(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767868
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20150806BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
A61B1/06 B
G02B23/26 B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-133080(P2011-133080)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-271(P2013-271A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 晋平
【審査官】
増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−213742(JP,A)
【文献】
特開2006−006803(JP,A)
【文献】
特開昭58−087526(JP,A)
【文献】
特開平08−024219(JP,A)
【文献】
特開平01−234811(JP,A)
【文献】
特開2007−301211(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0263406(US,A1)
【文献】
特開2005−296324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡スコープに照明光を供給する光源装置であって、
内視鏡スコープに供給する光の光量の最大値である光量閾値を、接続された内視鏡スコープの種類に応じて設定する設定手段と、
内視鏡スコープのライトガイドに光を供給する主光源と、
前記主光源とライトガイドとの間に設けられ、前記主光源が供給する光の光量を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した測定光量と前記光量閾値に応じて、前記主光源が供給する光の光量を調整する調整手段と、
前記主光源とライトガイドとの間の光軸上に進退自在となるように設けられる支持腕とを備え、
前記支持腕は、前記光軸と平行に設けられた、ギアードモータの回転軸に対して直交方向に延びるように取り付けられ、
前記測定手段は、前記支持腕に取り付けられ、前記支持腕が前記ギアードモータの回転に伴って前記回転軸回りに前記支持腕が回転することで前記光軸上に挿入されたとき、前記主光源に対向して前記主光源の光量を測定する光源装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記測定光量が前記光量閾値を超える場合、前記主光源が供給する光の光量を前記光量閾値まで下げる請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記測定光量が前記光量閾値を超えない場合、前記主光源が供給する光の光量を調整しない請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記主光源に流れる電流値を制御することにより、前記主光源の光量を調整する請求項1から3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記主光源が点灯してから前記光軸上に挿入されて前記主光源の光量を測定する請求項1から4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記内視鏡スコープが備えるメモリに前記光量閾値が記憶され、前記設定手段は、前記メモリから前記光量閾値を読み出す請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光源装置は、前記支持腕に取り付けられて、前記光軸上に前記支持腕が挿入されたとき前記ライトガイドに対向して照明光を供給する補助光源をさらに備える請求項1から5に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量値を調節可能な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源装置は、例えば内視鏡装置の光源として用いられる。内視鏡装置は、人体の体内に挿入されて体内を撮像する内視鏡スコープと、撮像して得られた画像を処理する内視鏡プロセッサとから成る。内視鏡スコープは、体内を照明する照明光を運ぶライトガイドファイバを有する。光源装置はライトガイドファイバに照明光を供給する。
【0003】
照明光は、ライトガイドファイバを通過するとき、あるいは観察対象物に照射されたときに熱を生じる。ライトガイドファイバを通過するときに生じる熱は、ライトガイドファイバ及びその周辺に劣化等の悪影響を与える原因となりうる。また、観察対象物に照射されたときに生じる熱は、火傷の原因となりうる。これらを防止するため、光源とライトガイドファイバとの間に減光板を設け、光量を所定値以下に調節する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−289581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内視鏡スコープごとに、ライトガイドファイバ、付随する光学部品、及び周辺の部材が異なる。ライトガイドファイバは、光を透過するときの発熱量、及び光の透過率が種類により異なる。光の透過率が異なると観察対象物に照射される光量が異なる。そして、ライトガイドファイバ及びその周辺部材は、耐熱温度が異なる。そこで、被験者の安全性を確保するため、光量が最も制限される内視鏡スコープに合わせて光量の最大値を予め決定しておかなければならない。このようにして光量を一律に決定すると、他の内視鏡スコープに対しては必要以上に光量を制限してしまう恐れがある。これにより、光量が不足して撮像した画像が暗くなり、あるいは電子シャッター使用時に静止画の画質が低下する恐れが生じる。
【0006】
本発明はこれらの問題を鑑みてなされたものであり、被写体の安全を確保しながら、必要以上に光量を制限することなく、光源を最大限に活用する光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明による光源装置は、内視鏡スコープに照明光を供給する光源装置であって、内視鏡スコープに供給する光の光量の最大値である光量閾値を、接続された内視鏡スコープの種類に応じて設定する設定手段と、内視鏡スコープのライトガイドに光を供給する主光源と、主光源とライドガイドとの間に設けられ、主光源が供給する光の光量を測定する測定手段と、測定手段が測定した測定光量と光量閾値に応じて、主光源が供給する光の光量を調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【0008】
調整手段は、測定光量が光量閾値を超える場合、主光源が供給する光の光量を光量閾値まで下げることが好ましい。
【0009】
調整手段は、測定光量が光量閾値を超えない場合、主光源が供給する光の光量を調整しないことが好ましい。
【0010】
光源装置は、主光源とライドガイドとの間の光軸上に進退自在となるように設けられる支持腕をさらに備え、測定手段は、支持腕に取り付けられ、支持腕が光軸上に挿入されたとき主光源に対向して主光源の光量を測定することが好ましい。
【0011】
調整手段は、主電源に流れる電流値を制御することにより、主光源の光量を調整することが好ましい。
【0012】
測定手段は、主光源が点灯してから光軸上に挿入されて主光源の光量を測定することが好ましい。
【0013】
内視鏡スコープが備えるメモリに光源閾値が記憶され、設定手段は、メモリから光源閾値を読み出すことが好ましい。内視鏡スコープごとに決定された光量閾値を用いて主光源の光量を制御できる。
【0014】
光源装置は、支持腕に取り付けられて、光軸上に支持腕が挿入されたときライトガイドに対向して照明光を供給する補助光源をさらに備えてもよい。観察中に主光源が使用できなくなったときに補助光源を使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体の安全を確保しながら、必要以上に光量を制限することなく、光源を最大限に活用する光源装置を得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】光源装置、内視鏡プロセッサ、及び内視鏡スコープを概略的に示したブロック図である。
【
図4】光量制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における光源装置100について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を用いて光源装置100の構成について説明する。
【0018】
図1は、光源装置100と、光源装置100に接続された内視鏡スコープ200とを示す。内視鏡スコープ200から画像信号を受信して画像処理を行う内視鏡プロセッサは、図において省略される。
【0019】
内視鏡スコープ200は、スコープメモリ201と、ライトガイドファイバ202とを主に備える。撮像素子等の部材は省略される。ライトガイドファイバ202は、光源装置100から照明光を受光して、内視鏡スコープ200の遠位端から観察対象物に向けて照明光を照射する。スコープメモリ201は、内視鏡スコープ固有のデータを記憶する。内視鏡スコープ200固有のデータは、内視鏡スコープ200の最大光量値であって、光量閾値と呼ばれる。内視鏡スコープ200の遠位端からライトガイドファイバ202が照明光を照射するとき、照明光が遠位端で発熱して、遠位端の温度が上昇する。光量閾値は、内視鏡スコープ200の遠位端の発熱量によって決定される。
【0020】
光源装置100は、システムコントロール回路111と、メモリ112と、スコープ検知スイッチ121と、モータ制御回路131と、光センサユニット140と、絞り制御回路155と、絞りと、ランプ電源167と、主光源168と、接続ファイバ169とを主に備える。
【0021】
システムコントロール回路111は、光源装置100が備える各部材の動作を制御する。メモリ112は、システムコントロール回路111と接続されて、制御に必要な情報を記憶する。内視鏡スコープ200が光源装置100に取り付けられたとき、システムコントロール回路111がスコープメモリ201と電気的に接続される。
【0022】
スコープ検知スイッチ121は、光源装置100に内視鏡スコープ200が接続されたことを検知して、システムコントロール回路111に検知信号を送信する。
【0023】
主光源168は、例えばキセノンランプが用いられ、接続ファイバ169を介してライトガイドファイバ202に照明光を供給する。ランプ電源167は、システムコントロール回路111からの指示に従って、主光源168に電力を供給する。主光源168と接続ファイバ169との間の光軸上に、絞りが設けられる。絞りは、絞り制御回路155によって駆動され、照明光の光量を調節する。絞り制御回路155は、システムコントロール回路111の指示に従って、絞りの開度を制御する。
【0024】
光センサユニット140は、ギヤードモータ141と光センサ142と支持腕143とを備え、主光源168の光軸上に光センサ142を進退させる。モータ制御回路131は、システムコントロール回路111からの指示に従って、ギヤードモータ141を回転制御する。
【0025】
図2を用いて光センサユニット140について詳細に説明する。ギヤードモータ141の回転軸は、光軸と平行に設けられる。この回転軸に対して直交方向に延びるように、支持腕143がギヤードモータ141に取り付けられる。支持腕143の先端部143aには、光センサ142が取り付けられる。ギヤードモータ141が回転すると、回転軸回りに支持腕143が回転する。そして、支持腕143の先端に取り付けられた光センサ142が、主光源168の光軸上に移動する。光センサ142は、主光源168に対向して、光量を測定する。
【0026】
支持腕143の先端部143aには、LED144もまた取り付けられる。LED144は、光センサ142の背面に取り付けられ、主光源168の補助光源として使用される。光センサ142が光軸上に移動したとき、LED144もまた光軸上に移動して接続ファイバ169に対向する。この状態においてLED144が発光すると、接続ファイバ169を介してライトガイドファイバ202に光が導かれ、観察対象物に照射される。
【0027】
図3を用いて主光源168の特性について説明する。
図3は、主光源168の光量変化率と主光源168に流れる電流との関係を示す。主光源168の光量変化率は、特定の電流値における光量と最大光量との比である。3種類の主光源168を一例として挙げる。サンプル1の最大光量を1とすると、サンプル2の最大光量は0.6、サンプル3の最大光量は0.3である。各主光源168は、20Aのときに最大光量で発光する。各主光源168に流れる電流を10Aから20Aまで変化させると、3種類の主光源168は、一般に
図3に示すような特性を有する。各主光源168の光量変化率は、電流変化に対して線形に変化する。そのため、主光源168に流す電流を線形に変化させれば、主光源168の光量を容易かつ正確に制御することができる。
【0028】
次に、
図4を用いて光量制御処理について説明する。光量制御処理は、光源装置100が実行する処理であって、光源装置100の電源が投入されたときに実行される。
【0029】
始めのステップS41では、主光源168をオンにするスイッチが入れられたか否かを判断する。スイッチが入れられた場合、処理は次のステップS42に進み、スイッチが入れられない場合、処理はステップS41を繰り返す。
【0030】
ステップS42では、光センサユニット140が主光源168の光量を測定する。より詳しく説明すると、システムコントロール回路111がモータ制御回路131に信号を送信し、ギヤードモータ141を回転させる。ギヤードモータ141が回転すると、光センサ142が光軸に移動して主光源168と対向する。そして、光センサ142が光量を測定する。
【0031】
次のステップS43では、システムコントロール回路111がスコープ検知スイッチ121を介して、内視鏡スコープ200が光源装置100に取り付けられたか否かを検知する。内視鏡スコープ200が取り付けられている場合、処理はステップS44に進み、取り付けられていない場合、内視鏡スコープ200が光源装置100に取り付けられるまで処理はステップS43を繰り返す。
【0032】
ステップS44では、システムコントロール回路111がスコープメモリ201から光量閾値を読み出す。そして、次のステップS45では、主光源168の光量が光量閾値よりも大きいか否かについて判断する。主光源168の光量が光量閾値よりも大きい場合、処理はステップS46に進み、大きくない場合、処理はステップS47に進む。
【0033】
ステップS46では、システムコントロール回路111がランプ電源167を介して、主光源168の光量が光量閾値以下になるまで主光源168に流す電流を下げる。その後、処理はステップS48に進む。
【0034】
ステップS47では、システムコントロール回路111がランプ電源167を介して、主光源168に流す電流を現在の値のまま維持する。その後、処理はステップS48に進む。
【0035】
ステップS48では、ユーザが内視鏡スコープ200を用いて観察対象物を観察する。
【0036】
そして、次のステップS49では、内視鏡スコープ200が交換されたか否かを判断する。内視鏡スコープ200が交換された場合、処理はステップS43に戻り、再度ステップS43からS48を実行する。内視鏡スコープ200が交換されない場合、処理は終了する。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、内視鏡スコープ200に応じて最適な光量を有する照明光を提供できるとともに、観察対象物の安全を確保しながら、必要以上に主光源168の光量を制限することなく、主光源168を最大限に活用する光源装置100を得ることができる。
【0038】
なお、主光源168はキセノンランプに限定されない。
【0039】
主光源168の光量変化率は、電流変化に対して線形に変化しなくてもよい。主光源168の特性に応じて電流を変化させることにより、光量を制御できる。
【符号の説明】
【0040】
100 光源装置
111 システムコントロール回路
112 メモリ
121 スコープ検知スイッチ
131 モータ制御回路
140 光センサユニット
141 ギヤードモータ
142 光センサ
143 支持腕
143a 先端部
144 LED
155 絞り制御回路
167 ランプ電源
168 主光源
169 接続ファイバ
200 内視鏡スコープ
201 スコープメモリ
202 ライトガイドファイバ