断される。
【0045】
実施例2
好ましい組成比による固化防止された甘味素材組成物(砂糖及びキシロースを含む)の製造
砂糖とキシロースとを混合するにあたり、甘味素材組成物の官能に影響を与えず、且つ砂糖の体内への吸収が効果的に抑制されるようにするための好ましい配合比として、下記表3のように、砂糖キシロースの重量比を約10:1として準備した(細かい砂糖として、シージェイチェイルジェダンコーポレイション製、平均粒径:約220μmのものを用い、キシロースとして、平均粒径:約260μmのものを用いる)。
【0046】
次に、前記配合比で混合された甘味素材粒子をコーティングするにあたり、砂糖とキシロースが均一に混合された単位でコーティングがなされるようにする好適の難消化性マルトデキストリンの含量を決定するために、下記表3に示すように、砂糖、キシロース及び難消化性マルトデキストリンの含量を調整した五つの試料を準備し、このそれぞれの試料の乾燥にかかる時間及び乾燥された甘味素材組成物100g当りのキシロースの含量を測定する実験を行った。
【0047】
【表3】
【0048】
実験の結果、乾燥時間が短くて工程の効率面で優れるだけでなく、組成物の粉末が均一な品質を有するようにコーティングがなされた好ましい試料は、甘味素材組成物の総重量を基準として、砂糖89.0重量%、キシロース9.5重量%、及び難消化性マルトデキストリン1.5重量%の配合比で混合された試料であることが確認された。