(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
すすフィルターを有するディーゼルエンジン用排ガス処理システムであって、サブミクロン粒子と、触媒とからなる一種以上のサブミクロン粒状極薄塗膜組成物がすすフィルター上に少なくとも2層で積層被覆されており、上記サブミクロン粒子が、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物を含み、かつ上記サブミクロン粒子の大きさが0.01〜0.5ミクロンの範囲にあることを特徴とする排ガス処理システム。
サブミクロン粒子として、更にアルミナ酸化物、ジルコニア酸化物、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化ケイ素、これらの混合物及び白金族金属を含む塩基性金属酸化物からなる群から選ばれる一種以上の塩基性金属酸化物のサブミクロン粒子を含む、請求項1に記載の排ガス処理システム。
サブミクロン粒子として、更にサブミクロンの、アルミナ、シリカ−アルミナ、または白金族金属を含む前記アルミナまたはシリカ−アルミナを含む、請求項1又は2に記載の排ガス処理システム。
上記白金族金属が、上記すすフィルターの上流領域及び下流領域のそれぞれに異なる濃度で局所的に被覆されている請求項7のいずれか1項に記載の排ガス処理システム。
【背景技術】
【0002】
圧縮点火型のディーゼルエンジンは、その高い熱効率(即ち、高燃料効率)と低速での高トルクのため、車両の動力装置として大きな実用性と利点を有している。ディーゼルエンジンは、非常に希薄な燃料条件である高いA/F(空気/燃料)比で作動する。このため、ディーゼルエンジンでは、気相の炭化水素や一酸化炭素の排出量が非常に少ない。しかしながら、ディーゼル排ガスはその特徴として、窒素酸化物(NOx)と煤塵の放出量が比較的高い。52℃で凝縮させて測定した煤塵の放出挙動は多段階であり、固体状の(不溶性)炭素すす粒子、潤滑油や未燃焼燃料の状態の液状炭化水素、即ちいわゆる可溶性有機留分(SOF)、及びSO
3 +H
2O=H
2 SO
4の状態のいわゆる「スルフェート」が含まれている。
【0003】
しかしながら、排気ガスの立場からは、ディーゼルエンジンは、スパーク点火エンジンに較べて難しい問題を抱えている。排ガスの問題は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、未燃焼の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)に関係する。NOxは、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO
2)を含むいろいろな窒素酸化物を総称する単語である。中でも、NOは、太陽光と炭化水素の存在下で一連の反応により光化学的にスモッグを成形すると考えられており、また酸性雨に大きく寄与するため、懸念がある。他方、NO
2は、酸化剤として強力で、肺を刺激する。粒子状物質(PM)は、呼吸器の問題とつながっている。粒子状物質と急発進時の炭化水素の排出を減らすようにディーゼルエンジンの運転を変更すると、NO
2の排出が増加する傾向にある。
【0004】
粒子状物質の主要成分の二つは、揮発性有機留分(VOF)とすす留分(すす)である。VOFは、すす上に層状に凝縮するもので、ディーゼル燃料と油に由来する。VOFは、ディーゼル排ガス中では、排出ガスの温度により、蒸気またはエアゾール(微細な液体凝縮液の液滴)として存在することができる。すすは、ほとんど炭素粒子からなる。ディーゼル排ガスからの粒子状物質は、粒子径が小さいため容易に呼吸系に入り、高い暴露レベルでは健康状のリスクが出てくる。また、VOFは多環芳香族炭化水素を含み、そのうちの一部は発がん性の疑いのある物質である。
【0005】
白金族金属や卑金属、これらの組み合わせを含む酸化触媒は、HCとCOのガス状の汚染物質と粒子状物質の一部の変換を促進し、これらの汚染物質を二酸化炭素と水に酸化してディーゼルエンジン排ガスの処理を助けることが知られている。このような触媒は、一般的にはディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる容器に入れられ、排ガスを雰囲気中に排出される前に処理するために、ディーゼルエンジンの排出口に取り付けられている。ガス状のHCやCOや粒子状物質の変換に加えて、白金族金属(通常耐火性酸化物担体上に分散している)を含む酸化触媒は、一酸化窒素(NO)をNO
2にまで酸化させる。
【0006】
一方、すすは、従来より、ディーゼルエンジン排ガスシステム中に導入されたすすフィルターで減らしている。このすすフィルターは、金網、より多くは多孔性セラミック構造物からできている。しかし、すすがフィルターに捕捉されると、ら排ガスシステムの背圧が増加する。この背圧を減らすには、フィルター状に蓄積したすすを燃やし、フィルターの目つまりを除く必要がある。すすフィルターのいくつかは、触媒、具体的にはすす燃焼用の触媒(すす燃焼触媒)を含有している。しかし、すすが空気(O
2を含む)で燃焼する温度は500℃を超えるため、たまったすすによっては、すすフィルターを劣化させる可能性がある。
【0007】
粒子状物質を捕捉する公知のフィルターの一つが、壁流型フィルターである。このような壁流型フィルターは、そのフィルター上に濾別された粒子状物質を燃焼させる触媒を有している。よく使用される構造は、ハニカム状の交互流路でその上流側と下流側にプラグされた末端を有する多流路ハニカム構造である。この結果、両末端は碁盤の目状の模様となる。上流または導入口末端でプラグされている流路は、下流または排出口末端では開いている。この結果、ガスが開放された上流の流路から入り、多孔性の壁面を通過し、開放された下流の末端を有する流路を通って出て行くことが可能となる。処理されるガスは、流路の開放された上流の端より触媒構造物に入るが、同じ流路の封じられた下流の末端からの排出は禁じられている。ガス圧力のため、このガスは多孔性構造の壁面を通過して、上流末端が封じられ下流末端が開放された流路に入る。このような構造は、主に排出ガス流から粒子を濾過することが知られている。このような構造は、基板上に触媒を持つことが多く、これが粒子の酸化を促進する。このような触媒的構造物を開示する代表的な特許として、米国特許3,904,551、4,329,162、4,340,403、4,364,760、4,403,008、4,519,820、4,559,193、及び4,563,414があげられる。
【0008】
HCとCOのガス状の汚染物質と煤塵(即ちすす粒子)の両方の二酸化炭素と水への酸化を触媒して、これらを変換するために、耐火性の金属酸化物担体上に分散した白金族金を含む酸化触媒が、ディーゼルエンジンの排ガスの処理に使用されていることは公知である。
【0009】
米国特許4,510,265には、白金族金属とバナジン酸銀との触媒混合物を含む自己洗浄性のディーゼル排ガス煤塵フィルターが開示されてあり、それが存在すると、粒子状物質の着火と焼却が開始する温度を下げることができるとしている。開示されているフィルターは、薄い多孔性の壁を持つハニカム(モノリス)または発泡構造物であり、排出ガスは最小の圧力損失でこれを通過する。開示されている有用なフィルターは、一般的には結晶性セラミック、ガラスセラミックス、ガラス、金属、セメント、樹脂または有機ポリマー、紙、織物、あるいはこれらの組み合わせからできている。
【0010】
米国特許5,100,632はまた、触媒型ディーゼル排ガス煤塵フィルター、及びディーゼルエンジン排出ガスから析出物を除去する方法について述べている。この方法では、白金族金属とアルカリ土類金属の混合物を触媒として坦持している多孔性壁面を有する触媒性フィルターに、排出ガスを通過させる。この触媒混合物は、捕集された粒子状物質の着火開始温度を下げるのに役立つとされている。
【0011】
米国特許4,902,487は、ディーゼル排出ガスを排出前にフィルターに通すことによる煤塵の除去方法に関する。フィルター上に堆積する煤塵は燃焼される。この開示によれば、煤塵はNO
2を含むガスで燃焼されている。このNO
2は、排出ガスがディーゼル煤塵が捕集されている下流のフィルターに移動する前に、その中で触媒的に生成されたものであるとされている。このNO
2酸化剤は、捕集した煤塵の、低温での効果的な燃焼を進め、よって通常フィルター上への煤塵の堆積により引き起こされる背圧を減少させる。堆積した炭素すすや煤塵を効果的に燃焼させるには、フィルタに導かれるガス中に十分な量のNO
2が存在していることが必要であるとされている。NOからNO
2を生成する触媒が有用であることが示されている。このような触媒は、Pt、Pd、Ru、Rhなどの白金族金属またはこれらの組み合わせ、及び白金族金属酸化物を含むとされている。下流のフィルターは、従来からあるフィルターのいずれでもよい。ある特定の実施様態においては、セラミックハニカムモノリスが、Pt触媒を坦持するアルミナ極薄塗膜で被覆されている。煤塵フィルターは、このモノリスの下流に設置される。炭素系の煤塵は、一般には375℃〜500℃の程度の温度で燃焼されている。EPO835684A2には、上流にある触媒と、それに続く下流の触媒坦持の流通型モノリスとからなるシステムが開示されている。米国特許4,902,487は、NO
2を作る利点を述べているが、米国特許5,157,007では、NO
2の毒性がNOより高いため、NO
2の削減を提案している。
【0012】
米国特許4,714,694は、アルミナで安定化されたセリア触媒組成物を開示している。バルクのセリアまたはバルクのセリア前駆体をアルミニウム化合物で含浸させ、この含浸セリアを焼成してアルミニウムで安定化されたセリアを作ることからなる材料の製造方法が開示されている。この組成物は、その上に分散した一種以上の白金族触媒的成分を含んでいる。ロジウム以外の白金族金属触媒の触媒担体としてバルクセリアを利用することが、C.Z.ワン等による米国特許4.727,052及びオハタ等による米国特許4,708,946に開示されている。
【0013】
米国特許5,597,771には、セリアの、バルク状や粉末状での触媒組成物としての利用や、各種成分とを接触させた形での使用の両方が開示されている。この混合型接触は、セリアを含む成分と少なくともいくつかの他成分とを混合して可溶性セリウム塩とすることにより達成できる。なお、加熱、例えば焼成により、セリウム塩がセリアに変換される。
【0014】
米国特許の4,624,940と5,057,433は、セリア−ジルコニアを含む粒子に関する。セリア−ジルコニア複合物の全重量に対して、最大30重量パーセントまでセリアをジルコニアマトリックス中に均一に分散することができ、固溶体を形成することができることが明らかとなった。共形成(例えば、共沈殿)セリア・ジルコニア粉末複合物は、セリア−ジルコニア混合物を含む粒子中のセリアの利用効率を増加させることができる。このセリアはジルコニアの安定化をもたらすとともに、酸素保持成分としても作用する。’483特許は、得られる酸化物の特性を好ましいものとするためにニオジミウム及び/又はイットリウムをセリア−ジルコニア複合物に添加できることを開示している。
【0015】
米国特許5,491,120は、セリアと、バルク状の第二の金属酸化物、例えばチタニア、ジルコニア.セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ及びα−アルミナの一種以上とを含む酸化触媒を開示している。
【0016】
米国特許5,627,124は、セリアとアルミナを含む酸化触媒を開示している。それぞれ表面積が少なくとも約10m
2/gあることが開示されている。セリアとアルミナの重量比は、1.5:1〜1:1.5とされている。また、この触媒は必要に応じて白金を含んでいてもよい。このアルミナは、好ましくは活性アルミナであることが開示されている。米国特許5,491,120は、セリアと、バルク状の第二の金属酸化物、例えばチタニナ、ジルコニア、セリアジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ及びα−アルミナの一種以上とを含む酸化触媒を開示している。
【0017】
この先行技術にはまた、酸性ゼオライトや金属ドープされたゼオライトを含むゼオライトのディーゼル排ガス処理用途への利用が考えられていることが示されている。欧州特許0499931B1は、ディーゼルエンジンの粒子や排出ガスの量及び/又は大きさの削減のために用いる触媒に関する。この触媒は、ファージャサイト、ペンタシルまたはモルデナイトなどの酸性ゼオライトを長鎖炭化水素や芳香族炭化水素の分解に使用することに特徴がある。この特許は、ドイツ特許DE4105534C2の優先権を主張しており、この特許は酸性ゼオライトの長鎖炭化水素の分解への利用を開示している。DE4226111A1及びDE4226112A1もまた、酸性ゼオライトの利用を開示する特許である。DE4226111A1には、粒子の質量及び/又は大きさの減少を触媒する組成物として、貴金属と酸性ゼオライトが開示されている。同じ理由から、DE4226112A1には、遷移金属酸化物と酸性ゼオライトを用いた組成物が開示されている。米国特許5,330,945には、ディーゼル排ガス粒子の触媒処理が開示されている。このような組成物としては、カチオン性サイトに交換性のカチオンを有するゼオライトとシリカと非常に細かい触媒金属粒子との組み合わせがあげられる。ここでの目的もまた、分解・酸化させる炭化水素の通過を可能とすることである。
【0018】
WO94/22564には、セリアと必要に応じてアルミナやβゼオライトを含むディーゼル排ガス処理触媒組成物が開示されている。COとHCの酸化を促進しSO
2からSO
3への変換を抑えるために、ある白金族金属が使用されている。
【0019】
「改良されたゼオライト含有酸化触媒及び利用方法」に関する特許WO94/01926には、揮発性有機留分を含むディーゼルエンジン排ガス流を処理する触媒組成物が開示されている。触媒組成物は、触媒的に有効量のBET表面積が少なくとも約10m
2/gであるセリアと触媒的に有効量のゼオライトとを含む触媒材料の塗膜を被覆させた耐火性担体を有している。デュアル排ガス触媒として、白金族金属の担体としてセリアとアルミナを使用することも知られている。このゼオライトは、白金族金属でドープされていてもよい。この組成物では、ゼオライトがVOFの酸化と大きなVOF分子の分解の両方を触媒するのに使用され、比較的低温での運転の間にゼオライト空孔中に気相の炭化水素をトラップする。もしこのゼオライトが一種以上の触媒金属または水素でドープされており、トラップされた気相の炭化水素が触媒活性なカチオンに接触させられると、炭化水素の酸化が容易におこる。
【0020】
以前に増して厳しい排ガス規制値を達成するために、OEMメーカー(相手先商標製造会)では、通常、車両の法令順守のために、触媒すすフィルター(CSF)の前に一種以上のディーゼル酸化触媒(DOC)を用いている。具体的には、濾過した粒子状物質を速やかに消光(燃焼)させるために、DOCを密着結合(CC)位置に設置している。これはコストのかさむアプローチである。多くのOEMメーカーは、CC型のCSFの設置するとあるいはこれと非常に薄いDOCとの組合わせると、排ガス基準を満たしたうえでコストダウンするのに役立つと述べている。しかしながら、このアプローチをとるには、CSFがDOCの触媒能力のすべてを持っていることが必要となる。
【0021】
通常、CSFとして用いる低空孔率の壁流型基板では、背圧上の制約のため、極薄塗膜層の厚みを
0.5g/25.43mm3(0.5g/in
3)未満とする必要がある。CSFにDOCの触媒能力すべてを持たせるために極薄塗膜の塗布量を増加させるのに、高空孔率(>50%)の基板を使用することができる。しかしながら、これらの高空孔率基板は、製造が困難でコストも高く、塗布可能で背圧に関する要件を満たすことのできる従来の極薄塗膜の量(通常、
1g/25.43mm3(1g/in
3)
)により制限されている。十分なDOC触媒極薄塗膜が
2g/25.43mm3(2g/in
3)を超えることがあることを考えると、十分なDOC性能をもたらすのに必要な極薄塗膜のレベルと背圧上の制約との間に、見かけ上、二律背反の関係があることがわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ディーゼルエンジン排ガス中の炭素系の煤塵(「すす」)成分は、上述のように、比較的乾いた炭素系の煤塵と、未燃焼か部分燃焼のディーゼル燃料と潤滑油からなる、通常C
9より大きい、通常C
12〜C
50の高分子量の炭化水素を含む揮発性有機留分(「VOF」)とからなることが知られている。このVOFは、排ガスの温度によっては、ディーゼル排ガス中に気相または液相で、あるいは両方の相で存在する。
【0027】
放出される煤塵の総量を減少させるためには、揮発性有機留分または少なくともその一部を、適当な反応条件下で酸化触媒に接触させて無害なCO
2とH
2Oに酸化する必要がある。HCやCO、NOxなどのガス状汚染物質を、触媒的に処理することができる。ガス状炭化水素(具体的には、C
2〜C
6の炭化水素)は、CO
2とH
2Oにまで酸化され、窒素酸化物は還元されて窒素となる(N
2)。
【0028】
本発明によれば、サブミクロン粒子を含む極薄塗膜組成物を塗布した壁流型基板を用いて、すすフィルター(煤塵除去用)と酸化触媒(すすの燃焼とNOxや他のディーゼルエンジンガスの削減用)とを一体化して単一の触媒装置とすることができる。また、本発明の極薄サブミクロン塗膜組成物は、排ガス処理システムに取り付けた際に、塗装物に過剰な背圧を引き起こすことなく、壁流型の基板に実用レベルの触媒を積載させることができる。
【0029】
サブミクロン極薄塗膜粒子(SWP)及び/又はサブミクロン触媒被覆粒子(SCCP)を含む極薄塗膜組成物または触媒極薄塗膜組成物を使用することにより、フィルターの背圧に大きな影響を与えることなく、基板に塗布することができることが明らかとなった。本発明の「サブミクロン極薄塗膜粒子(SWP)」には、公知のいずれの極薄塗膜粒子を使用することもでき、例えば、薄膜形成粒子としては、サブミクロンの大きさのアルミナやジルコニア等の塩基性金属酸化物があげられるが、これらに限定されるわけではない。他の塩基性金属酸化物を以下にあげる。「サブミクロン触媒被覆粒子(SCCP)」としては、サブミクロンの大きさの公知の何れの触媒粒子をも含み、例えば、セリア−ジルコニア複合物や、一種以上の白金族金属や一種以上の白金族金属を含浸させた薄膜形成粒子があげられる。本発明を実施するに当たり、上記サブミクロン極薄塗膜粒子及び/又はサブミクロン触媒被覆粒子(併せて「サブミクロン粒子」ということにする)を、下記に述べるように、スラリーの製造の際に、薄膜スラリーに添加し、次いで基板に塗布してもよい。
【0030】
本発明のサブミクロン極薄塗膜組成物は、すすフィルター、例えば壁流型モノリスの流路及び内部構造物の双方の上に形成される極薄で均一な塗膜である。水性の極薄塗膜中に含まれるサブミクロン触媒粒子は、基板の壁面を通過して侵入し、すすフィルター内部の全幾何領域に均一に付着する。これ対して、通常1ミクロンを超える大きさの従来の粒子は、壁面界面や大きな空孔で捕捉され、空孔や流路を閉塞させる。従来のミクロンサイズの粒子塗膜は、基板の壁面内部や流路壁面に、クラスターまたは凝集物を形成しやすい。逆に、上記のサブミクロン塗膜は、壁面構造物の内部に高度に分散している(
図4参照)。この非常に薄い高度に分散した塗膜は、従来のミクロン触媒塗膜と較べて、最小限の背圧上昇をもたらすこととなる。
【0031】
すすを捕集し燃焼させ、また気相反応生成物をディーゼルエンジン排ガスから除去することを目的に、本発明では、セラミック製壁流型フィルターの内部構造物中に連続的な触媒塗膜を得るのにサブミクロン粒子を含む極薄塗膜組成物を用いている。本発明のサブミクロン粒子は、通常大きさが1ミクロン未満、好ましくは約0.01〜約0.5ミクロンである。得られる触媒極薄塗膜層は、均一で薄い連続的な塗膜であり、このため排気ガス流の背圧に大きな影響を示さない。高い背圧は、車両性能と燃料効率の両方に悪影響を与える。多孔性セラミック壁面構造内の均一で連続的な塗膜は、また、反応物と触媒化合物との接触の改善をもたらす。逆に、ミクロンサイズの粒子に由来する塗膜は、 壁面付近で、また壁面構造物中の行き詰りの流路中で析出しやすい。
【0032】
もう一つの実施様態においては、すすの捕捉と燃焼のために、またディーゼルエンジンの排ガスから気相反応生成物を除去するために、それぞれサブミクロン粒子を含む一種以上の極薄塗膜組成物を、例えば壁流型フィルターに塗布してもよい。この実施様態においては、これらの極薄塗膜層が、隣接層として次々と重ね塗りして形成される。このような極薄塗膜の重ね塗りは、従来のミクロンサイズの粒子の極薄塗膜では不可能である。ミクロンサイズの粒子は、流路の壁面上やフィルターの空孔中で捕捉されて、粒子の分離が起こるからである。この極薄塗膜層は、同一あるいは異なるサブミクロン粒子を含んでいてもよく、例えば、この極薄塗膜層は、異なるサブミクロン極薄塗膜粒子を、または異なる機能を持つサブミクロン触媒被覆粒子を含有していてもよい。
【0033】
サブミクロンサイズの粒子を製造する方法は公知である。このような粒子は、従来触媒や半導体、酸化物の製造用に、約10〜500ナノメーター(0.01 to 0.5ミクロン)の粒度範囲で生産されてきた。例えば、米国特許5,417,956、5,460,701、5,466,646、5.514,349及び5,874,684を参照。なお、これらの文献を、参照として本願明細書に組み込むこととする。
【0034】
本発明の極薄サブミクロン触媒被覆すすフィルターをディーゼル排ガス処理システムに用いると、煤塵総量の削減をするのに効果的であり、また後述のように、さらに白金族金属成分及び/又は他の触媒金属を添加すると、ディーゼルエンジン排ガス中のガス成分に含まれるHCとCOの一部の酸化とNOxの一部の還元ができるといる利点がある。これらのサブミクロン触媒組成物は、排ガスが冷たい間に、例えば200℃未満の場合に、具体的にはディーゼルエンジンが低負荷運転中またはスタートアップの場合に、その期間中にディーゼル排ガスシステムズ中のすすフィルターの再生が可能であるという点で、極めて有用である。
【0035】
本発明によれば、すすフィルターが触媒サブミクロン粒子を含む極薄塗膜組成物で被覆されるが、これは、粉塵及びガス状汚染物質(例えば、未燃焼のガス状炭化水素や一酸化炭素)の燃焼に効果的である。こ
の極薄塗膜組成物は、公知の何れのすす燃焼用や排出ガス汚染物質(HCやCO、NOx)の削減用の触媒を含んでいてもよい。例えば、このような
極薄塗膜組成物としては、例えば、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物、必要に応じて含浸白金族金属を含むサブミクロンの塩基性金属酸化物、一種以上のサブミクロン白金族金属、及びこれらの組み合わせがあげられる。これらの共形成サブミクロンセリアジルコニア複合物と塩基性金属酸化物は、基板上に(重ねて)析出させた個別の層として形成してもよく、あるいは、セリア複合物と塩基性金属酸化物とを混合して用いてもよい。
【0036】
本発明で使用する用語「共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物」は、サブミクロンセリアとジルコニアとから共形成される複合物(例えば、サブミクロンセリアと市販のジルコニア酸化物とから製造したもの)であるバルク材料であり、必要に応じて、ランタン、プラセオジミウム及びネオジミウムから選ばれる他のサブミクロンの希土類成分を含んでいてもよい。このような共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物は、共ゲル化、共沈、プラズマ溶射などの方法により製造可能である。得られる生成物中のサブミクロンのセリアとジルコニアが最終製品の粒子マトリックス中に分散している限り、どのような他の適当なサブミクロンセリア−ジルコニア複合物の製造方法を用いてもよい。これらの方法は、セリア粒子の表面上または表面層内のみにジルコニアを分散させ、セリア粒子中心部には実質的にジルコニアが分散していない領域を残す方法とは明らかに異なる。共沈殿セリア−ジルコニア複合物の形成に好適な方法が、米国特許5,057,483及び5,898/314に記載されている。なお、これらで開示された製造法に関する記述は、参照として本願明細書に組み込むこととする。
【0037】
サブミクロンセリウムとジルコニウム塩、例えばサブミクロンのセリウムとジルコニウムの塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、その他は、また、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物の形成に有用である。これらの複合物を共沈澱法により作る場合、その中間共沈殿物を、水洗し、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥して脱水し、空気中で約500℃で焼成して、共形成セリア−ジルコニア複合物を形成させる。これらの共形成セリア−ジルコニア複合物の表面積は、10m
2/gであり、好ましくは少なくとも20m
2/gである。セリアとジルコニアとを含む共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物において、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物中のセリアの比率は、一般的には20重量%〜95重量%であり、より好ましくは40〜80重量%である。ジルコニアの比率は、典型的には、共形成セリア−ジルコニア複合物に対して10重量%〜60重量%であり、好ましくは10重量%〜40重量%である。
【0038】
共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物は、必要なら、ランタン、プラセオジミウム及びニオジミウムの一種以上から選ばれる他のサブミクロン希土類金属元素を含んでいてもよい。セリア以外のサブミクロン希土類酸化物は、一般的には、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物組成物の10〜60重量%を占める。好ましい共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物は、サブミクロンのセリアとジルコニア以外に、サブミクロンのプラセオジミアを含んでいる。このような複合物は、煤塵、特にすす成分の燃焼温度を低下させるのに効果的である。これらの共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物(プラセオジミアを含むもの)を使用すると、捕集した煤塵を含むすすフィルターを再生するのに有益である。理論に拘泥するわけではないが、プラセオジミアは、他の希土類酸化物以上に容易に、活性化された酸素を捕集した炭素質成分に伝えることができるため、このプラセオジミアが共形成複合物の触媒効果の増強に貢献しているものと出願人は考えている。プラセオジミウムを含有する共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物には、通常30〜95重量%のセリア、5〜40重量%のジルコニア、及び10〜60重量%のプラセオジミアが複合物中に含まれている。好ましくは、このような共形成複合物は、40〜80重量%のセリア、5〜25重量%のジルコニア、及び20〜40重量%のプラセオジミアを含有している。
【0039】
上述のように、好ましいプラセオジミア含有の共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物は、好ましくはセリウムとプラセオジミウムとジルコニウムの可溶性塩の混合物による共ゲルや共沈澱などの方法により形成される。三成分のすべてを上記の方法で混合して、全三成分が複合物マトリックス中に均一に分散することが好ましい。しかしながら、好ましくはないが、プラセオジミウム成分を付与するにあたり、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物を、サブミクロンのプラセオジミウムの可溶性塩(例えば、サブミクロン硝酸プラセオジウム)の溶液に浸漬してもよい。前もって形成したセリア−ジルコニア複合物の含浸は、米国特許6,423,293に開示されている。なお、この文献を参照として本願明細書に組み込む。
【0040】
本発明のサブミクロン極薄塗膜組成物は、またサブミクロンの塩基性金属酸化物を含んでいてもよい。理論的には、塩基性金属酸化物は触媒極薄塗膜のフィルター基板ヘの接着を強化し、極薄塗膜がより密着するように結合力を付与すると考えられている。塩基性金属酸化物は、気相拡散を向上させる開放された極薄塗膜の形状を可能とする。いくつかの実施様態においては、これらの塩基性金属酸化物が白金族金属の触媒担体としても作用する。
【0041】
好ましいサブミクロン塩基性金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、酸化マグネシウム、ハフニウム酸化物、酸化ランタン、酸化イットリウムの一種以上、およびこれらの組み合わせである。これらの塩基性金属酸化物は、通常、一般的に表面積が少なくとも10m
2/g、好ましくは表面積が少なくとも20m
2/gであるバルクの形状で使用される。好ましいサブミクロン塩基性金属酸化物は、アルミナ(市販品)である。
【0042】
これらのサブミクロン塩基性金属酸化物は、一般的には、触媒組成物に対して10〜99重量%の量で使用される。好ましくは、これらの塩基性金属酸化物は、触媒組成物中で20〜95重量%の濃度で使用される。より好ましくは、これらの触媒組成物中の塩基性金属酸化物の濃度は、40〜90重量%である。例えば、すすフィルター上に塗布したサブミクロン触媒組成物は、50重量%の共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物とともに50重量%のサブミクロン塩基性金属酸化物を含有することができる。
【0043】
いくつかの実施様態においては、触媒組成物のフィルター基板への接着を強化するために、アルミナ水和物、例えば擬ベーマイトなどの極薄塗膜バインダーを含むことが好ましい。本発明において有用な他のバインダーとしては、例えばシリカ、シリカ−アルミナ、及びジルコニア由来のバインダーがあげられる。この用途のためには、これらのバインダーは、触媒極薄塗膜の塩基性金属酸化物成分の一部と考えられる。
【0044】
いくつかの実施様態においては、一種以上のサブミクロン白金族金属成分が触媒組成物中に含まれていることが好ましいであろう。有用な白金族金属としては、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの組み合わせがあげられる。白金族金属が含まれていることは、未燃焼の炭化水素や一酸化炭素などのガス成分の、無害な排気ガスへの燃焼の触媒に有用である。また、一種以上の白金族金属が含まれていることは、煤塵の燃焼を補助するために、また一酸化窒素(NO)から亜酸化窒素(NO
2)を形成するのに有用である。NO
2は、強力な酸化剤として知られており、これはすすフィルター上に捕捉された煤塵を、分子状酸素など他の酸化剤では可能な低い排ガス温度での燃焼を触媒するのに特に有用である。これらの白金族金属は、フィルター上に注入された炭化水素を燃焼させて、すすと触媒間の局所的な温度を上げて、すすの燃焼を加速する。
【0045】
他の極薄塗膜粒子上に、例えば共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物上に、サブミクロン塩基性金属酸化物の粒子上に、またはこれらの両方に、水溶性の塩類または白金族金属の錯体(「白金族金属前駆体」ともいう)の溶液を用いて析出させることにより、これらのサブミクロン白金族金属成分を触媒極薄塗膜組成物中に分散させることができる。白金族金属を、サブミクロンセリア複合物及び/又はサブミクロン塩基性金属酸化物成分の粒子上に分散させるのには、通常、含浸法が用いられる。共形成セリア−ジルコニア複合物及び/又は塩基性金属酸化物成分の粒子への含浸に用いられる白金族金属前駆体としては、例えば、塩化カリウム白金や、チオシアン酸アンモニウム白金、アミン溶解水酸化白金、クロロ白金酸、硝酸パラジウム、塩化パラジウムがあげられる。触媒組成物を焼成することで、白金族金属前駆体は触媒的に活性な金属またはその酸化物に変換される。触媒組成物を基板上に塗布後に、共形成サブミクロンセリア−ジルコニア複合物及び/又はサブミクロン塩基性金属酸化物上への白金族金属成分の含浸を行ってもよい。しかしながら、好ましくは含浸は触媒組成物の塗布前に行われる。
【0046】
白金族金属が触媒組成物に含まれている実施形熊においては、最終の焼成フィルター基板中には、一般的に
0.1/0.30483〜200/0.30483g/m3(0.1〜200g/ft
3)の白金族金属が含まれている。本発明の排ガス装置は、壁流型の基板とともに導入されたディーゼル酸化触媒が上流に存在しなくても使用できるため、排ガス中のガス成分(ガス状の未燃焼炭化水素や一酸化炭素)を無害な生成物に変換するためには、十分な濃度の白金族金属成分がフィルター基板上に析出していることが好ましい。また上述のように煤塵、特にすす留分の燃焼温度を下げるために、排ガス中のNOから十分なNO
2を作ることが好ましい。触媒組成物中には、好ましくは
10/0.30483〜100/0.30483g/m3(10〜100g/ft
3)、より好ましくは
20/0.30483〜80/0.30483g/m3(20〜80g/ft
3)の白金族金属が存在している。好ましくは、この白金族金属は、一種以上の白金、パラジウム、ロジウム、またはこれらの組み合わせを含有している。
【0047】
煤塵中での硫酸成分の生成を可能な限り抑えることが好ましい場合には、低濃度の白金族金属(例えば、
0.1/0.30483〜10/0.30483g/m3(0.1〜10g/ft
3))を使用することができる。例えば、高硫黄レベルのディーゼル燃料(極低ディーゼル燃料ではない)では、硫酸の生成を抑えるため、硫黄のSO
3ヘの酸化を極力抑えることが望ましい。
【0048】
他の実施様態においては、塗膜プロセスを操作して、壁流型の基板に塗布されるサブミクロン触媒組成物中の白金族金属の量を、基板の長さ方向で変化させることもできる。この実施様態においては、一種以上の白金族金属をサブミクロン塗膜基板に塗布するに当たり、基板の上流領域から下流領域にかけて白金族金属の濃度を変化させることができる。例えば、SO
3の下流の触媒への有害な影響を最小に押さえるために、基板の上流領域に、低レベルの白金族金属(例えば、0.1/0.3048
3〜10/
0.3048
3g/m
3(0.1〜10g/ft
3)を含ませることができる。本明細書及び請求項における用語の「上流」と「下流」は、排出ガス流の相対方向を意味する。
【0049】
もう一つの実施様態においては、炭化水素や窒素酸化物などの汚染物質を吸着して除去するために、吸着用組成物を添加してもよい。この実施様態においては、サブミクロンの吸着組成物をサブミクロン触媒極薄塗膜組成物に添加してもよく、または別途、極薄塗膜層として塗布してもよい。有用で好ましい吸着組成物としては、ゼオライト、他のモレキュラーシーブ、酸化バリウムなどのIIA族アルカリ土類金属酸化物があげられる。炭化水素や粒子状物質は、0℃〜110℃で吸着され、次いで脱着され、触媒反応または焼却される。有用なゼオライト系組成物が米国特許6,274,107に開示されている。なお、この文献を参照として本願明細書に組み込む。
【0050】
このゼオライトは、VOFの酸化を触媒するとともに大きなVOF分子を分解し、比較的低温での運転の際には、気相の炭化水素をゼオライト空孔中に保持する。このゼオライトはさらにドープされていてもよく、例えば、一種以上の水素、白金族金属または他の触媒金属でイオン交換されていてもよい。あるいは/また、この触媒組成物のゼオライトはドープされていてもよく、例えば、一種以上の水素イオン、白金、銅、ニッケル、コバルト、鉄などの触媒基でイオン交換されていてもよい。本発明のある側面においては、このゼオライトが、三次元構造のゼオライトであり、その空孔開口部の断面径が約5オングストロームであり、ケイ素対アルミニウム原子比(Si:Al原子比)が5を超えるもの、例えば、Si:Al原子比が約5〜400のものを含んでいる。「ドープされている」という用語は、ゼオライトが金属または水素でドープされていることを示し、同じ文脈で表される「ドープ」または「ドーピング」は、金属基または水素基が、ゼオライトの表面上に分散しているのでなくゼオライトの空孔中に捕捉されていることを示すが、ゼオライトの空孔内への捕捉の強度はそれほど大きくはない。ゼオライトのドーピングは、好ましくは既知のイオン交換法により実施するが、その際に、ゼオライトは繰返し金属カチオン(または水素イオンの供給のための酸)を含む溶液でフラッシュさるか、またはゼオライト空孔がこのような溶液で満たされる。しかしながら、ドーピングは、触媒基の導入、例えば一種以上の金属をイオンまたは中性金属含有種または水素イオンとしてゼオライトの空孔へ導入、特にゼオライトのカチオンの交換又は置換が可能な方法ならいずれを用いてもよい。
【0051】
本実施形熊の一側面においては、上記サブミクロン触媒組成物は、セリアとゼオライト、更に必要に応じてアルミナの組み合わせからなり、このゼオライトは、組成物の一部としてディーゼル排ガス流の処理用途用に、ドープされていても、白金またはパラジウムの触媒金属が分散していても、あるいは両方の処理がされていてもよい。
【0052】
本発明のもう一つの側面においては、このゼオライトが、ゼオライトとアルミナとセリア複合物の総重量の約0〜60%、好ましくは約20〜50重量%を占め、アルミナが約99〜10%、好ましくは約95〜20重量%で、セリア複合物が約40〜0%、好ましくは約30〜10重量%を占める。
【0053】
上述のように、本発明の排ガス処理システムは、粒子状物質を捕捉するすすフィルターを有し、粒子状物質が直接雰囲気中に放出されるのを防いでいる。本発明で使用されるすすフィルターとしては、連続気泡発泡体フィルター、ハニカム壁流型フィルター、巻取りまたは充填繊維フィルター、焼結金属粉フィルター、焼結金属線維フィルター、多孔質金属箔フィルター、セラミック繊維複合物フィルター等があげられる。このようなすすフィルターは、通常セラミックスや金属などの耐火材料で作られる。本発明の実施に当たり、これらの触媒フィルターは、通常容器(ハウジングとも呼ばれる)に入れられ、この容器により、気流を容器導入口からフィルターの導入口側に導く。本発明の目的に有用なすすフィルターは、装置の背圧や圧力損失があまり大きくならないように排ガス流を通過させる構造のものである。
【0054】
このセラミック基板は、どのような適当な耐火性材料でもよく、例えば、コージェライト、コージェライト−アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、針状ムライト、チタン酸アルミニウム、ジルコンムライト、リチア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、ミリマイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタル石、アルミナ、α−アルミナ、アルミノケイ酸塩などが挙げられる。
【0055】
本発明のサブミクロン極薄塗膜組成物に有用な基板は、金属性のものであり、一種以上の金属または金属合金を含んでいてもよい。これらの金属基板は、波板状またはモノリス状などいろいろな形状で使用可能である。好ましい金属担体としては、チタンやステンレス鋼なとの耐熱性の金属や金属合金や、鉄を実質成分または主成分として含む他の合金があげられる。このような合金は、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムの一種以上を含有していてもよく、これらの金属の総量は、少なくとも合金の15重量%であり、例えば10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウム、及び最大20重量%のニッケルとなる。これらの合金は、少量または微量の一種以上の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンなどを含んでいてもよい。基板表面に酸化膜を形成して耐食性を向上させるために、表面、またはその金属基板を、高温で、例えば1000℃以上で酸化してもよい。このような高温で起こした酸化は、耐火性金属酸化物担体の接着を強化し、 金属成分の基板への移動を触媒的に促進する。
【0056】
ある好ましい実施様態においては、このすすフィルターは、壁流型フィルター、例えばハニカム壁流型のモノリスである。壁流型フィルターの作成に用いる材料は、内部に分散するサブミクロンの触媒組成物に対して、比較的不活性である必要がある。壁流型フィルターとこの上に形成したサブミクロン触媒極薄塗膜組成物は多孔性であって、排ガスが担体構造物から排出される前に、幾重もの担体壁面を通過するようになっている必要がある。
【0057】
壁流型フィルターは、フィルター筒部の縦軸に沿って伸びる複数個の微細な実質的に平行なガス流路を有している。通常、各流路は筒部の一端で封じられ、交互流路は他端で封鎖されている。このようなモノリス担体は、断面
25.42mm2(1平方インチ
)当たり最大約700本以上の流路(または「セル」)を有しているが、この数はもっと少なくてもよい。例えば、担体は、
25.42mm2(1平方インチ
)当たり約7〜600個、好ましくは約100〜400個のセル(「cpsi」)を有していてもよい。そのセルの断面は、長方形、正方形、丸型、卵型、三角形、六角形、または他の多角形の形状であってもよい。
【0058】
図1と
図2に、本発明の一実施様態である複数の流路4を有する壁流型モノリス2を示す。流路4は、フィルター2の内壁6により筒状に覆われている。フィルター2は、導入口末端8と排出口末端10とを有する。交互流路は、導入口プラグ12で導入口末端8が封鎖され、排出口プラグ14で排出口末端10が封鎖され、導入口8末端と排出口10末端で対向する碁盤の目状の模様を形成している。ガス流16は、プラグのない流路導入口18から入り、流路4を流れる。ガス流は、排出口プラグ14で停止され、内壁6(多孔性である)を透過して排出口側20に拡散し、ガス流22としてモノリスから出る。導入口プラグ12があるため、このガスが、壁面の導入口側に透過して戻ることはない。
【0059】
好ましい壁流型フィルターは、コージェライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リチア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ジルコニウムシリケートなどのセラミック様の材料、またはステンレス鋼などの耐火性金属からできている。好ましい壁流型フィルターは、コージェライトと炭化ケイ素からなるものである。このような材料は、排出ガス流の処理の際に遭遇する環境、特に高温に耐えることが可能である。
【0060】
上述のように、本発明のシステム使用する好ましい壁流型フィルターとしては、装置において大きな背圧または圧力損失を起こすことなく、流体を透過させることができる薄い多孔性壁のハニカム(モノリス)があげられる。この系で用いるセラミック壁流型の基板は、空孔率が約30〜約75%で、少なくとも5ミクロンの平均孔径(例えば、5〜30ミクロン)をもつ材料でできていることが好ましい。より好ましいのは、壁面空孔率が、通常約40〜約65%である基板である。このような空孔率とこのような孔径を持つ基板が、本明細書に記載の方法で被覆されるとき、適当なレベルのサブミクロン触媒極薄塗膜組成物が被覆されて、優れたCO、HC及びNOxの変換効率が得られるととともに、これらの基板に好適な排ガス流動特性を、即ち好ましい背圧を持たせることができる。好適な壁流型の基板の開示に関する米国特許4,329,162を、参照として本願明細書に組み込むこととする。
【0061】
この発明で用いられる多孔性の壁流型フィルターは、このエレメントの壁面が、一種以上のサブミクロン触媒極薄塗膜組成物をその上またはその中に有しているため、触媒作用を示す。このサブミクロン触媒極薄塗膜は、装置壁面の導入口付近あるいは排出口付近に単独で塗布してもよいし、壁面の空孔内または導入口及び排出口付近に単独で塗布しても良い。
【0062】
サブミクロン触媒極薄塗膜組成物は、サブミクロンのセリア、ジルコニア、またはアルミナなどの金属酸化物粒子の水性スラリーとして製造してもよい。この粒子に、さらに一種以上の白金族金属を含浸させてもよい。このスラリーを、担体に塗布、乾燥、焼結して、この上に触媒材料塗膜(「極薄塗膜」)を形成する。通常、このサブミクロン触媒極薄塗膜組成物に、水と、酢酸、硝酸、クエン酸、ギ酸や酒石酸などの酸性化剤を混合する。
【0063】
必要なら、本発明のサブミクロン触媒極薄塗膜組成物で壁流型の基板を被覆するのに、この基板をサブミクロン触媒スラリーの中に垂直に浸漬し、その際に基板の上部をスラリーの表面の直上に残してもよい。このようにして、スラリーを各ハニカム壁面の導入口面に接触させるとともに、各壁面の排出口面への接触を防止することができる。この基板は、スラリー中に約30秒間放置する。基板をスラリーから取り出し、過剰のスラリーは、壁流型の基板より、まず流路から流れ落ちるのを待ち、次いで圧縮空気で吹き飛ばし(スラリー浸透の反対方向)、さらにスラリーの浸透方向に真空を引いて除去する。この方法を用いることにより、触媒スラリーを基板の壁面に浸透させるとともに、最終の基板に過度の背圧が発生しないように空孔の閉鎖度を抑制することができる。触媒スラリーの基板上での分散を表すのに本発明で用いる「浸透」は、この触媒組成物が基板の壁面の全体にくまなく分散していることを意味する。
【0064】
塗膜基板は、通常約100℃で乾燥し、更に高温(例えば、300から450℃)で焼成する。焼成後の触媒坦持量は、基板の塗布前後の重量から計算で求められる。当業界の熟練者には明らかなように、塗膜スラリーの固形分含量を変えることで、触媒坦持量を変更することができる。また上述のように、過剰なスラリーを除いた後に、基板の塗膜スラリー中への浸漬を繰り返してもよい。
【0065】
ある実施様態においては、本発明の排ガスシステムが、ディーゼル酸化触媒(DOC)を更に含んでいてもよい。ガス状の汚染物質である炭化水素と一酸化炭素の両方の酸化を触媒して、二酸化炭素と水に変換するためのディーゼルエンジンの排ガスを処理する用途において、耐火性金属酸化物担体上に白金族金属を分散させた酸化触媒が知られている。このような触媒は、一般的には、ディーゼル酸化触媒、より簡単には触媒コンバーターまたは触媒装置と呼ばれるユニットに入っており、このユニットは、ディーゼル動力システムの排ガスを雰囲気中に排出する前に処理する排ガス系統に組み込まれている。通常、これらのディーゼル酸化触媒は、セラミック担体または金属性担体(例えば、前出の壁流型のモノリス担体)の触媒極薄塗膜組成物を析出させて作られる。この触媒極薄塗膜は、一般的には、耐火性金属酸化物、例えば活性アルミナに坦持された卑金属触媒剤、白金族金属触媒剤、またはこれらの組み合わせを含んでいる。好ましい卑金属触媒剤としては、希土類酸化物、特に酸化ランタンや酸化セリウム、プラセオジミウム酸化物があげられる。好ましい白金族金属触媒剤としては、白金やパラジウム、ロジウムがあげられる。
【0066】
米国特許4,902,482に記載のように、好ましくは、本発明において使用するディーゼル酸化触媒は、少なくとも一種の白金族金属を含み、NOからNO
2への変換を触媒する。白金族金属触媒によるNOの変換は、排ガス流中の酸化剤NO
2のレベルを*増加させ、下流のすすフィルターに捕捉されたすすの好適な燃焼を確かなものとする。この触媒極薄塗膜組成物は、通常促進剤や安定剤などの他の添加物を含んでいる。
【0067】
この実施様態においては、排出ガス流に含まれる一酸化炭素と炭化水素の酸化と窒素酸化物の還元をするために、このDOC触媒を、本発明サブミクロン触媒被覆すすフィルターの上流に設置することもできる。もう一つの実施様態においては、このDOC触媒をサブミクロン触媒被覆すすフィルターの直接上流に設置することもできるし、同一容器に入れてサブミクロン触媒被覆すすフィルターとすることもできる。本発明の他の実施様態においては、このサブミクロン触媒被覆すすフィルターを、好ましくは密接結合位置で使用する。この実施様態においては、本発明のサブミクロン触媒被覆すすフィルターをディーゼルエンジンの近くに設置し、反応温度にできるだけ早く到達するようにする。触媒床中の密接結合触媒は、熱排出ガスの熱と、排出ガス中の存在する炭化水素と一酸化炭素の燃焼により生成した熱との両方で、高温にまで加熱される。したがって、密接結合触媒組成物は、エンジンの運転寿命の期間を通し、低温で非常に反応性であるとともに高温下で安定である必要がある。
【0068】
本発明の密接結合触媒は、「冷間開始」条件で遭遇する低い反応温度でも、一酸化炭素と炭化水素の酸化と窒素酸化物の還元を行う。このような条件は、通常200℃未満である。特定成分の「消光温度」とは、その成分の50%が反応する温度である。本発明の組成物及びその複合物の消光温度は低いほど好ましく、使用する具体的なサブミクロン触媒組成物によるが、有用な触媒は、120℃〜400℃の範囲、好ましくは120℃〜350℃の範囲の消光温度を有している。この密接結合触媒組成物は、エンジンの運転寿命中、1100℃以上の温度にさらされても熱的に安定でなければならない。これは、触媒極薄塗膜の熱安定性を高め、極薄塗膜を区切り、密接結合触媒床中での一酸化炭素の反応をコントロールし、よって触媒床での一酸化炭素の燃焼による温度上昇を抑えることで行われてきた。同時に、この密接結合触媒組成物は、比較的高い炭化水素変換率を与える。必要なら、密接結合触媒の下流に触媒があってもよい。この下流の触媒は、触媒床の下の触媒であっても、密接結合触媒の直ちに下流の触媒であってもよい。この下流触媒は、同一基板上のまたは別の近傍の基板上にある密接結合触媒の近くの坦持触媒組成物であってもよい。
【0069】
以下に、本発明を実施例を参照しながら更に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0070】
実施例
参考例1−試料Aの調整
直径25.4mm(1インチ)×長さ76.2mm(3インチ)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Aを調整した。この壁流型基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、0.6g/25.4
3mm(0.6g/in
3)のシラロックス(R)Si/Al(約1.5%シリカ、98.5%アルミナ、サソルノースアメリカ製、米国)、0.3g/25.4
3mm(0.3g/in
3)のサブミクロンCe/Zr複合物(約30%CeO
2、平均結晶径:<0.5マイクロメータ、市販品)、及び0.05g/25.4
3mm(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。このSi/Al担体に、所望量のPtアミン塩を含浸させた。次いで、Pt/Si/Al粉末を粉砕して、90%の粒子の径が5マイクロメータ未満となるまで粒度を下げた。この粉砕の段階で、Ce/Zr複合物を添加した。この粉砕の段階で、追加のZr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは、空気ナイフを用いてモノリスから吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料Aを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0071】
実施例2−試料Bの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Bを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6g/25.43mm3(0.6g/in
3)のサブミクロンアルミナ(市販品)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンCe/Zr複合物(約30%CeO
2、平均結晶径:<0.5 マイクロメータ、市販品)、及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。このサブミクロンアルミナは、メーカー作成の水分散液であり、平均粒度は40ナノメーターであった。この薄膜スラリーは貴金属を含まず、極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。得られた試料を次いで、Ptアミン塩溶液に浸漬し、必要量のPtを吸収させた。この試料を、再び450℃で1時間焼成した。次いで、試料Bを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0072】
参考例3−試料Cの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Cを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6g/25.43mm3(0.6g/in
3)のシラロックス(R)Si/Al(約1.5%シリカ、98.5%アルミナ、サソルノースアメリカ社製、米国)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンアルミナ(市販品)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のCe/Zr複合物(約30%CeO
2、平均結晶径:約5マイクロメー
タ、市販品)と、
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。このサブミクロンアルミナは、メーカー作成の水分散液であり、単独でプレコートとして基板上に塗布した。このサブミクロンアルミナは次いで、450℃で1時間焼成した。第二のスラリーは、次のように調整した。Ptアミン塩をシラロックス(R)担体に含浸させ、所望の吸着量とした。次いで、Pt/シラロックス(R)Si/Al粉末を粉砕して、90%の粒子の径が5マイクロメータ未満となるまで粒度を下げた。この粉砕の段階で、Ce/Zr複合物を添加した。この粉砕の段階で、追加のZr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料Cを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0073】
参考例4−試料Dの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Dを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6g/25.43mm3(0.6g/in
3)のサブミクロンアルミナ(市販品)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンサイズのCeO
2 (平均粒度:11ナノメーター、市販品)及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。このサブミクロンアルミナは、メーカー作成の水分散液であり、平均粒度は40ナノメーターであった。この薄膜スラリーは貴金属を含まず、極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。得られた試料を次いで、Ptアミン塩溶液に浸漬し、必要量のPtを吸収させた。この試料を、再び450℃で1時間焼成した。次いで、試料Dを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0074】
参考例5−試料Eの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Eを調整した。この壁流型の基板は、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6g/25.43mm3(0.6g/in
3)のシラロックス(R)Si/Al (約1.5%シリカ、98.5%アルミナ、サソルノースアメリカ社製、米国)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンCe/Zr複合物(約0% CeO
2、平均結晶径:<0.5マイクロメータ、市販品)及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。Ptアミン塩をシラロックス(R)担体に含浸させ、所望の吸着量とした。次いで、Pt/シラロックス(R)Si/Al粉末を粉砕して、90%の粒子の径が5マイクロメータ未満となるまで粒度を下げた。この粉砕の段階で、Ce/Zr複合物を添加した。この粉砕の段階で、追加のZr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料Eを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0075】
参考例6−試料Fの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Fを調整した。この壁流型の基板を。90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6g/25.43mm3(0.6g/in
3)のサブミクロンアルミナ(市販品)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンサイズのCeO
2 (平均の粒度:11ナノメーター、市販品)及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2 を含む薄膜スラリーで被覆した。このサブミクロンアルミナは、メーカー作成の水分散液であり、平均粒度は40ナノメーターであった。この薄膜スラリーは、異なるスラリー成分を混合して作った。ついで、Ptアミン塩をスラリーに滴下して、Ptを固体状担体上に析出させた。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料Fを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0076】
参考例7−試料Gの調整
直径25.4mm
(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Gを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.6/25.43mm3(0.6g/in
3)のサブミクロンアルミナ(市販品)、
0.3g/25.43mm3(0.3g/in
3)のサブミクロンCe/Zr複合物(約30% CeO
2、平均結晶径:<0.5マイクロメータ、市販品)及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。Ptアミン塩をサブミクロンアルミナに含浸させ、所望の吸着量とした。次いで、Pt/アルミナ粉末を粉砕して凝集物をつぶし、90%の粒子の径が5マイクロメータ未満となるまで粒度を下げた。この粉砕の段階で、Ce/Zr複合物を添加した。この粉砕の段階で、追加のZr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料は、110℃で2時間乾燥し、次いで空気中450℃の炉中で1時間焼成した。試料Gは、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0077】
参考例8−試料Hの調整
直径
25.4mm(1インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺SiC製壁流型基板(58%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:12mil)を薄膜被覆して、試料Hを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt
、0.9g/25.43mm3(0.9g/in
3)のサブミクロンアルミナ(粉末、平均結晶粒径:40ナノメーター、市販品)及び
0.05g/25.43mm3(0.05g/in
3)のZrO
2 を含む薄膜スラリーで被覆した。Ptアミン塩をサブミクロンアルミナに含浸させ、所望の吸着量とした。次いで、Pt/アルミナ粉末を粉砕して凝集物をつぶし、90%の粒子の径が5マイクロメータ未満となるまで粒度を下げた。この粉砕の段階で、Ce/Zr複合物を添加した。この粉砕の段階で、追加のZr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料Hを、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、熱的に養生させた。
【0078】
参考例9−試料I〜試料Lの調整
直径
38.1mm(1.5インチ)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺のアルミニウムチタネート製壁流型基板(51%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:13mil)を薄膜被覆して、試料I〜試料Lを調整した。この壁流型の基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3)のPt、
0.7g/25.43mm3(0.7g/in
3)のシラロックス(R)Si/Al(約1.5%シリカ、98.5%アルミナ、サソルノースアメリカ社製、米国)、及び
0.035g/25.43mm3(0.035g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。Ptアミン塩をシラロックス(R)担体に含浸させ、所望の吸着量とした。次いで、Pt/シラロックス(R)Si/Al粉末を粉砕して、粒度を下げた。最終的な粒度は、試料I、J、K及びLにおいて90%の粒子が、それぞれ2.0、5.5、3.6、8.5マイクロメータ未満となるようにした。この粉砕の段階で、Zr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。 過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料を、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、次いで空気と水蒸気のガス流中で800℃ 4時間、熱的に養生させた。
【0079】
参考例10−試料Mと試料Nの調整
直径
38.1mm(1.5インチ
)×長さ
76.2mm(3インチ
)の長尺のアルミニウムチタネート製壁流型基板(51%空孔率、
300セル/25.42mm2(300セル/平方インチ
)、厚さ:13mil)を薄膜被覆して、試料Mと試料Nを調整した。壁流型基板を、90/0.3048
3g/m
3(90g/ft
3) Pt、
0.7g/25.43mm3(0.7g/in
3)のサブミクロンアルミナ(粉末、平均結晶粒径:40ナノメーターs、市販品)及び
0.035g/25.43mm3(0.035g/in
3)のZrO
2を含む薄膜スラリーで被覆した。Ptアミン塩を、このアルミナ粉末に含浸させ、所望の吸着量とした。このPt/アルミナ粉末は、次いで粉砕して、凝集体をつぶした。最終の粒度は、試料MとNにおいて90%が、それぞれ5.5と4.7マイクロメータ未満である。この粉砕の段階で、Zr成分を酢酸ジルコニルゾルの形で、バインダーとして添加した。得られたスラリーのpHを酢酸で調整して、3.5〜4.5とした。極薄塗膜は、基板をスラリーに浸漬して塗布した。過剰のスラリーは空気ナイフを用いて吹き飛ばした。試料を、110℃で2時間乾燥し、次いで450℃の空気中のオーブンで1時間焼成した。次いで、試料を、空気と水蒸気のガス流中で700℃で4時間、次いで空気と水蒸気のガス流中で800℃ 4時間、熱的に養生させた。
【0080】
実施例11−試料Eと試料Gの圧力損失の比較
試料Eと試料Gを、上述のように調整した。被覆壁流基板と非被覆壁流基板の圧力変化を測定した。
図3に、極薄塗膜の形成前後での基板の圧力損失を示す。サブミクロン薄膜スラリー(試料G)を被覆した基板は、塗膜形成前の基板と比較して、圧損上昇は大きくはない。一方、従来のスラリー(試料E)を被覆した基板は、かなり大きな圧力損失を示した。
【0081】
実施例12−700℃超の高温で養生した試料の消光試験(試料A〜試料H)
試料A〜試料Hを、上述のように調整した。
試料は、1000ppmのCO、167ppmのプロペン、10%のO
2、10%の水を含むガスを供給しながら、流通反応系で試験した。この系には、COとHC、CO
2の測定機が備わっており、これらを用いて触媒の変換効率を測定した。まず、触媒を90℃で供給ガスで飽和させる。90℃で安定化させた後、20℃/分で300℃まで温度を上げた。反応物と生成物の濃度を連続的に測定し、記録した。いろいろな時間でのCOまたはHCの変換率を、供給濃度(触媒通過前)と排出濃度(触媒通過後)間の相対差として計算した。
【0082】
図5に、試料A〜試料Hの反応器試験結果を示す。
図5に示すように、試料Hと試料Aと試料Fは、すべてサブミクロン粒子を含む極薄塗膜で被覆されたものであるが、一酸化炭素(CO)の変換率が最も高いものであった。
【0083】
実施例13−850℃超の温度で養生した試料のCO変換率(試料I〜試料N)
試料I〜試料Nを、前述の方法により調整した。
試料は、1000ppmのCO、167ppmのプロペン、10%のO
2、10%の水を含むガスを供給しながら、流通反応系で試験した。この系には、COとHC、CO
2の測定機が備わっており、これらを用いて触媒の変換効率を測定した。まず、触媒を90℃で供給ガスで飽和させる。90℃で安定化させた後、20℃/分で300℃まで温度を上げた。反応物と生成物の濃度を連続的に測定し、記録した。いろいろな時間でのCOまたはHCの変換率を、供給濃度(触媒通過前)と排出濃度(触媒通過後)間の相対差として計算した。
【0084】
図6に、50℃の養生後の試料A〜試料Hの反応器試験結果を示す。
図6に示すように、試料Nは、サブミクロン粒子を含む極薄塗膜で被覆されたものであるが、一酸化炭素(CO)の変換率が最も高いものであった。
【0085】
実施例14−850℃超の温度で養生した試料のHC変換率(試料I〜試料N)
試料I〜試料Nを、上述のように調整した。
【0086】
試料は、1000ppmのCO、167ppmのプロペン、10%のO
2、10%の水を含むガスを供給しながら、流通反応系で試験した。この系には、COとHC、CO
2の測定機が備わっており、これらを用いて触媒の変換効率を測定した。まず、触媒を90℃で供給ガスで飽和させる。90℃で安定化させた後、20℃/分で300℃まで温度を上げた。反応物と生成物の濃度を連続的に測定し、記録した。いろいろな時間でのCOまたはHCの変換率を、供給濃度(触媒通過前)と排出濃度(触媒通過後)間の相対差として計算した。
【0087】
図7に、50℃で養生した試料I〜試料Nの反応器試験結果を示す。
図7に示すように、試料Nは、サブミクロン粒子を含む極薄塗膜で被覆されたものであるが、炭化水素(HC)の変換率が最も高いものであった。