(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リッジ状の光導波路構造を有する光素子の種々の特性には、光導波路内への光閉じ込め係数や光導波路上の電極の寄生容量が大きく影響することが知られている。例えば、マッハツェンダー型干渉計(Mach-Zehnder Interferometer)を利用した変調器である半導体MZ変調器のように電界を印加したときの屈折率変化を利用した光素子においては、光閉じ込め係数が大きいほど屈折率変化量が大きくなり、寄生容量が小さいほど帯域が大きくなることが知られている。
【0003】
ここで、上記のような半導体MZ変調器に含まれるリッジ状の光導波路を、当該光導波路のメサの高さの観点から分類する場合、活性層がリッジ部の下部に位置し、活性層の幅がリッジ状の光導波路の幅より十分に広いローメサ光導波路と、活性層の幅がリッジ状の光導波路の幅と同一のハイメサ光導波路の2つに大別される。
【0004】
ハイメサ光導波路とローメサ光導波路を比較した場合、ハイメサ光導波路の方がローメサ光導波路よりも、光閉じ込め係数と寄生容量に関して高特性となる。具体的には、ハイメサ光導波路においては、半導体で形成された活性層の側面が空気や低誘電体などの屈折率差の大きな物質との界面を有するため、光閉じ込め係数が大きく、電界を印加したときの屈折率変化量が、ローメサ光導波路よりも大きくなる。また、ハイメサ光導波路においては、活性層幅が電極幅と等しくなり、寄生容量が小さくなることから、高速動作に有利である。特に、半導体MZ変調器においては、光導波層の屈折率変化が小さく、光導波路を長く形成する必要があるため、寄生容量の影響が大きくなる。したがって、寄生容量の小さいハイメサ光導波路は、高速動作のために有用である(非特許文献1参照)。
【0005】
また、一般に半導体レーザ素子は、光導波路を逆メサ方向に沿って形成する。これに対して、半導体MZ変調等、電圧を印加したときの屈折率変化を利用する変調器は、順メサ方向に光導波路を形成する。これにより、優れた変調特性が期待できる。これは、順メサ方向は逆メサ方向と比べてポッケルス効果が高く、電圧印加時の屈折率変化が大きくなるからである。以上のように、順メサ方向のハイメサ光導波路はMZ変調器の変調特性、高速動作に有益な導波路構造である。
【0006】
ここで、上記のような半導体レーザ素子として、その作成工程において、リッジ状の導波路を傷つけることを防止するため、導波路の両側に空間領域を挟んで、高さが当該導波路の高さよりも高い、土手状の半導体材料で形成されるリッジ保護層を設ける構成が知られている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなハイメサ光導波路を有するMZ変調器は、メサが細長い形状を有する。具体的には、例えば、メサの幅は約1乃至2μm、メサの高さは約4乃至5μmであり、メサの長さは、約1000乃至2000μmである。したがって、その製造工程において、メサの機械的接触の可能性が大きくなり、メサが欠けやすいという問題がある。
【0010】
当該観点から、MZ変調器において、その光導波路の両側に、上記のような半導体材料で形成される土手状のリッジ保護層を設けると、その場合には、MZ変調器の上部電極にワイヤーをボンディングするために必要となる電極パッドの寄生容量が増大し、高速動作に対応できない場合があるという問題が生じる。
【0011】
具体的には、MZ変調器においては、変調導波路部の上部電極に、ワイヤーをボンディングするため、変調導波路上部の電極から電極パッドまでの引き出し線及び電極パッドを要する。この場合、一般に、当該ワイヤボンディングのためには、100μmφ程度の大きさの電極パッドが必要になる。よって、例えば、このような電極パッドを、MZ変調器において、上記のような土手状の半導体材料であるリッジ保護層の上に形成すると、電極パッドの寄生容量が増加し、高速動作に対応できないこととなる。
【0012】
上記課題に鑑みて、本発明は、ハイメサ光導波路の製造工程における歩留まりを改善するとともに、電極パッドの寄生容量を低減することができる光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明における光素子は、リッジ状の光導波路部と、前記光導波路部に並んで配置された、メサプロテクタ部と、前記メサプロテクタ部の上部を覆うとともに、該メサプロテクタ部の両側に配置された樹脂部と、前記光導波路部上に配置された電極と、前記メサプロテクタ部に対して、前記光導波路部と反対側に位置する樹脂部上に配置された電極パッドと、前記樹脂部上に配置されるとともに、前記電極と前記電極パッドを電気的に接続する接続部と、を有することを特徴とする。
【0014】
(2)上記(1)に記載の光素子において、前記メサプロテクタ部の高さは、前記光導波路部の高さより高いことを特徴とする。
【0015】
(3)上記(1)に記載の光素子において、前記メサプロテクタ部の高さは、前記光導波路部の高さと実質的に同一であることを特徴とする。
【0016】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光素子において、前記メサプロテクタ部の幅は、前記光導波路部の高さと実質的に同一であることを特徴とする。
【0017】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光素子において、前記メサプロテクタ部は、前記光導波路部の両側に配置された、一対のメサプロテクタを有することを特徴とする。
【0018】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の光素子において、前記光導波路部は、
入射光を導波する第1の光導波路と、前記光導波路を導波した光を分岐する第1の分岐部と、前記分岐された光を変調するとともに導波する複数の変調導波路と、前記複数の変調導波路からの光を合波する第2の分岐部と、前記第2の分岐部からの光を導波する第2の光導波路と、を有することを特徴とする。
【0019】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光素子を含む変調器モジュールであることを特徴とする。
【0020】
(8)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光素子は、更に、前記光素子に光を出力する半導体レーザを有し、前記光素子と、前記半導体レーザとを同一の基板に集積して設けたレーザ集積変調器モジュールであることを特徴とする。
【0021】
(9)本発明における光素子の製造方法は、基板上に、少なくとも第1のクラッド層と、活性層と、第2のクラッド層とを積層することにより積層構造を形成し、前記積層構造をエッチングすることにより、リッジ状の光導波路部及び前記光導波路部に並んで配置されるメサプロテクタ部と、を形成し、前記エッチングされた積層構造上に、パッシベーション膜を形成するとともに、該パッシベーション膜上に樹脂部を形成し、前記光導波路部上部から、前記メサプロテクタ部に対して前記光導波路部と反対側の樹脂部上へ延伸する電極部を形成する、ことを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における変調器モジュールの全体構成について説明するための図である。
【0025】
図1に示すように、変調器モジュール100は、パッケージ101内に、キャリア102、温度を調整するペルチェ103、温度を検出するサーミスタ104、複数の集光レンズ105を有する。キャリア102には、終端抵抗(図示なし)が付加されるとともに、半導体MZ変調器106が搭載される。なお、パッケージ101は、金属素材をボックス型に加工したものであって、例えば、熱伝導率が高いCuW合金の底板、FeNi合金からなるフレーム、電気信号をパッケージ101内部に伝達するために配線パターンを形成したセラミックフィードスルー、リード端子、キャップをシーム溶接するためのシームリング、光を取り出す窓を気密封止するためのサファイヤガラス、レンズホルダや光ファイバを溶接固定するためのパイプ部材等により構成される。
【0026】
サーミスタ104は、半導体MZ変調器106の温度を検知し、当該検知した温度をモニタ温度信号として、制御部(図示なし)へ出力する。制御部は、当該モニタ温度信号に応じて、ペルチェ駆動電流信号をペルチェ103に出力する。これにより、半導体MZ変調器106の温度を一定に保つ。
【0027】
また、光ファイバ107を介して入力される光信号は、集光レンズ105を介して、半導体MZ変調器106に入力され、当該半導体MZ変調器106で、外部から入力される変調駆動信号に応じて、変調される。変調された光信号は、順に集光レンズ105、光アイソレータ108、集光レンズ105を介して、出力側の光ファイバ107へ出力される。なお、
図1に示した変調器モジュール100の構成は、一例であって、本実施の形態における変調器モジュール100は、これに限定されるものではない。
【0028】
図2は、
図1に示した半導体MZ変調器の上面図を示す。また、
図3は、
図2におけるIII−III断面図を示す。
【0029】
図2に示すように、半導体MZ変調器106は、その略中央を横切るように、光導波路部201を有する。当該光導波路部201は、光の入射する方向(入射方向)から順に、光導波路202、Y分岐203、2の変調導波路204、Y分岐203、光導波路202を有する。具体的には、入射方向から順に、光導波路202は、Y分岐203で2の変調導波路204に分割され、更に、次のY分岐203で1の光導波路202に合成される。なお、光導波路202は、いわゆるハイメサ構造であり、順メサ方向である01−1方向に形成される。また、図中、011方向が逆メサ方向を示し、100方向が当該順メサ方向及び逆メサ方向に直交する方向を示す。
【0030】
また、半導体MZ変調器106は、光導波路部201の両側に、当該光導波路部201に沿って、メサプロテクタ205を有する。具体的には、光導波路202の両側に、光導波路202から所定の距離にメサプロテクタ205が配置される。つまり、メサプロテクタ205と光導波路202との間隔は、2の変調導波路204のうち当該メサプロテクタ205側の変調導波路204と光導波路202との間隔より、大きくなるように形成される。
【0031】
更に、半導体MZ変調器106は、変調導波路204の上部に、変調導波路204に沿って電極312を有する。また、電極312の各端部は、引き出し線313を介して、電極パッド314に接続される。具体的には、当該引き出し線313は、電極312からメサプロテクタ205の上方を通過した後、電極パッド314に接続される。各変調導波路に2の電極パッド314を通じて当該電極312に電圧を印加することにより、より効果的に高速動作に対応することができる。なお、
図2においては、4の電極パッド314を配置する構成としたが、これに限られず、異なる数の電極パッド314としてもよいし、電極312の形状も異なるものであってもよい。また、電極312とメサプロテクタ205、変調導波路204等の位置関係については、下記に更に詳述する。
【0032】
次に、
図3を用いて、当該半導体MZ変調器の断面構造について説明する。
図3の下方から順に、n側電極301、n型InP基板302(基板)が配置される。
【0033】
変調導波路204は、上記積層構造上に、順に、n型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、量子井戸活性層306(活性層)、InGaAsP上側光ガイド層307、p型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAsP層とから形成されるp型コンタクト層309を有する。なお、光導波路202も同様の断面構造を有するので説明を省略する。
【0034】
メサプロテクタ205も同様に、上記積層構造上に、順にn型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、量子井戸活性層306、InGaAsP上側光ガイド層307、p型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAsP層とから形成されるp型コンタクト層309を有する。そして、更に、p型InPキャップ層310を有する。
【0035】
また、上記変調導波路204の側面、メサプロテクタ205の上面と側面、及び、上記変調導波路204やメサプロテクタ205を有しない部分(2の変調導波路204部の間、光導波路202とメサプロテクタ205の間、変調導波路204とメサプロテクタ205の間、及びメサプロテクタ205の外側)は、パッシベーション膜311で覆われる。
【0036】
そして、変調導波路204の上部を除き、上記パッシベーション膜311の上部は、樹脂321で覆われる。つまり、上記変調導波路204やメサプロテクタ205を有しない部分(2の変調導波路204部の間、光導波路202とメサプロテクタ205の間、変調導波路204とメサプロテクタ205の間、及びメサプロテクタ205の外側)、及び、メサプロテクタ205の上部は、パッシベーション膜311を介して、樹脂321で覆われる。
【0037】
また、変調導波路204の上面、つまり、変調導波路204のp型コンタクト層309の上面は、p側電極層320のp側電極312で覆われる。そして、当該p側電極312は、引き出し線313を介して、電極パッド314に接続される。ここで、当該p側電極312、引き出し線313、電極パッド314は、ともにp側電極層320で形成される。言い換えれば、p側電極層320は、変調導波路204のp型コンタクト層309の上面から、樹脂321上を延伸して、メサプロテクタ205に対して変調導波路204と反対側に位置する樹脂321にまで延伸して配置される。
【0038】
ここで、メサプロテクタ205は、
図3に示すように、その高さ及び幅の比が略同一とである。これにより、メサプロテクタ205の強度を、所望の強度以上とすることができる。なお、例えば、メサプロテクタ205の高さ及び幅は、4乃至5μm程度とすればよい。また、メサプロテクタ205の高さは、光導波路202の高さよりも高い。これにより、製造工程における光導波路部201の欠け(メサ欠け)を効果的に防止することができる。
【0039】
次に、当該半導体MZ変調器106の動作の概要について説明する。光導波路202に入射した入射光206は、Y分岐203で2の変調導波路204に、略1対1の割合で分岐し導波する。2の変調導波路204を導波する光は、Y分岐203で合波され導波する。このとき、変調導波路204上に形成されたp側電極312と基板302側に形成されたn側電極301の間に電圧を印加することによって、変調導波路204の活性層306の屈折率や吸収率が変化し、入射光206が変調される。これにより、2本の変調導波路204を導波するそれぞれの光の位相や強度によって、Y分岐203で合波され導波される光の量が変化する。上記のように、p側電極312とn側電極301間に電圧を印加することで、出射光207の光強度を変化させることができる。
【0040】
なお、上記半導体MZ変調器の構成及び動作は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、上記においては、2の変調導波路204を有する構成及び動作について説明したが、その他の数であってもよい。なお、その場合、Y分岐203に代えて光導波路202を複数に分岐する分岐部が用いられることはいうまでもない。
【0041】
次に、本実施の形態における半導体MZ変調器106の製造方法について説明する。
【0042】
まず、変調導波路204の結晶成長として、有機金属気相法を用いた公知の結晶成長法により、n型InP基板302上に、n型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、InGaAsP井戸層と障壁層からなるアンドープ歪多重量子井戸層から形成される活性層306、InPキャップ層を成長する。そして、プラズマCVDによるSiN膜を形成したのち、変調導波路204となる領域にSiN膜のパターニングを施し、このSiN膜をマスクとして、ドライエッチング、及びウェットエッチングにて、変調導波路204となる領域以外の変調導波路204に相当する多層構造を除去する。
【0043】
次に、第二回目の結晶成長として、変調導波路204を形成する領域以外に、有機金属気相法を用いて、パッシブ光導波路202(光導波路)、Y分岐203の多層成長である、InGaAsP下側光ガイド層305、InGaAsP井戸層と障壁層からなる量子井戸活性層306、InGaAsP上側光ガイド層307、InPキャップ層を順次形成する。このとき、Y分岐203と変調導波路204は、光学的に接続されている。
【0044】
次に、
図4に示すように、第三回目の結晶成長として、変調導波路204、Y分岐203、パッシブ光導波路202上に、上側クラッド層となるp型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAs層から形成されるp型コンタクト層309、及び、p型InPキャップ層401を形成する。なお、上記p型InPキャップ層は途中工程で除去されるものであり、最終構造には残らない。また、ここで、p型のドーパントには、例えば、Znを用いる。
【0045】
次に、
図5に示すように、公知の選択成長法により、後の工程でメサプロテクタ205を形成する部分にInP層402を再成長させる。なお、当該InP層402に基づいて、メサプロテクタ205のp型InPキャップ層310が形成される。
【0046】
その後、
図6に示すように、変調導波路204からパッシブ光導波路202に渡る、例えば、約4μmの高さのハイメサ光導波路を、ドライエッチングとウェットエッチングによって形成する。また、このときメサプロテクタ205も同時に形成する。なお、メサプロテクタ205の幅は、電極パッド314の下にメサプロテクタ205が配置されないように、大きすぎず、かつ、その機械強度が保たれるように、メサ高さ程度、例えば、5μm程度とするのが望ましい。
【0047】
次に、
図7に示すように、
図6に示した積層構造上に、公知のプラズマCVDによってパッシベーション膜311を形成し、当該パッシベーション膜311上に樹脂321を塗布する。そして、エッチバック、スルーホール工程により、変調導波路204部に電極穴を開ける。次に、p側電極312、引き出し線313、電極パッド314をEB(Electron Beam)蒸着法、及び、フォトリソグラフィー技術により形成する。なお、樹脂321は、例えば、ポリイミド、テトラエトキシシラン、または、ベンゾシクロブテンを用いればよい。
【0048】
次に、裏面研磨工程にて、基板302を、例えば、約150μmまで研磨し、n側電極301を形成した後、電極アロイ処理を施して、ウェハ工程が完了する。最後に、ウェハから半導体MZ変調器ごとにチップ化し、端面コーティングすることにより、上記
図3に示した半導体MZ変調器106を取得する。
【0049】
本実施の形態によれば、ハイメサ光導波路(光導波路部201)の上面はメサプロテクタ205の上面よりも高さが低くなる。よって、製造工程において、ハイメサ光導波路が機械的接触から保護され、メサ欠けが減少し、半導体MZ変調器106、当該半導体MZ変調器106を備えた変調器モジュール100等を、高歩留りで安定的に生産できる。また、電極パッド314下を半導体ではなく、低誘電率の樹脂321で形成することにより、低容量化が可能となり、例えば10Gbit/sの高速動作が可能となる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、下記において第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0051】
図8は、本実施の形態における変調器モジュールを説明するための図である。具体的には、本実施の形態における半導体MZ変調器501の
図2におけるIII−III断面図を示す。
図8に示すように、本実施の形態においては、主に、メサプロテクタ205の高さを光導波路202の高さと略同一とする点が、上記第1の実施形態と異なる。具体的には、本実施の形態においては、p型コンタクト層309上に、p型InPキャップ層310を配置しないので、メサプロテクタ205の高さを光導波路202の高さと略同一となる。その他の構成については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
次に、本実施の形態における半導体MZ変調器501の製造方法について説明する。本実施の形態においては、主に、上記第1の実施形態における第3回目の結晶成長を行った後に、p型InPキャップ層401を成長させてInP層402を再成長させない点が、上記第1の実施形態と異なる。以下、具体的に説明する。
【0053】
第3回目の結晶成長までは、上記第1の実施形態と同様の製造工程を行う。その後、
図9に示すように、p型InPキャップ層401を再成長することなく、上記第1の実施形態と同様に、変調導波路204とメサプロテクタ205をドライエッチングとウェットエッチングの2段階のエッチングによって形成する。
【0054】
その後、上記第1の実施形態と同様に、
図10に示すように、プラズマCVDによってパッシベーション膜311を形成し、樹脂321を塗布する。そして、エッチバック、スルーホール工程にて、変調導波路204部に電極穴を開ける。次に、p側電極312、引き出し線313、電極パッド314をEB(Electron Beam)蒸着法、及び、フォトリソグラフィー技術により形成する。
【0055】
そして、裏面研磨工程にて、n型InP基板302を約150μm程度まで研磨し、n側電極301を形成する。そして、電極アロイ処理を施し、ウェハ工程が完了する。最後に、ウェハから半導体MZ変調器501ごとにチップ化し、端面コーティングすることにより、
図8に示した半導体MZ変調器501を取得する。
【0056】
上記実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と比較して、
図5に示したようなInP層402を別途再成長することなく、メサプロテクタ205と光導波路部201を同時に形成することができるため、製造工程数が増加することなく、半導体MZ変調器501を取得することができる。そして、ハイメサ光導波路(光導波路部201)と同じ高さのメサプロテクタ205によって、ハイメサ光導波路が機械的接触から保護される。よって、ハイメサ光導波路が機械的接触から保護され、メサ欠けが減少し、半導体MZ変調器106、当該半導体MZ変調器501を備えた変調器モジュール等を、高歩留りで安定的に生産できる。また、電極パッド314下を半導体ではなく、低誘電率の樹脂321で形成することにより、低容量化が可能となり、10Gbit/sの高速動作が可能となる。
【0057】
なお、本発明は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0058】
例えば、上記第1または第2の実施の形態における半導体MZ変調器106、501は、入力波長を調整可能なレーザモジュール(波長可変レーザモジュール)に適用してもよい。半導体MZ変調器106、501は、電界半導体電界吸収型(Electro-Absorption)変調器に比べ波長依存性の小さな変調器であることから、波長可変レーザモジュールに用いることができる。
【0059】
この場合の一例を
図11に示す。
図11に示すように、波長可変レーザモジュール600は、半導体MZ変調器106、501の入力側に、波長可変レーザ601、ハーフミラー602、及び、波長ロッカー603を有する。波長可変レーザ601は、レーザ駆動信号に応じた波長の光を出射し、当該出射光は、ハーフミラー602を介して、波長ロッカー603及び半導体MZ変調器106、501に入射する。波長ロッカー603は、波長可変レーザ601から出力された光を測定し、当該測定された光の波長に応じて、波長可変レーザ601の波長を調整する。この場合、波長依存性の小さい半導体MZ変調器106、501を用いれば、Cバンドである1528乃至1568nmの波長領域で、例えば、10Gbit/sの高速動作が可能となる。なお、その他の点については、
図1で示した変調器モジュール100の構成と同様であるので説明を省略する。
【0060】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、下記において上記第1または第2の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0061】
図12は、本実施の形態におけるDFBレーザ集積半導体MZ変調器の構成を説明する上面図である。
図13は、
図12のXIII−XIII線における断面図である。
図14は、
図12のXIV−XIV線における断面図である。
図15は、
図12のXV−XV線における断面図である。
【0062】
図12乃至
図15に示すように、本実施の形態におけるDFBレーザ集積半導体MZ変調器700は、主に、上記第1または第2の実施形態における半導体MZ変調器106、501にDFBレーザ703を集積する点で、上記第1または第2の実施形態における半導体MZ変調器501と異なる。なお、下記においては、一例として第2の実施形態における半導体MZ変調器501にDFBレーザ703を集積した場合を例として説明する。
【0063】
図12に示すように、DFBレーザ集積半導体MZ変調器700は、DFBレーザ部701、光導波路202、Y分岐203、2の変調導波路204、Y分岐203、光導波路202を有する。第1の実施形態と同様に、当該光導波路部201は、光の入射する方向(入射方向)から順に、光導波路202、Y分岐203、2の変調導波路204、Y分岐203、光導波路202を有する。なお、DFBレーザ部701の光導波路702は、ローメサであり、DFBレーザ部701以外の光導波路202はハイメサである。また、上記のように、本実施の形態においては、DFBレーザ部701として、従来からの信頼性の高いローメサリッジDFBレーザ703を用いる例について説明したが、DFBレーザ部701はハイメサのDFBレーザを用いてもよい。
【0064】
また、上記第2の実施形態と同様に、DFBレーザ集積半導体MZ変調器700は、光導波路202、Y分岐203、2の変調導波路204で構成される光導波路部201に沿って、メサプロテクタ205を有する。具体的には、光導波路部201の両側に並んで2のメサプロテクタ205が配置される。なお、
図12においては、メサプロテクタ205が光導波路部201の両側のみに配置される場合について説明したが、メサプロテクタ205は、光導波路702の両側についても延伸していてもよい。
【0065】
次に、DFBレーザ集積半導体MZ変調器の断面構造について説明する。なお、下記においては、
図13に示すように、DFBレーザ部701以外の部分についての断面構成については、第2の実施の形態と同様であることから、説明を省略する。
【0066】
図14に示すように、
図12のXIV−XIV線における断面からみると、
図14の下方から順に、n側電極301、n型InP基板302(基板)、が配置される。
【0067】
また、DFBレーザ部701の光導波路702が形成される領域については、上記積層構造上に、順に、n型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、量子井戸活性層306(活性層)、InGaAsP上側光ガイド層307、p型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAsP層とから形成されるp型コンタクト層309、DFBレーザ部701のp型電極801となるp側電極層320が配置される。
【0068】
また、上記DFBレーザ部701の光導波路702が形成される領域の側面や上記領域以外の部分は、パッシベーション膜311で覆われる。そして、上記DFBレーザ部701の光導波路702が形成される領域の上部を除き、上記パッシベーション膜311の上部は、樹脂321で覆われ、当該樹脂321上には、更に、p側電極層320が配置される。
【0069】
また、
図15に示すように、
図12のXIV−XIV線における断面からみると、
図15の下方から順に、n側電極301、n型InP基板302(基板)、が配置される。更に、順に、n型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、量子井戸活性層306(活性層)、InGaAsP上側光ガイド層307、p型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAsP層とから形成されるp型コンタクト層309、レーザ部701のp型電極801となるp側電極層320が配置される。なお、ここで、p型InPクラッド層308には、後述する回折格子層802が形成される。
【0070】
次に、当該DFBレーザ集積半導体MZ変調器700の動作の概要について説明する。DFBレーザ部701の上部に形成されたp型電極801と、基板302側に形成されたn側電極301の間に電流を注入することによって、当該DFBレーザ部701からレーザ光が単一縦モードで発振する。そして、上記第1または第2の実施形態と同様に、当該レーザ光(入射光)は、光導波路202に入射し、Y分岐203で2の変調導波路204に1対1の割合で分岐し導波する。2の変調導波路204を導波する光は、Y分岐203で合波され導波する。このとき、変調導波路204上に形成されたp側電極312と基板302側に形成されたn型電極301の間に電圧を印加することによって、変調導波路204の活性層306の屈折率や吸収率が変化し、入射光が変調される。
【0071】
このように、DFBレーザ集積半導体MZ変調器700は、上記第1の実施形態または第2の実施形態における半導体MZ変調器106、501を用いる場合と比較した場合、DFBレーザ集積半導体MZ変調器700に外部からの光(例えば、入射光206)を入力することなく、変調特性が得られるため、光通信用光源として容易に使用できる。なお、本実施の形態においては、半導体MZ変調器501にDFBレーザ部701を集積する構成について説明したが、波長可変光源や、半導体増幅器、または、その他の光機能素子を集積してもよい。
【0072】
次に、本実施の形態におけるDFBレーザ集積半導体MZ変調器700の製造方法について説明する。
【0073】
第1の実施形態と同様に、変調導波路204の結晶成長として、有機金属気相法を用いた公知の結晶成長法により、n型InP基板302上にn型InPクラッド層304、InGaAsP下側光ガイド層305、InGaAsP井戸層と障壁層からなるアンドープ歪多重量子井戸層から形成される活性層306、InPキャップ層を成長する。次に、変調導波路204となる領域にSiN膜マスクを形成し、ドライエッチング、及びウェットエッチングにて、変調導波路204となる領域以外の変調導波路204に相当する多層構造を除去する。
【0074】
次に、第二回目の結晶成長として、変調導波路204領域以外に、有機金属気相法を用いて、パッシブ光導波路202(光導波路)、Y分岐203の多層成長である、InGaAsP下側光ガイド層305、InGaAsP井戸層と障壁層からなる量子井戸活性層306、InGaAsP上側光ガイド層307、InPスペーサ層、及び、回折格子層802を順次形成する。次に、パッシブ光導波路202、Y分岐203を多層成長するために、DFBレーザ部701、変調導波路204部に、SiNマスクを形成し、ドライエッチング、及びウェットエッチングにて、パッシブ光導波路202、及びY分岐203にあるDFBレーザ多層構造を除去する。
【0075】
次に、第三回目の結晶成長として、有機金属気相法を用いて、パッシブ光導波路202、Y分岐203導波路部の多層成長であるInGaAsP下側光ガイド層305、InGaAsP井戸層と障壁層からなる量子井戸活性層306、InGaAsP上側光ガイド層307、InPキャップ層を順次形成する。このとき、DFBレーザ部701、及び変調導波路204は、パッシブ光導波路202、Y分岐203と光学的にも接続されている。
【0076】
次に、DFBレーザ部701となる領域の回折格子層802に、フォトリソグラフを用いた干渉露光法により、回折格子層802に回折格子を形成した後、ウェハ全域に渡ってp型InPクラッド層308、p型InGaAsP層とp型InGaAs層から形成されるp型コンタクト層309、及び、p型InPキャップ層を結晶成長する。なお、上記p型InPキャップ層は途中工程で除去されるものであり、最終構造には残らない。また、ここで、p型のドーパントには、例えば、Znを用いる。
【0077】
その後、DFBレーザ部701は、例えば、約2μmの高さのローメサ、また、光導波路部201においては、例えば、約4μmの高さのハイメサ光導波路を2段階のドライエッチングとウェットエッチングによって形成する。また、このとき、メサプロテクタ205を同時に形成する。
【0078】
次に、プラズマCVDによってパッシベーション膜311を形成し、パッシベーション膜311上に樹脂321を塗布する。そして、エッチバック、スルーホール工程にて、変調導波路204部に電極穴を開ける。次に、p側電極312、引き出し線313、電極パッド314、p型電極801を、EB蒸着法、及び、フォトリソグラフィー技術により形成する。そして、裏面研磨工程にて、n型InP基板302を約150μm程度まで研磨し、n側電極301を形成し、電極アロイ処理を施し、ウェハ工程が完了する。最後に、ウェハからDFBレーザ集積半導体MZ変調器700ごとにチップ化し、端面コーティングすることにより、DFBレーザ集積半導体MZ変調器700を取得する。
【0079】
本実施の形態によれば、メサプロテクタ205によって、ハイメサ光導波路(光導波路部201)が機械的接触から保護される。よって、光導波路部201のメサ欠けが減少し、半導体MZ変調器106、当該半導体MZ変調器501を備えた変調器モジュール等を、高歩留りで安定的に生産できる。また、電極パッド314下を半導体ではなく、低誘電率の樹脂321で形成することにより、低容量化が可能となり、10Gbit/sの高速動作が可能となる。
【0080】
なお、本発明は、上記第1乃至第3の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。例えば、上記においては、第2の実施形態における半導体MZ変調器501をDFBレーザ部701と集積する場合について説明したが、第1の実施形態における半導体MZ変調器106をDFBレーザ部701と集積してもよい。また、上記においては、半導体MZ変調器やDFBレーザを用いる場合を例として説明したが、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる限り、異なる形式の変調器やレーザを用いてもよい。また、上記に示した各層の材料は、一例であって、これに限定されない。例えば、基板302は、InPの他、GaAs、GaN、ZnSe等他の材料を用いてもよい。また、上記においては、光導波路部201は、光を発して光を導波するアクティブ光導波路部であってもよい。