(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767979
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】流体流通部材
(51)【国際特許分類】
F16L 37/08 20060101AFI20150806BHJP
F16L 13/14 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
F16L37/08
F16L13/14
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-2683(P2012-2683)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-142439(P2013-142439A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】有田 博
(72)【発明者】
【氏名】宇留野 信英
(72)【発明者】
【氏名】三浦 猪三男
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−015889(JP,U)
【文献】
実公昭54−004647(JP,Y1)
【文献】
特開2005−256869(JP,A)
【文献】
特開2004−316786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/08
F16L 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部を有し、該管状部の軸方向先端側及び基端側に小径部を介して一対の大径部が設けられ、前記小径部に環状のシール部材が配置され、この基端側大径部は雌側管状部と接続された際に固定部材に係止され、前記先端側大径部は雌側管状部から分離する際に前記小径部に配置された前記環状のシール部材の抜け止めとして機能する流体流通部材であって、
前記先端側大径部は、管状部の軸方向先端部を塑性変形させて径方向内側に折り曲げることにより形成される環状端面を有し、
前記環状端面は、径方向内側端縁が径方向外側端縁よりも軸方向基端側に位置することを特徴とする流体流通部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流通部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管状部を有し、該管状部の軸方向先端側に大径部が設けられ、前記大径部よりも軸方向基端側に環状のシール部材が配置される流体流通部材が知られている。このような流体流通部材は、主に給湯機において湯水を流通させるために用いられるものである。この大径部は、管状部材の先端部を塑性変形させて径方向内側に折り曲げることにより形成される環状端面を有する。特許文献1の構造では、環状端面は、径内側端縁が径外側端縁と同じ軸方向位置となっている。
【0003】
このような雄側の管状部にシール部材を装着する場合には、環状のシール部材の一部を大径部に引っ掛けた上で、シール部材の他の部分を環状端面の径方向外側端縁上で転がすか又は滑らせるようにして移動させることにより装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−256028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環状端面の径内側端縁にバリと呼ばれる突起などの鋭利な部位があった場合、シール部材を環状端面の径方向外側端縁上で転がした際に、シール部材が鋭利な部位と当たってしまい、損傷させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、シール部材を管状部に装着する際、シール部材を損傷させることがない流体流通部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、管状部を有し、該管状部の軸方向先端側
及び基端側に小径部を介して一対の大径部が設けられ、前記
小径部に環状のシール部材が配置され
、この基端側大径部は雌側管状部と接続された際に固定部材に係止され、前記先端側の大径部は雌側管状部から分離する際に前記小径部に配置された前記環状のシール部材の抜け止めとして機能する流体流通部材であって、前記
先端側大径部は、管状部の軸方向先端部を塑性変形させて径方向内側に折り曲げることにより形成される環状端面を有し、前記環状端面は、径方向内側端縁が径方向外側端縁よりも軸方向基端側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環状のシール部材を管状部に装着する際、仮に環状端面の径方向内側端縁にバリと呼ばれるなどの鋭利な部位があったとしてもシール部材を損傷させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係わる流体流通部材が用いられる給湯機の基本構成図を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係わる流体流通部材を用いた継ぎ手構造の側面図であって、雄側の部材を雌側の部材に挿入する前の状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係わる流体流通部材を用いた継ぎ手構造の側面図であって、雄側の部材を雌側の部材に挿入した状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係わる流体流通部材を用いた継ぎ手構造の側面図であって、雄側の部材を雌側の部材に挿入し、固定部材で固定した状態を示す。
【
図6】本発明の実施形態に係わる流体流通部材の斜視図を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係わる流体流通部材の側面図を示す。
【
図8】本発明の実施形態に係わる流体流通部材を説明する拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、給湯機1は、貯湯タンク2と、沸き上げ手段3と、温度調節手段としての混合弁4と、各部に湯水を配送するための配管5と、例えばT字状の分岐管6とを備えている。また、給湯機1は、外部からの給水配管40や外部への給湯配管41と接続されている。なお、給湯機には、混合弁4の他にも、三方弁、電磁弁が備えられるものもある。
【0012】
図1に示す貯湯式給湯機は、貯湯タンク2内に水を貯め、沸き上げ手段3として貯湯タンク2内に設けた電気ヒータを使用するものであるが、当該沸き上げ手段は電気ヒータに限らず、燃焼式のものであってもよく、貯湯タンク2外に別途設けられるヒートポンプであってもよい。
【0013】
配管5や、混合弁4、分岐管6等の水流通部材同士の接続においては、
図2〜
図4に示すように、接続作業や、補修等の際の分離作業を容易にするため、容易に着脱可能なクイック継ぎ手と呼ばれる継ぎ手構造が採用されている。この継ぎ手構造では、水流通部材の端部のそれぞれに雄側の管状部Aと雌側の管状部Bとが設けられており、これら雄側の管状部A及び雌側の管状部Bを嵌合接続した上で、
図5に示すクイックファスナと呼ばれる固定部材30によって固定されている。
【0014】
雄側の管状部Aの先端部には、
図6、
図7にも示されるように、一対の大径部10、11が設けられ、一対の大径部10、11の間にはOリングなどと呼ばれる環状のシール部材12を収納する小径部13が設けられる。なお、小径部13は、本実施例では雄側の管状部Aの主径と同じ径を有するものであるが、少なくとも大径部10、11よりも小径であればよい。
【0015】
シール部材12は、流路を流れる湯水が継ぎ手部から外部に漏洩するのを防止するための部材である。また、一対の大径部10、11のうち基端側の大径部11は、固定部材30に係止される部位としても機能する。そして、一対の大径部10、11のうち先端側の大径部10は、雄側の管状部Aと雌側の管状部Bとを分離する際にシール部材11が外れないように抜け止めする機能を有する。
【0016】
また、雌側の部材Bには、固定部材30に係止される部位である大径部20と、雄側の管状部Aの先端部が挿入される挿入部21とが設けられている。
【0017】
なお、従来は、管状部材の先端部に、一対の大径部を金属等を切削加工等により形成した雄側接続部材をろう付けやかしめ等により取り付けることにより、雄側の部材を形成していた。一方、本実施形態に係る水流通部材の雄側の管状部Aは、
図7、
図8に示されるように、配管等の管状部材自体を塑性変形させ、大径部10、11を形成するものである。従って、製造コストを低減することができ、また、ろう付け等による取り付け部からの湯水の漏洩の恐れがなく、また、従来のように雄側接続部材を別体で用いるものではないため、これが外れてしまう恐れもない。
【0018】
なお、雄側の管状部Aの素材は、塑性変形が可能な素材であり、主に銅やアルミ等が考えられる。但し、塑性変形が可能であれば、鉄、ステンレス等の他の金属や樹脂であってもよい。
【0019】
また、一対の大径部10、11のうち基端側の大径部11は、上述のように固定部材30に係止される部位であり、先端側の大径部10は、基端側の大径部11よりも軸方向長さを短く形成される。これにより、雌側の部材Bの挿入部21の奥行きが小さめでも良好に嵌合接続することができ、また、先端側の大径部10の軸方向長さが短いことで、挿入する際に許容される雄側の管状部Aと雌側の管状部Bとの傾斜の角度を大きくすることができ、雄側の管状部Aが雌側の管状部Bに対して多少傾いても雌側の管状部Bの挿入部21にスムーズに挿入することができるため、組立性に優れる。
【0020】
次に、本実施形態の雄側の管状部Aの端部構造についてさらに詳細に説明する。一対の大径部10、11のうち基端側の大径部11は、雄側の管状部Aの軸方向先端部をパンチによって塑性変形させて径方向内側に折り曲げることにより形成される環状端面14を有する。この環状端面14は、軸方向に対して交差する面である。具体的には、環状端面14は、
図7、
図8に示すように、径方向内側端縁15が径方向外側端縁16よりも軸方向基端側に位置するように形成される。即ち、環状端面14は、径方向内側端縁15が軸方向基端側に退避した構造となっている。なお、
図8では、環状端面14が基端側に向かって傾斜していることが良く分かるように雄側の管状部Aの先端部の断面のみを強調して表示している。
【0021】
ところで、雄側の管状部Aは、長い管材を所定長さに切断したものを用いることから、切断端縁にはバリと呼ばれる突起などの鋭利な部位17が発生する場合がある。この切断端縁は、雄側の管状部Aの先端部を径方向内側に折り曲げた際に、環状端面14の径方向内側端縁17に位置することとなる。
【0022】
好ましくは、
図8に示すように、径方向内側端縁17が環状端面14の径方向外側端縁16よりも軸方向基端側に退避する大きさは、鋭利な突起17の高さよりも大きく設定される。
【0023】
このような雄側の管状部Aの端部構造は、雄側の管状部Aの先端部を順次塑性加工していき、最後に先端部を径方向内側に折り曲げる。この際、小径部12をクランプで把持した状態でパンチを先端側から押し当てる。このとき、クランプとパンチとの最小隙間が先端側の大径部10の厚みよりも小さい寸法となるようにパンチする。すると、大径部10の径方向内側端縁15は、パンチに押し当てられるのに従って基端側へと変位する。一方、大径部10の外周側(径方向外側端縁16の部分)では、折り曲げられることで屈曲部が形成されることから、パンチ後にスプリング作用により復元するか、若しくは、パンチの際に抵抗となることにより、基端側への変位量が径方向内側端縁15よりも小さくなる。このような理由から、径方向内側端縁15が環状端面14の径方向外側端縁16よりも軸方向基端側に位置する状態となると考えられる。
【0024】
そして、雄側の管状部Aに環状のシール部材12を装着する場合には、シール部材12の一部を大径部10に引っ掛けた上で、シール部材12の他の部分を環状端面14の径方向外側端縁16上で転がすか又は滑らせて移動させるが、径方向内側端縁15が径方向外側端縁16よりも軸方向基端側に位置することにより、シール部材12を移動させる際に径方向内側端縁16に存在し得る鋭利な突起17にシール部材12が当たることを良好に防止できる。
【0025】
従って、本実施形態の構造によれば、環状のシール部材12を雄側の管状部Aに装着する際、仮に環状端面14の径方向内側端縁15にバリと呼ばれる突起などの鋭利な部位17があったとしてもシール部材12を損傷させることがない。
【符号の説明】
【0026】
10 先端側の大径部
12 シール部材
14 環状端面
16 径方向外側端縁
17 径方向内側端縁
A 雄側の管状部