特許第5767910号(P5767910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767910
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】原稿読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/19 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   H04N1/04 103E
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-188223(P2011-188223)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-51546(P2013-51546A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真規
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−283771(JP,A)
【文献】 特開平2−274064(JP,A)
【文献】 特開2007−19853(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0209358(US,A1)
【文献】 特開2010−79028(JP,A)
【文献】 特開2012−178787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を主走査方向に沿った複数のラインに分割して、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら前記原稿を読み取って、前記原稿の画像を構成する画素を示す画素データを含む画像データを出力する撮像部と、
前記原稿の読み取りを開始する前に、前記撮像部に白基準板の読み取りを所定時間実行させる制御部と、
前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに用いられる要素のうち、予め定められた要素で生じる事象を示す事象データであって、前記所定時間内に変化し、かつ、その変化によって、前記撮像部から出力される画像データが変化する事象データを測定する動作を、前記移動の開始から終了まで実行し、かつ、前記白基準板の読み取りにおいて前記事象データを測定する動作を実行する測定部と、
前記白基準板の読み取りによって、前記撮像部から出力された画像データと前記測定部が生成した前記事象データとを用いて、補正データを算出する補正データ算出部と、
前記補正データ算出部によって算出された前記補正データを記憶している記憶部と、
前記撮像部が前記複数のラインを順番に読み取っているときに前記測定部によって測定された各ラインについての前記事象データと、前記補正データとを利用して、各ラインでの補正値を別々に決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素データを補正する補正部と、を備える原稿読取装置。
【請求項2】
前記予め定められた要素は、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに前記原稿に光を照射する光源の直流電源を含み、
前記事象データは、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の変動の量を示すデータを含み、
前記補正データは、前記変動の量に対する階調の補正値を特定できるデータを含み、
前記測定部は、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の測定を、前記移動の開始から終了まで実行し、
前記補正部は、前記事象データと前記補正データとを利用して、階調について各ラインでの前記補正値を決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素の階調を補正する請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原稿読取装置と、
前記補正部によって補正された前記画素データを含む前記画像データで示される前記原稿の画像を用紙に形成する画像形成部と、を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿読取装置及びそれを備える画像形成装置に関し、特に、原稿読取装置で読み取られた原稿の画像を示す画像データの補正に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナーのような原稿読取装置は、原稿を読み取ってその原稿の画像を示す画像データを生成する際に、画像データを補正する機能を有する。このような補正として、ダイナミックレンジを確保するために、撮像素子から出力されたアナログの画像信号をAD変換範囲いっぱいに調整するためのゲイン補正や、照明の不均一やレンズの中心部と周辺部とで集光度が異なる等の原因により、画素の位置に依存して明るさが変動する現象に対するためのシェーディング補正等がある。
【0003】
画像データを補正する機能を有する原稿読取装置の一例として、白基準板の光学像をカラーイメージセンサーに結像させたときの各色の画像信号レベルを、設定値と比較する手段と、この手段での比較が一致するように光源の点灯電圧を制御する手段と、この点灯電圧の変化に応じてカラーイメージセンサーから出力された画像信号を補正する手段と、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
画像データを補正する機能を有する原稿読取装置の他の例として、原稿の走査を停止した直後におけるR用の光源、G用の光源、B用の光源のそれぞれの温度変動を検出する温度変動検出手段と、この手段によって検出される温度変動と、イメージセンサーの出力との関係を補正値として記憶する記憶手段と、この手段に記憶された補正値にしたがって画像データの出力を補正する補正手段と、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
画像データを補正する機能を有する原稿読取装置のさらに他の例として、原稿の読み取りに先立って、CCDの各画素の温度データを取得し、その原稿の読み取りによって得られた画像データを、その温度データを用いて黒レベル補正する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−149672号公報
【特許文献2】特開2001−333283号公報
【特許文献3】特開平6−350925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲイン補正やシェーディング補正では、原稿の読み取り前に、主走査方向に延びる白基準板に光源から光を照射し、白基準板で反射された光のデータを取得し、このデータを利用して、主走査1ライン毎に補正をする。このため、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、その移動の開始から終了までに、光源からの光量が変動する事象が発生した場合、ゲイン補正やシェーディング補正では対応することができない。すなわち、原稿の読み取り中に発生し、読み取られた原稿の画像に影響を与える事象(例えば、光源に供給される電圧や電流の変動、光源の温度の変動)について、ゲイン補正やシェーディング補正では対応することができない。
【0008】
本発明は、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、原稿の読み取り中に発生し、読み取られた原稿の画像に影響を与える事象に対する補正を、画像データに実行できる原稿読取装置及びそれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る原稿読取装置は、原稿を主走査方向に沿った複数のラインに分割して、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら前記原稿を読み取って、前記原稿の画像を構成する画素を示す画素データを含む画像データを出力する撮像部と、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに用いられる要素のうち、予め定められた要素で生じる事象を示す事象データを測定する動作を、前記移動の開始から終了まで実行する測定部と、前記事象に対応する補正データを予め記憶している記憶部と、前記撮像部が前記複数のラインを順番に読み取っているときに前記測定部によって測定された各ラインについての前記事象データと、前記補正データとを利用して、各ラインでの補正値を決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素データを補正する補正部と、を備える。
【0010】
本発明に係る原稿読取装置では、撮像部によって原稿を読み取るときに用いられる要素(例えば、電源、光源)のうち、予め定められた要素で生じる事象(例えば、電源の電圧や電流の変動、光源の温度の変動)を示す事象データを測定する動作を、原稿の副走査方向への相対的移動の開始から終了まで実行する。複数のラインが順番に読み取られているときに測定された各ラインについての事象データと、補正データとを利用して、各ラインでの補正値を決定する。そして、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素データを補正する。従って、本発明に係る原稿読取装置によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、原稿の読み取り中に発生し、画像に影響を与える事象に対する補正を画像データに実行することができる。
【0011】
上記構成において、前記予め定められた要素は、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに前記原稿に光を照射する光源の電源を含み、前記事象データは、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の変動の量を示すデータを含み、前記補正データは、前記変動の量に対する階調の補正値を特定できるデータを含み、前記測定部は、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の測定を、前記移動の開始から終了まで実行し、前記補正部は、前記事象データと前記補正データとを利用して、階調について各ラインでの前記補正値を決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素の階調を補正する。
【0012】
電源から光源に供給される電圧(又は電流)が、原稿の読み取り中に変動した場合、光源の照度が変動するので、読み取った原稿の画像に影響が生じる。電圧(又は電流)の変動は予測不可能な事象であるが、この構成によれば、原稿の読み取り中に生じる電圧(又は電流)の変動に対して画像データを補正することができる。
【0013】
上記構成において、前記予め定められた要素は、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに前記原稿に光を照射する光源を含み、前記事象データは、前記光源の温度の変動の量を示すデータを含み、前記補正データは、前記変動の量に対する階調の補正値を特定できるデータを含み、前記測定部は、前記光源の温度の測定を、前記移動の開始から終了まで実行し、前記補正部は、前記事象データと前記補正データとを利用して、階調について各ラインでの前記補正値を決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素の階調を補正する。
【0014】
光源の温度が変動すると、光源の照度が変動する。このため、原稿の読み取り中に光源の温度が変動すると、読み取った原稿の画像に影響が生じる。光源の温度の変動は予測不可能な事象であるが、この構成によれば、原稿の読み取り中に生じる光源の温度の変動に対して画像データを補正することができる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置は、上述した原稿読取装置と、前記補正部によって補正された前記画素データを含む前記画像データで示される前記原稿の画像を用紙に形成する画像形成部と、を備える。
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る原稿読取装置で得られた画像データを用いて画像を用紙に形成することができる。
本発明に係る原稿読取装置は、原稿を主走査方向に沿った複数のラインに分割して、前記原稿を副走査方向に相対的に移動させながら前記原稿を読み取って、前記原稿の画像を構成する画素を示す画素データを含む画像データを出力する撮像部と、前記原稿の読み取りを開始する前に、前記撮像部に白基準板の読み取りを所定時間実行させる制御部と、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに用いられる要素のうち、予め定められた要素で生じる事象を示す事象データであって、前記所定時間内に変化し、かつ、その変化によって、前記撮像部から出力される画像データが変化する事象データを測定する動作を、前記移動の開始から終了まで実行し、かつ、前記白基準板の読み取りにおいて前記事象データを測定する動作を実行する測定部と、前記白基準板の読み取りによって、前記撮像部から出力された画像データと前記測定部が生成した前記事象データとを用いて、補正データを算出する補正データ算出部と、前記補正データ算出部によって算出された前記補正データを記憶している記憶部と、前記撮像部が前記複数のラインを順番に読み取っているときに前記測定部によって測定された各ラインについての前記事象データと、前記補正データとを利用して、各ラインでの補正値を別々に決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素データを補正する補正部と、を備える。
上記構成において、前記予め定められた要素は、前記撮像部によって前記原稿を読み取るときに前記原稿に光を照射する光源の直流電源を含み、前記事象データは、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の変動の量を示すデータを含み、前記補正データは、前記変動の量に対する階調の補正値を特定できるデータを含み、前記測定部は、前記電源から前記光源に供給される電圧又は電流の測定を、前記移動の開始から終了まで実行し、前記補正部は、前記事象データと前記補正データとを利用して、階調について各ラインでの前記補正値を決定し、各ラインに対応する前記画素について、各ラインでの前記補正値を用いて前記画素の階調を補正する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、原稿の読み取り中に発生し、読み取られた原稿の画像に影響を与える事象に対する補正を、画像データに実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
図2図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置の主要部を示すブロック図である。
図4】デジタル変換された画像データと事象データとの関係の一例を示すタイムチャートである。
図5】第1実施形態に係る原稿読取装置の動作を説明するフローチャートである。
図6】補正部による補正の実行の一例を示すタイムチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る原稿読取装置の主要部を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係る原稿読取装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る原稿読取装置を適用できる画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0020】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200に送ることができる。
【0021】
原稿読取部200は光源等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、不図示の撮像素子及び原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながら撮像素子により原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通して撮像素子により読み取る。撮像素子は読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0022】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラ109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0023】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0025】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0026】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
【0027】
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0028】
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0029】
図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600が、バスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
【0030】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリー等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリーは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0031】
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
【0032】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェース回路である。
【0033】
図3は、本発明の第1実施形態に係る原稿読取装置2aの主要部を示すブロック図である。原稿読取装置2aは原稿読取部200(図1)として機能する。原稿読取装置2aは撮像部10、測定部20、アナログデジタル変換処理部30及び補正処理部40を備える。
【0034】
撮像部10は光源11と撮像素子12とを含む。撮像部10は光源11から白色光を原稿に照射し、原稿から反射された光を撮像素子12によって受光して、原稿の画像を示す画像データD1を出力する。撮像部10は原稿を主走査方向に沿った複数のラインに分割して、原稿を副走査方向に相対的に移動させながら原稿を読み取る。
【0035】
画像データD1は1番目のラインデータ、2番目のラインデータ、・・・、最後のラインデータと、を含む。ラインデータは撮像部10によって原稿を主走査1ライン読み取ったときに得られるデータである。ラインデータは主走査方向において、1番目の画素を示す画素データ、2番目の画素を示す画素データ、3番目の画素を示す画素データ、・・・、1ラインの最後の画素を示す画素データが集まって構成される。画素データとは例えば、階調のデータである。
【0036】
原稿台203(図1)に載置された原稿を読み取る場合は、原稿が固定され、これに対して、原稿給送部300(図1)から給送された原稿を読み取る場合は、原稿が副走査方向に移動される。このため、「原稿を副走査方向に相対的に移動」と記載している。
【0037】
撮像素子12は例えば、CCDセンサー又はCMOSセンサーによって構成されるリニアイメージセンサーである。撮像素子12から出力された画像データD1は、チャンネル1のデータとして、アナログデジタル変換処理部30のアナログデジタル変換回路31に送られる。
【0038】
光源11は例えば、白色蛍光ランプや白色LEDである。光源11の電源は例えば、24Vの直流電圧を生成する直流電源13である。直流電源13で生成される直流電圧は、様々な原因によって、電圧が変動する事象が不可避的に発生する。電圧が変動することにより、光源11の照度が変動する。直流電源13は撮像部10によって原稿を読み取るときに用いられる要素のうち、予め定められた要素の一例である。
【0039】
直流電源13の正極は光源11に接続されると共に、配線14によって、アナログデジタル変換処理部30のアナログデジタル変換部32に接続されている。配線14には測定部20が接続されている。測定部20は撮像部10によって原稿を読み取るときに用いられる要素のうち、予め定められた要素(直流電源13)で生じる事象(電圧の変動の量)を示す事象データD2を取得する動作を、原稿の副走査方向の相対的移動の開始から終了まで実行する。
【0040】
測定部20はコンデンサー21と分圧回路22とを備え、光源11に供給される電圧の変動成分を測定する。コンデンサー21は配線14に接続されており、配線14から検出される電圧の直流成分をカットする。コンデンサー21とアナログデジタル変換回路32との間において、配線14には抵抗15,16が接続されている。抵抗15は電源17と接続され、抵抗16は接地されている。抵抗15と抵抗16とにより、分圧回路22が構成される。
【0041】
直流電源13の電圧はコンデンサー21によって直流成分がカットされて、変動成分(交流成分)だけにされる。これにより、直流電源13の電圧の変動成分を示す事象データD2が生成される。事象データD2の電圧は分圧回路22によって、アナログデジタル変換回路32で処理できる電圧範囲(例えば、0〜3.3V)に下げられる。事象データD2はチャンネル2のデータとして、アナログデジタル変換回路32に送られる。
【0042】
アナログデジタル変換処理部30はアナログデジタル変換回路31,32及びパラレル−シリアル変換回路33を備える。撮像素子12から出力された画像データD1は、アナログ信号である。このアナログ信号はアナログデジタル変換回路31によってデジタル信号に変換される。また、配線14を流れる事象データD2もアナログ信号である。このアナログ信号はアナログデジタル変換回路32によってデジタル信号に変換される。
【0043】
図4は、デジタル変換された画像データD1と事象データD2との関係の一例を示すタイムチャートである。副走査同期信号SG1は副走査方向において画像が有効となる区間を示す信号である。副走査同期信号SG1がロウ状態での画像が有効であり、ハイ状態での画像が無効となる。
【0044】
原稿の画像を示す画像データD1は、主走査同期信号SG2と同期して、撮像素子12から出力された1番目のラインデータ、2番目のラインデータ、3番目のラインデータ、・・・、最後のラインデータの順番で、パラレル−シリアル変換回路33に送られる。
【0045】
画像有効区間信号SG3は1本の主走査線のうち画像が有効となる区間を示す信号である。画像有効区間信号SG3がロウ状態での画像が有効であり、ハイ状態での画像が無効となる。
【0046】
撮像部10によって1番目のラインが読み取られているときに、サンプリングされた事象データD2が示す電圧の変動値は例えば、−0.2Vである。これは、直流電源13の基準電圧を例えば、24.0Vとした場合、1番目のラインが読み取られているときの直流電源13の電圧が23.8Vであることを示している。撮像部10によって2,3番目のラインが読み取られているときに、サンプリングされた事象データD2が示す電圧の変動値は、例えば、+0.1Vである。これは、2,3番目のラインが読み取られているときの直流電源13の電圧が24.1Vであることを示している。撮像部10によって4番目のラインが読み取られているときに、サンプリングされた事象データD2が示す電圧の変動値は、例えば、0.0Vである。これは、4番目のラインが読み取られているときの直流電源13の電圧が24.0Vであることを示している。
【0047】
パラレル−シリアル変換回路33はアナログデジタル変換回路31でデジタル信号に変換された画像データD1と、アナログデジタル変換回路32でデジタル信号に変換された事象データD2とを、パラレルデータからシリアルデータに変換する。このシリアルデータでは、1番目のラインデータ、1番目のラインデータに対応する事象データD2(−0.2V)、2番目のラインデータ、2番目のラインデータに対応する事象データD2(+0.1V)、3番目のラインデータ、3番目のラインデータに対応する事象データD2(+0.1V)、4番目のラインデータ、4番目のラインデータに対応する事象データD2(0.0V)、・・・、最後のラインデータ、最後のラインデータに対応する事象データD2、の順番で伝送される。
【0048】
補正処理部40について説明する。補正処理部40はシリアル−パラレル変換回路41、分配回路42、補正データ算出部43、記憶部44及び補正部45を備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0049】
シリアル−パラレル変換回路41はパラレル−シリアル変換回路33から出力されたシリアルデータをパラレルデータに変換する。これにより、パラレルに戻された画像データD1と事象データD2とが分配回路42に送られる。
【0050】
分配回路42は画像データD1と事象データD2とを、補正データ算出部43又は補正部45のいずれに転送するかを切り換える。
【0051】
補正データ算出部43は事象データD2を用いて、事象に対応する補正データD3を算出する。補正データD3は直流電源13の電圧の変動量に対する階調の補正値を特定できるデータを含む。補正データD3は記憶部44に記憶される。記憶部44は遅延機能を持っており、補正データと補正すべき画像データのラインタイミングのズレを補正する。補正部45は撮像部10が複数のラインを順番に読み取っているときに測定部20によって測定された各ラインについての事象データD2と、補正データD3とを利用して、各ラインでの補正値を決定し、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素データを補正する。補正データ算出部43及び補正部45での処理の詳細は、後で説明する。
【0052】
第1実施形態に係る原稿読取装置2aの動作を説明する。図5は、この動作を説明するフローチャートである。操作者が、図1に示す原稿台203又は原稿給送部300に原稿をセットし、スタートキー405を操作すると、図2に示す制御部500は、原稿の読み取りを開始する前に、撮像部10に白基準板の読み取りを所定時間(例えば、1枚の原稿の読み取りの開始から終了までに相当する時間)実行させる(ステップS1)。白基準板はシェーディング補正に用いられるものである。
【0053】
白基準板の読み取りの実行によって撮像素子12から出力された画像データD1及びその実行中に生成された事象データD2は、それぞれ、アナログデジタル変換回路31,32によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、これらの信号は、パラレル−シリアル変換回路33でシリアルデータに変換されて、補正処理部40のシリアル−パラレル変換回路41に送られる。シリアル−パラレル変換回路41は、送られてきたシリアルデータをパラレルデータに変換する。パラレルに変換された画像データD1と事象データD2とは分配回路42に送られる。分配回路42は制御部500によって、予め補正データ算出部43に接続が切り替えられているので、画像データD1と事象データD2とは補正データ算出部43に送られる。
【0054】
補正データ算出部43は白基準板の読み取りで得られた画像データD1と事象データD2とを用いて、補正データD3を算出する(ステップS2)。補正データD3の算出を具体的に説明する。例えば、直流電源13の電圧の変動成分が0.0V(言い換えれば、直流電源13の電圧が基準電圧24.0V)のときに得られた画素の階調がMであり、直流電源13の電圧の変動成分が+0.1V(言い換えれば、直流電源13の電圧が24.1V)のときに得られた画素の階調がM+3であり、直流電源13の電圧の変動成分が+0.2V(言い換えれば、直流電源13の電圧が24.2V)のときに得られた画素の階調がM+6であり、直流電源13の電圧の変動成分が−0.1V(言い換えれば、直流電源13の電圧が23.9V)のときに得られた画素の階調がM−3であり、直流電源13の電圧の変動成分が−0.2V(言い換えれば、直流電源13の電圧が23.8V)のときに得られた画素の階調がM−6であったとする。
【0055】
補正データ算出部43は以上の変動成分と階調のデータを用いて、補正データD3を算出する。ここでは、補正データD3は、「式:補正値=−30X」となる(Xは変動成分)。例えば、変動成分が+0.1Vのとき、補正値は−3となる。なお、補正データD3として、上述した変動成分と階調との対応関係を示すルックアップテーブルを作成してもよい。
【0056】
補正データ算出部43は補正データD3を記憶部に記憶させる(ステップS3)。そして、制御部500は撮像部10に原稿の読み取りを開始させる(ステップS4)。
【0057】
上述した白基準板の読み取りの場合と同様に、原稿の読み取りの実行によって撮像素子12から出力された画像データD1及びその実行中に生成された事象データD2は、それぞれ、アナログデジタル変換回路31,32でアナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、これらの信号はパラレル−シリアル変換回路33でシリアルデータに変換されて、補正処理部40のシリアル−パラレル変換回路41に送られる。シリアル−パラレル変換回路41は送られてきたシリアルデータをパラレルデータに変換する。パラレルに変換された画像データD1と事象データD2とは分配回路42に送られる。分配回路42は制御部500によって、予め補正部45に接続が切り替えられているので、画像データD1と事象データD2とは補正部45に送られる。補正部45は記憶部44に記憶されている補正データD3を読み出す。補正部45によって、画像データD1が補正される(ステップS5)。
【0058】
図6は、補正部45による補正の実行の一例を示すタイムチャートである。撮像部10によって1番目のラインを読み取っているときの変動成分が、例えば、−0.2V、2番目のラインを読み取っているときの変動成分が、例えば、+0.1Vとする。
【0059】
補正部45は1番目のラインデータに含まれる各画素データdについて、「式:補正後の階調=補正前の階調+補正値」を用いて、各画素の階調を補正する。補正値は上述したように、「式:補正値=−30X」である(Xは変動成分)。
【0060】
1番目のラインデータの補正値は、+6である。これは、1番目のラインを読み取っているとき、光源11に供給される電圧が基準電圧24.0Vより、0.2V低いので、階調を6上げることを意味する。例えば、1024階調の場合、補正前の1番目の画素データd1の階調が500であれば、補正後の1番目の画素データd1の階調は506となり、補正前の2番目の画素データd2の階調が501であれば、補正後の2番目の画素データd2の階調は507となり、・・・、補正前の最後の画素データdnの階調が490であれば、補正後の最後の画素データdnの階調は496となる。
【0061】
2番目のラインデータの補正値は、−3である。これは、2番目のラインを読み取っているとき、光源11に供給される電圧が基準電圧24.0Vより、0.1V高いので、階調を3下げることを意味する。補正部45は、補正値−3を用いて、2番目のラインデータに含まれる各画素データの階調を補正する。
【0062】
補正部45では同様に、3番目のラインデータから最後のラインデータについて、各ラインデータを構成する画素データの階調を補正する。
【0063】
以上のように、補正部45は事象データD2と補正データD3とを利用して、階調について各ラインでの補正値を決定し、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素の階調を補正する。
【0064】
補正部45によって、上述した補正がされた画像データD1は、不図示の画像処理部で、所定の画像処理がされて、図1に示す画像形成部103に送られる。画像形成部103は、画像データD1が示す画像を用紙に形成する処理を実行する(ステップS6)。そして、画像が形成された用紙は、スタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0065】
第1実施形態の主な効果を説明する。撮像部10は原稿を主走査方向に沿った複数のラインに分割して、原稿を副走査方向に相対的に移動させながら原稿を読み取って、原稿の画像を示す画像データD1を出力する。直流電源13から光源11に供給される電圧が、原稿の読み取り中に変動した場合、光源11の照度が変動するので、読み取った原稿の画像に影響が生じる。電圧の変動は予測不可能な事象である。
【0066】
第1実施形態に係る原稿読取装置2aでは、光源11に供給される電圧の変動を示す事象データD2を測定する動作を、原稿の副走査方向への相対的移動の開始から終了まで実行する(言い換えれば、原稿の読み取り期間中実行する)。上記複数のラインが順番に読み取られているときに測定された各ラインについての事象データD2と、補正データD3とを利用して、各ラインでの補正値を決定する。そして、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素データdを補正する。従って、第1実施形態に係る原稿読取装置2aによれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、原稿の読み取り中に発生し、画像に影響を与える事象に対する補正を画像データD1に実行することができる。
【0067】
第1実施形態では直流電源13から光源11に供給される電圧の変動を事象としているが、直流電源13から光源11に供給される電流の変動を事象にすることもできる。この場合は、図3に示す測定部20の換わりに、光源11に供給される電流を測定する測定部を設ける。
【0068】
本発明の第2実施形態について、第1実施形態の相違を中心に説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る原稿読取装置2bの主要部を示すブロック図である。図3に示す第1実施形態に係る原稿読取装置2aを構成する要素と同じ要素には、同一符号を付すことにより、その説明を省略する。原稿読取装置2bは原稿読取部200として機能する。
【0069】
第2実施形態では光源11を連続点灯させると、光源11の温度が上昇して、照度が低下する点に着目している。光源11の温度の変動は、事象の一例である。
【0070】
原稿読取装置2bは図3に示す電圧の変動を測定する測定部20を備えておらず、替わりに、光源11の温度を測定する測定部50を備える。
【0071】
測定部50は直列接続されたサーミスタ51と抵抗52を備える。抵抗52は電源53に接続され、サーミスタ51は接地されている。サーミスタ51と抵抗52とを接続する配線に、測定部50の出力となる配線54が接続されている。配線54はアナログデジタル変換回路32に接続されている。これにより、測定部50で測定された光源11の温度データを示す事象データD2が、アナログデジタル変換回路32に入力する。
【0072】
第2実施形態の補正処理部40は図3に示す分配回路42、補正データ算出部43、記憶部44及び補正部45を備えておらず、替わりに、記憶部46及び補正部47を備える。記憶部46には、光源11の温度の変化に対する照度の変化の相関を示す補正データD3が、予め記憶されている。補正データD3は例えば、原稿読取装置2bの開発段階で取得しておく。
【0073】
光源11の温度が例えば、1度上昇すると、画素の階調が10低下する場合、補正データD3は、「式:補正値=+10(T−t1)」となる。t1は、撮像部10によって1番目のラインを読み取っているときの光源11の温度である。Tは、撮像部10によって2番目のラインから最後のラインまでのそれぞれのラインを読み取っているときの光源11の温度である。光源の温度が例えば、t1に対して0.1℃上昇すると、補正値は1となる。なお、光源11の温度変化と階調との対応関係を示すルックアップテーブルを、補正データD3にしてもよい。
【0074】
補正部47は撮像部10が複数のラインを順番に読み取っているときに測定部50によって測定された各ラインについての事象データD2と、補正データD3とを利用して、各ラインでの補正値を決定し、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素データを補正する。補正部47での処理の詳細は、後で説明する。
【0075】
第2実施形態に係る原稿読取装置2bの動作を説明する。図8は、この動作を説明するフローチャートである。原稿読取装置2bでは、原稿読取装置2bの開発段階で補正データD3を取得しておいて、記憶部46に予め補正データD3を記憶させている。従って、原稿読取装置2bの動作において、図5に示すステップS1〜S3に対応する処理は実行されない。
【0076】
操作者が、図1に示す原稿台203又は原稿給送部300に原稿をセットし、スタートキー405を操作すると、図2に示す制御部500は撮像部10に原稿の読み取りを開始させる(ステップS11)。原稿の読み取りの実行によって撮像素子12から出力された画像データD1及びその実行中に生成された事象データD2は、それぞれ、アナログデジタル変換回路31,32でアナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、これらの信号は、パラレル−シリアル変換回路33でシリアルデータに変換されて、補正処理部40のシリアル−パラレル変換回路41に送られる。シリアル−パラレル変換回路41は、送られてきたシリアルデータをパラレルデータに変換する。パラレルに変換された画像データD1と事象データD2は、補正部47に送られる。補正部47は、記憶部46に記憶されている補正データD3を読み出す。補正部47によって、画像データD1が補正される(ステップS12)。
【0077】
補正部47は、「式:補正後の階調=補正前の階調+補正値」及び上述した「式:補正値=+10(T−t1)」を用いて、画像データD1を補正する。1番目のラインを読み取っているときの光源11の温度t1が基準となるので、1番目のラインデータを構成する各画素データに対しては補正されない。2番目のラインを読み取っているときの光源11の温度Tが、例えば、t1+0.2℃とする。この場合、2番目のラインデータの補正値は、+2となる。例えば、1024階調の場合、2番目のラインデータを構成する各画素データについて、補正前の1番目の画素データの階調が500であれば、補正後の1番目の画素データの階調は502となり、補正前の2番目の画素データの階調が501であれば、補正後の2番目の画素データの階調は503となり、・・・、補正前の最後の画素データの階調が490であれば、補正後の最後の画素データの階調は492となる。
【0078】
補正部47では、同様にして、3番目のラインデータから最後のラインデータについて、各ラインデータを構成する画素データの階調を補正する。
【0079】
以上のように、補正部47は事象データD2と補正データD3とを利用して、階調について各ラインでの補正値を決定し、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素の階調を補正する。
【0080】
補正部47によって、上述した補正がされた画像データD1は、不図示の画像処理部で、所定の画像処理がされて、図1に示す画像形成部103に送られる。画像形成部103は、画像データD1が示す画像を用紙に形成する処理を実行する(ステップS13)。そして、画像が形成された用紙は、スタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。
【0081】
第2実施形態の主な効果を説明する。光源11の温度が変動すると、光源11の照度が変動する。このため、原稿の読み取り中に光源11の温度が変動すると、読み取った原稿の画像に影響が生じる。光源11の温度の変動は予測不可能な事象である。
【0082】
第2実施形態に係る原稿読取装置2bでは、光源11の温度の変動を示す事象データD2を測定する動作を、原稿の相対的移動の開始から終了まで実行する(言い換えれば、原稿の読み取り期間中実行する)。複数のラインが順番に読み取られているときに測定された各ラインについての事象データD2と、補正データD3とを利用して、各ラインでの補正値を決定する。そして、各ラインに対応する画素について、各ラインでの補正値を用いて画素データを補正する。従って、第2実施形態に係る原稿読取装置2bによれば、原稿を副走査方向に相対的に移動させて原稿を読み取る方式において、原稿の読み取り中に発生し、画像に影響を与える事象に対する補正を画像データD1に実行することができる。
【0083】
第1実施形態及び第2実施形態では、画像データD1と事象データD2を、アナログデジタル変換処理部30でパラレルデータからシリアルデータに変換し、補正処理部40で、そのシリアルデータをパラレルデータに変換している。しかしながら、画像データD1と事象データD2とをシリアルデータに変換することなく、アナログデジタル変換処理部30から補正処理部40に転送してもよい。この場合は、パラレル−シリアル変換回路33とシリアル−パラレル変換回路41とを省略することができる。
【0084】
事象として、光源11に供給される電圧の変動及び光源11の温度の変動を例に説明したが、本発明に適用される事象は、それらに限定されない。すなわち、原稿の読み取り中に変動する可能性があり、読み取られた原稿の画像に影響を与える事象であり、アナログ信号として測定できる事象であれば、本発明に適用される事象となる。例えば、原稿給送部300(図1)で、モーターを利用して原稿を自動送りする際に発生する振動を、事象にしてもよい。また、原稿読取装置のクロック生成装置として、スペクトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG:Spread Spectrum Clock Generator)を用いる場合、これにより生じるクロックのジッタを、事象にしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 画像形成装置
2a,2b 原稿読取装置
10 撮像部
20 測定部
44 記憶部
45 補正部
46 記憶部
47 補正部
50 測定部
D1 画像データ
D2 事象データ
D3 補正データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8