特許第5767809号(P5767809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5767809-高熱伝導性樹脂成形体 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767809
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】高熱伝導性樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20150730BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20150730BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   C08J5/00CFD
   C08K7/00
   C08L67/00
   C08L77/00
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-503811(P2010-503811)
(86)(22)【出願日】2009年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2009053199
(87)【国際公開番号】WO2009116357
(87)【国際公開日】20090924
【審査請求日】2012年2月6日
【審判番号】不服2014-3386(P2014-3386/J1)
【審判請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2008-69797(P2008-69797)
(32)【優先日】2008年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 一昭
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 泰
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 大島 祥吾
【審判官】 小野寺 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−31359(JP,A)
【文献】 特開2008−270709(JP,A)
【文献】 特開2008−239899(JP,A)
【文献】 特開平11−77795(JP,A)
【文献】 特開2004−51852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01L 23/29 - 29/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂及び/又は熱可塑性ポリアミド系樹脂(A)、数平均粒径が19μm以上の鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)、を少なくとも含有し、(A)/(B)の体積比率が90/10〜30/70の範囲である樹脂組成物の成形体(LED実装用基板、および、LED実装用基板に配設されるリフレクターを除く)であって、
成形体中に含有される鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のうち、鱗片形状粒子が複数個凝集してなる凝集粒子の割合が15%以下であり、
成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように成形された成形体において、厚み1.3mm以下の面における面方向で測定された熱拡散率が厚み方向で測定された熱拡散率の2倍以上であり、かつ成形体の面方向で測定された熱拡散率が0.5mm/sec以上であり、さらに成形体の体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上であることを特徴とする、熱拡散異方性を有する高熱伝導性樹脂成形体。
【請求項2】
射出成形法により成形された成形体であることを特徴とする、請求項1に記載の熱拡散異方性を有する高熱伝導性樹脂成形体。
【請求項3】
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)の数平均粒径が30μm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高熱伝導性樹脂成形体。
【請求項4】
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のタップ密度が0.6g/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高熱伝導性樹脂成形体。
【請求項5】
成形体の面方向における熱拡散率が成形体の厚み方向の熱拡散率の4倍以上であり、かつ成形体の面方向における熱拡散率が1.0mm/sec以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高熱伝導性樹脂成形体。
【請求項6】
得られる成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように設計された金型を用いて射出成形することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性と電気絶縁性とを両立させ、なおかつ成形体の面方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率と比べ高いため、電子機器より発生するヒートスポットを緩和しうる効果を有する、高熱伝導性樹脂成形体に関する。更に詳しくは、高熱伝導性樹脂でありながら低密度であり、なおかつ薄肉成形体での射出成形性が良好なため、携帯型電子機器の薄肉化や軽量化に貢献しうる、樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。高熱伝導性無機化合物としては、グラファイト、炭素繊維、低融点金属、アルミナ、窒化アルミ、などの高熱伝導性無機物を、通常は30体積%以上、さらには50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。
【0003】
これら樹脂組成物の中でも、グラファイト、炭素繊維、低融点金属、などを用いたものは、比較的高熱伝導性の樹脂成形体が得られるものの、得られる樹脂成形体が導電性を有してしまうため、金属との差別化が困難であり用途は限られている。
【0004】
一方アルミナを用いたものは、電気絶縁性と高熱伝導性とを両立できるが、アルミナが樹脂と比べ高密度であるため、得られる組成物の密度も高くなり、携帯型電子機器の軽量化要請に答えるのは困難である上、熱伝導率もあまり向上しないという課題がある。また窒化アルミを用いると比較的高熱伝導率の組成物が得られるが、窒化アルミの加水分解性などが懸念される。
【0005】
さらには、これらフィラーを高充填した熱可塑性樹脂組成物は、フィラー高含有であるが故に射出成形性が大幅に低下してしまい、実用的な形状の金型やピンゲートを有する金型では射出成形が非常に困難であるという課題がある。フィラーを高充填した高熱伝導性熱可塑性樹脂の射出成形性を向上させるため、例えば特許文献1では室温で液体の有機化合物を添加する方法が例示されている。しかしながらこのような方法では、射出成形時に液体の有機化合物がブリードアウトし、金型を汚染するなどの課題がある。その他種々の成形性改良法が検討されているが、未だ有効な手法が見出されていないのが現状である。
【0006】
また、このような高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を携帯用電子機器の外装樹脂用途に用いようとしたとき、高熱伝導性であるが故に機器内部のCPUなどで発生する局所的な高熱をそのまま外部へ伝えてしまうため、機器の外部がすぐに非常に高温となり、人体への接触による火傷などの問題が生じるかもしれないという懸念もある。
【特許文献1】特開2003−41129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み、高熱伝導性、電気絶縁性、低密度、射出成形性良好、などの優れた特性を有した熱可塑性樹脂組成物を用いて携帯用電子機器の外装材料を射出成形した際、成形体の厚み方向にはあまり熱を伝えず、むしろ成形体の面方向に高熱伝導性を付与するという困難な課題を実現させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、高熱伝導性、電気絶縁性、低密度、薄肉成形体における射出成形性、を全て両立させ、なおかつ得られる成形体に熱伝導異方性を容易に付与しうる方法について鋭意検討した結果、特定構造と特定形状を有する六方晶窒化ホウ素粉末を樹脂と併用することで、目的の成形体を容易に成形しうることを見出し、本発明にいたった。
【0009】
すなわち本発明は、
熱可塑性ポリエステル系樹脂及び/又は熱可塑性ポリアミド系樹脂(A)、数平均粒径が15μm以上の鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)、を少なくとも含有し、(A)/(B)の体積比率が90/10〜30/70の範囲である樹脂組成物の成形体であって、成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように成形された成形体において、厚み1.3mm以下の面における面方向で測定された熱拡散率が厚み方向で測定された熱拡散率の2倍以上であり、かつ成形体の面方向で測定された熱拡散率が0.5mm/sec以上であり、さらに成形体の体積固有抵抗値が1010Ω・cm以上であることを特徴とする、熱拡散異方性を有する高熱伝導性樹脂成形体(〔1〕)であり、
射出成形法により成形された成形体であることを特徴とする、〔1〕の熱拡散異方性を有する高熱伝導性樹脂成形体(〔2〕)であり、
高熱伝導性樹脂成形体中に含有される鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のうち、鱗片形状粒子が複数個凝集してなる凝集粒子の割合が15%以下であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕の高熱伝導性樹脂成形体(〔3〕)であり、
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)の数平均粒径が30μm以上であることを特徴とする、〔1〕〔3〕のいずれかの高熱伝導性樹脂成形体(〔4〕)であり、
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のタップ密度が0.6g/cm以上であることを特徴とする、〔1〕〔4〕のいずれかの高熱伝導性樹脂成形体(〔5〕)であり、
成形体の面方向における熱伝導率が成形体の厚み方向の熱伝導率の4倍以上であり、かつ成形体の面方向における熱拡散率が1.0mm/sec以上であることを特徴とする、〔1〕〔5〕のいずれかの高熱伝導性樹脂成形体(〔6〕)であり、
得られる成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように設計された金型を用いて射出成形することを特徴とする、〔1〕〔6〕のいずれかの高熱伝導性樹脂成形体の製造方法(〔7〕)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法を用いることにより、携帯用機器の内部で発生するヒートスポットの熱を面方向に効率よくかつ容易に分散させることができ、かつ樹脂自体が高熱伝導性、電気絶縁性、低密度、薄肉成形体における射出成形性、を有していることで、携帯型電子機器の薄肉化、軽量化、熱対策に非常に有用な樹脂成形体を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例9の成形体の断面部分SEM写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の(A)成分のうち熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、非晶性脂肪族ポリエステル、非晶性半芳香族ポリエステル、非晶性全芳香族ポリエステルなどの非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、結晶性脂肪族ポリエステル、結晶性半芳香族ポリエステル、結晶性全芳香族ポリエステルなどの結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、液晶性脂肪族ポリエステル、液晶性半芳香族ポリエステル、液晶性全芳香族ポリエステルなどの液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、などを用いることができる。
【0013】
熱可塑性ポリエステル系樹脂のうち、液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂として好ましい構造の具体例は、
−O−Ph−CO− 構造単位(I)、
−O−R−O− 構造単位(II)、
−O−CHCH−O− 構造単位(III)および
−CO−R−CO− 構造単位(IV)
の構造単位からなる液晶性ポリエステルが挙げられる。
(ただし式中のR
【0014】
【化1】
【0015】
から選ばれた1種以上の基を示し、R
【0016】
【化2】
【0017】
から選ばれた1種以上の基を示す(ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す)。
【0018】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0019】
これらのなかでも、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
【0020】
熱可塑性ポリエステル系樹脂のうち、結晶性熱可塑性ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの結晶性共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0021】
これら結晶性ポリエステルの中でも、入手が容易であるという点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、等を用いることが好ましい。これらの中でも、結晶化速度が最適である点などから、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等のポリアルキレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは特に限定されず、化学構造、分子量、結晶形態、などが異なる2種以上の成分を任意に組み合わせることができる。
【0023】
本発明の(A)成分のうち熱可塑性ポリアミド系樹脂とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を含み加熱溶融できる重合体である。具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))、及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミド等が挙げられる。
【0024】
中でも、入手のし易さ、取扱性等の点から、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン9T、ナイロンMXD6、及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドが好ましい。また、強度、弾性率、コスト等の点から、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロンMXD6がより好ましく、低吸水性や耐熱性などの点ではナイロン9Tがより好ましい。
【0025】
上記ポリアミド樹脂の分子量は、特に制限はないが、通常、25℃の濃硫酸中で測定した相対粘度が0.5〜5.0の範囲のものが好ましく用いられる。
【0026】
上記ポリアミド樹脂は、例えば、一般的なポリアミドの重合法等により製造することができる。
【0027】
本発明において、ポリアミド系樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは特に限定されず、化学構造、分子量、相対粘度などが異なる2種以上の成分を任意に組み合わせることができる。
【0028】
これら種々の熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂の中でも、樹脂単体での熱伝導率が高いことから、結晶性ポリエステル系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリアミド系樹脂などの高結晶性あるいは液晶性の樹脂を用いることが好ましい。樹脂によっては、成形条件によって結晶化度が変化する場合もあるが、そのような場合には高結晶性となるような成形条件を選択することで、得られる樹脂成形体の熱伝導性を高めることができる。
【0029】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体に用いられる樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル系樹脂及び/又は熱可塑性ポリアミド系樹脂(A)、以外の各種熱可塑性樹脂をさらに用いることができる。(A)以外の熱可塑性樹脂は、合成樹脂であっても自然界に存在する樹脂であっても良い。(A)以外の熱可塑性樹脂を用いる場合の使用量は、成形性と機械的特性とのバランスを考慮すると、(A)100重量部に対して好ましくは0〜100重量部、より好ましくは0〜50重量部である。
【0030】
(A)以外の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレンなどの芳香族ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリメタアクリル酸エステル系樹脂やポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンや環状ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びこれらの誘導体樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂やポリアクリル酸系樹脂及びこれらの金属塩系樹脂、ポリ共役ジエン系樹脂、マレイン酸やフマル酸及びこれらの誘導体を重合して得られるポリマー、マレイミド系化合物を重合して得られるポリマー、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアルキレンオキシド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、フェノキシ系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれら例示されたポリマーのランダム・ブロック・グラフト共重合体、などが挙げられる。これら(A)以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上の複数を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合には、必要に応じて相溶化剤などを添加して用いることもできる。これら(A)以外の熱可塑性樹脂は、目的に応じて適宜使い分ければよい。
【0031】
これら(A)以外の熱可塑性樹脂の中でも、樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂であることが、得られた樹脂組成物の熱伝導率が高くなる傾向がある点や、無機化合物(B)を樹脂中に含有させることが容易である点から好ましい。これら結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂は、樹脂全体が結晶性であっても、ブロックあるいはグラフト共重合体樹脂の分子中における特定ブロックのみが結晶性や液晶性であるなど樹脂の一部のみが結晶性あるいは液晶性であっても良い。樹脂の結晶化度には特に制限はない。また(A)以外の熱可塑性樹脂として、非晶性樹脂と結晶性あるいは液晶性樹脂とのポリマーアロイを用いることもできる。樹脂の結晶化度には特に制限はない。
【0032】
樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する(A)以外の熱可塑性樹脂の中には、結晶化させることが可能であっても、単独で用いたり特定の成形加工条件で成形したりすることにより場合によっては非晶性を示す樹脂もある。このような樹脂を用いる場合には、無機化合物(B)の添加量や添加方法を調整したり、延伸処理や後結晶化処理をするなど成形加工方法を工夫したりすることにより、樹脂の一部あるいは全体を結晶化させることができる場合もある。
【0033】
結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂の中でも好ましい樹脂として、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系ブロック共重合体、等を例示することができるが、これらに限らず各種の結晶性樹脂や液晶性樹脂を用いることができる。
【0034】
また、(A)以外の熱可塑性樹脂に弾性を有する樹脂を用いることで、(A)の樹脂の衝撃強度を改善しうることもできる。これら弾性樹脂は、得られる樹脂組成物の衝撃強度改良効果に優れていることから、その少なくとも1つのガラス転移点が0℃以下であることが好ましく、より好ましくは−20℃以下である。
【0035】
この弾性樹脂として特に限定されず、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム;アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、シロキサンゴム等のゴム状重合体;ジエン系ゴム及び/又はゴム状重合体10〜90重量部に対して、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1つのモノマー10〜90重量部、並びに、これらと共重合可能な他のビニル系化合物10重量部以下を重合してなるゴム状共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種ポリオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、などのエチレン−αオレフィン共重合体;プロピレン−ブテン共重合体、等のオレフィン共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体等の、各種共重合成分により変性された共重合ポリオレフィン系樹脂;エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−グリシジルメタクリレート共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、等の、各種官能成分により変性された変性ポリオレフィン系樹脂;スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、等のスチレン系熱可塑性エラストマー、等が挙げられる。
【0036】
弾性樹脂を添加する場合、その添加量は、樹脂(A)の合計100重量部に対して、通常150重量部以下であり、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは0.2〜50重量部である。150重量部を超えると、剛性、耐熱性、熱伝導性、等が低下する傾向がある。
【0037】
本発明で用いられる、数平均粒径が15μm以上の鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)は、公知の種々の方法により製造することができる。一般的な製造方法としては、ホウ素源となる酸化ホウ素やホウ酸、窒素源となるメラミン、尿素、アンモニア、等とを、必要により事前に反応させた後、窒素などの不活性ガス存在下あるいは真空下で1000℃程度に加熱し、乱層構造の窒化ホウ素を合成し、その後さらに窒素やアルゴンなどの不活性ガス存在下あるいは真空下で2000℃程度まで加熱して結晶化を進行させ、六方晶窒化ホウ素結晶粉末とする方法が挙げられる。このような製造方法により、一般的には5〜15μm程度の数平均粒径を有する鱗片形状六方晶窒化ホウ素が得られる。しかしながら本発明で用いられる鱗片形状六方晶窒化ホウ素は、特殊な製造方法を用いることにより一次結晶サイズを大きく発達させることで、数平均粒径を15μm以上にしたものである。
【0038】
数平均粒径15μm以上の鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)を得る方法としては、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、硝酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、金属ケイ素、などの高温で液体となるフラックス化合物の共存下に、メラミン、尿素、などの窒素源となる化合物、あるいはチッ素ガス、アンモニアガスなどの窒素源となる気体と、ホウ酸、酸化ホウ素、などのホウ素源となる化合物とを1700〜2200℃程度の高温で焼成することにより、フラックス化合物中で結晶成長を促進し、大粒径の結晶粒子を得る方法などを挙げることができるが、製造方法はこのような方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。
【0039】
このようにして得られた、数平均粒径が特に大きい鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)を樹脂に充填して得られた樹脂組成物を、成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように射出成形することにより、樹脂中に充填された鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末の大部分を成形体の面方向に配向させることができる。このような窒化ホウ素粉末配向状態を得ることにより、厚み1.3mm以下の面における面方向で測定された熱拡散率が厚み方向で測定された熱拡散率の2倍以上とすることが可能である。数平均粒径15μm以上の鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)は数平均粒径が小さい窒化ホウ素と比べて、より鱗片形状の面方向に熱を伝えやすい性質を有すると同時に、薄肉成形金型にて射出成形したときに鱗片面が成形体の面方向により配向しやすい性質を有している。
【0040】
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)の数平均粒径は15μm以上であることが必要であるが、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上、最も好ましくは40μm以上である。数平均粒径が大きいほど、成形体としたときの熱伝導異方性が大きくなるためである。数平均粒径の上限は一般的には1mm以下のものが用いられる。1mm以上であると、射出成形の際金型のゲート部などに粉末が詰まるなどして、成形性が低下する傾向が見られる。
【0041】
さらには、高熱伝導性樹脂成形体中に含有される鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のうち、鱗片形状粒子が複数個凝集してなる凝集粒子の割合が15%以下であることで、成形体中における鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)の配向性が向上し、成形体の面方向における熱伝導率を成形体の厚み方向の熱伝導率に比べてより高くすることが可能となる。凝集粒子の割合は好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下である。
【0042】
これら鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)の数平均粒径及び凝集粒子の割合は、粉末を操作型電子顕微鏡にて少なくとも100個以上、好ましくは1000個以上観察し、撮影した写真から粒径及び凝集有無を測定することにより、算出することができる。
【0043】
また高熱伝導性樹脂成形体中に含有される凝集粒子の割合は、成形体を550℃以上2000℃以下、好ましくは600℃以上1000℃以下の電気炉などに30分以上5時間以下の時間放置し、樹脂成分を燃焼除去した後、残存した鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末を操作型電子顕微鏡にて観察することで算出することができる。樹脂に配合される段階で窒化ホウ素粉末が軽く凝集していたとしても、溶融混練時あるいは成形時に樹脂組成物に強い剪断力が付与される段階で粉末の凝集が解砕され、成形体中では凝集粒子の割合が減っていることもあるので、凝集粒子の割合は成形体中から取り出された粉体にて測定する。但し樹脂及び鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末以外の無機成分が添加されている場合には、窒化ホウ素以外の無機成分が高温で溶融し、鱗片形状六方晶窒化ホウ素を凝集させる原因となる場合がある。その場合には、窒化ホウ素以外の無機成分が溶融しないような温度か、あるいは窒化ホウ素以外の無機成分が分解揮発してしまうような温度、いずれかを選択することにより、窒化ホウ素粉末の凝集状態を変化させること無く測定することが可能である。
【0044】
凝集粒子数の算出は、一次粒子の全数に対して未凝集の一次粒子の数をカウントすることにより算出する。すなわち一次粒子が100個存在し、うち50個の粒子が一塊となっており、残りの50個が凝集せずに存在している場合では、凝集粒子の割合は50%となる。
【0045】
ここでいう粒径とは、鱗片形状の粒子のうち投影面積が最も広くなるように観察した時に、形状が円形の場合には円の直径により算出される。また形状が円形でない場合には、面内で最も長い寸法を粒径と呼ぶこととする。即ち楕円形状であれば楕円の長径を、長方形であれば長方形の対角線の長さを、粒径とする。
【0046】
粉末が鱗片形状であるとは、粉末の投影面積が最も広くなるように観察した時の長径が、粉末の投影面積が最も狭くなるように観察した時の最も短い辺の寸法の5倍以上であり、かつ粉末の投影面積が最も広くなるように観察した時の長径が短径の5倍未満であることにより定義されるものとする。投影面積が最も広くなるように観察した時の長径と投影面積が最も狭くなるように観察した時の短辺寸法との比は好ましくは長径が短辺寸法の6倍以上であり、さらに好ましくは7倍以上である。粉末の投影面積が最も広くなるように観察した時の長径と短径との比は好ましくは長径が短径の4.5倍未満であり、さらに好ましくは4倍未満である。
【0047】
鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)のタップ密度は、一般的な粉末タップ密度測定装置を用い、鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末を密度測定用100cc容器に入れタッピングさせ衝撃で固めた後、容器上部の余分な粉末をブレードで擦りきる方法により算出される。このようにして測定されたタップ密度が大きい値であるほど、樹脂への充填が容易となる。タップ密度の値は好ましくは0.6g/cm以上、さらに好ましくは0.65g/cm以上、より好ましくは0.7g/cm以上、最も好ましくは0.75g/cm以上である。
【0048】
本発明の成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物において、樹脂(A)と鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)と比率は、(A)/(B)体積比が90/10〜30/70となるよう含有することが好ましい。(A)の使用量が多いほど、得られる成形体の耐衝撃性、表面性、成形加工性が向上し、溶融混練時の樹脂との混練が容易になる傾向がある、という観点、及び(B)化合物が多いほど熱伝導率が向上する傾向があり好ましいという観点から、体積比は好ましくは85/15〜33/67、より好ましくは80/20〜35/65、さらに好ましくは75/25〜40/60、最も好ましくは70/30〜45/55である。
【0049】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体をさらに高性能とするため、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物を併用することができる。成形体の熱伝導率をより高めるためには、単体での熱伝導率は、好ましくは12W/m・K以上、さらに好ましくは15W/m・K以上、最も好ましくは20W/m・K以上、特に好ましくは30W/m・K以上のものが用いられる。高熱伝導性無機化合物単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/m・K以下、さらには2500W/m・K以下、のものが好ましく用いられる。
【0050】
中でも成形体として高度な電気絶縁性が要求される用途に用いる場合には、高熱伝導性無機化合物としては電気絶縁性を示す化合物が好ましく用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととするが、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性樹脂成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
【0051】
高熱伝導性無機化合物のうち、電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、立方晶窒化ホウ素や乱層状窒化ホウ素など(B)以外の形態を有する各種窒化ホウ素、等を例示することができる。また酸化アルミニウムはムライトなど他の元素との複合化された化合物であっても良い。
【0052】
中でも電気絶縁性に優れることから、(B)以外の窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、等の金属酸化物、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、をより好ましく用いることができる。酸化アルミニウムの中でもα−アルミナが熱伝導率に優れるため好ましい。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0053】
これら高熱伝導性無機化合物の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、など種々の形状を例示することができる。またこれら高熱伝導性無機化合物は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら高熱伝導性無機化合物は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
【0054】
これら高熱伝導性無機化合物は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
【0055】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体に用いられる樹脂組成物には、樹脂組成物の耐熱性や機械的強度をより高めるため、本発明の特徴を損なわない範囲で上記以外の無機化合物を更に添加することができる。このような無機化合物としては特に限定ない。但しこれら無機化合物を添加すると、熱伝導率に影響をおよぼす場合があるため、添加量などには注意が必要である。これら無機化合物も表面処理がなされていてもよい。これらを使用する場合、その添加量は、樹脂(A)100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。添加量が100重量部を超えると、耐衝撃性や成形加工性が低下する場合がある。好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下である。また、これら無機化合物の添加量が増加するとともに、成形体の表面性や寸法安定性が悪化する傾向が見られるため、これらの特性が重視される場合には、無機化合物の添加量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0056】
また、本発明の高熱伝導性樹脂成形体をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0057】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体に用いられる樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
【0058】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体に用いられる樹脂組成物においては、必要に応じ造核剤などの結晶化促進剤を添加することにより、成形性をさらに改善することができる。
【0059】
本発明において用いられる結晶化促進剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、高級脂肪酸塩、芳香族脂肪酸塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。なかでも結晶化促進剤としての効果が高いことから、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物が好ましい。
【0060】
上記高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ステアリルベヘン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられ、特にベヘン酸アミドが好ましい。
【0061】
上記尿素誘導体としては、ビス(ステアリルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−メチルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、4,4’−ビス(3−フェニルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、ビス(3−メチルシクロヘキシルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−デシルウレイド)ジフェニルメタン、N−オクチル−N’−フェニルウレア、N,N’−ジフェニルウレア、N−トリル−N’−シクロヘキシルウレア、N,N’−ジシクロヘキシルウレア、N−フェニル−N’−トリブロモフェニルウレア、N−フェニル−N’−トリルウレア、N−シクロヘキシル−N’−フェニルウレア等が例示され、特にビス(ステアリルウレイド)ヘキサンが好ましい。
【0062】
上記ソルビトール系化合物としては、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビ・BR>Gール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール 、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、及び1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトール 等が挙げられる。これらの中で、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
【0063】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体に結晶化促進剤を添加する場合の使用量は、成形性の点からは、樹脂(A)100重量部に対し、0.01重量部以上が好ましく、0.03重量部以上がより好ましく、0.05重量部以上がさらに好ましい。0.01重量部未満では、結晶化促進剤としての効果が不足する可能性がある。一方、使用量の上限は、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下、最も好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると、効果が飽和する可能性があることから経済的に好ましくなく、また外観や物性が損なわれる可能性がある。通常、鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末以外の高熱伝導性フィラーを用いた樹脂組成物では、熱伝導性を高めるためにフィラーの充填量を増やすと成形性が大幅に損なわれ、大量の結晶化促進剤を要する傾向がある。本発明では熱可塑性ポリエステル系樹脂及び/又は熱可塑性ポリアミド系樹脂と鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末とを併用することにより、添加する結晶化促進剤が5重量部以下という少量でも高い熱伝導性と良好な成形性とを両立することができる。
【0064】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体は、成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように成形された成形体であることが必要である。成形体の広い範囲が厚み1.3mm以下となるような形状の成形体とすることにより、鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末の配向性が向上して成形体の面方向と厚み方向とにおける熱拡散率の差が大きくなり、成形体に容易に熱拡散異方性を付与することができるうえ、携帯機器の薄肉軽量化にも貢献させることができる。成形体の厚み1.3mm以下の箇所とそれ以外の箇所の割合は、成形体の強度や意匠性などを考慮して適宜設定すれば良いが、好ましくは成形体の体積の50%以上、より好ましくは成形体の体積の55%以上、さらに好ましくは成形体の体積の60%以上、最も好ましくは成形体の体積の70%以上が厚み1.3mm以下となるように成形された成形体である。また好ましくは成形体の体積の50%以上が厚み1.28mm以下、より好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1.1mm以下、最も好ましくは1.0mm以下である。一方で成形体の厚みが薄すぎると成形加工が困難となる場合や、成形体が衝撃に対して弱くなる場合がある。成形体厚みの下限は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.55mm以上、最も好ましくは0.6mm以上である。なお、成形体の厚みは全体が均一な厚みであっても良く、部分的に厚い部分と薄い部分を有していても良い。
【0065】
成形体の厚み1.3mm以下の面における面方向と厚み方向の熱拡散率異方性測定は、例えば平面状サンプルにてフラッシュ式熱拡散率測定装置を用いて、表面からレーザーや光で加熱し、加熱部分の裏面及び加熱部分と少し面方向に離れた箇所における裏面での昇温変化を測定する方法により、それぞれ算出することが可能である。測定時のサンプル表面温度上昇を低く抑える目的から、測定にはキセノンフラッシュ式熱拡散率測定装置を用いるのが好ましい。このような手法で測定された面方向及び厚み方向の熱拡散率を比較した際、成形体の面方向で測定された熱拡散率が成形体の厚み方向で測定された熱拡散率の2倍以上とすることにより、携帯機器等の内部ヒートスポットで発生する熱を面方向に効率よくかつ分散させることができる。成形体の面方向で測定された熱拡散率は、成形体の厚み方向で測定された熱拡散率に対して、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上、最も好ましくは5倍以上である。
【0066】
さらに携帯機器等の内部で発生する熱を外部に良く伝えるためには、成形体の熱拡散率の絶対値自体も高くする必要があり、成形体の面方向で測定された熱拡散率の値で0.5mm/sec以上であることが必要である。成形体の面方向で測定された熱拡散率は、好ましくは0.75mm/sec以上、さらに好ましくは1.0mm/sec以上、より好ましくは1.5mm/sec以上、最も好ましくは2.0mm/sec以上である。
【0067】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体は、電気絶縁性と高熱伝導性とを両立させることが可能であるため、従来高熱伝導性が要望されながら、絶縁性が必要なため金属を用いることができなかった用途に、特に有用に用いることができる。ASTM D−257に従い測定された成形体の体積固有抵抗値は、1010Ω・cm以上であることが必要であり、好ましくは1011Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上、より好ましくは1013Ω・cm以上、最も好ましくは1014Ω・cm以上である。
【0068】
このような厚みを有する成形体は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、など種々の熱可塑性樹脂成形法により成形することが可能であるが、成形時に樹脂組成物が受ける剪断速度が速く成形体に容易に熱拡散異方性を付与することができること、成形サイクルが短く生産性に優れること、などから、射出成形法により成形された成形体であることが好ましい。射出成形法とは、射出成形機に金型を取り付け、成形機にて溶融可塑化された樹脂組成物を高速で金型内に注入し、樹脂組成物を冷却固化させて取り出す成形方法である。この際用いられる成形機や金型には特に制限は無いが、得られる成形体の体積の一部または全部が厚み1.3mm以下となるように設計された金型を用いることが好ましい。厚み1.3mm以下の箇所の割合は適宜設定すれば良いが、好ましくは得られる成形体の体積の50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上、最も好ましくは70%以上が厚み1.3mm以下となるように設計された金型が好ましい。
【0069】
このようにして得られた成形体は、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂成形体などさまざまな形態で、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明で得られた高熱伝導性熱可塑性樹脂成形体は、現在広く用いられている一般的なプラスチック用射出成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する成形体の取得も容易である。特に優れた成形加工性、高熱伝導性、という優れた特性を併せ持つことから、発熱源を内部に有する携帯電話、ディスプレー、コンピューターなどの筐体用樹脂として、非常に有用である。
【0070】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形体等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。
【0071】
さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
【0072】
本発明の高熱伝導性樹脂成形体は従来良く知られている成形体に比べて、耐衝撃性、表面性が良好であり、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の組成物およびその成形体について、実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
【0074】
製造例1:
オルトホウ酸53重量部、メラミン43重量部、硝酸リチウム4重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、純水200重量部を添加し80℃で8時間攪拌してからろ過し、150℃で1時間乾燥した。得られた化合物を窒素雰囲気下900℃で1時間加熱し、さらに窒素雰囲気下1800℃で焼成・結晶化させた。得られた焼成物を粉砕して鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(BN−1)を得た。得られた粉末の数平均粒径は48μm、凝集粒子の割合は6.1%、タップ密度は0.77g/cmであった。また本粉末を単独で固化させ熱伝導率を測定した結果熱伝導率は300W/mKであり、かつ電気絶縁性であった。
【0075】
製造例2:
オルトホウ酸50重量部、メラミン40重量部、炭酸カルシウム10重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、純水200重量部を添加し80℃で8時間攪拌してからろ過し、150℃で1時間乾燥した。得られた化合物を窒素雰囲気下900℃で1時間加熱し、さらに窒素雰囲気下2000℃で焼成・結晶化させた。得られた焼成物を粉砕後硝酸水溶液での洗浄により炭酸カルシウム成分を除去し、150℃で乾燥させて鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(BN−2)を得た。得られた粉末の数平均粒径は19μm、凝集粒子の割合は7.5%、タップ密度は0.88g/cmであった。また本粉末を単独で固化させ熱伝導率を測定した結果熱伝導率は100W/mKであり、かつ電気絶縁性であった。
【0076】
製造例3:
溜出管及び攪拌器を備えた耐圧容器(容量7リットル:日本耐圧ガラス製)にポリエーテル化合物(1)(ビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体:平均分子量1000)を900g、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を10g添加し、窒素気流で攪拌しながら200℃まで昇温した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG−70)2100gを一括に添加して、引き続き、285℃まで攪拌しながら昇温し、溶融混合した。285℃に達した後、1Torr以下まで減圧し3時間攪拌して反応を終了し、ポリエチレンテレフタレートセグメントとビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体セグメントとよりなる対数粘度0.81のブロック共重合体(CB−1)を得た。なお対数粘度の測定は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒を用い、25℃、濃度0.25g/dlにて行った。
【0077】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG−70)100重量部に、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)0.2重量部、を混合したものを準備した(原料1)。別途、鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(BN−1)100重量部、信越化学製エポキシシランであるKBM−303を1重量部、エタノール5重量部、をスーパーフローターにて混合し、5分間撹拌した後、80℃にて4時間乾燥したものを準備した。(原料2)。
原料1、原料2、を別々の重量式フィーダーにセットし、(A)/(B)の体積比が50/50となるよう混合した後、日本製鋼所製TEX44XCT同方向噛み合い型二軸押出機のスクリュー根本付近に設けられたホッパーより投入した。設定温度は供給口近傍が250℃で、順次設定温度を上昇させ、押出機スクリュー先端部温度を280℃に設定した。本条件にて射出用サンプルペレットを得た。
得られたペレットを140℃で4時間乾燥後、75t射出成形機にて、平板の面中心部分にゲートサイズ0.8mmφで設置されたピンゲートを通じて、150mm×80mm×厚み0.8mmの平板形状試験片、及び50mm×80mm×厚み1.1mmの平板形状試験片を成形し、熱伝導異方性を有する高熱伝導性樹脂成形体を得た。
【0078】
(実施例2〜10、比較例1〜8)
配合原料の種類や量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、成形体を得た。
実施例及び比較例に用いた原料は、下記の通りである。
その他無機化合物
(BN−3):鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(電気化学工業(株)製GP、単体での熱伝導率60W/m・K、数平均粒径8.0μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm、凝集粒子の割合7.5%、タップ密度0.50g/cm)。
(BN−4):鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末を凝集処理させた、凝集処理六方晶窒化ホウ素粉末(NationalNitride Technologies Co.,Ltd.製NW150、単体での熱伝導率60W/m・K、数平均粒径150μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm、凝集粒子の割合100%、タップ密度0.80g/cm)。
(BN−5):乱層構造窒化ホウ素粉末(営口硼達精細化工有限公司製、単体での熱伝導率25W/m・K、数平均粒径0.80μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm、凝集粒子の割合16%、タップ密度0.20g/cm)。
(FIL−1):真球状アルミナ粉末(電気化学工業(株)製DAW−03、単体での熱伝導率35W/m・K、数平均粒径3μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)
(FIL−2):ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T187H/PL、単体での熱伝導率1.0W/m・K、繊維直径13μm、数平均繊維長3.0mm、電気絶縁性、体積固有抵抗1015Ω・cm)
(FIL−3):天然鱗状黒鉛粉末(中越黒鉛(株)製BF−50A、単体での熱伝導率250W/m・K、数平均粒径53μm、導電性、凝集粒子の割合6.5%、タップ密度0.64g/cm
熱可塑性ポリエステル系樹脂及び/又は熱可塑性ポリアミド系樹脂(A):
(PES−1):ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペット EFG−70)
(PES−2):ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ノバデュラン 5009L)
(PA−1):ナイロン6樹脂(ユニチカ(株)製ユニチカナイロン6 A1020BRL)
(PA−2):ナイロン9T樹脂(クラレ(株)製ジェネスタ N1000A)
その他樹脂:
(PC−1):ポリカーボネート樹脂(出光興産(株)製タフロン A2200)
その他配合物
(FR−1):芳香族縮合リン酸エステル型難燃剤である、大八化学(株)製PX−200
[熱拡散率]
得られた厚み0.8mm及び厚み1.1mmの成形体を切り出し、12.7mmφの円板状サンプルを作成した。サンプル表面にレーザー光吸収用スプレー(ファインケミカルジャパン(株)製ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し乾燥させた後、XeフラッシュアナライザーであるNETZSCH製LFA447Nanoflashを用い、厚み方向及び面方向の熱拡散率を測定した。
【0079】
[電気絶縁性]
平板を用いて、ASTM D−257に従い体積固有抵抗値を測定した。測定値が10Ω・cm以下の場合には、「導電」と表示した。
【0080】
[凝集粒子の割合]
平板を空気雰囲気下、650℃の電気炉で30分間燃焼し、樹脂成分を焼却除去した。残った鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末(B)を操作型電子顕微鏡にて少なくとも200個以上観察し、撮影した写真から凝集粒子の割合を算出した。
【0081】
それぞれの配合および結果を表1に示す。表1より、本特許の範囲外の組成物と比べ、本特許の組成物は成形流動性に優れた高熱伝導率の樹脂組成物が得られることがわかる。なお表中で、成形加工が困難であったため測定ができなかったものについては「不可」と表示した。
【0082】
【表1】
【0083】
(比較例9)
実施例1と同じ配合の組成物を用い、成形体横方向からゲート径2mmのゲートを通じ、厚み6.4mm×12.8mmφの試験片を成形した。これを成形体の一方の面から均一に研磨することにより、厚み0.8mmに加工し、同様の測定を実施した結果、面方向熱拡散率:2.85mm/sec、厚み方向熱拡散率:2.03mm/sec、熱拡散異方性1.40となり、本特許の範囲外であった。
【0084】
実施例9の成形体の断面部分SEM写真を図1に示す。鱗片形状六方晶窒化ホウ素粉末が高度に面方向に配向していることがわかる。
【0085】
以上から本発明の熱可塑性樹脂成形体は高熱伝導性、電気絶縁性、低密度、射出成形性良好、などの優れた特性を有しており、携帯用電子機器等の外装材料を射出成形した際、成形体の厚み方向にはあまり熱を伝えず成形体の面方向には良く熱を伝えるという熱伝導異方性有する成形体を、工業的に容易に得ることが可能である。このような成形体は電気・電子工業分野、自動車分野、などさまざまな状況で熱対策素材として用いることが可能で、工業的に有用である。
図1