(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の止水装置Sの起立位置における正面図である。
図2は、
図1のA−A断面図であり、(a)は、止水板本体Pを起立位置とした図、(b)は、止水板本体Pを格納位置とした図である。
図3は、
図2のB−B断面図である。
図4は、シールゴムの拡大断面図である。なお、
図1の紙面奥側(建物側)を後側、反対側を前側と定義する。
【0014】
図1〜3に示すように、止水装置Sは、地面Gに収容される収容部Fと、収容部Fに回動可能に軸支される止水板本体Pとを有している。止水板本体Pは、
図2(b)に示すように、収容部F内に格納される格納位置と、
図2(a)に示すように、収容部Fに対して起立する起立位置との間で回動可能に設けられている。収容部Fの内面には、支持部材Lの一端が連結されている。この支持部材Lの他端は、止水板本体Pの裏面に連結されている。
【0015】
図2、
図3に示すように、収容部Fは建物の出入口Eの前方に形成されており、地面に形成された窪みH内に、枠体1を配置して構成されている。枠体1は、前板11と、後板12と、左右の側板13、13と、底板14とにより、上方が開放された箱状に形成されている。前板11、後板12、側板13の上端は、地面Gと略面一となるように形成されている。底板14には、等間隔に配置された複数個の孔14aが形成されている。前記孔14aには、窪みH内に立設したボルト15aを差し込んだ後、ボルト15aにナット15bを通す。これにより、枠体Fを窪みH内に容易に固定することができる。
【0016】
図2に示すように、枠体1の後板12後面と窪みHの後方面との間には一対の支柱16が設けられている。この一対の支柱16は、収容部Fの左右両端にそれぞれ設けられている。支柱16の基部は図示しないボルトにより枠体1の後板12と共に地面Gに固定される。支柱16の中間部及び上端部は、
図3に示すように、建物の出入口E側方の壁面Wに固定される。なお、支柱16は建物の出入口Eにはみ出さないように建物の壁面に固定することで、止水装置を使用しないとき(止水板本体Pを格納位置に倒伏させたとき)に人の往来を妨げることはない。
前記支柱16の前面及び後板12の前面には、シールゴム17が断面コの字状のブラケットを介して取付けられている。このシールゴム17は、前方から見て全体がU字状となるように配置されており、止水板本体を起立位置とした際に、止水板本体Pが後板12または支柱16と対向する面全体に配置されている。そして、シールゴム17は止水板本体Pを起立位置まで回動させた際には、止水板本体Pの表面と支柱16とにより挟まれ、その隙間を埋めることができる。そのため、洪水等が発生した際に、止水板本体Pを起立位置まで回動させると、止水板本体Pと建物との間が密閉されるので、水が建物の出入口から建物内に浸入することを防止できる。また、
図4に示すように、止水板本体Pの幅方向に延びるシールゴム17の断面形状は、前面下部が円弧状に削れた形状としている。これにより、止水板本体Pが格納位置と起立位置との間で回動する際に、止水板本体Pの端部がシールゴム17に接触、破損することがない。
【0017】
図3に示すように、収容部Fの底板14上には、複数の保持部材18が設けられる。この保持部材18は、止水板本体Pが格納位置にあるとき、保持部材18と止水板本体Pとが当接するように高さが調節されている。これにより、止水板本体Pが格納位置に格納された状態で、歩行者が止水板本体P上を歩いたとしても、止水板本体Pが変形することを防止できる。
図2、3に示すように、収容部Fの底板14後部上面には、左右方向に並ぶ3個のブラケット19が固定されている。前記ブラケット19には、左右方向に向けて貫通する貫通孔19aが形成されており、ピン19bが差し込み可能となっている。また、底板14と対向するブラケット19の面には、前後方向に延びる長孔19cが2箇所形成されており(
図6参照)、この長孔19cに挿し込まれるボルト、ナットからなる締結部材19eにより、底板14に固定される。
【0018】
次に、止水板本体Pについて説明する。
図2、3に示すように、止水板本体Pは、板部材2と、この板部材2の裏面に固定される複数本(本実施例では3本)の補強部材3とにより構成されている。
【0019】
板部材2は、止水板本体Pが起立位置にあるとき収容部Fの後面12に近接する基部板部材21と、基部板部材21の他端側に取付けられる複数枚(本実施例では2枚)の先部板部材22とにより構成されている。基部板部材21、先部板部材22はともに収容部Fの左右方向の長さと略同等の長さを有している。基部板部材21は、枠体1に近い一端側が薄く、他端側が厚くなるように形成される。基部板部材21の他端側は、先部板部材22の一端と係合可能に形成されており、基部板部材21と先部板部材22とを一体となるように連結することが出来る。また、先部板部材22の他端は、基部板部材21の他端側と同様の形状としており、別の先部板部材22を係合可能としている。これにより、基部板部材21と一体とする先部板部材22の枚数により、止水板本体Pを起立させた際の高さを変更することが容易となる。先部板部材22の一端側裏面には、左右方向に延びるあり溝23が形成されている。
【0020】
板部材2の表面には、左右方向に延びる微小な凹凸24が複数形成されている。この凹凸24は、止水板本体Pを格納位置に倒伏させ、収容部Fの枠体1内に収容した際に、止水板本体P上を人が歩行する際の滑り止めとなる。
また、
図1に示すように、先部板部材22表面の前部中央には、取手25が先部板部材22に対して回動可能に設けられている。この取手25は、不使用時は、先部板部材22表面に形成されたくぼみ25a内に収納されると共に、使用時は、取手を回動させて使用者が掴めるように形成されている。これにより、使用者は取手25を掴む事で、格納位置にある止水板本体Pを起立位置へ容易に回動させることができる。
【0021】
図2に示すように、止水板本体Pを起立位置としたときの上端には、断面コの字型のカバー部材26が被せられている。これにより、止水板本体Pの外観が良くなるとともに、先部板部材22の端部に形成されている他の先部板部材22と連結するための溝などを覆うことが出来るため、止水板本体Pの起伏動作時に、使用者の手がこの溝に触れ、怪我することを防止できる。また、
図1、3に示すように、止水板本体Pの側面には、板状のカバー部材27がボルト(図示せず)等により取付けられている。
【0022】
次に、補強部材3について詳細に説明する。
図5は、止水板本体Pを起立位置とした状態で、補強部材3を前方から見た図である。
図6は、止水板本体Pを起立位置とした状態で、補強部材3を上方から見た図である。
図7は、
図5のC−C断面図である。
図1に示すように、補強部材3は、左右方向に3つ並んで配置されている。なお、3つの補強部材3はすべて同一構成のため、以下一つの補強部材3について構成を説明する。
図5、6に示すように、補強部材3は、一対の並列に配置された側板31と、側板31の一端部に互いに直交するように固定された下部板32と、側板31の他端部に互いに直交するように固定された上部板33とにより形成されている。
【0023】
図3、5に示すように、板部材32には、2箇所の貫通孔32aが設けられている。この貫通孔32aに差し込まれ、基部板部材21を貫通するボルトとナットとからなる締結部材33により、補強部材3の一端部側が基部板部材21に固定される(
図3参照)。
板部材33には、貫通孔33aが設けられている。この貫通孔33aに差し込まれ、先部板部材22のあり溝23内に頭部が配置されるボルトとナットとからなる締結部材34により、補強部材3の他端部側が先部板部材22に固定される(
図3参照)。
【0024】
図5に示すように、板部材31、31の一端部側には、左右方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。この貫通孔31aには、前記ブラケット19の貫通孔19aに差し込まれたピン19bが通されている。これにより、止水板本体Pは、ピン19bを中心に回動することで、収容部Fに対して起立する起立位置と、収容部F内に格納される格納位置との間で回動可能となる。なお、ピン19bの位置は、止水板本体Pを格納位置まで回動させた際にその表面が地面と略面一となり、止水板本体Pを起立位置まで回動させた際にその表面がシールゴム17に十分押し付けられる位置となっている。
【0025】
次に、支持部材Lについて説明する。
図8は、止水板本体Pを起立位置とした状態で、支持部材Lを前方から見た図である。
図9は、止水板本体Pを起立位置とした状態で、支持部材Lを上方から見た図である。
図10は、
図8のD−D断面図である。
図1に示すように、支持部材Lは、左右方向に並んだ3本の補強部材3の間にそれぞれ一つずつ、合計2つ配置されている。この支持部材Lは、止水板本体Pが起立位置にあるとき、止水板本体Pが自重や外力によって格納位置へ移動することを妨げるものである。なお、左右の支持部材Lは同一構成のため、以下一方の支持部材Lについて構成を説明する。
【0026】
支持部材Lの構成について詳細に説明すると、
図8〜10に示すように、支持部材Lは、一端が収容部Fに連結される第一リンク部材4と、一端が第一リンク部材4の他端に連結され、他端が止水板本体Pの先部板部材22裏面に連結される第二リンク部材5とにより構成されている。
【0027】
第一リンク部材4は、一対の平行に並んだリンク板41と、一対のリンク板41の上部に直交するように固定された連結板42とにより構成される。この一対のリンク板41の一端側(収容部Fに近接する側)には、左右方向に貫通する貫通孔43が形成されている。この貫通孔43にはピン44が差し込まれており、このピン44をブラケット45が支持する。ブラケット45の左右両側には、それぞれ長孔45aが形成されており、この長孔45aを通り、枠体1の底板14に頭部が固定されたボルト46aとナット46bとからなる締結部材46により底板14に取付けられている(
図2参照)。一対のリンク板41の他端には、左右方向に貫通する長孔47が形成されている。
【0028】
第二リンク部材5は、一対の平行に並んだリンク板51と、一対のリンク板51間を連結する複数の補強部材52とにより構成される。第二リンク部材51の一端部には、左右方向に貫通する貫通孔53が形成されている。この貫通孔53と前記長孔47には、ピン54が挿し込まれる。これにより、第二リンク部材5は第一リンク部材4に対して摺動可能かつ回動可能に連結される。一対のリンク板51の他端には、左右方向に貫通する貫通孔55が形成されている。この貫通孔55にはピン56が差し込まれている。ブラケット57には、貫通孔58が二つ形成されている。このピン56を支持するブラケット57が先部板部材22裏面のあり溝23に固定されたボルト及びナットからなる締結部材59により固定されている(
図1参照)。
ピン54は、第一リンク部材4の幅よりも長く形成されており、ピン54によって第一リンク部材4と第二リンク部材5とを連結した際に、第一リンク部材4の幅より外方に突出する把持部54aがピン54の両端に形成される。
【0029】
図8に示すように、連結板42は、一対のリンク板41の左右方向の幅より幅広の押圧面部42aと、この押圧面部42aの上部に形成された突出部42bとを有している。押圧面部42aは幅が広く構成されているので、止水板本体Pを起立位置まで回動する寸前で押圧面部42aを踏み、
図2(a)に示すように、容易に支持部材Lを逆くの字にすることができる。また突出部42bは、
図2(a)に示すように、止水板本体Pが起立位置まで回動した際に、第二リンク部材5の上面と接触するように形成されている。これにより、使用者が止水板本体Pを起立位置まで回動させた際に、第一リンク部材4に対する第二リンク部材5の屈折角度が一定値に保たれ、第一リンク部材4と第二リンク部材5とが逆くの字型を維持することができる。
【0030】
次に、止水板本体Pと、収容部Fとの間に二つ設けられるトルクステー6について説明する。
図11は、止水板本体Pを起立位置とした状態で、トルクステー6を側方から見た図である。このトルクステー6は、一端が枠体1の底板14にブラケット61を介して固定される第一トルクアーム62と、一端が第一トルクアーム62の他端に取付けられ、他端が止水板本体Pの基部板部材21の裏面にブラケット63を介して固定される第二トルクアーム64と、第一トルクアーム62と第二トルクアーム64との連結箇所に設けられる押圧部65とにより構成される。そして、このトルクステー6は、押圧部65による第一トルクアーム62と第二トルクアーム64との間で生じる摩擦力により、止水板本体Pが起立位置から格納位置へ回動する速度を低減するものである。これにより、止水板本体Pを格納位置へ格納中に、使用者が止水板本体Pをある程度倒した状態で手を離したとしても、トルクステー6により止水板本体Pはゆっくりと格納位置へ格納されるので、使用者が止水板本体Pと収容部Fとの間で指を挟むことを防止できる。
【0031】
次に、本発明の特徴である、止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度を変更する調節部材Fについて説明する。本発明の調節部材Fは、
図2、6、7に示すように、補強部材3のブラケット19を前後方向に動かす第一調節部材8と、
図2、8、9、10に示すように、支持部材Lの一端を前後方向に動かす第二調節部材9とを有している。以下、第一調節部材8、第二調節部材9の構成についてそれぞれ説明する。
図6、7に示すように、第一調節部材8は、補強部材3の前方に設けられている。具体的に説明すると、補強部材3を回動可能に支持するブラケット19の前方に、ブラケット81が枠体1の底板14に溶接により固定されている。このブラケット81は、後部に上方に向けて延びる起立面81aが形成されている。この起立面には、前後方向に貫通する貫通孔81bが形成され、この貫通孔81bの後面にはナット82bが溶接等により固定されている。そして、貫通孔81b及びナット82bにはボルト82aを差し込む。このボルト82aの後方側端面は、ブラケット19の前部に形成された上方に延びる起立面19dと当接可能である。
【0032】
次に、第二調節部材9の構成についてについて説明する。
図9、10に示すように、第二調節部材9は、第一リンク部材4の一端が連結されているブラケット45を前後方向に移動させるものである。
詳細に説明すると、収容部Fの底壁14上のブラケット45の後側に、断面L字状のブラケット91が底板14上に溶接によって固定される。このブラケット91の前部に形成された上方へ向けて延びる起立面92には、前後方向に貫通する孔93が形成される。この起立面92の後面には、この孔93と同径のナット94が、孔93と径が一致するように溶接により固定される。また、ブラケット45の後部には、前記ブラケット91の起立面92と対向する起立面45aが形成され、この起立面45aには、前記ブラケット91の孔93と略同径であり、中心が孔93の中心と一直線上に並ぶ孔45bが形成される。そして、孔93、孔45bを通り、ナット94と嵌め合うボルト95を、その頭部がブラケット45の起立面45aの前側面に接するように嵌め合わせる。
【0033】
次に、本発明の止水装置Sについて、止水板本体Pを格納位置から起立位置へ起立させる起立動作、および止水板本体Pを起立位置から格納位置へ格納する倒伏動作についてそれぞれ説明する。
図12は、本発明の止水装置Sの止水板本体Pの起立動作、倒伏動作を示す図である。
まず止水板本体Pの起立動作について説明する。
図12(a)に示すように、止水板本体Pが収容部F内に格納される格納位置においては、止水板本体Pは、その表面が地面と略面一となり、その裏面が複数の保持部材18によって支持される位置で保持される。また、支持部材Lは、くの字状に屈曲されて収容部F内に格納され、支持部材Lの第一リンク部材4と第二リンク部材5とを連結するピン54は、第一リンク部材4に形成された長孔47の略中間部分に位置する。
【0034】
この止水板本体Pを起立させるために、まず、使用者が止水板本体Pの表面のくぼみ25aに収められている取手25を起立させ、取手25を持って止水板本体Pを引き上げる。これにより、止水板本体Pはピン19bを中心に時計回りに回動する。この止水板本体Pの回動初期において、支持部材Lは、第二リンク部材5が第一リンク部材4に対して、ピン54を中心として反時計回りに回動すると共に、ピン54が長孔47内を後方に向けて摺動する(
図12(b)参照)。そして、ピン54が長孔47の基端側端部まで摺動すると、第一リンク部材4と第二リンク部材5とが、ピン44を中心に時計回りに回動するとともに、第二リンク部材5が第一リンク部材4に対してピン54を中心に反時計回りに回動する。
【0035】
さらに、止水板本体Pを時計回りに回動させると、支持部材Lがくの字状に屈折した状態で、止水板本体Pが起立位置近くまで回動する。この状態において、使用者は、支持部材Lの押圧面部42aを足で踏むなどして止水板本体P側に押し付ける。これにより、止水板本体Pは、その表面がシールゴム17に押し付けられながら起立位置まで回動する。このとき、くの字状に屈曲している支持部材Lは、一直線に並んだ後、逆くの字上に屈曲するとともに、連結板42の突出部42bが第二リンク部材5に接触する(
図12(c)参照)。これにより、止水板本体Pの自重や使用者が止水板本体Pを押すなどの外力が、止水板本体Pを反時計回りに回動する方向に作用したとしても、ピン44の中心とピン56の中心を結ぶ線より下側にピン54の中心が位置するため、支持部材は逆くの字状に折れ曲る方向に動こうとするが、連結板42の突出部42bにより第二リンク部材5が第一リンク部材4に対して逆くの字となるほうへ屈折することが規制されているので、止水板本体Pは起立位置から動くことなく、その位置を保持することが出来る。
【0036】
次に、止水板本体Pを起立位置から格納位置へ倒伏させる倒伏動作について説明する。
図12(c)に示すように、止水板本体Pが起立位置にある場合は、まず、ピン54の把持部54aを持って引っ張ることで、逆くの字状に屈折している支持部材Lをくの字状に屈折させる。このとき、作業員はピン54の把持部54aを持つので、引っ張る際に支持部材Lのリンクに挟まれて怪我をすることが無く安全である。また、把持部54aがピン54と兼用されるので、部品点数が増えず、安価である。
その後板部材21の表面に設けられた取手25を持ちながら、止水板本体Pを格納位置へ向けて回動させる。このとき、トルクステー6により、止水板本体Pの回動速度が低減されるので、仮に使用者が取手25から手を離したとしても、止水板本体Pが急に収容部Fに向けて回動し、収容部Fと止水板本体Pとの間に指を挟むなどの事故を未然に防止することができる。
そして、
図12(b)に示すように止水板本体Pが収容部Fに近づき、第一リンク部材4が収容部F内に接すると、それまでピン54を中心に第一リンク部材4に対して時計回りに回動していた第二リンク部材5は、ピン54が長孔47内を前方に向けて摺動することで、第一リンク部材4に対して時計回りに回動しながら前方へ移動し、収容部Fの枠体1内に倒伏する。これにより、止水板本体Pが格納位置へ格納される際に、支持部材Lは止水板本体Pの動作を妨げることなく収容部F内に折畳格納される。
【0037】
次に、スロープなどによって地面に傾斜がある場所に本発明の止水装置Sを設置する場合の設置手順について説明する。
図13は、調節部材によって起立位置における止水板本体の起立角度を変更した状態を示す図であり、(a)は、起立角度をほぼ垂直とした図、(b)は、(a)より起立角度を小さくした図、(c)は、(a)より起立角度を大きくした図である。
図14は、調節部材によって起立角度を変更した際の、止水板本体の格納位置における止水装置の状態を示す図であり、(a)は、起立位置での起立角度がほぼ垂直とした場合の図、(b)は、起立位置での起立角度を(a)より小さくした場合の図、(c)は、起立位置での起立角度を(a)より大きくした場合の図である。
【0038】
まず、止水装置Sを取付ける建物の出入口の前に、地面の傾斜に沿って窪みHを掘り、窪みH内の所定位置に立設させた複数本のボルトとナットによって枠体1を地面の窪みH内に配置する。この状態で止水板本体Pを起立位置に向けて回動させる。すると、地面の傾斜が建物の出入口から前方に向けて(建物の外方に向けて)下り傾斜となっている場合は、止水板本体Pの起立位置は地面に対してほぼ垂直となる位置より前方となるので、止水板本体Pの表面と建物の出入口に設けたシールゴムとの間に隙間が生じる。また、地面の傾斜が建物の出入口から前方に向けて(建物の外方に向けて)上り傾斜となっている場合は、止水板本体Pの起立位置は地面に対してほぼ垂直となる位置より後方となるので、止水板本体Pを起立位置に向けて回動させた際に、起立位置まで回動する前に建物側と接する。そのため、支持部材Lが逆くの字状に屈折できず、止水板本体Pの自重等により止水板本体Pが格納位置に倒れてしまう。そこで、このような問題を解決するために、本実施例における調節部材Fによる調節を行う。
【0039】
本実施例における調節部材Fによる調節は、第二調節部材9によって止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度を調節する角度調節と、角度調節後に、第一調節部材8によって起立位置における止水板本体Pの位置を調節する位置調節とからなる。
【0040】
第二調節部材9による角度調節の手順を説明する。
図9、10に示すように、底板14にブラケット45を固定する締結部材46のナット46bを緩めた後、第二調節部材9のボルト95を回す。このとき、ボルト46aは底板14に固定されるとともに、ブラケット45の長孔45aに差し込まれており、ボルト46aに対してブラケット45は前後方向に移動可能となっている。そして、ブラケット91が溶接により底板14に固定されているため、長孔45aがガイドの役割を果たし、ブラケット45が長孔45aに沿って前後方向に移動する。これにより、第一リンク部材4のピン44の位置が前後するが支持部材L自体の長さは変わらないため、支持部材Lにより支えられる止水板本体Pの起立位置における収容部Fに対する角度が変わる。そこで、ボルト95を回し、止水板本体Pの起立位置において、止水板本体Pの表面が建物の出入口に設けたシールゴム17に押し付けられる位置にブラケット45を移動させると、その位置でナット46bを締め、ブラケット45を底板14に固定する。
【0041】
次に、第一調節部材8による位置調節の手順を説明する。
図6、7に示すように、ブラケット19を底板14に固定する締結部材19eのナットを緩めた状態でボルト82aを回し、ボルト82aの後方側端面を前後方向に移動させる。そして、移動したボルト82aの後方側端面にブラケット19の起立面19dが接するようにブラケット19を動かす。このとき、底板14に固定された締結部材19eのボルトが、前後方向に延びるブラケット19の長孔19cに差し込まれているので、長孔19cがガイドの役割を果たし、ブラケット19は前後方向に移動する。その後、締結部材19eによりブラケット19を底板14に固定する。
【0042】
このように、第二調節部材9による調整により、支持部材Lの端部が前後に移動するが、支持部材L自体の長さは変わらないため、
図13(b)、(c)に示すように、止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度が変更される。これにより、収容部Fを地面の傾斜に合わせて配置することで止水装置Sの板部材21表面と地面とが段差の無い略面一の状態とすることが出来ると共に、止水板本体Pを起立させた際に建物の出入口を密閉することができ、大雨や洪水等による建物内への水の浸入を防ぐことができる。
【0043】
また、このように止水板本体Pの作動位置を調整した後、止水板本体Pを格納位置へ戻す際には、ブラケット45の前後移動によりピン44の前後方向の位置が変わるため、第一リンク部材4、第二リンク部材5の長さが変わらない場合は、収容部F内に第一リンク部材4、第二リンク部材5Gが折畳格納されず、止水板本体が格納位置まで移動できない問題が生じる。しかし本発明においては、第一リンク部材4と第二リンク部材5とを接続するピン54が長孔47に差し込まれているため、
図14に示すように、格納動作中に第一リンク部材4が収容部Fに当接したとしても、ピン54が長孔47内を摺動する。そのため、第二リンク部材5が第一リンク部材4に対して回動し、支持部材Lが収容部F内に格納でき、止水板本体Pを収容部F内に格納する格納位置まで回動させることが出来る。
【0044】
また、第一調節部材8による位置調節により、止水板本体Pを、その表面とシールゴム17とが適度に密着するように位置を変更することが出来る。詳細に説明すると、本発明の止水装置Sにおいては、シールゴム17が枠体1の後板12に固定されているため、前記角度調節により止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度を変更すると、止水板本体Pの表面がシールゴム17に過度に押し付けられたり、止水板本体Pの表面とシールゴム17とが離れることがある。そのため、第一調節部材8による位置調節によって、止水板本体P全体の位置を前後に動かすことで、止水板本体Pの表面とシールゴム17とが適度に密着させることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
例えば、本発明においては、第二調節部材9によって止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度を変更したが、第一調節部材8によって起立角度を調節する角度調節を行っても良い。
具体的に説明すると、
図6、7に示すように、ブラケット19を底板14に固定する締結部材19eのナットを緩めた状態でボルト82aを回し、ボルト82aの後方側端面を前後方向に移動させる。そして、移動したボルト82aの後方側端面にブラケット19の起立面19dが接するようにブラケット19を動かす。このとき、底板14に固定された締結部材19eのボルトが、前後方向に延びるブラケット19の長孔19cに差し込まれているので、長孔19cがガイドの役割を果たし、ブラケット19は前後方向に移動する。すると、止水板本体Pの回転中心であるピン19bが後方へ移動し、更に、起立位置のおいて止水板本体Pが接するシールゴム17の位置は変わらないため、シールゴム17の変形しろの分だけ止水板本体Pの起立位置における枠体1に対する起立角度を変更することができる。
また、上記実施例においては、第一調節部材8、第二調節部材9をともに有する構成としたが、第一調節部材8、第二調節部材9のいずれか一方としてもよい。
また、第二調節部材9を第一リンク部材4の一端側である収容部F側に配置した構成としたが、第二調節部材9を第二リンク部材の他端側である止水板本体P側に配置してもよい。