特許第5767885号(P5767885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767885
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】電気接続箱の防水パッキン構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/08 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   H02G3/08 080
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-165206(P2011-165206)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-31278(P2013-31278A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】李 承石
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 正裕
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−251616(JP,A)
【文献】 特開2013−31280(JP,A)
【文献】 特開2008−57628(JP,A)
【文献】 特開2011−064051(JP,A)
【文献】 特開2004−009773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続箱本体とカバーとに傾斜状の段差部が形成され、何れか一方の段差部にパッキン収容溝が位置し、該パッキン収容溝内のパッキンを押圧する壁端部が何れか他方の段差部に位置し、該段差部の始端ないし終端において、対向する該パッキン収容溝と該壁端部との何れか一方の凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と、何れか他方の凸状の湾曲部の最も突出した部分との間隔が、両湾曲部のその他の部分の間隔よりも狭く設定されたことを特徴とする電気接続箱の防水パッキン構造。
【請求項2】
前記凹状の湾曲部の半径が前記凸状の湾曲部の半径よりも大きく設定され、且つ該凹状の湾曲部の屈曲中心が該凸状の湾曲部の屈曲中心よりも該パッキンを圧縮する方向にオフセットされたことを特徴とする請求項1記載の電気接続箱の防水パッキン構造。
【請求項3】
前記接続箱本体の前記傾斜状の段差部の低い側の前記壁端部に前記凹状の湾曲部が形成され、該接続箱本体の上側に装着される前記カバーの前記傾斜状の段差部の前記パッキン収容溝に前記凸状の湾曲部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気接続箱の防水パッキン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される電気接続箱の両カバーの段差部の間をパッキンで防水する電気接続箱の防水パッキン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載される電気接続箱の接続箱本体とカバーとの間から電気接続箱内への水の浸入を防ぐために、種々の電気接続箱の防水パッキン構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電装品装着ブロック(接続箱本体)の上側にアッパカバー、下側にロアカバー(カバー)がそれぞれ装着され、ロアカバーはグロメット装着用の切欠部を有し、電装品装着ブロックとロアカバーとの間でグロメットに密着するように防水用のパッキンが装着されることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、筐体本体(接続箱本体)と上側の筐体カバー(カバー)との間において、筐体本体の上部周壁と筐体カバーの凹部との間にパッキンが圧縮して装着されることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、ケース本体(接続箱本体)とケース蓋(カバー)との間にゴム製のOリングが装着されることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、パッキンは使用しないものの、アッパケース(カバー)とアンダケース(接続箱本体)の周上の一部に傾斜状の段差部を形成し、両ケースの水平から傾斜状に変化した合わせ面を相互に密着させて防水することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−251724号公報
【特許文献2】特開平11−346064号公報
【特許文献3】特開2005−129807号公報
【特許文献4】特開2008−61415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の電気接続箱の防水パッキン構造にあっては、例えば特許文献4におけるような傾斜状の段差部を接続箱本体とカバーとに形成した場合に、傾斜状の段差部に沿って弾性の特に発泡性のパッキンを装着した際に、パッキンが傾斜状の段差部の始端側ないし終端側の湾曲アールに沿って長手方向に引っ張られて、パッキンの厚みが薄くなり、段差部への密着性すなわち防水性が低下し兼ねないという懸念があった。
【0009】
本発明は、上記した点に鑑み、接続箱本体とカバーとに形成した傾斜状の段差部に沿って弾性のパッキンを装着した際に、段差部の始端側ないし終端側におけるパッキンの密着性すなわち防水性の低下を防ぐことのできる電気接続箱の防水パッキン構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電気接続箱の防水パッキン構造は、接続箱本体とカバーとに傾斜状の段差部が形成され、何れか一方の段差部にパッキン収容溝が位置し、該パッキン収容溝内のパッキンを押圧する壁端部が何れか他方の段差部に位置し、該段差部の始端ないし終端において、対向する該パッキン収容溝と該壁端部との何れか一方の凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と、何れか他方の凸状の湾曲部の最も突出した部分との間隔が、両湾曲部のその他の部分の間隔よりも狭く設定されたことを特徴とする。
【0011】
上記構成により、一例として、接続箱本体の上部側の傾斜状の段差部の下端側において端壁部に凹状の湾曲部が形成され、凹状の湾曲部に対向して上側のカバーの傾斜状の段差部の下端側においてパッキン収容溝に凸状の湾曲部が形成され(パッキン収容溝の底面が凸状に湾曲し)、カバーを接続箱本体の上部に装着した状態で、接続箱本体の端壁部の凹状の湾曲部がカバーのパッキン収容溝内に進入してパッキンを圧縮するが、パッキンが凸状の湾曲部に沿って引っ張られて薄くなった状態でパッキン収容溝内に配置されていても、パッキンの薄くなった寸法分(隙間をなす部分)を、凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と凸状の湾曲部の最も突出した部分との狭い間隔で埋めて、パッキンと凹状の湾曲部との接触(密着)を隙間なく弾性的に行わせる。これにより、防水シール性が良好に確保される。
【0012】
他の例として、接続箱本体の下部にカバーが装着される場合に、カバーの上部側の傾斜状の段差部の下端側においてカバーの端壁部に凹状の湾曲部が形成され、凹状の湾曲部に対向して接続箱本体の下部側の傾斜状の段差部の下端側において接続箱本体のパッキン収容溝に凸状の湾曲部が形成され(パッキン収容溝の底面が凸状に湾曲し)、カバーを接続箱本体の下部に装着した状態で、カバーの端壁部の凹状の湾曲部が接続箱本体のパッキン収容溝内に進入してパッキンを圧縮するが、パッキンが凸状の湾曲部に沿って引っ張られて薄くなった状態でパッキン収容溝内に配置されていても、パッキンの薄くなった寸法分(隙間をなす部分)を、凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と凸状の湾曲部の最も突出した部分との狭い間隔で埋めて、パッキンと凹状の湾曲部との接触(密着)を隙間なく弾性的に行わせる。これにより、防水シール性が良好に確保される。
【0013】
請求項2に係る電気接続箱の防水パッキン構造は、請求項1記載の電気接続箱の防水パッキン構造において、前記凹状の湾曲部の半径が前記凸状の湾曲部の半径よりも大きく設定され、且つ該凹状の湾曲部の屈曲中心が該凸状の湾曲部の屈曲中心よりも該パッキンを圧縮する方向にオフセットされたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、一例として、接続箱本体の上部側の傾斜状の段差部の下端側において端壁部に凹状の湾曲部が形成され、凹状の湾曲部に対向して上側のカバーの傾斜状の段差部の下端側においてパッキン収容溝に凸状の湾曲部が形成され(パッキン収容溝の底面が凸状に湾曲し)、カバーを接続箱本体の上部に装着した状態で、接続箱本体の端壁部の凹状の湾曲部がカバーのパッキン収容溝内に進入してパッキンを圧縮するが、パッキンが凸状の湾曲部に沿って引っ張られて薄くなった状態でパッキン収容溝内に配置されていても、パッキンの薄くなった寸法分(隙間をなす部分)を、大径で且つパッキン圧縮方向にオフセットされた凹状の湾曲部が補充して、パッキンと凹状の湾曲部との接触(密着)を隙間なく弾性的に行わせる。これにより、防水シール性が良好に確保される。
【0015】
請求項3に係る電気接続箱の防水パッキン構造は、請求項1又は2記載の電気接続箱の防水パッキン構造において、前記接続箱本体の前記傾斜状の段差部の低い側の前記壁端部に前記凹状の湾曲部が形成され、該接続箱本体の上側に装着される前記カバーの前記傾斜状の段差部の前記パッキン収容溝に前記凸状の湾曲部が形成されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、一例として、接続箱本体の傾斜状の段差部の下端側において端壁部に凹状の湾曲部が形成され、凹状の湾曲部に対向してカバーの傾斜状の段差部の下端側においてパッキン収容溝に凸状の湾曲部が形成され(パッキン収容溝の底面が凸状に湾曲し)、カバーを接続箱本体の上部に装着した状態で、端壁部の凹状の湾曲部がパッキン収容溝内に進入してパッキンを圧縮するが、パッキンが凸状の湾曲部に沿って引っ張られて薄くなった状態でパッキン収容溝内に配置されていても、パッキンの薄くなった寸法分(隙間をなす部分)を、凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と凸状の湾曲部の最も突出した部分との狭い間隔で埋めて、あるいは、大径で且つパッキン圧縮方向にオフセットされた凹状の湾曲部が補充して、パッキンと凹状の湾曲部との接触(密着)を隙間なく弾性的に行わせる。これにより、防水シール性が良好に確保される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、接続箱本体とカバーとに形成した傾斜状の段差部に沿って弾性のパッキンを装着する際に、段差部の始端側ないし終端側の凸状の湾曲部に沿ってパッキンが引っ張られて伸びた状態であっても、凹状の湾曲部の最も凹んだ部分と凸状の湾曲部の最も突出した部分との狭い間隔でパッキンの厚みの減少を補填して、パッキンに隙間なく密着することで、パッキンの密着性すなわち防水性の低下を防ぐことができるから、たとえ電気接続箱に勢いよく水がかけられても、電気接続箱内への水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、接続箱本体とカバーとに形成した傾斜状の段差部に沿って弾性のパッキンを装着する際に、段差部の始端側ないし終端側の凸状の湾曲部に沿ってパッキンが引っ張られて伸びた状態であっても、凸状の湾曲部に対向する大径で且つパッキン圧縮方向にオフセットされた凹状の湾曲部がパッキンの厚みの減少を補填して、パッキンに隙間なく密着することで、パッキンの密着性すなわち防水性の低下を防ぐことができるから、たとえ電気接続箱に勢いよく水がかけられても、電気接続箱内への水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、カバーのパッキン収容溝に装着したパッキンをカバー内で保護した状態で、カバーを接続箱本体に上方から被せ着けるので、パッキンへの直接的な水の加圧を抑止して、防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る電気接続箱の防水パッキン構造の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】電気接続箱のロアカバーの要部を示す斜視図である。
図3】同じくロアカバーの要部を示す正面図である。
図4】ロアカバーにパッキン付きのアッパカバーを装着した状態を示す要部縦断面図である。
図5】両カバー間で圧縮されたパッキンの状態を示す、(a)は従来の構成、(b)は本実施形態の構成(図4のA部)をそれぞれ示す要部縦断面図である。
図6】アッパカバーの内側を示す斜視図である。
図7】同じくアッパカバーの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図7は、本発明に係る電気接続箱の防水パッキン構造の一実施形態を示すものである。
【0022】
図1の如く、この電気接続箱1は、合成樹脂製の深めのロアカバー(接続箱本体)2と、ロアカバー2内にトレイ4に載せた状態で装着固定される不図示のブロック接続体と、ロアカバー2の周壁5の上部に嵌合して、ロアカバー2の上部開口6を塞ぐ合成樹脂製の浅めのアッパカバー(カバー)3と、ロアカバー2とアッパカバー3との間に装着されるゴム製の大小の各防水グロメット7,8と、アッパカバー3の周壁9の内側のパッキン収容溝10(図2)に装着され、各防水グロメット7,8の上面7a,8aとロアカバー2の周壁5の上端部11とに押接密着する不図示の弾性のパッキンとを備えるものである。
【0023】
ロアカバー2は、水平な底壁12と、前後左右の四方の垂直な側壁5a〜5dで成る周壁5とを備え、前側の側壁5aに大小の各グロメット装着用の切欠開口13,14と、前後の側壁に車体への取付用のブラケット15とを有している。
【0024】
不図示のブロック接続体は、絶縁樹脂製のブロック本体の上部にリレーやヒューズ等の電気部品を装着し、これら電気部品やブロック本体内のバスバーに端子接続された電線をグロメット7,8から外部に導出させるものである。
【0025】
図2図3にも示す如く、ロアカバー2の側壁(前側の壁部)5aの大きな切欠開口13に向けて側壁5aの左側の上端部(壁端部)16が右下がりに傾斜して段差部17をなし、この傾斜上端部16の低い側(大きな切欠開口13に近い側)に大きな屈曲半径の円弧状の凹状の湾曲部18が形成され、傾斜上端部16の高い側(小さな切欠開口14に近い側)に小さな屈曲半径の円弧状の凸状の湾曲部19が形成されている。
【0026】
傾斜状の段差部17は、大きなグロメット7(図1)をロアカバー2の底壁12寄りに配置することと、不図示の接続ブロックの上部にリレー等の大きな電気部品を露出させて電気部品の着脱性を高めることに寄与している。
【0027】
図3の如く、大きな半径の凹状の湾曲部18は上方に仮想の屈曲中心点O1を有し、小さな半径の凸状の湾曲部19は下方に仮想の屈曲中心点O3を有している。本実施形態の特徴点はロアカバー2の凹状の湾曲部18の半径R1とその屈曲中心O1の位置とを従来に対して変更したことにある。
【0028】
すなわち、図3(仮想線で示す部分参照),図4の如く、ロアカバー2の側壁5aの上端部16の上側にパッキン20が配置され、パッキン20の上側にアッパカバー3(図6)の側壁9aのパッキン収容溝21の底面21aが配置されるが、ロアカバー2の凹状の大きな湾曲部18の半径R1がアッパカバー3のパッキン収容溝21の底面21aの凸状の湾曲部22の半径R2よりも大きく設定され、且つ凹状の大きな湾曲部18の半径R1の屈曲中心点O1はパッキン収容溝21の底面21aの凸状の湾曲部22の半径R2の屈曲中心点O2よりも上側すなわちパッキン20を圧縮する方向に位置している。
【0029】
これにより、図5(a)の如く、従来においてアッパカバー3とロアカバー2’との間でパッキン20が凸状の湾曲部22に沿って引っ張られて伸び、特にアッパカバー3の湾曲部22の頂部においてパッキン20の厚みが薄くなり、パッキン20とロアカバー2’との間に隙間23を生じて隙間23から電気接続箱の内部に水が浸入するという懸念があったが、この懸念が解消される。
【0030】
すなわち、図4のA部拡大図である図5(b)に示す如く、ロアカバー2の凹状の湾曲部18(すなわち側壁5aの上端部16)の半径R1をアッパカバー3の凸状の湾曲部22(すなわちパッキン収容溝21の湾曲状の底面21a)の半径R2よりも大きく設定し、且つ凹状の湾曲部18の半径R1の屈曲中心点O1を凸状の湾曲部22の半径R2の屈曲中心点O2よりも上方すなわちパッキン20を圧縮する方向にオフセットしたことで(図3参照)、図5(a)のパッキン20とロアカバー2’との間の隙間23がなくなり、パッキン20がロアカバー2の凹状の大きな半径の湾曲部18で確実に押圧されて、凹状の湾曲部18と凸状の湾曲部22とにパッキン20の上下面が隙間なく確実に密着して、防水性が向上する。
【0031】
図3図4の左側におけるロアカバー2の傾斜上端部16の上側(左側)の凸状の湾曲部19と、アッパカバー3のパッキン収容溝21の凹状の湾曲部24(湾曲状の底面21a)にも同様の関係を適用可能である。すなわち、ロアカバー2の凸状の湾曲部19の半径R3を小さく設定し、アッパカバー3のパッキン収容溝21の凹状の湾曲部24の半径R4を大きく設定し、且つ凸状の湾曲部19の半径R3の屈曲中心点O3よりも凹状の湾曲部24の半径R4の屈曲中心点O4を下側すなわちパッキン20を圧縮する方向にオフセットすることで、上記同様の作用効果が奏される。但し、凸状の湾曲部22に較べて凹状の湾曲部24に沿ってパッキン20が引っ張られることは少ないので、この作用効果は副次的なものである。
【0032】
なお、ロアカバー2にパッキン収容溝(21)を設け、アッパカバー3の側壁9aの下端部をパッキン収容溝(21)に進入させる構成とした場合は、ロアカバー2のパッキン収容溝(21)の凸状の湾曲部(19)に沿ってパッキン20が引っ張られて伸びるので、ロアカバー2の凸状の湾曲部(19)よりもアッパカバー3の側壁9aの下端部の湾曲部(24)を大径とし、且つ凹状の湾曲部(24)の屈曲中心(O4)を凸状の湾曲部(19)の屈曲中心(O3)よりも下方すなわちパッキン20を圧縮する方向に配置することで、上記同様の作用効果が奏される。
【0033】
図3図4の左右の湾曲部18,19,22,24の関係をまとめると、パッキン20の屈曲内側となる湾曲部19,22の半径R2,R3を小さく、屈曲外側となる湾曲部18,24の半径R1,R4を大きく設定し、且つ屈曲内側となる湾曲部19,22の屈曲中心点O2,O3よりも屈曲外側となる湾曲部18,24の屈曲中心点O1,O4を屈曲内側にオフセットすることになる。
【0034】
例えば、屈曲内側となる湾曲部22の屈曲中心点O2と屈曲外側となる湾曲部18の屈曲中心点O1とを同心に配置した場合(半径R1,R2のみが相違する場合)は、両湾曲部18,22の間の隙間が均一であるので、パッキン20の引張に起因する部分的な厚みの減少を補填することはできない。
【0035】
また、屈曲内側となる湾曲部22の屈曲中心点O2よりも屈曲外側となる湾曲部18の屈曲中心点O1を屈曲内側(パッキン20を圧縮する方向)ではなく屈曲外側(パッキンの圧縮反対方向)にオフセットした場合は、両湾曲部18,22間の隙間を広げる方向になるので、上記効果は期待できない。
【0036】
一例として、図5(a)の従来におけるロアカバー2’の凹状の湾曲部18’の半径は18.1mm程度、パッキン20の厚みは4.5mm程度、パッキン20の潰し量は1.8mm程度である。図5(b)の実施形態におけるロアカバー2の凹状の湾曲部18の半径R1は20.8mm程度であり、半径を18.1mm→20.8mmに変更(大きく)したことで、パッキン20が引っ張られても、最小で1.8mm以上のパッキン潰し量が確保されている。
【0037】
図3に鎖線25で示す水平線は、ロアカバー2の前側の壁部5aに対向する後側の壁部5bの上端を示している。後側の壁部5bにおいても前側の壁部5aにおけると同様に段差部17における傾斜上端部16の始端と終端の湾曲部18,19の半径R1,R3とその屈曲中心点O1,O3の位置が規定されている。
【0038】
図2の如く、ロアカバー2の傾斜上端部16は側壁5aの板厚の半分程度の厚みに形成され、傾斜上端部16の内側面16aは側壁5aの内側面5a’と同一な垂直面に位置し、傾斜上端部16の外側面16bは段差状の溝壁26を経て側壁5aの外面(前面)に続いている。
【0039】
図6図7(要部拡大図)にアッパカバー3を示す如く、図2のロアカバー2の溝壁26にアッパカバー3の最も内側の垂直な壁部(パッキン収容溝の内側壁)21bが係合し、ロアカバー2の傾斜上端部16がアッパカバー3の最も内側の壁部21bの外側のパッキン収容溝21内に進入して、パッキン20を厚み方向に押圧して圧縮する。これは傾斜上端部16以外のロアカバー2の全周の上端部16についても同様である。
【0040】
パッキン収容溝21は、垂直で平行な内外の壁部21b,21cと、水平ないし部分的に(段差部27において)傾斜状の底壁21aとで縦断面凹字状に構成されている。各壁部21a〜21cの内面が断面矩形状のパッキン20の三方の各外面に密着する。パッキン20は細長矩形状に連続して形成されたものが、幅広矩形状に展開されつつパッキン収容溝21に押し込まれて、パッキン収容溝21の底壁面21aに接着剤で接着固定される。図6図7においてパッキン20の上端位置(アッパカバー3の閉止時に下端となる位置)を鎖線20で示している。図6図7においてパッキン20の上端面はパッキン収容溝21よりも少し低くあるいは略同一面に位置する。
【0041】
パッキン収容溝21内のパッキン20の上端面(アッパカバー3の閉止時に下端面となる)の幅方向中央部がロアカバー2の周壁5の上端部16で押圧されつつ上端部16に弾性的に密着する。大きなグロメット7(図1)の上部を収容する略凹字状の収容壁28の近傍に、傾斜状のパッキン収容溝21の一方の凸状の湾曲底面(湾曲部)22が位置し、小さなグロメット8(図1)の上半部を収容する半円状の溝29の近傍に、傾斜状のパッキン収容溝21の他方の凹状の湾曲底面(湾曲部)24が位置する。
【0042】
アッパカバー3の一側壁9aの水平な各パッキン収容溝21’の間に傾斜状のパッキン収容溝21が位置し、水平な各パッキン収容溝21’は幅方向に各グロメット収容部28,29の水平な壁面28a,29aに直交している。各グロメット収容部28,29はアッパカバー3のパッキン収容溝21よりも外側の周壁(側壁)30に一体に形成されている。
【0043】
図6の如く、アッパカバー3のグロメット装着側の一方の側壁9aと対向する他方の側壁9bにも同様の傾斜状のパッキン収容溝21が設けられ、パッキン収容溝21の一方に同様の凸状の湾曲底面(湾曲部)22が配置され、パッキン収容溝21の他方に同様の凹状の湾曲底面(湾曲部)24が配置されている。
【0044】
本例のアッパカバー3は金属製のばねアーム31でロアカバー2にしっかりと密着係止される。これら両カバー2,3を含む電気接続箱1(図1)は、車両(トラックを含む)のエンジンルームやフロア下といった外部に露出する部分に配置される。
【0045】
なお、上記実施形態においては、45°程度の角度で両カバー2,3に傾斜状の段差部17を設けたが、段差部17の角度は45°程度に限られるものではなく、45°よりも大きく最高で90°程度の角度の段差部においても、上記した両カバー2,3の凸状の湾曲部22と凹状の湾曲部18の半径R1,R2や屈曲中心O1,O2の位置の関係を適用可能である。
【0046】
例えば45°に較べて90°においてはパッキン20の引張力や伸びが強く、パッキン20の厚みもさらに減少するが、例えば凸状の湾曲部22に対する凹状の湾曲部18の半径R1をさらに増加させたり、凹状の湾曲部18の屈曲中心O1をさらにパッキン圧縮方向にオフセットすることで、パッキン締め代を確保することができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、アッパカバー3とロアカバー2との間をパッキン20で防水したが、例えばアッパカバー3と、不図示の中間のフレーム(接続箱本体)ないし接続ブロック(接続箱本体)と、ロアカバー(2)とを含む電気接続箱におけるアッパカバー3と中間のフレームないし接続ブロックとの間、あるいは中間のフレームないし接続ブロックとロアカバー(2)との間をパッキン20で防水するものにおいても、上記実施形態の防水パッキン構造を適用可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、アッパカバー3にパッキン収容溝21を設け、ロアカバー2の側壁5aの上端部16をパッキン収容溝21に進入させたが、上記中間のフレームないし接続ブロックの下端にパッキン収容溝(21)を設け、上記ロアカバー2の側壁5aの上端部16をパッキン収容溝(21)に進入させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る電気接続箱の防水パッキン構造は、例えばトラックの車外(フロア下)等に露出して搭載される電気接続箱の接続箱本体とカバーとの傾斜状の段差部における防水パッキン性能を高めて電気接続箱への跳ね上げ水や高圧洗浄水等の浸入を防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電気接続箱
2 ロアカバー(接続箱本体)
3 カバー(アッパカバー)
16 上端部(壁端部)
17,27 段差部
18 凹状の湾曲部
21 パッキン収容溝
20 パッキン
22 凸状の湾曲部
1,R2 半径
1,O2 屈曲中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7