特許第5767844号(P5767844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767844
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】両面テープ用芯材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20150730BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20150730BHJP
   D21H 13/08 20060101ALI20150730BHJP
   C09J 7/02 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   B32B27/12
   D21H27/30 C
   D21H13/08
   !C09J7/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-82217(P2011-82217)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-214937(P2012-214937A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸口 悟
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−023279(JP,A)
【文献】 特開2009−040921(JP,A)
【文献】 特開2000−008297(JP,A)
【文献】 特開平10−007996(JP,A)
【文献】 特開平04−067087(JP,A)
【文献】 特開2001−072951(JP,A)
【文献】 特開2000−265143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
C09J 7/00− 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の表面に設けられたラミネート層とからなる両面テープ用芯材であって、
前記基材が、合成繊維とパルプとを含み、
前記ラミネート層が、軟化点が170℃以上の合成樹脂を、該ラミネート層を構成する成分中3〜30質量%含むことを特徴とする両面テープ用芯材。
【請求項2】
前記ラミネート層の厚みが、5〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の両面テープ用芯材。
【請求項3】
前記合成繊維がレーヨン繊維であり、
該レーヨン繊維が、前記基材を構成する成分中5〜50質量%含まれてなる請求項1または2記載の両面テープ用芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面テープ用芯材に関する。さらに詳しくは、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックや金属等の各種被着体に貼りつけられた両面テープを剥離する際(再剥離時)に、両面テープの芯材の強度が低いと、両面テープが剥離途中で切れたり、粘着剤が被着体の表面に残ったりすることがあり、被着体表面に付着した粘着剤を溶剤などで拭き取らなければならない等の問題がある。また、両面テープ用芯材は、たとえば高温多湿な環境下で長時間保管されることにより強度が低下する等の問題がある。ここで、剥離性に優れた両面テープとして、マニラ麻パルプからなる不織布と特定のアクリル系粘着剤とを組み合わせた両面テープが提案されている(特許文献1参照)。また、基材をポリエステル繊維100%とした粘着テープ用基材が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている両面テープでは、製造された時点においてはある程度の強度を有しているものの、高温多湿な環境下で長時間保管された際に基材の強度が低下する問題については充分に解決がなされていない。また、特許文献2に開示されている粘着テープ用基材では、ポリエステル繊維からなるため、高温多湿な環境下で長時間保管された場合であっても基材の強度は低下しないが、基材の初期強度が低いため、再剥離時に被着体表面に糊残りが生じるという問題がある。
【0004】
ここで、上記基材の強度を補填するために、基材を合成樹脂でラミネートする方法がある。しかしながら、合成樹脂でラミネートした芯材を両面テープ用芯材として用いると、両面テープの製造工程(たとえば芯材に粘着剤を塗布、乾燥させる工程)において、ラミネートが収縮してカールが発生するという問題がある。
【0005】
なお、片面接着テープにおいて、ポリエステルフィルムと、多孔質基材であるポリエステル繊維とをラミネートで接着した粘着シート用基材があるが(特許文献3)、かかるテープは両面テープではない。そして、特許文献3の図1に示されるように、シリコーンコート層(特許文献3の参照符号1)が設けられたポリエステルフィルム(特許文献3の参照符号2)には粘着剤は浸透しないため、両面テープに応用することは不可能である。また、水剥離性両面テープとして、不織布にプラスチックフィルムをラミネートした両面テープが開示されているが(特許文献4)、水による充分な材料の分離を可能とするために、ラミネート接着の方法として(セミ)ウェットラミネートが好適であることが開示されており、かつ、その実施例では、いわゆる転写法により両面テープを作成していることからも、芯材がカールを生じる課題については一切言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−272850号公報
【特許文献2】特開2010−180513号公報
【特許文献3】特開平5−309772号公報
【特許文献4】特開2001−226649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の両面テープ用芯材は、基材と、該基材の少なくとも一方の表面に設けられたラミネート層とからなる両面テープ用芯材であって、前記基材が、合成繊維とパルプとを含み、前記ラミネート層が、軟化点が170℃以上の合成樹脂を含むことを特徴とする。本発明は、かかる構成を有することにより、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材を提供することができる。
【0009】
前記ラミネート層の厚みが、5〜10μmであることが好ましい。かかる構成を有することにより、基材の引張強度を向上させ、かつ、再剥離時に糊残りが生じない。また、製造工程において、芯材にカールが生じない。
【0010】
前記軟化点が170℃以上の合成樹脂、前記ラミネート層を構成する成分中3〜30質量%含まれている。かかる構成を有することにより、製造時においてラミネート機に付着する合成樹脂の量が減り、歩留まりが向上する。また、再剥離時における層間剥離の発生をさらに抑制することができる。
【0011】
前記合成繊維がレーヨン繊維であり、該レーヨン繊維が、前記基材を構成する成分中5〜50質量%含まれてなることが好ましい。かかる構成を有することにより、再剥離時における層間剥離の発生を顕著に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の両面テープ用芯材は、基材と、該基材の少なくとも一方の表面に設けられたラミネート層とからなる両面テープ用芯材であって、前記基材が、合成繊維とパルプとを含み、前記ラミネート層が、軟化点が170℃以上の合成樹脂を含むことを特徴とする。以下に本発明の構成について順を追って説明する。
【0014】
<基材>
基材は、合成繊維とパルプとを含む。このように、合成繊維とパルプとをともに含有することにより、両面テープ芯材の引張強度を改善することができ、高温多湿環境下で保管された場合であっても、引張強度の低下が発生しない。また、再剥離時に被着体に糊残りを生じない。
【0015】
合成繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン等のポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、およびその複合繊維、共重合体、ブレンド体を使用することができる。これらの中でも、繊維間の空隙を広げ、粘着剤が基材中に浸透して基材と粘着剤との接着強度が強くなり、再剥離時の層間剥離を防止することができる観点から、レーヨン繊維が好ましい。合成繊維の配合量としては特に限定されないが、合成繊維としてレーヨン繊維を使用する場合、レーヨン繊維は、基材を構成する成分中5〜50質量%含まれてなることが好ましく、10〜35質量%含まれてなることがより好ましい。レーヨン繊維の含有量が5質量%未満の場合には、基材の繊維間の空隙が少なく粘着剤の浸透が少なくなり、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。また、レーヨン繊維の含有量が50質量%を超える場合には、繊維間の空隙が多くなり、粘着力が低下するおそれがある。使用される繊維の繊維長は、長繊維、短繊維、あるいはこれらを混合したもののうち、いずれを使用してもよい。繊度としては、0.8〜4.4dtexが好ましく、1.0〜3.5dtexがより好ましい。繊度が0.8dtex未満の場合には、繊維間の空隙が少なく粘着剤の浸透が少ないため、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。また、繊度が4.4dtexを超える場合には、繊維間の空隙が多くなり粘着力が低下するおそれがある。また、基材の坪量としては、6〜30g/m2であることが好ましく、10〜20g/m2であることがより好ましい。坪量が6g/m2未満の場合には、基材の厚さが薄く浸透できる粘着剤量が少なくなるため、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。また、30g/m2を超える場合には、基材の厚さが厚く粘着剤が浸透しすぎて粘着力が低下するおそれや、コストアップになるおそれがある。
【0016】
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、シルク等の動物繊維パルプなどを使用することができる。木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、マーセル化パルプなどを使用することができる。非木材パルプとしては、ケナフパルプ、マニラ麻、亜麻、大麻、黄麻等の麻パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、三椏パルプ、楮パルプ、竹パルプ、藁パルプ、コットンパルプ、雁皮パルプなどを使用することができる。NBKPとしては、樹種、産地ともに特に限定されず、たとえば、アカマツ、クロマツ、トウヒ、エゾマツ、トドマツ、モミ、カラマツ、ツガ、スギ、ダグラスファー等を使用することができる。一方、LBKPとしては、樹種、産地ともに特に限定されず、たとえば、カバ、ハンノキ、ナラ、ブナ、シイノキ、ポプラ、ユーカリ等を使用することができる。これらのパルプの中でも嵩を高くでき、引張強度が高い点から、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)が好ましい。パルプの配合量としては特に限定されないが、基材を構成する成分中40〜94質量%含有されることが好ましく、60〜80質量%含有されることがより好ましい。パルプの配合量が40質量%未満の場合には、繊維の絡みが少なく引張強度が低くなるおそれや、パルプは合成繊維に比べ嵩が出にくいことから、繊維間の空隙が多くなり粘着力が低下するおそれがある。また、94質量%を超える場合には、繊維間の空隙が少なく粘着剤の浸透が少なくなり、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。パルプのフリーネス(カナディアンスタンダードフリーネス)としては特に限定されないが、たとえば300〜700mlに調整されたものを使用することが好ましい。フリーネスが300ml未満の場合には、繊維間の空隙が少なく粘着剤の浸透が少ないため、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。また、フリーネスが700mlを上回る場合には、引張強度が低下するおそれや、繊維間の空隙が多くなり粘着力が低下するおそれがある。
【0017】
基材を構成する成分として、上記合成繊維およびパルプ以外にも、たとえば、バインダー成分としてPVA、芯鞘構造のポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン繊維(前者がバインダー機能を持つ鞘部分、後者が芯部分)を配合することが好ましい。バインダー成分は、基材を構成する成分中1〜10質量%含まれることが好ましい。バインダー成分が1質量%未満の場合には、引張強度が低下するおそれがあり、10質量%を超える場合には、繊維間の空隙が少なく粘着剤の浸透が少なくなり、再剥離時における基材と粘着剤層との層間剥離が発生するおそれがある。
【0018】
分散剤としては、高級アルコール誘導体等を使用することができる。消泡剤としては、ポリアルキレン系グリコール等を使用することができる。サイズ剤としては、アルケルケテンダイマー、等を使用することができる。乾燥紙力剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、等を使用することができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミド・エピクロロヒドリン系樹脂などを使用することができる。その他、どのような染料でも使用することができる。
【0019】
<ラミネート層>
ラミネート層は、基材の少なくとも一方の表面に設けられる。ここで、従来のラミネート層の場合、基材の両面に従来のラミネート層を設けると、いずれのラミネート層も熱収縮によりカールするため、カールの発生が相殺されて、見かけのカールは防止されやすい。一方、基材の片面に従来のラミネート層を設けた場合、そのような相殺効果が得られないため、カールが顕著に発生することとなる。しかしながら、本発明のラミネート層には、後述する「軟化点が170℃以上の合成樹脂」が含まれているため、片面にラミネート層が設けられている場合であってもカールを生じることはない。
【0020】
ラミネート方法としては特に限定されず、基材の表面にエポキシ系接着剤やアクリル系接着剤などを介在させてラミネートするドライラミネート法や、溶融した合成樹脂をTダイから薄膜状にして押し出して、ラミネートする押し出しラミネート法などを採用することができる。本発明にかかるラミネート層は、後述するように、製造工程中(特に粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールを生じることがないため、本発明は、乾燥工程においてカールを生じやすい押し出しラミネート法により製造する際に最も顕著な効果を奏する。
【0021】
押し出しラミネート法としては、たとえば、基材上に、ラミネート層を構成する合成樹脂を塗布し、オーブン中で熱風乾燥した後、加熱溶融したポリエチレン等の樹脂を押し出し、冷却ロールとニップロールとで圧着して張り合わせることにより、ラミネートフィルムを製造する従来公知の方法を用いることができる。
【0022】
得られるラミネート層の厚みとしては特に限定されないが、5〜10μmがより好ましい。ラミネート層の厚みが5〜10μmの範囲内にある場合、基材の引張強度を大きく維持することができるとともに、再剥離時に糊残りが生じない。また、両面テープの製造工程(特に乾燥工程)において、合成樹脂が熱収縮してカールを発生することもない。ラミネート層の厚みが5μm未満の場合には、高温多湿な環境下での基材の引張強度を補強する効果が少なく、再剥離時における糊残りが生じるおそれがある。また、ラミネート層の厚みが10μmを超える場合には、両面テープの製造工程(たとえば芯材に粘着剤を塗布、乾燥させる工程)において、ラミネートが収縮してカールが発生するおそれがある。基材に合成繊維とパルプとを含み、両面テープ芯材の引張強度を改善するとともに、基材の少なくとも一方の表面に軟化点が170℃以上の合成樹脂を含むラミネート層を設け、さらにラミネート層の厚みを5〜10μmとすることで、より高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材となるとともに製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)において、カールの発生がない両面テープ用芯材となり好ましい。
【0023】
ラミネート層は、軟化点が170℃以上の合成樹脂を含むことを特徴とする。当該軟化点が170℃以上の合成樹脂としては、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、ナイロンが挙げられる。軟化点の上限としては特に限定されないが、軟化点が高すぎると、たとえば押し出しラミネート法によりラミネートする際に溶融状態の合成樹脂を準備することが困難となる場合があるため、上記した合成樹脂の中でも、EEAが好ましい。EEAを使用することにより、後述する粘着剤層を構成する粘着剤との接着性が向上し、再剥離した際に、基材と粘着剤層との層間剥離を防止することができる。なお、製造時の利便性を考慮してEEAを最適な合成樹脂として挙げたが、軟化点の高い合成樹脂を溶融状態とすることが製造工程上特に問題でなければ、その他の軟化点の高い合成樹脂を採用することも何ら問題はない。
【0024】
軟化点が170℃以上の合成樹脂、ラミネート層を構成する成分中3〜30質量%含まれており、10〜20質量%含まれてることが好ましい。ラミネート層を構成する成分中3〜30質量%含まれてなる場合には、製造時においてラミネート機に付着する合成樹脂の量が減り、歩留まりが向上する。また、再剥離時における層間剥離の発生をさらに抑制することができる。軟化点が170℃以上の合成樹脂の含有量が、ラミネート層を構成する成分中3質量%未満の場合には、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)において、カールが発生するおそれがあり、30質量%を超える場合には、押し出しラミネートする際、ラミネート機に付着する合成樹脂量が増え、歩留りを低下させるおそれがある。基材に合成繊維とパルプとを含み、基材の少なくとも一方の表面に軟化点が170℃以上の合成樹脂を含むラミネート層を設け、ラミネート層の厚みを5〜10μmとし、さらに軟化点が170℃以上の合成樹脂をラミネート層を構成する成分中3〜30質量%含むことで、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でもより引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる両面テープ用芯材となり好ましい。
【0025】
ラミネート層を構成する他の成分としては、軟化点が170℃未満の合成樹脂が挙げられる。軟化点が170℃未満の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の110〜150℃程度の低融点樹脂ポリオレフィン、ポリビニルアルコールを使用することができる。軟化点が170℃未満の合成樹脂は、ラミネート層を構成する成分中70〜97質量%含まれてなることがより好ましく、80〜90質量%含まれてなることがさらに好ましい。
【0026】
<その他>
本発明にかかる両面テープ用芯材の両表面には、粘着剤を塗布し、さらに剥離紙を設けることにより両面テープとすることができる。
【0027】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤およびゴム系粘着剤のいずれでもよく特に限定されないが、接着の安定性、黄変の防止、耐候性や耐久性に優れる観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0028】
アクリル系粘着剤の重合モノマーとしては、炭素数2〜12個のアルキル基を有するアクリル酸もしくはメタアクリル酸のエステルを主成分とし、具体的には、アクリル酸エステル系、メタアクリル酸エステル系が例示される。他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0029】
また、ゴム系の粘着剤と併用しても使用可能である。ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ラテックスが例示される。
【0030】
さらに、バインダーとして、PVAやラテックスを単体でまたは併用して使用可能である。かかるバインダーは、接着剤100重量部に対して5〜15重量部、特に好適には5〜10重量部配合することができる。
【0031】
また、粘着剤には、微細粒子充填剤を含有させることができる。かかる、微粒子充填剤としては、1次または2次粒子径が1〜20μm、特に10μmのシリカ粒子を好適に使用できる。
【0032】
剥離紙としては特に限定されず、たとえば、グラシン紙、上質紙にアクリル、クレー等で目止め処理した従来公知の剥離原紙に、溶剤型あるいは無溶剤型のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等を乾燥重量で0.05〜3g/m2程度塗布し、剥離層を形成したものを使用することができる。
【0033】
さらに、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、インク定着剤、染料定着剤、蛍光染料、有色染料、滑剤、消臭剤、脱臭剤、抗菌剤等の助剤を添加することもできる。
【0034】
粘着剤を基材面に設ける方法としては、基材面に粘着剤溶液を直接塗布乾燥する直接法や、粘着剤の溶液をシリコーン離型剤で処理した剥離紙上に塗布し、乾燥後に基材面に転写する転写法があげられるが、本発明は、直接法にて粘着剤を基材面に設ける際に最も顕著な効果を奏する。粘着剤の塗布方法については特に限定されず、従来公知の塗布方法が使用できる。たとえば、コンマコーター、リップコーター、ナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、エアーナイフコーター等を使用して塗布することができる。
【0035】
塗布された粘着剤は、100〜130℃で乾燥される。このように、100〜130℃の熱が本発明の両面テープ用芯材に付加されるが、本発明にかかるラミネート層には、軟化点が170℃以上の合成樹脂が含まれており、軟化点が170℃未満の合成樹脂が熱収縮する場合であっても、それによりラミネート層全体がカールすることはなく、加えて高温多湿な環境下でもより引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の両面テープ用芯材を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
使用原料を以下に示す。
・ポリエチレン(日本ユニカー(株)製、品名:高圧法低密度ポリエチレン(LLDPE) NUC−8007 軟化点:105℃)
・エチレンエチルアクリレート(EEA、日本ユニカー(株)製、品名:DPDJ−6169 軟化点:173℃)
・ポリプロピレン(PP、日本ポリプロ(株)製、品名:FL03H 軟化点:150℃)
・NBKP(市販品)
・レーヨン繊維(オーミケンシ(株)製、品名:ホープ 2.2detex×5mm)
・レーヨン繊維(オーミケンシ(株)製、品名:ホープ 0.8detex×3mm)
・レーヨン繊維(オーミケンシ(株)製、品名:ホープ 4.4detex×3mm)
・PVA(ユニチカファイバー(株)製、品名:ビニロンバインダーSML)
・PET繊維A(帝人ファイバー(株)製、品名:TT04N 0.6dtex×5mm)
・PET繊維B(帝人ファイバー(株)製、品名:TJ04CN 1.1dtex×5mm)
【0038】
評価方法を以下に示す。
(カール)
100mm×200mmの両面テープ用芯材の両面に、アクリル系粘着剤(日本合成化学工業(株)製、品名:コーポニール5411)を60μmの厚みで塗布し、110℃のオーブン内で5分間乾燥させ、四隅のカールを測定し、平均値を算出する。
<カールの評価基準>
◎:カールは1mm以下であり、問題なく剥離紙とともに紙管に巻き取ることができる
○:カールは3mm以下であり、問題なく剥離紙とともに紙管に巻き取ることができる
△:カールは3mmを超え5mm以下であり、カールはしているが、問題なく剥離紙とともに紙管に巻き取ることができる
×:カールは5mmを超え、剥離紙とともに紙管に巻き取る際に端部が内部に折れ曲がり(耳折れ)、紙管への巻き取りに不具合が発生する
(糊残り)
20mm×50mmの両面テープを、サンドペーパー(#280)にて表面研磨したSUS−304板に貼り、2kgのローラーで1往復加圧する。温度60℃湿度90%RH環境下で3日間放置した後、135度の角度で再剥離し、残った糊を目視で判定する。
<糊残りの評価基準>
◎:糊の残りがまったくない
○:糊残りが端的に見られたが、実用上問題のない程度である
△:端部の糊残りが多く、実用上問題がある。
×:全体的に糊残りが見られる
(坪量)
JIS P 8124(1998)「紙および板紙−坪量測定方法」に準拠して測定する。
(フリーネス)
JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定する。
【0039】
(実施例1)
<基材の作製>
フリーネスが635mlとなるように叩解した市販のNBKP70質量%、レーヨン繊維25質量%(オーミケンシ(株)製、品名: ホープ 2.2detex×5mm)、バインダー5質量%(ユニチカファイバー(株)製 品名:ビニロンバインダーSML)を配合し、配合原料を円網抄紙機にて抄紙して基材シートを得た。基材の秤量は17.0g/m2であった。
<両面テープ用芯材の作製>
熱溶融性樹脂としてポリエチレン樹脂(日本ユニカー(株)製、品名:NUC−8007)とエチレンエチルアクリレート樹脂(日本ユニカー(株)製、品名:DPDJ−6169)のペレットを表2の質量割合となるように混合し、押出溶融ラミネート機にてTダイ温度300℃、ラミネート厚8μmで、基材シートの片面にラミネートし両面テープ用芯材を作製した。
得られた両面テープ用芯材を用い、アクリル系粘着剤(日本合成化学工業(株)製、品名:コーポニール5411)を60μmの厚みで塗布して作成した両面テープについて、上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2〜10、比較例1〜4)
原料を表1および表2のとおりとし、その他は実施例1と同様に調製し、評価した。結果を表2に示す。なお、実施例4では、合成繊維として、PET繊維A(帝人ファイバー(株)製、品名:TT04N 0.6dtex×5mm)を20質量%、PET繊維B(帝人ファイバー(株)製、品名:TJ04CN 1.1dtex×5mm)を10質量%配合し、比較例2では、合成繊維として、PET繊維A(帝人ファイバー(株)製、品名:TT04N 0.6dtex×5mm)を70質量%、PET繊維B(帝人ファイバー(株)製、品名:TJ04CN 1.1dtex×5mm)を30質量%配合した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示されるように、基材を構成するパルプとしてマニラ麻のみを使用し、合成繊維を使用せずに調製した比較例1にかかる両面テープ用芯材では、再剥離時に糊残りが生じた。一方、基材にパルプを配合しなかった比較例2にかかる両面テープ用芯材においても糊残りが生じた。ラミネート層を構成する合成樹脂として、軟化点が170℃未満であるポリプロピレンを使用した比較例3にかかる両面テープ用芯材では、粘着剤層の乾燥時にカールを生じ、かつ、再剥離時に糊残りを生じた。さらに、軟化点の低いポリエチレンのみを使用してラミネート層を作成した比較例4にかかる両面テープ用芯材では、再剥離時の糊残りはなかったものの、カールの発生による不具合を生じた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の両面テープ用芯材は、製造工程中(たとえば粘着剤を塗布した後に乾燥する工程)においてカールの発生がなく、高温多湿な環境下でも引張強度に優れ、再剥離時に糊残りのない両面テープが得られるため、たとえば両面テープ等の分野において好適に使用することができる。