(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767813
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】トランスジェニック事象MON87769に対応するダイズ植物および種子ならびにそれらを検出する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20150730BHJP
C12Q 1/68 20060101ALI20150730BHJP
A01H 5/00 20060101ALI20150730BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20150730BHJP
A23L 1/20 20060101ALI20150730BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12Q1/68 A
A01H5/00 A
A01H1/00 A
A23L1/20 A
A23D9/00 506
【請求項の数】33
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2010-546893(P2010-546893)
(86)(22)【出願日】2009年2月12日
(65)【公表番号】特表2011-512138(P2011-512138A)
(43)【公表日】2011年4月21日
(86)【国際出願番号】US2009033930
(87)【国際公開番号】WO2009102873
(87)【国際公開日】20090820
【審査請求日】2012年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/029,197
(32)【優先日】2008年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/055,401
(32)【優先日】2008年5月22日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-8911
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】バイロン・フローマン
(72)【発明者】
【氏名】キャン・ドゥオング
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・リステロ
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/021761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A01H 1/00
A01H 5/00
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択されるDNA配列である配列またはそれに対して相補的である配列を含むDNA分子。
【請求項2】
配列番号:1またはその相補体の少なくとも18の隣接するヌクレオチドを含む、ダイズ事象(event)MON87769 DNAに特徴的である(diagnostic)DNAプローブとして使用するための単離されたDNA分子。
【請求項3】
配列番号:2またはその相補体の少なくとも18の隣接するヌクレオチドを含む、ダイズ事象MON87769 DNAに特徴的であるDNAプローブとして使用するための単離されたDNA分子。
【請求項4】
生物試料中のダイズ事象MON87769ヌクレオチド配列の存在を検出する方法であって、
i 試料とDNAプライマー対とを接触させ;
ii 核酸増幅反応を行い、それによってアンプリコンを生成し;ついで
iii 配列番号:1または配列番号:2を含むアンプリコンを検出する
ことを含む該方法。
【請求項5】
そのDNAが請求項4記載の方法に付した場合に配列番号:1または配列番号:2を含むDNAアンプリコンを生成する、安定に形質転換したダイズ植物。
【請求項6】
DNAプライマー対が、配列番号:3またはその相補体の少なくとも18の連続的なヌクレオチドの配列を含む第1のプライマー、および配列番号:5またはその相補体の少なくとも18の連続的なヌクレオチドの配列を含む第2のプライマーを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
DNAプライマー対が、配列番号:4またはその相補体の少なくとも18の連続的なヌクレオチドの配列を含む第1のプライマー、および配列番号:5またはその相補体の少なくとも18の連続的なヌクレオチドの配列を含む第2のプライマーを含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
生物試料中のダイズ事象 MON87769 DNAの存在を検出する方法
であって、
i 試料と、配列番号:1、配列番号:2およびそれらの相補体よりなる群から選択される配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、配列番号:1、配列番号:2またはそれらの相補体を含まないダイズ植物ゲノムDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしないプローブとを接触させ、
ii 該試料およびプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に付し;ついで
iii 該試料に対する該プローブの結合を検出する
ことを含み、ここに、結合が該試料中のダイズ事象MON87769 DNAの存在の特徴である該方法。
【請求項9】
試料中のダイズ事象MON87769 DNAを含むダイズ植物ゲノムのDNAの接合体構造を決定する方法であって、
i 試料と、
(a)ダイズ事象MON87769 DNAを含む核酸増幅反応に一緒に用いた場合に、該試料中のダイズ事象MON87769 DNAの特徴である第1のアンプリコンを生成し;および
(b)MON87769 DNA以外のダイズゲノムDNAを含む核酸増幅反応に一緒に用いた場合に、該試料中の事象MON87769 DNA以外のダイズゲノムDNAの特徴である第2のアンプリコンを生成する、
配列番号:8、配列番号:9および配列番号:11を含む3の異なるプライマーとを接触させ;
ii 核酸増幅反応を行い;ついで
iii 生成した単数または複数のアンプリコンを観察する
ことを含み、ここに、第2のアンプリコンの存在が該試料中のヘテロ接合体ゲノムの特徴である該方法。
【請求項10】
配列番号:6のヌクレオチド配列を含むDNA分子を含むダイズ植物。
【請求項11】
配列番号:6のヌクレオチド配列を含むDNA分子を含むダイズ種子。
【請求項12】
事象MON87769を含むダイズ植物または種子、ATCC受託番号PTA−8911で寄託されている形質転換事象MON87769を含む種子の試料。
【請求項13】
請求項12記載の植物または種子の部分。
【請求項14】
請求項12記載のダイズ植物の花粉、胚珠、莢、花、根または葉、または種子。
【請求項15】
子孫が配列番号:1および配列番号:2を含む請求項12記載のダイズ植物の子孫。
【請求項16】
配列番号:1、配列番号:2、配列番号:1に相補的な配列、および配列番号:2に相補的な配列よりなる群から選択される配列の少なくとも18の連続的なヌクレオチドを含む単離された核酸セグメント。
【請求項17】
配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択される配列であるかまたはそれに相補的であるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
生物試料中のダイズ事象MON87769ポリヌクレオチドの存在を検出する方法であって、
i 試料と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でプローブとを接触させ、ここに、該プローブは配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択される配列であるかまたはそれに相補的である隣接配列を含み;ついで、
ii 該試料に対する該プローブの結合を検出する
ことを含み、ここに、該結合が試料中のダイズ事象MON87769ポリヌクレオチドの存在の特徴である該方法。
【請求項19】
配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む組成物であって、ここに、該組成物がダイズ粗びき粉、ダイズ穀粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、テクスチュライズド(texturized)ダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質およびホイップしたトッピングよりなる群から選択される日用商品である該組成物。
【請求項20】
生物試料中のダイズ事象MON87769 DNAの存在を検出するのに使用するための、配列番号:1、配列番号:2またはそれらの相補体の少なくとも18の連続的なヌクレオチドを含むプローブ。
【請求項21】
プローブがデオキシリボ核酸、リボ核酸およびヌクレオチド・アナログよりなる群から選択されるヌクレオチドを含む請求項20記載のプローブ。
【請求項22】
該プローブが少なくとも1の発蛍光団で標識されている請求項21記載のプローブ。
【請求項23】
検出可能な量のダイズ事象MON87769ヌクレオチド配列を含む日用品または食料品であって、ここに、該配列が配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択される該日用品または食料品。
【請求項24】
ダイズ粗びき粉、ダイズ穀粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、テクスチュライズド・ダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質およびホイップしたトッピングよりなる群から選択される請求項23記載の日用商品または食料品。
【請求項25】
配列番号:1および/または配列番号:2の存在を検出することを含む、生物試料中のダイズ事象MON87769の存在に特徴的であるヌクレオチド配列の存在を検出する方法であって、ここに、該生物試料がダイズ粗びき粉、ダイズ穀粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、テクスチュライズド・ダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質およびホイップしたトッピングよりなる群から選択される該方法。
【請求項26】
事象MON87769のダイズ種子またはその子孫由来の油であって、該油がダイズ事象MON87769に特徴的な検出可能な量のヌクレオチド配列を含み、該配列が配列番号:1および配列番号:2よりなる群から選択される該油。
【請求項27】
調理油、サラダ油、ショートニング、レシチン、非毒性プラスチック、印刷インク、滑剤、ワックス、液圧流体、変圧器流体、溶媒、化粧品、ヘアケア製品およびバイオディーゼルよりなる群から選択される請求項26記載の油由来の日用商品。
【請求項28】
生物試料中のダイズ事象MON87769ヌクレオチド配列の存在を検出するために用いるキットであって、該キットが:
i 試料とDNAプライマー対とを接触させ;
ii 核酸増幅反応を行い、それによってアンプリコンを生成し;ついで
iii アンプリコンを検出する
ことを含む方法を用い、ここにアンプリコンが配列番号:1または配列番号:2を含む該キット。
【請求項29】
DNAプライマー対が第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここに、該第1のプライマーが配列番号:3またはその相補体由来のヌクレオチド配列を含み、該第2のプライマー対が配列番号:5またはその相補体由来のヌクレオチド配列を含む、請求項28記載のキット。
【請求項30】
DNAプライマー対が第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここに該第1のプライマーが配列番号:5またはその相補体由来のヌクレオチド配列を含み、該第2のプライマー対が配列番号:4またはその相補体由来のヌクレオチド配列を含む、請求項28記載のキット。
【請求項31】
ダイズ事象MON87769を含む植物とダイズ事象MON87769を欠くダイズ植物とを交配させてダイズ事象MON87769および変化したPUFA含量を含む植物を得ることを含み、ここに、形質転換事象MON87769を含む種子の試料がATCC受託番号PTA−8911で寄託されている、変化したPUFA含量を含むダイズ植物を作出する方法。
【請求項32】
事象MON87769を含むダイズ植物と第2のダイズ植物とを交配させることを含み、ここに、形質転換事象MON87769を含む種子の試料がATCC受託番号PTA−8911で寄託されている、ダイズ事象MON87769を含むダイズ品種を作出する方法。
【請求項33】
請求項12記載の種子を生育することを含む、事象MON87769を含むダイズ植物またはその部分を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体の開示を出典明示して本明細書の一部とみなす、2008年2月15日に出願した米国仮特許出願番号61/029,197および2008年5月22日に出願した番号61/055,401の優先権を主張する。
【0002】
コンピュータリーダブルフォームの配列表の参照による取込み
本明細書の一部分である配列表は、本発明のヌクレオチド配列を含む「MONS193WO
ST25.txt」と標題を付けたコンピュータリーダブルフォームの37KBのファイルを含む。配列表の標題事項は出典明示して本明細書の一部とみなす。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、事象MON87769を含むトランスジェニックダイズ植物、子孫植物、およびそれらの種子に関する。この事象(event)は、ステアリドン酸を含む油組成物を示す。本発明は、また、生物試料中の該ダイズ事象の存在を検出する方法にも関し、該事象にユニークなヌクレオチド配列も提供する。
【0004】
2.関連技術の記載
ダイズは重要な作物であり、世界の多くの地域において主要な食物源である。農業的特性および生産物の品質の改善のために、バイオテクノロジーの方法がダイズに適用されている。1のかかる品質特性はステアリドン酸(SDA)を含むダイズ油である。
【0005】
有性交配の子孫が関心のあるトランス遺伝子/ゲノムDNAを含んでいるかを決定するためには、特定の植物のトランス遺伝子/ゲノムDNAの存在を検出し得ることが有利である。また、特定の植物を検出する方法は、組換え作物植物由来の食物の市場前の認可や標識を要求する規制を満たす場合にも有用である。
【0006】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は、消費した場合に健康上の利益を提供することが知られている。SDA、PUFAを含有する油は、ヒトおよび他の動物における健康上の食餌の一部分として有利である。SDAは植物および動物の起源を源とし得る。SDAの商業的起源には、植物トリコデスマ属、ボラゴ属(ルリヂサ)およびエチウム属ならびに魚類が含まれる。しかしながら、天然起源からのPUFAの商業的生産に関連して幾つかの不利益が存在する。動物および植物のようなPUFAの天然起源は、非常に不均一な油組成物を有する傾向がある。したがって、これらの源から得た油は、広範囲な精製を行って1またはそれを超える望ましいPUFAを分離し、または1またはそれを超えるPUFAに富む油を生産することが要求され得る。PUFAの天然起源は、入手可能性における制御不可能な変動にも付される。魚類ストックは天然の変動を受け、または濫獲によって涸渇し得る。魚油は不快な味覚および臭気も有し、それは望ましい生成物から経済的に分離することを不可能にし得、かかる生成物を食物補給物として受け入れられないものとし得る。動物油、特に魚油は環境汚染物を蓄積し得る。食物は魚油に富むものとし得るが、ここでも、かかる富化は費用および世界的な魚ストックの衰退のため問題がある。それにもかかわらず、魚類摂取を増大する健康上のメッセージが公衆に抱かれる場合は、魚類に対する需要と合致する問題が起こり得る。さらに、養殖飼料用の野生の魚類ストックに大きく依存するこの産業の持続可能性に関連する問題も存在する(Naylorら,Nature 405:1017-1024,2000)。
【0007】
したがって、土地をベースとする陸生作物植物系においてSDAのようなPUFAを生産することは有利であり、それを操作して商業的な量のSDAを生産することができる。キャノーラ、ダイズ、コーン、ヒマワリ、ベニバナまたはアマのような商業的な脂肪種子作物においては、それらの種子油をSDAに類型化するモノおよびポリ不飽和脂肪酸の幾つかのフラクションの変換には、酵素デルタ6−デサチュラーゼおよびデルタ15−デサチュラーゼの種子特異的な発現が必要である。高められたレベルのΔ6−およびΔ15−デサチュラーゼを発現する植物由来の油はSDAに富む。ヒトおよび動物におけるオメガ−3脂肪酸摂取を増大する要望も存在するため、対象がその日常的な食餌習慣に適する飼料、飼料成分、食物および食物成分を選択し得るように広範なオメガ−3に富む食物および食物補給物を提供することに要望が存在する。また、ダイズ植物において商業的な量のSDAを提供することも有利である。
【0008】
植物における外来遺伝子の発現が、おそらくクロマチン構造(例えば、ヘテロクロマチン)または組込み部位に近い転写調節要素(例えば、エンハンサー)の近接に起因して、その染色体位置によって影響されることが知られている(Weisingら,Ann.Rev.Genet.,22:421-477,1988)。この理由のために、関心のある導入遺伝子の最適の発現によって特徴付けられる事象を同定するために多数の事象をスクリーニングする必要がある場合がある。例えば、事象の中には導入した遺伝子の発現のレベルに広い変動が存在し得ることが植物および他の生物において観察されている。また、発現の空間的または時期的なパターンにも差異、例えば、導入した遺伝子構築物に存在する転写調節要素から予想されるパターンに対応し得ない、種々の植物組織におけるトランス遺伝子の相対的発現における差異も存在し得る。この理由のため、数百ないし数千の異なる事象を生産し、商業目的に望ましいトランス遺伝子の発現レベルおよびパターンを有する単一の事象について事象をスクリーニングすることが一般的である。トランス遺伝子発現の望ましいレベルまたはパターンを有する事象は、慣用的な育種法を用いる有性外部交配によって他の遺伝バックグラウンドにトランス遺伝子を遺伝子移入するのに有用である。かかる交配の子孫は、元の形質転換体のトランス遺伝子発現の特徴を維持している。この戦略を用いて、特定の局地的生育条件に好適に適合した多数の品種における信頼性の高い遺伝子発現を確保する。
【0009】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または核酸プローブを用いるDNAハイブリダイゼーションのようないずれかよく知られた核酸検出方法によってトランス遺伝子の存在を検出することが可能である。これらの検出方法は、一般的に、プロモーター、ターミネーター、マーカー遺伝子ほかのような遺伝子要素を頻繁に使用することに焦点が当てられている。その結果として、かかる方法は、インサートしたDNAに近接する染色体DNA(「フランキングDNA」)の配列が公知でなければ、事象−特異的(例えば、異なる事象の間を識別するのに有用である)、特に同一のDNA構築物を用いて生産したもの、となり得ない。事象−特異的なPCRアッセイは、例えば、Taverniersら(J.Agric.Food Chem.,53:3041-3052,2005)によって論じられており、その中では、トランスジェニック・トウモロコシ系統Bt11、Bt176およびGA21ならびにキャノーラ事象GT73の事象−特異的トレーシング系が示されている。この研究においては、事象−特異的なプライマーおよびプローブが各事象のゲノム/トランス遺伝子連結部の配列に基づいて設計されている。事象−特異的な検出方法は、所与の形質転換事象を含むトランスジェニック植物の使用の認可を委託された調節部局によっても必要とされ得る。トランスジェニック植物事象特異的なDNA検出方法は、米国特許第6,893,826;6,825,400;6,740,488;6,733,974;6,689,880;6,900,014および6,818,807号に記載されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、MON87769と命名したトランスジェニック・ダイズ事象を含むダイズ植物およびダイズ事象MON87769から識別不可能であるその子孫(かかる子孫がインサートしたトランスジェニックDNAに対応する少なくとも1の対立遺伝子も含む範囲で)に関する。本発明のもう1の態様は、ダイズ事象MON87769を含む、子孫植物、または種子、またはダイズ植物および種子の再生可能な部分である。本発明は、限定されるものではないが花粉、胚珠、花、シュート、根、茎、葉、莢、種子および分裂組織を含む、ダイズ事象MON87769を含む植物の部分も含む。MON87769を含む植物のゲノムならびにMON87769に対応するダイズ植物が収穫される圃場に残存する油、粗びき粉、穀粉、食品、タンパク質補給物およびバイオマスのようなMON87769を含む植物からの生成物が本発明の態様である。
【0011】
本発明は、事象MON87769を含むダイズ植物の生理学的および形態学的な特徴のすべてを有する、SDAを含む油組成物を有するダイズ植物を提供する。
【0012】
本発明の1の態様によれば、配列番号:1および/または配列番号:2を含む新規なダイズ植物からのトランス遺伝子/ゲノムインサート領域、またはMON87769と命名した事象の存在を検出するための組成物および方法を提供し、ここにダイズ事象MON87769を含む種子の試料はATCC受託番号PTA−8911で寄託されている。配列番号:1(
図2に示す「[F]配列番号:6」のポジション979ないし998に対応する「[A]配列番号:1」)および配列番号:2(
図2に示す「[F]配列番号:6」のポジション8345ないし8365に対応する「[B]配列番号:2」)ならびにそれらの相補体よりなる群から選択される事象MON87769の少なくとも1の連結配列を含むDNA配列を提供し;ここに、連結配列は、ゲノムにインサートした異種DNAがダイズ細胞ゲノムDNAに連結する点にひろがるヌクレオチド配列であり、ダイズDNAを含む生物試料中のこの配列の検出は該試料中のダイズ事象MON87769 DNAの存在の特徴である。かかる連結配列は少なくとも配列番号:1および/または配列番号:2および/またはそれらの相補体を含む。これらのDNA分子を含むダイズ事象MON87769およびダイズ種子は本発明の態様である。
【0013】
ダイズ事象MON87769からの新規なトランス遺伝子/ゲノムインサート領域、配列番号:3[C]、配列番号:4[D]および配列番号:5[E]または配列番号:1[A]、配列番号:2[B]および配列番号:5[E](
図2にも参照する)を含むDNA配列は本発明の態様である。これらの分子を含むダイズ植物および種子も本発明の態様である。
【0014】
本発明のもう1の態様によれば、DNA検出方法に用いるための2のDNA分子を提供し、ここに、第1のDNA分子は配列番号:3または配列番号:5のDNA分子および配列番号:3の5'フランキング・ダイズゲノムDNA領域のいずれかの部分の同様の長さのDNA分子のトランス遺伝子領域のいずれかの部分の少なくとも11またはそれを超える隣接するポリヌクレオチドを含み、これらのDNA分子は一緒に用いた場合にアンプリコンを生成するDNA増幅法におけるDNAプライマーとして有用である。DNA増幅法においてこれらのDNAプライマーを用いて生成したアンプリコンは、当該アンプリコンが配列番号:1を含む場合にダイズ事象MON87769の特徴である。配列番号:3および配列番号:5のいずれかの部分に相同または相補的なDNAプライマーによって生成したいずれのアンプリコン、および配列番号:1を含むいずれのアンプリコンも本発明の態様である。
【0015】
本発明のもう1の態様によれば、DNA検出法に用いるための2のDNA分子を提供し、ここに、第1のDNA分子は配列番号:4または配列番号:5のDNA分子および配列番号:4の3'フランキング・ダイズゲノムDNAのいずれかの部分の同様の長さのDNA分子のトランス遺伝子領域のいずれかの部分の少なくとも11またはそれを超える隣接するポリヌクレオチドを含み、ここに、これらのDNA分子はDNA増幅法におけるDNAプライマーとして有用である。DNA増幅法においてこれらのDNAプライマーを用いて生成したアンプリコンは、当該アンプリコンが配列番号:2を含む場合はダイズ事象MON87769の特徴である。配列番号:4および配列番号:5のいずれかの部分に相同または相補的なDNAプライマーによって生成したアンプリコン、および配列番号:2を含むいずれのアンプリコンも本発明の態様である。
【0016】
本発明のもう1の態様によれば、試料中のダイズ事象MON87769に対応するDNAの存在を検出する方法を提供する。かかる方法は:(a)DNAを含む試料と、ダイズ事象MON87769からのゲノムDNAとの核酸増幅反応に用いた場合にダイズ事象MON87769の特徴であるアンプリコンを生成するプライマーセットとを接触させ;(b)核酸増幅反応を行い、それによってアンプリコンを生成し;ついで(c)アンプリコンを検出することを含み、ここに、該アンプリコンは配列番号:1および/または配列番号:2を含む。
【0017】
本発明のもう1の態様は、事象MON87769を含むダイズ植物、または種子、または植物もしくは種子由来の生成物であり、ここに、ゲノムDNAは約ポジション1ないし988の配列番号:3のヌクレオチド配列、約ポジション1ないし7367の配列番号:5のヌクレオチド配列および約ポジション1ないし939の配列番号:4のヌクレオチド配列(そのコンティグを配列番号:6に示す)、およびそれらの相補体より実質的になるDNA分子を含む。ダイズ事象MON87769を含む種子の試料は、ATCC受託番号PTA-8911で寄託されている。ダイズ植物、または種子、または生成物から単離した場合にゲノムDNAが配列番号:1および/または配列番号:2ならびにそれらの相補体を取り込むDNA分子を含む、事象MON87769を含む、ダイズ植物、または種子、または植物もしくは種子由来の生成物も本発明の態様である。
【0018】
本発明のさらなる態様は、事象MON87769を含む植物または種子由来のダイズ植物、または種子、または生成物であり、ここに、ゲノムDNAは配列番号:6の約ポジション1ないし9294のヌクレオチド配列およびその相補体から実質的になるDNA分子を含む。ダイズ植物、または種子、または生成物から単離した場合にゲノムDNAが配列番号:1および/または配列番号:2ならびにそれらの相補体を取り込むDNA分子を含む、ダイズ植物、または種子、または植物もしくは種子由来の生成物も提供する。
【0019】
本発明のもう1の態様は、ダイズ植物、または種子、または生成物から単離した場合にゲノムDNAがDNA増幅法においてアンプリコンを生成するMON87769のダイズ植物、または種子、または植物もしくは種子由来の生成物であり、ここに、該アンプリコンは配列番号:1および/または配列番号:2を含む。
【0020】
本発明のもう1の態様によれば、試料中のMON87769事象に対応するDNAの存在を検出する方法を提供し、かかる方法は:(a)DNAを含む試料と、ダイズ事象MON87769からのゲノムDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするが対照ダイズ植物とはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしないプローブとを接触させ;(b)該試料およびプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に付し;ついで、(c)ダイズ事象MON87769 DNAに対するプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含み、ここに、該プローブは配列番号:1および/または配列番号:2よりなる群から選択される。
【0021】
本発明のもう1の態様は、ダイズ事象MON87769の子孫の接合体構造を決定する方法であり、方法は、(a)ダイズDNAを含む試料と、プライマーセットSQ5923(配列番号:8)、SQ5924(配列番号:9)、SQ5925(配列番号:11)、およびダイズ事象MON87769を含む植物からのゲノムDNAを用いる核酸増幅反応に用いた場合にプライマーSQ5923およびSQ5924ならびにダイズ事象MON87769の特徴である6FAM(商標)−標識プライマー/プローブ、PB2511の組合せから蛍光シグナルを放出する第1のアンプリコンを生成する、プローブセット6FAM(商標)−標識PB2511(配列番号:10)およびVIC(商標)−標識PB2512(配列番号:12)とを接触させ、(b)核酸増幅反応を行い、それによって第1のアンプリコンを生成し;ついで、(c)該第1のアンプリコンを検出し;ついで、(d)ダイズDNAを含む試料と、ダイズ植物からのゲノムDNAを用いる核酸増幅反応に用いた場合にダイズ事象MON87769として同定されたトランス遺伝子インサートのダイズゲノム領域に相同である野生型ダイズゲノムDNAの特徴である蛍光シグナルを放出する第2のアンプリコンを生成する、プライマーセットSQ5924およびSQ5925およびVIC(商標)−標識プローブ、PB2512とを接触させ;(e)核酸増幅反応を行い、それによって第2のアンプリコンを生成し、ついで、(f)該第2のアンプリコンを検出し;ついで、(g)試料中の該第1および第2のアンプリコンを比較することを含み、ここに両方のアンプリコンの存在は、試料がトランス遺伝子インサートについてヘテロ接合体であることを示す。
【0022】
ダイズ事象MON87769を検出するキットを提供し、それは、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5から指定したプライマーを用いる。該キットを用いて生成するアンプリコンは、アンプリコンが(1)配列番号:1もしくは配列番号:2に記載のいずれかのヌクレオチド配列を含むまたは(2)配列番号:1および配列番号:2の両方のヌクレオチド配列を含む場合は、MON87769に特徴的である。
【0023】
本発明のもう1の態様は、事象MON87769を含むダイズ植物、または種子、または種子子孫、または植物もしくは植物の種子由来の生成物である。ある種の形態において、ダイズ事象MON87769をダイズ植物ゲノムに遺伝子移入することを含む変化したPUFA含量を含むダイズ植物を作製する方法であって、ここに、形質転換事象MON87769を含む種子の試料はATCC受託番号PTA−8911で寄託されている該方法も提供する。
【0024】
植栽販売用および日用商品製造用の種子は、本発明の態様である。かかる日用商品には、限定されるものではないが全体のまたは加工されたダイズ種子、動物飼料、植物油、粗びき粉、穀粉、非毒性プラスチック、印刷インク、滑剤、ワックス、液圧流体、変圧器流体、溶媒、化粧品、ヘアケア製品、豆乳、ダイズバター、納豆、テンペ、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、テクスチュライズド(texturized)ダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質、ホイップしたトッピング、調理油、サラダ油、ショートニング、レシチン、食用全ダイズ(生、焼いたまたは枝豆として)、豆乳、ダイズヨーグルト、ダイズチーズ、豆腐、湯葉およびバイオディーゼルが含まれる。
【0025】
本発明の前記したおよび他の態様は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】事象MON87769を含むダイズ植物を作製するために用いたバイナリー形質転換ベクターpMON77245のマップである。
【
図2】ダイズ事象MON87769を含む植物のゲノム中のトランスジェニック・インサートの構成であり;[A]は配列番号:3および配列番号:5の間の連結を形成する配列番号:1の相対ポジションに対応し;[B]は配列番号:4および配列番号:5の間の連結を形成する配列番号:2の相対ポジションに対応し;[C]は事象MON87769のゲノムに組み込んだ発現カセットの任意に割当て/命名した5'末端を挟むダイズゲノム配列、配列番号:3の相対ポジションに対応し;[D]は事象MON87769のゲノムに組み込んだ発現カセットの任意に割当て/命名した3'末端を挟むダイズゲノム配列、配列番号:4の相対ポジションに対応し;[E]は事象MON87769を含む植物のゲノムにインサートした発現カセットの配列、配列番号:5を含む種々の要素を表し;および[F]は図の左から右に、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:4を含む隣接配列を表し、ここに、これらの配列は事象MON87769を含むダイズ植物のゲノムに存在するため、配列番号:1および配列番号:2は前記したように取り込まれている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
配列の簡単な説明
配列番号:1−ダイズゲノムDNAと組み込んだ発現カセットとの間の右側ボーダー連結を表す20ヌクレオチド配列。この配列は配列番号:6のポジション979から998に対応する。また、配列番号:1(
図2の[A])は配列番号:3のポジション979ないし988([C]、
図2を参照されたい)および配列番号:5のポジション1ないし10([E]、
図2を参照されたい)に対応するデサチュラーゼ発現カセットの組み込まれた右側ボーダーに対応するヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号:2−組み込まれた発現カセットおよびダイズゲノムDNAの間の左側ボーダー連結を表す20ヌクレオチド配列。この配列は、配列番号:6のポジション8346ないし8365に対応する。また、配列番号:2([B]、
図2を参照されたい)は、配列番号:5のポジション7358ないし7367([E]、
図2を参照されたい)に対応するヌクレオチド配列および配列番号:4のポジション1ないし10([D]、
図2を参照されたい)に対応する3'フランキング配列である。
【0029】
配列番号:3−T−DNAインサートの領域までおよびそれを含むMON87769のインサートしたDNAを挟む5'配列。
【0030】
配列番号:4−T−DNAインサートの領域までおよびそれを含むMON87769のインサートしたDNAを挟む3'配列。
【0031】
配列番号:5−組み込んだ後の右側および左側ボーダー配列を含む、組み込んだデサチュラーゼ発現カセットの配列。
【0032】
配列番号:6−MON87769のインサートしたDNAを挟む5'配列のコンティグ(配列番号:3)、組み込んだ発現カセットの配列(配列番号:5)およびMON87769のインサートしたDNAを挟む3'配列を表す9294bpのヌクレオチド配列。
【0033】
配列番号:7−pMON77245のデサチュラーゼ発現カセット。
【0034】
配列番号:8−MON87769事象ならびにMON87769事象の接合体構造を同定するために用いたプライマーSQ5923。プライマーSQ5923は配列番号:6のポジション944ないし968に対応する右側T−DNAインサートボーダーに近接するインサートしたデサチュラーゼカセットを挟む5'領域に対応する。プライマーSQ5923およびSQ5924の組合せを用いるPCRアンプリコンは、事象MON87769の存在について陽性である。
【0035】
配列番号:9−MON87769事象ならびにMON87769事象の接合体構造を同定するために用いたプライマーSQ5924。プライマーSQ5924は、配列番号:6のポジション1007ないし1025に対応する右側T−DNAインサートボーダーに近接するインサートしたデサチュラーゼカセットの5'領域に相補的である。プライマーSQ5923およびSQ5924の組合せを用いるPCRアンプリコンは、事象87769の存在について陽性である。
【0036】
配列番号:10−MON87769事象を同定するために用いたプローブPB2511。このプローブは、配列番号:6のポジション986ないし1005に配列が対応する6FAM(商標)−標識合成オリゴヌクレオチドである。6FAM(商標)−標識プローブPB2511と組み合わせてプライマーSQ5923およびSQ5924を用いる増幅反応における蛍光シグナルの放出は、事象MON87769の特徴である。
【0037】
配列番号:11−MON87769事象の接合体構造を決定するために用いたプライマーSQ5925。プライマーSQ5925は、配列番号:6のポジション8372ないし8395に対応する左側T−DNAに近接するインサートした発現カセットを挟む3'領域に相補的である。6FAM(商標)−標識プローブPB2512ならびにプライマーSQ5923およびSQ5925を用いたPCRアンプリコンの検出は、接合体構造アッセイにおける野生型の存在について陽性である。
【0038】
配列番号:12−MON87769事象の接合体構造を決定するために用いたプローブPB2512。このプローブは、事象MON87769の発現カセットのインサートの点においてプライマーSQ5925に相同の領域の直後の、野生型ゲノムDNAの領域に配列が対応するVIC(商標)−標識合成オリゴヌクレオチドである。プライマーSQ5924およびSQ5925を用いて生成したPCRアンプリコンは、事象MON87769についての接合体構造アッセイにおける野生型対立遺伝子の存在について陽性であるプローブPB1112を用いて蛍光シグナルの放出を生じる。
【0039】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、ステアリドン酸(SDA)を含む油組成物を有する事象MON87769を含むトランスジェニック・ダイズ(Glycine max)ならびにその種子および子孫に関する。さらに、本発明は、ダイズ事象MON87769にインサートしたDNA構築物、事象MON87769を含むダイズ植物または種子に見出されるトランス遺伝子/ゲノムインサート領域、および、事象MON87769を含むダイズ植物または種子ならびにそれらの子孫中のトランス遺伝子/ゲノムインサート領域の検出に関する。
【0040】
以下の定義および方法は、本発明をより良好に定義し、当業者を本発明の実施に案内するために提供する。別段注記しない限り、用語は当業者による慣用的な用法に従って理解される。分子生物学における一般的な用語の意義は、Riegerら,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,第5版,Springer-Verlag:New York,1991;およびLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994にも見出し得る。
【0041】
本明細書で用いる「ダイズ」なる用語は、グリシン・マックス(Glycine max)を意味し、野生型ダイズ種ならびに種間育種を許容するグリシン・ソジャ(Glycine soja)に属する植物を含む、ダイズと育種し得るすべての植物品種を含む。
【0042】
本明細書中で用いる「を含む」なる用語は、「を含むがそれに限定されない」を意味する。
【0043】
「グリホセート」とは、N−ホスホノメチルグリシンおよびその塩をいう。N−ホスホノメチルグリシンは広いスペクトルの植物種に対して活性を有するよく知られた除草剤である。
【0044】
「デサチュラーゼ」とは、1またはそれを超える脂肪酸の連続的な炭素の間を不飽和にしてまたはその間に二重結合の形成を触媒してモノ−またはポリ−不飽和脂肪酸またはその前駆体を生成するポリペプチドをいう。OAをOLに、LAをALAに、またはALAをSDAに変換するのを触媒し得るポリペプチドが特に関心があり、それには、12、15または6位で不飽和化する酵素が含まれる。デサチュラーゼ活性を有する特定のポリペプチドを選択するために考慮することには、限定されるものではないが、ポリペプチドの至適pH、ポリペプチドが律速酵素またはそのコンポーネントであるか、用いるデサチュラーゼが望ましいPUFAの合成に必須であるか、および/またはポリペプチドによって補助因子が必要であるか、ということが含まれる。発現したポリペプチドは、好ましくは宿主細胞中のその位置の生化学的環境に匹敵する特徴を有する。例えば、ポリペプチドは基質(または複数の基質)について競合しなければならないこともあり得る。
【0045】
「日用商品」とは、ダイズまたはダイズ油由来の材料からなり、消費者に販売されるいずれかの商品をいう。加工ダイズは、世界におけるタンパク質飼料および植物油の最大の供給源である。ダイズ植物MON87769を用いて、ダイズから典型的に得られる日用品を製造することができる。ダイズ事象MON87769を含む種子の試料は、以下に記載するようにATCC受託番号PTA−8911で寄託されている。MON87769のダイズは、粗びき粉、穀粉または油に加工し得、ならびに陸棲および水棲動物の両方のための動物飼料中のタンパク質または油源として使用し得る。事象MON87769を含む植物、植物部分または種子からのダイズおよびダイズ油は、多くの異なる製品の製造に使用することができ、それには限定されるものではないが、非毒性プラスチック、印刷インク、滑剤、ワックス、液圧流体、変圧器流体、溶媒、化粧品およびヘアケア製品が含まれる。事象MON87769を含む植物、植物部分または種子からのダイズおよび油は、豆乳、ダイズバター、納豆およびテンペのような全ダイズから製造される種々のダイズ食品、ダイズ粗びき粉、ダイズ穀粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、テクスチュライズド・ダイズタンパク質濃縮物、加水分解ダイズタンパク質、ホイップしたトッピング、調理油、サラダ油、ショートニングおよびレシチンを含む加工ダイズおよびダイズ油から製造されるダイズ食品における使用に好適となり得る。全ダイズも食用であり、典型的に生、焼いたまたは枝豆として消費者に販売されている。典型的には全ダイズを浸漬および粉砕することによって製造する豆乳は、他の加工なしに消費し得、噴霧乾燥し得、または、ダイズヨーグルト、ダイズチーズ、豆腐または湯葉を形成するよう加工し得る。
【0046】
MON87769の油を用いてバイオディーゼルを製造し得る。従来のディーゼルエンジンにおけるバイオディーゼルの使用は、石油ディーゼル燃料と比較して硫酸化物、一酸化炭素および微粒子のような汚染物の実質的な減少を生じ、スクールバスにおける使用により毒性のディーゼル排気物に対する曝露を大きく減少することができる。バイオディーゼルは典型的にはダイズ油を抽出、濾過および精製して遊離の脂肪およびリン脂質を除去し、ついで油をメタノールでトランス−エステル化して脂肪酸のメチルエステルを形成することによって得られる(例えば、米国特許第5,891,203号を参照されたい)。得られるダイズメチルエステルは一般的に「バイオディーゼル」といわれている。事象MON87769を含む植物、植物部分または種子由来の油は、例えば、アセタールを油と混合することによるようにメチルエステルを形成することなくディーゼル燃料として使用し得る(例えば、米国特許第6,013,114号を参照されたい)。該油を製造するために用いた事象MON87769を含む植物の種子、植物部分または種子は、本発明の方法によって同定し得る。MON87769事象の種子または種子の混合物(そのうちのすべてまたは幾分かはMON87769)から精製した油は、試験に利用可能なDNAを比較的ほとんどまたは全く有しないであろう。しかしながら、油を抽出する種子は、本発明の方法を用いて特徴付けして、サラダ油を製造するために用いる種子の集合内のMON87769事象の存在を同定することができる。また、サラダ油を製造するために用いるプロセスからの植物廃棄物は、本発明の方法において使用して、サラダ油を製造するために加工した植物または種子の混合物内のMON87769を含む植物、植物部分または種子の存在を同定することができる。同様にして、日用商品を製造した後に残る、またはダイズ種子をつづいて収穫した後に残る植物残渣は、本発明の方法によって特徴付けして、該日用商品を製造するために用いる原料内のMON87769事象を同定することができる。
【0047】
トランスジェニック「事象」は、異種DNA、すなわち関心のあるトランス遺伝子を含む核酸構築物で植物細胞を形質転換し、植物のゲノムにトランス遺伝子をインサートして得られた植物の集合を再生し、ついで、特定のゲノム位置へのインサートによって特徴付けられる特定の植物を選抜することによって生成する。「事象」なる用語は、異種DNAを含む元の形質転換体および形質転換体の子孫をいう。「事象」なる用語は、形質転換体と異種DNAを含むもう1の品種との間の有性外部交配によって生成した子孫もいう。反復親に繰り返し戻し交配した後でも、形質転換した親からのインサートしたDNAおよびフランキングDNAは同一の染色体位置で交配の子孫に存在する。「事象」なる用語は、インサートしたDNA、およびインサートしたDNAを含む1の親系統(例えば、元の形質転換体および自家受粉から生じた子孫)とインサートしたDNAを含まない親系統との有性交配の結果として関心のあるトランス遺伝子を含むインサートしたDNAを受容する子孫に移行すると予想されるインサートしたDNAにすぐ近接するフランキング領域を含む元の形質転換体からのDNAもいう。本発明は、事象MON87769にユニークまたは特徴であるDNA配列、ならびに事象MON87769を含む植物組織由来の植物細胞、組織、種子および加工生成物に関する。
【0048】
本明細書で用いるように「単離したDNA分子」という場合、その自然環境内以外で、DNA分子が単独または他の組成物と組合せて存在するものであることを意図する。例えば、ダイズゲノムのDNA内に自然に見出されるコード配列、イントロン配列、非翻訳リーダー配列、プロモーター配列、転写終結配列などは、それらがダイズゲノム内に存在する限りはダイズゲノムから単離されたとみなされない。しかしながら、これらのコンポーネントおよびコンポーネントの部分の各々は、構造体およびコンポーネントがダイズゲノム内に存在しない限り、本明細書の範囲内において「単離された」ものである。同様にして、プリミュラ・ジュリア(Primula juliae)のデルタ6デサチュラーゼタンパク質またはノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)デルタ15デサチュラーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、構造が最初に見出された生物(P.juliaeまたはN.crassa)のDNA内にヌクレオチド配列が存在しない限り、単離されたヌクレオチド配列であろう。ノイロスポーラ・クラッサのヌクレオチド配列がコードする同一のアミノ酸配列または実質的に同一のアミノ酸配列をコードする人工ヌクレオチド配列は、本明細書の目的のために単離されたとみなされる。本明細書の目的のために、いずれかのトランスジェニック・ヌクレオチド配列、すなわちダイズ植物事象MON87769の細胞のゲノムにインサートされたDNAのヌクレオチド配列は、MON87769事象を生じたダイズ細胞を形質転換するために用いたプラスミド内に、事象MON87769のゲノム内に存在するか、または、事象MON87769に由来する組織、子孫、生物試料または日用商品に検出可能な量で存在するかにかかわらず単離されたヌクレオチド配列とみなされる。したがって、ヌクレオチド配列またはそれに由来するいずれかのフラグメントは、DNA分子が細胞、または組織、または植物もしくは種子もしくは植物器官からのホモジネートから抽出し得る場合;または(いずれかかが事象MON87769由来の材料に由来する)細胞、または組織、または植物もしくは種子もしくは植物器官からのホモジネートからの抽出したDNAまたはRNAからのアンプリコンとして生成し得る場合は、単離されたまたは単離し得るとみなされる。そのことに関して、配列番号:1および配列番号:2に記載された連結配列、およびこれらの連結配列も含む事象MON87769由来のヌクレオチド配列は、これらの配列が事象MON87769の細胞のゲノム内に存在するか、または事象MON87769由来の組織、子孫、生物試料または日用商品に検出可能な量で存在するかにかかわりなく、単離されたまたは単離可能であるとみなされる。
【0049】
2の異なるトランスジェニック植物を交配して2の独立して分離する加わった外因性遺伝子を含む子を生成し得ることも理解される。適当な子孫の自家受粉は、両方が加えられた外因性遺伝子について同型接合である植物を生成し得る。親植物への戻し交配および非−トランスジェニック植物との外部交配も、植物的な繁殖であるとして予想される。異なる特性および作物について通常用いられる他の育種方法の記載は、幾つかの参考文献のうちの1、例えば、Breeding Methods for Cultivar Development,Wilcox J編,American Society of Agronomy,Madison WI (1987)におけるFehrに見出すことができる。
【0050】
「プローブ」とは、慣用的な標識またはレポーター分子、例えば、放射性同位元素、リガンド、化学ルミネセント剤または酵素が結合した単離した核酸である。かかるプローブは、標的核酸の鎖に、本発明の場合においてはダイズ植物からのまたは事象からのDNAを含む試料からのものにかかわらずダイズ事象MON87769からのゲノムDNAの鎖に相補的である。本発明にかかるプローブには、デオキシリボ核酸またはリボ核酸のみならず、標的DNA配列に特異的に結合し、かかる結合を用いてその標的DNA配列の存在を検出し得るポリアミドおよび他のプローブ材料も含まれる。
【0051】
「プライマー」は、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖にアニールしてプライマーと標的DNAとの間でハイブリッドを形成し、ついで、ポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼによって標的DNA鎖に沿って伸長する単離された核酸である。本発明のプライマー対とは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の慣用的な核酸増幅法によって、標的核酸配列の増幅のためのそれらの使用をいう。
【0052】
プローブおよびプライマーは、一般的に長さにおいて11ヌクレオチド以上であり、好ましくは18ヌクレオチド以上、より好ましくは24ヌクレオチド以上、おおよび最も好ましくは30ヌクレオチド以上である。かかるプローブおよびプライマーは、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。好ましくは、本発明にかかるプローブおよびプライマーは、標的配列との完全な配列類似性を有するが、標的配列とは異なるが標的配列にハイブリダイズする能力を保持するプローブを慣用的な方法によって設計することもできる。例えば配列番号:1−6のいずれか1以上またはそれらの相補体の少なくとも11の隣接するヌクレオチドを含む、1以上のプライマー、プライマー対またはプローブは、ポリヌクレオチドを含む分子を作製するためのヌクレオチド合成、クローニング、増幅または他の標準的な方法によって本発明の配列番号:1−6から「誘導」し得る。同様にして、配列番号:1−6またはそれに相補的な配列のいずれかから誘導されるべき1以上のヌクレオチド配列は、例えば、よく知られているイン・シリコ(in silico)分析(例えば、WojciechおよびRhoads,NAR 17:8543−8551,1989)を介して選択し得る。
【0053】
プローブおよびプライマーを調製および使用する方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,vol.1-3,Sambrookら編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989(以後、「Sambrookら,1989」という);Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,1992 (周期的な改訂を有する)(以後、「Ausubelら,1992」という);およびInnisら,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press: San Diego,1990に記載されている。PCR−プライマー対は、例えばPrimer(バージョン0.5、(著作権)1991,Whitchcad Institute for Biomedical Research,Cambridge,MA)のようなかかる目的が意図されたコンピュータプログラムを用いて、公知の配列から誘導し得る。
【0054】
本明細書に開示するフランキングDNAおよびインサート配列に基づくプライマーおよびプローブを用いて、従来の方法によって、例えば、かかる配列を再クローニングするおよびシークエンシングすることによって開示した配列を確認する(および必要な場合は修正する)ことができる。
【0055】
本発明の核酸プローブおよびプライマーは、標的DNA配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。いずれの慣用的な核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅法を用いても、試料中のトランスジェニック事象からのDNAの存在を同定し得る。核酸分子またはそのフラグメントは、特定の環境下で他の核酸分子に特異的にハイブリダイズすることができる。本明細書で用いるように、2の分子が逆平行の二本鎖核酸構造を形成することができる場合、2の核酸分子は互いに特異的にハイブリダイズすることができるという。核酸分子が完全な相補性を示す場合、もう1の核酸分子の「相補体」であるという。本明細書で用いるように、分子は、分子のうちの1のあらゆるヌクレオチドが他方のヌクレオチドに相補的である場合、「完全な相補性」を示すという。2の分子が少なくとも従来の「低ストリンジェンシーな」条件下で互いにアニールを保持させ得る十分な能力で互いにハイブリダイズし得る場合、それらは「最小限の相補性」という。同様にして、分子が従来の「高ストリンジェンシーな」条件下で互いにアニールを保持させ得る十分な能力で互いにハイブリダイズし得る場合、それらは「相補性」という。従来のストリンジェンシー条件は、Sambrookら,1989およびNucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,DC (1985)中、Haymesらによって記載されている。したがって、完全な相補性からの逸脱は、かかる逸脱が二本鎖構造を形成する分子の能力を完全に排除しない限り許容される。核酸分子がプライマーまたはプローブの要求を満たすためには、配列において十分に相補的であって、用いる特定の溶媒および塩濃度下で安定な二本鎖構造を形成することのみが要求される。
【0056】
本明細書で用いるように、実質的に相同である配列は、高ストリンジェンシーな条件下で比較する核酸配列の相補体に対して特異的にハイブリダイズする核酸配列である。DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェンシー条件、例えば、約45℃での6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)につづく50℃での2.0×SSCは、当業者に知られており、あるいはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーで選択することができる。また、洗浄工程における温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシーから、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで高めることができる。温度および塩は両方とも変化することができ、あるいは他の変数を変化させる間に温度または塩濃度のいずれかを一定に保持することもできる。好ましい形態において、本発明の核酸は、中度にストリンジェントな条件、例えば、約2.0×SSCおよび約65℃下で、配列番号:1および2に記載の1以上の核酸分子またはそれらの相補体もしくはいずれかのフラグメントに特異的にハイブリダイズする。特に好ましい形態において、本発明の核酸は、高ストリンジェンシー条件下で配列番号:1および2に記載の1以上の核酸分子またはそれらの相補体もしくはいずれかのフラグメントに特異的にハイブリダイズする。本発明の1の態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1および配列番号:2に記載の核酸配列またはそれらの相補体もしくはいずれかのフラグメントを有する。本発明のもう1の態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1および配列番号:2に記載の核酸配列またはそれらの相補体もしくはいずれかのフラグメントと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、912%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%の配列同一性を共有している。本発明のさらなる態様において、本発明の好ましいマーカー核酸分子は、配列番号:1および配列番号:2またはそれらの相補体もしくはいずれかのフラグメントに記載の配列と95%、96%、97%、98%、99%および100%の配列同一性を共有している。配列番号:1および配列番号:2は、植物育種法におけるマーカーとして使用して、すべて出典明示して本明細書の一部とみなす「DNA markers: Protocols,applications,and overviews'',pp.173-185」中、Creganら編,Wiley-Liss NY,1997において単純配列リピートDNAマーカー分析に記載されている方法と同様に遺伝子交配の子孫を同定することができる。標的DNA分子に対するプローブのハイブリダイゼーションは当業者に知られている多くの方法によって検出することができ、これらには、限定するものではないが、蛍光タグ、放射性タグ、抗体ベースタグおよび化学ルミネセントタグが含まれ得る。
【0057】
特定の増幅プライマー対を用いた標的核酸配列(例えば、PCRによる)の増幅に関して、「ストリンジェントな条件」とは、対応する野生型配列(またはその相補体)を有するプライマーが結合し、かつ、好ましくはユニークな増幅産物、DNAサーマル増幅反応におけるアンプリコン、を生成する標的核酸配列にのみプライマー対がハイブリダイズするのを許容する条件である。
【0058】
「(標的配列)に特異的である」なる用語は、プローブまたはプライマーが標的配列を含む試料中の標的配列にのみストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを示す。
【0059】
本明細書中で用いる「増幅DNA」または「アンプリコン」とは、核酸テンプレートの一部分である標的核酸配列の核酸増幅の産物をいう。例えば、有性交配から得られたダイズ植物が本発明のダイズ植物からのトランスジェニック事象ゲノムDNAを含んでいるかを判定するためには、ダイズ植物組織試料から抽出したDNAを、インサートした異種DNAのインサート部位に近接する植物のゲノム中のフランキング配列由来のプライマーおよびインサートした異種DNA由来の第2のプライマーを含むプライマー対を用いて核酸増幅法に付して、事象DNAの存在についての特徴であるアンプリコンを生成することができる。アンプリコンはこの長さであり、事象について特徴でもある配列を有する。アンプリコンは、プライマー対の合した長さプラス1ヌクレオチド塩基対、好ましくはプラス約50ヌクレオチド塩基対、より好ましくはプラス約250ヌクレオチド塩基対、およびなおさらに好ましくはプラス約450ヌクレオチド塩基対の長さの範囲とし得る。あるいは、プライマー対は、全体のインサートヌクレオチド配列を含むアンプリコンを生成するように、インサートしたDNAの両側のフランキング配列由来とすることができる。植物ゲノム配列由来のプライマー対のメンバーは、インサートしたDNA分子から一定の距離に位置することができ、この距離は1ヌクレオチド塩基対から約2000ヌクレオチド塩基対の範囲とし得る。「アンプリコン」なる用語の使用は、DNAサーマル増幅反応で形成し得るプライマー−ダイマーを特異的に排除する。
【0060】
核酸増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む当該技術分野で知られている種々の核酸増幅法のうちのいずれかによって行うことができる。種々の増幅法が当該技術分野で知られており、とりわけ米国特許第4,683,195号および第4,683,202号ならびにPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら編,Academic Press,San Diego,1990に記載されている。PCR増幅法は22kbまでのゲノムDNAおよび42kbまでのバクテリオファージDNAを増幅するために開発されている(Chengら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5695-5699,1994)。これらの方法ならびにDNA増幅の分野で知られている他の方法を、本発明の実施に用いることができる。ダイズ事象MON87769を含む植物または種子組織からの異種DNAインサートの配列またはフランキング配列は、PCRアンプリコンまたはクローン化したDNAの標準DNAシークエンシングに従って、本明細書に記載した配列由来のプライマーを用いて事象からかかる配列を増幅することによって確認(および必要な場合は修正)することができる。
【0061】
これらの方法によって生成したアンプリコンは、複数の技術によって検出することができる。1のかかる方法は、Genetic Bit Analysis(例えば、Nikiforovら,Nucleic Acid Res.22:4167-4175,1994)であり、そこでは、近接するフランキングゲノムDNA配列およびインサートしたDNA配列の両方を重複するDNAオリゴヌクレオチドを設計する。オリゴヌクレオチドはマイクロウェルプレートのウェルに固定化する。(インサートした配列中の1のプライマーおよび近接するフランキングゲノム配列中のプライマーを用いた)関心のある領域のPCRの後に、一本鎖PCR産物を固定化したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、DNAポリメラーゼを用いた単一塩基伸長反応のテンプレートおよび予想される次の塩基に特異的な標識ddNTPとして作用させることができる。読出しは蛍光またはELISA−ベースとし得る。シグナルは、首尾よい増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一塩基伸長に起因するインサート/フランキング配列の存在を示す。
【0062】
もう1の方法は、Winge(Innov.Pharma.Tech.00:18−24,2000)によって記載されているピロシークエンシング(Pyrosequencing)技術である。この方法では、近接するゲノムDNAおよびインサートDNA連結部に重なるオリゴヌクレオチドを設計する。オリゴヌクレオチドは、関心のある領域からの一本鎖PCR産物にハイブリダイズし(インサートした配列中の1のプライマーおよびフランキングゲノム配列中の1のプライマー)、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン−5'−ホスホ硫酸およびルシフェリンの存在下でインキュベートする。dNTPを個々に添加し、取込みによって測定する光シグナルを生じる。光シグナルは、首尾よい増幅、ハイブリダイゼーション、および単一もしくは複数の塩基伸長に起因するトランス遺伝子インサート/フランキング配列の存在を示す。
【0063】
Chenら(Genome Res.9:492-498,1999)によって記載されている蛍光偏光法は、本発明のアンプリコンを検出するために使用し得る方法である。この方法を用いて、ゲノムフランキングおよびインサートしたDNA接合部上に重なるオリゴヌクレオチドを設計する。オリゴヌクレオチドは、関心のある領域からの一般鎖PCR産物にハイブリダイズし(インサートしたDNA中の1のプライマーおよびフランキングゲノムDNA配列中の1のプライマー)、DNAポリメラーゼおよび蛍光−標識ddNTPの存在下でインキュベートする。単一塩基伸長は、ddNTPの取込みを生じる。取込みは蛍光計を用いた偏光における変化として測定し得る。偏光における変化は、首尾よい増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一塩基伸長に起因するトランス遺伝子インサート/フランキング配列の存在を示す。
【0064】
TaqMan(登録商標)(PE Applied Biosystems,Foster City,CA)は、DNA配列の存在を検出および定量化する方法として記載されており、製造業者によって提供される指示書で十分に理解される。簡単には、ゲノムフランキングおよびインサートDNA連結部上に重なるFRETオリゴヌクレオチド・プローブを設計する。FRETプローブおよびPCRプライマー(インサートDNA配列中の1のプライマーおよびフランキングゲノム配列中の1のプライマー)を、高温安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環する。FRETプローブのハイブリダイゼーションは、FRETプローブ上の消光基から離れての蛍光基の切断および放出を生じる。蛍光シグナルは、首尾よい増幅およびハイブリダイゼーションに起因するフランキング/トランス遺伝子インサート配列の存在を示す。
【0065】
Molecular Beaconsが、Tyangiら(Nature Biotech.,14:303−308,1996)に記載されているように配列検出に使用するために記載されている。簡単には、フランキングゲノムDNAおよびインサートDNA連結部上に重なるFRETオリゴヌクレオチド・プローブを設計する。FRETプローブのユニークな構造は、蛍光基および消光基を近くに隣接して維持する二次構造をそれが含むことを生じる。FRETプローブおよびPCRプライマー(インサートDNA配列中の1のプライマーおよびフランキングゲノム配列中の1のプライマー)は、高温安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環する。首尾よいPCR増幅につづいて、標的配列に対するFRETプローブのハイブリダイゼーションはプローブ二次構造の除去ならびに蛍光基および消光基の空間的分離を生じ、それは蛍光シグナルの生成を生じる。蛍光シグナルは、首尾よい増幅およびハイブリダイゼーションに起因するフランキング/トランス遺伝子インサート配列の存在を示す。
【0066】
マイクロフルイディックス(microfluidics)(米国特許出願公開2006068398、米国特許第6,544,734号)のような他の記載された方法は、DNA試料を分離および増幅するための方法およびデバイスを提供する。光学色素を用いて特異的DNA分子(WO/05017181)を検出および定量する。ナノチューブ・デバイス(WO/06024023)は特異的DNA分子を結合し、ついで検出し得るDNA分子またはナノビーズを検出するための電子センサーを含む。
【0067】
本明細書に記載した組成物およびDNA検出の分野においてよく知られている方法を用いてDNA検出キットを開発し得る。このキットは試料中のダイズ事象MON87769 DNAの同定に有用であり、適当な事象DNAを含むダイズ植物を育種する方法に適用し得る。キットは、配列番号:1ないし配列番号:5に相同または相補的なDNAプライマーまたはプローブ、DNAのトランス遺伝子遺伝要素に含まれるDNAに相同または相補的なDNAプライマーまたはプローブを含み得る。これらのDNA配列はDNA増幅反応において使用し得、またはDNAハイブリダイゼーション法におけるプローブとして使用し得る。事象MON87769を含むダイズゲノム中に含まれるゲノムDNAおよびトランス遺伝子の遺伝要素の配列は、以下のように組織化された2の遺伝子カセットからなる:ノパリン右側ボーダー配列、つづくアグロバクテリウム(Agrobacterium)オクトピン型Tiプラスミドからのtml(癌腫形態ラージ)遺伝子の3'UTRの上流である、プリミュラ・ジュリア(Primula juliae)デルタ6デサチュラーゼ(WO2005021761、出典明示して本明細書の一部とみなす)の上流である、グリシン・マックス(Glycine max)ベータ−コングリシニン貯蔵タンパク質(アルファ'-bcsp)の7Sアルファ・サブユニットからのプロモーターおよびリーダー配列からなる第1の遺伝子カセットにつづく、エンドウRbcS2遺伝子の3'UTRの上流である、コドン最適化したノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)デルタ15デサチュラーゼ(US20060156435、出典明示して本明細書の一部とみなす)の上流であるグリシン・マックス ベータ−コングリシニン遺伝子の7Sアルファ・サブユニットからのプロモーターおよびリーダー配列につづくオクトピン左側ボーダー配列(
図1を参照されたい)からなる第2の遺伝子カセット。DNA増幅法にプライマーとして有用なDNA分子は、MON87769事象に含まれるトランス遺伝子インサートの遺伝子要素の配列から誘導し得る。これらのプライマー分子は、配列番号:3、塩基1ないし988および配列番号:4塩基1ないし939に示す事象MON87769のトランス遺伝子インサートを挟むゲノムから誘導したDNAプライマー分子も含むプライマーセットの一部分として使用し得る。
【0068】
ダイズ植物MON87769は、プラスミド構築物pMON77245(
図1に示す)を有する同系繁殖体ダイズ系統のアグロバクテリウム媒介形質転換プロセスによって作製する。使用する形質転換方法は、米国特許第5,914,451号に記載されたものと同様である。プラスミド構築物pMON77245は、ダイズ植物細胞におけるデサチュラーゼタンパク質の発現に必要な調節遺伝要素を有する連結した植物発現カセットを含む。ダイズ細胞はインタクトな(intact)ダイズ植物に再生し、個々の植物は植物発現カセットおよびSDAを含む油組成物ならびに非連結グリホセート耐性選抜カセットの消失の完全性を示した植物の集合から選抜した。そのゲノム中にpMON77245の連結した植物発現カセットを含むダイズ植物は、本発明の態様である。
【0069】
MON87769として命名した事象を含むダイズ植物のゲノムにインサートしたプラスミドDNAは、詳細な分子分析によって特徴付けた。これらの分析には:インサート数(ダイズゲノム内の組込み部位の数)、コピー数(1の遺伝子座内のT-DNAのコピーの数)、およびインサートした遺伝子カセットの完全性が含まれる。インタクトなデサチュラーゼコード領域およびそれらのそれぞれの調節要素、プロモーター、イントロンおよび植物発現カセットのポリアデニル化配列ならびにプラスミドpMON77245バックボーンDNA領域を含むDNA分子プローブを用いた。データは、事象MON87769を含むダイズゲノムが1コピーのデサチュラーゼカセットを含む単一T-DNAインサートを含むことを示している。インタクトな遺伝子カセットに結合したまたは結合していない形質転換ベクターpMON77245からのさらなる要素はMON87769のゲノムに検出されなかった。最後に、インバースPCRおよびDNA配列分析を行って、5'および3'のインサート−対−植物ゲノム連結を決定し、インサート内の要素の構成を確認し(
図2)、事象MON87769を含むダイズ植物中のインサートの完全なDNA配列を決定した(配列番号:5)。
【0070】
以下の実施例を含めて、本発明の特定の好ましい形態の例を示す。以下に示す実施例に記載する技術が本発明の実施によく機能することを本発明者らが見出したアプローチを示し、したがってその実施のための好ましい様式の例を構成し得るとみなし得ることは当業者により理解される。しかしながら、当業者は、本明細書の開示に鑑みて、開示した特定の形態に多くの変化を作成することができ、本発明の意図および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果を未だ得ることができることを理解する。
【0071】
寄託情報
MON87769と命名したトランスジェニックダイズ事象を含む種子系統MON87769の少なくとも2500種子の寄託を行った。寄託は合衆国バージニア州20110-2209、マナサス、ユニバーシティボールバード10801、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に行った。寄託にはATCC受託番号PTA−8911が割り当てられた。寄託日は2008年2月5日であった。寄託に対するアクセスは、出願係属の間、請求の際にそれに対して資格を与えられた個人に利用可能であろう。寄託は30年間または最新の請求から5年間、または特許の強制的な期間のいずれか長い期間、公共の寄託所であるATCCに維持され、その期間の間に生存可能でない場合は置き換えられる。出願人は、本特許下に登録された権利または植物品種保護法(7 U.S.C.2321 参照)を含む品種保護のいずれか他の形態のいずれの侵害も放棄しない。
【0072】
実施例
実施例1
pMON77245でのダイズA3525の形質転換および事象選抜
MON87769と命名した事象を含む最初のトランスジェニックダイズ植物は、pMON77245由来のDNAフラグメントを用いたダイズのアグロバクテリウム媒介形質転換によって作製した(
図1;出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許出願公開20080063691を参照されたい)。バイナリー植物形質転換ベクターpMON77245は2の植物形質転換カセットまたはT-DNAを含む。各カセットは、各々、5'および3'末端で右側ボーダーおよび左側ボーダー配列によって挟まれている。発現カセット(配列番号:7)を2のデサチュラーゼ遺伝子の発現に用いた。2の遺伝子カセットは以下のような構成とした:ノパリン右側ボーダー配列につづく、アグロバクテリウムのオクトピン型のTiプラスミドからのtml(癌腫形態ラージ)遺伝子の3'UTRの上流である、プリミュラ・ジュリア(Primula juliae)デルタ6デサチュラーゼ(WO2005021761、出典明示して本明細書の一部とみなす)の上流である、グリシン・マックス(Glycine max)ベータ−コングリシニン貯蔵タンパク質(アルファ'-bcsp)の7Sアルファ・サブユニットからのプロモーターおよびリーダー配列からなる第1の遺伝子カセットにつづく、エンドウRbcS2遺伝子の3'UTRの上流である、コドン最適化したノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)デルタ15デサチュラーゼ(US20060156435、出典明示して本明細書の一部とみなす)の上流であるグリシン・マックス ベータ−コングリシニン遺伝子の7Sアルファ・サブユニットからのプロモーターおよびリーダー配列につづくオクトピン左側ボーダー配列(
図1を参照されたい)からなる第2の遺伝子カセット。第2の形質転換カセットは、形質転換選択マーカーとして使用するグリホセート耐性を付与する遺伝子を含む。
【0073】
pMON77245で形質転換した外植片は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換を介して得た。植物は形質転換した組織から再生した。発達している根部を採取し、デサチュラーゼカセット配列(配列番号:7)に基づくプライマーを用いてデサチュラーゼカセットの存在についてPCRによってアッセイした。ほぼ38のR0形質転換事象を作製し、Invader(登録商標)(Third Wave Technologies,Inc.,Madison,WI)によって単一コピーのデサチュラーゼカセットの存在について試験した。また、連鎖サザンブロット分析を用いて、各事象におけるトランスジェニック対立遺伝子の数を決定した。デサチュラーゼカセット内に含まれないため、制限酵素SwaIを対立遺伝子サザンに選択した。この酵素は複数のコピー事象中のトランス遺伝子の密接に連鎖するコピーを通常は分離するように、ダイズゲノム内で十分な頻度で切断する。デサチュラーゼカセットの単一コピーインサートを示すR0事象を自家受粉させてR1種子を生成した。R1種子の脂肪酸組成は、FAME−GC分析によって決定した。値は成熟種子中の8−12%のSDAの範囲であった。これらの分析に基づいて、10の事象を選択して進展させた。
【0074】
選択したR2植物に対してサザン分析を行って、発現カセットの存在および形質転換ベクターからの望ましくないヌクレオチド配列の不存在を確認した。さらに、各事象についてデサチュラーゼカセットインサート部位を挟む配列を決定した。MON87769と命名した事象を含む1の子孫系統を、その性能特徴および分子特徴に基づいて選抜した。
【0075】
実施例2
インバースPCRを用いたフランキング配列の単離
MON87769中のT−DNAインサートを挟む配列を、Ochmanら,1990に記載されたインバースPCRおよびTAIL(Thermal Asymmetric InterLaced)PCRを用いて決定した。温室条件下で生育させた組織からの野生型A3525およびトランスジェニック系統の両方から植物ゲノムDNAを単離した。凍結した葉部組織を、液体窒素または機械的な摩砕と一緒にモーターおよび乳鉢によって摩砕した。22mLの体積の抽出緩衝液を〜1gの摩砕した葉部組織に加え、65℃にて1時間インキュベートした。CTAB抽出緩衝液は1.4MのNaCl、2%のCTAB、20mMのEDTAおよび100mMのTris-HCl、pH8.0からなる。使用する直前に、0.02%のベータ−メルカプトエタノールおよび0.5mgのRNase Aを抽出緩衝液に加えた。試料は、12mLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)の溶液で抽出し、ついで、4000×G、4℃にて10分間遠心した。その上清を新たな試験管に移し、15mLのイソプロパノールでDNAを沈殿させた。4000×Gにて10分間遠心した後に、そのペレットを5mLの70%エタノールで洗浄した。4000×Gにて5分間の最後の遠心を行い;そのペレットを風乾し、ついで300μLの水に再懸濁した。
【0076】
小分けしたDNAをTAIL PCRに付し、インサート部位に近接する配列の領域を単離し、シークエンシングした。さらに小分けしたDNAを、T-DNAの制限分析に基づいて選択した制限エンドヌクレアーゼで消化した。制限フラグメントを自己連結させた後に、T-DNAの5'および3'末端から伸びる配列を増幅するT-DNA配列から消化したプライマーを用いてPCRを行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、QIAGENゲル精製キット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて精製した。結果としての産物を標準シークエンシングプロトコールを用いて直接的にシークエンシングした。これらの2の方法を用いた、デサチュラーゼカセットT-DNAの右側ボーダー配列に伸長する5'−フランキング配列を配列番号:3に示す([C]、
図2を参照されたい)。デサチュラーゼT-DNAの左側ボーダー配列に伸びる3'−フランキング配列を配列番号:4([D]、
図2を参照されたい)に示す。A3525ゲノムDNAに完全に組み込まれたpMON77245からのデサチュラーゼカセットDNA(配列番号:7)の一部分を配列番号:5([E]、
図2を参照されたい)に示す。
【0077】
単離した配列をT-DNA配列と比較して、フランキング配列および同時に単離したT-DNAフラグメントを同定した。発現カセットの存在の確認は、推定フランキング配列データおよび公知のT-DNA配列に基づいて設計したプライマーを用いたPCRによって行った。T-DNAが形質転換系統に組み込まれた同一の領域に対応するA3525野生型配列を、MON87769のフランキング配列から設計したプライマーを用いて単離した。MON87769のフランキング配列およびA3525野生型配列を複数のヌクレオチドおよびタンパク質データベースに対して分析した。この情報を用いて植物ゲノムに対するトランス遺伝子の関係を調べ、インサート部位の完全性を見た。フランキング配列および野生型配列を用いて、実施例3に記載したように事象を同定し、接合体構造を決定するために使用したTaqManエンドポイントアッセイ用のプライマーを設計した。
【0078】
実施例3
事象特異的なエンドポイントTaqManおよび接合体構造アッセイ
試料中の事象MON87769の存在を同定するために用いた方法を事象−特異的エンドポイントTaqMan PCRアッセイに記載し、それに関する条件の例を表1および表2に記載する。エンドポイントアッセイに使用したDNAプライマーはプライマーSQ5923(配列番号:8)、SQ5924(配列番号:9)および6FAM(商標)標識プライマーPB2511(配列番号:10)である。6FAM(商標)は、DNAプライマーに結合したApplied Biosystems(Foster City,CA)の蛍光色素製品である。TaqMan MGB(Minor Groove Binding)プローブに関しては、Taq DNAポリメラーゼの5'エキソヌクレアーゼ活性が5'−末端から、発蛍光団と消光団との間でプローブを切断する。標的DNA鎖にハイブリダイズすると、消光団および発蛍光団は蛍光シグナルを発するのに十分に離れる。
【0079】
SQ5923(配列番号:8)およびSQ5924(配列番号:9)は、PB2511(配列番号:10)と一緒に記載したように使用した場合、事象MON87769 DNAについての特徴であるDNAアンプリコンを生成する。この分析の対照には、事象MON87769 DNAを含むことが知られているダイズからの陽性対照、非−トランスジェニックダイズからの陰性対照およびテンプレートDNAを含まない陰性対照が含まれるべきである。
【0080】
これらのアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp(登録商標)PCR System 9700、Stratagene Robocycler(登録商標)、MJ Engine、Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler(登録商標)Gradientサーマルサイクラーと使用するために最適化する。事象MON87769 DNAを同定するアンプリコンを生成する他の方法および装置は当業者に知られ得る。
【0081】
Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin-Elmer 9700、Eppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラー、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700またはMJ Research DNA Engine PTC−225サーマルサイクラーにおけるDNA増幅は以下のサイクリングパラメーターを用いて行う。Eppendorf Mastercycler GradientまたはMJ EngineでPCRを行う場合、サーマルサイクラーは計算した様式で作動させなければならない。
【0082】
Perkin-Elmer 9700でPCRを行う場合、サーマルサイクラーは最大に設定した変化速度で作動させなければならない。
【0085】
試料中の事象MON87769を含む組織の接合体構造の決定は、事象−特異的接合体構造エンドポイントTaqMan PCRを用いて行い、それについての条件の例を表3および表4に記載する。接合体構造アッセイに用いたDNAプライマーはプライマーSQ5923(配列番号:8)、SQ5924(配列番号:9)、SQ5925(配列番号:11)、6FAM(商標)標識プライマーPB2511(配列番号:10)およびVIC(商標)標識プライマーPB2512(配列番号:12)である。6FAM(商標)およびVIC(商標)はDNAプライマーに結合したApplied Biosystems(Foster City,CA)の蛍光色素商品である。
【0086】
SQ5923(配列番号:8)およびSQ5924(配列番号:9)は、PB2511(配列番号:10)とこれらの反応法に使用した場合、事象MON87769 DNAの特徴であるDNAアンプリコンを生成する。この分析の対照には、事象MON87769 DNAを含むダイズからの陽性対照、非−トランスジェニックダイズからの陰性対照およびテンプレートDNAを含まない陰性対照が含まれるべきである。
【0087】
SQ5923(配列番号:8)およびSQ5925(配列番号:11)は、PB2512(配列番号:12)とこれらの反応法に使用した場合、野生型対立遺伝子の特徴であるDNAアンプリコンを生成する。
【0088】
ヘテロ接合性は、プローブPB2511およびPB2512の両方からの蛍光シグナルの遊離によって示される両方のアンプリコンの存在によって決定する。
【0089】
これらのアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700、Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラーと使用するために最適化する。事象MON87769 DNAを同定するアンプリコンを生成する他の方法および装置は当業者に知られている。
【0090】
Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin-Elmer 9700、Eppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラー、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700またはMJ Research DNA Engine PTC−225サーマルサイクラーにおけるDNA増幅は以下のサイクリングパラメーターを用いて行う。Eppendorf Mastercycler GradientまたはMJ EngineでPCRを行う場合、サーマルサイクラーは計算した様式で作動させなければならない。Perkin-Elmer 9700でPCRを行う場合、サーマルサイクラーは最大に設定した変化速度で作動させなければならない。
【0093】
実施例4
いずれかのMON87769育種事象における事象MON87769の同定
以下の実施例では、どのようにして事象MON87769を含むいずれかのダイズ育種系統の子孫内のMON87769事象を同定し得るのかを記載する。
【0094】
DNA事象プライマー対を用いて、ダイズ事象MON87769についてのアンプリコン特徴を生成する。MON87769についてのアンプリコン特徴は、少なくとも1の連結配列、配列番号:1または配列番号:2(各々、
図2に示す「[A]」および「[B]」)を含む。配列番号:1(
図2の[A])は、5'フランキング配列(配列番号:3[C]のポジション979ないし988、
図2を参照されたい)およびデサチュラーゼカセットの組み込まれた右側ボーダー(配列番号:5[E]のポジション1ないし10、
図2を参照されたい)の連結部に対応するヌクレオチド配列である。配列番号:2([B]、
図2を参照されたい)は、デサチュラーゼカセットの組み込まれた左側ボーダー(配列番号:5[E]のポジション7358ないし7367、
図2を参照されたい)および3'フランキング配列(配列番号:4[D]のポジション1ないし10、
図2を参照されたい)の連結部に対応するヌクレオチド配列である。
【0095】
MON87769についての特徴アンプリコンを生成する事象プライマー対は、フランキング配列およびインサートしたデサチュラーゼカセットに基づくプライマー対を含む。配列番号:1の少なくとも11のヌクレオチドが見出された特徴アンプリコンを得るために、塩基1ないし978の配列番号:3に基づくフォワード・プライマーおよびインサートしたデサチュラーゼカセット、配列番号:5のポジション10ないし7367に基づくリバース・プライマーを設計する。配列番号:2の少なくとも11のヌクレオチドが見出された特徴アンプリコンを得るために、インサートしたデサチュラーゼカセット、配列番号:5、ポジション10ないし7357に基づいてフォワード・プライマーを設計し、3'フランキング配列、配列番号:4、ポジション10ないし939に基づいてリバース・プライマーを設計する。実際の目的のために、制限されたサイズ範囲、好ましくは200ないし1000塩基のアンプリコンを生成するプライマーを設計すべきである。一般的には、より小さいサイズにしたアンプリコンはPCR反応においてより信頼性高く生成し、より短いサイクル時間を許容し、アガロースゲル上で簡単に分離および視覚化でき、あるいはエンドポイントTaqMan(商標)−様アッセイにおいて使用するよう適用し得る。また、該プライマー対を用いて生成したアンプリコンはベクターにクローニングし得、増殖し得、単離し得、シークエンシングし得、あるいは当該技術分野でよく確立された方法を用いて直接的にシークエンシングし得る。MON87769またはその子孫のアンプリコン特徴を生成するためのDNA増幅法に有用である、配列番号:3および配列番号:5またはその1またはそれを超える部分配列(複数の部分配列)の組合せ、または配列番号:4および配列番号:5またはその1またはそれを超える部分配列(複数の部分配列)の組合せに由来するいずれのプライマー対も本発明の態様である。MON87769またはその子孫のアンプリコン特徴を生成するためのDNA増幅法に有用である配列番号:3またはその相補体の少なくとも11の隣接するヌクレオチドを含むいずれか単一の単離したDNAポリヌクレオチド・プライマー分子は、本発明の態様である。MON87769またはその子孫のアンプリコン特徴を生成するためのDNA増幅法に有用である、配列番号:4またはその相補体の少なくとも11の隣接するヌクレオチドを含むいずれか単一の単離したDNAポリヌクレオチド・プライマー分子も本発明の態様である。MON87769またはその子孫のアンプリコン特徴を生成するためのDNA増幅法に有用である、配列番号:5またはその相補体の少なくとも11の隣接するヌクレオチドを含むいずれか単一の単離したDNAポリヌクレオチド・プライマー分子も本発明の態様である。
【0096】
この分析についての増幅条件の例を表5および表6に示す。しかしながら、これらの方法のいずれの修飾または配列番号:3もしくは配列番号:4に相同または相補的であるDNAプライマーまたはMON87769についてのアンプリコン特徴を生成するMON87769のトランス遺伝子インサート(配列番号:5)に含まれる遺伝子要素のDNA配列の使用は、当該分野の範囲内にある。特徴アンプリコンは、少なくとも1のトランス遺伝子/ゲノム連結DNA(配列番号:1または配列番号:2)またはその実質的な部分に相同または相補的なDNA分子を含む。
【0097】
試料中の事象MON87769植物組織の分析には、事象MON87769を含む植物組織からの陽性組織対照、事象MON87769を含まないダイズ植物からの陰性対照、例えば、限定するものではないがA3525、およびダイズゲノムDNAを含まない陰性対照が含まれる。内因性ダイズDNA分子を増幅するプライマー対は、DNA増幅条件の内部対照として作用する。さらなるプライマー配列は、DNA増幅法の当業者によって配列番号:3、配列番号:4または配列番号:5から選択し得、表5および表6に示した方法によってアンプリコンの生成のために選択した条件は異なってもよいが、事象MON87769 DNAについてのアンプリコン特徴を生じる。表5および表6の方法に対して修飾を含むこれらのDNAプライマー配列の使用は、本発明の範囲内である。MON87769についての特徴である配列番号:3、配列番号:4または配列番号:5由来の少なくとも1のDNAプライマー配列によって生成したアンプリコンは、本発明の態様である。
【0098】
、DNA増幅法において使用した場合にMON87769またはその子孫についての特徴アンプリコンを生成する配列番号:3、配列番号:4または配列番号:5由来の少なくとも1のDNAプライマーを含むDNA検出キットは、本発明の態様である。ゲノムがDNA増幅法において試験した場合にMON87769についてのアンプリコン特徴を生成するダイズ植物または種子は、本発明の態様である。MON87769アンプリコンについてのアッセイは、Applied Biosystems GeneAmp PCR System 9700、Stratagene Robocycler、MJ Engine、Perkin-Elmer 9700またはEppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラーまたは表6に示す事象MON87769のアンプリコン特徴を生成するために使用することができるいずれか他の増幅システムを用いることによって行い得る。
【0101】
本発明の原理を説明および記載したが、本発明がかかる原理を逸脱することなく配列および詳細において修飾し得ることは当業者に明らかであろう。本発明者らは、添付する特許請求の範囲の意図および範囲内にあるすべての修飾を特許請求する。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]