(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記帯状部材の前記保持容器側の端部は、前記保持容器の前面部又は下面部に接続され、前記前面部又は前記下面部と、前記保持容器の側面部との接続箇所に前記帯状部材への張力付与時に前記帯状部材と当接する曲面部を形成したこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用したエアバッグ装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態のエアバッグ装置は、例えば、鞍乗り型車両である自動二輪車に設けられ、衝突時等に搭乗者の前方側で展開膨張するバッグ部を備えている。
図1は、第1実施形態のエアバッグ装置を備えた自動二輪車の模式的側面図である。
図2は、
図1の自動二輪車の模式的正面図である。
【0012】
自動二輪車1は、前輪FW、後輪RW、フレーム10、フロントフォーク20、スイングアーム30、シート40、シートカウル50、タンク60、ハンドル70、カウリング80等を備えて構成されている。
【0013】
フレーム10は、車体中央部に設けられる構造部材であって、その下部には図示しないエンジン、トランスミッション及び冷却装置、燃料供給装置などの補機類が搭載されている。
【0014】
フロントフォーク20は、フレーム10の前端部に回動可能に取り付けられ、前輪FW及びフロントブレーキ等を支持する部材である。
フロントフォーク20は、内部にスプリング及びダンパが収容され伸縮するテレスコピック式のフロントサスペンションである。
フロントフォーク20における前輪FWの上部には、フロントフェンダ21が設けられている。
【0015】
スイングアーム30は、フレーム10の下部から後方に突き出して設けられ、フレーム10に対して揺動可能に取り付けられるとともに、後輪RWを支持する部材である。
スイングアーム30とフレーム10との間には、リアサスペンションの図示しないスプリングダンパユニットが設けられている。
【0016】
シート40は、乗員が鞍乗りによって着座する部分であって、フレーム10の上部に設けられている。
シートカウル50は、シート40の後方でありかつ後輪RWの上方に配置された外装部材である。
タンク60は、シート40の前方側におけるフレーム10の上部に設けられ、燃料となるガソリンを貯留する容器である。
タンク60は、乗員の両肢の内股に挟まれる位置に設けられる。
なお、タンク60の上部における一部には、後述するエアバッグモジュール100が設けられる。
【0017】
ハンドル70は、フロントフォーク20の上部から車両後方側かつ車幅方向外側に突き出して形成され、乗員の手指により把持される操作部材である。
ハンドル70には、フロントブレーキレバー、クラッチレバー、各種灯火類のスイッチ等が設けられ、また、右側のグリップはスロットル操作部を兼ねている。
【0018】
カウリング(フェアリング)80は、例えば樹脂系材料によって形成され、車体前部をカバーする外装部材である。
カウリング80は、フロントフォーク20の上部からフレーム10の前半部、エンジン等をカバーするフルカウリングである。
【0019】
カウリング80は、ヘッドライト81、ミラー82、ウインドシールド83等を備えている。
ヘッドライト81は、カウリング80の前面部に設けられた照明装置である。
ミラー82は、カウリング80の左右上部に設けられた後方確認手段である。
ウインドシールド83は、カウリング80の前面部における上部に設けられた透明の部分であって、乗員の防風等に用いられるものである。
【0020】
図1に示すように、エアバッグモジュール100は、タンク60の上部に設けられている。エアバッグモジュール100は、自動二輪車1の衝突時等に、運転者の前方でバッグを展開膨張させ、運転者の上体を受け止めて拘束するものである。
図3は、エアバッグモジュール100の外観斜視図であって、カバーが閉じた状態を示す図である。
図4は、エアバッグモジュール100の側面視図であって、カバーが閉じた状態を示す図である。
図5は、エアバッグモジュール100の外観斜視図であって、カバーが開いた状態を示す図である。
図6は、エアバッグモジュール100の側面視図であって、カバーが開いた状態を示す図である。
図7は、エアバッグモジュール100の部分断面斜視図である。
エアバッグモジュール100は、バッグ110、リテーナ120、カバー130、ウェビング140、及び図示しないインフレータ等を備えて構成されている。
なお、
図3乃至
図7においては、バッグ110及びインフレータは図示を省略している。
【0021】
バッグ110は、基布パネルを縫合又は接着等することによって袋状に形成したものである。
バッグ110は、未使用時には例えばロール状、蛇腹状等に折り畳まれた状態でリテーナ120内に収容されている。
また、図示しないエアバッグ制御装置が、例えばフロントフォーク20等に設けたセンサによって衝突を検出した場合には、バッグ110は、インフレータから展開用ガスを吹き込まれることによって、
図1に示すようにカバー130を押し開き、タンク60の上方で展開膨張して乗員の上体を拘束する。
【0022】
リテーナ120は、例えば鋼板をプレス加工した板金部材を組み合わせることによって上部が開口したボックス状に形成されている。
バッグ110は、吹込み口111aがリテーナ120の下面と対向した状態で、後述するインフレータのバッグリング220によってリテーナ120に固定される。
リテーナ120は、下面部121、前面部122、後面部123、側面部124等を備えて構成されている。
【0023】
下面部121は、リテーナ120の底部を構成するほぼ平板状の部分である。
下面部121には、
図7に示すように、インフレータが取り付けられる開口121aが形成されている。
また、下面部121の周囲には、リテーナ120を車体のフレーム10等に締結するため、リテーナ120の側方へ突き出したフランジ部121bが形成されている。
【0024】
前面部122は、下面部121の前端部から斜め上方へ延びて形成されたほぼ平板状の斜面である下部122aと、下部122aの上端部から上方へ延びた上部122bとを有している。
下部122aの車幅方向における両端部には、ウェビング140のリテーナ120側の端部が固定される。
また、上部122bには、カバー130の前面部132が固定される。
後面部123は、下面部121の後端部から上方へ延びて形成されたほぼ平板状の部分である。
側面部124は、下面部121の左右両端部から上方へ延びて形成されたほぼ平板状の部分であって、その前端部及び後端部は、それぞれ前面部122、後面部123の左右両端部と接合されている。
側面部124を構成する部材における前面部122側の端部124aは、前面部122の下部122a側に折り曲げられており、端部124aは、下部122aの表面に添付されている。その結果、側面部124と下部122aとの間のコーナ部表面は、所定のRが付けられた凸曲面状に形成されている。前面部122の下部122aには、この端部124aを収容して、端部124aの表面と下部122aの表面とをほぼ同一平面上とするための凹部122cが形成されている。
また、側面部124には、
図7に示すように、後述する固定部材143との干渉を防止する凹部124bが形成されている。
【0025】
カバー130は、未使用時においてはリテーナ120の上部を閉塞する蓋状の部材であって、バッグ110の展開膨張時には、
図1に示すように、車両後方側に配置されたヒンジ回りに回動して開き、バッグ110の展開方向を規制するものである。
図8、
図9は、それぞれカバー130の部品単体の外観斜視図及び側面視図である。
図8は、カバー130を斜め前方側かつ斜め下方側から見た状態を示している。
カバー130は、例えば樹脂系材料によって一体に形成された上面部131、前面部132、後面部133、側面部134等を有して構成されている。
【0026】
上面部131は、未使用時にリテーナ120の上部開口を実質的に閉塞する面部である。
上面部131は、タンク60の外表面と連続した形状を有する曲面状に形成され、車両の外部に露出する意匠面として機能する。
【0027】
前面部132は、上面部131の前端部から下方へ突き出したほぼ平板状の面部である。
前面部132は、リテーナ120の前面部122における上部122bに、例えばリベット等を用いて固定される。
前面部132の上端部近傍には、車幅方向にほぼ沿って伸びるとともに、他の部分よりも溝状に肉厚を小さく形成されたテアライン132aが形成されている。
このテアライン132aは、バッグ110の展開膨張時に、バッグ110から上面部131が受ける押圧力によって破断する脆弱部である。
テアライン132aの中央部には、車幅方向に長い長孔状の開口132bが形成されている。この開口132aは、テアライン132aが破断を開始する起点として機能する。
カバー130の開放時には、前面部132におけるテアライン132aよりも下方の部分は、リテーナ120側に残り、テアライン132aよりも上方の部分のみが上面部131とともに回動し上昇する。
【0028】
後面部133は、上面部131の後端部から下方へ突き出したほぼ平板状の面部である。
後面部133は、リテーナ120の後面部123に、例えばリベット等を用いて固定される。
後面部133の上部には、肉厚を溝状に小さくすることによって、カバー130の開放時に屈曲する図示しないヒンジ部が形成されている。
【0029】
側面部134は、上面部131の左右側端部から下方へ突き出したほぼ平板状の面部である。
側面部134には、スリット134aが形成されている。
スリット134aは、側面部134の後方における下端部から上方へ延び、その上方側において後面部133側へカーブしており、上端部は側面部134における上端部近傍かつ後端部近傍に配置されている。
側面部134の前端部と前面部132の側端部との間には、隙間が形成されている。
カバー130の開放時には、側面部134のスリット134aよりも前方の領域は上面部131とともに揺動して上昇し、スリット134aよりも後方の領域はリテーナ120側に残るようになっている。この側面部134aのスリット134aよりも後方の領域は、例えばリベット等によってリテーナ120の側面部124に固定されている。
側面部134のスリット134aよりも前方の領域には、固定部材143が挿入される開口134bが形成されている。
【0030】
ウェビング140は、バッグ110の展開膨張時に、カバー130の揺動を規制してバッグ110の展開方向を規制する帯状部材である。
ウェビング140は、ベルト状に構成された本体部の両端部に、リテーナ側金具141、カバー側金具142を設けて構成されている。
リテーナ側金具141は、リテーナ120の前面部122における下部122aに、例えばリベットRによって固定されている。
リテーナ側金具141は、車幅方向外側の端部に設けられた開口141aに、ウェビング140の端部に設けられた環状部140aが通されている。
【0031】
カバー側金具142は、カバー130の側面部134におけるスリット134aよりも前方側の領域に、側面部134と実質的に直交する軸回りに回動可能に接続されている。
カバー側金具142は、例えば鋼板などの金属板を、U字状に折り曲げて構成されている。カバー側金具142の折曲部142aの外表面は、所定のRを付けた凸曲面状に形成されている。
カバー側金具142の中央部には、固定部材143の筒状部が挿入される開口142bが形成されている。
カバー側金具142は、ウェビング140の端部に設けられた環状部140bの内側に挿入される。この環状部140bには、固定部材143の筒状部が挿入される開口140cが形成され、開口140cと開口142bとは重ねて配置される。
また、このとき、カバー側金具142の折曲部142aは、ウェビング140への張力負荷時に環状部140bからの入力を受けられるよう、ウェビング140の端部側に向けて配置される。
【0032】
図10は、カバー側金具142とカバー130との接続部の分解斜視図である。
カバー側金具142は、
図7及び
図10に示すように、固定部材143、リベット144、ワッシャ145、ワッシャ146を用いて、カバー130の側面部134に取り付けられている。
固定部材143は、円筒状に形成された本体部の一方の端部に、外径側に張り出した外径側フランジ143aが形成され、他方の端部に内径側に張り出した内径側フランジ143bが形成されている。
固定部材143は、内径側フランジ143b側からワッシャ145に挿入され、さらに、カバー130の側面部134の内側から、開口134bに挿入され、さらに、ウェビング140の開口140c及びカバー側金具142の開口142bに順次挿入される。
【0033】
リベット144は、固定部材143の内径側フランジ143b側から挿入され、内径側フランジ143bと係合するブラインドリベット(ポップリベット)である。
また、リベット144の頭部がワッシャ146の中央部の開口と係合することで、リベット144はワッシャ146を固定部材143に固定する。
ワッシャ145は、
図7に示すように、固定部材143の外径側フランジ143aにおける内径側フランジ143b側の面部と、カバー130の側面部134の内側の面部との間に配置される。
ワッシャ146は、
図7に示すように、ウェビング140の環状部140bの車幅方向外側の面部と、リベット144の頭部との間に配置される。
【0034】
インフレータは、図示しないエアバッグ制御ユニットが、車両の衝突を検出した場合に、バッグ部100を展開膨張させる展開用ガスを発生するものである。
エアバッグ制御ユニットは、例えば、フロントフォーク20に設けられた加速度センサが、予め設定された閾値以上の減速度を検出した場合に、車両の衝突を判定する。
【0035】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)固定部材143の外径側フランジ部143aでカバー130の側面部134に当接するワッシャ145を保持することによって、カバーの側部に金属板などのインサートを設けない場合であっても、固定部材143からカバー130への入力を分散させて応力集中によるカバー130の破損を防止することができる。
このため、簡素な構成によってウェビング140とカバー130の側面部134を連結し、カバー130の揺動量を規制してバッグ110の展開方向を適切に規制することができる。
(2)カバー側金具142は、金属製のプレートをU字状に屈曲させて形成されるとともに、折曲部がウェビング140への張力付与時にウェビング140と加圧接触する端部側に配置されることによって、ウェビング140にカバー側金具142の鋭利なエッジ部が押し付けられることが防止され、ウェビング140の損傷を防止して信頼性を向上できる。
(3)リテーナ120の側面部124から前面部122側へ端部124aを回り込ませて、コーナ部を曲面状に形成したことによって、ウェビング140に張力が負荷された際に、ウェビング140にリテーナ120のコーナ部で鋭利な部分が押し付けられることが防止され、ウェビング140の損傷を防止して信頼性を向上できる。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用したエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。
なお、上述した第1実施形態と実質的に共通する箇所については、同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図11は、第2実施形態のエアバッグ装置におけるウェビング周辺部の構成を示す図である。
図11(a)は前方側の斜め上方側から見た状態を示す模式的断面図であり、
図11(b)は
図11(a)のb−b部矢視図である。
【0037】
第2実施形態においては、展開前のウェビング140の中間部における一部を、ウェビング140の中間部の他の部分と重ね合わせ、これらをテアシームSによって縫合している。
図11に示すように、テアシームSは、例えば、ウェビング140の長手方向(
図11(a)、
図11(b)における左右方向)における所定の範囲にわたって分布するように配置されている。
図11(b)に示すように、ウェビング140を正面から見たときのステッチの延在方向は、ジグザグ状に屈曲しつつウェビング140の幅方向に延び、ウェビング140の側端部で折り返すように配置されている。一例として、
図11に示す例においては、テアシームSはウェビング140を幅方向に2往復するように配置されているが、このようなテアシームSの配置等は、これに限定されず適宜変更することが可能である。
このテアシームSは、エアバッグ装置の作動時(バッグ部100の展開膨張時)に順次破断しながらエネルギを吸収する。
【0038】
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果に加えて、バッグ部100の展開膨張時に、ウェビング140のテアシームSが破断してエネルギを吸収することによって、カバー130に入力される最大荷重を低下させることができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態によって限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。このような変更の一例として例えば以下のようなものがあり、これらも本発明の技術的範囲内である。
(1)上述した実施形態のエアバッグ装置は、一例として自動二輪車に設けられるものであったが、本発明はこれに限らず、例えばATV等の他種の鞍乗り型車両にも適用することが可能である。
(2)エアバッグ装置を構成する各部分の形状、構造、材質、製法、配置等は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
(3)上述した実施形態においては、車両の衝突検出後にバッグを展開膨張させているが、これに限らず、車両の衝突の前兆(プリクラッシュ)の検出に応じてバッグを展開膨張させるようにしてもよい。
(4)上述した実施形態では、帯状部材は一例としてウェビングであったが、これに限らず、例えば樹脂シート等の他の材質からなる帯状部材であってもよい。