(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は車両用シートのシートバック上端部に設けられるヘッドレストのインナーカバー20を示す斜視図であり、
図2は本発明に係る前後位置調整装置100の一例を示す斜視図である。
図1において符号10は、ヘッドレストピラーを示す。このヘッドレストピラー10は、左右に離間する一対のサイドピラー11,11と、これらサイドピラー11,11の上端部間に一体形成される上部ピラー12とを備える。上部ピラー12は、中央部12aがサイドピラー11,11の上端部よりも上斜め前方に位置するように屈曲した形状となっている。
この上部ピラー12の中央部12a上部に、前後位置調整装置100が取り付けられている。また、この前後位置調整装置100は、前記インナーカバー20の内部に収納されている。
前記インナーカバー20は、車両用シートの前後方向の前側に位置する前側カバー30と、後側に位置する後側カバー40とに分割形成されている。
また、インナーカバー20は、図示しないパッド64によって被覆されるものとする。
【0014】
前後位置調整装置100は、
図2および
図3に示すように、前記ヘッドレストピラー10に固定される下部ブラケット110と、前記インナーカバー20に固定される上部ブラケット120と、これら下部ブラケット110と上部ブラケット120とにそれぞれ枢結されるとともに略平行に配置され、前記上部ブラケット120を、車両用シートの前後方向に沿って移動させる前方および後方リンク130,140と、前記上部ブラケット120の前後移動をロックするロック機構と、を備えている。
なお、前記インナーカバー20の側面には、ロック機構によるロックを解除するための操作部であるボタン61が設けられている。また、ボタン61は、このボタン61を保持するとともに該ボタン61周囲を装飾する装飾部63によってインナーカバー20に保持されている。
【0015】
下部ブラケット110は、
図2,
図3および
図7に示すように、互いに対向する一対の側壁111,112と、これら側壁111,112の前側端部間に一体的に設けられる前面壁113と、前記側壁111,112の下側端部間に一体的に設けられる下面壁115と、前記側壁111,112と前面壁113と下面壁115とで形成される角部を、該角部の長さ方向に凹状に切り欠くことによって形成された切欠凹部116とを有している。
前記切欠凹部116は、前記上部ピラー12の中央部12aの外周面に合わせて湾曲して形成されており、該中央部12aに密着するように設定されている。
また、前記側壁112の後側端部には、後述する付勢手段154の下端部が取り付けられる取付部114が、側壁112表面から側方に突出するようにして一体的に設けられている。
【0016】
上部ブラケット120は、
図2,
図3,
図5および
図7に示すように、ブラケット本体121と、このブラケット本体121の前端部に一体的に設けられるとともに、前記インナーカバー20の前側カバー30の内壁面に固定される前面固定部126とを有している。
また、前記ブラケット本体121は、前記前面固定部126と直交して設けられるとともに、互いに対向する一対の側壁122,123を備えている。
これら一対の側壁122,123は、前端部に向かうにつれて斜め上方に徐々にせり上がるような屈曲形状となっており、ブラケット本体121の前端部に設けられる前面固定部126は、各枢結部やロック機構が設けられるブラケット本体121の部位よりも上方に位置している。
前面固定部126は、前記インナーカバー20の前側カバー30の内壁面に固定されるプレート状のものであり、中央部には剛性を高めるためのビード126aが形成されている。
【0017】
また、前記両側壁122,123の周縁部にはフランジ127が形成されている。
さらに、前記側壁123の中央部付近の上部に位置するフランジ127には、後述する付勢手段154の上端部が取り付けられる取付部128が、フランジ127から側方に突出するようにして一体的に設けられている。
【0018】
前方リンク130は車両用シートの前方に配置されており、後方リンク140は後方に配置されている。
これら前方リンク130および後方リンク140は、
図2〜
図4,
図7に示すように、前記下部ブラケット110と上部ブラケット120とにそれぞれ枢結されるとともに略平行に配置されていることから、これら前方リンク130および後方リンク140と、前記下部ブラケット110と、前記上部ブラケット120とを含む前後位置調整装置100は、いわゆる“平行リンク機構”として構成されていることになる。
なお、本実施の形態においては、前方リンク130および後方リンク140を略平行に配置したが、これに限るものではなく、例えばハの字型に配置してもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0019】
また、前方リンク130および後方リンク140は、それぞれ、開口部130a,140aを有する断面略コ字型に形成され、これら前方リンク130および後方リンク140は、開口部130a,140aを前方に向けるようにして配置されている。
前方リンク130は、断面略コ字型に形成されることによって、互いに対向する一対の側壁131,135と、これら側壁131,135の後側端部間に一体的に設けられる中央壁136とを備えている。また、この前方リンク130の側壁131には、前方リンク130および後方リンク140の前方への回転を規制するためのストッパー部134が前方に突出するようにして一体的に設けられている。
後方リンク140は、断面略コ字型に形成されることによって、互いに対向する一対の側壁141,142と、これら側壁141,142の後側端部間に一体的に設けられる中央壁143とを備えている。また、この中央壁143には、下面壁115に当接するストッパー部144が一体的に設けられている。
【0020】
また、
図2,
図3,
図7に示すように、前記下部ブラケット110と前方リンク130との枢結部は、下部ブラケット110と後方リンク140との枢結部よりも上方に位置している。
さらに、前記上部ブラケット120と前方リンク130との枢結部は、上部ブラケット120と後方リンク140との枢結部よりも上方に位置している。
すなわち、各ブラケット110,120と各リンク130,140との枢結部は、後方よりも前方の方が高い位置に設けられ、斜めに並んで配置された状態となっている。これに伴い、前記前方リンク130も、前記後方リンク140より高い位置に設けられることになり、これら前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端の位置にある場合には、
図7(c)に示すように、後方リンク140の上に、前方リンク130が重なり合うような状態となる。
【0021】
また、各ブラケット110,120と各リンク130,140との枢結部が斜めに並んで配置されたことに伴い、前記上部ブラケット120も斜めに設けられている。
また、この上部ブラケット120のブラケット本体121の前端部は、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端の位置にある場合に、前記上部ブラケット120と前方リンク130との枢結部よりも前方に突出している。より詳細には、
図7(c)に示すように、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端の位置にある場合に、前記前面固定部126が、水平方向において前後位置調整装置100自体の最前部に位置しており、前記ブラケット本体121の後端部が、水平方向において前後位置調整装置100自体の最後部に位置している。
【0022】
なお、各枢結部は、各ブラケット110,120および各リンク130,140を貫通するリベット孔150a,151a,152a,153aにリベット150,151,152,153を挿通させ、該リベット150,151,152,153の挿通方向先端をかしめることによって構成されている。
すなわち、前記下部ブラケット110と前方リンク130との枢結部は、これら下部ブラケット110と前方リンク130とを貫通するリベット孔150aに、リベット150が挿通され、該リベット150の挿通方向先端がかしめられることによって構成されている。
また、前記下部ブラケット110と後方リンク140との枢結部は、これら下部ブラケット110と後方リンク140とを貫通するリベット孔151aに、リベット151が挿通され、該リベット151の挿通方向先端がかしめられることによって構成されている。
また、前記上部ブラケット120と前方リンク130との枢結部は、これら上部ブラケット120と前方リンク130とを貫通するリベット孔152aに、リベット152が挿通され、該リベット152の挿通方向先端がかしめられることによって構成されている。
また、前記上部ブラケット120と後方リンク140との枢結部は、これら上部ブラケット120と後方リンク140とを貫通するリベット孔153aに、リベット153が挿通され、該リベット153の挿通方向先端がかしめられることによって構成されている。
【0023】
また、前記上部ブラケット120と下部ブラケット110との間には、
図2および
図3に示すように、前記上部ブラケット120を下部ブラケット110側に引き寄せる方向に付勢する付勢手段154が設けられている。
この付勢手段154としてはコイルばねが用いられており、このコイルばね154の下端部は、前記下部ブラケット110に設けられた取付部114に取り付けられており、上端部は、前記上部ブラケット120に設けられた取付部128に取り付けられている。
なお、このコイルばね154によって下部ブラケット110と上部ブラケット120とが互いに引き寄せられているため、ロック機構によって上部ブラケット120の移動をロックしない状態においては、
図7(c)に示すような、後方リンク140の上に、前方リンク130が重なり合うように近接するとともに、上下ブラケット110,120同士が近接する状態となる。
【0024】
ロック機構は、
図2〜
図7に示すように、前記前方リンク130の上部ブラケット120と対向する側壁131に、該前方リンク130の回転方向に沿って並設される複数のロック用孔133…と、前記上部ブラケット120の前方リンク130と対向する側壁122のうち、前記前方リンク130の回転に伴う複数のロック用孔133…の回転軌道上に設けられるピン貫通孔124と、このピン貫通孔124を貫通した状態を保持しつつ、先端部が、前記複数のロック用孔133…に抜き差し操作されるロックピン部161を少なくとも含むロック部材160と、を有している。
【0025】
また、このロック機構は、前記前方リンク130の側壁131の上端部に一体的に設けられるとともに前記複数のロック用孔133…が形成されたロックプレート132を有している。
このロックプレート132は、前記前方リンク130の側壁131よりも幅広に、かつ該側壁131の前側縁よりも前方に突出するようにして形成されている。また、ロックプレート132に対し、前記複数のロック用孔133…は、このロックプレートの幅方向一端から他端にかけて、かつ前記前方リンク130の回転方向に沿って並設されるようにして形成されている。
前記複数のロック用孔133…は、前記ロックプレート132に対し、該ロックプレート132の厚み方向に貫通するようにして形成されている。また、本実施の形態のロック用孔133は、前記ロックプレート132に対して3つ設けられている。ただし、ロック用孔133の数は複数であればよく、これに限定されるものではない。
【0026】
なお、ロックプレート132および複数のロック用孔133…はロック機構を構成するものであるため、ロックプレート132が設けられた前方リンク130には、後方リンク140に比して外部からの力を受けやすい場合がある。
そこで、前方リンク130の上端部には、
図3に示すように、前記ロックプレート132を含む側壁131の上端部と、前記中央壁136の上端部とに一体形成される補強壁137が設けられている。すなわち、前記前方リンク130を作製するにあたり、前記ロックプレート132を含む側壁131と中央壁136と補強壁137とは、前方リンク130の材料である鋼材を絞り加工するなどして形成されている。なお、側壁131と対向する側壁135は、前記中央壁136と一体形成され、折り曲げ加工されるなどして形成されている。
【0027】
前記ピン貫通孔124は、
図5に示すように、前記上部ブラケット120のブラケット本体121の側壁122に、該側壁122を厚み方向に貫通するようにして形成されている。また、このピン貫通孔124は、側壁122に、前記前方リンク130に設けられた複数のロック用孔133…の回転軌道上の一点に位置するようにして設けられている。
【0028】
なお、この側壁122のピン貫通孔124が形成される部位は、外側に向かって段状に突出する段状部122aとなっている。この段状部122aは、側壁122を絞り加工するなどして形成されている。
さらに、
図2,
図3,
図5に示すように、前記上部ブラケット120のうち、前記側壁122と対向する側壁123にも、この側壁122と対称的に段状部123aが形成されている。
また、上部ブラケット120には、この上部ブラケット120を左右に貫通するシャフト挿通孔125が形成されている。より詳細には、このシャフト挿通孔125は、前記側壁122の段状部122aと、側壁123の段状部123aとの、それぞれ対向する位置に形成された孔を指している。このシャフト挿通孔125には、後述するシャフト部162が挿通される。
【0029】
前記ロック部材160は、
図3および
図5に示すように、前記ロックピン部161と、このロックピン部161と平行に配置されるとともに、前記上部ブラケット120を左右に貫通して形成されたシャフト挿通孔125に挿通されるシャフト部162と、これらロックピン部161とシャフト部162とを連結するとともに、前記ロックピン部161の抜き差し動作に伴って前記上部ブラケット120の側壁122から当接・離間する連結部167と、から構成されている。
また、これらロックピン部161と、シャフト部162と、連結部167とは一体形成されており、略J字型となるように構成されている。すなわち、ロック部材160は、一本の金属棒を屈曲加工することにより形成されている。
【0030】
前記ロックピン部161は、
図5および
図6に示すように、本体軸部161aと、この本体軸部161aの先端に設けられるとともに、ロックピン部161の軸方向先端に向かって縮径するテーパ部161bと、このテーパ部161bの先端に設けられるとともに、前記本体軸部161aよりも小径に設定された先端軸部161cとを有している。つまり、このロックピン部161の先端は段階的に縮径された構成となっている。
このようなロックピン部161の構成に対し、前記ロック用孔133の孔壁は、前記ロックピン部161のテーパ部161bを受けるテーパ受け面133aと、前記先端軸部161cを受ける先端受け面133bとからなる。
そして、前記ロックピン部161をロック用孔133に差し込むことにより、該ロックピン部161のテーパ部161bとロック用孔133の孔壁のテーパ受け面133aとを当接させることができるとともに、先端軸部161cと先端受け面133bとを当接させることができる。
【0031】
前記シャフト部162は、
図2,
図3,
図5に示すように、少なくとも前記上部ブラケット120を左右に貫通するとともに側壁122,123から側方に突出する程度の長さに形成されている。
また、シャフト部162には、このシャフト部162を、前記連結部167を上部ブラケット120の側壁122に当接させ、かつ前記ロックピン部161をロック用孔133に差し込む方向に付勢する付勢部材165が設けられている。
本実施の形態の付勢部材165としては、前記シャフト部162に嵌挿されるコイルばねが採用されている。すなわち、このコイルばね165は、前記側壁122側から挿入され、側壁123から突出するようにしてシャフト挿通孔125挿通された状態のシャフト部162の、側壁123側の突出部分に嵌挿されている。
【0032】
また、シャフト部162にはプッシュナット166が嵌挿されて固定されており、前記コイルばね165は、このプッシュナット166と前記側壁123との間に設けられた状態となっている。
つまり、プッシュナット166は、前記コイルばね165がシャフト部162から抜けないようにする抜け止め材として設けられている。また、シャフト部162自体を前記シャフト挿通孔125に沿って往復させても該シャフト挿通孔125から抜脱しないようにすることができる。
【0033】
また、
図5(a),(b)に示すように、このシャフト部162の、前記コイルばね165による付勢方向とは反対の方向へのストロークは、前記ロックピン部161がピン貫通孔124から抜脱するまでのストロークよりも短くなるように設定されている。
すなわち、前記ロックピン部161を、前記ピン貫通孔124とロック用孔133とに挿通させている時に、本体軸部161aを、前記ピン貫通孔124を貫通した状態にしたまま、先端軸部161cをロック用孔133から抜いたり、ロック用孔133に差し込んだりできるようになっている。
【0034】
さらに、上述のように前記側壁122には段状部122aが形成されており、この段状部122aにピン貫通孔124が形成されていることから、このピン貫通孔124は、段状部122aが無い部分よりも、該段状部122aの外側への突出長さ分、外側に位置していることになる。
すなわち、ピン貫通孔124は、ロックピン部161の先端側(先端軸部161c側)よりも、より基端側(本体軸部161aの連結部167側)に近い部分に位置することになる。
【0035】
なお、シャフト挿通孔125を構成する側壁122側の孔と、側壁123側の孔には、それぞれブッシュ163,164が嵌合されており、シャフト部162をスムーズに往復させることができるようになっている。
【0036】
また、前記シャフト部162の連結部167とは反対側の端部には、前記ボタン61が設けられており、ロックの解除動作を行う際には、このボタン61を押し込むことによってシャフト部162が、前記ロックピン部161を、ロック用孔133から引き抜く方向に移動するように設定されている。
【0037】
前記連結部167は、
図2および
図5に示すように、ロック部材160が略J字型に形成されることにより、両端部に、前記ロックピン部161とシャフト部162とがそれぞれ一体的に設けられる屈曲部167a,167aと、これら屈曲部167a,167a間に設けられる直線部167bとからなる。
ところで、このように連結部167が屈曲部167a,167aを有する形状の場合、前記ロックピン部161をピン貫通孔124に挿通させ、前記シャフト部162をシャフト挿通孔125に挿通させた時に、屈曲部167a,167aが、それぞれピン貫通孔124の縁部とシャフト挿通孔125の縁部とに引っ掛かることがある。これを防ぐために、前記上部ブラケット120の段状部122aには、
図5に示すように、外側に向かって突出するとともに、前記ロックピン部161のロック用孔133への差し込み時に、前記連結部167の直線部167bに少なくとも一点で当接する凸部122bが設けられている。
【0038】
この凸部122bは、本実施の形態においては前記段状部122aを絞り加工するなどして段状に形成されているが、これに限られるものではなく、例えば段状部122a表面から盛り上がる盛り上がり状の凸部としてもよいし、段状部122aの一部を切り起こしてなる切り起こし状の凸部としてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態のロック部材160は、上述のようにロックピン部161とシャフト部162と連結部167とが一体形成された略J字型のものを用いたが、これに限るものではなく、例えば各部161,162,167が一体化されていないものや、異なる機構を採用したものでもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
次に、以上のように構成された前後位置調整装置100の動作について説明する。
その動作は、
図7(a)〜(c)に示すように、前記前方リンク130および後方リンク140の回転に伴う上部ブラケット120の前後移動に基づくものである。
また、上部ブラケット120は、前記コイルばね154によって下部ブラケット110側に引き寄せられており、
図7(c)で示す状態が、前記位置調整されるヘッドレストの通常位置とされている。
【0041】
この通常位置では、前記前方リンク130および後方リンク140が、自身の回転範囲の最後端に位置している。また、前記上部ブラケット120の前面固定部126が、水平方向において前後位置調整装置100自体の最前部に位置しており、前記ブラケット本体121の後端部が、水平方向において前後位置調整装置100自体の最後部に位置している。また、前記後方リンク140の中央壁143に設けられたストッパー部144が、前記下部ブラケット110の下面壁115に当接している。
また、前記ロック部材160のロックピン部161は、前記ロックプレート132に形成された複数のロック用孔133…のうち、最も前側に位置するロック用孔133に差し込まれている。
【0042】
続いて、
図7(c)に示す状態から、
図7(b)に示す状態へと動作させる。
つまり、
図5(b)に示すように、前記ロック部材160のロックピン部161を、前記ピン貫通孔124に貫通させた状態を保持しつつ、ロック用孔133から引き抜くことによってロックを解除する。
続いて、前記前方リンク130および後方リンク140を前方(上方)へと回転させることによって、前記上部ブラケット120を前方へと移動させる。
そして、前記前方リンク130および後方リンク140を回転させて、前記ロックピン部161が、前記複数のロック用孔133…のうち、真ん中のロック用孔133の位置まで到達したら、
図5(a)に示すように、このロックピン部161を該真ん中のロック用孔133に差し込む。
【0043】
なお、前記ロックピン部161は、前記コイルばね165によってロック用孔133に差し込まれる方向に付勢された状態となっているので、いったんロックを解除した状態で上部ブラケット120を移動させ、ロックピン部161が次のロック用孔133の位置に差し掛かったら、このロックピン部161は、次のロック用孔133に、付勢力に応じて自動的に差し込まれることになる。
【0044】
また、ロックピン部161が、次のロック用孔133に、付勢力に応じて自動的に差し込まれる時は、ロックピン部161の先端軸部161cが、ロック用孔133のテーパ受け面133aに沿って摺動し、前記先端受け面133bの位置まで移動することになる。すなわち、前記テーパ受け面133aは、ロックピン部161をロック用孔133に差し込むためのガイドとして利用することができる。
【0045】
続いて、
図7(b)に示す状態から、
図7(a)に示す状態へと動作させる。
すなわち、ロック部材160によるロックを解除してから、前記上部ブラケット120を前方へと移動させる。
そして、前記前方リンク130および後方リンク140を回転させて、前記ロックピン部161が、前記複数のロック用孔133…のうち、最も後側のロック用孔133の位置まで到達したら、このロックピン部161を該後側のロック用孔133に差し込む。
この時、前記前方リンク130の側壁131に設けられたストッパー部134が、前記下部ブラケット110の前面壁113に当接しており、前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最前端の位置にある状態となる。したがって、前記上部ブラケット120の前端部も最前端の位置にある状態となっている。
【0046】
また、
図7(c)に示す状態から、
図7(b)に示す状態、
図7(a)に示す状態へと動作させるだけでなく、この反対の動作も可能であり、
図7(c)に示す状態から、直接、
図7(a)に示す状態へと動作させることも可能となっている。
【0047】
以上のようにして、前記上部ブラケット120は、
図7(a)に示す状態と、
図7(b)に示す状態と、
図7(c)に示す状態との間で前後位置を調整できるようになっている。このことから、上部ブラケット120の前面固定部126が固定されるインナーカバー20も、この上部ブラケット120の移動に応じて前後位置を調整できるので、ひいてはヘッドレスト自体の前後位置の調整も可能となる。
【0048】
本実施の形態によれば、前記下部ブラケット110と前方リンク130との枢結部は、前記下部ブラケット110と後方リンク140との枢結部よりも上方に位置しており、前記上部ブラケット120と前方リンク130との枢結部は、前記上部ブラケット120と後方リンク140との枢結部よりも上方に位置していることから、各ブラケット110,120と各リンク130,140との枢結部は斜めに並んで配置された状態となる。そして、前記前方リンク130および後方リンク140を回転させた時に、これら前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最前端の位置にある場合の上部ブラケット120は、最後端の位置にある場合の上部ブラケット120の位置よりも前側斜め上方に位置することになる。すなわち、前記上部ブラケット120を、ヘッドレストピラー10に対して前側斜め上方に移動させることができるので、上部ブラケット120のブラケット本体121に一体的設けられた前面固定部126も、この前面固定部126が固定されたインナーカバー20も同じ方向に移動させることができる。これによって、例えば従来のように、ヘッドレストを前後方向に大きく移動させるために、ヘッドレストの前後方向の大きさを大きくする必要がないので、従来に比して前後方向におけるヘッドレストの大きさを小さくできる。
また、前記ブラケット本体121の前端部は、前記上部ブラケット120と前方リンク130との枢結部よりも前方に突出しているので、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端から最前端へと回転した時に前方に突出したような状態となる。したがって、前記前面固定部126も前方に突出することになるので、ヘッドレスト自体を前方に突出させることができる。また、前記上部ブラケット120の前後位置をロック機構によって段階的に位置決めできるので、このロック機構によってヘッドレストの前後位置も調整できるようになっている。
これによって、ヘッドレストの大きさを、快適性および安全性を確保できる範囲内で小さくすることが可能となる。また、インナーカバーが、前方リンクおよび後方リンクが回転範囲の最後端の位置にある場合よりも下方に下がることがないので、乗員の頭部を確実に支持できる。
【0049】
また、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端の位置にある場合に、前記前面固定部126が装置100自体の最前部に位置しているので、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端から最前端へと回転した時には、より前方に突出したような状態となる。したがって、ヘッドレスト自体をより前方に突出させることができる。
また、前記前方リンク130および後方リンク140が回転範囲の最後端の位置にある場合に、前記ブラケット本体121の後端部が装置100自体の最後部に位置しているので、前記ブラケット本体121の後端部よりも後方に突出するような部材について考慮する必要が無く、このブラケット本体121の後端部をインナーカバー20の内壁面の近傍まで配置することが可能となる。これによって、インナーカバー20の後方側を、ブラケット本体の後端部が接触しない範囲でスリム化させることができる。
【0050】
また、前記ブラケット本体120は、前記前面固定部126と直交して設けられるとともに、互いに対向する一対の側壁122,123を備えており、これら両側壁122,123の周縁部にはフランジ127が形成されているので、このフランジ127によって両側壁122,123の剛性を高めることができる。これによって、前記ブラケット本体121自体の強度を高めることができるので、これら両側壁122,123と直交して設けられる前面固定部126によって乗員の頭部の荷重を確実に受けることができる。