(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767797
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】ドア枠の取付構造
(51)【国際特許分類】
E06B 1/62 20060101AFI20150730BHJP
E06B 7/12 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
E06B1/62 Z
E06B7/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-234899(P2010-234899)
(22)【出願日】2010年10月19日
(65)【公開番号】特開2012-87529(P2012-87529A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016886
【氏名又は名称】日本フネン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】村尾 均
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−168958(JP,A)
【文献】
特許第3237009(JP,B2)
【文献】
特開平11−229717(JP,A)
【文献】
実開平05−034284(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3144289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
E06B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝶番(22)を介して内側にドア(20)を開閉自在に連結している金属板からなるドア枠(1)を建物の躯体(30)に固定してなるドア枠の取付構造であって、
前記建物の躯体(30)には屋外側に外壁パネル(31)を固定しており、
前記ドア枠(1)が、戸当たり側の縦枠(2A)及び蝶番側の縦枠(2B)と、両方の縦枠(2)の上端を連結してなる上枠(3)とからなり、戸当たり側の縦枠(2A)及び蝶番側の縦枠(2B)と上枠(3)とが、屋外側の表面に突出して、金属板を折り返し状態に折曲して2枚重ねにしてなる折曲突出部(5)を設けており、さらに、この折曲突出部(5)の外側に、建物の外壁表面と平行であって、前記外壁パネル(31)を位置決めする平面部(6)を設けて、前記外壁パネル(31)を定位置に固定して、前記平面部(6)において前記折曲突出部(5)と前記外壁パネル(31)との間に断熱隙間(13)を設けており、
前記ドア枠(1)が建物の躯体(30)に固定され、前記ドア枠(1)の平面部(6)において、前記折曲突出部(5)と外壁パネル(31)との間に断熱隙間(13)を設けて、建物の躯体(30)に外壁パネル(31)を固定しており、この外壁パネル(31)と前記折曲突出部(5)との間の断熱隙間(13)をコーキングしており、
さらに前記断熱隙間(13)には、断熱隙間(13)に設けたコーキング層(14)と平面部(6)との間に断熱材(15)が配置され、
前記コーキング層(14)は前記外壁パネル(31)よりも優れた断熱特性のコーキング剤からなり、かつ前記断熱材(15)を前記コーキング層(14)よりもさらに優れた断熱特性としてなるドア枠の取付構造。
【請求項2】
前記断熱隙間(13)を、シリコンゴムからなる断熱材でコーキングしており、さらに、前記折曲突出部(5)は、先端縁を外壁パネル(31)の表面と同一平面とし、あるいは外壁パネル(31)の表面から突出する高さとしてなる請求項1に記載されるドア枠の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板のドア枠を建物に固定してなるドア枠の取付構造に関し、とくにドア枠の室内側の結露を有効に防止できるドア枠の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアを開閉できるように連結している金属板のドア枠は、冬期の寒いときに屋内側の表面に結露する。屋外の冷たい空気で冷やされたドア枠が、室内の暖かい空気に接触して、室内空気を過飽和な状態とするからである。この欠点を解消するドア枠は開発されている。(特許文献1参照)
結露を防止するドア枠を
図1に示している。ドア枠は、金属製であって、第1枠91と第2枠92とを連結している。第1枠91は、第2枠92と対向する側を開口部とする案内溝97を有する形状に金属板を折曲加工している。第2枠92は、第1枠91の案内溝97に入れることができるコ字折曲部98を有する形状に金属板を折曲加工している。第2枠92のコ字折曲部98を第1枠91の案内溝97に入れて、第1枠91と第2枠92とを固定している。さらに、第1枠91と第2枠92とを断熱して連結するために、第1枠91の案内溝97の底面と、第2枠92のコ字折曲部98の対向面との間に断熱材99を挟着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のドア枠は、第1枠と第2枠とに分割し、その間に断熱材を挟んで、屋外側と室内側とを断熱して、室内側に発生する結露を防止している。この構造は、ドア枠を2分割して製造し、さらに、これを特定位置に配置して、断熱材を挟んで連結するので製造コストが高くなる欠点がある。また、第1枠と第2枠との連結強度を高くするために、連結部を多くすると、連結部から熱伝導して室内側の表面に結露しやすくなる欠点もある。
【0005】
本発明は、従来のドア枠が有する以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、極めて簡単な構造としながら、室内側の表面の結露を有効に阻止できるドア枠の取付構造を提供することにある。
【0006】
本発明のドア枠の取付構造は、蝶番22を介して内側にドア20を開閉自在に連結している金属板からなるドア枠1を建物に固定している。ドア枠1は、戸当たり側の縦枠2A及び蝶番側の縦枠2Bと、両方の縦枠2の上端を連結してなる上枠3とを備える。戸当たり側の縦枠2A及び蝶番側の縦枠2Bと上枠3は、屋外側の表面に突出して、金属板を折り返し状態に折曲して2枚重ねにしてなる折曲突出部5を設けており、さらに、この折曲突出部5の外側に、建物の外壁表面と平行な平面部6を設けている。ドア枠の取付構造は、ドア枠1を建物の躯体30に固定し、ドア枠1の平面部6において、折曲突出部5と外壁との間に断熱隙間13を設けて、建物の躯体30に外壁パネル31を固定して、この外壁パネル31と折曲突出部5との間の断熱隙間13をコーキングしている。
【0007】
以上のドア枠の取付構造は、ドア枠を極めて簡単な構造としながら、室内側に露出する表面の結露を有効に阻止できる特徴がある。それは、屋外側の表面に突出して、金属板を折り返すように折曲して2枚重ねにしている折曲突出部を屋外側の表面に突出するように設けて、この折曲突出部の外側に平面部を設け、この平面部には折曲突出部と外壁パネルとの間に断熱隙間を設けて、断熱隙間をコーキングしているからである。以上のドア枠は、屋外側に露出する部分を、折曲突出部の折返し部として表面積を極めて狭くし、外気との接触面積を少なくするので、外気とドア枠の表面の熱伝達面積が少なくなり、移動する熱量が少なくなってドア枠の室内側が冷却されにくくなる。さらに、このドア枠は、折曲突出部の外側に平面部を設けて外壁パネルを固定する構造としながら、ここに外壁パネルを固定することなく、外壁パネルと折曲突出部との間に断熱隙間を設けて、ここをコーキングしている。これにより、室外側からドア枠が冷却されるのを有効に防止して、室内側の表面の結露を有効に阻止できる。
【0008】
屋外側にほとんど露出しないドア枠は、寒い冬期においても、屋外側の露出部でドア枠がほとんど冷却されない。ドア枠は、屋外側の露出部が冷たい空気で冷やされると、熱伝導によって室内側のドア枠が冷却されるばかりでなく、ドア枠内の空気が対流することによっても室内側のドア枠を含む全体が冷却されて、室内側の表面に結露が発生する。ところが、本発明のドア枠は、屋外側の露出面積を小さくすると共に、その外側には外壁パネルを位置決めする平面部を設けて外壁パネルを定位置に固定できる構造としながら、平面部において折曲突出部と外壁パネルとの間に断熱隙間を設けて、ここをコーキングして断熱することで、外壁パネルを定位置に配置しながら、ドア枠が外気で冷却されるのを効果的に阻止して、室内側の結露を有効に防止する。
【0009】
本発明のドア枠の取付構造は、断熱隙間13を、シリコンゴムからなる断熱材でコーキングして、
折曲突出部5は、先端縁を外壁パネル31の表面と同一平面とし、あるいは外壁パネル31の表面から突出する高さとすることができる。
以上のドア枠の取付構造は、断熱隙間をシリコンゴムでコーキングして、平面部を簡単に断熱できると共に、ドア枠と外壁パネルとの隙間を理想的な状態で防水できる特徴も実現する。
【0010】
本発明のドア枠の取付構造は、断熱隙間13が、断熱隙間13に設けたコーキング層14と平面部6との間に断熱材15を配置する。
以上のドア枠の取付構造は、コーキング層と平面部との間に、さらに断熱材を配設するので、ドア枠が冷たい外気で冷却されるのをより効果的に防止して、室内側の結露をより有効に阻止できる。
さらに本発明のドア枠の取付構造は、コーキング層14を外壁パネル31よりも優れた断熱特性のコーキング剤として、断熱材15をコーキング層14よりもさらに優れた断熱特性としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施例にかかるドア枠の取付構造を示す一部拡大水平断面図である。
【
図3】
図2に示すドア枠の取付構造を示す一部拡大垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのドア枠の取付構造を例示するものであって、本発明はドア枠の取付構造を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0013】
図2と
図3は、ドア枠1の取付構造の断面図を示す。ただし、
図2は水平断面を示し、
図3は垂直断面図を示している。これ等の図に示すドア枠1は、蝶番22を介して内側にドア20を開閉自在に連結している。図のドア枠1は、ドア20の戸当たり21側に位置する戸当たり側の縦枠2Aと、蝶番22側に位置する蝶番側の縦枠2Bと、両方の縦枠2を上端で連結している上枠3と、縦枠2を下端で連結している下枠4とからなる。両側の縦枠2と上枠3と下枠4は、鋼板等の金属板を折曲加工して製作される。上枠3は、両端を一対の縦枠2の上端に連結している。下枠4は、両端を一対の縦枠2の下端に連結している。このドア枠1は、一対の縦枠2と上枠3と下枠4とを長方形に連結している。この構造は、ドア枠1を製造工場で長方形に連結して、施工現場に運搬できる。ただ、本発明のドア枠は、必ずしも下枠を必要としない。縦枠と上枠をコンクリートや壁等の建物躯体に連結して、縦枠の下端を床や土間に固定できるからである。
【0014】
ドア枠1は、厚さを約1.6mmとする鋼板で製作される。ただし、ドア枠は、厚さを1〜2mmとする鋼板で製作することもできる。鋼板製のドア枠1は、安価で強靭な構造にできる特長がある。ただ、ドア枠は、必ずしも鋼板で製作する必要はない。ドア枠は、ステンレス等の金属板を折曲加工して製作することもできる。ステンレス製のドア枠は、錆びない特長がある。下枠4は、
図3の断面図に示すように、折曲加工した2枚の金属板を溶接等の方法で連結して製作される。
【0015】
戸当たり側の縦枠2A及び蝶番側の縦枠2Bと、上枠3は、室内側の結露を防止するために、屋外側の露出面積を小さくしている。
図2の断面図に示す縦枠2と、
図3の断面図に示す上枠3は、屋外側の表面に、折曲突出部5を突出して設けており、さらに、この折曲突出部5の外側には、外壁パネル31を位置決めする平面部6を設けている。折曲突出部5は、金属板を折り返し状態に折曲して2枚重ねにしている。折曲突出部5は、先端縁を外壁パネル31の表面と同一平面とし、あるいは外壁パネル31の表面から多少は突出する高さとしている。この折曲突出部5の外側を直角に折曲して、建物の外壁表面と平行な平面部6を設けている。
【0016】
戸当たり側の縦枠2Aは、折曲突出部5の内側に戸当たり面7を設けている。戸当たり面7の内側は、直角に折曲されて、ドア20の外周面に沿う内側面8としている。ドア枠1の内側面8は、ドア20の表面に向かって内側に突出する段差形状としている。段差部9は、パッキン溝10を設ける形状に金属板を折曲加工している。パッキン溝10は、弾性変形するエアータイトパッキン11を定位置に固定している。エアータイトパッキン11は、閉じられたドア20の室内側の表面に密着される。
【0017】
蝶番側の縦枠2Bは、折曲突出部5の外側を直角に折曲して平面部6を設けて、折曲突出部5の内側を折曲することなく延長してドア枠1の内側面8として、この内側面8を段差形状として、段差部9にパッキン溝10を設けている。パッキン溝10にはエアータイトパッキン11を固定して、閉められたドア20の室内側の表面にエアータイトパッキン11を密着させる形状としている。
【0018】
さらに、上枠3は、
図3の断面図に示すように、蝶番側の縦枠2Bと同じように、折曲突出部5の外側を直角に折曲して平面部6を設けて、折曲突出部5の内側を折曲することなく延長してドア枠1の内側面8として、ここにパッキン溝10を設けて、パッキン溝10にエアータイトパッキン11を固定している。
【0019】
以上のように、屋外側に露出する部分を折曲突出部5の折返し部とする構造は、露出部の表面積が極めて狭くなり、外気との接触面積が少なくなって、外気とドア枠1の表面の熱伝達面積が少なくなる。このため、このドア枠1は、移動する熱量が少なくなって、室内側が冷却されにくくなる。とくに、金属板を折り返し状態に折曲して2枚重ねとする折曲突出部5は、同じ厚さの1枚の金属板を使用するよりも熱の移動量を少なくできる。すなわち、金属板を折り返して2枚重ねとすることで、熱抵抗を大きくして熱の移動量を少なくできる。さらに、ドア枠は、内部で空気が対流することによってもドア枠全体が冷却されることがあるが、以上のドア枠1は、屋外側の露出面積を小さくして、外気との接触面積を少なくするので、ドア枠1の内部を対流する空気は冷却されにくく、ドア枠全体としては冷却されにくくなる。
【0020】
図2と
図3のドア枠1は、ロッド12を介して建物の躯体30に固定している。さらに、建物の躯体30は、屋外側の表面に外壁パネル31を固定している。外壁パネル31は、その屋外側の表面を折曲突出部5の先端縁から突出させることなく、あるいは折曲突出部5の先端縁とほぼ同一平面として、建物の躯体30に固定される。この外壁パネル31は、折曲突出部5に隙間なく固定されず、折曲突出部5との間の断熱隙間13を設けて、平面部6の一部を覆うように建物の躯体30や平面部6に固定される。折曲突出部5と外壁パネル31との間の断熱隙間13は、平面部6を屋外側に露出させて屋外の冷たい空気に接触させないように、外壁パネル31よりも優れた断熱特性のコーキング剤でコーキングして、コーキング層14を設けている。このコーキング剤として、例えば、シリコンゴム等の断熱材が使用できる。さらに、
図2のドア枠1は、平面部6の断熱特性を向上するために、ドア枠1の平面部6とコーキング層14との間に、プラスチック発泡体などの断熱材15を配置している。この構造は、コーキング層14よりもさらに優れた断熱特性の断熱材15で平面部6の表面をカバーして、平面部6が冷たい空気で冷却されるのを効果的に阻止できる。
【0021】
以上の実施例において、ドア枠1の内側に連結されるドア20は、その戸先側に、防犯、耐震用の戸当たり21を設けており、この戸当たり21の先端部をドア20の先端面よりも突出する形状としている。このため、
図2に示すドア枠1は、戸当たり側の縦枠2Aの折曲突出部5の内側に戸当たり面7を設けている。ただ、本発明は、ドア枠の内側に連結するドアを、戸先側に突出する戸当たりを有するドアには特定しない。したがって、本発明のドア枠は、戸当たり側の縦枠に、必ずしも戸当たり面を設ける必要はなく、戸先側に突出する戸当たりのないドアを連結することもできる。このドア枠は、例えば、内側に連結するドアを、戸当たりが先端面から突出しない形状とし、さらに、戸当たり側の縦枠を、
図3の断面図に示す上枠と同様の形状とすることができる。すなわち、この戸当たり側の縦枠は、接曲突出部の内側に戸当たり面を設けることなく、内側を延長してドア枠の内側面として、ここにパッキン溝を設けてエアータイトパッキンを固定することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…ドア枠
2…縦枠 2A…戸当たり側の縦枠
2B…蝶番側の縦枠
3…上枠
4…下枠
5…折曲突出部
6…平面部
7…戸当たり面
8…内側面
9…段差部
10…パッキン溝
11…エアータイトパッキン
12…ロッド
13…断熱隙間
14…コーキング層
15…断熱材
20…ドア
21…戸当たり
22…蝶番
30…躯体
31…外壁パネル
91…第1枠
92…第2枠
97…案内溝
98…コ字折曲部
99…断熱材