(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の筒状体の一方側端部には、筒状体の内部に残留した前記廃電池を排出する排出口が形成されており、前記複数の筒状体のうち、内側に配された筒状体の排出口が外側に配された筒状体の排出口よりも突出した位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の廃電池分別機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されるように、廃電池のリサイクル処理においてはその一工程として切断処理や加熱処理などが行われる。ここで、リサイクル処理や廃棄処理は、安全に行うことが重要な要素である。しかしながら、切断処理においては手作業で行うとカッターや切断箇所で怪我をすることがあり、加熱処理においては廃電池を加熱すると廃電池内部の電解液が膨張して破裂するなど、危険を伴うことが多い。
【0007】
また、リサイクル処理や廃棄処理は、低コストであることが重要である。このため、切断処理においては人手を介さずに自動化が望まれ、加熱処理においては、加熱温度の低温化や、加熱時間の短縮などにより、低コスト化を図ることが望まれる。
【0008】
また、上述の通り、一次電池(特に、単一形電池、単二形電池、単三形電池、単四形電池等)などの電池は非常に大量に使用されて廃棄されている。このため、リサイクル処理や廃棄処理に際しては、いかに効率良く大量処理するかが重要な課題である。一方、電池の形状や大きさは、円筒形、ボタン形、コイン形、角形、平形といった様々な形状や大きさがある。円筒形電池の形状規格だけでも高さと直径の寸法により国際規格ではR20,R14,R6,R03,R1に分けられており、これらは日本工業規格の単一形,単二形,単三形,単四形,単五形に対応している。その他、ボタン形、コイン形、角形、平形を含めると、更に多くの形状や大きさに分けられる。リサイクル処理や廃棄処理においては、このような様々な形状や大きさの廃電池についても、一括で大量処理することが望まれる。
【0009】
対象物を分別する装置として、例えば、特許文献3には、廃電池ではなくゴミを分別するものであるが、ゴミを破砕処理した後に破砕ゴミを大小に選別する選別装置が開示されている。回転ドラムには投入口側に小片を通過させる大きさの選別孔が形成された小片選別エリアが設けられており、排出口側に中片を通過させる大きさの選別孔が形成された中片選別エリアが設けられており、投入口から投入された破砕ゴミは回転ドラムの内部を通過しながら、小片選別エリアにて小片が選別孔を通過し、中片選別エリアにて中片が選別孔を通過し、排出口からは大片が排出されることで、分別が行われている。
【0010】
また、例えば、特許文献4には、廃電池ではなく残土や骨材を分別するものであるが、環形プレートを所定間隔ごとに配置して円筒壁を形成するとともに、複数の環形プレート間のバー目を大きさ別に区分けしたトロンメルを備え、このトロンメルを回転させて、円筒内に投入した残土や骨材をバー目から落下させることにより大きさ別に分別する篩分装置が開示されている。第1トロンメルは、この公報の
図2に示されるように、円筒には投入口側に狭いバー目(符号L1)、それよりも広いバー目(符号L2)、更に広いバー目(符号L3)の順に設けられており、投入口側から投入された残土や骨材は、円筒内を移動しながら篩い分けられる。第2トロンメルは、この公報の
図7に示されるように、大きい孔が設けられた円筒壁82と、それよりも小さい孔が設けられた円筒壁81が横並びに設けられ、また、第3トロンメルは、この公報の
図11に示されるように、大きい孔が設けられた円筒壁203と、それよりも小さい孔が設けられた円筒壁202と、更にそれよりも小さい孔が設けられた円筒壁201が横並びに設けられ、どちらも、残土や骨材が円筒内を移動しながら孔から落下して篩い分けられる。
【0011】
しかしながら、廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別するために、これら従来技術の装置を適用したとしても、上述のように、電池には様々な形状や大きさがあるため、電池をその所定の形状や大きさごとに分別するためには、複数の形状や大きさに合わせた孔を設けたエリアを、回転ドラムや円筒に横並びに設ける必要がある。このため、多様な形状や大きさの廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別しようとすると、装置が非常に大きなものとなってしまう。
【0012】
そこで、本発明の目的は、どのような形状や大きさの電池(廃電池)が含まれていても、電池をその所定の形状や大きさごとに分別できるとともに、大量処理も可能で、安全、かつ、効率的な
廃電池分別機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の廃電池分別機は、水平姿勢又は斜め姿勢にて内側から外側に向かって順に配された複数の筒状体を備え、前記複数の筒状体の胴壁
がその長手方向に配されるレール状部材により構成されるとともに、前記レール状部材同士の間に形成される間隙によって通過孔が形成され、前記通過穴は廃電池を通過させるか通過させないかで分別するためにそれぞれ寸法を異ならせて形成されるもので、内側に配された筒状体の通過孔が外側に配された筒状体の通過孔よりも広く設定されており、前記複数の筒状体が回転動作をすることで
単一形電池や単二形電池などの円筒形廃電池をその形状や大きさごとに
前記複数の筒状体に残留させて分別することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、様々な形状や大きさの廃電池が混在していても、これらの廃電池を最も内側の筒状体に投入して、前記複数の筒状体を振動、揺動又は回転のうちいずれか一種以上の動作をさせると、投入された廃電池の山が崩れて、これら廃電池が前記通過孔に到達する。ここで、内側に配された筒状体の通過孔が外側に配された筒状体の通過孔よりも広く設定されているため、これらの通過孔を通過しない形状や大きさの廃電池(大きな廃電池)が内側に配された筒状体内に残留し、その他の廃電池(小さな廃電池)が通過孔を通過して外側の筒状体に移動する。そして、移動した廃電池は更に外側の筒状体に向かって筒状体ごとに残留と通過が繰り返され、通過孔に応じた形状や大きさの廃電池が前記複数の筒状体内に残留することで分別が行われる。
前記複数の筒状体を振動、揺動又は回転のうちいずれか一種以上の動作をさせると、投入された廃電池の山が崩れて、これら廃電池が前記通過孔に到達する。前記筒状体を入れ子構造のようにして配置することで、横並びに配置する場合と比較して、小型化を図ることができる。前記筒状体の数は二つでも三つでも良いし、それ以上でも良く、分別する廃電池の形状や大きさや種類数に合わせて設ければよい。
そして、この発明によれば、前記筒状体の胴壁が、長手方向に配されるレール状部材により形成されており、前記レール状部材同士の間に形成される間隙によって前記通過孔が形成されていることで、前記通過孔が胴壁のほぼ全体に亘って形成されることになり、前記廃電池が前記筒状体のどこに位置していたとしても、この間隙を通過可能な形状や大きさの廃電池であれば確実に通過する。また、前記筒状体内にて、前記廃電池が横に倒れた姿勢となるが、前記筒状体の回転動作によりレール状部材の間隙に嵌るような向きに揃えられ、前記通過孔を通過しやすくなるとともに、通過する廃電池とは大きさや形状の異なる廃電池であって、内側の筒状体に残留する廃電池については、レール状部材に沿って排出口の方向に送り出させ易くなる。前記通過孔は、前記筒状体の同壁に格子状に設けられていてもよい。すなわち、縦横の桟で所定の大きさに形成されていて、その大きさや形状のものだけその外側に排出させるものであっても良い。なお、胴壁全体が格子状に形成されるものでも支障ない。
【0015】
前記廃電池とは、リサイクル処理や廃棄処理される電池であり、これら廃電池の形状には、円筒形、ボタン形、コイン形、角形、平形といった様々な形状がある。円筒形電池の形状規格だけでも高さと直径の寸法により国際規格ではR20,R14,R6,R03,R1に分けられており、これらは日本工業規格の単一形,単二形,単三形,単四形,単五形に対応している。その他、ボタン形、コイン形、角形、平形を含めると、更に多くの形状や大きさに分けられる。本発明の廃電池分別方法によれば、このような様々な形状や大きさの廃電池についても、一括で大量処理することが可能となる。前記筒状体の数は二つでも三つでも良いし、それ以上でも良く、分別する廃電池の形状や大きさや種類数に合わせて設ければよい。
【0016】
ここで、前記複数の筒状体を回転させながら前記廃電池を分別し、前記複数の筒状体のうち最も外側の筒状体の下方から排出させるか、又は前記複数の筒状体に形成されたそれぞれの排出口から排出させるかのいずれかないしは両方である
とすることも可能である。
【0017】
この発明によれば、前記複数の筒状体を回転させることで、投入された廃電池の山を崩すことが容易となり、さらに、前記複数の筒状体のうち最も外側の筒状体の下方から前記廃電池のうち小さな廃電池を排出させるか、又は前記複数の筒状体に形成されたそれぞれの排出口から段階的に分別された廃電池を排出させるかのいずれかないしは両方の分別が可能となる。
【0018】
また、廃電池を穿孔するか切り口を付ける穿孔処理手段を備え、前記排出された廃電池の側面を穿孔するか切り口を付ける
ことができる。
【0019】
この発明によれば、分別され排出された前記廃電池は、形状や大きさが一定範囲内であるから、穿孔するか切り口を付けることが容易であり、これら前記廃電池の外形のうち比較的強度の弱い部位である側面を穿孔するか切り口を付けることで確実に孔をあけて内部の電解液を排出させ、加熱等による破裂を防いで処理作業の安全を確保できる。
【0020】
また、前記穿孔処理された廃電池を加熱する加熱手段を備え、前記穿孔処理された廃電池を加熱することも
可能である。
【0021】
この発明によれば、前記穿孔処理された廃電池を加熱処理することで、加熱温度を従来よりも低温とすることができ、加熱エネルギーの省エネルギー化や処理時間の短縮化により処理効率を高めることができ、廃電池処理のトータルコストを低減することができる。
【0022】
【0023】
【0024】
本発明は、前記複数の筒状体の一方側端部には、筒状体の内部に残留した廃電池を排出する排出口が形成されており、前記複数の筒状体のうち、内側に配された筒状体の排出口が外側に配された筒状体の排出口よりも突出した位置に設けられていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、前記複数の筒状体の一方側端部には、筒状体の内部に残留した廃電池を排出する排出口が形成されていることで、この排出口から連続して排出させる逐次処理が可能となる。そして、前記複数の筒状体のうち、内側に配された筒状体の排出口が外側に配された筒状体の排出口よりも突出した位置に設けられていることで、前記複数の筒状体の排出口の位置を段階的に少しずつずらしながら階段状に配列させることができ、分別された前記廃電池を別個の位置から確実に取り出すことができる。
【0026】
ここで、前記複数の筒状体を回転させる駆動手段を備え、前記複数の筒状体の回転によって筒状体の内部に残留した廃電池を前記排出口に送り出すガイド羽根が前記複数の筒状体の胴壁の内側に配されている
ことも可能である。
【0027】
この発明によれば、前記複数の筒状体を回転させる駆動手段を備えることで、投入された廃電池の山を崩すことが容易となり、さらに、前記複数の筒状体の回転によって筒状体の内部に残留した廃電池を前記排出口に送り出すガイド羽根が前記複数の筒状体の胴壁の内側に設けられていることで、残留した廃電池が前記ガイド羽根の作用で排出口に送り出されるため、前記筒状体内に残ることなく排出口から確実に排出される。前記ガイド羽根としては、螺旋状のガイド羽根や所定長さの複数のガイド羽根でもよく、前記筒状体の外壁に設けられてさらに外側の筒状体内の廃電池をその排出側に送り出す構成でもよい。また、前記廃電池がガイド羽根に送られて排出口から連続して排出されるため、前記筒状体が水平姿勢であっても、逐次処理が可能となる。
【0028】
ここで、前記複数の筒状体のうち最も内側に配された筒状体には、前記廃電池の投入口が設けられているか、又は、前記最も内側に配された筒状体の排出口が前記廃電池の投入口を兼用する
こともできる。
【0029】
この発明によれば、前記複数の筒状体のうち最も内側に配された筒状体に設けられている投入口から廃電池を投入すると、投入された廃電池が一端側端部に設けられた排出口に送られながら分別される。また、例えば、前記複数の筒状体が第1の筒状体と第2の筒状体と第3の筒状体の三重構造であるとするならば、単二形の廃電池と単三形廃電池の二種類の廃電池を分ける際には、最も内側の排出口を投入口として、単二形の廃電池と単三形廃電池の二種類の廃電池を投入してから回転等させると、単二形の廃電池が第2の筒状体内に残り、単三形の廃電池が第3の筒状体内に残り、前記複数の筒状体の各々の排出口から分別された廃電池を排出させることができる。このような使用の仕方においては、敢えて投入口というようなものを設けることなく上記2種類の廃電池の分別が可能である。
【0030】
【0031】
【0032】
また、前記廃電池分別機を備える廃電池処理装置であって、前記廃電池を穿孔するか切り口を付ける穿孔処理機を備え、当該穿孔処理機が、前記複数の筒状体のうち、最も外側の筒状体の下方に近接して配されるか、最も外側の筒状体の排出口の下方に近接して配されるか、又は前記複数の筒状体の排出口ごとにこれら排出口の下方に近接して配されるかのいずれか一種以上であることとする
こともできる。前記穿孔処理機とは、電池内部の電解質等の液体が外部に流出するように前記廃電池を穿孔するか切り口を付けるものであればよく、例えば、突き刺したり、潰したり、傷をつけたり等、どのような方法で孔をあけるものであってもよい。
【0033】
この発明によれば、前記穿孔処理機が、前記複数の筒状体のうち最も外側の筒状体の下方に近接して配される構成とすれば、最も小さな廃電池を穿孔処理することができる。前記穿孔処理機が、前記複数の筒状体のうち最も外側の筒状体の排出口の下方に近接して配される構成とすれば、最も大きな廃電池を穿孔処理することができる。また、前記穿孔処理機が、前記複数の筒状体の排出口ごとにこれら排出口の下方に近接して配されることで、形状や大きさごとに分別された廃電池が複数の各々専用の穿孔処理機によって穿孔処理されることとなる。
【0034】
また、前記穿孔処理機がその位置を調整可能であることが好ましい。この発明によれば、前記穿孔処理機が前記筒状体ごとに専用に設けられている場合において、前記複数の筒状体から排出される前記廃電池の形状や大きさに合わせて前記穿孔処理機の位置を調整することができるため、この前記穿孔処理機の位置を事前に調整しておくことにより、確実に前記廃電池に孔をあけることができる。
【0035】
また、前記穿孔処理された廃電池を加熱する加熱炉を備える
こともできる。
【0036】
この発明によれば、前記穿孔処理された孔から廃電池内部の電解液を排出させることができるため、加熱により廃電池が破裂するのを防止でき、作業の安全性を確保でき、また、加熱温度を従来よりも低温としたり、加熱時間を短縮したりできるので、加熱エネルギーや処理時間の効率化を図ることができる。前記分別処理、穿孔処理、加熱処理を逐次処理する構成とすることで、大量の廃電池をリサイクル処理や廃棄処理することが好適な構成となる。
【発明の効果】
【0037】
【0038】
本発明の廃電池分別機によれば、様々な形状や大きさの廃電池が混在していても、内側に配された筒状体の通過孔が外側に配された筒状体の通過孔よりも広く設定されているため、これらの通過孔を通過しない形状や大きさの廃電池(大きな廃電池)が内側に配された筒状体内に残留し、その他の廃電池(小さな廃電池)が通過孔を通過して外側の筒状体に移動し、移動した廃電池が更に外側の筒状体に向かって筒状体ごとに残留と通過が繰り返され、通過孔に応じた形状や大きさの廃電池が前記複数の筒状体内に残留することで分別が行われる。前記複数の筒状体の一方側端部に、筒状体の内部に残留した廃電池を排出する排出口が形成されている構成とすることで、この排出口から連続して排出させる逐次処理が可能となる。そして、前記複数の筒状体のうち、内側に配された筒状体の排出口が外側に配された筒状体の排出口よりも突出した位置に設けられていることで、前記複数の筒状体の排出口の位置を段階的に少しずつずらしながら階段状に配列させることができ、分別された前記廃電池を別個の位置から確実に取り出すことができる。前記筒状体の胴壁が、長手方向に配されるレール状部材により形成されており、前記レール状部材同士の間に形成される間隙によって前記通過孔が形成されていることで、前記通過孔が胴壁のほぼ全体に亘って形成されることになり、前記廃電池が前記筒状体のどこに位置していたとしても、この間隙を通過可能な形状や大きさの廃電池であれば確実に通過する。また、前記筒状体内にて、前記廃電池が横に倒れた姿勢となるが、前記筒状体の回転動作によりレール状部材の間隙に嵌るような向きに揃えられ、前記通過孔を通過しやすくなるとともに、通過する廃電池とは大きさや形状の異なる廃電池であって、内側の筒状体に残留する廃電池については、レール状部材に沿って排出口の方向に送り出させ易くなる。
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0042】
図1は廃電池分別機S1の一実施の形態を説明する概略側面図であり、
図2は、その概略背面図である。
図7は、排出口側から見た斜視図であり、
図8は、複数の筒状体の各々の通過孔の大きさを説明する図である。
【0043】
本実施形態の廃電池分別機S1は、単一形廃電池や単二形廃電池などの廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別する機能を有する。本実施の形態では、廃電池の一例として、円筒形状の乾電池を分別対象とし、国際規格R6(単三形:高さ50.5mm、直径14.5mm)、R14(単二形:高さ50.5mm、直径26.2mm)、R20(単一形:高さ61.5mm、直径34.2mm)の乾電池が混在している場合に、これらを形状や大きさ規格ごとに分別する例を説明する。
【0044】
本実施形態の廃電池分別機S1は、複数の筒状体110a,110b,110cを備える。ここでは、国際規格R20(単一形)の廃電池用として第1の筒状体110a、国際規格R14(単二形)の廃電池用として第2の筒状体110b、国際規格R6(単三形)の廃電池用として第3の筒状体110cの3つの筒状体を備える場合を例に説明する。複数の筒状体110a,110b,110cは、それらの中心軸P1,P1を回転軸として、回転軸P1,P1がほぼ水平となる姿勢にて配置されている。すなわち、廃電池分別機S1の基台180が水平な床上(符号E,E線上)に設置されている場合には、回転軸P1,P1が符号E,E線と平行に設定される(
図1)。
【0045】
本実施形態では、複数の筒状体の各々の筒状体110a,110b,110cが、それらの回転軸P1,P1が一致するように同軸に配されているとともに、入れ子構造を呈している。すなわち、第1の筒状体110aを第2の筒状体110bの内側に入れてその位置が部分的に重なるように配し、さらに、第1の筒状体110aと第2の筒状体とを第3の筒状体110cの内側に入れてそれらの位置が部分的に重なるように配している。なお、前記筒状体は、二つでも三つ以上でもよく、同形で大きさの異なる器物を順に組み入れるようにした配置構造となっており(入れ子構造)、直径の小さいものから大きいものの順に、直径の小さい筒状体を直径の大きい筒状体の中に入れるようにして、重ねて配置されていればよい。この筒状体110a,110b,110cは基台180上の所定の高さ位置で回転自在に配置されている(
図1)。
【0046】
本実施形態では、複数の筒状体のうち最も外側の第3の筒状体110cの外周にはリング形状のガイドレール111c,111cが設けられており、それらの下方に嵌合して当接するように複数(ここでは二対)の駆動車輪111a,,,111aが配されている(
図1、
図2)。駆動車輪111a,,,111aは、二つずつ二列に配されており、列ごとに駆動軸111b,111bに取り付けられ、モータM1により駆動軸111bを介して回転可能となっている(
図4を参照)。モータM1により駆動車輪111a,,,111aが回転し、それらの回転を筒状体110cに伝達して、筒状体110a,110b,110cを同時に回転させる。
【0047】
前記複数の筒状体110a,110b,110cの胴壁112a,112b,112cには、それぞれ通過孔113a,113b,113cが形成されている。通過孔113a,113b,113cは、廃電池を通過するものとしないものに分別するものである。すなわち、通過孔113a,113b,113cは、複数の通過孔を通過する廃電池は通過させ、それ以外の通過しない廃電池は、複数の筒状体110a,110b,110cの内部に残留させる。通過孔113a,113b,113cは、内側に配された筒状体のほうが、それよりも外側に配された筒状体よりも広く形成されている。すなわち、第1の筒状体110aの通過孔113aは第2の筒状体110bの通過孔113bよりも広く、第2の筒状体110bの通過孔113bは第3の筒状体110cの通過孔113cよりも広く形成されている。
【0048】
本実施形態では、通過孔113a,113b,113cは、レール状部材114a,114b,114cを互いに間隔を設けて回転軸P1,P1に並行に複数配列して胴壁112a,112b,112cを形成し、レール状部材114a,114b,114cの間に形成される間隙H1,H2,H3が通過孔113a,113b,113cにより異なって形成されている。つまり、
図8において、H1>H2>H3の関係となっている。本実施形態では、複数の筒状体110a,110b,110cの胴壁全体をレール状部材114a,114b,114cで構成している。したがって、回転する複数の筒状体110a,110b,110cの中の乾廃電池T1,T2,T3は、レール状部材114a,114b,114cに沿うようにして横になった姿勢で排出口117a,117b,117cまで排出されるが、胴壁全体をレール状部材114a,114b,114cで構成していることで、通過孔を介して効率よく外側に向かって廃電池を移動させることが出来る。
【0049】
前記複数の筒状体110a,110b,110cは、一方側端部にリングプレート115a,115b,115cを備え、他方側端部に円形状プレート116を備える。複数のレール状部材114a,114b,114cは、金属製の棒形状(シャフト形状)を呈し、それらの一方側端部が複数のリングプレート115a,115b,115cに沿ってリング状に配列するとともに、回転軸P1,P1に並行に、且つ、互いに所定間隔を設けて配されている。そして、複数のレール状部材114a,114b,114cの一方側端部と他方側端部がリングプレート115a,115b,115cと円形状プレート16とに連結固定されることにより、筒状体110a,110b,110cの胴壁113a,113b,113cを形成しており、複数のレール状部材114a,114b,114cの間に形成される間隙が通過孔113a,113b,113cとなっている(
図1、
図7)。
【0050】
本実施形態では、筒状体110a,110b,110cの一端側がリングプレート115a,115b,115cの中央開口部により排出口170a,170b,170cが形成されており、複数の筒状体110a,110b,110c内に残留した廃電池を排出可能となっている。また、最も内側の第1の筒状体110aには、排出口170aとは反対側である他端側(
図1中右側の壁)に、投入口118が設けられており、第1の筒状体110a内に廃電池を投入可能となっている(
図1)。
【0051】
前記排出口117a,117b,117cは、内側の第1の筒状体の排出口117aのほうが、それよりも外側に配された第2の筒状体117bの排出口117bよりも突出した位置に設けられており、段階的に少しずつ位置をずらして階段状に配列した構成となっている。すなわち、筒状体110a,110b,110cの胴体の長さが、外側の第3の筒状体110c、中間の第2の筒状体110b、最も内側の第1の筒状体110aの順に長くなっており、これらを入れ子構造にて部分的に重なる位置に配置することにより、第1の筒状体110aの排出口117aが外側の第2の筒状体110bの排出口117bよりも突出し、第2の筒状体110bの排出口117bが外側の第3の筒状体110cの排出口117cよりも突出させている(
図1)。
【0052】
また、前記筒状体110a,110b,110cの内周面には、内部の廃電池を排出口117a,117b,117cに送り出すガイド羽根119a,119b,119cが設けられている。すなわち、ガイド羽根119a,119b,119cは、複数の筒状体の胴壁112a,112b,112cの内周面において、排出口117a,117b,117cに向かって螺旋を描くように所定の高さのプレートが溶接やボルト等にて固定されており、廃電池は筒状体110a,110b,110cの回転動作によりガイド羽根119a,119b,119cに沿って排出口117a,117b,117cの所定位置まで移動する構成となっている(
図1)。
【0053】
一例として、国際規格R6(単三形:高さ50.5mm、直径14.5mm、符号T1)、国際規格R14(単二形:高さ50.5mm、直径26.2mm、符号T2)、国際規格R20(単一形:高さ61.5mm、直径34.2mm、符号T3)の円筒形状の廃電池T1,T2,T3が混在しており、これらを形状規格ごとに分別する場合を例に説明すると、最も内側の第1の筒状体110aの通過孔113aは、廃電池T1が通過せず、廃電池T2,T3が通過する幅であり、中間の第2の筒状体110bの通過孔113bは、廃電池T2が通過せず、廃電池T3が通過する幅であり、最も外側の第3の筒状体110cの通過孔113cは、廃電池T3が通過しない幅に形成される。この構成によって、最も内側の第1の筒状体110aの排出口117aからは廃電池T1が排出され、中間の第2の筒状体110bの排出口117bからは廃電池T2が排出され、最も外側の第3の筒状体110cの排出口117cからは廃電池T3が排出されることとなる(
図1を参照)。ここで、前記通過孔の大きさや形状は、分別する廃電池の形状により適宜変更すればよい。例えば、更にボタン廃電池が混在しており、このボタン廃電池をも分別する場合は、
図3に示すように、第3の筒状体110cの外側に更に第4の筒状体110dを第3の筒状体110cの外周に配置し、ボタン電池の高さ若しくは直径のうち小さいほうの寸法(例えば、CR2042型ボタン廃電池:厚さ3.2mm、直径20.0mmのときは、厚さ3.2mm)を基準として、最外周の通過孔(図示せず)の幅をそれよりも小さい幅にすればよい。これにより、前記ボタン廃電池は第4の筒状体110dの排出口117dから排出され、それよりも小さい廃電池やゴミ等の不要物は最外周の通過孔を通過して排出されることとなる。
【0054】
本実施形態の廃電池分別機S1は、様々な形状の廃電池が混在しているときに、廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別するために使用する。ここでは、その一例として、上述の円筒形状の廃電池T1,T2,T3が混在しており、これらを形状規格ごとに分別する場合を例に説明する。前記筒状体110a,110b,110cは、モータM1により駆動軸111b、111bを介して回転する駆動車輪111a,,,111aにより駆動され、回転軸P1,P1を中心に回転動作している。使用者は、廃電池T1,T2,T3が混在した大量の廃電池を、その形状を気にすることなく、まとめて投入口118に投入する。廃電池が大量すぎる場合は、小分けしながら所定の時間間隔で投入してもよい。
【0055】
前記投入口118に投入された廃電池(すべての廃電池)は、最も内側の第1の筒状体110aの内部に導入され、第1の筒状体110aの回転動作によりガイド羽根119aに沿って排出口117aの方向に移動する。その移動過程において、通過孔113aを通過するサイズの廃電池T2,T3は、通過孔113aを通過して、その外側に配された第2の筒状体110bに移動し、通過孔113aを通過しない形状の廃電池T1は、第1の筒状体110aの内部に残留する。残留した廃電池T1は、第1の筒状体110aの排出口117aから排出される(
図7、(
図8(a)を参照))。前記通過孔113aを通過して第2の筒状体110bの内部に移動した廃電池T2,T3は、同様に第2の筒状体110bの回転動作によりガイド羽根119bに沿って排出口117bの方向に移動する。その移動過程において、通過孔113bを通過するサイズの廃電池T3は、通過孔113bを通過して、その外側に配された第3の筒状体110cに移動し、通過孔113bを通過しないサイズの廃電池T2は、第2の筒状体110bの内部に残留する。残留した廃電池T2は、第2の筒状体110bの排出口117bから排出される(
図7、
図8(b)を参照)。同様に、前記通過孔112bを通過して第3の筒状体110cの内部に移動した廃電池T3は、第3の筒状体110cの回転動作によりガイド羽根119cに沿って排出口117cの方向に移動する。その移動過程において、通過孔113cを通過するサイズの廃電池やゴミ等は、通過孔113cを通過し、通過孔113cを通過しないサイズの廃電池T3は、第3の筒状体110cの内部に残留する。残留した廃電池T3は、第3の筒状体110cの排出口117cから排出される(
図7、
図8(c)を参照)。前記通過孔113cからは、通過孔113cを通過するサイズの廃電池や、細かなゴミ等の不要物が排出される。
【0056】
本実施形態によれば、様々な大きさや形状の廃電池が混在していても、複数の筒状体110a,110b,110cの排出口117a,117b,117cから形状ごとに分けて排出されることとなる。すなわち、上記例では乾廃電池T1,T2,T3をその所定の形状や大きさごとに分別することができるとともに、廃電池T3よりも小さなサイズの廃電池(コイン型廃電池等)が混在していても、これら廃電池を4種類に分けて排出できる。例えば、国際規格R6,R14,R20の円筒形状の乾廃電池が混在していても、これらをまとめて最も内側の第1の筒状体110aに入れるだけで、形状規格別に分別して排出することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ガイド羽根119a,119b,119cが設けられていることによって、筒状体110a,110b,110cが水平姿勢であっても、廃電池が筒状体110a,110b,110cの内部に残ることなく排出口117a,117b,117cから確実に排出される。最も内側の第1の筒状体110aに廃電池を連続して次々と投入しても、廃電池はガイド羽根119a,119b,119cに送られて排出口117a,117b,117cから連続して次々と排出され、逐次処理が可能となる。なお、ガイド羽根119a,119b,119cの配置構成を変えることによって、排出口117a,117b,117cの排出位置を変えることが可能である。
【0058】
例えば単一形や単二形のような円筒形状の廃電池T1,T2,T3などは前記筒状体110a,110b,110c内で横に倒れた姿勢となるが(
図7)、筒状体110a,110b,110cの各胴壁に長細い通過孔113a,113b,113cを多数設けることができ、横に倒れた姿勢となる廃電池T1,T2,T3などを通過させやすい。
【0059】
本実施形態では、前記筒状体110a,110b,110cの胴壁が、互いに所定間隔で配されるレール状部材114a,114b,114cにより形成されており、通過孔113a,113b,113cがこれらのレール状部材114a,114b,114cの間に形成される間隙により形成されていることで、通過孔113a,113b,113cが胴壁全体に形成されることになり、廃電池T1,T2,T3などが筒状体110a,110b,110cのどこに位置しても、この間隙を通過可能な形状の廃電池であれば確実に通過することとなる。また、筒状体110a,110b,110c内の廃電池T1,T2,T3などは、横に倒れた姿勢となるが、筒状体110a,110b,110cの回転動作によりレール状部材114a,114b,114cの間隙に嵌るような向きに揃えられ、通過孔113a,113b,113cを通過しやすい(
図7を参照)。
【0060】
また、上述のように、内側の筒状体の排出口のほうが、それよりも外側に配された筒状体の排出口よりも突出した位置に設けられているため、すなわち、排出口117a、排出口117b、排出口117cの順に、排出口を段階的に少しずつ位置をずらして階段状に配列しているため、それぞれの排出口117a、排出口117b、排出口117cから排出される廃電池を隔離した状態で回収できる。
【0061】
上述のように、本実施形態の廃電池分別機S1によれば、様々な形状の廃電池T1,T2,T3などが混在していても、複数の筒状体110a,110b,110cの排出口117a,117b,117cから形状ごとに分けて排出され、廃電池T1,T2,T3などを確実に形状ごとに分別することができ、したがって大量処理が可能であり、大量に使用されて廃棄される単一形廃電池や単二形廃電池の分別にも好適である。
【0062】
また、前記筒状体110a,110b,110cは、入れ子構造に部分的に重なる位置で配されているので、従来のように異なる形状の通過孔を形成したエリアを横並びに配列する場合と比較して、小型化を図ることができる。上述したように、廃電池には多様な形状があり、多様な形状の廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別するときは、複数の筒状体の各々に専用の筒状体を配置することになり、従来のように横並びに配置する構成では装置が大型化するが、本実施形態では、前記筒状体110a,110b,110cを入れ子構造に部分的に重なる位置で配することで、重なった領域の分だけ小型化を図ることができる。
【0063】
さらなる装置の小型化を図るためには、複数の筒状体を伸縮可能に構成しても良い。すなわち、筒状体110a,110cを長手方向に伸縮可能とし、使用する際には、筒状体110a,110cを伸ばして排出口117a,117bを突出させ(
図9(a)を参照)、その他のときは筒状体110a,110cを縮ませ第3の筒状体110cの中に収納する(
図9(b)を参照)構成としてもよい。
図9に示す例では、棒状のレール状部材114a,114b,114cを、それぞれ筒状のレール部材1141a,1141b,1141cに差し込む構成としており、これにより、廃電池分別機S1をコンパクトにまとまることができ、更に、小型化を図ることができる。また、棒状のレール状部材114a,114b,114cの伸縮度合いを調節することにより排出口117a,117b,117cの位置を調整することも可能である。
【0064】
また、本実施の形態において、例えば単二形の乾廃電池T2と単三形の乾廃電池T3の二種類の廃電池を分ければ良い場合には、第1の筒状体110aの排出口117を、前記廃電池T2,T3の投入口に兼用して、第2の筒状体110aの排出口117bからは単二形の乾廃電池T2を排出させ、第3の筒状体110cの排出口117cからは単三形の乾廃電池T3を排出させる構成とすることができる。このような使用の仕方によれば、投入口118を、設けなくてなくても使用可能である。
【0065】
次に、本発明の廃電池分別機S1を備える廃電池処理装置S10の実施の形態例を説明する。
図4は、廃電池処理装置S10を説明する概略側面図である。廃電池処理装置S10は、廃電池分別機S1を使用した処理装置の一例であり、加熱処理を伴った廃電池のリサイクル処理に用いられる。本実施形態の廃電池処理装置S10は、廃電池分別機S1と、穿孔処理機S2と、加熱装置S3とを備える。
【0066】
本実施形態の廃電池分別機S1は、投入口118には、廃電池を送るシュータ120が設けられており、それ以外は、上述の実施の形態のものとほぼ同じであり、同一符号を用いて説明を省略する。
【0067】
本実施形態の穿孔処理機S2は、前記廃電池分別機S1の排出口117a,117b,117cの側に配置されており、廃電池分別機S1から排出される廃電池に孔をあける機能を有する。穿孔処理機S2は、廃電池分別機S1の複数の排出口117a,117b,117cに対応させて、複数の筒状体の排出口117a,117b,117cの各々専用に穿孔手段210a,210b,210cを備える。
【0068】
前記複数の穿孔手段210a,210b,210cは、廃電池に孔をあける機能を有するものであれば、どのような構成でもよいが、本実施の形態では、外周にカッターを備える回転刃211a,211b,211cと、これら回転刃211a,211b,211cの中心に配される回転軸212と、回転軸212を介して回転刃211a,211b,211cを回転駆動するモータM2とを備える(
図4)。この穿孔手段210a,210b,210cは、複数の筒状体の各々が筐体213a,213b,213cの内部に配されている。筐体213a,213b,213cは、廃電池分別機S1の側の受入口215a,215b,215cと加熱装置S3の側の排出口216a,216b,216cを備え、底面214a,214b,214cは受入口215a,215b,215cが高く、排出口216a,216b,216c側が低い傾斜面となっている。回転刃211a,211b,211cは、底面214a,214b,214cと間隙Gを設けて配されている(
図5を参照)。なお、底面214a,214b,214cはメッシュ状とし、廃電池内部から排出された電解液を底面から排出させ、その下方に配される容器(図示せず)に貯留させる構成としてもよい。
【0069】
前記穿孔手段210a,210b,210cは、それらの位置調整が可能となっている。詳しくは、中心軸212が底面214a,214b,214cと接離する方向に位置移動可能となっており、これにより、回転刃211a,211b,211cを底面214a,214b,214cと接離する方向に移動させ、間隙Gの幅を調整可能となっている。
【0070】
前記廃電池分別機S1の複数の排出口117a,117b,117cと、穿孔処理機S2の受入口215a,215b,215cとの間には、穿孔処理機S2の側が低く傾斜した経路R1a,R1b,R1cが配されている。経路R1a,R1b,R1cの受入口215a,215b,215c側の端部は、複数の排出口117a,117b,117cの下方に間隔を設けて配されており、受入口215a,215b,215c側の端部は、受入口215a,215b,215cに接するように配されている。
【0071】
前記加熱装置S3は、内部温度を設定温度に調節することが可能な高温炉であり、穿孔処理機S2から排出された廃電池を受入口310から受け入れて、所定温度に加熱する機能を備える。加熱装置S3と穿孔処理機S2との間には加熱装置S3側が低く傾斜する経路R2が配されており、穿孔処理機S2の排出口216a,216b,216cから排出される廃電池を加熱装置S3の受入口310を介して内部に受け入れ可能となっている(
図4)。また、前記廃電池処理装置S10は、廃電池分別機S1の最も外側の第3の筒状体110cの通過孔113cから排出されるゴミ等の不要物を貯留する貯留部410を備える。第3の筒状体110cと貯留部410の間には貯留部410の側に低く傾斜する経路R3が配されており、経路R3の一方側端部は、第3の筒状体110cの胴体部の下方において通過孔112cから排出される廃電池を受け止め可能なサイズとするため幅広に配され、貯留部410に向かって廃電池を集めるように少しずつ幅を狭めて設けられており、他方側端部は貯留部410に連結されている(
図4)。
【0072】
次に、廃電池処理装置S10の動作説明を行う。前記廃電池分別機S1の動作は上述したとおりであるのでその説明を省略し、廃電池分別機S1から形状ごとに廃電池が分別されて排出されたところから説明するものとする。
【0073】
使用者は、予め、前記穿孔処理機S2の穿孔手段210a,210b,210cの位置調整を行う。ここでは、第1の筒状体110aに対応する穿孔手段210aを廃電池T1の直径に合わせ、第2の筒状体110bに対応する穿孔手段210bを廃電池T2の直径に合わせ、第3の筒状体110cに対応する穿孔手段210cを廃電池T3の直径に合わせ、それらの間隙Gが複数の形状規格の直径よりも狭くなるようにして、廃電池に孔をあけることが可能な程度に調整しておく(
図5を参照)。
【0074】
前記廃電池分別機S1の第1の筒状体110aの排出口117aから排出された廃電池T1は、経路R1aの上に落下し、経路R1aの傾斜により経路R1aを転がって、穿孔処理機S2の受入口212aを介して筐体213a内に受け入れられ、そのまま筐体213aの底部214aを転がり移動する。廃電池T1が穿孔手段210aの位置に達すると、穿孔手段210aにより孔があけられ、廃電池T1の内部から電解液が流出する。電解液が流出した廃電池T1は、底部214aを転がり移動し、経路R2を経由して、加熱装置S3に到達する。加熱装置S3には受入口310が設けられており、廃電池T1は受入口310を介して加熱装置S3の内部に受け入れられ、加熱処理される(
図5を参照)。同様に、第2の筒状体110bの排出口117bから排出された廃電池T2は穿孔手段210bにより孔があけられ、回転筒状態110cの排出口117cから排出された廃電池T3は穿孔手段210cにより孔があけられ、廃電池内部から電解液が流出した状態にて加熱装置S3にて加熱処理される。第3の筒状体110cの通過孔112cを通過したゴミ等の不要物は、経路R3を転がり移動して、貯留部410に貯留される(
図4)。
【0075】
上述のように廃電池T1,T2,T3にあけられた孔から内部の電解液が流出する状態となることで、加熱による破裂を防止でき、安全性を高めることができる。また、加熱装置S3における加熱温度を従来よりも低くすることや、加熱時間を短縮することができ、効率的かつ経済的である。すなわち、廃電池のリサイクル処理においては、廃電池を加熱処理することにより、亜鉛や鉛、マンガンや鉄などの使用材料を揮発還元させたり、溶融冷却したりして、分離回収するが、廃電池に孔をあけて廃電池内部の電解液を流出させることにより、従来よりも加熱温度を低くしたり、加熱時間を短縮したり、加熱エネルギーや処理時間の効率化を図ることができる。廃電池処理装置S10は、この処理方法を実現するものであり、加熱エネルギーや加熱処理時間の効率化を図ることができ、また、大量処理が可能となる。特に、単一形電池T1や単二形電池T2のように大量に廃棄される電池に好適である。すなわち、使用者は、様々な形状が混在する廃電池を、廃電池分別機S1の最も内側の第1の筒状体110aに投入するだけで、廃電池分別機S1によって廃電池が形状ごとに分別され、穿孔処理機S2にて廃電池に孔があけられて電解液が流出する状態となり、加熱装置S3にて加熱されるため、大量処理を可能としている。
【0076】
なお、本発明の廃電池分別機S1や廃電池処理装置S10は、上記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更可能である。例えば、筒状体の通過孔113a,113b,113cは、分別する廃電池に応じた形にすればよく、例えば、ボタン廃電池であれば、その形状に合わせた円形の通過孔でも良く、その他、楕円形や四角形などにしても良い。
【0077】
また、上記実施の形態では、筒状体110a,110b,110cを円筒形状として説明したが、例えば、内部中空の三角柱や四角柱等の多角柱や、断面楕円形の円筒形状や、その他、上述の動作をする構成であれば、どのような形状でも対応可能である。また、第1の筒状体110aと第2の筒状体110b等の形状は、同じ形状で説明したが、異なった形状であっても良く、例えば、内側の第1の筒状体110aは円筒状であるが、内側の第2の筒状体110bは断面三角形状や四角形状のような多角形状でも良い。本発明では、同じ形状で大きさの違う複数の筒状体で構成することにより、コンパクトにできる利点がある。
【0078】
また、前記複数の筒状体の排出口117a,117b,117cは必ずしも端部に設ける必要はなく、例えば、筒状体の胴部に扉付きの開口部を設け、分別処理が終了した後に、開口部の扉を開き、内部から残留廃電池を取り出す構成としてもよい。なお、上記実施の形態のように、端部を開口させることにより排出口を設ける構成とすることで、分別された廃電池がそのまま排出口から次々と排出されることなり、逐次処理が可能となる。
【0079】
また、前記最も内側の排出口117aを投入口として、ここから上記廃電池T1,T2,T3を投入して、第1の回転筒状態110aに単一形の廃電池T1を残し、第2の筒状体には単二形の廃電池T2を残し、第3の筒状体には単三形の廃電池T3を残して、それ以外の小さな廃電池を筒状体の通過孔113cから排出させる構成としてもよい。この場合は、投入口を設けなくともよい。
【0080】
前記筒状体110a,110b,110cは、傾斜姿勢にて配置される構成としてもよい。
図6は、前記筒状体が傾斜姿勢の場合の実施の形態を説明する説明図である。上述した実施の形態と装置構成は同じであるが、筒状体110a,110b,110cは、投入口118の側が高く、排出口117a,117b,117cの側が低くなるように、基台180に支持されて傾斜姿勢となっている。内部の廃電池は、この傾斜により投入口118から排出口117a,117b,117cに向かって移動しながら、分別される。内部の廃電池が確実に排出される程度の傾斜角度を設定することで、ガイド羽根119が不要となる。前記筒状体110a,110b,110cを傾斜姿勢としつつ、筒状体110a,110b,110cの排出口117a,117b,117cの高さ位置を同じ高さ位置(符号P2−P2で示す水平線上の位置)に設定している。したがって、これらの排出口117a,117b,117cから廃電池T1,T2,T3を受けて処理する穿孔処理機210a,210b,210cの高さ位置を揃えることができる構成となっている。なお、廃電池分別機S1の傾斜角度を調節する傾斜角度調節機構を配置し、適宜、傾斜角度を調節してもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、穿孔処理機S2と加熱装置S3とを有する廃電池処理装置S1を用いて、穿孔処理機S2での穿孔処理の前工程として廃電池分別機S1による分別処理を行う例を説明したが、廃電池分別機S1は他の処理のために利用することが可能である。例えば、上記特許文献2に記載されているように、リサイクルのために廃電池の端部をカットした後に胴部にスリットを入れて外筒を除去し、内容物を展延するとともに有用物と廃棄物を分離する処理に用いてもよく、この場合は、廃電池分別機S1により廃電池をその所定の形状や大きさごとに分別した後、複数の形状に合わせて専用に設けられたカッターを有し、廃電池の端部をカットしたり、胴部にスリットを入れたりする装置に複数の筒状体の各々の形状の廃電池を送り出すようにする構成等が挙げられる。
【0082】
また、上記実施の形態では、処理対象として国際規格R6,R14,R20の円筒形状の廃電池を例に説明したが、処理対象はどのような形状の廃電池でもよく、前記筒状体の通過孔を、分別処理の対象となる廃電池の形状に合わせて設ければよい。例えば、円筒形、ボタン形、コイン形、角形、平形、その他の形状の廃電池でも良いし、その大きさも問わない。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。