(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1,第2の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の全体構成につき、
図1,
図2を用いて説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の機構を示す概略図である。図示したように、インクジェット記録装置1は、外郭を構成する筐体2と、用紙Pを収納した給紙カセット3と、用紙Pに画像を形成する画像形成部4と、筐体2上部に設けられた排紙トレイ5と、給紙カセット3から画像形成部4までの搬送路A1および画像形成部4から排紙トレイ5までの搬送路A2に沿って用紙Pを搬送する搬送装置6と、用紙Pの表裏面を反転させる反転装置7と、を備える。
【0012】
画像形成部4は、用紙Pを外周面上に保持して回転する搬送機構としてのドラム40と、レジストローラ対66により供給される用紙Pをドラム40の外周面に押圧し用紙Pをこの外周面に静電気力によって吸着保持させる保持装置41と、メンテナンス装置42と、ドラム40の外周面に保持された用紙Pにインクを吐出して画像を形成する記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kと、用紙Pを除電しドラム40から剥離して分離ローラ対67に供給する除電剥離装置44と、ドラム40を清浄するクリーニング装置45と、を備える。
【0013】
ドラム40は、回転軸40aと、導体であるアルミニウムで円筒状に構成された導電部としての円筒フレーム40bと、円筒フレーム40bの表面に形成された薄い絶縁層40cと、を備え、軸方向に一定の長さを有する円筒形状である。
【0014】
保持装置41は、帯電可能な部材で構成された吸着ローラ46を備える接触型の帯電装置である。吸着ローラ46に電荷が供給されると、同ローラ46が帯電する。このとき、吸着ローラ46とドラム40との間に用紙Pを搬送すると、吸着ローラ46から用紙P又はドラム40に静電荷が付与される。この静電荷に基づく静電気力により、用紙Pがドラム40の外周面に吸着する。
【0015】
記録ヘッド43Cはシアンに対応し、記録ヘッド43Mはマゼンダに対応し、記録ヘッド43Yはイェローに対応し、記録ヘッド43Kはブラックに対応する。各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kは、ドラム40の外周面に対向配置されている。各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kは、所定のピッチで設けられたノズルからインクを吐出し、ドラム40によって搬送される用紙Pに画像を形成する。
【0016】
以下の説明において、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kを特に区別しない場合には、単に記録ヘッド43と称す。
【0017】
メンテナンス装置42は、所定のタイミングで記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kに向けて移動し、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kのノズル面を清掃する。
【0018】
除電剥離装置44は、用紙Pの除電を行う除電装置47と、除電後にドラム40の表面から用紙Pを剥離させる剥離装置48と、を備える。除電装置47は、帯電可能な材料で形成された除電ローラ47aを備え、この除電ローラ47aから電荷を供給して用紙Pを除電することで、吸着力を解除して用紙Pをドラム40から剥離し易い状態にする。剥離装置48は、分離爪48aを備え、この分離爪48aの先端を所定のタイミングでドラム40に当接させてドラム40の外周面に保持された用紙Pを剥離し、剥離した用紙Pを分離ローラ対67に供給する。
【0019】
搬送装置6は、搬送路A1,A2に沿って設けられた複数のガイド部材61,62,63や搬送路A1,A2に沿って設けられた複数の搬送ローラ等を備えている。搬送ローラとしては、用紙Pを給紙カセット3から搬送路A1に送り込むピックアップローラ64、このピックアップローラ64にて送り込まれた用紙Pを搬送路A1に沿って搬送する給紙ローラ対65、この給紙ローラ対65にて搬送される用紙Pを画像形成部4に供給するレジストローラ対66、画像形成が完了した用紙Pを搬送路A2または反転装置7に供給する分離ローラ対67、この分離ローラ対67にて供給された用紙Pを搬送路A2に沿って搬送する搬送ローラ対68、この搬送ローラ対68にて搬送される用紙Pを排紙トレイ5に排出する排出ローラ対69等が設けられている。
【0020】
反転装置7は、搬送路A1と搬送路A2の間に設けられ、分離ローラ対67により供給される用紙Pの表裏を反転させて、再びレジストローラ対66に供給する。反転装置7は、例えば用紙Pの前後方向を逆にするようスイッチバックさせる機構など、どのような周知の機構を用いてもよい。この反転装置7によって用紙Pを反転することで、用紙Pに対する両面印刷が可能となる。
【0021】
図2は、インクジェット記録装置1のシステム構成を示すブロック図である。図示したように、インクジェット記録装置1は、コントローラとして機能するCPU(Central Processing Unit)100を備える。このCPU100には、アドレスバスやデータバスで構成されるバスラインを介して、ROM(Read only memory)101、RAM(Random Access Memory)102、インターフェイス(I/F)103、オペレーションパネルドライバ104、搬送ドライバ105、保持ローラ回転ドライバ106、帯電ドライバ107、ヘッドドライバ108、除電ドライバ109、剥離ドライバ110、用紙反転ドライバ111、メンテナンスドライバ112、及び、クリーニングドライバ113が接続されている。
【0022】
ROM101は、CPU100によって実行されるコンピュータプログラムなどの固定的データを記憶している。RAM102は、各種のワークメモリエリアを形成したり、画像データを一時記憶したりするメインメモリである。
【0023】
インターフェイス103は、通信ケーブルを介して外部の装置と通信し、インクジェット記録装置1への印字データ等の入力や、上記外部の装置へのデータの出力を行う。オペレーションパネルドライバ104は、各種操作ボタンやタッチパネル付きのディスプレイで構成されるオペレーションパネル120を制御する。
【0024】
搬送ドライバ105は、搬送装置6が備える各搬送ローラを回転させる搬送モータ121を駆動する。保持ローラ回転ドライバ106は、ドラム40を回転させる保持ローラモータ122を駆動する。帯電ドライバ107は、吸着ローラ46を帯電させる。
【0025】
ヘッドドライバ108は、本実施形態における制御部として機能するものであり、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kを駆動して用紙Pに画像を形成させる。なお、ヘッドドライバ108と各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kは、本実施形態に係るインクジェットヘッド201を構成する。
【0026】
除電ドライバ109は、上記除電ローラ47aを駆動する。剥離ドライバ110は、分離爪48aに連結されたソレノイドコイルへの電源供給をオン/オフし、分離爪48aをドラム40に対して当接および離間させる。
【0027】
用紙反転ドライバ111は、反転装置7を動作させる用紙反転モータ123を駆動する。メンテナンスドライバ112は、メンテナンス装置42を動作させるメンテナンスモータ124を駆動する。クリーニングドライバ113は、クリーニング装置45を動作させるクリーニングモータ125を駆動する。
【0028】
次に、インクジェットヘッド201の構成および動作の詳細について説明する。
【0029】
図3の断面図に示すように、記録ヘッド43は、インク供給源に接続したインク流入口202a、このインク流入口202aに流入するインクを収容する共通圧力室203a、この共通圧力室203a内のインクが充填される複数の圧力室204a、これら圧力室204aと共通圧力室203aとを仕切る隔壁205a、各圧力室204aにそれぞれ連通するインク吐出用の複数のノズル206a、各圧力室204aの一壁面を形成する複数の振動板207a、これら振動板207a上にそれぞれ配置した複数の圧電素子208a、共通圧力室203a内のインクの温度を検出する温度センサ209aを有する。
【0030】
また、記録ヘッド43は、インク供給源に接続したインク流入口202b、このインク流入口202bに流入するインクを収容する共通圧力室203b、この共通圧力室203b内のインクが充填される複数の圧力室204b、これら圧力室204bと共通圧力室203bとを仕切る隔壁205b、各圧力室204bにそれぞれ連通するインク吐出用の複数のノズル206b、各圧力室204bの一壁面を形成する複数の振動板207b、これら振動板207b上にそれぞれ配置した複数の圧電素子208b、共通圧力室203b内のインクの温度を検出する温度センサ209bを有する。
【0031】
各振動板207aおよび各圧電素子208aにより、各圧力室204aの容積を変化させる複数のアクチュエータが構成される。圧力室204aの容積が拡張すると、共通圧力室203a内のインクがその圧力室204aに導入される。圧力室204aの容積が拡張された状態から収縮すると、その圧力室204a内のインクが対応するノズル206aからインク滴となって吐出される。
【0032】
また、各振動板207bおよび各圧電素子208bにより、各圧力室204bの容積を変化させる複数のアクチュエータが構成される。圧力室204bの容積が拡張すると、共通圧力室203b内のインクがその圧力室204bに導入される。圧力室204bの容積が拡張された状態から収縮すると、その圧力室204b内のインクが対応するノズル206bからインク滴となって吐出される。
【0033】
図3のX−X線に沿う断面を矢印方向に見たのが
図4である。すなわち、各圧力室204bは、それぞれ隔壁210bを介して隣り合う。
図5に示すように、各圧力室204aも、それぞれ隔壁210aを介して隣り合う。
【0034】
図5に示すように、ドラム40によって搬送される用紙Pが、太線矢印で示す方向に搬送される。各圧力室204aは、用紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って並ぶ。各圧力室204bも、用紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って並ぶ。各ノズル206aの配置位置および各ノズル206bの配置位置は、用紙Pの搬送方向と直交する方向において互い違いである。各ノズル206aの相互間隔は、約169.4μmである。これは、150dpiの解像度に対応する。各ノズル206aと各ノズル206bの相互間隔は、約84.7μmである。これは、300dpiの解像度に対応する。
【0035】
各ノズル206aは、用紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って配置され、第1ノズル列を形成する。この第1ノズル列は、1番目およびその1番目から2つ置きごとの複数のノズル206aによって形成されるA相ノズル列、このA相ノズル列から用紙Pの搬送方向に一定距離ずれた位置に配置され2番目およびその2番目から2つ置きごとの複数のノズル206aによって形成されるB相ノズル列、このB相ノズル列から用紙Pの搬送方向に一定距離ずれた位置に配置され3番目およびその3番目から2つ置きごとの複数のノズル206aによって形成されるC相ノズル列を含む。
【0036】
各ノズル206bは、第1ノズル列から用紙Pの搬送方向に所定距離たとえば5mmずれた位置でその搬送方向と直交する方向に沿って配置され、第2ノズル列を形成する。この第2ノズル列は、1番目およびその1番目から2つ置きごとの複数のノズル206bによって形成されるD相ノズル列、このD相ノズル列から用紙Pの搬送方向に一定距離ずれた位置に配置され2番目およびその2番目から2つ置きごとの複数のノズル206bによって形成されるE相ノズル列、このE相ノズル列から用紙Pの搬送方向に一定距離ずれた位置に配置され3番目およびその3番目から2つ置きごとの複数のノズル206bによって形成されるF相ノズル列を含む。
【0037】
ヘッドドライバ108は、
図6に示すように、圧力室204a,204bの容積をそれぞれ拡張するための拡張パルスP1、圧力室204a,204bの容積を拡張パルスP1による拡張から定常状態にそれぞれ復帰させるためのグラウンド電位(パルス休止)P2、圧力室204a,204bの容積をそれぞれ収縮するための収縮パルスP3、および圧力室204a,204bの容積を収縮パルスP3による収縮から上記定常状態にそれぞれ戻すためのグラウンド電位(パルス休止)P4が順に含まれる波形の電圧を、各アクチュエータに出力する。
【0038】
拡張パルスP1、グラウンド電位P2、収縮パルスP3、グラウンド電位P4によって、1つのインク滴を吐出させるための吐出信号が構成される。本実施形態では、この吐出信号を最大で3回繰り返して同一のアクチュエータに出力することで、1画素を形成する。これにより、1つの記録ヘッド43で4階調の画像形成が可能となる。なお、
図6においては、上記吐出信号が3回繰り返して出力される場合を示している。
【0039】
拡張パルスP1の期間はT1(μs)、グラウンド電位P2の期間はT2(μs)、収縮パルスP3の期間はT3(μs)、グラウンド電位P4の期間はT4(μs)である。拡張パルスP1は負極性であり、収縮パルスP3は正極性である。
【0040】
拡張パルスP1の期間では、圧力室204a,204bの容積が拡張し、共通圧力室203a,203b内のインクが圧力室204a,204bに導入される。グラウンド電位P2の期間では、圧力室204a,204bの容積が拡張パルスP1による拡張から定常状態に復帰し、圧力室204a,204b内のインクがノズル206a,206bから吐出される。収縮パルスP3の期間では、圧力室204a,204bの容積が収縮し、グラウンド電位P4の期間では、圧力室204a,204bの容積が収縮パルスP3による収縮から定常状態に復帰する。この収縮および復帰により、圧力室204a,204b内のインクの振動が抑制される。
【0041】
また、拡張パルスP1の期間T1は圧力室204a,204b内のインクの固有振動周期ALの半値(=AL/2)に設定され、拡張パルスP1の中間点から収縮パルスP3の中間点までの期間は固有振動周期ALに設定され、収縮パルスP3の中間点から次の吐出信号の拡張パルスP1の中間点までの期間は固有振動周期ALに設定されている。
【0042】
図7に示すように、ヘッドドライバ108は、
図6に示したような駆動電圧を第1ノズル列の各ノズル206aに対応する各アクチュエータに対し順(A相、B相、C相ノズル列の順)に供給し、その後、一定期間をおいて上記駆動電圧を第2ノズル列の各ノズル206bに対応する各アクチュエータに対し順(D相、E相、F相ノズル列の順)に供給する。こうして各ノズル206a,206bに対応する各アクチュエータが駆動されることにより、1ライン分の画像を形成する主走査が行われる。第1ノズル列の各ノズル206aによる主走査の期間および第2ノズル列の各ノズル206bによる主走査の期間は、いずれも用紙Pがドラム40により84.7μm(300dpi相当)だけ搬送される期間に設定される。
【0043】
A相ノズル列、B相ノズル列、C相ノズル列から用紙P上に着弾するインク滴の位置は、A相ノズル列、B相ノズル列、C相ノズル列の位置が用紙Pの搬送方向に沿って互いにずれているので、用紙Pの搬送方向において同じになる。同じく、D相ノズル列、E相ノズル列、F相ノズル列から用紙P上に着弾するインク滴の位置は、D相ノズル列、E相ノズル列、F相ノズル列の位置が用紙Pの搬送方向に沿って互いにずれているので、用紙Pの搬送方向において同じになる。また、第1ノズル列に駆動電圧を供給し終えてから第2ノズル列に駆動電圧を供給し始めるまでの上記一定期間は、第1ノズル列と第2ノズル列との間の距離(本実施形態では5mm)だけドラム40により用紙Pが搬送される時間に設定される。したがって、第1ノズル列の各ノズル206aによる主走査によって用紙Pに着弾するインク滴の位置と、第2ノズル列の各ノズル206bによる主走査によって用紙Pに着弾するインク滴の位置は、用紙Pの搬送方向において同じになる。
【0044】
各相の第1滴目の拡張パルスP1の中心間の時間差は、インクの固有振動周期ALの整数倍に設定する。例えば本実施形態では、各層の第3滴目の収縮パルスP3の中間点からその次の相の第1滴目の拡張パルスP1の中間点までの期間Tzを、3ALに設定する。これにより、各相で吐出するインク滴の吐出周期が揃い、あるインク滴の吐出による残留振動の他のインク滴の吐出に対する影響を軽減ないしは排除できる。
【0045】
上記のような駆動電圧の他に、ヘッドドライバ108は、
図8に示すように圧力室204a,204bの容積をそれぞれ収縮するための収縮パルスP5を含む波形の電圧を、各アクチュエータに出力する。この波形によって、ノズル206a,206b内のインクのメニスカスをインクが吐出しない程度に振動させる振動信号が構成される。
【0046】
収縮パルスP5の期間はT5(μs)であり、その電位は正極性である。収縮パルスP5の期間では、圧力室204a,204bの容積が収縮し、その後のグラウンド電位の期間では、圧力室204a,204bの容積が収縮パルスP5による収縮から定常状態に復帰する。これにより、ノズル206a,206b内に残留したインクのメニスカスが振動する。
【0047】
収縮パルスP5の期間T5や電位V1は、圧力室204a,204bやノズル206a,206b内に残留したインクがノズル206a,206bから吐出しない程度の値に設定されている。このような値は、経験的、実験的、あるいは理論的に定めればよい。
【0048】
次に、ヘッドドライバ108の動作について説明する。
ヘッドドライバ108は、1頁の印刷を行うに際し、
図9のフローチャートに沿って動作する。
すなわち、先ずヘッドドライバ108は、1頁分の印字データを取得する(ACT11)。印字データは、例えばインターフェイス103を介して外部装置から入力され、CPU100によってRAM102に記憶される。ヘッドドライバ108は、このように記憶された印字データをRAM102から取得する。
【0049】
1頁分の印字データを取得した後、ヘッドドライバ108は、当該取得した印字データに基づき、シアン、マゼンダ、イェロー、ブラックのそれぞれについて当該1頁に含まれる各画素の階調値を決定する(ACT12)。
【0050】
続いて、ヘッドドライバ108は、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの温度センサ209a,209bの検出温度を取得する(ACT13)。
【0051】
そして、ヘッドドライバ108は、取得した検出温度に基づいて、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kごとに、振動信号を各アクチュエータに供給する頻度を決定する(ACT14)。
【0052】
本実施形態における検出温度と、振動信号の供給頻度との関係を、
図10に示す。ヘッドドライバ108は、検出温度が15℃未満のとき振動信号を高頻度で供給し、検出温度が15℃以上40℃未満のとき振動信号を中頻度で供給し、検出温度が40℃以上のとき振動信号を低頻度で供給する。このように、インクの温度が高いほどメニスカスを振動させる頻度を低くすることで、各アクチュエータの駆動に伴う発熱によるインク粘度の極端な低下が防止される。なお、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kに対応する供給頻度は、例えば各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの温度センサ209a,209bの検出温度の平均値を用いて
図10の対応関係に基づき決定すればよい。
【0053】
さらに、各頻度における振動信号の供給タイミングにつき、
図11、
図12、
図13の波形図を用いて具体的に説明する。
図11〜
図13は、ヘッドドライバ108が各アクチュエータに供給する1画素を形成するための駆動電圧を、インクを1滴も吐出させない場合(0ドロップ)、1滴吐出させる場合(1ドロップ)、2滴吐出させる場合(2ドロップ)、3滴吐出させる場合(3ドロップ)のそれぞれについて表した波形図である。
図11が高頻度で振動信号を供給する場合(検出温度15℃未満)に対応し、
図12が中頻度で振動信号を供給する場合(検出温度15℃以上40℃未満)に対応し、
図13が低頻度で振動信号を供給する場合(検出温度40℃以上)に対応する。
【0054】
高頻度で振動信号を供給する場合には、
図11に示すように、0ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに1滴目,2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、1ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、2ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに3滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、3ドロップならば振動信号を供給しない。
【0055】
中頻度で振動信号を供給する場合には、
図12に示すように、0ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに1滴目,2滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、1ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに2滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、2〜3ドロップならば振動信号を供給しない。
【0056】
低頻度で振動信号を供給する場合には、
図13に示すように、0ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに1滴目の吐出信号を供給するタイミングで振動信号を供給し、1〜3ドロップならば振動信号を供給しない。
【0057】
なお、高頻度、中頻度、低頻度いずれの場合においても、振動信号の収縮パルスP5の供給タイミングと、同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに供給する吐出信号の収縮パルスP3の供給タイミングとを一致させる。
【0058】
ACT14において振動信号の供給頻度を決定した後、ヘッドドライバ108は、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kが有する各アクチュエータのそれぞれについて、そのアクチュエータで形成する各画素のACT12にて決定した階調値に応じ、ACT14にて決定した振動信号の供給頻度に対応する0〜3ドロップの波形を順次配置することにより、1頁を印刷するにあたって各アクチュエータに供給する駆動電圧の波形を決定する(ACT15)。
【0059】
その後、ドラム40による用紙Pの搬送に伴い、上記決定した波形の駆動電圧にて各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kが有する各アクチュエータを駆動し、1頁分の印刷を行う。このとき、各アクチュエータに供給する駆動電圧には、検出温度に応じた頻度の振動信号が含まれているので、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの各ノズル206a,206bが適度に振動する。
【0060】
なお、印刷ジョブが複数頁の印刷に係るものである場合、ヘッドドライバ108は再度ACT11からの処理を行い、次頁の印刷を行う。すなわち、振動信号の供給頻度は、印刷する頁ごとに変更される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェットヘッド201は、各ノズル206a,206b内のインクのメニスカスを各ノズル206a,206bからインクが吐出しない程度に振動させるための振動信号を、インクの温度に応じた頻度で各アクチュエータに供給する。このようにメニスカスを振動させれば、各ノズル206a,206b内のインクが凝固し難くなるので、インク詰まりの発生を防止できる。さらに、インクの温度に応じて振動信号の供給頻度を変化させることで、各アクチュエータの動作に伴う発熱量を制御し、インクの過度な温度上昇を防ぐことができる。
【0062】
また、インクジェットヘッド201は、各アクチュエータのうちの一部に吐出信号を供給するとともに、この吐出信号を上記一部のアクチュエータに供給するタイミングで残りのアクチュエータに振動信号を供給する。インクの吐出を休止しているノズルにおいてインク詰まりが生じ易いことに鑑みれば、このようにインク吐出を休止した状態にあるノズル内のメニスカスを振動させることで、振動信号の供給量を極力抑えることができ効率的である。さらに、吐出信号と振動信号の供給タイミング、より具体的には吐出信号および振動信号に含まれる収縮パルスP3,P5のタイミングを一致させることで、振動信号に基づくアクチュエータの動作によって生じる振動が周囲のノズルからのインク吐出に悪影響を及ぼし難くなる。
【0063】
これらの他にも、本実施形態に係るインクジェットヘッド201ないしインクジェット記録装置1は、種々の好適な効果を奏する。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
通常、メニスカスを振動させる際の各アクチュエータの発熱量は、メニスカスを大きく振動させるほど高くなり、小さく振動させるほど低くなる。これに鑑み、本実施形態では、振動信号の供給頻度を一定とし、インクの温度に応じて振動信号によりメニスカスを振動させる振幅を変化させ、これにより各アクチュエータの発熱量を制御する点で、第1の実施形態と異なる。
第1の実施形態において
図1〜
図7を用いて説明した構成は、本実施形態でも同様である。その他、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合に限り行う。
【0065】
本実施形態に係るヘッドドライバ108は、1頁の印刷を行うに際し、
図14のフローチャートに沿って動作する。
すなわち、先ずヘッドドライバ108は、1頁分の印字データを取得する(ACT21)。印字データは、例えばインターフェイス103を介して外部装置から入力され、CPU100によってRAM102に記憶される。ヘッドドライバ108は、このように記憶された印字データをRAM102から取得する。
【0066】
1頁分の印字データを取得した後、ヘッドドライバ108は、当該取得した印字データに基づき、シアン、マゼンダ、イェロー、ブラックのそれぞれについて当該1頁に含まれる各画素の階調値を決定する(ACT22)。
【0067】
続いて、ヘッドドライバ108は、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの温度センサ209a,209bの検出温度を取得する(ACT23)。
【0068】
そして、ヘッドドライバ108は、取得した検出温度に基づいて、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kごとに、各ノズル206a,206b内のインクのメニスカスを振動させる振幅を決定する(ACT24)。メニスカスを振動させる振幅は、各アクチュエータに供給する振動信号の強度、すなわち収縮パルスP5の電位を高くするほど大きくなる。そこで、本実施形態においては、ACT24にて各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kごとに、収縮パルスP5の電位を決定する。
【0069】
本実施形態における検出温度と、収縮パルスP5の電位との関係を、
図15に示す。ヘッドドライバ108は、検出温度が15℃未満のとき収縮パルスP5の電位を第1の実施形態と同じく電位V1とし、検出温度が15℃以上40℃未満のとき収縮パルスP5の電位を電位V2(0<V2<V1)とし、検出温度が40℃以上のとき収縮パルスP5の電位を電位V3(0<V3<V2)とする。このように、インクの温度が高いほど収縮パルスP5の電位を低くすることで、各アクチュエータの駆動に伴う発熱によるインク粘度の極端な低下が防止される。なお、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kに対応する収縮パルスP5の電位は、例えば各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの温度センサ209a,209bの検出温度の平均値を用いて
図15の対応関係に基づき決定すればよい。
【0070】
さらに、各頻度における振動信号の供給タイミングにつき、
図11、
図16、
図17の波形図を用いて具体的に説明する。高頻度で振動信号を供給する場合には、第1の実施形態と同様に、
図11に示すタイミングで電位V1の振動信号を供給する。
【0071】
中頻度で振動信号を供給する場合には、
図16に示すように、0ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに1滴目,2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V2の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、1ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V2の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、2ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V2の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、3ドロップならば振動信号を供給しない。
【0072】
低頻度で振動信号を供給する場合には、
図17に示すように、0ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに1滴目,2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V3の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、1ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに2滴目,3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V3の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、2ドロップならば同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに3滴目の吐出信号を供給するタイミングで電位V3の収縮パルスP5に相当する振動信号を供給し、3ドロップならば振動信号を供給しない。
【0073】
なお、高頻度、中頻度、低頻度いずれの場合においても、振動信号の収縮パルスP5の供給タイミングと、同じ相のノズル列に対応する他のアクチュエータに供給する吐出信号の収縮パルスP3の供給タイミングとを一致させる。
【0074】
ACT24において収縮パルスP5の電位を決定した後、ヘッドドライバ108は、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kが有する各アクチュエータのそれぞれについて、そのアクチュエータで形成する各画素のACT22にて決定した階調値に応じ、ACT24にて決定した振動信号の強度に対応する0〜3ドロップの波形を順次配置することにより、1頁を印刷するにあたって各アクチュエータに供給する駆動電圧の波形を決定する(ACT25)。
【0075】
その後、ドラム40による用紙Pの搬送に伴い、上記決定した波形の駆動電圧にて各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kが有する各アクチュエータを駆動し、1頁分の印刷を行う。このとき、各アクチュエータに供給する駆動電圧には、検出温度に応じた強度の振動信号が含まれているので、各記録ヘッド43C、43M、43Y、43Kの各ノズル206a,206bが適度に振動する。
【0076】
なお、印刷ジョブが複数頁の印刷に係るものである場合、ヘッドドライバ108は再度ACT21からの処理を行い、次頁の印刷を行う。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェットヘッド201は、各ノズル206a,206b内のインクのメニスカスを、インクの温度に応じた振幅で、各ノズル206a,206bからインクが吐出しない程度に振動させる。このような構成であっても、第1の実施形態と同様にメニスカスの振動によって各ノズル206a,206bのインク詰まりを防止でき、さらに各アクチュエータの動作に伴う発熱量を制御してインクの過度な温度上昇を防ぐことができる。
【0078】
その他、第1の実施形態と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0079】
(変形例)
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。
【0080】
例えば、上記各実施形態では、1つのノズル206a,206bからのインク吐出により、4階調の画素を形成する場合を例示した。しかしながら、3以下または5以上の階調の画素を1つのノズル206a,206bで形成する場合に対しても、上記各実施形態にて開示したメニスカスを振動させるための構成を適用できる。
【0081】
また、上記各実施形態では、インクの温度に応じて振動信号の供給頻度や強度を
図10,
図15に示した3段階で変化させる場合を例示した。しかしながら、振動信号の供給頻度や強度をインクの温度に応じてより多段階で変化させてもよいし、2段階のみで変化させてもよい。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]インクが充填される圧力室と、前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータと、前記圧力室の容積の変化に伴い、前記圧力室内のインクを吐出するノズルと、インクの温度を検出する温度センサと、前記ノズルからインクを吐出させるための吐出信号を前記アクチュエータに供給するとともに、前記ノズル内のインクのメニスカスを前記ノズルからインクが吐出しない程度に振動させるための振動信号を、前記温度センサの検出温度に応じた頻度で前記アクチュエータに供給するコントローラと、を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
[2]前記コントローラは、前記検出温度が高いほど、前記振動信号を前記アクチュエータに供給する頻度を下げることを特徴とする付記[1]に記載のインクジェットヘッド。
[3]インクが充填される圧力室と、前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータと、前記圧力室の容積の変化に伴い、前記圧力室内のインクを吐出するノズルと、インクの温度を検出する温度センサと、前記ノズルからインクを吐出させるための吐出信号を前記アクチュエータに供給するとともに、前記ノズル内のインクのメニスカスを前記温度センサの検出温度に応じた振幅で前記ノズルからインクが吐出しない程度に振動させるための振動信号を前記アクチュエータに供給するコントローラと、を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
[4]前記コントローラは、前記検出温度が高いほど、前記振動信号にて前記メニスカスを振動させる振幅を小さくすることを特徴とする付記[3]に記載のインクジェットヘッド。
[5]複数の前記圧力室、前記各圧力室の容積をそれぞれ変化させる複数の前記アクチュエータ、前記各圧力室の容積の変化に伴い前記各圧力室内のインクをそれぞれ吐出する複数の前記ノズル、を備え、前記コントローラは、前記各アクチュエータのうちの一部に前記吐出信号を供給するとともに、この吐出信号を前記一部のアクチュエータに供給するタイミングで残りのアクチュエータに前記振動信号を供給することを特徴とする付記[1]乃至[4]のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッド。
[6]付記[1]乃至[5]のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッドと、画像を形成するための記録媒体を前記ノズルからインクが吐出される位置に搬送する搬送機構と、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。