(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
評価対象であるMIMO受信機の少なくとも2つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたMIMOアンテナ評価装置において、上記MIMOアンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、
複数の第1の初期位相を成分として含む第1の初期位相ベクトルA及び複数の第2の初期位相を成分として含む第2の初期位相ベクトルBを生成し、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1の初期位相ベクトルAの各初期位相を有するように調整した場合と、上記第2の初期位相ベクトルBの各初期位相を有するように調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記制御手段は、
パラメータkが0<k<1を満たすとき、上記第1の初期位相ベクトルA及び上記第2の初期位相ベクトルBの各対応する初期位相の間における任意の初期位相を成分として含む第3の初期位相ベクトルCを、
C=k・A+(1−k)・B
により決定し、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相ベクトルCの各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることを特徴とするMIMOアンテナ評価装置。
評価対象であるMIMOアンテナの少なくとも2つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたMIMOアンテナ評価装置において、上記MIMOアンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度に基づいて、上記各散乱体アンテナから放射される無線周波信号の位相を調整するように上記移相手段の移相量を変化させ、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度の角度変化量を成分として含む第1の角度変化量ベクトルA及び第2の角度変化量ベクトルBを生成し、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1の角度変化量ベクトルAの各角度変化量に基づいて調整した場合と、上記第2の角度変化量ベクトルBの各角度変化量に基づいて調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記制御手段は、
パラメータkが0<k<1を満たすとき、上記第1の角度変化量ベクトルA及び上記第2の角度変化量ベクトルBの各対応する角度変化量の間における任意の角度変化量を成分として含む第3の角度変化量ベクトルCを、
C=k・A+(1−k)・B
により決定し、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを特徴とするMIMOアンテナ評価装置。
上記MIMOアンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の角度が変化するように上記各散乱体アンテナを移動させる第1のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に従って移動させることを特徴とする請求項5又は6記載のMIMOアンテナ評価装置。
上記MIMOアンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記散乱体アンテナの位置に対する方向の角度を変化させるように上記受信アンテナを回転させる第2のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記第1の角度変化量ベクトルAの各角度変化量は互いに同一の値を有し、上記第2の角度変化量ベクトルBの各角度変化量は互いに同一の値を有し、これにより、上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量は互いに同一の値を有し、
上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第3の角度変化量ベクトルCの角度変化量に従って回転させることを特徴とする請求項5又は6記載のMIMOアンテナ評価装置。
評価対象であるMIMOアンテナの少なくとも2つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたMIMOアンテナ評価装置を用いて上記受信アンテナを評価するMIMOアンテナ評価方法において、上記MIMOアンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記MIMOアンテナ評価方法は、
複数の第1の初期位相を成分として含む第1の初期位相ベクトルA及び複数の第2の初期位相を成分として含む第2の初期位相ベクトルBを生成するステップを含み、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1の初期位相ベクトルAの各初期位相を有するように調整した場合と、上記第2の初期位相ベクトルBの各初期位相を有するように調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記MIMOアンテナ評価方法は、
パラメータkが0<k<1を満たすとき、上記第1の初期位相ベクトルA及び上記第2の初期位相ベクトルBの各対応する初期位相の間における任意の初期位相を成分として含む第3の初期位相ベクトルCを、
C=k・A+(1−k)・B
により決定するステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相ベクトルCの各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップとを含むことを特徴とするMIMOアンテナ評価方法。
評価対象であるMIMOアンテナの少なくとも2つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたMIMOアンテナ評価装置を用いて上記受信アンテナを評価するMIMOアンテナ評価方法において、上記MIMOアンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記MIMOアンテナ評価方法は、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度に基づいて、上記各散乱体アンテナから放射される無線周波信号の位相を調整するように上記移相手段の移相量を変化させるステップと、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度の角度変化量を成分として含む第1の角度変化量ベクトルA及び第2の角度変化量ベクトルBを生成するステップとを含み、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1の角度変化量ベクトルAの各角度変化量に基づいて調整した場合と、上記第2の角度変化量ベクトルBの各角度変化量に基づいて調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記MIMOアンテナ評価方法は、
パラメータkが0<k<1を満たすとき、上記第1の角度変化量ベクトルA及び上記第2の角度変化量ベクトルBの各対応する角度変化量の間における任意の角度変化量を成分として含む第3の角度変化量ベクトルCを、
C=k・A+(1−k)・B
により決定するステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップとを含むことを特徴とするMIMOアンテナ評価方法。
上記MIMOアンテナ評価方法において、上記MIMOアンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の角度が変化するように上記各散乱体アンテナを移動させる第1のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記MIMOアンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に従って移動させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項18又は19記載のMIMOアンテナ評価方法。
上記MIMOアンテナ評価方法において、上記MIMOアンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記散乱体アンテナの位置に対する方向の角度を変化させるように上記受信アンテナを回転させる第2のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記第1の角度変化量ベクトルAの各角度変化量は互いに同一の値を有し、上記第2の角度変化量ベクトルBの各角度変化量は互いに同一の値を有し、これにより、上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量は互いに同一の値を有し、
上記MIMOアンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第3の角度変化量ベクトルCの角度変化量に従って回転させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項18又は19記載のMIMOアンテナ評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14のアンテナ評価装置を
図15のMIMO無線通信システムの性能評価に適用しようとする場合、MIMO送信機から送信される各サブストリームが異なる伝搬経路をたどることを想定し、サブストリーム毎に異なる多重波伝搬環境を生成する必要がある。性能評価のためには、多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することが必要とされる。
【0008】
本発明の目的は、以上の課題を解決し、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができるアンテナ評価装置を提供し、また当該アンテナ評価装置を用いたアンテナ評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るアンテナ評価装置によれば、
評価対象である少なくとも1つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたアンテナ評価装置において、上記アンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、
所定の第1の初期位相の組及び第2の初期位相の組を生成し、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1の初期位相の組の各初期位相を有するように調整した場合と、上記第2の初期位相の組の各初期位相を有するように調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記第1及び第2の初期位相の組の各対応する初期位相の間における任意の初期位相を含む第3の初期位相の組を決定し、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。
【0010】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記第3の初期位相の組を決定することと、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返すことを特徴とする。
【0011】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1又は第2の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。
【0012】
上記アンテナ評価装置において、上記第1及び第2の初期位相の組の各初期位相は乱数として生成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様に係るアンテナ評価装置によれば、
評価対象である少なくとも1つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたアンテナ評価装置において、上記アンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度に基づいて、上記各散乱体アンテナから放射される無線周波信号の位相を調整するように上記移相手段の移相量を変化させ、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度の角度変化量を含む第1の角度変化量の組及び第2の角度変化量の組を生成し、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整した場合と、上記第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記第1及び第2の角度変化量の組の各対応する角度変化量の間における任意の角度変化量を含む第3の角度変化量の組を決定し、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを特徴とする。
【0014】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記第3の角度変化量の組を決定することと、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返すことを特徴とする。
【0015】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。
【0016】
上記アンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の角度が変化するように上記各散乱体アンテナを移動させる第1のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に従って移動させることを特徴とする。
【0017】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させ、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に従って移動させることを特徴とする。
【0018】
上記アンテナ評価装置において、上記第1及び第2の角度変化量の組の各角度変化量は乱数として生成されることを特徴とする。
【0019】
上記アンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記散乱体アンテナの位置に対する方向の角度を変化させるように上記受信アンテナを回転させる第2のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記第1の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、上記第2の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、これにより、上記第3の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、
上記制御手段は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第3の角度変化量の組の角度変化量に従って回転させることを特徴とする。
【0020】
上記アンテナ評価装置において、上記制御手段は、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させ、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第1又は第2の角度変化量の組の角度変化量に従って回転させることを特徴とする。
【0021】
上記第1及び第2の態様に係るアンテナ評価装置において、上記信号発生器は、無変調連続波の無線周波信号を発生することを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の態様に係るアンテナ評価方法によれば、
評価対象である少なくとも1つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたアンテナ評価装置を用いて上記受信アンテナを評価するアンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記アンテナ評価方法は、
所定の第1の初期位相の組及び第2の初期位相の組を生成するステップを含み、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1の初期位相の組の各初期位相を有するように調整した場合と、上記第2の初期位相の組の各初期位相を有するように調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記第1及び第2の初期位相の組の各対応する初期位相の間における任意の初期位相を含む第3の初期位相の組を決定するステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
上記アンテナ評価方法は、上記第3の初期位相の組を決定することと、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第3の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返すステップを含むことを特徴とする。
【0024】
上記アンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相がそれぞれ上記第1又は第2の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップを含むことを特徴とする。
【0025】
上記アンテナ評価方法において、上記第1及び第2の初期位相の組の各初期位相は乱数として生成されることを特徴とする。
【0026】
本発明の第4の態様に係るアンテナ評価方法によれば、
評価対象である少なくとも1つの受信アンテナと、上記受信アンテナの周囲に設けられた複数の散乱体アンテナとを備えたアンテナ評価装置を用いて上記受信アンテナを評価するアンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、
無線周波信号を発生する信号発生器と、
上記発生された無線周波信号を分配する分配手段と、
上記分配された複数の無線周波信号の位相をそれぞれ調整する移相手段と、
上記調整後の複数の無線周波信号を上記複数の散乱体アンテナからそれぞれ放射することにより上記受信アンテナの周囲に所定の多重波を生成するように上記移相手段を制御する制御手段とを備え、
上記アンテナ評価方法は、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度に基づいて、上記各散乱体アンテナから放射される無線周波信号の位相を調整するように上記移相手段の移相量を変化させるステップと、
上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の各角度の角度変化量を含む第1の角度変化量の組及び第2の角度変化量の組を生成するステップとを含み、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整した場合と、上記第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整した場合とでは、上記放射される複数の無線周波信号により上記受信アンテナの周囲に互いに異なる多重波がそれぞれ生成され、
上記第1及び第2の角度変化量の組の各対応する角度変化量の間における任意の角度変化量を含む第3の角度変化量の組を決定するステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップとを含むことを特徴とする。
【0027】
上記アンテナ評価方法は、上記第3の角度変化量の組を決定することと、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返すステップを含むことを特徴とする。
【0028】
上記アンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップを含むことを特徴とする。
【0029】
上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記各散乱体アンテナの位置に対する方向の角度が変化するように上記各散乱体アンテナを移動させる第1のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記アンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に従って移動させるステップをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
上記アンテナ評価方法は、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第1のアンテナ駆動手段により上記各散乱体アンテナを上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に従って移動させるステップとを含むことを特徴とする。
【0031】
上記アンテナ評価方法において、上記第1及び第2の角度変化量の組の各角度変化量は乱数として生成されることを特徴とする。
【0032】
上記アンテナ評価方法において、上記アンテナ評価装置は、上記受信アンテナから上記散乱体アンテナの位置に対する方向の角度を変化させるように上記受信アンテナを回転させる第2のアンテナ駆動手段をさらに備え、
上記第1の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、上記第2の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、これにより、上記第3の角度変化量の組の各角度変化量は互いに同一の値を有し、
上記アンテナ評価方法は、上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第3の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第3の角度変化量の組の角度変化量に従って回転させるステップをさらに含むことを特徴とする。
【0033】
上記アンテナ評価方法は、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるステップと、
上記移相手段により上記複数の無線周波信号の位相をそれぞれ上記第1又は第2の角度変化量の組の各角度変化量に基づいて調整して上記調整後の複数の無線周波信号を放射させるとき、さらに、上記第2のアンテナ駆動手段により上記受信アンテナを上記第1又は第2の角度変化量の組の角度変化量に従って回転させるステップとを含むことを特徴とする。
【0034】
上記第3及び第4の態様に係るアンテナ評価方法において、上記信号発生器は、無変調連続波の無線周波信号を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0038】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ評価装置の構成を示すブロック図である。アンテナ評価装置は、互いに近接して配置された2つの受信アンテナ22a,22bと、それらを包囲するように配置された複数の散乱体アンテナ21−1〜21−Nとを備える。本実施形態では、2つの受信アンテナ22a,22bは、例えば評価対象であるMIMO受信機の受信アンテナとして設けられ、その周りの散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、受信アンテナ22a,22bの付近に所定の多重波伝搬環境を生成する。アンテナ評価装置において、信号発生器11は、無変調連続波(CW)である無線周波信号を発生し、次いで分配器12は、発生された無線周波信号を、散乱体アンテナ21−1〜21−Nの個数に合わせてN個に分配する。移相回路13は移相器13−1〜13−Nを備え、各移相器13−1〜13−Nは、分配された各無線周波信号の位相を調整し、調整後の無線周波信号は、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射される。放射されたN個の無線周波信号は、散乱体アンテナ21−1〜21−Nで包囲された中心付近の空間で重ね合わされて多重波となり、受信アンテナ22a,22bに到来する。受信アンテナ22a,22bに到来した無線周波信号はそれぞれ、受信機15a,15bによって測定される。コンピュータ10は、信号発生器11を制御するとともに、D/Aコンバータ14を介して移相回路13の位相調整量を制御する。コンピュータ10はまた、受信機15a,15bから無線周波信号の測定結果を取得する。信号発生器11及び受信機15a,15bは、公知の方法により互いに同期している。また、例えば、信号発生器11及び受信機15aはネットワークアナライザとして構成されてもよく、受信機15bはもう1つのネットワークアナライザとして構成されてもよい。アンテナ評価装置は、好ましくは、電波暗室内に設置される。これにより、天井、床面、壁面などで反射する反射波の影響は直接波に比較して十分小さくなり、受信アンテナ22a,22bの付近において、散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された直接波からなる多重波が生成される。
【0039】
本実施形態のアンテナ評価装置において、コンピュータ10は、異なる多重波にそれぞれ対応する所定の第1の初期位相の組及び第2の初期位相の組を生成し、第1及び第2の初期位相の組の各対応する初期位相の間における任意の初期位相を含む第3の初期位相の組を決定し、移相回路13により複数の無線周波信号がそれぞれ第3の初期位相の組の各初期位相を有するように調整して複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。これにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、多様な多重波伝搬環境を生成することができる。異なる多重波伝搬環境を生成したときにそれぞれ受信アンテナ22a,22bに到来した各多重波を、MIMO送信機から送信された各サブストリームとみなすことにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能評価に利用可能になる。また、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。
【0040】
図2に示すように、散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、半径rの円周上に所定角度幅で互いに離隔して配置され、2つの受信アンテナ22a,22bは、その円の中心部付近に配置される。円の中心に対して散乱体アンテナ21−1が位置する方向を基準方向の角度φ
1=0として、散乱体アンテナ21−2が位置する方向を角度φ
2とし、散乱体アンテナ21−3が位置する方向を角度φ
3とし、以下同様に配置し、散乱体アンテナ21−Nが位置する方向を角度φ
Nとする。散乱体アンテナ21−1〜21−Nの配置は、
図2の配置に限定されるものではなく、受信アンテナ22a,22bの付近に所望の多重波を生成可能であれば任意の配置を用いてもよい。例えば、散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、円周上で互いに等しい角度幅で配置されてもよい。受信アンテナ22a,22bは、評価対象であるMIMO受信機の構造に応じて、所定距離(例えば受信する無線周波信号の半波長に等しい距離)だけ互いに離隔される。散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、例えば
図14に示す散乱体アンテナ支持台101により、床面から所定高さHに位置するように設けられる。同様に、受信アンテナ22a,22は、例えば
図14に示す受信アンテナ支持台102により、床面から所定高さHに位置するように設けられる。本実施形態において、散乱体アンテナ21−1〜21−N及び受信アンテナ22a,22bはそれぞれ、例えば半波長ダイポールアンテナとして構成されるが、これに限定されるものではない。また、散乱体アンテナ21−1〜21−N及び受信アンテナ22a,22bはそれぞれ、例えば床面に対して垂直に設けられ、垂直偏波の電波を送受信するが、このような配置に限定されるものではない。
【0041】
無線周波信号として例えば2GHz付近の周波数帯域の信号を用いた場合、散乱体アンテナ21−1〜21−N及び受信アンテナ22a,22bの床面からの高さHは1.5mに設定され、散乱体アンテナ21−1〜21−Nと受信アンテナ22a,22bとの距離、すなわち散乱体アンテナ21−1〜21−Nが配置された円周の半径rは1.5mに設定される。使用する周波数帯域及びアンテナ配置はこれに限定せず、他の値を用いてもよい。
【0042】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナ評価装置の動作原理について説明する。
【0043】
(フェージングを含む多重波伝搬環境の生成)
本実施形態のアンテナ評価装置は、受信アンテナ22a,22bが移動することによって生じるフェージングを仮想的に発生させることができる。このとき、コンピュータ10は、N個の無線周波信号の位相を移相回路13によって独立に瞬時制御することにより、フェージング特性を制御することができる。すなわち、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射される無線周波信号の位相変化を制御することにより、中心付近にフェージング変動(例えばレイリーフェージング、又はその他のフェージング)を有する多重波の重ね合わせを発生させることが可能となる。
図2に示すように、受信アンテナ22a,22bが角度φ
0の方向に、速度vで移動する場合を想定する。この場合、i番目の散乱体アンテナ21−i(i≦1≦N)から放射される無線周波信号が有する位相p
i(t)は、移相器13−iにより次式のように調整される。
【0045】
ここで、f
Dは、無線周波信号の波長をλとするときの最大ドップラー周波数v/λであり、tは時間であり、α
iは、散乱体アンテナ21−iから放射される無線周波信号が有する初期位相である。最大ドップラー周波数f
Dは、歩行に相当する値(数Hz)から、高速移動に相当する値(数百Hz)まで任意に設定可能である。数1からわかるように、最大ドップラー周波数f
Dの値に依存して、移相器13−iが位相を変化させる速度が変わり、最大ドップラー周波数f
Dが低い場合にはその速度も低い一方、最大ドップラー周波数f
Dが高くなるとその速度も高くなる。仮想的な進行方向の角度φ
0は、任意に設定可能である。角度φ
0を変化させると、散乱体アンテナ21−iのドップラーシフトの条件も変化し、それに応じて、移相器13−iの位相調整量を変化させる。数1によれば、位相p
i(t)は、所定の初期位相α
iを有し、また、最大ドップラー周波数f
Dに依存するとともに、仮想的な進行方向の角度φ
0と散乱体アンテナ21−iが位置する方向の角度φ
iとの角度差に依存して時間的に変化する。
【0046】
(受信アンテナ22a,22bにおける受信信号波形)
数1の位相p
i(t)を有する無線周波信号を用いてフェージングを発生させるとき、散乱体アンテナ21−1〜21−Nで包囲された中心付近に発生した多重波は、受信されたとき次式の受信信号波形S(t)を有する。
【0048】
ここで、βは伝搬定数である。また、本実施形態では、到来波分布が全方位角にわたって一様であると仮定する。さらに、受信アンテナ22a,22bの放射パターンが無指向性であると仮定する。
【0049】
これにより、本実施形態のアンテナ評価装置では、実際に人が移動することにより生じる各到来波の位相変化を放射される各無線周波信号に与えることにより、中心付近に所望の多重波を生成する。この結果、実際には受信アンテナ22a,22bは静止しているにもかかわらず、受信アンテナ22a,22bが移動している状況を発生させることができる。
【0050】
本実施形態では、MIMO送信機から送信される各サブストリームが独立した伝搬経路をたどることを想定し、サブストリーム毎に異なる多重波伝搬環境を生成する。特に、本実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために、数2の初期位相α
iを変化させる。コンピュータ10は、異なる2組の初期位相α
1i,α
2i(1≦i≦N)を乱数により独立に発生させる。以下、本明細書では、これらの初期位相の組を、初期位相ベクトルA
1=(α
11,…,α
1N),A
2=(α
21,…,α
2N)という。これらの異なる初期位相ベクトルA
1,A
2は、互いに異なる多重波伝搬環境(すなわち、互いに異なる伝搬経路)に対応し、最終的には、受信アンテナ22a,22bの周囲に互いに異なる多重波をもたらす。すなわち、初期位相α
1i,α
2iを数2に代入することにより、以下の2つの受信信号波形S
1(t),S
2(t)が得られる。
【0052】
図2は、
図1のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第1の初期位相ベクトルA
1を設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。各散乱体アンテナ21−iから放射される無線周波信号の位相は、初期位相α
1iを有するようにそれぞれ調整されている。初期位相α
1iを有して放射された無線周波信号は、所定の到来波形を有する多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第1の送信アンテナから送信されて、所定の伝搬経路をたどって到来する第1のサブストリームTX1とみなすことができる。さらに、この多重波は、各受信アンテナ22a,22bによって受信されたときに実質的には数3の受信信号波形S
1(t)に相当する受信信号波形をそれぞれ有するが、これらの受信信号波形は、実際には受信アンテナ22a,22bの位置及び指向特性の相違などによって互いに異なったものになる。従って、本実施形態のアンテナ評価装置が
図15のMIMO無線通信システムに係る多重波伝搬環境を生成している場合には、第1の初期位相ベクトルA
1を設定したときに放射されて受信アンテナ22aで受信した信号は、送信アンテナ201から受信アンテナ211へのチャネル221を伝搬した信号に相当し、第1の初期位相ベクトルA
1を設定したときに放射されて受信アンテナ22bで受信した信号は、送信アンテナ201から受信アンテナ212へのチャネル222を伝搬した信号に相当する。
【0053】
図3は、
図1のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第2の初期位相ベクトルA
2を設定したときの多重波伝搬環境を示す平面図である。各散乱体アンテナ21−iから放射される無線周波信号の位相は、初期位相α
1iとは異なる初期位相α
2iを有するようにそれぞれ調整されている。初期位相α
2iを有して放射された無線周波信号は、所定の到来波形を有する多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、第1のサブストリームTX1とは異なるサブストリームであって、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第2の送信アンテナから送信されて、第1のサブストリームTX1の伝搬経路とは異なる所定の伝搬経路をたどって到来する第2のサブストリームTX2とみなすことができる。さらに、この多重波は、各受信アンテナ22a,22bによって受信されたときに実質的には数4の受信信号波形S
2(t)に相当する受信信号波形をそれぞれ有するが、これらの受信信号波形は、実際には受信アンテナ22a,22bの位置及び指向特性の相違などによって互いに異なったものになる。従って、本実施形態のアンテナ評価装置が
図15のMIMO無線通信システムに係る多重波伝搬環境を生成している場合には、第2の初期位相ベクトルA
2を設定したときに放射されて受信アンテナ22aで受信した信号は、送信アンテナ202から受信アンテナ211へのチャネル223を伝搬した信号に相当し、第2の初期位相ベクトルA
2を設定したときに放射されて受信アンテナ22bで受信した信号は、送信アンテナ202から受信アンテナ212へのチャネル224を伝搬した信号に相当する。
【0054】
図2及び
図3に示すように、異なる初期位相ベクトルを設定することにより、異なる多重波伝搬環境を生成することができる。
【0055】
本実施形態のアンテナ評価装置では、例えば
図15のように2つの送信アンテナと2つの受信アンテナを使用するMIMO無線通信システムのチャネル応答を以下のように取得することができる。第1の初期位相ベクトルA
1を設定したときに放射されて受信アンテナ22aで受信した信号に基づいて、チャネル221のチャネル応答h
11を計算し、第1の初期位相ベクトルA
1を設定したときに放射されて受信アンテナ22bで受信した信号に基づいて、チャネル222のチャネル応答h
21を計算する。次いで、第1の初期位相ベクトルA
1とは異なる第2の初期位相ベクトルA
2を設定したときに放射されて受信アンテナ22aで受信した信号に基づいて、チャネル223のチャネル応答h
12を計算し、第2の初期位相ベクトルA
2を設定したときに放射されて受信アンテナ22bで受信した信号に基づいて、チャネル224のチャネル応答h
22を計算する。これらの別個に取得されたチャネル応答h
11,h
21,h
12,h
22を合成することにより、以下のチャネル応答行列Hが得られる。
【0057】
(パラメータkによる初期位相の制御)
アンテナ評価装置で所定のアンテナ装置の性能評価を行うためには、多様な多重波伝搬環境を生成する必要がある。本実施形態では、前述のように、MIMO送信機から送信される別個のサブストリームTX1,TX2が独立した伝搬経路をたどることを想定し、サブストリームTX1,TX2毎に異なる多重波伝搬環境を生成する。各サブストリームTX1,TX2が同じ伝搬経路を通る場合には、サブストリームTX1の多重波伝搬環境とサブストリームTX2の多重波伝搬環境との相関が高くなる。一方、サブストリームTX1,TX2が互いに異なる伝搬経路を通る場合には、その相関は低くなる。また、その中間の相関を持つ環境も想定される。従って、サブストリームTX1の多重波伝搬環境とサブストリームTX2の多重波伝搬環境との相関をさまざまに変化させるように、これらの多重波伝搬環境を生成することが望ましい。本実施形態では、このような多重波伝搬環境の生成を実現するために、パラメータk(0≦k≦1)を用いて、2つの異なる初期位相ベクトルA
1,A
2の間の初期位相ベクトルBを、次式のように定義する。
【0059】
数6に従って、パラメータkを変化させることにより、さまざまな異なる値を有する初期位相ベクトルBが得られる。これらの初期位相ベクトルBを設定して無線周波信号を放射することにより、さまざまに異なる多重波伝搬環境が生成される。従って、数6で定義される、ある初期位相ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第1のサブストリームTX1とみなし、同じく数6で定義される、別の初期位相ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第2のサブストリームTX2とみなすことができる。いずれかの初期位相ベクトル(例えば、初期位相ベクトルA
1,A
2、又は数6で定義される任意の初期位相ベクトルB)を基準としたとき、他の初期位相ベクトルは基準の初期位相ベクトルに対して所定の距離を有することになるが、この距離に応じて、対応する多重波伝搬環境の間の相関が変化する。2つの初期位相ベクトルが互いに近いものであれば、対応する多重波伝搬環境の間の相関も高くなり、2つの初期位相ベクトルが互いに遠いものであれば、対応する多重波伝搬環境の間の相関も低くなる。本実施形態では、2つの多重波伝搬環境の間の相関として、一方の初期位相ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a(又は22b)に到来した多重波の信号と、他方の初期位相ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a(又は22b)に到来した多重波の信号との間の相互相関係数を用いる。ここで、前者の信号を信号系列x=(x
1,x
2,…,x
m)で表し、後者の信号を信号系列y=(y
1,y
2,…,y
m)で表すとき、これらの相互相関係数を、次式に示すピアソンの積率相関ρ
xyを用いて定義することができる。
【0061】
図4は、
図1のコンピュータ10によって設定されるパラメータ(1−k)と、2つの受信信号波形間の相互相関係数との関係を示すグラフである。ここで、生成される2つの多重波伝搬環境のうち、一方では、初期位相ベクトルA
1を固定的に使用し、他方では、数6のパラメータkを変化させることにより可変な初期位相ベクトルBを使用する。
図4のグラフは、これらの初期位相ベクトルA
1,Bを設定したときに受信アンテナ22aにそれぞれ到来する多重波(数2参照)について、その信号を所定時間にわたってサンプリングして信号系列を取得し、数7を用いて相互相関係数を計算した結果を示す。
図4によれば、パラメータkを変化させることにより、2つの多重波伝搬環境の間の相関をさまざまに変化させることができ、従って、互いの相関がさまざまに異なる多様な多重波伝搬環境を効率的に生成できることがわかる。
【0062】
前述のように、初期位相ベクトルA
1,A
2は互いに独立な乱数からなるので、初期位相ベクトルA
1,A
2をそれぞれ設定したときの多重波伝搬環境の間の相関は0になる。従って、基準となる多重波伝搬環境を初期位相ベクトルA
1,A
2の一方を用いて生成し、初期位相ベクトルBを用いてもう1つの多重波伝搬環境を生成するとき、パラメータkの変化に応じて初期位相ベクトルBは初期位相ベクトルA
1,A
2のいずれかに一致するか又はその間の値をとり、多重波伝搬環境の間の相関を0から1までの範囲で任意に変化させることができる。この場合、相関が変化する範囲を広くとることができ、好適である。しかしながら、基準となる多重波伝搬環境を、初期位相ベクトルA
1,A
2の間における、初期位相ベクトルA
1,A
2とは異なる任意の初期位相ベクトルBを用いて生成してもよい。
【0063】
無変調連続波(CW)である無線周波信号を用いる場合、信号発生器を複数個用いたとしても、MIMO送信機のように互いに直交した無相関な複数の信号を同時に送信することはできない。しかしながら、本実施形態のアンテナ評価装置によれば、異なる多重波伝搬環境を生成したときにそれぞれ受信アンテナ22a,22bに到来した各多重波を、MIMO送信機から送信された各サブストリームとみなすことにより、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能評価に利用可能になる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ評価装置によれば、異なる多重波にそれぞれ対応する所定の初期位相ベクトルA
1,A
2を生成し、初期位相ベクトルA
1,A
2の間における初期位相ベクトルBを決定し、移相回路13により複数の無線周波信号の位相が初期位相ベクトルBの各初期位相を有するように調整して複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。本実施形態のアンテナ評価装置によれば、さらに、初期位相ベクトルBを決定することと、移相回路13により複数の無線周波信号の位相がそれぞれ初期位相ベクトルBの各初期位相を有するように調整して調整後の複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返してもよい。これにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。
【0065】
第2の実施形態.
第1の実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために初期位相ベクトルを変化させたが、第2の実施形態では、これに代えて、散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置を変化させることを特徴とする。
【0066】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ評価装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のアンテナ評価装置は、
図1のアンテナ評価装置の構成に加えて、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置、すなわち受信アンテナ22a,22bに対する各散乱体アンテナ21−1〜21−Nの角度を変化させるためのアンテナ駆動装置31−1〜31−N(総称して参照番号「31」で表す)をさらに備える。
図6に示すように、散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、半径rの円周上に所定角度幅で互いに離隔して配置され、2つの受信アンテナ22a,22bは、その円の中心部付近に配置される。各散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、対応するアンテナ駆動装置31−1〜31−Nにより、円周方向に沿って所定角度幅にわたって機械的に移動される。コンピュータ10は、アンテナ駆動装置31−1〜31−Nを制御して、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nを所望の位置に機械的に移動させる。
【0067】
図6は、
図5のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第1の散乱体アンテナ位置を設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
図6の配置は、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nの移動角度が0である場合に相当する。
図6の配置の散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第1の送信アンテナから送信されて、所定の伝搬経路をたどって到来する第1のサブストリームTX1とみなすことができる。
【0068】
図7は、
図5のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第2の散乱体アンテナ位置を設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
図7の配置では、各散乱体アンテナ21−1〜21−Nは、対応するアンテナ駆動装置31−1〜31−Nにより、角度変化量θ
1,θ
2,θ
3,…,θ
Nにわたって機械的に移動される。コンピュータ10は、これらの角度変化量θ
1,θ
2,θ
3,…,θ
Nを、互いに異なる乱数として生成する。
図7の配置の散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、
図6の場合の多重波とは異なる所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、第1のサブストリームTX1とは異なるサブストリームであって、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第2の送信アンテナから送信されて、第1のサブストリームTX1の伝搬経路とは異なる所定の伝搬経路をたどって到来する第2のサブストリームTX2とみなすことができる。
【0069】
数2からわかるように、受信アンテナ22a,22bに到来する多重波の受信信号波形は、散乱体アンテナ21−iが位置する角度φ
iに依存して変化する。本実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために、上述のように散乱体アンテナ21−iを機械的に移動させるとともに、各移相器13−iにより無線周波信号の位相を移動後の角度に基づいて調整する(すなわち、数2の角度φ
iを変化させる)。なお、本実施形態では、数2の初期位相α
iとしては、固定された所定値を用いる。コンピュータ10は、異なる2組の角度変化量θ
1i,θ
2i(1≦i≦N)を乱数により独立に発生させる。以下、本明細書では、これらの角度変化量の組を、角度ベクトルA
3=(θ
11,…,θ
1N),A
4=(θ
21,…,θ
2N)という。これらの異なる角度ベクトルA
3,A
4は、互いに異なる多重波伝搬環境(すなわち、互いに異なる伝搬経路)に対応し、最終的には、受信アンテナ22a,22bの周囲に互いに異なる多重波をもたらす。数2において角度φ
iに代えて角度(φ
i−θ
1i),(φ
i−θ
2i)を代入すると、以下の2つの受信信号波形S
3(t),S
4(t)が得られる。
【0071】
以上説明したように、アンテナ駆動装置31及び移相回路13に設定する角度を変化させることにより、異なる多重波伝搬環境を生成することができる。
【0072】
アンテナ評価装置で所定のアンテナ装置の性能評価を行うためには、多様な多重波伝搬環境を生成する必要がある。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、MIMO送信機から送信される別個のサブストリームTX1,TX2が独立した伝搬経路をたどることを想定し、サブストリームTX1,TX2毎に異なる多重波伝搬環境を生成するので、サブストリームTX1の多重波伝搬環境とサブストリームTX2の多重波伝搬環境との相関をさまざまに変化させるように、これらの多重波伝搬環境を生成することが望ましい。本実施形態では、このような多重波伝搬環境の生成を実現するために、パラメータk(0≦k≦1)を用いて、2つの異なる角度ベクトルA
3,A
4の間の角度ベクトルCを、次式のように定義する。
【0074】
数10に従って、パラメータkを変化させることにより、さまざまな異なる値を有する角度ベクトルCが得られる。これらの角度ベクトルCをアンテナ駆動装置31−1〜31−N及び移相器13−1〜13−Nを用いて設定して無線周波信号を放射することにより、第1の実施形態と同様に、さまざまに異なる多重波伝搬環境が生成される。従って、数10で定義される、ある角度ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第1のサブストリームTX1とみなし、同じく数10で定義される、別の角度ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第2のサブストリームTX2とみなすことができる。いずれかの角度ベクトル(例えば、角度ベクトルA
3,A
4、又は数10で定義される任意の角度ベクトルC)を基準としたとき、他の角度ベクトルは基準の角度ベクトルに対して所定の距離を有することになるが、この距離に応じて、対応する多重波伝搬環境の間の相関が変化する。
【0075】
処理の簡単化のためには、一方の角度ベクトルA
3を「0」とし(
図6参照)、他方の角度ベクトルA
4のみを変化させてもよい。
【0076】
角度ベクトルA
3,A
4を構成する各角度変化量を散乱体アンテナ21−1〜21−N毎に異なる乱数として生成することにより、これらの角度ベクトルを設定したときの散乱体アンテナ21−1〜21−Nの平均的な配置角度を等しくすることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ評価装置によれば、受信アンテナ22a,22bから各散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置に対する方向の各角度の角度変化量をそれぞれ含む角度ベクトルA
3,A
4を生成し、角度ベクトルA
3,A
4の各角度変化量の間における角度ベクトルCを決定し、角度ベクトルCをアンテナ駆動装置31及び移相回路13に設定して複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。本実施形態のアンテナ評価装置によれば、さらに、角度ベクトルCを決定することと、角度ベクトルCをアンテナ駆動装置31及び移相回路13に設定して複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返してもよい。これにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。
【0078】
第3の実施形態.
第2の実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置を変化させたが、第3の実施形態では、これに代えて、受信アンテナ22a,22bの向きを変化させることを特徴とする。
【0079】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ評価装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のアンテナ評価装置は、
図1のアンテナ評価装置の構成に加えて、受信アンテナ22a,22bの向き(角度方向)を変化させるための受信アンテナ支持台41をさらに備える。
図9は、
図8の受信アンテナ支持台41を示す斜視図である。
図9に示すように、受信アンテナ22a,22bを備えたMIMO受信機40は、受信アンテナ支持台41上に設けられ、方位角方向(角度θ
Rで示す。)に機械的に回転される。さらに好ましくは、受信アンテナ22a,22bを備えたMIMO受信機は、仰角方向(角度ψ
Rで示す。)に機械的に回転されてもよい。コンピュータ10は、受信アンテナ支持台41を制御して、受信アンテナ22a,22bを所望の角度に機械的に回転させる。
【0080】
第2の実施形態に関連して説明したように、受信アンテナ22a,22bに到来する多重波の受信信号波形は、散乱体アンテナ21−iが位置する角度φ
iに依存して変化するが、この角度は、散乱体アンテナ21−i自体の位置ではなく、受信アンテナ22a,22bの角度を変化させることによっても変化する。本実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために、受信アンテナ22a,22bを機械的に回転させるとともに、各移相器13−iにより無線周波信号の位相を回転後の角度に基づいて調整する(すなわち、数2の角度φ
iを変化させる)。コンピュータ10は、受信アンテナ22a,22bの方位角方向の角度変化量である、異なる2つの角度変化量θ
R1,θ
R2を乱数により独立に発生させる。これらの異なる角度変化量θ
R1,θ
R2は、互いに異なる多重波伝搬環境(すなわち、互いに異なる伝搬経路)に対応し、最終的には、受信アンテナ22a,22bの周囲に互いに異なる多重波をもたらす。数2において角度φ
iに代えて角度(φ
i−θ
R1),(φ
i−θ
R2)を代入すると、以下の2つの受信信号波形S
5(t),S
6(t)が得られる。
【0082】
図10は、
図8のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第1の角度変化量θ
R1を設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
図10の配置では、受信アンテナ22a,22bは、受信アンテナ支持台41により、所定の基準角度から角度変化量θ
R1にわたって機械的に回転される。
図10の配置の受信アンテナ22a,22bに向かって散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第1の送信アンテナから送信されて、所定の伝搬経路をたどって到来する第1のサブストリームTX1とみなすことができる。
【0083】
図11は、
図8のアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第2の角度変化量θ
R2を設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
図11の配置では、受信アンテナ22a,22bは、受信アンテナ支持台41により、所定の基準角度から角度変化量θ
R2にわたって機械的に回転される。
図11の配置の受信アンテナ22a,22bに向かって散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、
図10の場合の多重波とは異なる所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、第1のサブストリームTX1とは異なるサブストリームであって、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第2の送信アンテナから送信されて、第1のサブストリームTX1の伝搬経路とは異なる所定の伝搬経路をたどって到来する第2のサブストリームTX2とみなすことができる。
【0084】
以上説明したように、受信アンテナ支持台41及び移相回路13に設定する角度を変化させることにより、異なる多重波伝搬環境を生成することができる。
【0085】
アンテナ評価装置で所定のアンテナ装置の性能評価を行うためには、多様な多重波伝搬環境を生成する必要がある。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、MIMO送信機から送信される別個のサブストリームTX1,TX2が独立した伝搬経路をたどることを想定し、サブストリームTX1,TX2毎に異なる多重波伝搬環境を生成するので、サブストリームTX1の多重波伝搬環境とサブストリームTX2の多重波伝搬環境との相関をさまざまに変化させるように、これらの多重波伝搬環境を生成することが望ましい。本実施形態では、このような多重波伝搬環境の生成を実現するために、パラメータk(0≦k≦1)を用いて、2つの異なる角度変化量θ
R1,θ
R2の間の角度変化量Dを、次式のように定義する。
【0087】
数13に従って、パラメータkを変化させることにより、さまざまな異なる値を有する角度変化量Dが得られる。これらの角度変化量Dを受信アンテナ支持台41及び移相器13−1〜13−Nを用いて設定して無線周波信号を放射することにより、第1及び第2の実施形態と同様に、さまざまに異なる多重波伝搬環境が生成される。従って、数13で定義される、ある角度変化量を設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第1のサブストリームTX1とみなし、同じく数13で定義される、別の角度変化量を設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第2のサブストリームTX2とみなすことができる。いずれかの受信アンテナ角度(例えば、角度変化量θ
R1,θ
R2、又は数13で定義される任意の角度変化量Dによって変化された角度)を基準としたとき、他の受信アンテナ角度は基準の受信アンテナ角度に対して所定の距離を有することになるが、この距離に応じて、対応する多重波伝搬環境の間の相関が変化する。
【0088】
処理の簡単化のためには、一方の角度変化量θ
R1を「0」とし、他方の角度変化量θ
R2のみを変化させてもよい。
【0089】
本実施形態は、第2の実施形態において、角度ベクトルA
3の各角度変化量が互いに同一の値θ
R1を有し、角度ベクトルA
4の各角度変化量が互いに同一の値θ
R2を有し、これにより、角度ベクトルCの各角度変化量が互いに同一の値Dを有する場合に相当するとみなすこともできる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ評価装置によれば、所定の角度変化量θ
R1,θ
R1を生成し、角度変化量θ
R1,θ
R1の間における角度変化量Dを決定し、角度変化量Dを受信アンテナ支持台41及び移相回路13に設定して複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。本実施形態のアンテナ評価装置によれば、さらに、角度変化量Dを決定することと、角度変化量Dを受信アンテナ支持台41及び移相回路13に設定して複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返してもよい。これにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。
【0091】
第4の実施形態.
第2の実施形態では、異なる多重波伝搬環境を生成するために散乱体アンテナ21−1〜21−Nを機械的に移動させるとともに、移相回路13により無線周波信号の位相を移動後の角度に基づいて調整したが、第4の実施形態では、これに代えて、移相回路13のみを制御することにより散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置を仮想的に変化させることを特徴とする。
【0092】
本実施形態のアンテナ評価装置は、第1の実施形態のアンテナ評価装置と同様の構成を備える。数8及び数9の受信信号波形を実現するために、散乱体アンテナ21−iの位置を実際に移動させることなく、移相器13−iにより無線周波信号の位相を角度変化量θ
1i,θ
2iに基づいて調整する(すなわち、移相器13−iの位相調整量を変化させる速度のみを制御する)。これにより、本実施形態では、散乱体アンテナ21−iの位置を「仮想的」に移動させることができる。
【0093】
図12は、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第1の散乱体アンテナ位置を仮想的に設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
第1の散乱体アンテナ位置として、第2の実施形態における角度ベクトルA
3に対応する設定を用いる。
図12の配置では、各散乱体アンテナ21−iから放射される無線周波信号の位相は、移相器13−iにより角度変化量θ
1iに基づいてそれぞれ調整されている。
図12の設定の散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第1の送信アンテナから送信されて、所定の伝搬経路をたどって到来する第1のサブストリームTX1とみなすことができる。
【0094】
図13は、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ評価装置のアンテナ配置と、第2の散乱体アンテナ位置を仮想的に設定したときの多重波伝搬環境とを示す平面図である。
第2の散乱体アンテナ位置として、第2の実施形態における角度ベクトルA
4に対応する設定を用いる。
図13の配置では、各散乱体アンテナ21−iから放射される無線周波信号の位相は、移相器13−iにより角度変化量θ
2iに基づいてそれぞれ調整されている。
図13の設定の散乱体アンテナ21−1〜21−Nから放射された無線周波信号は、
図12の場合の多重波とは異なる所定の多重波として受信アンテナ22a,22bに到来する。この多重波は、第1のサブストリームTX1とは異なるサブストリームであって、例えば2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機(
図15を参照)の第2の送信アンテナから送信されて、第1のサブストリームTX1の伝搬経路とは異なる所定の伝搬経路をたどって到来する第2のサブストリームTX2とみなすことができる。
【0095】
図12及び
図13に示すように、異なる角度ベクトルを設定することにより、異なる多重波伝搬環境を生成することができる。
【0096】
アンテナ評価装置で所定のアンテナ装置の性能評価を行うためには、多様な多重波伝搬環境を生成する必要がある。数10に従って、パラメータkを変化させることにより、さまざまな異なる値を有する角度ベクトルCが得られる。これらの角度ベクトルCを移相回路13を用いて設定して無線周波信号を放射することにより、第2の実施形態と同様に、さまざまに異なる多重波伝搬環境が生成される。従って、数10で定義される、ある角度ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第1のサブストリームTX1とみなし、同じく数10で定義される、別の角度ベクトルを設定したときに受信アンテナ22a,22bに到来する多重波を、MIMO送信機から送信される第2のサブストリームTX2とみなすことができる。いずれかの角度ベクトル(例えば、角度ベクトルA
3,A
4、又は数10で定義される任意の角度ベクトルC)を基準としたとき、他の角度ベクトルは基準の角度ベクトルに対して所定の距離を有することになるが、この距離に応じて、対応する多重波伝搬環境の間の相関が変化する。
【0097】
処理の簡単化のためには、一方の角度ベクトルA
3を「0」とし(
図6参照)、他方の角度ベクトルA
4のみを変化させるように移相回路13を制御してもよい。
【0098】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ評価装置によれば、受信アンテナ22a,22bから各散乱体アンテナ21−1〜21−Nの位置に対する方向の各角度の角度変化量をそれぞれ含む角度ベクトルA
3,A
4を生成し、角度ベクトルA
3,A
4の各対応する角度変化量の間における角度変化量を含む角度ベクトルCを決定し、移相回路13により複数の無線周波信号の位相をそれぞれ角度ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して複数の無線周波信号を放射させることを特徴とする。本実施形態のアンテナ評価装置によれば、さらに、角度ベクトルCを決定することと、移相回路13により複数の無線周波信号の位相をそれぞれ角度ベクトルCの各角度変化量に基づいて調整して複数の無線周波信号を放射させることとを繰り返してもよい。これにより、本実施形態のアンテナ評価装置は、MIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価する際に多様な多重波伝搬環境を効率的に生成することができる。さらに、第2の実施形態のように散乱体アンテナ21−1〜21−Nを機械的に移動させる場合(又は第3の実施形態のように受信アンテナ22a,22bを機械的に回転させる場合)と比較して、アンテナ評価装置の構成を簡単化することができる。
【0099】
以上の説明では、受信アンテナ22a,22bへの到来波分布が全方位角にわたって一様であることを仮定していたが、これに限定するものではない。本発明の実施形態に係るアンテナ評価装置は、各移相器と各散乱体アンテナとの間に減衰器をさらに備え、レイリーフェージングに限定せず、他のフェージングを発生させるように構成されてもよい。
【0100】
以上の説明では、
図15に示すような2つの送信アンテナを備えたMIMO送信機と2つの受信アンテナを備えたMIMO受信機とを含むMIMO無線通信システムを参照したが、本発明の実施形態に係るアンテナ評価装置は、より多数の送信アンテナ及び/又は受信アンテナを備えたMIMO無線通信システムの受信アンテナの性能を評価することも可能である。このとき、数6等に従って、パラメータkを変化させることにより、さまざまな異なる設定値(すなわち、第1の実施形態の初期位相ベクトル、第2及び第4の実施形態の角度ベクトル、第3の実施形態の角度変化量)が得られる。これらの設定値を用いて無線周波信号を放射することにより、さまざまに異なる多重波伝搬環境が生成される。これらの多重波伝搬環境のもとで受信アンテナ22a,22bにそれぞれ到来した多重波は、3つ以上の送信アンテナを備えたMIMO送信機から送信される複数のサブストリームとみなすこともできる。