(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
典型的な電子写真再生装置では、コピーされるオリジナルの光画像が、感光性部材上で静電潜像の形態で記録され、潜像はその後、トナーと普通呼ばれるエレクトロスコピックな(electroscopic)熱可塑性樹脂粒子の適用により、視認可能とされる。視認可能なトナー像はその後、緩い粉末化形態となり、容易に乱され、または破壊され得る。トナー像は通常、支持体上に固定または定着され、この支持体は、それ自体感光性部材であってもよく、または、普通紙などの他の支持シートであってもよい。
【0003】
トナー画像を支持部材上に固定するために熱エネルギを使用することは周知であり、方法は、様々な手段、圧力接触して維持されているロール対、ロールと圧力接触しているベルト部材、ヒータと圧力接触しているベルト部材などにより熱および圧力を実質的に同時に適用する工程を含む。熱は、ロール、プレート部材、またはベルト部材の1つまたは両方を加熱することにより適用してもよい。ヒータと圧力接触している薄膜を使用する固定装置を用いると、電力消費が小さく、ウォーミングアップ期間が著しく低減され、または排除される。
【0004】
定着プロセスでは、標準動作中、支持体から定着器部材へのトナー粒子のオフセットが最小であること、またはオフセットがないことが望ましい。定着器部材へオフセットされたトナー粒子はその後、機械の他の部分またはその後のコピーサイクルにおける支持体上に移動する可能性があり、このため、バックグラウンドが増大し、またはそこにコピーされる材料が妨害される。トナー温度が、トナー粒子が液化する点まで増大し、溶融トナーの分断が定着器部材上の残りの部分による定着動作中に起きた場合、「ホットオフセット」と言及される。ホットオフセット温度またはホットオフセット温度の低下は、定着器の離型特性の測定値であり、したがって、必要な離型を提供するために低い表面エネルギを有する定着表面を提供することが望ましい。定着器の良好な離型特性を確立し、維持するために、離型剤を定着動作中に定着ロールに適用することが慣習となっている。典型的には、これらの材料は、トナーオフセットを阻止するために、例えば、シリコーン油の薄膜として適用される。
【0005】
オフセットを低減するための他の方法は、静電気防止および/または場支援(field assisted)トナー転写特性を定着器に付与することである。しかしながら、離型層の導電率を制御するためには、離型層のなじみ性および低表面エネルギ特性がしばしば影響される。
【0006】
オイルレス定着、エネルギ効率、および急速ウォームアップ時間(例えば、誘導性(inductive)加熱定着器)に重点を置いて、定着器ベルトサイズの増加および追加のシステムアプローチにより、ベルト定着構造および信頼性/生産性が現在達成されている。定着、特にオイルレス定着のための現在の高い需要を満たす材料溶液はほんのわずかしかない。2つの主材料の選択としては、オイルレス定着のためのPFA/PTFE、およびハイエンド製造(high end production)のためにオイル系と組み合わせて使用されるヴィトン(VITON)−GF(登録商標)(デュポン(DuPont))フルオロエラストマ類が挙げられる。機械的特性および熱伝導率を改善するためのフィラーの添加は寿命改善のための一般的な傾向である。
【0007】
PFAはある型のフッ素プラスチック(fluoroplastic)を表し、これは現在、オイルレス定着のための唯一の実用的材料選択である。しかしながら、この材料を使用する不都合な点としては、結果的に得られるのが機械的に剛性の材料であることが挙げられ、これは、デンティング(denting)により、または大規模な回転により容易に損傷する。また、PFAは、加工が困難で、材料改質(material modification)の余地が制限される。また、PFAは、公知のコーティング法を使用する場合、高い硬化温度を必要とする。
【0008】
ヴィトン(登録商標)については、この材料は、機械的に可撓性であり、その衝撃エネルギ吸収能力のために損傷がより少ないので、定着のための最も一般的なフルオロエラストマ類の1つである。本材料は低い硬化温度を必要とし、広い材料改質自由度を有する。しかしながら、このフルオロエラストマは材料のフッ素含量が低いため離型のためのオイルを必要とする。
【0009】
上記ポリマ類は、熱および化学安定性ならびに低表面エネルギなどの所望の特性を有しているが、これらの材料を使用する定着器部材は依然として、主に表面での摩耗および不十分な離型(オフセット)のために、望ましいものより短い時間で機能しなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改善された摩耗特性および離型特性を示し、離型流体の添加を必要としない(オイルフリー)定着のための新規材料系が望ましい。さらに、より少ないシステム部分(system part)で、優れた定着性能を可能にするように調節可能であり、必要とされる製造時間がより少ない外層定着材料を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態は、基材と、その上の、架橋フッ素化ポリイミ
ドを含む外層と、を備え、前記
架橋フッ素化ポリイミドは、下記式:
【化1】
を有し、式中、Ar
1およびAr
2は独立して、約6個の炭素原子から約60個の炭素原子の芳香族基を表し、Ar
1およびAr
2の少なくとも1つはさらに、フルオロペンダント基を含
むフッ素化ポリイミドと硬化剤との架橋生成物であり、ここで、フッ素化ポリイミドは、硬化剤と反応することができる活性部位を含有する、定着器部材を含む。
【0013】
1つの実施形態は、基材と、その上の、フッ素化ポリイミドと硬化剤とを含むコーティング組成物から得られる架橋生成物を含む外層と、を備え、前記フッ素化ポリイミドは、下記式:
【化2】
を有し、式中、Ar
1およびAr
2は独立して、約6個の炭素原子から約60個の炭素原子の芳香族基を表し、Ar
1およびAr
2の少なくとも1つはさらに、フルオロペンダント基を含み、ここで、フッ素化ポリイミドは、硬化剤と反応することができる活性部位を含有するセグメントを含む、定着器部材を含む。
【0014】
さらに、実施形態は、静電潜像をその上に受理するための電荷保持表面と、トナーを電荷保持表面に適用し、静電潜像を現像させ、現像された画像を電荷保持表面上で形成させるための現像構成要素と、現像された画像を電荷保持表面からコピー基材に転写するための転写構成要素と、トナー画像をコピー基材の表面に定着させるためのオイルレス定着器部材と、を備え、前記オイルレス定着器部材は、離型のための定着器オイルの存在を必要とせず、前記オイルレス定着器部材は基材と、その上の、
架橋フッ素化ポリイミ
ドを含む外層と、を備え、
架橋フッ素化ポリイミドは、下記式:
【化3】
を有し、式中、Ar
1およびAr
2は独立して、約6個の炭素原子から約60個の炭素原子の芳香族基を表し、Ar
1およびAr
2の少なくとも1つはさらに、フルオロペンダント基を含
むフッ素化ポリイミドと硬化剤との架橋生成物であり、ここで、フッ素化ポリイミドは、硬化剤と反応することができる活性部位を含有する、記録媒体上で画像を形成するための画像形成装置を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
フッ素化ポリイミド類は、化学および熱安定性を提供し、オイルレス定着を可能にする高性能ポリマ類である。比較的高いフッ素化ポリイミド類は、高性能ポリマ類であり、これらは実施形態で化学および熱安定性を提供し、オイルレス定着を可能にすることができる。調節可能な機械的、物理的および/または化学的特性は、比較的固い芳香族セグメントと比較的柔らかいフッ素化脂肪族セグメントとの成分比を調節することにより達成してもよい。反応性部位は、硬化および/または架橋のための部位を収容するように導入してもよい。ポリイミドは、公知の反応により、すなわち、芳香族二無水物類とジアミン類との間の重縮合により調製することができる。適切に構造を調整することにより、得られたポリイミドはオイルレス定着用途の可能性のある所望の特性を有することができる。
【0017】
図1について説明すると、典型的な電子写真再生装置では、コピーされるオリジナルの光画像が静電潜像の形態で感光性部材上に記録され、潜像はその後、普通、市場でトナーと呼ばれるエレクトロスコピックな熱可塑性樹脂粒子の適用により視認可能なものとされる。特定的には、フォトレセプタ10は、電圧が電源11から供給されている帯電器12によりその表面上に帯電させられる。フォトレセプタ10はその後、光学システムまたは画像入力装置13、例えばレーザおよび発光ダイオードからの光に画像様露光され、その上に静電潜像が形成される。一般に、静電潜像は、現像剤ステーション14からの現像剤混合物と接触させることにより現像される。現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、または他の公知の現像プロセスにより実施することができる。乾燥現像剤混合物は通常、キャリア顆粒を含み、これにトナー粒子が摩擦電気的に付着されている。トナー粒子は、キャリア顆粒から潜像に引きつけられ、その上にトナー粉末像が形成される。その代わりに、液体現像剤材料を使用してもよく、これは液体キャリアを含み、その中にトナー粒子が分散されている。液体現像剤材料は静電潜像と接触させられ、トナー粒子が画像構成でその上に堆積される。
【0018】
トナー粒子が光電性表面上で画像構成で堆積された後、トナー粒子が、圧力転写または静電転写とすることができる転写手段15によりコピーシート16に転写される。また、現像された画像は、中間転写部材に転写させ、その後にコピーシートに転写させることができる。
【0019】
現像された画像の転写が完了した後、コピーシート16は、
図1で定着および圧力ロールとして示されている定着ステーション19まで進み、ここで、定着部材20と加圧部材21の間にコピーシート16を通過させることにより、現像された画像がコピーシート16に定着され、これにより、半永久画像または永久画像が形成される。転写後、フォトレセプタ10はクリーニングステーション17まで進み、ここで、フォトレセプタ10上に残っているほとんど全てのトナーが、ブレード(
図1に示されている)、ブラシ、または他のクリーニング装置の使用によりそこから除去される。
【0020】
図2は、様々な可能な層を示す、定着器部材100の1つの実施形態の拡大概略図である。
図2に示されるように、基材110はその上に中間層120を有する。中間層120は例えば、シリコーンゴムまたは他の適したゴム材料などのゴムとすることができる。中間層120上には、下記で記載するようにポリマを含む外層130を配置することができる。
【0021】
本明細書で使用されるように「定着器部材(fuser member)」という用語は、定着ロール、ベルト、フィルム、シートなどを含む定着器部材、ドナーロール、ベルト、フィルム、シートなどを含むドナー部材、ならびに加圧ロール、ベルト、フィルム、シートなどを含む加圧部材、ならびにデジタルを含む電子写真機械の定着システムにおいて有用な他の部材を示す。
【0022】
本開示の定着器部材は、広範囲の機械において使用することができ、その適用において、本明細書で示した特定の実施形態に特定的に制限されるものではない。実施形態では、定着器システムはオイルレスであり、定着のために離型剤は必要とされない。定着器部材にはオイルは適用されず、システムには離型剤送達ローラは存在しない。しかしながら、他の実施形態では、システムは場合によっては離型剤を使用することができる。
【0023】
適した基材材料の例としては、ローラ基材の場合、金属類、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼、ニッケルなどが挙げられる。フィルム型基材の場合(基材が定着器ベルト、フィルム、ドレルト(ドラムとベルトの間の中間物)など)、適した基材としては、高温動作温度(すなわち、約80℃超または約200℃超)を可能とするのに適し、高い機械的強度を示すことができる高温プラスチック類が挙げられる。
【0024】
フッ素化ポリイミドが定着器トップコートのために記載されている。フルオロポリイミドは芳香族ポリイミド主鎖に沿う長いフルオロアルキル側鎖、および、ビスフェノール型架橋反応により容易に架橋可能であるフルオロフェニルエーテル部分を含む。フルオロアルキル側鎖は、その低い表面エネルギ特性のために、離型特性を提供する。
【0025】
外層はフッ素化ポリイミドを含む。フッ素化ポリイミド類のより特定的な例としては、下記一般式:
【化4】
が挙げられ、式中、Ar
1およびAr
2は独立して、約6個の炭素原子から約60個の炭素原子の芳香族基を表し、Ar
1およびAr
2の少なくとも1つはさらに、フルオロペンダント基を含み、フッ素化ポリイミドは、硬化剤と反応することができる活性部位を含有する。
【0026】
Ar
1およびAr
2は約6個の炭素原子から約60個の炭素原子、または約6個の炭素原子から約40個の炭素原子を有するフルオロアルキルを表すことができる。さらに、Ar
1およびAr
2はフッ素化ポリイミドの活性部位を含むことができる。
【0027】
芳香族Ar
1の例としては、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
および、それらのフッ素化または過フッ素化類似体類、ならびにそれらの混合物が挙げられる。Rはヘキサフルオロメチルイソプロピリデン、硫黄基、オキシ基、カルボニル基、およびスルホニル基からなる群より選択される結合基である。
【0028】
芳香族Ar
2の例としては、
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
および、それらのフッ素化または過フッ素化類似体類、ならびにそれらの混合物が挙げられる。Rはヘキサフルオロメチルイソプロピリデン、硫黄基、オキシ基、カルボニル基、およびスルホニル基からなる群より選択される結合基である。
【0029】
フルオロペンダント基としては、−C
mH
2mC
nF
(2n+1)、−C
nF
(2n+1)、
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
およびそれらの混合物が挙げられる。Rfはフッ素、約1個から約18個の炭素原子のフッ素化脂肪族炭化水素基を表し、Lはヘキサフルオロメチルイソプロピリデン、硫黄基、オキシ基、カルボニル基、およびスルホニル基を含む結合基を表し、mおよびnは約1から約18より独立して選択される整数であり、xおよびyは約1から約5より独立して選択される数である。
【0030】
活性部位としては、
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
およびそれらの混合物が挙げられ、Fの1つは活性部位として機能する。Rはヘキサフルオロメチルイソプロピリデン、硫黄基、オキシ基、カルボニル基、およびスルホニル基を含む結合基であり、Xは1個から18個の炭素原子のアルキル基またはフッ素化アルキル基である。活性部位はAr
1およびAr
2の一部とすることができる。
【0031】
架橋生成物は、セグメントの活性部位での硬化剤との求核反応の結果である。
【0032】
架橋剤としては、ビスフェノール、ジアミン、アミノシランおよびフェノールシランが挙げられる。より特定的には、架橋剤としては、
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
およびそれらの混合物が挙げられ、式中、L
1はヘキサフルオロメチルイソプロピリデン、イソプロピリデン、メチレン、スルホニル基、硫黄基、オキシ基、およびカルボニル基を含む結合基であり、L
2は1個から約18個の炭素原子のアルキレン基または6個から約30個の炭素原子の芳香族炭化水素基を含む結合基であり、L
3は1個から約6個の炭素原子のアルキレン基または−CH
2CH
2−NH−CH
2CH
2CH
2−を含む結合基であり、L
4は1個から約18個の炭素原子のアルキレン基または6個から約30個の炭素原子の芳香族炭化水素基を含む結合基であり、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチルを含むアルキル基を表し、pは0から2の整数である。
【0033】
実施形態では、フッ素化ポリイミドは、下記式:
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
およびそれらの混合物を有してもよく、式中、mは1から約18の整数である。
【0034】
実施形態では、架橋生成物は、下記:
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
およびそれらの混合物からなる群より選択される構造式を有する。
【0035】
架橋生成物は、さらにフッ素化ポリイミドと共架橋したフルオロポリマを含んでもよい。フルオロポリマとしては、(i)ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマ、(ii)ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマ、(iii)ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ、フッ素化エチレンプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのテトラポリマからなる群から選択されるフルオロポリマ等が挙げられる。
【0036】
架橋生成物は、外層の総固体の約50から約95重量%の量で、フルオロペンダント基を含むフッ素化ポリイミド基を含む。架橋剤は外層の総固体の約1重量%から約15重量%または約1重量%から約10重量%を占める。活性部位は外層の総固体の約0.5重量%から約50重量%を占める。
【0037】
フィラーが外層中に存在してもよい。フィラーは金属、例えば、銅、アルミナなど、またはそれらの混合物、金属酸化物、例えば、酸化マグネシウム、酸化マンガン、アルミナ、酸化銅、チタニア、シリカ、他の無機フィラー類、例えば、窒化ホウ素、シリカカーバイド、マイカ、または同様の酸化物あるいはそれらの混合物、炭素フィラー、例えばカーボンブラック、グラファイト、フッ素化カーボンブラック、などまたはそれらの混合物、ポリマフィラー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアニリン、または他の同様のポリマフィラーあるいはそれらの混合物、または他の同様のフィラーあるいはそれらの混合物としてもよい。フィラーは外層組成物中に、総固体の約3重量%から約50重量%、または約5重量%から約30重量%、または約10重量%から約20重量%の量で存在する。
【0038】
外層は、約5μmから約100μm、または約20μmから約40μm、または約15μmから約25μmの厚さまでコートされる。
【0039】
外側材料組成物は、基材上に任意の適した周知の様式でコートすることができる。そのような材料を強化部材上でコートするための典型的な技術としては、液体流し塗り(flow coating)、浸漬コーティング、巻線ロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波噴霧、ブレードコーティングなどが挙げられる。1つの実施形態では、フッ素化ポリイミド材料コーティングは基材に流し塗りされる。
【0040】
1つの実施形態では、外層は任意の公知の技術、例えば、サンディング(sanding)、研摩(polishing)、研削(grinding)、ブラスティング(blasting)、コーティング、などにより改質してもよい。実施形態では、外側フッ素化ポリイミド層は、約0.02μmから約1.5μm、または約0.3μmから約0.8μmの表面粗さを有する。
【0041】
実施形態では、中間層を基材と外層との間に配置することができる。他の実施形態では、外側離型層を外層上に配置することができ、または定着器部材をオイルレスとすることができ、適した離型のための離型剤または定着器オイルが必要なくなる。
【0042】
適した中間層または適した、必要に応じて用いられる外側離型層の例は、シリコーンゴム、フルオロポリマ、ウレタン、アクリル、チタマ(titamer)、セラマ(ceramer)、ヒドロフルオロエラストマ、ポリマ類(例えば、ポリマ類、コポリマ類、ターポリマ類など)、またはそれらの混合物、ならびにフィラー類、例えば、カーボンブラックおよび/または酸化アルミニウムを含む。実施形態では、中間層はシリコーンゴムを含む。
【0043】
必要に応じて用いられる中間層および/または必要に応じて用いられる外側離型層は、任意の公知の、適した技術を用いて外層にコートさせることができる。実施形態では、追加の層は噴霧コートすることができ、または流し塗りすることができる。
【0044】
中間層は、約2mmから約10mm、または約3mmから約9mm、または約5mmから約8mmの厚さを有することができる。
【0045】
定着構成要素は、任意の適した構造を有することができる。適した構造の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、ストリップ、コイル、シリンダ、ドラム、ローラ、エンドレスストリップ、円形ディスク、ベルト、例えば、エンドレスベルト、エンドレス継ぎ目ありフレキシブルベルト、エンドレスシームレスフレキシブルベルト、パズルカット継ぎ目を有するエンドレスベルト、などが挙げられる。1つの実施形態では、定着器部材は定着ローラである。実施形態では、定着ローラの基材は金属、例えばアルミニウムまたは鋼である。実施形態では、基材は定着器ベルトである。
【0046】
本明細書で使用されるように、フッ素化ポリイミドは、分散物を材料または表面に塗布、形成または堆積させるための技術またはプロセスを示す任意の公知のコーティング技術によりコートすることができる。そのため、「コーティング」または「コーティング技術」は本教示において特に制限されず、浸漬コーティング、塗装、ブラシコーティング、ローラコーティング、パッド塗布(pad application)、噴霧コーティング、スピンコーティング、キャスティング(casting)、または流し塗りを使用することができる。
【0047】
必要に応じて、任意の公知の、使用可能な、適した接着層を外層と基材の間、および/または外層と外側離型層との間に配置してもよい。適した接着剤の例としては、シラン類、例えば、アミノシラン類(例えば、ダウコーニング(Dow Corning)製のHVプライマ(Primer)10など)、チタネート類、ジルコネート類、アルミネート類、など、およびそれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、約0.001%から約10%の溶液の接着剤で基材を拭うことができる。接着層は基材上、または外層上に、約2nmから約2,000nm、または約2nmから約500nmの厚さまでコートすることができる。接着剤は任意の適した公知の技術、例えば、噴霧コーティングまたはワイピングによりコートすることができる。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
ペルフルオロアルキル−二無水物モノマ(I)の合成を以下に示す。
【化47】
(I)
【0049】
ジヨード−ジュレンの調製:ジュレン(durene)(40.27g)、酢酸(300mL)、ヨウ素(68.53g)、過ヨウ素酸(20.51g)、H
2SO
4(15mL)、およびH
2O(30mL)の混合物を80℃まで加熱し、80℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物を氷水中に注ぎ入れた。沈殿した固体を濾過により収集し、水、その後にメタノールで洗浄した。ジヨード−ジュレンの収率は64.8g(65%)であった。
【0050】
ペルフルオロクチル−置換ジュレンの調製:ヨウ化ペルフルオロオクチル(14.19g)を、25mLのジメチルホルムアミド(アルドリッチ(Aldrich)製)に添加した。この溶液に活性化銅(3.8g)およびジヨードジュレン(3.86g)を添加した。混合物を130℃でAr下、50時間撹拌した。冷却後、銅を濾過により除去した。溶液を過剰の水に注ぎ入れ、沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。収率は5gであった(51.5%)。
【0051】
ペルフルオロオクチル−置換ベンゼン四酸(benzene tetraacid)の調製:ペルフルオロオクチル−ジュレン(40g)を、700mLのピリジンと150mLの水の混合物に溶解し、過マンガン酸カリウム39.51gを混合物に添加し、これをその後、12時間還流させた。ピリジンを除去した後、NaOH 28g(0.7mol)、水500mL、およびKMnO
4 47.41g(0.3mol)を添加し、反応混合物を6時間還流させた。冷却し、濾過した後、濾液を収集した。残留二酸化マンガンを沸騰水で2度抽出した。過剰の濃HClで処理した後、白色固体沈殿を濾過により収集した。固体を真空下で乾燥させた。収率は38gであった(84%)。
【0052】
ペルフルオロオクチル−置換二無水物の調製:ペルフルオロオクチル−四酸をピリジンで処理し、四酸を二無水物に変換させた。
【0053】
<実施例2>
[ペンタフルオロフェニルエーテル−置換二無水物モノマ(II)の合成]
【化48】
【0054】
ペンタフルオロフェニルエーテル−ジュレンの調製:ジブロモジュレン(11.7mol)、ペンタフルオロフェノール(100g)、炭酸カリウム(11.04g)および銅青銅(copper bronze)(8g)をDMSO(50mL)にAr下で添加し、混合物を120℃で12時間撹拌した。混合物をNaOH溶液中に注ぎ入れ、濾過により、生成物を収集した。
【0055】
ペンタフルオロフェニルエーテル−二無水物の調製:加水分解および縮合手順は実施例1の手順に従う。
【0056】
<実施例3>
[フッ素化ポリイミド類の合成]
【化49】
【0057】
等しい当量の二無水物モノマ(I)およびスルホニル−ジアミンを、イソキノリンを含むm−クレゾール中で混合した。溶液を200℃で12時間加熱した。50℃まで冷却した後、溶液をメタノール中に滴下した。得られた沈殿を濾過により収集した。乾燥により最終ポリイミド生成物が得られた。
【0058】
<実施例4>
[架橋ポリイミドコーティングの調製]
【0059】
実施例3のフルオロポリイミドをビスフェノールAF(デュポンから入手したVC50)およびMgOと、MIBK溶液中で混合した。溶液をアルミニウム紙基材上にコートし、コーティングを200℃で2時間加熱し、硬化ポリイミドフィルムを得た。
【0060】
定着器部材を形成し、改善された摩耗特性および離型特性を示した。