【文献】
GOLETZ S,TURNING GLYCOMICS INTO HEALTH,BIO 2006 ANNUAL CONVENTION [ONLINE],2006年 4月 9日,URL,http://www.invest-in-germany.de/upload_files/20060425091024_Praesentation_GLYCOTOPE_German_Country_Presentation.pdf
【文献】
DORAI H,NATIONAL ACADEMY OF SCIENCE,米国,1987年12月15日,V139 N12,P4232-4241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体が、ガングリオシドGD3に対する抗体、ヒトインターロイキン−5受容体α鎖に対する抗体、HER2に対する抗体、CCケモカイン受容体4に対する抗体、CD20に対する抗体、CD22に対する抗体、神経芽腫に対する抗体、MUC1に対する抗体、および、上皮増殖因子受容体に対する抗体からなる群より選択される抗体である、請求項12に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明の好ましい実施形態において、核酸は、該タンパク質またはその断片の分泌型をコードしたものである。好ましい実施形態において、分泌型は、膜貫通ドメインがないものである。
【0080】
本発明によれば、用語「タンパク質分子組成物」は、本発明の方法に従って、特に本発明の宿主細胞において発現させた任意のタンパク質分子の分子群であって、単離され得るものを意味する。前記タンパク質分子組成物は、少なくとも1つのタンパク質分子を含むものである。前記タンパク質組成物は、タンパク質分子の少なくとも1つのグリコフォームを含むものである。タンパク質分子の前記グリコフォームは、特定のグリコシル化、または少なくとも1つの糖構成ブロック(例えば、限定されないが、さらなるガラクトース、シアル酸、bisecGlcNAc、フコース)が異なる糖鎖、または別の糖修飾(限定されないが、同じタンパク質分子の別のグリコフォームのアセチル化もしくは硫酸化(sulfatation)など)を有するタンパク質分子を意味する。本発明の別の実施形態において、タンパク質分子組成物は、宿主細胞内で発現させた1つより多くのタンパク質分子の分子群を含むものであり得る。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質分子組成物は、細胞において発現させたとき、高活性を媒介するタンパク質分子のかかるグリコフォーム(1つまたは複数)の分子を、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマの少なくとも1種類、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から得られる同じタンパク質分子のタンパク質分子組成物よりも、パーセントにおいて多く含むものである。さらに好ましい実施形態において、本発明のタンパク質分子組成物は、細胞において発現させたとき、高活性を媒介するタンパク質分子のかかるグリコフォーム(1つまたは複数)の分子を、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から得られる同じタンパク質分子のタンパク質分子組成物よりもパーセントにおいてより多く含むものである。
【0081】
本発明によれば、用語「抗体分子」は、任意の完全体の抗体もしくは抗体断片または抗体断片を含む分子を意味する。前記完全体の抗体は、任意のクラスもしくはサブクラスの任意の抗体もしくは免疫グロブリン分子、または当業者に周知の少なくとも1つの免疫グロブリンドメイン(限定されないが、動物起源、例えば限定されないが、ヒト、サル、齧歯類、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、トリ、ニワトリもしくはサメ起源のIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD)を含む任意の分子であり得、また、種々の動物由来の抗体、例えば、キメラもしくはヒト化抗体(これは、当業者には周知のように、種々の割合の例えばマウス配列とヒト配列が結合して完全体の抗体となっている、および/または変異されて例えば免疫原性が低減もしくは親和性が増大したものなど)のタンパク質配列を含む分子であり得る。本発明の別の実施形態において、前記完全体の抗体はまた、少なくとも1つのさらなるアミノ酸またはポリペプチド配列を有する前述の完全体の抗体であり得る。
【0082】
好ましい実施形態において、前記完全体の抗体は、ヒト、ヒト化またはヒトFc領域を含むキメラIgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMである。なおさらに好ましい本発明の実施形態において、前記完全体の抗体は、ヒト、ヒト化またはヒトFc領域を有するキメラIgG1、IgG4もしくはIgMである。前記ヒトFc領域は、ヒト抗体のFc領域の定常ドメインの少なくとも1つの20アミノ酸の配列、より好ましくは少なくとも100アミノ酸で構成され、好ましくは、ヒト抗体の少なくとも1つのFcドメインを含み、より好ましくはヒトCγ2ドメインを含み、より好ましくは、特定のあるクラスまたはサブクラスのヒト抗体のFc領域のすべての定常ドメインを含む。また、前記ヒトFc領域は、少なくとも1つのアミノ酸が変異されたヒト配列を含むものであり得る。
【0083】
本発明の最も好ましい実施形態において、完全体の抗体分子は、(i)例えば、ヒト抗体産生血液細胞(1種類もしくは複数種)またはマウス抗体遺伝子座が少なくとも一部ヒト抗体配列で交換されたトランスジェニックマウスから生成される完全ヒト抗体、または(ii)マウスもしくはラット抗体の可変領域(フレームワーク領域など)の少なくとも一部分またはフレームワークの少なくとも1つのアミノ酸がヒト配列に交換または変異され、ヒトにおいて低免疫原性であり、ヒト定常ドメインを含む完全体のヒト化抗体、または(iii)可変領域がマウスまたはラットのものであり、ヒト定常ドメインを含む完全体のキメラ抗体のいずれかである。
【0084】
前記完全ヒト抗体、完全体のヒト化抗体、および完全体のキメラ抗体またはその一部分、ならびに適当なさらなる配列を有する、または有しないこのような抗体分子を構築、同定、試験、最適化および選択する方法、ならびにこのような抗体分子をコードする最も適当な核酸を構築、同定、試験および選択する方法は、当業者にはわかるであろう。
【0085】
前記抗体断片は、前記完全体の抗体の少なくとも20アミノ酸、好ましくは少なくとも100アミノ酸を含む抗体の任意の断片である。好ましい実施形態において、該抗体断片は、抗体の結合領域を含むもの(Fab、F(ab)2など)、多数の結合ドメインを含むマルチボディ(ダイアボディ、トリアボディもしくはテトラボディなど)、単一ドメイン抗体またはアフィボディ(affibody)である。別の好ましい実施形態では、該抗体断片は、その定常ドメインの全部または一部を有する、好ましくは第2のドメイン(Cγ2ドメイン)を含むFc領域を含むものである。別の実施形態では、該抗体断片は、少なくとも1つのアミノ酸、ポリペプチドストレッチまたはドメイン完体が欠失した切断型の完全体の抗体である。該分子は、安定化またはリンカーなどの分子の結合の改善のためのさらなる配列と結合されたものであってもよい。
【0086】
抗体断片を含む前記分子は、前記抗体断片または少なくとも20アミノ酸の他の免疫グロブリンドメインのいずれかを含む任意の分子である。好ましい実施形態において、抗体断片を含む前記分子は、多重結合特異性を有する分子(二重もしくは三重特異的抗体)を作製するため、または結合ドメインの多量体化をもたらすためのMBP(マンナン結合タンパク質)ドメインなどの多量体化配列を有する分子を作製するため、または検出、精製、分泌または安定化のための配列(タグ、局在シグナルもしくはリンカーなど)を有する分子を作製するために、抗体断片が他のタンパク質配列(エフェクター配列など、例えば、サイトカイン、共起刺激因子、毒素、または他の抗体由来の抗体断片)と融合された融合分子である。別の好ましい実施形態では、抗体断片を含む前記分子は、完全体の抗体またはその一部分のFc領域を含む、好ましくは、第2の定常ドメイン(Cγ2ドメイン)を含む融合分子である。前記融合分子は遺伝学的手段によって融合され、ここで、該分子は、1つの核酸にコードされたもの、または少なくとも2つの核酸の共発現によって融合されたもの(該融合は、非共有結合性または共有結合性タンパク質相互作用によって引き起こされる)、または両者の組合せによって融合されたものである。抗体断片と別のポリペプチド配列またはタンパク質分子間の遺伝子融合は遺伝子操作によってなされ得、ここで、両方の部分は、間にさらなるアミノ酸を有する、または有しない単一の核酸にコードされている。さらに好ましい実施形態において、前記融合分子は、抗体断片(単一ドメイン抗体など)由来の少なくとも1つの結合領域、またはFabもしくは抗体由来でない結合配列(レクチンドメインなど)、および第2のドメイン(Cγドメイン)を含むFc領域またはその一部分を含むものである。別の好ましい実施形態において、融合分子は、IL−2、IL−12、IL−15、GM−CSF、ペプチド毒素、またはその一部分を含む。該分子は、例えば遺伝学的手段によって融合されたものであり、ここで、該分子は、1つの核酸にコードされたもの、または少なくとも2つの核酸の共発現によって融合されたもの(該融合は、非共有結合性または共有結合性タンパク質相互作用によって引き起こされる)、または抗体断片(MBPの多量体化配列に連結された単一ドメイン抗体、FabもしくはFabなど)由来のコミオン(comion)によって融合されたものである。
【0087】
該抗体分子またはその一部分、ならびに適当なさらなる配列を有する、または有しないこのような抗体分子を構築、同定、試験および選択する方法、ならびにこのような抗体分子をコードする最も適当な核酸を構築、同定、試験および選択する方法はすべて、当業者にはわかるであろう。
【0088】
本発明によれば、用語「抗体分子組成物」は、本発明の宿主細胞において発現させた任意の抗体分子の分子群であって、単離され得るものを意味する。前記抗体分子組成物は、少なくとも1つの抗体分子を含むものである。前記抗体組成物は、抗体分子の少なくとも1つのグリコフォームを含むものである。抗体分子の前記グリコフォームは、特定のグリコシル化、または少なくとも1つの糖構成ブロック(例えば、限定されないが、さらなるガラクトース、シアル酸、bisecGlcNAc、フコース)が異なる糖鎖、または別の糖修飾(限定されないが、同じ抗体分子の別のグリコフォームのアセチル化もしくは硫酸化など)を有する抗体分子を意味する。本発明の別の実施形態において、抗体分子組成物は、宿主細胞内で発現させた1つより多くの抗体分子の分子群を含むものであり得る。好ましい実施形態において、本発明の抗体分子組成物は、細胞において発現させたとき、高Fc媒介性細胞性細胞傷害および/または改善された結合を媒介する抗体分子のかかるグリコフォーム(1つまたは複数)の分子を、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマの少なくとも1種類、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から得られる同じ抗体分子の抗体分子組成物よりも、パーセントにおいて多く含むものである。さらに好ましい実施形態において、本発明の抗体分子組成物は、細胞において発現させたとき、高Fc媒介性細胞性細胞傷害および/または改善された結合を媒介する抗体分子のかかるグリコフォーム(1つまたは複数)の分子を、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から得られる同じ抗体分子の抗体分子組成物よりもパーセントにおいてより多く含むものである。
【0089】
本発明によれば、用語「ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞」または同等の系統的論述は、ヒト骨髄性白血病起源の任意の細胞もしくは細胞株、または白血病患者から得られ得る任意のヒト骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒトドナーから得られ得る任意の骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、または前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株、または前述の細胞の少なくとも1種類を含む細胞もしくは細胞株の混合物を意味する。
【0090】
本発明の別の実施形態において、本発明の前記ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞または前記不死化ヒト血液細胞はまた、前述の宿主細胞の少なくとも1種類、特に骨髄性白血病起源のものを、ヒトまたは動物起源の別の細胞(限定されないが、B細胞、CHO細胞など)と融合させることにより得られたかかる細胞または細胞株を包含する。当業者は、適当なヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞のためのヒト由来の適当な細胞および細胞株を取得、作製および/または不死化するのに適当な供給源および方法を特定し、使用することができよう。
【0091】
前記宿主細胞由来の細胞または細胞株という用語は、前記骨髄性白血病起源の宿主細胞の事前の変異または遺伝子操作を伴う、または伴わない任意の培養およびクローニング手段によって得られ得る任意の細胞または細胞株を意味し、所望の性質を有する前記宿主細胞由来の細胞または細胞株の選択を含む。前記培養およびクローニングは、好ましくは、単一細胞クローニング法、例えば、限界希釈またはフローサイトメトリー系細胞分取などを使用し、細胞の多数回の継代培養およびクローニングによって、異なる性質を有する細胞クローンが初代細胞培養物、細胞培養物から、および細胞クローンの培養物からも得られ得ることに基づく。好ましい実施形態において、前記宿主細胞由来の前記細胞または細胞株は、レクチンまたは糖鎖結合抗体に結合させることにより選択される。前記変異は、物理的、化学的または生物学的変異原、例えば限定されないが、放射線、アルキル化剤またはEMS(メタンスルホン酸エチル)、レクチンなどのタンパク質、またはウイルス粒子などを用いた当業者に周知の処理によって行なわれ得る。前記遺伝子操作は、当業者に周知の方法、例えば、部位特異的相同組換えによる遺伝子のノックアウト、トランスポゾンの使用、部位特異的変異誘発、特定のある核酸のトランスフェクション、または遺伝子もしくは遺伝子産物のサイレンシングなどによって行なわれ得る。前記培養およびクローニングの方法、前記変異および変異原ならびに前記遺伝子操作は当業者には周知であり、一例は、WO2005/017130 A2、US 2003/0115614 A1に詳細に示されており、あるいは本明細書に記載している。当業者は、本発明の適当な前記宿主細胞由来の細胞または細胞株の作製のための適当な方法または方法の組合せを選択および/または採用および/または改良することができよう。
【0092】
前記宿主細胞由来の前記細胞または細胞株は、その親細胞または細胞株と比べて好都合な細胞の性質、例えば限定されないが、倍加時間が短い、成長が速い、高密度下で増殖する可能性、より多く産生され得る、無血清条件下および/またはタンパク質無含有培地中で培養される、クローニング効率が高い、DNAのトランスフェクション効率が高い、抗体分子組成物の発現速度が速い、発現される抗体分子組成物の活性が高い、発現される抗体分子組成物の均一性が高いおよび/または規模拡大のロバストネスが高いなどにより選択される。好都合な性質を有する細胞の選択方法は、当業者に周知であるか、または本明細書に記載されている。本発明は、(a)ヒト骨髄性白血病細胞を、レクチンまたは脱シアリル化エピトープもしくはシアル酸のないエピトープを認識し、シアリル化形態のエピトープに結合しないか、または有意に低度に結合する抗体とともにインキュベートすること、(b)前記レクチンまたは抗体に結合された細胞を単離すること、(c)該単離された細胞を適当な時間培養すること、および(d)シアル酸を有するエピトープに結合するレクチンまたは抗体に強く結合する細胞(1つもしくは複数)または細胞クローンを選択することを含む、本発明の宿主細胞の作製方法を提供する。
【0093】
前記レクチンまたは脱シアリル化エピトープもしくはシアル酸のないエピトープを認識する前記抗体がNemod−TF1、Nemod−TF2、A78−G/A7またはPNAであり、前記ヒト骨髄性白血病細胞が細胞株K562、KG−1、MUTZ−3、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−H9、H9、NM−H10である上記の方法がより好ましい。
【0094】
高いシアリル化および有利な生物工学的性質(急速な細胞増殖など)を有する本発明の宿主細胞の作製方法は、(i)起源細胞としての本発明のヒト骨髄性白血病細胞(好ましくは、K562)をレクチンまたは好ましくは、脱シアリル化エピトープもしくはシアル酸のないエピトープを認識し、シアリル化形態のエピトープに結合しないか、または低度に結合する抗体(限定されないが、Nemod−TF1、Nemod−TF2、A78−G/A7、またはPNA(落花生(Arachis hypogaea)、ピーナッツ凝集素由来のレクチン)など)(好ましくは、磁気ビーズに結合させたもの)とともにインキュベートすること、(ii)前記レクチンまたは抗体に結合された細胞を単離すること、(iii)該単離された細胞を適当な時間培養すること、および(iv)好ましくは単一細胞クローニング後、シアル酸を有するエピトープに結合するレクチンまたは抗体(SNA (セイヨウニワトコ凝集素)もしくはMAL(イヌエンジュ(Maackia amurensis)レクチン)、MAL I(イヌエンジュレクチンI)、好ましくはSNAなど)に強く結合する細胞(1つもしくは複数)または細胞クローンを選択することを含む。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明は、(i)K562を、磁気ビーズに結合させたNemod−TF1、Nemod−TF2、A78−G/A7、またはPNAとともにインキュベートすること、(ii)前記レクチンまたは抗体に結合された細胞を単離すること、(iii)該単離された細胞を約1〜6週間の適当な時間培養すること、および(iv)単一細胞クローニング後、SNAに強く結合する細胞クローンを選択することを含む、高いシアリル化および有利な生物工学的性質(急速な細胞増殖など)を有する本発明の宿主細胞の作製方法を提供する。好ましい実施形態において、該細胞は、起源細胞よりも強くSNAに結合し、別の好ましい実施形態では、該細胞は起源細胞よりも速く増殖する。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、起源細胞を、工程(i)の前にメタンスルホン酸エチルで処理する。
【0097】
当業者は、本発明の意味において、このような宿主細胞を作製するために、適当な条件および方法を選択し、これらを最適化することができよう。一部の工程のさらなる詳細は、WO2005/017130 A2およびWO2005/080585 A1を見るとよい。
【0098】
一実施形態によれば、以下のグループ1〜4:
(a)K562などの高いシアリル化活性を有する宿主細胞を含むグループ1;
(b)遺伝子欠失または発現阻害手段(例えば、RNAi)のためシアリル化が低いか、またはシアリル化がなく、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]およびGTX−2と同等の活性を有する宿主細胞ならびにNM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]およびGTX−2を含むグループ2;
(c)NM−H9およびNM−H9D8などのK562よりも高いシアリル化度を有する宿主細胞を含むグループ3;
(d)NM−H9D8−E6およびNM H9D8−E6Q12などのフコシル化活性が低いか、または該活性がない宿主細胞を含むグループ4
から選択される不死化ヒト血液細胞が宿主細胞として使用される。
【0099】
好ましい実施形態において、作製される前記細胞株はNM−H9D8である。上記の方法によって作製される最も好ましい細胞クローンとして、NM−H9D8を選択し、2006年9月15日に、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10,13125 ベルリン(ドイツ)が、ブラウンシュヴァイク(ドイツ)の「DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH」にDSM ACC 2806で寄託した。他の細胞クローン、例えば、NM−E−2F9、NM−C−2F5、またはNM−H9D8−E6(DSM ACC 2807)などは、親細胞と1種類以上のレクチンとのインキュベーション、およびフローサイトメトリー細胞分取を用いたその後の単一細胞クローニング(これは、陽性選択手順または陰性選択と陽性選択の組合せによって行なった)によって選択した。安定な特性を有する細胞クローンを得るため、得られた細胞クローンを、上記の限界希釈によって少なくとも1回再クローニングした。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、好ましくは宿主骨髄性白血病起源の細胞である前記不死化ヒト血液細胞は、無血清条件下で培養され、本発明のタンパク質/抗体分子組成物を産生する。なおさらに好ましい実施形態において、好ましくは宿主骨髄性白血病起源の細胞である前記不死化ヒト血液細胞は、無血清条件下で培養される。さらに、該タンパク質/抗体分子をコードする核酸をこのような細胞内に導入してもよく、また、該タンパク質/抗体分子組成物は、無血清条件下で単離され得る。無血清条件下で作業できることは、血清夾雑物が規制プロセスにおいて許容され得ないため、治療用タンパク質を作製する場合に特に重要である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、細胞もしくは細胞株K562、KG1、MUTZ−3、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]または前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株、または前述の細胞の少なくとも1種類を含む細胞もしくは細胞株の混合物である。宿主細胞は、好ましくは、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8[DSM ACC 2806]、またはNM−H9D8−E6 DSM ACC 2807、もしくはNM H9D8−E6Q12(DSM ACC 2856)、GT−2X(2007年9月7日に、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10,13125 ベルリン(ドイツ)が、ブラウンシュヴァイク(ドイツ)の「DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH」に、DSM ACC
で寄託)またはこれらの任意の細胞株由来の細胞もしくは細胞株からなる群より選択される。
【0102】
細胞NM−F9[DSM ACC2606]およびNM−D4[DSM ACC2605]は、Nemod Biotherapeutics GmbH & Co.KG、Robert−Roessle−Str.10,13125 ベルリン、ドイツ(本出願人が本明細書に該寄託生物学的材料を記載することを許可した)により寄託された。
【0103】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、細胞もしくは細胞株K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、または前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株である。
【0104】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、細胞もしくは細胞株K562(K562[ATCC CCL−243]など)、または前記宿主細胞由来の細胞もしくは細胞株である。
【0105】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、細胞もしくは細胞株K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC 2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、もしくはGT−2X、もしくはNM H9D8−E6Q12または前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株である。
【0106】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、無血清条件下で培養され、本発明の抗体分子組成物を産生する細胞(1種類もしくは複数種)または細胞株K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、またはGT−2X、またはNM H9D8−E6Q12であり、最も好ましくは、無血清条件下で培養される本記載の細胞(1種類もしくは複数種)または細胞株であり、該抗体分子をコードする核酸をこのような細胞に導入してもよく、抗体分子組成物は、無血清条件下で単離される。
【0107】
本発明の最も好ましい実施形態において、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、無血清条件下で培養され、本発明の抗体分子組成物を産生する細胞(1種類もしくは複数種)または細胞株NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、GT−2X、またはNM−H9D8−E6、またはNM M9D8−E6Q12であり、最も好ましくは、無血清条件下で培養される本記載の細胞(1種類もしくは複数種)または細胞株であり、該抗体分子をコードする核酸をこのような細胞に導入してもよく、抗体分子組成物は、無血清条件下で単離される。
【0108】
一実施形態によれば、不死化ヒト血液細胞およびヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、シアリル化のない細胞株NM−F9およびNM−D4または前記宿主細胞のいずれかに由来する同じ性質を有する細胞もしくは細胞株のうちの1種ではない。この実施形態は、高いシアリル化度が目標とされる場合に有益である。このような実施形態では、宿主細胞は、好ましくは、K562、NM H9D8、NM H9D8−E6、NM H9D8−E6Q12およびこれらの任意の宿主細胞由来の宿主細胞からなる群より選択される。
【0109】
本発明との関連で記載した細胞株は14〜24時間の倍加時間を有し、これは、本発明の細胞株にもよるが、他の哺乳動物発現系と比べて非常に速い。
【0110】
さらに、ヒト細胞は通常、DHFR遺伝子が欠失しておらず、したがってdhfr/メトトレキサート増幅系の使用が可能でないため、ヒト細胞株における高収率の抗体発現に適した一般的な高発現ベクター系は知られていない。したがって、本発明のさらなる実施形態によれば、産生物の収率の増大を可能にする実施形態が提供される。
【0111】
この実施形態によれば、さらに、葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸が宿主細胞内に導入される。ジヒドロ葉酸還元酵素またはDHFRは、NADPHを電子供与体として使用し、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に還元し、これらは、1−炭素転移化学反応に使用されるテトラヒドロ葉酸補因子種に変換され得る。葉酸代謝拮抗薬はDHFR酵素を阻害し、細胞死をもたらす。葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸を得るため、該核酸でトランスフェクトされた細胞を選択するためのツールであって、さらに、宿主細胞内で発現される核酸の増幅を可能にするツールを提供する。
【0112】
前記葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸は、例えば、宿主細胞内で発現させるタンパク質/抗体をコードする核酸とは別個のベクターによって導入され得る。葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードするベクターは、該タンパク質/抗体をコードする核酸を含むベクターと基本的に同時にトランスフェクトすることが好ましい。この実施形態では、前記発現対象のタンパク質/抗体をコードする核酸を宿主細胞のゲノム内において、該葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸と同じ遺伝子部位に組み込むことが推奨され、これは、前記タンパク質/抗体をコードする核酸の増幅が所望される場合に有益である。
【0113】
あるいはまた、発現対象の前記タンパク質の少なくとも一部分をコードする核酸、ならびに該葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸を含むベクター系が使用され得る。
【0114】
次いで、宿主細胞を前記葉酸代謝拮抗薬とともに培養する。これは、前記葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする核酸で成功裡にトランスフェクトされた宿主細胞が、葉酸代謝拮抗薬の存在にもかかわらず培養され得るという効果を有する。そのため、成功裡にトランスフェクトされた細胞が選択され得る。
【0115】
さらなる実施形態によれば、前記タンパク質/抗体の少なくとも一部分をコードする核酸配列を、培養液中の葉酸代謝拮抗薬濃度を段階的に上げることにより増幅する。増殖培地中での葉酸代謝拮抗薬濃度の上昇により、ゲノム内の葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントコピーの増加がもたらされる。これは、細胞内での組換え事象によって達成されていると想定される。そのため、同様に、発現対象のタンパク質の少なくとも一部分をコードする核酸のコピー数もまた、前記タンパク質をコードする核酸がゲノム内で葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントの近傍に存在している場合、増加し、これは、個々のベクターを同時にトランスフェクトすること、または両方の核酸配列を含む1つのベクターを使用することのいずれかによって促進され得る。この機構によって、該タンパク質/抗体を高収率で発現する宿主細胞が得られる。
【0116】
好ましくは、葉酸代謝拮抗薬はメトトレキサートである。
【0117】
前記タンパク質、好ましくは抗体分子またはその一部分をコードする核酸配列は、好ましくは、前記宿主細胞を葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキサーとともに、連続して少なくとも2回培養することにより増幅され、このとき、前記葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキサートの濃度は、連続する各回において少なくとも100%増加する。
【0118】
前記葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントを得るための適当な核酸は、配列番号1〜9の群、好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードするものである。
【0119】
この増幅系に関するさらなる詳細および実施形態は、以下にも詳細に記載している。
【0120】
また、本発明は、
(a)ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内に、タンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸、および配列番号1〜配列番号9の群のポリペプチドの少なくとも1つ、好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの核酸を導入すること;
(b)前記タンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列を、前記宿主細胞をメトトレキサートとともに培養することにより、好ましくは、前記宿主細胞をメトトレキサートとともに連続して少なくとも2回培養することにより増幅させること、このとき、メトトレキサートの濃度は、連続する各回において、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増加する;
(c)前記宿主細胞を前記タンパク質、好ましくは抗体分子組成物の産生を許容する条件下で培養すること、および
(d)好ましくは抗体分子組成物である前記タンパク質を単離すること
を含む、タンパク質、好ましくは抗体分子組成物を産生させる方法を提供する。
【0121】
また、本発明は、
(a)ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内に、タンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸導入すること;
(b)前記宿主細胞を、好ましくは抗体分子組成物である前記タンパク質組成物の産生を許容する条件下で培養すること;および
(c)増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性を有する好ましくは抗体分子組成物である前記タンパク質組成物を単離すること
を含む、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性を有するタンパク質組成物、好ましくは抗体分子組成物を産生させる方法を提供する。
【0122】
さらに、本発明は、
(a)ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内に、タンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸、および配列番号1〜配列番号9の群のポリペプチドの少なくとも1つ、好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの核酸を導入すること;
(b)前記宿主細胞をメトトレキサートとともに培養することにより、好ましくは、前記宿主細胞をメトトレキサートとともに連続して少なくとも2回培養することにより、前記抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列を増幅させること、このとき、メトトレキサートの濃度は、連続する各回において、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増加する;
(c)前記宿主細胞を、好ましくは抗体分子組成物である前記タンパク質組成物の産生を許容する条件下で培養すること;および
(d)増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性を有する好ましくは抗体分子組成物である前記タンパク質組成物を単離すること
を含む、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性を有するタンパク質組成物、好ましくは抗体分子組成物を産生させる方法を提供する。
【0123】
抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸、および配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む前記核酸は、1つの核酸または2つの個々の核酸であり得る。
【0124】
最適化されたたグリコシル化プロフィールを有するタンパク質を得るための適当な宿主細胞を選択するためには、本発明によるスクリーニング/選択方法を行なうことが好都合である。本発明による選択方法によって適当な宿主細胞が決定されたら、次いで、前記宿主細胞を、請求項1〜20に記載のタンパク質の産生に使用する。
【0125】
したがって、本発明はまた、宿主細胞を、以下の特徴的グリコシル化:
(i)検出可能なNeuGcが含まれない;および/または
(ii)該細胞において発現させたとき、前記タンパク質分子組成物中の諸タンパク質分子の糖鎖構造全体またはその諸タンパク質分子のうちのタンパク質1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物中の同じ量のタンパク質分子と比べて増大したガラクトシル化度を有する;および/または
(iii)該細胞において発現させたとき、前記タンパク質分子組成物中の前記諸タンパク質分子の糖鎖構造全体またはその諸タンパク質分子のうちのタンパク質1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物中の同じ量のタンパク質分子と比べて少なくとも5%多いG2構造量を有する;および/または
(iv)該細胞において発現させたとき、前記タンパク質分子組成物中の前記諸タンパク質分子の糖鎖構造全体またはその諸タンパク質分子のうちのタンパク質1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物中の同じ量のタンパク質分子と比べて少なくとも5%少ないG0構造量を有する;および/または
(v)検出可能な末端Galα1−3Galを含まない;および/または
(vi)該細胞において発現させたとき、前記タンパク質分子組成物中の前記諸タンパク質分子の糖鎖構造全体またはその諸タンパク質分子のうちのタンパク質1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物中の同じ量のタンパク質分子と比べて少なくとも5%少ないフコース量を含む;および/または
(vii)バイセクトGlcNAcを含有する少なくとも1つの糖鎖構造を含む;および/または
(viii)該細胞において発現させたとき、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物のシアリル化パターンと比べて改変されたシアリル化パターンを有する、
の少なくとも1つを有するタンパク質の産生に関して、
以下の工程:
(a)宿主細胞として少なくとも2種類の異なる不死化ヒト血液細胞内に、タンパク質またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸を導入すること;
(b)前記少なくとも2種類の異なる宿主細胞を培養すること、ここで、異なる各宿主細胞は、その他の宿主細胞によってもたらされるグリコシル化パターンと相違するグリコシル化パターンを有するタンパク質組成物を産生する;
(c)該少なくとも2種類の異なる宿主細胞と異なるグリコシル化パターンを有する前記発現されたタンパク質組成物を単離すること;および
(d)(i)〜(viii)に規定した特徴的グリコシル化の少なくとも1つを有するタンパク質組成物を産生する前記宿主細胞を選択すること
によって選択するための方法を提供する。
【0126】
グリコシル化パターンおよび前記パターンを得るための適当な細胞株に関する詳細は、先に記載しており、また、本発明による適当な宿主細胞を選択するためのスクリーニング方法に適用可能であり、該方法に適している。
【0127】
請求項1〜20に記載の産生方法を確立する前にそれぞれスクリーニング工程を行なうことは、この実施形態により、最適化されたグリコシル化パターンを有するタンパク質/抗体分子組成物の産生に最も適当な宿主細胞の選択が可能になるため、好都合である。このスクリーニング系の基本的概念に従い、目的のタンパク質を、相違するグリコシル化パターンを有する少なくとも2種類の異なる細胞株において発現させる。例えば、一方の細胞株は高いシアリル化度を示すものであり得、他方は、低いシアリル化度(またはフコシル化および/またはガラクトシル化)を示すものであり得るか、あるいは未知の特徴的グリコシル化を示すものであってもよい。したがって、この異なる細胞株から得られた産生物は、それぞれの細胞株でグリコシル化パターン特性を有する。
【0128】
次いで、例えばその活性(例えば、抗体のADCCおよびCDC)、親和性、血清半減期ならびに他の重要な特性に関して異なる細胞株において産生されたタンパク質の特性が決定され得る。その結果により、グリコシル化パターンに関して最適化されたタンパク質を得るための最良のグリコシル化機構を有する細胞株の選択が可能になる。決定的な特性(例えば、親和性、血清半減期など)は種々であるため、この方法は特に好都合である。
【0129】
好ましくは、産生される前記タンパク質は、以下の特徴:
(a)細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたとき、抗体分子組成物である場合、同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物のFc媒介性細胞性細胞傷害より少なくとも2倍大きいFc媒介性細胞性細胞傷害の増大を有する;
および/または
(b)細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたとき、抗体分子組成物である場合、同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物の結合より少なくとも50%高い抗原媒介性またはFc媒介性結合の増大を有する;
および/または
(c)細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたときの同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物の収率よりも少なくとも10%高い平均または最大収率の増大を有する、
の少なくとも1つを示す。
【0130】
一実施形態によれば、前記宿主細胞の少なくとも一方は、不死化ヒト血液細胞、好ましくはヒト骨髄性白血病起源の細胞、例えば、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xなどまたはその誘導細胞もしくは誘導細胞株である。
【0131】
前記少なくとも一方のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞は、以下のグループ1〜4:
(a)K562などの高いシアリル化活性を有する宿主細胞またはその誘導細胞もしくは誘導細胞株を含むグループ1、
(b)NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]およびGTX−2などの、遺伝子欠失または発現抑制手段(例えば、RNAi)のためシアリル化が低いか、またはシアリル化がない宿主細胞またはその誘導細胞もしくは誘導細胞株を含むグループ2、
(c)NM−H9およびNM−H9D8などのK562よりも高いシアリル化度を有する宿主細胞またはその誘導細胞もしくは誘導細胞株を含むグループ3、
(d)NM−H9D8−E6などのフコシル化活性が低いか、または該活性がない宿主細胞またはその誘導細胞もしくは誘導細胞株を含むグループ4
のうちの1つから選択され得る。
【0132】
好ましくは、スクリーニングプロセスに使用される宿主細胞の少なくとも2種類または3種類が上記のグループから選択される。しかしながら、解析される異なるグリコシル化パターンをさらに広げるため、別の起源由来の他の宿主細胞(例えば、Hek 293細胞)を、本発明によるスクリーニング系に含めることも可能である。
【0133】
得られた宿主細胞は、好ましくは、表9に示したグリコシル化パターンの少なくとも1つを示すタンパク質、特に抗体を産生するものである。
【0134】
本発明によれば、核酸を導入するという用語は、限定されないが、エレクトロポレーション、カチオン性脂質を用いたトランスフェクション、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、またはウイルス粒子(アデノウイルスもしくはレトロウイルスなど)による感染、またはその組合せなどの方法によって、哺乳動物宿主細胞(1種類または複数種)内に1つの核酸、または2つ以上の核酸を導入する当業者に周知の任意の方法を意味する。当業者は、本発明の1つ以上の核酸の導入のための適当な方法を選択および最適化することができよう。
【0135】
本発明によれば、抗体分子をコードする核酸は、抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする任意の核酸である。この場合、本発明の抗体分子は、単一または多数の核酸分子にコードされたものであり得る。
【0136】
前記核酸にコードされる前記抗体分子の一部分は、少なくとも1つの20アミノ酸の配列、より好ましくは少なくとも100アミノ酸の抗体分子あるいは抗体分子の定常および/または可変ドメインで構成される。抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする合併(comprised)配列は、少なくとも1つの他の配列(例えば、イントロンなど)で分離されていてもよい。ドメインの配列は、少なくとも1つのアミノ酸変異を含むものであってもよい。
【0137】
本発明によれば、タンパク質分子をコードする核酸は、タンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする任意の核酸である。この場合、本発明のタンパク質分子は、単一または多数の核酸分子にコードされたものであり得る。タンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする配列は、少なくとも1つの他の配列(例えば、イントロンなど)で分離されていてもよい。タンパク質分子の配列は、少なくとも1つのアミノ酸変異を含むものであってもよい。
【0138】
好ましい実施形態において、抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸は、抗体分子の少なくとも1つの可変および/または少なくとも1つの定常ドメイン、より好ましくは両方を含み、より好ましくは、少なくとも定常ドメイン(1つまたは複数)の部分にヒト配列を含むようなものであり、さらにより好ましくは、ヒトCγ2ドメインを含むようなものであり、最も好ましくは、特定のあるクラスまたはサブクラスのヒト抗体のFc領域のすべての定常ドメインと可変ドメインとを含むものである。
【0139】
一実施形態によれば、該タンパク質、特に抗体分子は、単一の核酸にコードされたものである。別の好ましい実施形態では、該タンパク質、特に、抗体分子は、2つの核酸または3つの核酸にコードされたものである。
【0140】
さらに好ましい実施形態において、核酸の1つは、抗体分子の一部分をコードするものであり、その軽鎖の可変および/または定常ドメインをコードしており、別の核酸は、該抗体分子の別の部分をコードするものであり、重鎖の可変ドメインおよび/または少なくとも1つの定常ドメインをコードしている。
【0141】
本発明によれば、配列番号1〜配列番号9の群の少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む核酸は、前記核酸が、配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードしていることを意味する。本発明の宿主細胞内に成功裡に導入され得る限り、任意の数のこのような配列が適当である。好ましい実施形態において、前記核酸は、配列番号1〜配列番号9の群の1つ、2つまたは3つのポリペプチド、より好ましくは1つのポリペプチド、最も好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードするものである。本発明の意味において、前記核酸はまた、少なくとも1つのアミノ酸変異を有する配列番号1〜配列番号9の群から選択される、好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードするものであり得る(この変異が、抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸の、本明細書の他の箇所に記載したメトトレキサートによる増幅を可能にするものである限り)。
【0142】
配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列は、本明細書の他の箇所に記載した抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸と同じ核酸分子の一部分であり得るか、または個々の核酸分子上に存在するものであり得る。
【0143】
本発明の別の好ましい実施形態において、配列番号1〜配列番号9の群から選択される、最も好ましくは配列番号1の配列をコードする核酸配列を含む個々の核酸は、本発明の宿主細胞内に、本発明の抗体分子またはその一部分をコードする前記核酸(1つまたは複数)とは別々に導入され得る。これは、配列番号1〜配列番号9の群から選択される配列をコードする核酸配列を含む前記個々の核酸を、本発明の抗体分子またはその一部分をコードする前記核酸(1つまたは複数)の導入と一緒、該導入の前または後のいずれかで導入することによって行なわれ得る。好ましい実施形態では、これは並行して行なわれ、別の好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、配列番号1〜配列番号9の群から選択される、最も好ましくは配列番号1の配列をコードする核酸配列を含む前記個々の核酸を既に含むものである。
【0144】
さらに好ましい実施形態は、本実施例に記載している。
【0145】
好ましくは抗体分子またはその一部分であるタンパク質をコードする安定に導入された前記核酸または数コピーの前記核酸の増幅は、メトトレキサートを使用し、本明細書の他の箇所および本実施例に記載のようにして行なわれ得る。
【0146】
好ましい実施形態において、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする核酸は、該核酸が成功裡に導入された細胞の選択を可能にする少なくとも1つの他の遺伝因子、例えば限定されないが、抗生物質耐性遺伝子(例えば、限定されないが、プロマイシンまたはネオマイシン耐性をコードする遺伝因子)などを含む。さらに、このような核酸は、本発明の宿主細胞での抗体分子の発現のための1つまたはいくつかの遺伝因子(プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化部位および/またはイントロンなど)、ならびに細菌の複製起点、プロモーターおよびトランスフェクトされた細菌の選択のためのエレメント(細菌内での核酸の増幅用の抗生物質耐性遺伝子など)などの遺伝因子を含む。
【0147】
好適なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(極初期)遺伝子のプロモーター、SV40初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、SRαプロモーター、EF−1αプロモーターなどが挙げられる。ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーは、そのプロモーターと組合せて使用され得る。
【0148】
該遺伝因子およびさらなる遺伝因子は当業者には周知であり、当業者は、選択し、結合し、最適化し、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸内に導入することができる。好ましくは抗体分子もしくはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸または核酸の組合せの好ましい実施形態、ならびに使用される好ましい遺伝因子および組合せは、本明細書および本実施例に記載しているが、本発明は、かかる使用に限定されず、当業者によって組み合わされ、またはさらに最適化され得る。
【0149】
当業者は、適当な遺伝因子を選択および/または結合し、それに応じた核酸ベクターまたはエレメントを構築し、本発明の1つ以上の核酸を本発明による細胞株に導入することができよう。
【0150】
好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸または核酸の組合せ、ならびに前記さらなる遺伝因子、ならびにこれを抗体分子組成物の発現のために本発明の宿主細胞内に、または増幅のために細菌内に導入(例えば、トランスフェクト)するための方法は、当業者には周知であり、同様に、このような核酸(1つまたは複数)を構築、同定、試験、最適化、選択および結合するための方法、および該核酸を、成功裡にトランスフェクトされた細胞の選択のための適当なさらなる配列と結合するための方法、ならびにこのような抗体分子をコードする最も適当な核酸を構築、同定、試験および選択するための方法は当業者に周知である。
【0151】
本発明の好ましい実施形態は、本実施例に詳細に記載している。
【0152】
本発明の好ましい実施形態において、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする核酸は、該核酸が成功裡に導入された本発明の宿主細胞の選択のための遺伝因子、例えば限定されないが、ネオマイシンまたはプロマイシンなどを含み、より好ましくは、EF−1αまたはCMVプロモーターなどのプロモーターをさらに含み、より好ましくはCMVエンハンサーをさらに含み、より好ましくは、該核酸と複製のための遺伝因子(細菌内での前記核酸の増幅のためのColE1複製起点など)でトランスフェクトされた細菌の選択を可能にする遺伝因子をさらに含み、さらにより好ましくは、COS細胞での前記核酸の増幅のための遺伝因子(SV40起点など)をさらに含む。このようなエレメントは当業者には周知であり、当業者は、選択、結合、最適化および使用することができる。
【0153】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、先に記載したタンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸は1つの核酸配列を含むものである。好ましくは、タンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸は、さらに、プロマイシン耐性もしくはネオマイシン耐性をコードする遺伝因子、または配列番号1〜配列番号9の群、最も好ましくは配列番号1から選択される少なくとも1つの配列をコードする核酸配列をコードしている。
【0154】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、先に記載した抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸は、該抗体分子の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインと少なくとも1つの定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列を含む。
【0155】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、先に記載した抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸は、該抗体分子の軽鎖の可変ドメインと定常ドメイン、または完全体の該抗体分子の重鎖の可変ドメインとすべての定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列を含む。
【0156】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、先に記載した前記核酸の1つは、該抗体分子の軽鎖の可変ドメインと定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列を含む該抗体分子の少なくとも一部分をコードしており、先に記載した前記核酸の第2のものは、該抗体分子の重鎖の可変ドメインと少なくとも1つの定常ドメイン、好ましくはすべての定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列を含む該抗体分子の他の少なくとも一部分をコードしており、両方の核酸を本発明の同じ宿主細胞内に導入する。好ましくは、前記核酸の一方は、さらに、プロマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他方は、さらに、ネオマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしている。
【0157】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、タンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする先に記載した前記核酸は、該タンパク質分子またはその少なくとも一部分の2つのアミノ酸配列をコードする少なくとも2つの核酸配列を含む。
【0158】
好ましくは、前記核酸の1つは、さらに、プロマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他の1つは、さらに、ネオマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしている。より好ましくは、前記核酸の1つは、さらに、プロマイシンまたはネオマイシン耐性、好ましくはプロマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他の1つは、さらに、配列番号1〜配列番号9の群、最も好ましくは配列番号1から選択される少なくとも1つの配列をコードする核酸配列を含む。
【0159】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、タンパク質分子またはその少なくとも一部分をコードする先に記載した前記核酸は、該タンパク質分子またはその少なくとも一部分の3つのアミノ酸配列をコードする3つの核酸配列を含む。
【0160】
好ましくは、前記核酸の1つは、さらに、プロマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他の1つは、さらに、ネオマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他の1つは、さらに、配列番号1〜配列番号9の群、最も好ましくは配列番号1から選択される少なくとも1つの配列をコードする核酸配列を含む。
【0161】
さらにより好ましい実施形態において、前記核酸の1つは、さらに、プロマイシンまたはネオマイシン耐性をコードする遺伝因子をコードしており、前記核酸の他方は、さらに、配列番号1〜配列番号9の群、最も好ましくは配列番号1から選択される少なくとも1つの配列をコードする核酸配列を含む。さらにより好ましい実施形態において、軽鎖の可変ドメインと定常ドメインをコードする配列を含む前記核酸の1つは、さらに、配列番号1〜配列番号9の群、最も好ましくは配列番号1から選択される少なくとも1つの配列をコードする核酸配列を含み、前記核酸の他方は、該抗体分子の重鎖の可変ドメインと少なくとも1つの定常ドメイン、好ましくはすべての定常ドメインをコードする配列を含み、さらに、プロマイシンまたはネオマイシン耐性、好ましくはプロマイシン耐性をコードする核酸配列を含む。
【0162】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする前記核酸は、該抗体分子の軽鎖の可変ドメインと定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列と、該抗体分子の重鎖の可変ドメインと少なくとも1つの定常ドメイン、好ましくはすべての定常ドメインをコードする少なくとも1つの配列を含む。
【0163】
本発明の好ましい実施形態において、上記および他の箇所に記載の本発明の核酸にコードされる定常ドメインは、IgGもしくはIgM、好ましくはヒトIgG1、IgG4もしくはIgMのヒト定常ドメイン、または1つのドメインもしくはそのドメインの組合せであり、このとき、好ましくは、少なくとも1つのイントロンを含むゲノム配列またはゲノム配列由来の配列が使用され、これは、当業者が選択、構築および最適化することができる。
【0164】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸は、さらに、EF−1αプロモーター/CMVエンハンサーまたはCMVプロモーター由来のプロモーター、好ましくは、CMV−Eを含む。
【0165】
本発明のさらに好ましい実施形態において、好ましくは本発明の抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸は、さらに、分泌シグナルペプチド、好ましくはT細胞受容体分泌シグナルを含む。
【0166】
本発明のなおさらに好ましい実施形態において、本発明の好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸は、さらに、分泌シグナルペプチド、好ましくは配列番号10を含む。
【0167】
好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分であるタンパク質をコードする前記核酸または核酸の組合せ、ならびに前記さらなる遺伝因子、ならびにこれらを導入するための方法は当業者に周知であり、同様に、このような核酸(1つまたは複数)を構築、同定、試験、最適化、選択および結合するための方法、および該核酸を、成功裡にトランスフェクトされた細胞の選択のための適当なさらなる配列と結合するための方法、ならびにこのような抗体分子をコードする最も適当な核酸を構築、同定、試験および選択するための方法は当業者に周知である。
【0168】
本発明の好ましい実施形態は、本実施例に詳細に記載している。
【0169】
該核酸の導入は、一過的または安定的のいずれかであり得る。
【0170】
本発明によれば、タンパク質もしくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列を、前記宿主細胞を葉酸代謝拮抗薬、特にメトトレキサートとともに培養することにより増幅させるという用語は、発現対象のタンパク質(例えば、抗体分子など)またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸、および葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアント、好ましくは配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの核酸が導入された本明細書の他の箇所に記載した本発明の宿主細胞が、少なくとも1種類の葉酸代謝拮抗薬、好ましくはメトトレキサート濃度によって培養されることを意味する。典型的な培養期間は、各回で1〜2週間、典型的な濃度は、約20nMから3000nM、好ましくは約50nM〜2000nM、より好ましくは約100nM〜2000nMである。葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサート増幅処理の持続期間、ならびに本発明の核酸の濃度およびそれに応じたベクターは、当業者によって最適化され得、また、本実施例の好ましい実施形態に記載している。至適増幅条件は、種々のコードタンパク質/抗体分子間、および上記の種々の核酸もしくは核酸構築物またはその組合せの使用間で異なり得る。当業者は、本発明の最も適当な条件および核酸を選択および最適化することができよう。前記増幅により、葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサート培養なしよりも、または少なくとも1種類の葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアントをコードする該核酸配列の導入なしよりも多くのコピー数の該タンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸が、宿主細胞のゲノム内に組込まれることになり、特に、配列番号1〜配列番号9の群のポリペプチドおよび/または前記増幅により、該タンパク質/抗体分子組成物の産生の増加がもたらされる。
【0171】
本発明の好ましい実施形態において、タンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸(1つまたは複数)が導入された前記宿主細胞において該核酸を増幅のための前記宿主細胞は、配列番号1〜配列番号9の群のポリペプチドの少なくとも1つ、好ましくは配列番号1のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む少なくとも1つの核酸が導入されたものであり(本明細書の他の箇所(例えば、好ましい実施形態)に記載)、ヒト骨髄性白血病起源、好ましくは、細胞もしくは細胞株KG1、MUTZ−3、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株、より好ましくは、細胞もしくは細胞株K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株、さらにより好ましくは、細胞もしくは細胞株NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株である。
【0172】
本発明の好ましい実施形態では、前記宿主細胞を葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートとともに、連続して少なくとも2回培養し、このとき、葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートの濃度は、連続する各回で、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増大する。本発明のなおさらに好ましい実施形態では、前記宿主細胞を葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートとともに、少なくとも3回、より好ましくは4回、より好ましくは5回、さらにより好ましくは6回連続して培養し、このとき、葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートの濃度は、連続する各回で、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増大する。約20nM〜3000nMの葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートの濃度が、さらにより好ましく、より好ましくは約50nM〜2000nM、より好ましくは約100nM〜2000nMであり、さらにより好ましい約100nM、200nM、500nM、1000nM、2000nMは、好ましい実施形態であり、100nMから開始して連続する回で使用される。
【0173】
葉酸代謝拮抗薬耐性DHFRバリアント、好ましくは配列番号1〜配列番号9の群の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列の導入により、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞、特に、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株において、葉酸代謝拮抗薬/メトトレキサートとともに培養することによって、前記タンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列の増幅が可能になることは驚くべきことである。
【0174】
配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列の導入により、本発明の宿主細胞、特に、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株において、メトトレキサートとともに培養することによって、前記抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列の増幅が可能になることは、特に驚くべきことである。
【0175】
配列番号1〜配列番号9の群の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列の導入により、本発明の宿主細胞、特に、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株において、前記宿主細胞をメトトレキサートとともに連続して少なくとも2回培養することによって、前記抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列のなおさらなる増幅が可能になり、このとき、メトトレキサートの濃度が、連続する各回で少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増大することは、さらにより驚くべきことである。
【0176】
配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列の導入により、本発明の宿主細胞、特に、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株において、前記宿主細胞をメトトレキサートとともに連続して少なくとも2回培養することによって、前記抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする核酸配列のなおさらなる増幅が可能になり、このとき、メトトレキサートの濃度が、連続する各回で少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%増大することは、さらにより驚くべきことである。
【0177】
好ましい実施形態において、増幅が安定であるという用語は、宿主細胞分裂サイクルの少なくとも35世代において、抗体分子組成物の高収率生成がもたらされることを意味する。該タンパク質/抗体分子またはその一部分をコードする安定に導入された前記核酸(1つまたは複数)の増幅は、メトトレキサートを使用し、上記および本実施例に記載のようにして行なわれ得る。
【0178】
さらに好ましい実施形態は、本実施例に記載している。
【0179】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の核酸が導入された本発明の宿主細胞は、好ましくは、少なくとも1回の単一細胞クローニング/適当な発現を有する細胞クローンの選択/前記タンパク質/抗体組成物の分泌後に使用される。好ましくは、前記単一細胞クローニング/適当な発現を有する細胞クローンの選択/前記タンパク質/抗体組成物の分泌は、本明細書の他の箇所に記載した少なくとも1回のメトトレキサート増幅後に行なう。さらに好ましい実施形態において、前記細胞クローンは、メトトレキサート(好ましくは増大濃度のメトトレキサート、好ましくは少なくとも約2倍濃度のメトトレキサート)によるさらに少なくとも1回の増幅によってさらに増幅させ、さらにより好ましくは、その後、さらなる回の単一細胞クローニング/適当な発現を有する細胞クローンの選択/前記タンパク質/抗体組成物の分泌を行なう。このような好ましい実施形態では、特に高発現収率を有する細胞クローンが選択され得る。
【0180】
本発明によれば、前記抗体分子組成物またはタンパク質のそれぞれの配合物の産生を許容する条件下で前記宿主細胞を培養するという用語は、一般に、タンパク質/抗体分子をコードする少なくとも1つの核酸、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載した本発明の前記核酸の好ましい実施形態を含む本発明の宿主細胞を、該タンパク質/抗体分子がタンパク質/抗体分子組成物の形態で、好ましくは、培地中に分泌され、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載したような高収率および/または高い活性および/または高い均一性を有するように発現されることを可能にする培養条件下で培養することを意味する。当業者は、適当な培地ならびに培養条件(限定されないが、適当な時間、温度、pH、ガス供給(gasing)、供給量、培地、培地補給物質、容器または反応器のサイズおよび当業者に周知の原理など)を使用することにより、最も適当な培養条件を選択することができよう。当業者は、最も適当な条件を選択および最適化することができよう。好ましい実施形態を本実施例に記載するが、これらに限定されない。
【0181】
本発明の細胞の培養は、所望の抗体分子組成物が効率的に産生され得る任意の一般的な動物細胞培養法、例えば、バッチ培養、反復バッチ培養、流加培養および灌流培養によって行なわれ得る。好ましくは、所望のポリペプチドの生産性を挙げるために、流加培養または灌流培養が使用される。
【0182】
本発明のさらに好ましい実施形態において、前記培養は無血清条件下で行なわれ、なおさらに好ましくは、タンパク質無含有培地または動物成分無含有培地で行なわれる。
【0183】
本発明による無血清培地への本発明の宿主細胞の適応は、驚くほど速く、ロバスト(robust)である。該適応は、例えば、血清含有培地中で継代培養した細胞を、市販の無血清培地に直接適応させることによって、または連続適応によって行なわれ得、ここで、無血清培地への直接適応が好ましく、好都合である。無血清培地への適応プロセス中、細胞のバイアビリティは一時的に低下し、場合によっては、細胞の死滅が引き起こされる。したがって、細胞のバイアビリティを回復させるため、またはこれを高い状態で維持するため、細胞を、適応用培地中の無血清培地に、1×10
5〜5×10
5細胞/ml、好ましくは2×10
5細胞/mlの細胞密度で播種することが好ましい。4〜7日間の培養後、密度が5×10
5〜10×10
5細胞/mlに達した細胞を、無血清培地に適応された細胞として選択する。また、無血清培地への適応は、無血清培地組成物によるFCS補給培地の連続希釈によって行なわれ得る(連続適応)。当業者は、最も適当な条件を選択および最適化することができよう。好ましい実施形態を本実施例に記載するが、これらに限定されない。
【0184】
本発明の細胞を無血清培地に適応させた後、96ウェルプレートでの限界希釈法、コロニー形成法などを使用することにより細胞株のクローニングが準備され得、細胞の性質により、その親細胞または細胞株と比べて好都合な、例えば限定されないが、倍加時間が短い、成長が速い、高密度下で増殖する可能性、より多く産生され得る、クローニング効率が高い、DNAのトランスフェクション効率が高い、抗体分子組成物の発現速度が速い、発現される抗体分子組成物の活性が高い、発現される抗体分子組成物の均一性が高いおよび/または規模拡大のロバストネスが高いなどの細胞または細胞株が選択される。好都合な性質を有する細胞の選択方法は、当業者に周知であるか、または本明細書に記載されている。
【0185】
本発明によれば、前記抗体分子組成物またはタンパク質の対応する配合物を単離するという用語は、一般に、本明細書の他の箇所に記載した前記該タンパク質/抗体分子またはその一部分をコードする核酸の少なくとも1つを含む前記宿主細胞によって発現されるタンパク質/抗体分子組成物が、当業者には周知の方法によってタンパク質/抗体分子組成物または前記タンパク質/抗体分子組成物のその一部を培養またはさらに富化もしくは精製した後、該増殖培地を使用することにより得られることを意味する。また、本発明の意味における前記タンパク質/抗体分子組成物は、本明細書の他の箇所に記載した特定のあるタンパク質/抗体分子が富化された前記タンパク質/抗体分子組成物の一部を意味する。
【0186】
好ましい一実施形態において、タンパク質/抗体分子組成物は、培養後に、例えば遠心分離手法によって培地を細胞および/または細胞残屑から分離することにより単離される。
【0187】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明のタンパク質/抗体分子組成物は、限外濾過、沈降法または当業者には周知の他の濃縮方法によって単離またはさらに富化される。
【0188】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明のタンパク質/抗体分子組成物は、当業者に周知のクロマトグラフィー法、例えば限定されないが、親和性クロマトグラフィー(相応する親和性物質、例えば限定されないが、プロテインA、プロテインG、抗抗体アイソタイプ抗体、レクチンクロマトグラフィー、抗体分子内に導入される特定のあるタグ(HIS−タグもしくはmyc−tagなど)に対する抗体あるいは抗原などを使用)、またはイオン交換クロマトグラフィーなどによるタンパク質/抗体分子組成物の精製によって単離される。
【0189】
タンパク質またはタンパク質の特定のあるグリコフォームのさらなる精製または富化方法は、当業者には周知であり、当業者は、選択、採用、最適化し、単独でまたは上記の方法と組合せて使用し、本発明のタンパク質分子組成物またはその画分を単離またはさらに精製、分画もしくは富化することができる。
【0190】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の主にIgGの抗体分子組成物は、事前の超遠心分離を伴って、または伴わずに、プロテインAクロマトグラフィーによって単離される。
【0191】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の主にIgMの抗体分子組成物が、事前の超遠心分離を伴って、または伴わずに、抗IgM抗体クロマトグラフィーによって単離される。
【0192】
本発明の別の好ましい実施形態では、抗体分子の特定のあるグリコフォームが富化された本発明の抗体分子組成物が、事前の超遠心分離を伴って、または伴わずに、レクチン親和性クロマトグラフィーによって単離される。タンパク質またはタンパク質の特定のあるグリコフォームのさらなる精製または富化方法は、当業者には周知であり、当業者は、選択、採用、最適化し、単独でまたは上記の方法と組合せて使用し、本発明の抗体分子組成物またはその画分を単離またはさらに精製、分画もしくは富化することができる。
【0193】
好ましい実施形態において、抗体分子組成物は、プロテインAカラムを用いて単離される。別の好ましい実施形態では、抗体分子組成物は、抗IgMカラムを用いて単離される。
【0194】
本発明によれば、用語「増大した活性」は、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質および/または抗体分子組成物の活性が、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマのうちの少なくとも1種類において発現させたときの同じタンパク質/抗体分子の少なくとも1種類のタンパク質/抗体分子組成物の活性よりも高いことを意味する。本発明の好ましい実施形態において、これは、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物の活性が、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたときの同じタンパク質/抗体分子のタンパク質/抗体分子組成物の活性よりも高いことを意味する。抗体では、前記増大した活性は、増大したFc媒介性細胞性細胞傷害または増大した結合活性である。
【0195】
本発明の意味において、「活性」はまた、生物学的状況でタンパク質分子が発揮する機能または一組の機能である。本発明の意味において、用語「増大した活性」、その内容に相当する語句および文法的に対応する語句は、選択された適用に関して改善された、または最適な活性と理解されたく、このとき、該活性は、限界値に対して近似(例えば、極小化もしくは極大化)したもの、または先行技術によって産生された対応するタンパク質分子と比べて高い活性もしくは低い活性を示す中央値に設定したもののいずれかであり得る。また、本発明の意味における改善された、または増大した活性は、生物学的意味および/または製薬的意味において、改善された血清半減期、薬物動態、安定性、生物学的活性、結合、抗原性および/または免疫原性として有利な活性を意味する。例えば、タンパク質分子組成物の生物学的活性は、有害な生物学的効果を低減することにより、例えば、有害な免疫効果の刺激の低減または免疫原性の低減によって、ある程度増大され得る。
【0196】
本発明によるタンパク質分子組成物の活性は、該タンパク質の活性の測定が可能な適当なバイオアッセイにおいて測定され得る。当業者は、適当なバイオアッセイを特定、または適当なバイオアッセイを構築することができよう。本発明によれば、かかるバイオアッセイとしては、例えば、生物学的インビトロアッセイ、例えば、細胞系もしくは分子系または混合型アッセイ、例えば増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、細胞接着アッセイ、シグナル伝達アッセイ、泳動アッセイ、細胞細胞傷害アッセイ、食作用アッセイ、溶解アッセイ、および結合アッセイが挙げられる。また、かかるバイオアッセイとして、動物モデルまたはヒトを用いたインビボアッセイ、例えば、生体分布、薬物動態、薬力学の試験など、血清半減期試験、バイオアベイラビリティの試験、有効性試験、局在試験、臨床試験などの疾患の処置および予防(prophylaxe)の試験も挙げられる。また、かかるバイオアッセイとして、化学的、物理的、物理化学的、生物物理的および生化学的試験(温度、剪断応力、圧力、pH、コンジュゲーションなどに対する安定性など)も挙げられる。また、かかるバイオアッセイとして、臨床使用に関してタンパク質分子組成物の性質を改善するため、免疫原性および/または抗原性に関する試験も挙げられる。当業者は、タンパク質分子組成物の活性または記載の活性の組合せを測定することができよう。
【0197】
好ましい実施形態において、高活性のタンパク質分子組成物は、少なくとも1種類のバイオアッセイで測定したときの、少なくとも1種類のインビトロモデルにおける高活性および/または少なくとも1種類のインビボモデルにおける高活性および/または高安定性および/または長い血清半減期および/または長いバイオアベイラビリティおよび/または改善された免疫原性および/または改善された抗原性を特徴とする。活性全体における改善もまた、本明細書では高活性と称し、これは、例えば、ヒトまたは相当する生物体において使用した場合、該産生物の低投薬量、長い投与間隔、低副作用および無毒性または低毒性などの改善をもたらし得、医薬品の大きな改善がもたらされる。
【0198】
本発明の好ましい実施形態において、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質分子組成物の活性は、先行技術によって産生された同じタンパク質分子の少なくとも1種類のタンパク質分子組成物の活性よりも高い。
【0199】
前記増大したFc媒介性細胞性細胞傷害は、増大した抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC活性)、補体依存性細胞傷害(CDC活性)および/または食作用によって引き起こされる細胞傷害(食作用活性)である。増大したFc媒介性細胞性細胞傷害、例えば、ADCC活性、CDC活性または食作用活性は、当業者に周知の種々の方法によって測定され得、一部を本実施例に詳細に記載しているが、それらの方法に限定されない。ここで、本実施例に記載の方法は、本発明の好ましい実施形態である。
【0200】
前記増大した結合活性は、抗体分子のエピトープ(エピトープ、抗原、エピトープを含む別のポリペプチドもしくは抗体分子のエピトープを含む細胞など)に対する増大した結合、または少なくとも1種類のFc受容体もしくは別のエフェクターリガンド(Fc−γRI、Fc−γRII、Fc−γRIII、およびそのサブクラス、例えば、Fc−γRIIa、Fc−γRIIIa、Fc−γRIIIb、もしくは補体のC1q成分、もしくはFcRnあるいは任意のかかるFc受容体もしくはエフェクターリガンドを含む分子もしくは細胞など)に対する増大した結合である。増大した結合活性は、高くなった親和性、高くなったアビディティおよび/または結合部位の数の増加またはその組合せであり得る。増大した結合活性により、種々の効果および活性、例えば限定されないが、背景技術の項目で記載したような形態の受容体媒介型活性などがもたらされ得る。増大した結合親和性、アビディティおよび受容体媒介型活性は、当業者に周知の種々の方法の少なくとも1つ、例えば限定されないが、Biacore測定、Scatchard解析、ELISAまたはRIA系の測定、フローサイトメトリー測定、適当な標的細胞におけるアポトーシス誘導を調べるための試験、適当な標的細胞の増殖を調べるための試験、抗体分子組成物のアンタゴニスト、アゴニストおよび/または受容体ブロックについての試験(限定されないが、細胞−細胞媒介型結合の阻害、細胞内部の分子事象の誘発など)などによって測定され得る。当業者は、結合親和性、アビディティ、結合部位の数および/または受容体媒介型活性の試験のための適当な方法または方法の組合せを選択および/または採用および/または改良することができよう。
【0201】
本発明の方法を用いて、抗体分子の食作用および/またはエピトープ(好ましくは、少なくとも1種類のFc受容体または別のエフェクターリガンド)に対する増大した結合活性によってもたらされる増大したFc媒介性細胞性細胞傷害、好ましくは、ADCC活性、CDC活性および/または細胞傷害が得られ得る抗体の能力が、一般におよび/または特に本発明の宿主細胞で試験され得、その好ましい実施形態は本明細書の他の箇所に記載している。
【0202】
本発明の好ましい実施形態において、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物の活性は、該細胞において発現させたとき、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]少なくとも1種類由来の同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物の活性よりも高い。
【0203】
本発明の好ましい実施形態において、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物の活性は、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物の活性よりも少なくとも50%、より好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも7倍、より好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも15倍、より好ましくは少なくとも23倍、より好ましくは少なくとも30倍、より好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも75倍、より好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも150倍、より好ましくは少なくとも150倍、より好ましくは少なくとも230倍、より好ましくは少なくとも300倍、より好ましくは少なくとも500倍、より好ましくは少なくとも750倍、最も好ましくは1000倍超高い。
【0204】
そのため、各バイオアッセイで高活性が示される必要はなく、具体的なタンパク質分子組成物の使用および特質に応じて、一部の有利な生物学的効果によってあまり有利でない他のものが補償され得、やはり、全体として本発明の意味におけるタンパク質分子組成物の高い活性がもたらされる。例えば、特定のあるタンパク質分子組成物では、細胞の受容体に対する結合によってずっと高い活性がもたらされ得、それにより、副次効果(増殖の誘導など)が誘発され得るが、やや血清半減期の低下が示されることがあり得る。組合せにおいて、より多くの受容体を誘発する高活性により、次いで、全体的な生物活性においてより短いバイオアベイラビリティが補償される。別の例では、半減期の短縮および受容体に対する高活性の誘発が、ともに好都合である。また別の例では、インビボ活性は改善されないが、インビトロでの安定性により、タンパク質分子組成物の産生と保存が改善される。また別の例では、半減期は長いが活性は低いことが必要とされる。
【0205】
本発明の好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したADCC活性である。別の好ましい実施形態では、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したCDCである。別の好ましい実施形態では、抗体分子組成物の増大した活性は、食作用によって引き起こされる増大した細胞傷害である。別の好ましい実施形態では、抗体分子組成物の増大した活性は、エピトープに対する増大した結合活性である。別の好ましい実施形態では、抗体分子組成物の増大した活性は、少なくとも1種類のFc受容体、好ましくはFcγRIIIAに対する増大した結合活性である。さらに好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したFc媒介性細胞性細胞傷害とエピトープに対する増大した結合活性である。さらに好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したADCC活性とエピトープに対する増大した結合活性である。さらに好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したADCC活性、増大したCDC活性、エピトープに対する増大した結合活性、および少なくとも1種類のFc受容体に対する増大した結合活性である。さらに好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したADCC活性、食作用によって引き起こされる増大した細胞傷害、エピトープに対する増大した結合活性および少なくとも1種類のFc受容体に対する増大した結合活性である。最も好ましい実施形態において、抗体分子組成物の増大した活性は、増大したADCC、食作用によって引き起こされる増大した細胞傷害、増大したCDC活性、およびエピトープに対する増大した結合活性、および少なくとも1種類のFc受容体に対する増大した結合活性である。
【0206】
本発明によれば、用語「改善された均一性」は、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物が、該細胞において発現させたとき、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマの少なくとも1種類から単離された同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物よりも少ない異なるグリコフォーム、または多くの有利なグリコフォーム(1種類もしくは複数種)、または少ない抗体分子の少なくとも1つのグリコフォーム(好ましくは、それ自体において、抗体分子組成物全体の少なくとも1%であるグリコフォーム)を含むことを意味する。本発明の好ましい実施形態において、これは、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明の抗体分子組成物が、該細胞において発現させたとき、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じ抗体分子の抗体分子組成物よりも少ない異なるグリコフォーム、または多くの有利なグリコフォーム(1種類もしくは複数種)、または少ない抗体分子の少なくとも1つのグリコフォームを含むことを意味する。
【0207】
ヒトにおける産生および使用に特に問題となる不均一性の一例は、シアリル化である。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質/抗体分子組成物は、シアル酸N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を有するグリコフォームを含まないことにより、改善された均一性を有し、ここで、この場合、グリコフォームを含まないとは、グリコフォームが、精製抗体分子組成物から得られ得る全糖鎖の1%より多く存在しないこと、より好ましくは、当業者に周知の方法によって検出可能である検出可能な糖鎖が全くないことを意味する。NeuGcは、ヒトにおいて免疫原性となり得ることがわかっているため、このことは、CHO、NSO、SP2/0などの他の産生系と比べて、本発明の宿主細胞の大きな利点である。
【0208】
好ましい実施形態において、本発明のタンパク質/抗体分子組成物は、含まれるグリコフォームが5%未満、より好ましくは3%未満、さらにより好ましくは1%未満であること、最も好ましくは、実施例に記載のような検出可能なシアル酸を有するタンパク質/抗体分子組成物のグリコフォームが含まれないことにより、シアリル化に関して改善された均一性を有する。さらに好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物は、糖ヌクレオチド前駆物質経路に欠陥を有し、したがって、CMP−シアル酸が欠損または低減された本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞を使用することにより得られ、これにより、該細胞を無血清培地中で培養したとき、タンパク質/抗体分子の糖鎖構造の糖鎖のシアリル化が全くないか、または大きな低減がもたらされる。なおさらに好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有するかかるタンパク質/抗体分子組成物は、無血清培地中で培養する本発明の宿主細胞として、NM−F9[DSM ACC2606]またはNM−D4[DSM ACC2605]を使用することにより得られ得、本実施例でより詳細に記載する。
【0209】
別のさらに好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物は、GMP−シアル酸の糖ヌクレオチド輸送体または少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼに欠陥を有する本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞を使用することにより得られ、これにより、該細胞を無血清培地中で培養したとき、タンパク質/抗体分子の糖鎖構造の糖鎖のシアリル化が全くないか、または低減がもたらされる。例は、NM−F9、NM−D4およびGT−2Xである。
【0210】
本発明の別の好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物は、増大したシアリル化度を有する本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞を使用することにより得られる。前記シアリル化度は、抗体分子組成物中のタンパク質/抗体分子上のシアル酸N−アセチルノイラミン(NeuNcまたはNeuNAc)の量が、該細胞において発現させたとき、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]少なくとも1種類から単離された同じタンパク質/抗体分子のタンパク質/抗体分子組成物の同じ量のタンパク質/抗体分子と比べて、タンパク質/抗体分子の糖鎖単位全体または特定のあるグリコシル化部位の特定の糖鎖のシアル酸N−アセチルノイラミン(NeuNcまたはNeuNAc)の量よりも、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、より好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは100倍超多いことを意味する。シアリル化度は、当業者に周知の方法、例えば限定されないが、結合が糖鎖構造(SNA、MAL、MAL IもしくはPNA)のシアリル化に依存するレクチンを用いたイムノブロット解析またはELISA、化学的検出法(チオバルビツール酸法など)、HPLCもしくは質量分析など、またはその組合せによって検出され得る。当業者は、最も適当な方法を選択し、採用し、その目的に最適化することができよう。さらなる詳細は、本実施例に記載している。SNAを用いたイムノブロット解析が好ましい。
【0211】
別のさらに好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物は、本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞、好ましくは、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xおよびその誘導細胞または誘導細胞株、最も好ましくは、増大したシアリル化度を有し、例えばSNA結合によって検出可能なα2−6結合シアル酸を含むタンパク質/抗体分子組成物が、より好ましくは、α2−6およびα2−3結合シアル酸を含むタンパク質/抗体分子組成物の型でもたらされるK562、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xを使用することにより得られる。
【0212】
別の好ましい実施形態では、シアリル化に関して改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物は、NeuNAcをα2−3で結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼと、NeuNAcをα2−6結合で糖鎖基に結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼを含むヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞、例えば限定されないが、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xおよびその誘導細胞または誘導細胞株などを使用することにより得られ、それにより、タンパク質/抗体分子組成物においてタンパク質/抗体分子に、より好ましい組成のグリコフォームがもたらされる。
【0213】
本発明のなおさらに(好ましい)実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有する本発明の前記抗体分子組成物は、少なくとも1つの糖鎖が、Fc領域の第2のドメイン(Cγ2ドメイン)内のアミノ酸Asn−297とは別の該抗体分子のグリコシル化部位に結合された抗体分子の少なくとも1つのグリコフォームを含む。
【0214】
なおさらに好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有する先の抗体分子組成物は、増大したシアリル化度を有する、および/またはシアル酸をα2−3で結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼと、シアル酸をα2−6結合で糖鎖基に結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼを含むヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞において、例えば、K562、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xおよびその誘導細胞または誘導細胞株などにおいて発現させる。
【0215】
なおさらに好ましい実施形態において、先の抗体分子は、Fab領域の配列内に、少なくとも1つのN−グリコシル化部位(Asn−X−Ser/Thr、式中、Xは、Pro以外の任意のアミノ酸であり得る)および/または少なくとも1つのO−グリコシル化部位を有する。
【0216】
さらに好ましい実施形態において、Fc部分の第2のドメイン(Cγ2ドメイン)内のアミノ酸Asn−297とは別の該抗体分子のグリコシル化部位に結合された少なくとも1つの糖鎖を含む抗体分子を含むシアリル化に関して改善された均一性を有する本発明の抗体分子組成物は、該細胞において発現させたとき、少なくとも1種類の哺乳動物(マウス、ラットなど)、または好ましくはヒトにおいて測定した場合、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、NM−F9、NM−D4またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]の少なくとも1種類から単離された同じ抗体分子の抗体分子組成物よりも増大した血清半減期および/またはバイオアベイラビリティを有する。
【0217】
抗体のバイオアベイラビリティは、本発明を用いて最適化され得る。特に、高い、さらには非常に高いシアリル化を有する細胞(上記のグループ1〜3)における抗体分子の発現により、バイオアベイラビリティが増大した抗体組成物がもたらされ得るが、グループ2の細胞における抗体分子の発現では、比較的低減したバイオアベイラビリティを有する抗体組成物がもたらされ得る。バイオアベイラビリティは、当業者には周知のようにして、および本実施例に記載のようにして、動物または好ましくはヒトを用いて試験され得る。動物としては、マウス、ラット、モルモット、イヌ、またはサルが挙げられるが、かかる種に限定されない。ヒトの性質をもつため、ヒトに近いグリコシル化および最も重要なシアリル化を有する動物が好ましく、ヒトが最も好ましい。
【0218】
さらにより好ましい実施形態において、シアリル化に関して改善された均一性を有する抗体分子組成物は、増大したシアリル化度を有する、および/またはシアル酸をα2−3で結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼと、シアル酸をα2−6結合で糖鎖基に結合させ得る少なくとも1種類のシアリルトランスフェラーゼを含む本発明のヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で、例えば、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6、およびその誘導細胞または誘導細胞株などで発現させたものであり、抗体分子Fab領域の配列内の少なくとも1つのN−グリコシル化部位および/または少なくとも1つのO−グリコシル化部位に結合された少なくとも1つの糖鎖を含み、該細胞において発現させたとき、少なくとも1種類の哺乳動物(マウス、ラットなど)、または好ましくはヒトにおいて測定した場合、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマの少なくとも1種類、好ましくは、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じ抗体分子の抗体分子組成物よりも増大した血清半減期および/またはバイオアベイラビリティを有する。さらに好ましい実施形態において、発現される抗体分子は、エルビタックス(セツキシマブ)である。
【0219】
本発明によれば、用語「増大した収率」は、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で産生された本発明のタンパク質/抗体分子組成物の平均または最大収率が、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマのうちの少なくとも1種類において発現させたときの同じタンパク質/抗体分子の少なくとも1種類のタンパク質/抗体分子組成物のそれぞれの平均または最大収率よりも高いことを意味する。本発明の好ましい実施形態において、これは、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物の平均または最大収率が、マウスdhfr遺伝子およびCHOdhfr−における増幅のためのメトトレキサートを使用し、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたときの同じタンパク質/抗体分子のタンパク質/抗体分子組成物のそれぞれの平均または最大収率よりも高いことを意味する。平均および最大収率は、細胞の産生能を反映するSPRにおいて測定され、細胞混合物または細胞株は、当業者によって決定され得、その好ましい実施形態を本実施例に記載している。
【0220】
本発明のさらに好ましい実施形態において、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞内で、好ましくは、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたはその誘導細胞もしくは誘導細胞株で発現させた本発明のタンパク質/抗体分子組成物の少なくとも平均または最大収率は、マウスdhfr遺伝子およびCHOdhfr−における増幅のためのメトトレキサートを用いて細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じタンパク質/抗体分子の相当するタンパク質/抗体分子組成物よりも少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、最も好ましくは5倍超高い。
【0221】
本発明は、さらに、
(a)本明細書の他の箇所に記載したタンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする配列、および
(b)配列番号1〜配列番号9の群の配列をコードする少なくとも1つの配列
を含む核酸を提供する。
【0222】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の核酸は、
(a)本明細書の他の箇所に記載したタンパク質、好ましくは抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする配列、および
(b)配列番号1をコードする配列
を含む。
【0223】
本発明のさらに好ましい実施形態において、上記の本発明の核酸は、さらに、選択マーカーをコードする配列、好ましくは、前記核酸が導入された宿主細胞の抗生物質(限定されないが、ネオマイシンまたはプロマイシンなど)への耐性を誘導するポリペプチドをコードする配列を含む。
【0224】
本発明のさらに好ましい実施形態において、上記の本発明の核酸は、さらに、本明細書の他の箇所に記載した少なくとも1種類の遺伝因子の少なくとも1つの配列を含む。
【0225】
本発明は、さらに、ヒト骨髄性白血病起源の宿主細胞、または白血病患者から得られ得る任意のヒト骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒトドナーから得られ得る任意の骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒト骨髄性白血病起源の少なくとも1種類の細胞を含む細胞もしくは細胞株の混合物、ヒト骨髄性白血病起源の少なくとも1つの細胞、複数の細胞もしくは細胞株または白血病患者から得られ得る任意のヒト骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒトドナーから得られ得る任意の骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株を、ヒトまたは動物起源の別の細胞(限定されないが、B細胞、CHO細胞など)と融合させることによりにより得られた細胞(1種類もしくは複数種)あるいは細胞株であって、タンパク質/抗体分子またはその一部分をコードする少なくとも1つの核酸が細胞内に導入された細胞(1種類もしくは複数種)あるいは細胞株を提供する。
【0226】
本発明は、タンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする少なくとも1つの核酸を含む、上記の本発明の宿主細胞を提供する。
【0227】
好ましい実施形態において、本発明は、宿主細胞K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株を提供し、好ましくは、無血清条件下で培養され、該タンパク質/抗体分子組成物が無血清条件下で単離されるもの、さらにより好ましくは、無血清条件下で該抗体分子をコードする核酸が導入されており、タンパク質/抗体分子またはその一部分をコードする少なくとも1つの核酸、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載したタンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする配列を含む核酸を含むものを提供する。
【0228】
本発明は、配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む上記の本発明の宿主細胞を提供する。
【0229】
本発明は、抗体分子またはその一部分をコードする少なくとも1つの核酸と、配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む上記の本発明の宿主細胞を提供する。
【0230】
好ましい実施形態において、本発明は、宿主細胞K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株を提供し、好ましくは、無血清条件下で培養され、該タンパク質/抗体分子組成物が無血清条件下で単離されるもの、さらにより好ましくは、無血清条件下で該タンパク質/抗体分子をコードする核酸が導入されており、タンパク質/抗体分子またはその一部分をコードする少なくとも1つの核酸、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載したタンパク質/抗体分子またはその少なくとも一部分をコードする配列を含む核酸と、配列番号1〜配列番号9の群、好ましくは配列番号1の配列をコードする少なくとも1つの配列を含むものを提供する。
【0231】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、コードされた抗体分子がWO2004/065423の抗体である上記の宿主細胞を提供する。
【0232】
なおさらに好ましい実施形態において、本発明は、コードされた抗体分子が、抗体PankoMab[Cancer Immunol Immunother.2006 Nov;55(11):1337−47.Epub 2006 Feb.PankoMab:a potent new generation anti−tumour MUC1 antibody.Danielczykら]、好ましくは、PankoMabとすべてのヒト定常ドメインとのキメラ形態、より好ましくはヒト化PankoMabである上記の宿主細胞を提供する。
【0233】
本発明は、さらに、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性および本明細書のどこかに記載した本発明の任意の方法によってもたらされる完全ヒトグリコシル化を有するタンパク質/抗体分子組成物を提供する。
【0234】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の任意の方法によって生成され、該細胞において発現させたとき、細胞株CHO、またはCHOdhfr−、またはBHK、またはNS0、またはSP2/0、またはPerC.6またはマウスハイブリドーマ、好ましくは、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]少なくとも1種類から単離された同じタンパク質/抗体分子のタンパク質/抗体分子組成物と比べて、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性および本発明の任意の方法によってもたらされる完全ヒトグリコシル化を有するタンパク質/抗体分子組成物を提供する。
【0235】
発現されるタンパク質分子またはその一部分は、任意のタンパク質またはタンパク質の一部分またはタンパク質断片であり得る。発現される抗体分子またはその一部分は、任意の抗体または抗体の一部分または抗体断片であり得る。
【0236】
本発明のタンパク質分子組成物は、白血病、好中球減少症、血球減少症、癌、骨髄移植、造血系の疾患、不妊症および自己免疫疾患などの疾患の予防的および/または治療的処置に使用され得る。当業者には周知のタンパク質分子組成物の治療適用用途の範囲は、非常に広い。例えば、G−CSFは、白血病性癌患者の化学療法の結果として好中球が減少する命にかかわる疾患である好中球減少症を処置するための重要な治療剤である。GM−CSFは、特に、化学療法後に好中球減少症からの速やかな回復を得るため、比較的高齢のAML患者の処置に使用される。さらに、GM−CSFは、骨髄移植におけるいくつかの適用用途のため、および末梢血幹細胞の可動性のための治療剤として承認されている。また、現在研究中のGM−CSFには、HIVおよび癌の処置用などのいくつかの臨床適用用途がある。造血系のある種の疾患は、EPOで処置され、IFN−βは、現在、自己免疫疾患である多発性硬化症の処置のための重要な治療剤である。別の例はFSHであり、これは、男性および女性の不妊症の処置に広く使用されている。また、hCGも不妊症の処置に適用されているが、女性の無排卵に焦点をあてたものである。hGHは、体脂肪低減および筋肉組織増加などの臨床的に証明された利点を有する。
【0237】
また、本発明のタンパク質分子組成物は、白血病、好中球減少症、血球減少症、癌、骨髄移植、造血系の疾患、不妊症および自己免疫疾患を含む群から選択される疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の製造に使用され得る。
【0238】
本発明の好ましい実施形態において、発現される抗体分子は、乾癬、慢性関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫疾患、SLE、多発性硬化症、自己免疫性の血液障害、喘息、アレルギー、対宿主性移植片病、同種移植拒絶反応、緑内障手術、心筋梗塞、ウイルス(RSV、HIV、Hep B、もしくはCMVなど)、癌、肉腫、CLL、AML、またはNHLを認識する抗体分子である。
【0239】
本発明のさらに好ましい実施形態において、発現される抗体分子は、少なくとも1人のヒトの、好ましくは、耳−鼻−喉領域、肺、縦隔、胃腸管、泌尿生殖器系、婦人科系、乳房、内分泌系、皮膚の癌性疾患または腫瘍疾患、骨および軟組織の肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系の新生物、新生児期の癌性疾患または腫瘍疾患、リンパ腫、白血病、新生物随伴症候群、原発不明腫瘍による転移(CUP症候群)、腹膜癌腫症、免疫抑制関連悪性疾患および/または腫瘍転移の群から選択される癌、腫瘍または転移、少なくとも1つの癌細胞または腫瘍細胞を認識する抗体分子である。
【0240】
本発明の好ましい実施形態において、発現される抗体またはその一部分は、抗MUC1抗体である。
【0241】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、抗体リツキシマブ、ハーセプチン、エルビタックス、カンパス1Hまたはその誘導抗体である。
【0242】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/050707の抗体であり、さらにより好ましくはWO2004/065423のものであり、さらにより好ましくはPankoMab[Cancer Immunol Immunother.2006 Nov;55(11):1337−47.Epub 2006 Feb.PankoMab:a potent new generation anti−tumour MUC1 antibody.Danielczykら]であり、さらにより好ましくは、すべてのヒト定常ドメインを含むそのキメラ型であり、さらにより好ましくはそのヒト化抗体である。
【0243】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、本発明の任意の完全体の抗体、好ましくは、リツキシマブ、ハーセプチン、エルビタックス、より好ましくはWO2004/065423のもの、最も好ましくはPankoMabであり、ここで、本発明の任意の宿主細胞、好ましくは、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株から単離された抗体分子組成物は、検出可能なNeuGcを含まない。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0244】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、任意の完全体の抗体分子または本発明のCγ2ドメインを含む抗体分子、好ましくは、リツキシマブ、ハーセプチン、エルビタックス、より好ましくはWO2004/065423のもの、最も好ましくはPankoMabであり、ここで、本発明の宿主細胞、好ましくは、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株から単離された抗体分子組成物は、α2−6シアル酸を有する少なくとも1つのグリコフォームを含む。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0245】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、任意の完全体の抗体分子または本発明のCγ2ドメインを含む抗体分子、好ましくは、リツキシマブ、ハーセプチン、エルビタックス、カンパス1H、より好ましくはWO2004/065423のもの、最も好ましくはPankoMabであり、ここで、宿主細胞NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株から単離された抗体分子組成物は、本実施例に記載のレクチンSNAを用いた免疫ブロット解析によって検出可能なα2−6シアル酸を含む。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0246】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、任意の抗体分子、好ましくは、リツキシマブ、ハーセプチン、エルビタックス、カンパス1H、より好ましくはWO2004/065423のもの、最も好ましくはPankoMabであり、無血清培地中、より好ましくはタンパク質無含有培地中で培養後に本発明の宿主細胞NM−F9またはNM−D4から単離された抗体分子組成物は、検出可能なシアル酸のない改善された均一性を有する。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0247】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、抗体リツキシマブ、ハーセプチン、カンパス1H、またはその誘導抗体であり、本発明の宿主細胞から単離された抗体分子組成物は、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物の活性よりも少なくとも4倍高く増大したADCC活性を有する。
【0248】
本発明のさらにより好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、本発明の宿主細胞から単離された抗体分子組成物は、細胞K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株の少なくとも1種類において産生させた場合、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物の活性よりも少なくとも4倍高く増大したADCC活性を有する。
【0249】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、本発明の宿主細胞K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株から単離された抗体分子組成物は、そのエピトープに対し、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物の活性よりも少なくとも50%高く、好ましくは2倍高く増大した結合活性を有する。
【0250】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、無血清培地中、より好ましくはタンパク質無含有培地中で培養後に本発明の宿主細胞NM−F9またはNM−D4から単離された抗体分子組成物は、検出可能なシアル酸のない改善された均一性を有する。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0251】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、宿主細胞K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは前記宿主細胞のいずれかに由来する細胞もしくは細胞株から単離された抗体分子組成物は、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物よりも少なくとも10%多くのシアル酸を含む改善された均一性を有する。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0252】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、本発明の宿主細胞から単離された抗体分子組成物は、NM−F9またはNM−D4において発現させたとき、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物と比べて検出可能なシアル酸がない程度が高い改善された均一性を有する。同じことが、タンパク質に一般的にあてはまる。
【0253】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabであり、本発明の宿主細胞から単離された抗体分子組成物は、上記のような改善された均一性を有し、細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させた同じ抗体分子の抗体分子組成物の活性よりも少なくとも4倍高く増大したADCC活性を有する。
【0254】
本発明の最も好ましい実施形態において、本発明の核酸(1つまたは複数)にコードされた抗体分子は、WO2004/065423の抗体、より好ましくはPankoMabである。
【0255】
本発明は、さらに、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性、および本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における完全ヒトグリコシル化を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための宿主細胞を提供し、ここで、該宿主細胞は、ヒト骨髄性白血病起源の任意の細胞(1つもしくは複数)または細胞株、または白血病患者から得られ得る任意のヒト骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒトドナーから得られ得る任意の骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒト骨髄性白血病起源の少なくとも1種類の細胞を含む細胞もしくは細胞株、あるいは本明細書の他の箇所に記載した細胞またはその誘導細胞株の混合物、または前述の細胞の少なくとも1種類を含む細胞もしくは細胞株の混合物である。
【0256】
また、本発明は、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性、および本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における完全ヒトグリコシル化を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための宿主細胞を提供し、ここで、該宿主細胞は、ヒト骨髄性白血病起源の少なくとも細胞(1つもしくは複数)もしくは細胞株、または白血病患者から得られ得る任意のヒト骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株、またはヒトドナーから得られ得る任意の骨髄性もしくは骨髄性前駆細胞もしくは細胞株を、ヒトまたは動物起源の別の細胞(限定されないが、B細胞、CHO細胞など)と融合させることにより得られた任意の細胞(1つもしくは複数)または細胞株である。
【0257】
好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、細胞もしくは細胞株KG1、MUTZ−3、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたはその誘導細胞もしくは誘導細胞株、または前述の細胞の少なくとも1種類を含む細胞もしくは細胞株の混合物である。
【0258】
さらに好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、細胞もしくは細胞株K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたはその誘導細胞もしくは誘導細胞株である。
【0259】
さらに好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、細胞もしくは細胞株NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたはその誘導細胞もしくは誘導細胞株、または本明細書の他の箇所に記載したその誘導細胞もしくは誘導細胞株である。
【0260】
なおさらに好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、KG1、MUTZ−3、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2X由来の細胞もしくは細胞株、または本明細書の他の箇所に記載したその誘導細胞もしくは誘導細胞株であって、無血清条件下で培養されるものであり、好ましくは、該タンパク質/抗体分子をコードする核酸が導入され得、抗体分子組成物が無血清条件下で単離されるものである。
【0261】
なおさらに好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2X由来の細胞もしくは細胞株、または本明細書の他の箇所に記載したその誘導細胞もしくは誘導細胞株であって、無血清条件下で培養されるものである。
【0262】
なおさらに好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、K562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2X由来の細胞もしくは細胞株、または本明細書の他の箇所に記載したその誘導細胞もしくは誘導細胞株であって、無血清条件下で培養され、該タンパク質/抗体分子をコードする核酸が導入され得、該タンパク質/抗体分子組成物が無血清条件下で単離されるものである。
【0263】
最も好ましい実施形態において、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有するタンパク質/抗体分子組成物を産生させるための本発明が提供する前記宿主細胞は、細胞もしくは細胞株NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、もしくはNM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、GT−2Xまたは本明細書の他の箇所に記載したその誘導細胞もしくは誘導細胞株であって、無血清条件下で培養されるものであり、好ましくは、該タンパク質/抗体分子をコードする核酸が導入され得、該タンパク質/抗体分子組成物が無血清条件下で単離されるものである。
【0264】
本発明は、さらに、本明細書の他の箇所に記載した本発明の任意の方法によって単離されるタンパク質/タンパク質組成物を提供する。
【0265】
本発明は、さらに、本明細書の他の箇所に記載した本発明の任意の方法によって単離される、増大した活性および/または増大した収率および/または改善された均一性、および本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における完全ヒトグリコシル化を有するタンパク質分子組成物を提供する。
【0266】
本発明のさらに好ましい実施形態において、該タンパク質分子またはその一部分は、少なくとも10kDaの大きさ、好ましくは少なくとも15kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも20kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも25kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも30kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも35kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも40kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも45kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも50kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも55kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも60kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも65kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも70kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも75kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも80kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも85kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも90kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも95kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも100kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも105kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも110kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも115kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも120kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも125kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも130kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも135kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも140kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも145kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも150kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも155kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも160kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも165kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも170kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも175kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも180kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも185kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも190kDaの大きさ、より好ましくは少なくとも195kDaの大きさ、最も好ましくは少なくとも200kDaの大きさを有する。
【0267】
本発明の好ましい実施形態において、前記タンパク質分子組成物は、サイトカインおよびその受容体、例えば、腫瘍壊死因子TNF−αおよびTNF−β;レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−抗トリプシン;インスリンA−鎖およびB−鎖;ゴナドトロピン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、サイロトロピン、およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);カルシトニン;グルカゴン;凝固因子(第VIIIC因子、第IX因子、第VII因子など)、組織因子およびフォン・ビルブラント因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノゲン活性化因子(ウロキナーゼ、ヒト尿および組織型プラスミノゲン活性化因子など);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;エンケファリナーゼ;ヒトマクロファージ炎症性タンパク質;ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー阻害物質;レラキシンA−鎖およびB−鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;血管内皮増殖因子;ホルモンまたは増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインAおよびD;リウマチ因子;神経栄養因子(骨由来神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4、−5、−6および神経成長因子−βなど);血小板由来増殖因子;線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子;トランスホーミング増殖因子(TGF−αおよびTGF−βなど);インスリン様増殖因子−Iおよび−II;インスリン様増殖因子結合タンパク質;CDタンパク質(CD−3、CD−4、CD−8およびCD−19など);エリトロポイエチン(EPO);骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質;インターフェロン(インターフェロン−α、−β、および-γ);コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−12;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;抗体およびイムノアドヘシン;グリコホリンA;MUC1の群の任意のタンパク質分子に由来するものである。
【0268】
本発明のより好ましい実施形態において、前記タンパク質分子組成物は、グリコホリンA、EPO、G−CSF、GM−CSF、FSH、hCG、LH、インターフェロン、インターロイキン、抗体および/またはその断片の群の任意のタンパク質分子に由来するものである。
【0269】
また、本発明による産生方法によって得られ得るグリコールタンパク質またはタンパク質組成物が提供される。前記タンパク質好ましくは、請求項27に記載の特徴的グリコシル化を有する。
【0270】
好ましくは、前記タンパク質組成物は抗体分子組成物である。本発明は、さらに、本明細書の他の箇所に記載した本発明の任意の方法によって単離される、増大した活性および/または増大した収率および/または本明細書の他の箇所に記載した本発明の意味における改善された均一性を有する抗体分子組成物を提供する。
【0271】
かかる抗体の例としては、ガングリオシドGD3、ヒトインターロイキン−5受容体α鎖、HER2、CCケモカイン受容体4、CD20、CD22、神経芽腫、MUC1、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対する抗体が挙げられる。
【0272】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体分子組成物は、ムロモナブ(Muromomab)、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アブシキシマブ、リツキシマブ、ハーセプチン、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブ、セツキシマブ(エルビタックス)、ベバシズマブ、トシツモマブ、パブリズマブ(Pavlizumab)、インフリキシマブ、エクリズマブ、エプラツズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、アダリムマブ、カンパス−1H、C2B8、パノレックス、ブレバレックス(BrevaRex)、シムレクト、アントバ(Antova)、OKT3、ゼナパックス、レオプロ、シナジス、オスタビル(Ostavir)、プロトビル(Protovir)、オバレックス、ビタキシンの群の任意の抗体分子に由来するものである。
【0273】
本発明のより好ましい実施形態において、前記抗体分子組成物は、リツキシマブ、ハーセプチン、抗CCケモカイン受容体4抗体KM2160、カンパス−1H、C2B8、エルビタックス、抗神経芽腫抗体chCE7の群の任意の抗体分子に由来するものである。本発明のさらにより好ましい実施形態において、前記抗体分子組成物は、WO2004/065423の群の抗体分子に由来するものであり、より好ましくはPankoMab、より好ましくはそのキメラ、さらにより好ましくはそのヒト化形態である。
【0274】
また、本発明の産生方法によって得られ得る、MUC1エピトープに結合し、アミノ酸配列DTRを含む抗体であるタンパク質またはタンパク質組成物が提供される。
【0275】
MUC−1は、さまざまな上皮腫瘍において発現される確立された腫瘍マーカーであり、潜在腫瘍標的である。MUC−1は、大分子の高度にO−グリコシル化された膜貫通糖タンパク質である。その細胞外部分は、各々が潜在的なO−グリコシル化された5つの側鎖を有する20アミノ酸からなる可変数の20〜120個のタンデム反復配列(TR)からなる。MUC 1は、上皮組織上だけでなく、造血細胞上にも発現される。MUC 1のDTRモチーフに結合するいくつかの抗体が知られており、これらもまた、本発明との関連において適当なタンパク質/抗体である(概説については、Karstenら,1998を参照)。また、Karstenにより、MUC 1上のエピトープのコンホメーション(TA MUC)内に含まれるPDT
*RP(式中、T
*は、O グリコシル化されている)の構造の新規な糖鎖が報告された。この部位に存在するグリカンは、それ自体が腫瘍特異的糖鎖構造である。
【0276】
したがって、TA MUC腫瘍エピトープと非グリコシル化エピトープを識別することができるMUC抗体を使用することが望ましい。グリコシル化されたTA MUCエピトープを特異的に認識し得る適当な抗体の一例は、PankoMab抗体である、この作製は、Danielczykら2006(PankoMab:a potent new generation anti−tumour MUC1 antibody)(引用により全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。親PankoMab抗体と同じTA−MUC 1エピトープに競合的に結合する抗体PankoMabまたはそのバリアントが好ましく使用される。かかる抗体バリアントは、以下の特徴:
−少なくともアミノ酸配列PDTRPを含むエピトープに結合する;
−Gal−NacαでPDTRP配列がグリコシル化されている場合、1,5TRを含む30アミノ酸の短鎖MUCペプチドに結合するが、同ペプチドがグリコシル化されていない場合は、結合しない;
−25超、好ましくは28(最も好ましくは、29,5の比)の長さ付加効果を示す;
−造血系細胞に対して低結合性を示すか、または示さないことすらある(検出法に関しては、Danielczykら2006(引用により本明細書に組み込まれる)を参照されたい);
−Scatchardプロット解析で測定したときほぼ少なくともK
ass=0.2〜1×10
9M
−1の範囲の腫瘍細胞に対して高親和性を有する
の少なくとも1つを有する。
【0277】
それぞれのバリアントの好適な例は、本実施例に示している。該抗体は、マウス起源のもの、キメラまたはヒト化されたものであり得る。
【0278】
本明細書に記載のTA−MUC 1エピトープに結合する抗体、好ましくは、PankoMab抗体または抗体Panko1およびPanko2は、以下:
(i)該細胞において発現させたとき、前記抗体分子組成物の諸抗体分子の糖鎖構造全体またはその諸抗体分子のうちの抗体1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物の同じ量の抗体分子よりも少なくとも15%多い量のN−アセチルノイラミン酸による増大したシアリル化度を有する;
(ii)該細胞において発現させたとき、前記抗体分子組成物の諸抗体分子の糖鎖構造全体またはその諸抗体分子のうちの抗体1分子の特定の1つのグリコシル化部位の糖鎖構造において、CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]から単離された同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物の同じ量の抗体分子よりも少なくとも5%多い量のG2構造による高ガラクトシル化度を有する;
(iii)検出可能な量のbisecGlcNAcを含む;
(iv)ハイブリッド型または高次マンノース構造を含まないか、または2%未満で有する
の少なくとも1つの特徴的グリコシル化を有する。
【0279】
それぞれのグリコシル化パターンにより、以下:
(i)CHO細胞において発現させた同じ抗体の活性よりも15%超高いCDC活性;
(ii)検出可能なシアリル化のない抗体と比べて2倍(1.5倍超)長くなった血清半減期;
(iii)細胞株CHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させたときの同じ抗体分子の少なくとも1種類の抗体分子組成物のFc媒介性細胞性細胞傷害より少なくとも2倍大きいFc媒介性細胞性細胞傷害の増大を有する、
の驚くべき有益な活性パターンがもたらされる。
【0280】
それぞれの抗体は、高いシアリル化およびガラクトシル化度をもたらすが、好ましくは、フコシル化が少なくなる本発明による細胞株において産生させることにより得られ得る。好適な例は、NM−H9D8およびNM−H9D8-E6である。
【0281】
以下の表および図に、本発明が例証される。
【0282】
以下の表1および8ならびに
図1から17に、本発明が例証される。
【0283】
表1:FCSを補給した培地中で培養したCHOdhfr−およびNM−F9において発現させたキメラPankoMabの収率。
【0284】
表2:無血清培地中で培養したNM−H9D8[DSM ACC2806]において発現させたキメラPankoMabの収率。
【0285】
表3:PankoMabおよびCetuxiMabのシアル酸含有量の定量:抗体は、表示した細胞株によって産生させ、DMB標識シアル酸バリアントの逆相クロマトグラフィーによって得られたピーク面積を積分することにより定量した。NeuGcとNeuAcは、シアル酸標品を使用することにより区別した。
【0286】
表4:Panko1およびPankoMabの種々の負荷構造の定量:2−AB標識N−グリカンをアニオン交換クロマトグラフィー(Asahi−PAK−カラム)に供し、その種々の負荷構造に対応するピークを積分によって定量した。
【0287】
表5:抗体Panko1およびPankoMabのガラクトシル化度を、2−AB標識グリカンのaminophase HPLC(Luna−NH2−カラム)によって測定した。ピークを積分によって定量し、基礎となるグリカン構造を質量分析によって解析した。
【0288】
表6:Panko1およびPankoMabにおけるトリアンテナ型およびバイアンテナ型+バイセクト型構造の定量。おそらく分岐しているGlcNAcを含む画分をaminophase−HPLCから回収し、逆相クロマトグラフィー(RP18−カラム)に供した。これにより、トリアンテナ型およびバイアンテナ型+バイセクト型構造が識別され得る。該抗体のフコシル化度を、2−AB標識グリカンのaminophase HPLC(Luna−NH2−カラム)によって調べた。ピークを積分によって定量し、基礎となるグリカン構造を質量分析によって解析した。フコシル化構造および非フコシル化構造を調べ、積分ピーク面積を定量した。
【0289】
表7:FCSを補給した培地(CHOdhfr−)または無血清培地中で培養したCHOdhfr−およびGT−2xにおいて発現させたhFSHの収率。
【0290】
表8:無血清培地中で培養したNM−H9D8[DSM ACC2806]において発現させたhFSHの収率。
【0291】
表9:本発明による方法で得られ得る好適なグリコシル化および活性の組合せ。
【0292】
表10:種々の細胞株におけるbisecGlcNAcとフコースの得られた値。
【実施例】
【0293】
(実施例1)
細胞内でのfut8発現の解析
RNAを、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−H9、K562、NM−H9D8[DSM ACC2806]、GT−2x[DSM ACC
]およびHepG2(対照)細胞から、標準的な手順(RNeasy−Mini−Kit、Qiagen)に従って抽出した。mRNAを、磁気ビーズ手法を使用し、製造業者の使用説明書(HDynabeads(登録商標)Oligo(dT)25H、Invitrogen)に従って単離した。第1鎖P
PcDNA合成には、各試料の50μlのビーズ懸濁液とOmniscript Reverse Transcriptase(Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って使用した。その後のP
PRT-PCR反応には、5μlのcDNA生成物P
Pと特異的fut8プライマーを使用し、212bp断片を得た。対照として、アクチン特異的プライマーを使用すると、240bp断片が得られた。得られたPCR産物(1つまたは複数)P
Pを1.5%ゲル上で解析した。
【0294】
NM−F9、NM−D4、NM−H9、K562、NM−H9D8およびGT−2xは、fut8のmRNAを発現する。
【0295】
図1は、一例として、NM−F9、NM−D4およびNM−H9D8のfut8 mRNA発現を示す。
【0296】
(実施例2)
K562細胞の糖鎖操作
K562細胞の糖鎖操作ならびにNM−D4およびNM−F9細胞株の作製は、EP1654353に記載されている。
【0297】
高いシアリル化潜在能を有するNM−H9細胞、およびその誘導細胞または誘導細胞株は、以下のようにして作製した。K562細胞をアルキル化剤メタンスルホン酸エチルで処理することにより、ランダム変異誘発を行なった。試料ごとにK562細胞をPBS中で洗浄し、EMS(0.1mg/ml、メタンスルホン酸エチル、Sigma−Aldrich)を補給した細胞増殖培地1mlあたり10P
6P細胞で一晩、37℃および5%COB
2Bにて播種した。細胞を洗浄し、新鮮培地を供給した。2日ごとに、トリパンブルー染色によって細胞生存能力を調べ、免疫細胞化学的染色によって細胞を解析した。
【0298】
続いて、TF高発現の新規な表現型を示す細胞を、TF特異的抗体によって選択した。K562細胞をB−PBS(PBS中0.5%BSA)中で洗浄し、モノクローナル抗体A78−G/A7またはPankoMabのハイブリドーマ培養物の50μlの上清みおよび950μlのB−PBSとともに、4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、この手順を、MicroBeads(Miltenyi Biotec,ケルン,ドイツ)とコンジュゲートさせた50μlのラット−抗マウス−IgM−抗体またはラット−抗マウス−IgG−抗体で繰り返した。洗浄後、磁気標識TF陽性K562細胞を、Miltenyi Biotec製(ケルン,ドイツ)の2つの連続カラムによって、製造業者のマニュアルに記載のようにして分離した。9日間の培養後、単離手順を合計3回繰り返した。FACS解析(フローサイトメトリー)を抗体染色から開始した。約3×10
5細胞を、4℃で1.5時間、モノクローナル一次抗体(A78−G/A7(IgM)、PankoMab(IgG1)(すべて細胞増殖培地中1:2希釈)のハイブリドーマ培養上清み)とともに、続いて、Cy3コンジュゲートヤギ抗マウスIgMまたはIgG二次抗体(PBS中1:200希釈)とともに4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄した。再懸濁細胞(200μlのPBS)を、フローサイトメトリー(フローサイトメーター:Coulter Epics,Beckman Coulter,Krefeld,Ger)によって調べた。以下の抗体標識細胞のパラメータ:前方散乱(FS):26V、ゲイン1、側方散乱(SS):807V、ゲイン5、FL2:740V、ゲイン1、および以下のレクチン標識細胞のパラメータ:FS:26V、ゲイン1、SS:807V、ゲイン5、FL1:740V、ゲイン1)とともにExpo32ソフトウェア(Becton Coulter)を使用し、定量的解析を行なった。
【0299】
3回の単離後、93%がTF陽性細胞のK562細胞集団が得られた。しかしながら、TF陽性K562細胞の割合は、経時的に減少し、単離手順後の14日間で、底値の約20%TF陽性細胞に達した。TF陽性表現型の安定な発現では、K562細胞が4分の1の期間(a forth time)で単離され、最後に、単離したTF陽性K562細胞をクローニングした後、96ウェルプレートにおいて限界希釈した(1細胞/100μl)。得られた30個のK562細胞クローンのうち、17個の細胞クローンは、TF抗原を低量で発現したか、またはTF抗原を発現しなかった。これらの細胞クローンを、SNA結合についてフローサイトメトリーにおいて、および増殖速度(倍加時間の解析、下記参照)について解析した。高SNA結合および高増殖速度を示す細胞クローンを選択した。単一細胞クローニングによるさらなるクローンの生成のため、および無血清条件下での培養を最適化するために、安定なNM−H9クローンを選択した。最も好ましい細胞クローンとして、NM−H9D8[DSM ACC2806]を選択し、2006年9月15日に、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10,13125 ベルリン(ドイツ)が、ブラウンシュヴァイク(ドイツ)の「DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH」にDSM ACC 2806で寄託した。
【0300】
(実施例3)
K562、NM−F9、NM−D4、NM−H9、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、およびGT−2x細胞株とCHOdhfr−細胞の培養ならびに無血清細胞株の作製
K562、NM−F9、NM−D4、NM−H9、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8[DSM ACC2806]、NM−H9D8−E6[DSM ACC2807]、NM−H9D8−E6Q12[DSM ACC2856]、またはGT−2x[DSM ACC
]を、10%FCSおよび2mMのグルタミンを補給したRPMI 1640中または無血清のX−Vivo 20培地で培養し、8%の加湿雰囲気中、37℃で増殖させた。
【0301】
CHOdhfr−細胞(ATCC No.CRL−9096)を、10%FCS、2mMのグルタミンおよび2%HT補給物を補給したDMEM中、または無血清のCHO−S−SFM II培地で培養し、8%の加湿雰囲気中、37℃で増殖させた。
【0302】
K562、NM−F9、NM−D4、NM−H9、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8[DSM ACC2806]、NM−H9D8−E6[DSM ACC2807]、NM−H9D8−E6Q12[DSM ACC2856]、またはGT−2x[DSM ACC
]および前記宿主細胞由来の細胞または細胞株は、細胞増殖培地を完全に交換することによって、無血清条件に容易に適応される。本発明による細胞および細胞株は、無血清培地としてのX−Vivo 20中に、1×10
5〜5×10
5細胞/ml、好ましくは2×10
5細胞/mlの密度で播種され、通常の動物細胞培養法によって培養される。4〜7日間の培養後、密度が5×10
5〜10×10
5細胞/mlに達した細胞を、無血清培地に適応された細胞として選択する。また、無血清培地への適応は、無血清培地組成物によるFCS補給培地の連続希釈によって行なわれ得る(連続適応)。抗体組成物を産生する本発明の宿主細胞の変換FCS産生クローンの無血清条件に対する産生能は、たいてい保存される。
【0303】
無血清条件へのCHOdhfr−(ATCC No.CRL−9096)の適応は、段階的に行なわなければならず、数週間かかり、このとき、少なくとも半数の産生能が低下することが通常である。
【0304】
(実施例4)
真核生物細胞においてキメラ抗体PankoMab、Panko1、Panko2、またはセツキシマブを発現させるためのベクターのクローニング
PankoMabの可変配列を、PankoMab[HCancer Immunol Immunother.H 2006 Nov;55(11):1337−47.Epub 2006 Feb.PankoMab:a potent new generation anti−tumor MUC1 antibody.Danielczykら]を産生するマウスハイブリドーマ細胞由来の特異的プライマーを用いてPCR増幅した。
【0305】
Panko1およびPanko2の可変配列VHおよびVLは、は、WO2004/065423(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0306】
Panko1の可変重鎖:
EVKLVESGGGLVQPGGSMKLSCAASGFTFSDAWMDWVRQSPEKGLEWVAEIRSKANNHATYYAESVKGRFTISRDVSKSSVYLQMNNLRAEDTGIYYCTRGGYGFDYWGQGTTLTVS
Panko1の可変軽鎖:
DIVLTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSIVHSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHVPLTFGDGTKLELKR
Panko2の可変重鎖:
EVKLVESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFTFSNYWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRLKSNNYTTHYAESVKGRFTISRDDSKSSVSLQMNNLRVEDTGIYYCTRHYYFDYWGQGTTLTVS
Panko2の可変軽鎖:
DIVMTQAAFSNPVTLGTSASISCRSSKSLLHSNGITYFFWYLQKPGLSPQLLIYQMSNLASGVPDRFSSSGSGTDFTLRISRVEAEDVGVYYCAQNLELPPTFGGGTKLEIKR
セツキシマブのVHおよびVLの可変アミノ酸配列を、http://redpoll.pharmacy.ualberta.ca/drugbank/cgi−bin/getCard.cgi?CARD=BTD00071.txtから入手し、VectorNTIを使用することにより、cDNAコード配列に逆翻訳した。
【0307】
セツキシマブの可変重鎖:
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYN
TPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVS
セツキシマブの可変軽鎖:
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPS
RFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELKR
該cDNA配列を、VLの場合はNcoI/NheIによって、VHの場合はNcoI/SalIによって伸張してcDNAを作製した。NcoI/XhoI切断可変重鎖断片VHを、WO2004/065423に記載のNcoI/SalI切断BS−リーダーベクター内にクローニングした。BS−リーダーベクターは、T細胞受容体シグナルペプチド配列を該可変ドメインの5’末端に、およびスプライスドナー配列を3’末端に導入するためのクローニングカセットを含む。対応する抗体の可変軽鎖VLは、3’末端にさらにスプライスドナー部位をコードする特異的プライマーを用いて増幅し、NcoI/NheIにより、同様の消化BS−リーダーベクター内にクローニングした。その後、BS−リーダーベクターの各HindIII/BamHI断片を、対応する真核生物の発現ベクター内にクローニングした。このようなベクター(pEFpuroCγ1VB
HB、pEFdhfrCκVB
LB、pEFdhfrB
mutBCκVB
LB)は、EF−1αプロモーターとHCMVエンハンサー、SV40起点、ポリアデニル化シグナル、プロマイシン耐性遺伝子を重鎖用のベクター内に、CHO細胞発現のためのマウスジヒドロホラーゼ(dihydrofolase)遺伝子(dhfr)、またはK562、NM−F9[DSM ACC2606]、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−H9、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8[DSM ACC2806]、NM−H9D8−E6[DSM ACC2807]、NM−H9D8−E6Q12[DSM ACC2856]、もしくはGT−2x[DSM ACC
]発現のための配列番号1(配列1#)を、選択と遺伝子増幅のために軽鎖用ベクター内に、ならびに重鎖用ではヒト定常γ1領域のゲノム配列、または軽鎖用ではヒト定常κ領域を含む(ヒトゲノムDNAからの増幅のためのプライマーおよびベクターマップはWO2004/065423を参照のこと)。
【0308】
(実施例5)
キメラ抗体PankoMab、Panko1、Panko2、またはセツキシマブを発現させるための真核生物細胞のトランスフェクション、ならびに血清の存在下で高産生の細胞クローンを作製するための遺伝子増幅手順
該キメラ抗体をNM−F9[DSM ACC2606]またはCHOdhfr−[ATCC No.CRL−9096]において発現させるため、細胞を、重鎖および軽鎖用の上記のベクター(1:1〜1:3)の混合物で、DMRIE−Cを用いたリポフェクションによって、またはNM−F9とリポフェクタミンの懸濁細胞ではエレクトロポレーション、または付着細胞株CHOdhfr−ではエレクトロポレーションによってコトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、増殖培地を選択培地(NM−F9は、RPMI 1640+10%FCS+2mM L−グルタミン+0.75μg/mlプロマイシン+50nMメトトレキサート中;CHOdhfr−は、DMEM+10%透析FCS+2mM L−グルタミン+5μg/mlプロマイシン+50mMメトトレキサート)に1週間交換した。最初の増幅は、メトトレキサート濃度を100nMに上げることにより、さらに2週間行なった。増幅細胞集団の一部を、プロマイシンおよびメトトレキサート無添加の培地中で単一細胞クローニングし、残りの細胞は、メトトレキサート濃度を上げることにより新たな回の遺伝子増幅に供した。このようにして、4〜6回の遺伝子増幅(100、200、500、1000、2000、3000nMメトトレキサート)を行なった。さらに、クローンスクリーニングおよび解析によって特定された最良の産生クローンを、同様にしてさらに増幅した。
【0309】
限界希釈(0.5細胞/ウェル)を用いた96ウェルプレート内での単一細胞クローニング後、プレートを2〜3週間培養し、増殖中の細胞クローンを顕微鏡により解析し、クローニング効率を%で(増殖中の細胞クローンの入ったウェルの数×100/播種細胞の理論数)を調べた。付着性のCHOdhfr−細胞またはNM−F9懸濁細胞で異なる手順を使用し、増殖中のクローンを産生能に関してスクリーニングした。
【0310】
CHOdhfr−:増殖中のクローンの細胞をPBSで洗浄し、Accutase処理によって回収した。再懸濁した細胞の半数を96ウェル試験プレート内に播種し、他の半数は、24ウェルプレート内に播種してさらに培養した。試験プレーを20〜24時間培養した。各ウェルの上清みを抗体力価について、比産生速度(specific productivity rate)(SPR)および倍加時間(g)の測定の項目(下記参照)に記載のようにして解析した。相対細胞密度を、MTTアッセイを用いて測定した。詳細には、細胞をMTT溶液とともに2時間インキュベートし、溶液を廃棄し、細胞を2−プロパノール中0.04M HCl溶液で溶解させた。2時間後、プレートを静かに混ぜ、デュアルモードの570nmフィルターと630nm参照フィルターを備えたマイクロタイタープレート光度計を用いて測定を行なった。
【0311】
NM−F9:96ウェルプレートを遠心分離し、上清みを廃棄した。細胞を200μlの新鮮培地中に再懸濁した。再懸濁した細胞の半数を96ウェル試験プレート内に播種し、100μlの培地で希釈し、他の半数はクローニングプレート内でそのままさらに培養した。2日間の培養後、試験プレートを遠心分離し、20μlの上清みを抗体力価について、比産生速度(SPR)および倍加時間(g)の測定の項目(下記参照)に記載のようにして解析した。相対細胞密度を、WST−1アッセイを使用し、各ウェル内への10μlのWST−1溶液(Roche)の添加によって測定した。1〜3時間のインキュベーション後、デュアルモードの450nmフィルターと630nmの参照フィルターを備えたマイクロタイタープレート光度計を用いて測定を行なった。
【0312】
細胞密度に対する抗体力価の比率が高い細胞クローンを選択し、さらに培養および解析した。
【0313】
K562、NM−D4およびNM−H9に対する条件は同じにした。
比産生速度(SPR)および倍加時間(g)の測定
各クローンについて、2×10P
4P細胞/ウェルを24ウェル組織培養プレートの500μlの増殖培地中に播種した。細胞を3日間培養し、ならし培地を回収して解析し、必要に応じてAccutaseによって細胞を取り出し、計数した。特異的抗体価を培地試料からELISAによって定量的に測定した。アッセイプレートをヒトκ鎖特異的抗体(BD)でコートした。結合された組換え抗体を、抗ヒトIgG(H+L)ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(Jackson Immunoresearch Laboratories)により検出した。定量では、精製組換えキメラ抗体を標品として使用した。
【0314】
特定タンパク質のピコグラム/細胞/日(pcd)で測定されるSPRは、増殖速度と産生能の両方の関数であり、以下の等式:
【0315】
【数1】
【0316】
【数2】
によって計算した。
【0317】
倍加時間は、以下の等式:
g=log2×(培養時間)/log(最終細胞数/最初の細胞数)
によって計算した。
細胞株の平均収率および最大収率の測定
上記の限界希釈(0.5細胞/ウェル)を用いた96ウェルプレート内での単一細胞クローニング後、理論的に200個の平板培養単一クローンから、増殖中の細胞クローンのSPRを測定し、種々の細胞株および種々の条件での平均および偏差ならびに最大収率を求めた。表1では、血清含有条件下で生成されたCHOdhfr−とNM−F9のキメラPankoMab産生細胞クローンのデータを比較している。
【0318】
(実施例6)
抗体分子組成物を産生する無血清高収率細胞クローンの作製
無血清培地X−Vivo 20に適応させたNM−H9D8、NM−H9D8−E6、NM−H9D8−E6Q12、またはGT−2xのトランスフェクションを、無血清条件下、DMRIE−Cまたはエレクトロポレーション(Nucleofector,Amaxa)を用いて行なった。トランスフェクションの2日後、増殖培地を選択培地(X−Vivo 20+0.75μg/mlプロマイシン+50nMメトトレキサート)に1週間交換した。最初の増幅は、メトトレキサート濃度を100nMに上げることにより、さらに2週間行なった。増幅細胞集団の一部を、プロマイシンおよびメトトレキサート無添加のX−Vivo中で単一細胞クローニングし、残りの細胞は、メトトレキサート濃度を上げることにより新たな回の遺伝子増幅に供した。このようにして、4〜6回の遺伝子増幅(100、200、500、1000、2000、3000nMメトトレキサート)を行なった。さらに、クローンスクリーニングおよび解析によって特定された最良の産生クローンを、同様にしてさらに増幅した。限界希釈(0.5細胞/ウェル)を用いた96ウェルプレート内での単一細胞クローニング後、プレートを2〜3週間培養し、増殖中の細胞クローンを顕微鏡により解析し、クローニング効率を%で(増殖中の細胞クローンの入ったウェルの数×100/播種細胞の理論数)調べた。血清の存在下でのNM−F9懸濁細胞と同じ手順(上記参照)を使用し、増殖中のクローンを産生能に関してスクリーニングした。
細胞クローンの平均収率および最大収率の測定
上記の限界希釈(0.5細胞/ウェル)を用いた96ウェルプレート内での単一細胞クローニング後、理論的に200個の平板培養単一クローンから、増殖中の細胞クローンのSPRを測定し、異なる条件での平均および偏差ならびに最大収率を求めた。表2は、完全に無血清条件下で生成されたNM−H9D8[DSM ACC2806]のキメラPankoMab産生細胞クローンのデータを示す。
【0319】
本発明による細胞株における増幅後の比産生速度(SPR)は、CHOdhfr−のものよりも高く、無血清条件下で生成されたキメラPankoMab産生NM−H9D8[DSM ACC2806]細胞でのものが最大である。
【0320】
大部分のクローンの産生速度は、少なくとも6週間にわたって淘汰圧なく非常に安定である。最良のクローンは、SPRが30pcdで6週間にわたって安定であり、倍化速度は24時間であった。
【0321】
データは、実験室内小規模でのクローンの産生能を反映し、プロセスの開発、培地最適化および発酵によって、産生能が増大するさらなる可能性がある。
【0322】
無血清条件下で生成された産生クローンの高い産生能と収率は好都合なものであり、条件は、他のすべての抗体、および無血清条件に適応させたK562、NM−F9、NM−D4、NM−H9、NM−E−2F9、NM−C−2F5、NM−H9D8−E6[DSM ACC2807]、NM−H9D8−E6Q12[DSM ACC2856]、またはGT−2x[DSM ACC
]のすべての細胞株で同じである。
【0323】
(実施例7)
抗体分子組成物の単離
本発明による抗体分子組成物の産生および単離のため、キメラ抗体PankoMab、Panko1、Panko2、またはセツキシマブを分泌する安定にトランスフェクトされた細胞を、細胞密度が約1〜2×10P
6P細胞/mlに達するまで無血清培地中で培養した。遠心分離(400×g、15分間)によって細胞培養上清みから細胞を除去した後、キメラ抗体を、プロテインAカラム(HiTrap r−protein AFF、Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製した。急速pH変化によって溶出された精製抗体画分をPBS中で再緩衝化し、Centriprep遠心チューブ(50kDa排除、Millipore)を用いて濃縮した。
【0324】
(実施例8)
本発明による抗体分子組成物のFc媒介性細胞性細胞傷害の測定
エフェクター細胞としての献血者からのPBMCの単離
PBMCを健常ドナーの血液から、Ficoll−Hypaque(Biochrom)を用いた密度遠心分離によって単離した。細胞を、5%FCS補給RPMI 1640で3回洗浄し、5×10
7細胞の個々のバッチで低温保存した。PBMCを解凍し、フローサイトメトリーにおいて、または細胞傷害アッセイのエフェクター細胞として直接使用するか、または使用前に10%FCSを補給したRPMI 1640(RPMI/FCS)中に一晩維持した。
インビトロモデルでの抗体依存性細胞性細胞傷害の検出
本発明による組換え抗体の抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を、ユーロピウム放出アッセイにおいて調べた。標的細胞(ZR−75−1、5×10
6)を6分間氷上にて、800μlのユーロピウムバッファー(50mMのHEPES、pH7.4、93mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl
2、10mMジエチレントリアミン五酢酸、2mM酢酸ユーロピウム(III))中でインキュベートし、Multiporator(eppendorf)においてエレクトロポレーションし(710V、1パルス、30μs)、続いて、氷上でさらに6分間インキュベートした。その後、細胞をRPMI 1640/5%FCS中で5回洗浄し、96ウェル丸底プレート内に播種した(Nunc;100μl中1×10
4細胞/ウェル)。種々の濃度(200μlのインキュベーション容量中0.5〜25μg/ml終濃度)の20μlの組換え抗体または対応する対照(培地、アイソタイプ対照ヒトIgG)の添加後、ヒト末梢血細胞(80μl/ウェル)を、エフェクター細胞としてエフェクター/標的細胞比50:1を用いて添加した。エフェクター細胞を含まない80μlのRPMI/FCSを添加し、自発放出を測定した。標的細胞をエタノールで完全に溶解させた後、最大放出を測定した。インキュベータ内で37℃にて4時間インキュベーション後、プレートを500×gで5分間遠心分離し、25μlの各試料を200μlの増強溶液(Perkin−Elmer Wallac)/ウェルにピペッティングした。室温で15分間のインキュベーション後、蛍光を測定した(VictorP
2P Fluorometer、Perkin−Elmer Wallac)。特異的細胞傷害は、等式(実験溶解-自発溶解)/(最大溶解-自発溶解)*100から得られる。
【0325】
あるいはまた、標的細胞(LS174TまたはZR−75−1、3×10
6細胞)を6分間氷上で、100μlのユーロピウムバッファー(50mMのHEPES、pH7.4、93mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl
2、10mMジエチレントリアミン五酢酸、2mM酢酸ユーロピウム(III))中でインキュベートし、プログラム A−011を用いたNucleofector II(Amaxa)においてエレクトロポレーションし、続いて、氷上でさらに6分間インキュベートした。その後、細胞をRPMI 1640/5%FCS中で4回洗浄し、96ウェル丸底プレート内に播種した(Nunc;100μl中5〜10×10
3細胞/ウェル)。種々の濃度(セツキシマブでは、200μlのインキュベーション容量中0.001〜100ng/ml終濃度;キメラPankoMab、Panko1、またはPanko2では、0.16〜5μg/ml)の20μlの組換え抗体または対応する対照(培地、アイソタイプ対照ヒトIgG)の添加後、ヒト末梢血細胞(80μl/ウェル)を、エフェクター細胞としてエフェクター/標的細胞比100:1〜50:1を用いて添加した。エフェクター細胞を含まない80μlのRPMI/FCSを添加し、自発放出を測定した。標的細胞を%Triton X−100で完全に溶解させた後、最大放出を測定した。インキュベータ内で37℃にて4時間または一晩インキュベーション後、プレートを500×gで5分間遠心分離し、25μlの各試料を200μlの増強溶液(Perkin−Elmer Wallac)/ウェルにピペッティングした。室温で10分間のインキュベーション後、蛍光を測定した(Victor
2 Fluorometer、Perkin−Elmer Wallac)。特異的細胞傷害は、等式(実験溶解-自発溶解)/(最大溶解-自発溶解)*100から得られる。
【0326】
fut8
−細胞株NM−H9D8−E6から単離したセツキシマブのADCC活性は、CHOdhfr−細胞またはSP2/0細胞から単離したセツキシマブのADCC活性よりも有意に高い。
図2に示されるように、NM−H9D8−E6から単離したセツキシマブは、CHOdhfr−またはSP2/0細胞から単離したセツキシマブ(エルビタックス、Merck製)より約30倍低い抗体濃度で、LS174T細胞に対して同じ特異的溶解を誘導する。これは、この市販品と比べて30倍高いADCC活性を示す。この結果は、本発明の産生方法を使用することにより得られ、最適化されたグリコシル化パターンがもたらされる。
【0327】
また、NM−F9[DSM ACC2606]、K562、NM−H9、NM−D4[DSM ACC2605]、NM−H9D8−E6[DSM ACC2807]、NM−H9D8−E6Q12[DSM ACC2856]、GT−X2[DSM ACC
]、またはNM−H9D8[DSM ACC2806]から単離したキメラPankoMabのADCC活性は、CHOdhfr−細胞から単離したキメラPankoMabのADCC活性よりも約5倍高い。キメラPankoMabは約5分の1の濃度で、CHOdhfr−細胞において発現させたキメラPankoMabと同じADCC活性をもたらす。
図3は、比較の目的でNM−F9細胞株を用いたそれぞれの結果を示す。
【0328】
NM−H9D8−E6またはNM−H9D8−E6Q12から単離したキメラPanko1のADCC活性は、CHOdhfr−細胞から単離したキメラPanko1のADCC活性よりも約8倍高い。キメラPanko1は約8分の1の濃度で、CHOdhfr−細胞において発現させたキメラPanko1と同じADCC活性をもたらす。それぞれの結果を
図4に示す。
【0329】
NM−H9D8またはGT−2xから単離したキメラPanko2のADCC活性は、CHOdhfr−細胞から単離したキメラPanko2のADCC活性よりも約6倍高い。キメラPanko2は約6分の1の濃度で、CHOdhfr−細胞において発現させたキメラPanko2と同じADCC活性をもたらす。それぞれの結果を
図5に示す。
【0330】
NM−H9D8−E6から単離したキメラPanko2のADCC活性は、NM−H9D8細胞から単離したキメラPanko2のADCC活性よりも低い。それぞれの結果を
図6に示す。
インビトロモデルでの補体依存性細胞性細胞傷害の検出
抗体の補体依存性細胞性細胞傷害(CDC)を、ユーロピウム放出アッセイにおいて調べた。Eu
3+負荷標的細胞(ZR−75−1、3×10
6)は、上記のようにして作製した。
【0331】
その後、細胞を96ウェル丸底プレート内に播種した(Nunc;100μl/ウェル中5×10
3細胞)。種々の濃度(200μlのインキュベーション容量中0.5〜50μg/ml終濃度)の20μlの抗体または対応する対照(培地、アイソタイプ対照ヒトIgG)の添加後、細胞を室温で半時間インキュベートした。その後、10μl/ウェルの乳児ウサギ補体(Cedarline、1:5〜1:10希釈)を添加した。補体を含まない10μlのRPMI/FCSを添加し、自発放出を測定した。標的細胞をエタノールまたは1%TritonX−100で完全に溶解させた後、最大放出を測定した。インキュベータ内で37℃にて3〜3.5時間インキュベーション後、プレートを500×gで5分間遠心分離し、25μlの各試料を200μlの増強溶液(Perkin−Elmer Wallac)/ウェルにピペッティングした。室温で10分間のインキュベーション後、蛍光を測定した(VictorP
2P Fluorometer、Perkin−Elmer Wallac)。特異的細胞傷害は、等式(実験溶解−自発溶解)/(最大溶解−自発溶解)*100から得られる。
【0332】
NM−F9細胞から単離したキメラPankoMabのCDC活性は、CHOdhfr−細胞から単離されたキメラPankoMabのCDC活性よりも8倍高い。CHOdhfr−細胞から単離したキメラPankoMabと比べ、NM−F9から単離したキメラPankoMabでは、同じ特異的溶解が、8倍低い濃度で誘導される。それぞれの結果を
図7に示す。
抗体分子組成物の食作用活性を解析するためのコンジュゲート形成アッセイ(CFA)
PKH26での腫瘍細胞の染色:
1×10P
7P〜2×10P
7Pの腫瘍細胞をPBS中で2回洗浄し、1mlの希釈剤C中に再懸濁し、1mlのPKH26を濃度12×10P
−6PMで、ZR−74−1、ZR−74−1TF、MCF−7およびMT−3に対して添加した。
【0333】
室温で3分間インキュベーション後、2mlのFCSを室温で1分間添加することにより染色を終了した。培地(4ml、1%L−グルタミン、10%FCSを補給したRPMI)を添加し、細胞を遠沈させ、培地で4回洗浄した。過剰のPKH−26放出が可能となるように、腫瘍細胞を37℃および5%COB
2Bで一晩インキュベートした。
【0334】
PKH−26染色の最適化を、半分の細胞数および容量で行なった。
CFA:
PKH−26標識腫瘍細胞をトリプシン/EDTAにより回収し、PBSで1回洗浄し、組換え抗体分子組成物の存在下または非存在下のMAK細胞培地(Invitrogen)中に、0.8×10P
6P細胞/mlで再懸濁させた。腫瘍細胞(250μl、0.2×10P
6P細胞)を、非付着性ポリプロピレンチューブ内に播種した。
【0335】
MAK細胞を、Boyerら、Exp.Hematol.27、751−761(1999)に従って作製し、洗浄し、1.6×10P
6P細胞/mlで再懸濁した。250μlのMAK細胞(0.2×10P
6P細胞)をPKH−26標識腫瘍細胞(E:T比2:1)に添加した。個々の試料を2連で、4℃および37℃/5%COB
2Bにて3時間または一晩(18〜20時間)インキュベートした。
【0336】
3時間または一晩インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、PBS/10%FCS中CD11c−FITC(1:18.5)+7−AAD(1:500)で染色した。細胞をPBSで洗浄し、400μlのPBS中に再懸濁させた。取得は、Epics XL(Beckman Coulter)において10,000細胞に対して行なった。共局在MAK細胞の割合を、全バイアブルCD11c−FITC陽性細胞に対する同期(gate)した細胞集団内のPKH−26陽性細胞の割合として求めた。
【0337】
(実施例9)
ELISAでの抗体分子組成物結合活性の解析
種々の細胞株で発現させた抗体分子組成物の抗原結合を解析するため、キメラPankoMabとPanko2の精製抗体分子組成物を、ELISAで、配列APPAHGVTSAPDT[GalNAcα]RPAPGSTAPPAHGVTSAを有する合成30量体グリコシル化MUC1ペプチドにおいて測定した。非グリコシル化MUC1ペプチドを対照として使用した。
【0338】
分割して−20℃で保存しておいたストック溶液(1mlの蒸留(bidest)HB
2BO中1mg)を使用し、PBS中1μg/mlの希釈液を作製した。50μl/ウェルをNUNC Immuno plate F96 最大iSorp内にピペッティングし、この試験プレートを4℃で一晩インキュベートした。翌日、試験プレートをPBS/0.2%Tween−20で3回洗浄した。続いて、非特異的結合部位をPBS中2%BSAでブロックし、室温で少なくとも1時間インキュベートし、50μlの組換えPankoMabを適用した(1〜400ng/ml PBS/1%BSA)。PBS/0.2%Tween−20で3回の洗浄工程後、ペルオキシダーゼ結合抗ヒトFcγ1二次抗体を用いて特異的結合抗体を検出した。結合二次抗体を検出するため、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)による発色反応を行なった。15分後、2.5N HB
2BSOB
4Bを添加することにより、反応をクエンチした。デュアルモードの450nmフィルターと630nmの参照フィルターを備えたマイクロタイタープレート光度計を使用し、測定を行なった。
【0339】
NM−F9から単離したキメラPankoMabの結合活性は、CHOdhfr−細胞から単離したキメラPankoMabの結合活性よりも約50%高い(
図8)。
【0340】
高シアリル化クローンNM−H9D8で発現させ、該クローンから単離したキメラPanko2の結合活性は、ELISAにおいて、GT−2xのものと同等であり、CHOdhfr−細胞でのものと比べると高い(
図9)。
【0341】
(実施例10)
NM−F9、NM−およびCHOdhfr−細胞において発現させた抗体分子組成物のグリカン解析
少なくとも100μgの精製抗体のグリカンを酸加水分解によって切断した。シアル酸を、蛍光色素DMBとのコンジュゲーションによって特異的に標識した。解析は、HPLCによって例えばAsahipak−NH2カラムにおいて、個々の糖鎖に対して行なった。シアル酸の同定および計算は、適切なシアル酸標準物質によって行なった。
【0342】
CHOdhfr−またはNM−F9細胞において発現させたキメラPankoMab抗体分子組成物の解析により、CHOdhfr−産生物ではモノシアリル化が<10%、およびNM−F9またはGT−2x産生物ではシアリル化がほぼないことが示された。後者は、非荷電グリカンのみを含んでいた。
【0343】
より詳細には、少なくとも100μgの精製抗体のグリカンを酸加水分解によって切断した。シアル酸を、DMBなどの蛍光色素とのコンジュゲーションによって特異的に標識した。解析は、HPLCによって、例えばRP−18カラムでの逆相クロマトグラフィーによって行なった。シアル酸の同定および計算は、適切なシアル酸標準物質によって行なった。
【0344】
荷電グリカン構造およびガラクトシル化状態の測定のため、100μg抗体をトリプシンで消化し、PNGaseF処理によってN−グリカン(Glykan)を得た。精製グリカンを2−アミノベンズアミド(2−AB)で標識し、アニオン交換クロマトグラフィーHPLC(Asahi−PAK−カラム)に供し、荷電N−グリカン構造を調べた。ガラクトシル化状態の測定のため、N−グリカンを、シアル酸含有量を枯渇させるノイラミニダーゼで処理した。Aminophase HPLC(Luna−NH2−カラム)によって分離し、ピークを質量分析によって解析した。
【0345】
おそらく分岐しているGlcNAcを有するグリカンを含むピークを、第2の工程で逆相クロマトグラフィー(RP18−カラム)によって分離した。これにより、トリアンテナ型およびバイアンテナ型+バイセクト型構造が識別され得る。該抗体のフコシル化度を、2−AB標識グリカンのaminophase HPLC(Luna−NH2−カラム)によって調べた。ピークを積分によって定量し、基礎となるグリカン構造を質量分析によって解析した。フコシル化構造および非フコシル化構造を調べ、積分ピーク面積を定量した。
【0346】
NM−F9、GT−2x、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、またはCHOdhfr−細胞において発現させたセツキシマブ、PankoMabおよびPanko1の種々の抗体分子組成物を解析し、結果を表3〜4にまとめる。
【0347】
α2−6(SNA)またはα2−3(MAL−I)結合シアル酸に優先的に結合するレクチンを使用し、ELISAまたはウエスタンブロット解析によって抗体シアリル化を特性化した。
【0348】
ウエスタンブロット解析を行なうと、CHOdhfr−、NM−F9、またはNM−H9D8[DSM ACC2806]において発現させた抗体分子組成物の種々にシアリル化された重鎖が確認された。5μgの各抗体分子組成物を、還元条件下での10%アクリルアミドゲルにおけるSDS−Pageによって分離した。タンパク質をニトロセルロースに移し、レクチンおよび/または抗ヒトIgG二次抗体によって可視化した。
図10は、抗ヒトIgG二次抗体(
図10A)または2−6シアリル化を検出するSNA(
図10B)のいずれかでの、CHOdhfr−、NM−F9、またはNM−H9D8[DSM ACC2806]において発現させたキメラPankoMabの抗体分子組成物の種々にシアリル化された重鎖を示す。
図11は、SNA結合によって可視化した、CHOdhfr−またはNM−H9D8において発現させたセツキシマブ抗体分子組成物の種々にシアリル化された重鎖を示す。
【0349】
ELISA実験は、NM−F9、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6細胞の上清みから単離した抗体のシアリル化を解析するために使用した。PBS中2μg/mlの精製抗体を50μl/ウェルで、96ウェルマイクロタイタープレート(最大isorp)に4℃で一晩コートし、ブロックし(PBS/BSA)、洗浄し、ビオチン化SNA(2μg/ml、PBS/1%BSA)とともに1時間インキュベートし、再度洗浄した。次いで、ウェルをPOD−ストレプトアビジンとともにインキュベートし、洗浄し、TMBで発色させた。2.5N H
2SO
4の添加によって反応を停止させ、参照として630nmに対して450nmで光学濃度を測定した。
図12は、SNAの結合は、NM−H9D8またはNM−H9D8−E6細胞において発現させた抗体に対して生じるが、CHOdhfr−またはGT−2x細胞において発現させた抗体には生じないことを示す。結合強度は個々の抗体で異なり、これは、個々の抗体の微細構造または使用した条件下での糖鎖のアベイラビリティによってもたらされたシアリル化度が種々であることを示す。
【0350】
ELISA実験は、種々の細胞株で発現させた精製抗体を、マイクロタイタープレートのウェルにコートし(2μg/ml、50μl/ウェル)、適切なビオチン化レクチンSNAおよびMAL Iによって検出することにより行なった。シアリル化によるレクチン結合の依存性は、ノイラミニダーゼ処理(0.1U/mlおよび室温で1時間のインキュベーション)によって確認した。セツキシマブの結果を
図13Aおよび13Bに示す。
【0351】
ドットブロット解析を行なうと、CHOdhfr−、NM−F9、NM−H9D8、およびNM−H9D8−E6細胞において発現させた抗体のシアリル化の差が確認された。3μgの精製抗体を各々、ニトロセスロースにスポットし、PBS/BSAでブロックし、洗浄し、2,6−シアリル化を検出するSNAによって可視化した。
図14は、CHOdhfr−、NM−F9、NM−H9D8、またはNM−H9D8−E6細胞から単離したキメラ抗体Panko1およびPanko2のブロットを示す。2,6−シアリル化は、NM−H9D8またはNM−H9D8−E6細胞から単離した抗体でのみ検出可能である。
【0352】
(実施例11)
NM−F9、NM−H9D8およびCHOdhfr−細胞において発現させた抗体分子組成物のバイオアベイラビリティの検出
NM−H9D8において発現させたシアリル化抗体PankoMabでは、NM−F9細胞において発現させた非シアリル化抗体PankoMabと比べて長いバイオアベイラビリティが、ヌードマウスにおいて測定された。マウス1匹あたり5μgの精製抗体を、1群あたり少なくとも3匹のマウスにi.v.注射した。血液試料を注射後の種々の時点(注射の5分後、2、5、8、24、48、72および144時間後)で採取し、血清を単離し、解析まで試料を−80℃で保存した。これらの試料の抗体価をELISAによって測定した。
図15は、NM−H9D8細胞から単離したキメラPankoMabが、NM−F9から単離したものよりも細胞よりもバイオアベイラビリティが長いことを示し、これは、おそらく抗体の種々のシアリル化によって引き起こされる。
【0353】
(実施例12)
真核生物細胞内でhFSHを発現させるためのベクターのクローニング
FSHαおよびFSHβ鎖のコード配列を、特異的プライマーにより、BACクローンRZPDB737B122053D(FSHαゲノム)、IRAUp969E0752D(FSHα cDNA)およびRZPDB737H0619D6(FSHβゲノム)(RZPD、ドイツ製)を用いてPCR増幅した。
FSHα鎖のプライマー:
FSHa−wt−f−KpnI:AAAGGTACCATGGATTACTACAGAAAATATG/
FSHa−b−BamHI:AAAGGATCCTTAAGATTTGTGATAATAAC;
FSHβ鎖のプライマー:
FSHb−wt−f−HindIII:TTTAAGCTTATGAAGACACTCCAGTTTTTC/
FSHb−b−BamHI:TTTGGATCCTTATTCTTTCATTTCACC
増幅後、産生物を、HindIII/BamHI(FSHゲノムβ)およびKpnI/BamHI(FSHゲノムαまたはFSHcDNAα)により、対応する真核生物の発現ベクター内にクローニングした。cDNA配列を、TCR−リーダー配列に融合されたFSHβ鎖をコードするGenesynthesisによって作製し、真核生物の発現ベクター(FSHcDNAβ)内にクローニングした。
配列FSHcDNAβ(TCR−リーダー配列に下線):
【0354】
【化1】
発現ベクター(pEFpuroおよびpEFdhfrB
mutB)は、EF−1αプロモーターとHCMVエンハンサー、SV40起点、ポリアデニル化シグナル、プロマイシン耐性遺伝子をα鎖ベクター内に、およびCHO細胞発現のためのマウスジヒドロホラーゼ遺伝子(dhfr)、またはNM−F9、GT−2x、K562、NM−H9、NM−D4、またはNM−H9D8発現のための配列番号1(配列1#)を、選択と遺伝子増幅のためにβ鎖用ベクター内に含む。
【0355】
(実施例13)
ヒト組換えhFSHを発現させるための真核生物細胞のトランスフェクション、ならびに無血清条件下で高産生の細胞クローン(GT−2xおよびNM−H9D8)または血清含有条件下で高産生の細胞クローン(CHOdhfr−)を作製するための遺伝子増幅手順
hFSHをGT−2x[DSM ACC
]、NM−H9D8(DSM ACC2806)、およびCHOdhfr−(ATCC No.CRL−9096)において発現させるため、細胞を、αおよびβ鎖用の上記のベクター(1:1〜1:3)の混合物で、DMRIE−Cを用いたリポフェクションによって、またはGT−2x(FSHcDNAα/FSHゲノムβ)およびNM−H9D8(FSHcDNAα/FSHcDNAβ)とリポフェクタミンの懸濁細胞ではエレクトロポレーション(Nucleofector;Amaxa)、または付着細胞株CHOdhfr−(FSHゲノムα/FSHゲノムβ)ではエレクトロポレーションによってコトランスフェクトした。これらは、このような設定で使用される例示的な組合せである。他の組合せのhFSHαとhFSHβ鎖発現プラスミドでも、各々、同等の結果がもたらされる。
【0356】
トランスフェクションの2日後、増殖培地を選択培地(GT−2xおよびNM−H9D8では、X−Vivo20培地+0.75μg/mlプロマイシン+50nMメトトレキサート;CHOdhfr−では、DMEM+10%透析FCS+2mM L−グルタミン+5μg/mlプロマイシン+50mMメトトレキサート)に1週間交換した。最初の増幅は、メトトレキサート濃度を100nMに上げることによりさらに2週間、および200nMメトトレキサートでさらに2週間行なった。増幅細胞集団の一部を、プロマイシンおよびメトトレキサート無添加の培地中で単一細胞クローニングした。残りの細胞は、メトトレキサート濃度を上げることにより新たな回の遺伝子増幅に供した。このようにして、2〜3回の遺伝子増幅(100、200、500nM メトトレキサート)を行なった。さらに、クローンスクリーニングおよび解析によって特定された最良の産生クローンを、同様にしてさらに増幅した。
【0357】
CHOdhfr−:増殖中のクローンの細胞をPBSで洗浄し、Accutase処理によって回収した。再懸濁した細胞の半数を96ウェル試験プレート内に播種し、他の半数は、24ウェルプレート内に播種してさらに培養した。試験プレーを20〜24時間培養した。各ウェルの上清みを抗体価について、比産生速度(SPR)および倍加時間(g)の測定の項目(下記参照)に記載のようにして解析した。相対細胞密度を、MTTアッセイを用いて測定した。詳細には、細胞をMTT溶液とともに2時間インキュベートし、溶液を廃棄し、細胞を2−プロパノール中0.04M HCl溶液で溶解させた。2時間後、プレートを静かに混ぜ、デュアルモードの570nmフィルターと630nm参照フィルターを備えたマイクロタイタープレート光度計を用いて測定を行なった。
【0358】
GT−2xおよびNM−H9D8:96ウェルプレートを遠心分離し、上清みを廃棄した。細胞を200μlの新鮮培地中に再懸濁した。再懸濁した細胞の半数を96ウェル試験プレート内に播種し、100μlの培地で希釈し、他の半数はクローニングプレート内でそのままさらに培養した。2日間の培養後、試験プレートを遠心分離し、20μlの上清みを抗体価について、比産生速度(SPR)および倍加時間(g)の測定の項目(下記参照)に記載のようにして解析した。相対細胞密度を、WST−1アッセイを使用し、各ウェル内への10μlのWST−1溶液(Roche)の添加によって測定した。1〜3時間のインキュベーション後、デュアルモードの450nmフィルターと630nmの参照フィルターを備えたマイクロタイタープレート光度計を用いて測定を行なった。
比産生速度(SPR)および倍加時間(g)の測定
各クローンについて、2×10P
4P細胞/ウェルを24ウェル組織培養プレートの500μlの増殖培地中に播種した。細胞を3日間培養し、ならし培地を回収して解析し、必要に応じてAccutaseによって細胞を取り出し、計数した。特異的抗体価を培地試料からELISAによって定量的に測定した。アッセイプレートをhFSHβに特異的なマウスmAB(ab22473)でコートした。結合された組換えhFSHをhCGαに特異的なヤギポリクローナル抗体(ab20712)とともにインキュベートし、ロバ抗ヤギIgG H+L−POD(JacksonImmunoカタログ番号305−035−003)により検出した。定量では、精製組換えhFSHを標品として使用した。
【0359】
特定タンパク質のピコグラム/細胞/日(pcd)で測定されるSPRは、増殖速度と産生能の両方の関数であり、以下の等式:
【0360】
【数3】
【0361】
【数4】
によって計算した。
【0362】
倍加時間は、以下の等式:
g=log2×(培養時間)/log(最終細胞数/最初の細胞数)
によって計算した。
細胞株の平均収率および最大収率の測定
上記の限界希釈(0.5細胞/ウェル)を用いた96ウェルプレート内での単一細胞クローニング後、理論的に200個の平板培養単一クローンから、増殖中の細胞クローンのSPRを測定し、種々の細胞株および種々の条件での平均および偏差ならびに最大収率を求めた。表7および表8では、血清含有条件下(CHOdhfr−)ならびに無血清条件(GT−2xおよびNM−H9D8)で生成されたhFSHを産生するCHOdhfr−、GT−2x、およびNM−H9D8の細胞クローンのデータを比較している。
【0363】
(実施例14)
hFSH分子組成物の単離
本発明によるhFSH分子組成物産生および単離のため、hFSHを分泌する安定にトランスフェクトされた細胞を、細胞密度が約1〜2×10P
6P細胞/mlに達するまで無血清培地中で培養した。遠心分離(400×g、15分間)によって細胞培養上清みから細胞を除去した後、キメラ抗体を、NHS活性化カラム(HiTrap NHS−activated HP;GE Healthcare)に結合させたhCGαに対するポリクローナル抗体を使用する親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。急速pH変化によって溶出された精製FSH画分をPBS中で再緩衝化し、Centriprep遠心チューブ(10kDa排除、Millipore)を用いて濃縮し、SDS−PAGEによって解析した(
図16参照)。
【0364】
(実施例15)
本発明によるFSH分子組成物の活性の測定
異なるグリコシル化パターンを有するFSH分子の活性は、以下に記載する方法に従って測定され得る。最適化されたグリコシル化をもたらす本発明によるスクリーニング方法により適当な細胞株を選択するため、FSH分子を種々の細胞株で発現させ、それにより、例えばシアリル化度、ガラクトシル化および/またはフコシル化度に関して相違するグリコシル化パターンを示す個々の細胞株からFSH組成物を得る。最も有利な活性、したがってグリコシル化パターンを有するFSH分子/組成物は、以下の方法の少なくとも1つによって決定され得る。
ラット顆粒膜細胞アッセイ:
顆粒膜細胞を、DES処理した脳下垂体摘出ラットから採取した。該細胞の調製方法は、JiaおよびHsueh 1985に詳細に記載されている。
【0365】
得られた細胞を、24ウェル規模で約160000細胞/ウェルにて、100nM DES、0.125 M 1−メチル−3−イソブチルキサンチン、2mMグルタミン、1μMアンドロステンジオン、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン、1μg/mlウシインスリンならびにGT−2xおよびNM−H9D8細胞由来の漸増濃度のrFSH調製物(0〜1μg/ml)を含むマッコイ5A培地中で、72時間まで培養した。インキュベーションの72時間後に培地を回収し、ELISA(Calbiotech # ES071S)によるエストラジオールの定量まで−20℃で保存した。
293HEK アッセイ:
hFSH−受容体(2×10
5細胞/35mm培養皿)で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞を、GT−2xおよびNM−H9D8細胞から得られた漸増用量の各FSHタンパク質分子組成物(0〜1μg/ml FSHの範囲)に、0.125mMの1−メチル−3−イソブチルキサンチンの存在下、37℃で24時間から72時間までで曝露した。インキュベーション後、全(細胞内および細胞外)cAMP濃度を、cAMP Direct Biotrak
TM EIA(GE Healthcare、カタログ番号:RPN225)によって製造業者の使用説明書に従って測定した。
GFSHR−17細胞アッセイ:
細胞を、5%ウシ胎仔血清(Biochrom KG,ベルリン,ドイツ)を含むダルベッコ改変イーグル培地Ham F12(1:1 v:v;Biochrom KG,ベルリン,ドイツ)で培養した。細胞を2×10
5細胞/24ウェルプレートで平板培養し、GT−2xおよびNM−H9D8細胞から得られたFSHタンパク質分子組成物とともに24時間、0〜1μg/mlの範囲で1〜24時間インキュベートした。インキュベーション後に培地を回収し、プロゲステロンELISAアッセイ(Biochem Immunosystems,フライブルク,ドイツ)を製造業者の使用説明書に従って使用することによるプロゲステロンの定量まで−20℃で保存した。
ヒト顆粒膜細胞アッセイ
ミュンスター大学で体外受精プログラムに参加している女性から得た卵胞採取による顆粒膜−黄体細胞を、Khanら,1990に記載のようにして富化し、6ウェルプレート内に播種した(1〜1.5×10
5バイアブル細胞/ウェル)。10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS;Gibco,エッゲンシュタイン,ドイツ)、ペニシリン(50単位/ml)、ストレプトマイシン(50pg/ml)、ゲンタマイシン(100pg/rnl)およびアンホテリシン(0.6pg/ml)を補給したハムF12/ダルベッコ改変必須培地(DMEM)(1:1;ICN Biomedicals,メッケンハイム,ドイツ)中で、5%CO
2雰囲気下37℃にて細胞をインキュベートした。細胞を、GT−2xおよびNM−H9D8細胞から得られた漸増用量の各FSHタンパク質分子組成物(0〜1μg/ml FSHの範囲)に、0.125mMの1−メチル−3−イソブチルキサンチンの存在下、37℃で24時間から72時間までで曝露した。インキュベーション後、全(細胞内および細胞外)cAMP濃度を、cAMP Direct Biotrak
TM EIA(GE Healthcare、カタログ番号:RPN225)によって製造業者の使用説明書に従って測定した。
【0366】
(実施例16)
GT−2x およびCHOdhfr−細胞において発現させたFSH組成物のグリカン解析
ウエスタンブロット解析を行なうと、CHOdhfr−、GT−2x[DSM ACC
]、またはNM−H9D8[DSM ACC2806]において発現させた種々にシアリル化されたFSH分子組成物が確認された。5μgの各抗体分子組成物を、還元条件下での10%アクリルアミドゲルにおけるSDS−Pageによって分離した。タンパク質をニトロセルロースに移し、2−6シアリル化を検出するSNAによって可視化した(
図17)。
【0367】
シアル酸含有量、電荷分布、フコース含量、ガラクトシル化状態およびバイセクトGlcNAc含有量の測定に関する詳細なグリカン解析は、実施例10に従って行なわれ得る。
IUPAC−IUBMB推奨(1996)による定義:
Neu5Gc:5−N−グリコリル−α−ノイラミン酸
Neu5AcおよびNeuNAc:5−N−アセチル−α−ノイラミン酸
Gala1,3Gal:α−D−ガラクトピラノシル−(1→3)ガラクトピラノシル−隣接糖
2,3結合ノイラミン酸:5−N−アセチル−α−ノイラミニル−(2→3)−隣接糖
2,6結合ノイラミン酸:5−N−アセチル−α−ノイラミニル−(2→6)−隣接糖
本発明は、本明細書に記載した具体的な方法論、プロトコルおよび/または試薬が種々であり得るため、これらに限定されないことは理解されよう。また、本明細書で使用した専門用語は、具体的な実施形態を示す目的にすぎず、特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することは意図しないことも理解されよう。
配列番号
配列#1
配列番号1
【0368】
【化2】
配列#2
配列番号2
【0369】
【化3】
配列#3
配列番号3
【0370】
【化4】
配列#4
配列番号4
【0371】
【化5】
配列#5
配列番号4
【0372】
【化6】
配列#6
配列番号6
【0373】
【化7-1】
【化7-2】
配列#7
配列番号7
【0374】
【化8】
配列#8
配列番号8
【0375】
【化9】
配列#9
配列番号9
【0376】
【化10】
配列#10
配列番号10
MWLGSLLLLGTVACSISA
【0377】
【表1】
【0378】
【表2】
【0379】
【表3-1】
【0380】
【表3-2】
【0381】
【表4】
【0382】
【表5】
【0383】
【表6】
【0384】
【表7-1】
【0385】
【表7-2】
【0386】
【表8】
【0387】
【表9-1】
【0388】
【表9-2】
【0389】
【表9-3】
【0390】
【表9-4】
【0391】
【表9-5】
【0392】
【表9-6】
【0393】
【表9-7】
【0394】
【表10】
【0395】
【数5】
整理番号:48 377 K
受託番号DSM ACC2606についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0396】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0397】
【数6】
【0398】
【数7】
受託番号DSM ACC2605についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0399】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0400】
【数8】
【0401】
【数9】
受託番号DSM ACC2806についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0402】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0403】
【数10】
【0404】
【数11】
受託番号DSM ACC2807についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0405】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0406】
【数12】
【0407】
【数13】
受託番号DSM ACC2807についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0408】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0409】
【数14】
【0410】
【数15】
GT−2X−受託番号決定−についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0411】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0412】
【数16】
DSM ACC2858についての、PCT/RO/134様式に基づくさらなる表示
出願人はここにおいて、個々の規定を有する国に対して、本願において言及されている寄託された生物学的材料の試料の供与は、無関係の、指名された専門家に対してのみなさ得ることを要求する(適用可能な場合、特にオーストラリア、カナダ、クロアチア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、英国、ヨーロッパにおいて、「エキスパートソリューション(expert solution)」の要求)。
【0413】
したがって、ヨーロッパに関しては、出願人は、寄託された生物学的材料が、EPC規則28(3)において規定されるように、特許を付与する旨の告示が公表されるまで、または特許出願が拒絶され、取り下げられ、もしくは取り下げられたものとみなされる場合には出願の日から20年間、試料の請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能となされる(EPC規則28(4))ことを要求する。
【0414】
【数17】